【実施例1】
【0012】
図1に示したように、本発明の実施例1に係る建築構造は、横架材10及びユニット20を備えている。
【0013】
横架材10は、リップ溝形鋼及び軽溝形鋼等から選択される軽量形鋼からなる。軽量形鋼の使用は、建築物の軽量化及び材料コストの低減に資するという利点がある。横架材10は、桁行方向に立てられた柱30間に架設される(
図1、
図6及び
図7参照)。この横架材10は、従来技術で採用された横架材(敷桁)と異なり、柱30の上端には接合されない。この横架材10は、柱30の上端より低い位置で柱30に接合される(
図1、
図6及び
図7参照)。
【0014】
図1〜
図4に示したように、ユニット20は、水平枠21、小梁22、第1の斜材23及び第2の斜材24を備えている。
【0015】
図2に示したように、水平枠21は、一対の短辺部材21a,21aと一対の長辺部材21b,21bにより矩形に形成される。一対の短辺部材21a,21aは、互いに平行に配置される。一対の長辺部材21b,21bは、互いに平行に配置され、一対の短辺部材21a,21aと直交するように、一対の短辺部材21a,21aに接合される。
【0016】
小梁22は、柱30に結合されない梁である。
図5に示したように、小梁22は、単一構造ではなく、トラス構造である。すなわち、小梁22は、上弦材22a、上弦材22aと平行に配置される下弦材22b、上弦材22aと下弦材22bの間に垂直に配置される垂直材22c、上弦材22aと下弦材22bの間に斜めに配置される斜材22d,22eを備えている。
【0017】
図2及び
図3に示したように、小梁22は、水平枠21と直交するように、短辺部材21aの長さ方向中央に接合される。それにより、水平枠21と小梁22は、
図3に示したように、T字状に立体化される。本実施例で採用したユニット20は、水平枠21と小梁22がT字状に立体化される点で、水平枠と小梁が逆T字状に立体化される従来技術で採用されたユニットと異なる。
【0018】
図1及び
図3に示したように、第1の斜材23は、短辺部材21aの一端と小梁22との間に架設される。本実施例で採用したユニット20は、第1の斜材23が小梁22の下弦材22b付近に設けられたプレート25を介して小梁22に接合されている。
【0019】
図1及び
図3に示したように、第2の斜材24は、短辺部材21aの他端と小梁22との間に架設される。本実施例で採用したユニット20は、第2の斜材24がプレート25を介して小梁22に接合されている。
【0020】
水平枠21を構成する短辺部材21a及び長辺部材21b、小梁22を構成する上弦材22a、下弦材22b、垂直材22c及び斜材22d,22e、第1の斜材23並びに第2の斜材24の材料は、断面が同一形状かつ同一寸法の軽量形鋼であることが好ましい。そのような材料の使用は、設計及び製造を容易にし、コスト削減も可能にする。また、そのような軽量形鋼を材料とするこれらの部材は、溶接しなくても、ボルト等を用いて機械的に接合することができる。したがって、溶接歪みによる組立精度の低下がなく、高度な組立精度を実現し得る。
【0021】
本実施例が適用される典型的な建築物では、ユニット20が複数使用される。また、
図6に示したように、各ユニット20は、予め組み立てられた後、横架材10の上に設置されることが好ましい。
【0022】
図1に示したように、ユニット20は、水平枠21の短辺部材21aを柱30の上端に接合し、かつ小梁22、第1の斜材23及び第2の斜材24が接合されたプレート25を横架材10に接合することによって、横架材10の上に設置される。
図1では、短辺部材21aの両端がそれぞれ柱30に接合されているが、これに限定されない。例えば、
図6及び
図7に示したように、桁行方向に立てられた2本の柱30(30a),30(30b)間に2つのユニット20(20a),20(20b)が配置される場合には、一方のユニット20(20a)の短辺部材21aの一端が柱30(30a)に接合され、他方のユニット20(20b)の短辺部材21aの他端が柱30(30b)に接合され、一方のユニット20(20a)の短辺部材21aの他端が他方のユニット20(20b)の短辺部材21aの一端に接合される。
【0023】
図1及び
