特許第6374380号(P6374380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374380
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ソマトスタチン受容体作動薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20180806BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 5/02 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61K38/12
   A61K47/14
   A61K47/24
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61P3/10
   A61P5/02
   A61P1/04
   A61P29/00
   A61P17/06
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P13/12
   A61P35/00
【請求項の数】18
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-513209(P2015-513209)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-520762(P2015-520762A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】EP2013060739
(87)【国際公開番号】WO2013174978
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2012/059917
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/730,613
(32)【優先日】2012年11月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505345749
【氏名又は名称】カムルス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ニスター、カタリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】チベルグ、フレドリック
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−529982(JP,A)
【文献】 特表2004−505095(JP,A)
【文献】 特表2009−526002(JP,A)
【文献】 特表2008−526933(JP,A)
【文献】 特表2008−542437(JP,A)
【文献】 特表2008−526932(JP,A)
【文献】 特表2011−527309(JP,A)
【文献】 特表2008−526934(JP,A)
【文献】 特表2008−501676(JP,A)
【文献】 特表2015−500253(JP,A)
【文献】 特表2015−505833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00
A61P 3/00
A61P 5/00
A61P 13/00
A61P 17/00
A61P 19/00
A61P 29/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)0.1〜35重量%のエタノールと、
d)1〜20重量%のプロピレングリコールと、
e)5〜150mg/mL(遊離塩基として算出)の、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、の低粘度混合物を含む予備製剤であって、
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲であり、
予備製剤の粘度は、20℃において1〜1000mPa・sであり、
過剰な水性流体に接触すると、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、または形成することができる、予備製剤。
【請求項2】
前記ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、パシレオチドもしくはその塩を含むかまたはパシレオチドもしくはその塩からなり、好ましくは、前記パシレオチド塩は、パシレオチド塩化物、パシレオチド酢酸塩,パシレオチドパモ酸塩、およびパシレオチド酒石酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の予備製剤。
【請求項3】
前記ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、パシレオチドパモ酸塩からなる、請求項1に記載の予備製剤。
【請求項4】
前記ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、パシレオチドとオクトレオチドからなる請求項1または2に記載の予備製剤。
【請求項5】
10〜100mg/mLの範囲のペプチドソマトスタチン受容体作動薬の投与量を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項6】
成分a)は、ジオレイン酸グリセロール(GDO)を含むかまたはジオレイン酸グリセロール(GDO)からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項7】
成分b)は、大豆PC、DOPC、もしくは少なくとも95%のPC頭基と、少なくとも95%の0〜3個の不飽和を有するC16〜C20アシル鎖とを有するPCを含むかまたは、大豆PC、DOPC、もしくは少なくとも95%のPC頭基と、少なくとも95%の0〜3個の不飽和を有するC16〜C20アシル鎖とを有するPCからなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項8】
30〜43重量%のレベルで成分a)、
30〜45重量%のレベルで成分b)、および
0.1〜12重量%のレベルで成分c)
の少なくとも一つを含む、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項9】
成分d)は、5〜20重量%、好ましくは8〜15重量%のレベルで存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項10】
成分c)およびd)は、合せて、10〜30重量%、好ましくは12〜25重量%の範囲の総レベルで存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項11】
成分a:bの比率は、45:55〜54:46の範囲である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項12】
