特許第6374372号(P6374372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374372
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20180806BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20180806BHJP
   B60T 13/128 20060101ALI20180806BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20180806BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B60T17/22 Z
   B60T13/122 Z
   B60T13/128
   B60T8/17 B
   B60T17/18
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-231365(P2015-231365)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-95023(P2017-95023A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】増田 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−301462(JP,A)
【文献】 特開2015−150942(JP,A)
【文献】 特開2012−91647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/22
B60T 13/122
B60T 13/128
B60T 8/17
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作部材の操作量に応じた反力液圧が発生する反力室と、
所定状況下で前記反力室と連通する低圧源と、
マスタピストンの駆動によりマスタ液圧が発生するマスタ室を有するマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の操作量に応じて前記マスタピストンの駆動にかかる駆動力を発生させる駆動部と、
前記ブレーキ操作部材の操作量及び操作力の少なくとも一方に基づいて、前記駆動力又は前記マスタ液圧の目標値を設定し、前記目標値に対応する前記駆動力又は前記マスタ液圧の実際値を前記目標値に近づけるように、前記駆動部を制御する制御部と、
を備える車両用制動装置に適用される異常診断装置であって、
前記ブレーキ操作部材の操作量と前記反力液圧との関係及び前記目標値と前記実際値との関係の少なくとも一方に基づいて、異常診断を行う診断部と、
液圧及び液量の少なくとも一方に関する前記反力室の状態が、所定過少状態又は所定過多状態であるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記診断部は、前記判定部により前記反力室の状態が前記所定過少状態又は前記所定過多状態であることが判定されている場合、前記異常診断を停止する異常診断装置。
【請求項2】
前記車両用制動装置は、前記ブレーキ操作部材の操作量を検出するストロークセンサ及び前記反力液圧を検出する圧力センサの少なくとも一方を備え、
前記判定部は、前記反力室と前記低圧源との連通状態に関する連通情報を取得し、前記連通情報と、前記ストロークセンサの検出結果及び前記圧力センサの検出結果の少なくとも一方とに基づいて、前記反力室の状態を判定する請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記車両用制動装置は、前記反力室と前記低圧源の間に配置された電磁弁を備え、
前記判定部は、前記電磁弁の開閉履歴を前記連通情報として用いる請求項2に記載の異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に適用される異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用制動装置は、システムの異常診断を行う異常診断装置(例えばECU)を備えている。異常診断は、「ブレーキ操作部材の操作量と反力液圧との関係」及び「目標液圧と実液圧との関係」の少なくとも一方に基づいて行われる。例えば、反力液圧はブレーキ操作部材の操作量に応じて発生するが、操作量に対して反力液圧が大きすぎる場合又は小さすぎる場合、システムに異常が発生していると診断できる。また、ECUは実液圧を目標液圧に近づける制御を実行するが、実液圧が目標液圧よりも大きすぎる場合又は小さすぎる場合も、装置に異常が発生していると診断できる。このように、異常診断装置では、上記関係に基づいて異常診断が行われる。ここで、反力液圧が発生する反力室とリザーバ等の低圧源とが所定状況下で連通する車両用制動装置が、例えば特開2012−16984号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−16984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の異常診断装置では、診断において反力室と低圧源とが連通する状況が考慮されていなかった。このため、異常診断装置は、異常診断精度の面で改良の余地がある。発明者は、新たにこの点に着目して発明を完成させた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、異常診断精度を向上させることができる異常診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異常診断装置は、ブレーキ操作部材の操作量に応じた反力液圧が発生する反力室と、所定状況下で前記反力室と連通する低圧源と、マスタピストンの駆動によりマスタ液圧が発生するマスタ室を有するマスタシリンダと、前記ブレーキ操作部材の操作量に応じて前記マスタピストンの駆動にかかる駆動力を発生させる駆動部と、前記ブレーキ操作部材の操作量及び操作力の少なくとも一方に基づいて、前記駆動力又は前記マスタ液圧の目標値を設定し、前記目標値に対応する前記駆動力又は前記マスタ液圧の実際値を前記目標値に近づけるように、前記駆動部を制御する制御部と、を備える車両用制動装置に適用される異常診断装置であって、前記ブレーキ操作部材の操作量と前記反力液圧との関係及び前記目標値と前記実際値との関係の少なくとも一方に基づいて、異常診断を行う診断部と、液圧及び液量の少なくとも一方に関する前記反力室の状態が、所定過少状態又は所定過多状態であるか否かを判定する判定部と、を備え、前記診断部は、前記判定部により前記反力室の状態が前記所定過少状態又は前記所定過多状態であることが判定されている場合、前記異常診断を停止する。