図7に示したように、ユニット20が横架材10の上に設置されることにより、桁行方向に立てられた柱30に結合されたトラス構造の大梁50が形成される。この大梁50の上弦材は、水平枠21を構成する短辺部材21aであり、大梁50の下弦材は、横架材10であり、大梁50の垂直材は、小梁22を構成する垂直材22cであり、大梁50の斜材は、第1の斜材23及び第2の斜材24である。
【0024】
本実施例では、この大梁50と桁行方向に立てられた柱30が一体化することによって、ラーメン構造が形成されるため、桁行方向に立てられた柱30間に設置されるブレースを排除することが可能である(
図7参照)。
【0025】
また、本実施例では、横架材10が大梁50の下弦材になるため、横架材10自体に高い曲げ強度が要求されない。したがって、重量形鋼からなる横架材10の使用を排除することが可能である。
【0026】
さらに、本実施例では、水平枠21と小梁22がT字状に立体化されたユニット20が横架材10の上に設置されるため、水平枠21と横架材10が重なり合うことがない(
図1、
図6及び
図7参照)。その上、トラス構造の大梁50が横架材10とユニット20の組み合わせによって形成される構成である(
図1及び
図7参照)。したがって、構造的に高効率な建築構造及び建築物を提供することが可能である。
【0027】
本実施例に係る建築構造を有する建築物の工法は、以下の工程を含む。
(1)1)短辺部材21aを備える矩形の水平枠21、2)水平枠21に直交するように、短辺部材21aの長さ方向中央に接合されるトラス構造の小梁22、3)短辺部材21aの一端と小梁22との間に架設される第1の斜材23、及び4)短辺部材21aの他端と小梁22との間に架設される第2の斜材24を備えるユニット20を組み立てる工程、
(2)桁行方向に立てられた柱30間に軽量形鋼からなる横架材10を架設する工程、及び
(3)短辺部材21aが柱30に結合されるトラス構造の大梁50の上弦材となり、横架材10が大梁50の下弦材となり、小梁22の垂直材22cが大梁50の垂直材となり、第1の斜材23及び第2の斜材24が大梁50の斜材となるように、横架材10の上にユニット20を設置する工程。
【0028】
この工法によれば、工程(1)において、多種類の部材がユニット化されるため、建設現場での作業効率を大幅に向上させることができる。また、工程(2)において、横架材10が軽量であるため、架設作業が容易である。さらに、工程(3)において、ユニット20が横架材10の上に設置されることによって、柱30の傾きが矯正されるため、矯正時間の大幅な短縮を実現することが可能である。
【実施例2】
【0029】
図8〜
図11に示したように、本発明の実施例2に係る建築構造は、ユニット20を構成する小梁22がトラス構造の大梁50から外へ突き出る突出部分22f,22gを有する点で、実施例1に係る建築構造と異なる。
【0030】
図12は、本実施例に係る建築構造を有する建築物40の正面図、
図13は、その側面図、
図14は、その骨組みを示す正面図、及び
図15は、その骨組みを示す側面図である。これらの図に示したように、建築物40の正面側に配置される突出部分22fは、軒41の骨組みを構成する。一方、建築物40の背面側に配置される突出部分22gは、小梁22の延長部分として機能する。
【0031】
図11に示したように、突出部分22f,22gは、小梁22の一部分であり、小梁22に付け足したものではない。したがって、突出部分22f,22gは、鉛直荷重に対する強度が高い。また、小梁に付け足したものと比較して、建築コストが格段に低い。
【0032】
図8及び
図15に示したように、突出部分22fの先端は、自由端である。したがって、建築物40の軒先を支える柱が不要である。また、突出部分22gの先端も自由端である。したがって、
図16に示したように、突出部分22gの先端に壁材42を設置した場合には、室内後方の柱が不要となるため、室内後方に柱がある場合と比較して、床面積を拡大することが可能である。
【0033】
本実施例に係る建築構造も、実施例1と同様に、ユニット20が横架材10の上に設置されることにより、桁行方向に立てられた柱30に結合されたトラス構造の大梁50が形成される。したがって、桁行方向に立てられた柱30間に設置されるブレースを排除することができる(
図14参照)。なお、建築物40の側面側ではラーメン構造が形成されないため、梁間方向に立てられた柱30間にはブレース48が設置される(
図15参照)。
【0034】
本発明は、住宅、コンビニエンスストア等の小売店舗、飲食店、工場、倉庫など、様々な用途の建築物に適用可能である。