【発明の効果】
【0007】
反力室と低圧源とが所定状況下で連通する車両用制動装置では、それらの連通/遮断に起因して、反力室のフルード状態が希薄な状態又は過密な状態になる場合がある。このような場合、ブレーキ操作部材の操作量に対する各種反応が通常状態とは異なるため、異常診断の結果に影響が出てしまい、故障でないにもかかわらず異常と診断するおそれがある。本発明によれば、反力室のフルード状態が希薄な状態又は過密な状態になった場合、それを検知し、異常診断が停止される。これにより、故障でないにもかかわらず「異常」と誤検知されることが抑制される。つまり、本発明によれば、反力室の状態が通常状態である際に異常診断が実行されるため、異常診断精度は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の車両用制動装置の構成を示す構成図である。
図2】本実施形態のレギュレータの構成を示す断面図である。
図3】ストロークと反力液圧の関係を説明するための説明図である。
図4】目標サーボ圧と実サーボ圧の関係を説明するための説明図である。
図5】反力室のフルード量の変化の一例を説明するための説明図である。
図6】本実施形態の異常診断の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。図1に示すように、本実施形態の車両用制動装置Aは、車輪5FR,5FL,5RR,5RLに液圧制動力を発生させる液圧制動力発生装置BFと、液圧制動力発生装置BFを制御するブレーキECU6と、を備えている。ブレーキECU6は、異常診断装置Cに相当する。
【0010】
(液圧制動力発生装置BF)
液圧制動力発生装置BFは、図1に示すように、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第一制御弁22と、第二制御弁23と、サーボ圧発生装置4と、アクチュエータ5と、ホイールシリンダ541〜544と、各種センサ71〜76と、を備えている。
【0011】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル(「ブレーキ操作部材」に相当する)10の操作量に応じてフルード(作動液)をアクチュエータ5に供給する部位である。マスタシリンダ1は、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、及び第2マスタピストン15を備えている。ブレーキペダル10は、運転者がブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。
【0012】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
【0013】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、及びカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大とされている。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小とされている。
【0014】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端及び圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0015】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0016】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口及びブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122及び圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0017】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、及び突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0018】
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離は変化し得るように構成されている。
【0019】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、及び第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、及び第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部及び後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第2液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室(「駆動室」に相当する)1A」が区画されている。メインシリンダ11と第1マスタピストン14は、第2液圧室1Cを形成する第2液圧室形成部Zを構成している。第2液圧室形成部Zにより形成される第2液圧室1Cは、第1マスタピストン14の前進により容積が減少し第1マスタピストン14の後退により容積が増加する。また、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、及び入力ピストン12の前端部により「第1液圧室1B」が区画されている。
【0020】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、及び加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、及び第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
【0021】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11a及びポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171(「低圧源」に相当する)に接続されている。
【0022】
また、ポート11bは、シリンダ部121及び入力ピストン13に形成された通路18により第1液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第1液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。
【0023】
ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第1液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第2液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0024】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと配管51とを連通させている。
【0025】
ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと配管52とを連通させている。
【0026】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分等)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材95、96が配置されている。これらシール部材91〜96は、カップシールであって、断面がC字状に形成されている。シール部材91〜96は、諸条件下でリザーバ171〜173側からマスタシリンダ1側へのフルードの流入を許容するが、マスタシリンダ1側からリザーバ171〜173側へのフルードの流入を許容しない。
【0027】
ストロークセンサ71は、ブレーキペダル10の操作量(ストローク)を検出するセンサであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。ブレーキストップスイッチ72は、運転者によるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0028】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第1液圧室1B及び第2液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって後方に付勢されており、ピストン212の後面側に液圧室214が形成される。液圧室214は、配管164及びポート11eを介して第2液圧室1Cに接続され、さらに、液圧室214は、配管164を介して第一制御弁22及び第二制御弁23に接続されている。少なくとも通常のブレーキ制御(第一制御弁22が開弁状態且つ第二制御弁23が閉弁状態)において、液圧室214、第1液圧室1B、第2液圧室1C、及びそれらをつなぐ配管164、162が、「反力室R」を構成する。
【0029】
(第一制御弁22)
第一制御弁22は、非通電状態で閉じる構造(ノーマルクローズ型)の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第一制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第1液圧室1Bに連通している。また、第一制御弁22が閉じると第1液圧室1Bが密閉状態になる。配管164及び配管162は、第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0030】
第一制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが遮断される。これにより、第1液圧室1Bが密閉状態になってフルードの行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離を保って連動する。また、第一制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第1液圧室1B及び第2液圧室1Cの容積変化が、フルードの移動により吸収される。
【0031】
圧力センサ73は、第2液圧室1C及び第1液圧室1Bの液圧(反力液圧)を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第一制御弁22が閉状態の場合には第2液圧室1Cの圧力を検出し、第一制御弁22が開状態の場合には連通された第1液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0032】
(第二制御弁23)
第二制御弁23は、非通電状態で開く構造(ノーマルオープン型)の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第二制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第2液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第二制御弁23は、第2液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。なお、リザーバ171〜173の圧力は、大気圧である。
【0033】
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、減圧弁41、増圧弁42、圧力供給部43、及びレギュレータ44を備えている。減圧弁41は、ノーマルオープン型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、及びポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。減圧弁41は、閉弁することで、後述する第1パイロット室4Dからフルードが流出することを阻止する。なお、リザーバ171、434(又は171〜173、434)は、1つのリザーバで構成されても良い。
【0034】
増圧弁42は、ノーマルクローズ型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧のフルードを供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ(高圧源)431、ポンプ432、モータ433、及びリザーバ434を備えている。
【0035】
アキュムレータ431は、高圧のフルードを蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44及び液圧ポンプ432に接続されている。ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留されたフルードを、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号をブレーキECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積されたフルードの蓄積量に相関する。
【0036】
アキュムレータ液圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にフルードを圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。
【0037】
レギュレータ(調圧装置)44は、図2に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、及びサブピストン446を備えている。シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4a〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
【0038】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aと出力ポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介して配管161に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。
【0039】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
【0040】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、及びシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、フルードで満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0041】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
【0042】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0043】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、及びボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、及び第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0044】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0045】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0046】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4f及び配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4g及び配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0047】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4h及び配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、フルードで満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給される液圧(サーボ室1Aの液圧:サーボ圧)を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号をブレーキECU6に送信する。圧力センサ74の検出値は、サーボ圧(「駆動力」に相当する)の実際値であり、実サーボ圧(「実液圧」に相当する)と称する。
【0048】
このように、レギュレータ44は、第1パイロット室4Dの圧力(「パイロット圧」とも称する)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、制御ピストン445の移動に伴って第1パイロット室4Dの容積が変化し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0049】
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0050】
また、制御ピストン445は、第1パイロット室4Dに面する壁部にダンパ装置(図示せず)を有している。ダンパ装置は、ストロークシミュレータのような構成であり、付勢部材で第1パイロット室4Dに向けて付勢されたピストン部を有する。ダンパ装置が設けられることで、第1パイロット室4Dの剛性はパイロット圧に応じて変化する。
【0051】
(アクチュエータ5)
アクチュエータ5は、マスタ圧が発生する第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eと、ホイールシリンダ541〜544の間に配置されている。アクチュエータ5と第1マスタ室1Dとは配管51により連通され、アクチュエータ5と第2マスタ室1Eは配管52により連通されている。アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指令に基づいて、ホイールシリンダ541〜544に供給されるフルード圧を調整する。本実施形態のアクチュエータ5は、アンチロックブレーキシステム(ABS)を構成している。アクチュエータ5は、ホイールシリンダ541〜544に対応した4チャンネル(2系統)で構成されている。アクチュエータ5は、公知の構成であるため詳細説明は省略する。
【0052】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶部を備えている。ブレーキECU6は、各種センサ71〜76と接続され、各電磁弁22、23、41、42、モータ433、及びアクチュエータ5等を制御する。ブレーキECU6には、ストロークセンサ71からブレーキペダル10の操作量(ストローク)情報が入力され、ブレーキストップスイッチ72からブレーキペダル10の操作の有無情報が入力され、圧力センサ73から反力液圧情報が入力され、圧力センサ74から実サーボ圧情報が入力され、圧力センサ75からアキュムレータ液圧情報が入力され、車輪速度センサ76から各車輪5FR,5FL,5RR,5RLの速度情報が入力される。
【0053】
(ブレーキ制御)
ここで、ブレーキECU6によるブレーキ制御(通常のブレーキ制御)について説明する。ブレーキ制御は、通常の液圧制動力の制御である。ブレーキECU6は、ブレーキ制御(通常モード)において、第一制御弁22に通電して開弁し、第二制御弁23に通電して閉弁した状態とする。第二制御弁23が閉状態となることで第2液圧室1Cとリザーバ171とが遮断され、第一制御弁22が開状態となることで第1液圧室1Bと第2液圧室1Cとが連通する。このように、ブレーキ制御は、第一制御弁22を開弁させ、第二制御弁23を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。減圧弁41及び増圧弁42は、第1パイロット室4Dに流入出させるフルードの流量を調整する「弁部」である。このブレーキ制御において、ブレーキECU6は、状況に応じて、ストロークセンサ71で検出されたブレーキペダル10の操作量(入力ピストン13の移動量)又はブレーキペダル10の操作力(例えば、圧力センサ73で検出される液圧)から、運転者の要求制動力を算出する。そして、ブレーキECU6は、要求制動力に基づいてサーボ圧の目標値である目標サーボ圧(「目標液圧」に相当する)を設定し、実サーボ圧を目標サーボ圧に近づけるように減圧弁41及び増圧弁42を制御する。
【0054】
詳細に説明すると、ブレーキペダル10が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第1室4Aと第2室4Bは隔離されている。第2室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第2室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第3室4Cに連通している。したがって、第2室4B及び第3室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dと第2室4Bとは同圧力に保たれる。第2パイロット室4Eは、配管511、51を介して第1マスタ室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0055】
この状態から、ブレーキペダル10が踏まれると、ブレーキECU6は、実サーボ圧及び目標サーボ圧に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。ブレーキECU6は、増圧に際して、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と第1パイロット室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、第1パイロット室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧のフルードにより、パイロット圧を上昇させることができる。パイロット圧が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第2室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0056】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座面444bから離間する。これにより、第1室4Aと第2室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第1室4Aには、アキュムレータ431から高圧のフルードが供給されており、連通により第2室4Bの圧力が上昇する。なお、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなる程、フルードの流路が大きくなり、ボール弁442の下流の流路の流量が大きくなる。
【0057】
ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなるように、増圧弁42を制御するとともに、減圧弁41を閉じる。つまり、入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなり、実サーボ圧も高くなる。なお、パイロット圧は、圧力センサ74により取得した実サーボ圧から換算することができる。
【0058】
第2室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力(実サーボ圧)も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第1マスタピストン14が前進し、第1マスタ室1Dの圧力(マスタ圧)が上昇する。そして、第2マスタピストン15も前進し、第2マスタ室1Eの圧力(マスタ圧)が上昇する。第1マスタ室1Dの圧力上昇により、高圧のフルードがアクチュエータ5及び第2パイロット室4Eに供給される。第2パイロット室4Eの圧力は上昇するが、第1パイロット室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、アクチュエータ5に高圧(マスタ圧)のフルードが供給され、摩擦ブレーキが作動して車両が制動される。ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と第1パイロット室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0059】
(反力室開放モード)
一方、第一制御弁22が閉状態(無通電状態)で、且つ第二制御弁23が開状態(無通電状態)である場合、第1液圧室1Bは密閉状態となり、第2液圧室1Cはリザーバ171と連通状態となる。この状態で、ブレーキペダル10が操作されると、入力ピストン13の前進に連動して第1マスタピストン14も(互いに非接触で)前進する。この際、第2液圧室1Cがリザーバ171に連通しているため、反力液圧はほぼ発生せず、第2液圧室1Cの容積減少分のフルードは、第二制御弁23を介してリザーバ171に流出する。そして、発生したマスタ圧は、配管51、52、511を介して、アクチュエータ5及び第2パイロット室4Eに供給される。これにより、ブレーキペダル10の操作のみで制動力を発生させることができる。このような状態(又は制御)を「反力室開放モード」と称し、ブレーキECU6によりブレーキ制御が実行されるモードを「通常モード」と称する。なお、反力室開放モードにおいて、第一制御弁22が開状態である場合又は第一制御弁22が存在しない場合は、入力ピストン13が第1マスタピストン14に当接して押圧するまで第1マスタピストン14は前進せず、入力ピストン13が第1マスタピストン14に当接するまでの間が無効ストロークとなる。
【0060】
このように、本実施形態の車両用制動装置Aは、ブレーキ操作部材10の操作量に応じた反力液圧が発生する反力室R(1B、1C、214、164、162)と、所定状況下で反力室Rと連通する低圧源171と、マスタピストン14、15の駆動によりマスタ液圧(マスタ圧)が発生するマスタ室1D、1Eを有するマスタシリンダ1と、ブレーキ操作部材10の操作量に応じてマスタピストン14、15を駆動させる駆動液圧(サーボ圧)が発生する駆動室1Aと、駆動室1Aに対するフルードの流入出量を調節する弁部41、42と、ブレーキ操作部材10の操作量及び操作力の少なくとも一方に基づいて、駆動液圧又はマスタ液圧の目標値である目標液圧を設定し、目標液圧に対応する駆動液圧又はマスタ液圧の実際値である実液圧を目標液圧に近づけるように、弁部41、42を制御する制御部6(61)と、ブレーキ操作部材10の操作量を検出するストロークセンサ71と、反力液圧を検出する圧力センサ73と、反力室Rとリザーバ173との間に配置された電磁弁23と、備えている。本実施形態では、少なくとも駆動室(サーボ室1A)及び弁部(減圧弁41と増圧弁42)が、マスタピストンの駆動にかかる駆動力を発生させる駆動部Yを構成している。つまり、制御部6(61)は、 ブレーキ操作部材10の操作量及び操作力の少なくとも一方に基づいて、駆動力又はマスタ液圧の目標値を設定し、目標値に対応する駆動力又はマスタ液圧の実際値を目標値に近づけるように、駆動部Yを制御する。
【0061】
(異常診断)
ブレーキECU6は、機能として、主に上記ブレーキ制御を実行する制御部61と、異常診断を行う診断部62と、反力室Rの状態を判定する判定部63と、を備えている。制御部61は、上記のとおり、目標サーボ圧を設定し、実サーボ圧を目標サーボ圧に近づけるように減圧弁41及び増圧弁42を制御する。制御部61は、フィードバック制御を実行する。診断部62及び判定部63は、異常診断装置Cを構成している。
【0062】
診断部62は、「ブレーキペダル10の操作量(以下、単に「ストローク」とも称する)と反力液圧との関係」及び「目標サーボ圧と実サーボ圧との関係」の少なくとも一方に基づいて、異常診断を行う。具体的に、診断部62は、図3に示すように、ストロークセンサ71の検出結果(ストローク)に対する圧力センサ73の検出結果(反力液圧)が、所定時間以上、ストローク毎に設定された正常範囲外の値であった場合、異常と診断する。換言すると、診断部62は、ストロークセンサ71の検出値に対する圧力センサ73の検出値が、ストローク毎に設定された許容上限値を所定時間以上超えた場合又はストローク毎に設定された許容下限値を所定時間以上下回った場合、異常と診断する。正常範囲は、許容下限値から許容上限値までの間である。
【0063】
また、診断部62は、図4に示すように、目標サーボ圧に対する実サーボ圧(圧力センサ74の検出値)が、所定時間以上、目標サーボ圧の勾配に応じて設定される正常範囲(許容下限値から許容上限値)外の値であった場合、異常と診断する。診断部62は、所定時間以上、目標サーボ圧と実サーボ圧の差が許容値以上であった場合、異常と診断しても良い。診断部62は、所定間隔で異常診断を実行する。診断部62は、異常と判定した場合、通知手段(図示せず)を介して異常した旨を運転者に通知する。
【0064】
判定部63は、液圧及び液量の少なくとも一方に関する反力室Rの状態が、所定過少状態又は所定過多状態であるか否かを判定する。「所定過少状態」とは、反力室R内のフルード量が所定下限値未満である状態、又は反力液圧が所定下限圧未満である状態を意味する。所定過少状態は、反力室Rの液量に関して、初期状態(定常状態)よりも希薄な状態であるといえる。「所定過多状態」とは、反力室R内のフルード量が所定上限値を超えた状態、又は反力液圧が所定上限圧を超えた状態を意味する。所定過多状態は、反力室Rの液量に関して、初期状態(定常状態)よりも過密な状態であるといえる。なお、本実施形態では、主に反力室R内の液量(フルード量)に基づいて、反力室Rの状態が所定過少状態であるか否かが判定される。
【0065】
具体的に、判定部63は、反力室Rとリザーバ171〜173との連通状態に関する連通情報を取得し、当該連通情報と、ストロークセンサ71の検出結果(ストローク)及び圧力センサ73の少なくとも一方の検出結果(反力液圧)とに基づいて、反力室Rの状態を判定する。さらに具体的に、判定部63は、連通情報として第二制御弁23の開閉履歴を取得し、当該開閉履歴と、ストローク及び反力液圧の少なくとも一方とに基づいて、反力室Rの状態を判定する。第二制御弁23が開弁されると反力室Rとリザーバ171とが連通する。つまり、第二制御弁23が開弁されている状況(「所定状況」に相当する)下では、反力室Rとリザーバ171は連通している。第二制御弁23の開閉は、制御部61の指令(制御電流)により制御され、その開閉履歴(指令情報)はブレーキECU6の記憶部に記憶されている。
【0066】
判定部63は、記憶された第二制御弁23の開閉履歴から、反力室Rとリザーバ173の間の連通/遮断に関する情報を取得する。以下、第二制御弁23が開弁している状態を「リザーバ連通状態」と称し、第二制御弁23が閉弁している状態を「リザーバ遮断状態」と称する。また、本実施形態のブレーキECU6は、第一制御弁22を、リザーバ連通状態において閉状態とし、リザーバ遮断状態において開状態とする。本実施形態の判定部63は、リザーバ遮断状態である場合に、開閉履歴、リザーバ連通状態時のストローク、及びリザーバ連通状態時の反力液圧に基づいて、現在(ここではリザーバ遮断状態)の反力室Rの状態を判定する。
【0067】
判定部63は、リザーバ連通状態の期間における、前方へのストローク(踏み込み操作量)及び反力液圧に基づいて、反力室Rからリザーバ173へのフルードの流出量を演算(推定)する。具体的に、判定部63は、前方へのストロークにより生じるストロークシミュレータ21等での消費液量を考慮(除外)し、反力液圧とリザーバ173の圧力(大気圧)との差圧に基づいて、流出量を演算する。
【0068】
また、判定部63は、リザーバ連通状態の期間における、後方へのストローク(戻し操作量)及び反力液圧に基づいて、リザーバ173から反力室Rへのフルードの流入量を演算(推定)する。判定部63は、後方へのストローク、及び反力液圧とリザーバ173の圧力(大気圧)との差圧に基づいて、流入量を演算する。判定部63は、演算した流出量及び流入量に基づいて、反力室Rの状態が、所定過少状態であるか否かを判定する。判定部63は、反力室Rとリザーバ173との間の流路(第二制御弁23のオリフィス効果等)、差圧、及び粘性等のうち少なくとも1つを考慮して、反力室Rのフルードの流入出量を演算している。なお、反力室Rにおける流入出量は、例えば、ストローク変化量、反力液圧変化量、及びリザーバ連通状態の期間から、予め実験等により得られたデータベースに基づいて算出されても良い。なお、リザーバ連通状態において、第一制御弁22の開閉制御される場合、その開閉状態(開閉履歴)を考慮して流出量が演算されても良い。
【0069】
判定部63は、上記演算した反力室Rのフルード量が通常範囲(所定下限値以上で所定上限値以下の範囲)に復帰するまでの期間を含み、第二制御弁23が閉弁された後も、フルードの流入出量を演算する。第二制御弁23が閉弁された状態でも、反力室Rが負圧状態である場合、例えばリザーバ173から通路18を介してフルードが反力室Rに流入する。この際、通路18や第一制御弁22のオリフィス効果により流入量は制限され、通常状態への復帰には時間がかかる。判定部63は、例えば、反力室Rとリザーバ173との圧力差と、当該圧力差による単位時間当たりの流入量(通路18を介した流入量)とに基づいて、第二制御弁23閉弁後の反力室Rのフルード量を演算する。判定部63は、流入出量の演算において、リザーバ171〜173からシール部材91、95等を介したフルードの流入を考慮することができる。判定部63は、第二制御弁23が開閉状態にかかわらず、その時点毎の流入出量を演算することができ、流入出量の演算毎に反力室Rの状態を判定することができる。なお、判定部63は、第二制御弁23が閉弁された際、反力室Rのフルード量が通常範囲に復帰する期間を演算(推定)しても良い。
【0070】
判定部63は、リザーバ遮断状態における反力室Rの状態が所定過少状態であると判定した場合、診断部62に異常診断の実行を禁止する信号を送信する。一方、判定部63は、リザーバ遮断状態における反力室Rの状態が所定過少状態であると判定しなかった場合、診断部62に異常診断の実行を許可する信号を送信する。診断部62は、判定部63からの許可/禁止信号に基づいて、異常診断を実行/停止する。つまり、診断部62は、判定部63により反力室Rの状態が所定過少状態であることが判定されている場合、異常診断を停止する。
【0071】
ここで、反力室Rの状態が所定過少状態となる一例を、図5を参照して説明する。図5に示すように、リザーバ連通状態(第二制御弁23が開状態で且つ第一制御弁22が閉状態)において、ブレーキペダル10が操作され、入力ピストン13が前進すると、ストロークに応じたフルードが第二制御弁23を通ってリザーバ173に排出される。つまり、リザーバ連通状態で、ブレーキペダル10が奥まで踏み込まれると、入力ピストン13の前進に連動して第1マスタピストン14が前進し、当該前進により第2液圧室1Cの容積が減少し(反力室Rが縮小し)、反力室R内のフルードが第二制御弁23を介してリザーバ173に流出する。
【0072】
続いて、ブレーキペダル10が急戻しされると(素早く戻されると)、第1マスタピストン14が後退し、当該後退により第2液圧室1Cの容積が初期状態に向けて増大し(反力室Rが拡張し)、反力室Rの圧力が低下する(ここでは負圧が発生する)。そして、反力室Rとリザーバ173との圧力差により、リザーバ173から第二制御弁23を通ってフルードが反力室Rに流入する。ここで、第二制御弁23と配管161の間の流路幅の違いなどから、第二制御弁23にオリフィス効果が生じ、反力室Rへのフルードの流入量が制限され、反力室Rとリザーバ173との圧力差(反力室Rの負圧)の解消には、ブレーキペダル10の戻りに対して時間的な遅れが生じる。
【0073】
そして、上記圧力差がある状況で、第二制御弁23が閉弁されリザーバ遮断状態(第二制御弁23が閉状態で且つ第一制御弁22が開状態)に移行した場合、当該圧力差(反力室R内のフルードが希薄な状態)により、リザーバ173から通路18を介して反力室Rにフルードが流入する。しかし、ここでも通路18及び第一制御弁22のオリフィス効果により、流入量が制限され、圧力差解消には時間がかかる。つまり、車両用制動装置Aでは、上記のようなケースで、圧力差が解消されていない期間、すなわち反力室R内のフルードが通常よりも減少している期間が発生する。第二制御弁23が開状態から閉状態に制御されるのは、例えばブレーキペダル10が急戻しされた後に再度ブレーキペダル10が踏み込まれた際であり、例えば反力室開放モード(増圧弁42の開弁なしに制動力を発生させるモード)から通常モード(上記ブレーキ制御を実行するモード)に切り替わる際である。フルードが反力室Rに戻りきる前に、制御モードが変更されると(第二制御弁23が開弁から閉弁になると)、反力室Rのフルードが希薄な期間が発生する。
【0074】
このようなフルードが希薄な期間に、ブレーキペダル10が操作されると、反力室R内のフルードが減少している分、入力ピストン13が前進しやすく、通常よりも余分にストロークを消費する。つまり、同じブレーキ操作に対して、ストロークが通常より大きくなる。これにより、故障でないにもかかわらず、「ストロークと反力液圧との関係」が通常から大きく変化する。また、フルード希薄状態でブレーキペダル10が操作されると、反力液圧が上がらずストロークが大きくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14が当接するおそれがあり、この場合、入力ピストン13の押圧(運転者の踏力)により第1マスタピストン14が前進する。そうなると、当該前進により増大したマスタ圧が第2パイロット室1Eに供給され、実サーボ圧が制御によらず上昇する。これにより、故障でないにもかかわらず、増圧異常と診断される可能性がある。つまり、このような場合でも、「目標サーボ圧と実サーボ圧との関係」も通常から大きく変化する。これは「目標マスタ圧と実マスタ圧との関係」においても同様である。このように、フルード希薄状態では、診断部62が誤診断する可能性がある。
【0075】
ここで、判定部63は、第二制御弁23が開閉やオリフィス効果を考慮して反力室Rのフルードの流入出量を演算し、反力室R内のフルード量が所定下限値未満である場合、反力室Rの状態を「所定過少状態」と判定する。また、判定部63は、リザーバ遮断状態において、反力室Rのフルードの減少量(不足量)と、圧力差と、通路18等のオリフィス効果とに基づいて、現在の反力室Rのフルード量を算出する。判定部63は、反力室Rのフルード量が通常範囲に復帰するまで、反力室Rの状態を「所定過少状態」と判定する。つまり、図5のT1の期間、判定部63は反力室Rの状態を所定過少状態と判定する。これにより、反力室Rのフルードが希薄な状態における異常診断が停止される。なお、判定部63は、第二制御弁23が開弁状態の際の反力室Rのフルード量も演算できるため、第二制御弁23の開状態(リザーバ連通状態)の期間を含む図5のT2の期間、所定過少状態と判定しても良い。ただし、異常診断が通常のブレーキ制御(通常モード)を対象としている場合、判定部63は、期間T1の間、所定過少状態と判定すれば足る。なお、図5のフルード量は説明のための概念図(イメージ図)である。
【0076】
ここで、異常診断における反力室Rの状態判定の流れについて図6を参照して説明する。まず、判定部63は、制御部61の制御状況又は開閉履歴に基づき、現在の第二制御弁23の開閉状態を確認(判定)する(S101)。判定部63は、ストロークセンサ71からストローク情報を取得し(S102)、圧力センサ73から反力液圧情報を取得する(S103)。そして、判定部63は、開閉履歴、ストローク、及び反力液圧に基づいて、現在の反力室Rのフルードの流入出量を演算・推定する(S104)。判定部63は、演算結果に基づいて、反力室Rの状態が所定過少状態又は所定過多状態であるか否かを判定する(S105)。判定部63は、反力室Rの状態が所定過少状態又は所定過多状態と判定した場合(S105:Yes)、診断部62に診断禁止信号を送信し、診断部62は異常診断を停止する(S106)。一方、判定部63は、反力室Rの状態が所定過少状態又は所定過多状態と判定しなかった場合(S105:No)、診断部62に診断許可信号を送信し、診断部62は異常診断を実行する(S107)。このような処理が常時(所定時間毎に)実行される。
【0077】
本実施形態によれば、反力室Rとリザーバ173とが連通可能なシステムにおいて、反力室Rのフルード状態が希薄状態(過少状態)になった場合、異常診断が停止される。これにより、故障ではなく希薄状態時のブレーキペダル10の入り込みによる異常診断での誤検知(誤診断、誤ダイアグ)が抑制される。誤検知が抑制されることで、異常診断精度は向上する。また、反力室Rの希薄状態が解除されると、異常診断が許可されるため、速やかな異常診断の再開が可能となり、システムの安全性を高めることが可能となる。このように、本実施形態によれば、反力室Rとリザーバ173との連通状態を考慮して、異常診断実行の可否が決定されるため、より信頼性の高い異常診断が可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、第二制御弁23の開閉により、反力室Rとリザーバ173との連通/遮断が制御されるため、第二制御弁23の開閉履歴を参照して、反力室Rのフルード流入出量を演算することができる。開閉履歴情報を演算要素として用いることで、流入出量の演算精度を向上させることができる。
【0079】
上記実施形態では、主に「所定過少状態」の判定について説明したが、ここで「所定過多状態」の判定について説明する。所定過多状態は、上記のとおり、反力室Rのフルード状態が過密状態であることを意味している。例えば、通常のブレーキ制御中(通常モード:第一制御弁22が開状態且つ第二制御弁23が閉状態)に、いわゆるポンピング操作など、ブレーキペダル10が連続的に操作された場合(初期位置に戻ることなく入力ピストン13の前進と後退が短時間で繰り返された場合)、反力室Rが過密状態になり得る。
【0080】
具体的に、この場合、上記連続操作中、第1液圧室1B及び第2液圧室1Cの少なくとも一方が過渡的に負圧状態になり、この負圧期間にリザーバ171〜173からシール部材91、95等を介して反力室Rにフルードが流入し得る。つまり、反力室Rが負圧状態(「所定状況」に相当する)である場合、シール部材91、95等を介して反力室Rとリザーバ171〜173とが連通する。これにより、反力室Rのフルード量が増大し、ストロークが小さいにもかかわらず反力液圧が大きくなる現象が発生する。判定部63は、負圧状態になる期間を推定し、当該期間(連通期間)におけるシール部材91、95を介して流入するフルード量を演算する。シール部材91、95を介したフルードの流入量は、予め実験等で設定することができる。判定部63は、例えば圧力センサ73の検出結果に基づき、反力室Rが負圧状態であるか否かを「連通状態に関する連通情報」として用い、負圧状態を反力室Rとリザーバ171〜173とが連通している状態と判定して、流入出量を演算する。判定部63は、当該負圧状態の期間を連通期間として、上記同様に流入出量を演算する。判定部63は、演算結果に基づいて、反力室Rの状態が所定過多状態であるか否かを判定する。
【0081】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、反力液圧は、ストロークから推定(演算)されても良い。これにより、圧力センサ73を省略することができる。また、液圧制動力発生装置BFにおいて、第一制御弁22はなくても良い。また、異常診断や異常診断の可否の判定は、ブレーキECU6とは別のECUで実行されても良い。また、判定部63は、ストロークを用いず、反力液圧(圧力センサ73の検出値)に基づいて異常診断の可否を判定しても良い。また、レギュレータ44は、スプール弁を用いたものでも良い。
また、上記の実施形態では、マスタピストン(14)の駆動力を発生させる駆動部Yとして、駆動液圧の発生する駆動室1Aと該駆動室1Aに対するフルードの流入出量を調整する弁部41、42とを備えるものを採用したが、駆動部Yの構成はこれに限らない。駆動部Yとして、例えば、電動モータ等の電磁アクチュエータを有してブレーキ操作部材10の操作量に応じた駆動力をマスタピストン(14)に作用させる電動の駆動部を採用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1:マスタシリンダ、 11:メインシリンダ、 12:カバーシリンダ、
13:入力ピストン、 14:第1マスタピストン、 15:第2マスタピストン、
1A:サーボ室(駆動室)、 1B:第1液圧室(反力室)、
1C:第2液圧室(反力室)、 1D:第1マスタ室、 1E:第2マスタ室、
10:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、
171、172、173、434:リザーバ(低圧源)、
2:反力発生装置、 22:第一制御弁、 3:第二制御弁(電磁弁)、
4:サーボ圧発生装置、 41:減圧弁(弁部)、 42:増圧弁(弁部)、
431:アキュムレータ(高圧源)、 44:レギュレータ、
445:制御ピストン、 4D:第1パイロット室、 5:アクチュエータ、
541、542、543、544:ホイールシリンダ、
5FR、5FL、5RR、5RL:車輪、 BF:液圧制動力発生装置、
6:ブレーキECU、 61:制御部、 62:診断部、
63:判定部、 71:ストロークセンサ、 73、74、75:圧力センサ、
76:車輪速度センサ、 A:車両用制動装置、 C:異常診断装置、
R:反力室、 Y:駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6