成分c:dの比率は、90:10〜25:75の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項13】
成分c:dの比率は、30:70〜50:50の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項14】
成分c)の重量は、成分d)の重量と等しい請求項1〜11のいずれか一項に記載の予備製剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の予備製剤を含む、薬剤充填済み投与デバイスであって、
前記デバイスは、注射器もしくは注射筒、無針インジェクター、複数回使用インジェクターもしくは単回使用インジェクター、カートリッジまたはバイアルである、デバイス。
【請求項16】
10〜100mgの単回用量のペプチドソマトスタチン受容体作動薬、好ましくはパシレオチドパモ酸塩を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
予定された投与の間に1日当たり0.2〜4mgのペプチドソマトスタチン受容体作動薬、好ましくはパシレオチドパモ酸塩を含む、請求項15〜16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
クッシング病、先端巨大症、I型もしくはII型糖尿病、および/またはその合併症、過敏性腸症候群、炎症性疾患、炎症性腸疾患、乾癬もしくは関節リウマチ、多発性嚢胞腎疾患、ダンピング症候群、水様下痢症候群、AIDS関連下痢、化学療法誘導性下痢、急性もしくは慢性膵炎および消化管ホルモン分泌性腫瘍、リンパ球悪性腫瘍、または消化器出血の治療における使用のための請求項1〜14のいずれか一つに記載の予備製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド活性物質の制御放出のための組成物をその場で生成するための製剤前駆体(予備製剤)、およびそのような製剤を用いた治療方法に関する。特に、本発明は、体液等の水性流体に曝露されると相転移を起こし、それによって制御放出組成物を形成する、両親媒性成分と、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチド活性物質との、非経口用途のための高装填量予備製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、栄養素、ビタミン等を含む多くの生物活性物質は、「有効(機能)域」を有する。すなわち、これらの物質が何らかの生物学的効果を提供することが観察され得る濃度の範囲が存在する。適切な身体部分における濃度(例えば、局所的に、または血清濃度によって表される)が特定のレベルを下回ると、その物質に起因する有益な効果を得ることはできない。同様に、概して上限濃度レベルが存在し、それを超えると濃度を上昇させることによるさらなる利益は得られない。場合によっては、特定のレベルを超えて濃度を上昇させると、望ましくないまたは危険な影響さえもたらされる。
【0003】
いくつかの生物活性物質は、長い生物学的半減期および/または広い有効域を有するため、時々投与すればかなりの期間(例えば、6時間〜数日間)にわたって機能的な生物学的濃度を維持することができる。他の場合において、クリアランス速度が速く、かつ/または有効域が狭いため、生物学的濃度をこの有効域の範囲内に維持するためには、少量の定期的(または、さらには継続的)な投与が必要である。自己投与は困難である場合があり、したがって、不都合および/またはコンプライアンスの不良を引き起こし得るため、これは、経口以外の投与経路(例えば、非経口投与)が望ましいかまたは必要な場合に、特に困難であり得る。そのような場合、単回投与により、活性が必要とされる期間全体にわたって治療レベルの活性物質を供給することが有利であろう。
【0004】
種々の病態を治療するための、ならびに対象の総体的健康および健康状態の予防および改善におけるペプチド(タンパク質を含む)の使用には、非常に大きな潜在性がある。しかしながら、生体液中でのペプチドおよびタンパク質の急速な分解によって引き起こされる生物学的利用能の低さのために、投与されるペプチド物質の性能は概して制限される。このため、投与しなければならない用量が増加し、多くの場合、効果的な投与経路が限定される。これらの影響は、生体膜を横切るペプチドおよびタンパク質の透過性がしばしば制限されることによってさらに増大する。
【0005】
哺乳動物の体に(例えば、経口的に、筋肉内に等)投与されるペプチドおよびタンパク質は、体中に存在する種々のタンパク質分解酵素およびシステムによる分解に供される。周知のぺプチダーゼ活性部位は、胃(例えば、ペプシン)および腸管(例えば、トリプシン、キモトリプシン等)を含むが、他のぺプチダーゼ(例えば、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等)も体中に見られる。経口投与されると、胃および腸管における分解のために、腸管表面の粘膜を介して潜在的に吸収され得るペプチドまたはタンパク質の量が減少し、それによってそれらの生物学的利用能が低下する。同様に、哺乳動物の血流中の遊離ペプチドおよびタンパク質も、(例えば、血漿プロテアーゼ等による)酵素分解に供される。
【0006】
治療を受けている患者の中には、典型的には、相当な期間にわたって治療用量の維持を必要とする者、および/または現在進行中の治療を何ヶ月間または何年間も必要とする者がある。したがって、より長期間にわたってより多くの用量の装填および制御放出を可能にするデポーシステムは、従来の送達システムに勝る非常に大きな利点を提供するであろう。
【0007】
ペプチドは、生分解性ポリマーのミクロスフェアからなるAlkermes Medisorb(登録商標)等のシステムによって送達されてもよい。一般的に、そのようなポリマーミクロスフェア製剤は、典型的には20ゲージかまたはそれよりも太い、大きな針を用いて投与されなければならない。これは、典型的にはポリマー懸濁液である用いられるポリマー投薬システムの性質の結果として必要である。
【0008】
明らかに、細い針を通して容易に投与することができ、したがって、手技の間の患者の不快感を軽減する、均質溶液、微粒子の分散液、またはL相等の低粘度システムを提供することが有利である。この投与の容易さは、患者が自己投与を行う計画であり、既に1日数回の自己投与を行っている場合に、特に重要である。数日間の持続期間を有するが、投与するには十分に複雑であるため医療従事者による治療を必要とする持続性製剤を提供することは、全ての患者にとって1日2回または毎日の自己投与に勝る利点であるわけではなく、より多くの費用がかかる可能性が高い。投与のための医療従事者への訪問を正当化するほど十分に長い持続期間を付与する製剤および/または自己投与できる調製物を提供すること、ならびに、実際の投与前に医療従事者または患者の準備時間を短縮することは、全て重要な問題である。
【0009】
徐放製剤の分解に典型的に用いられるポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸グリコール酸コポリマーもまた、少なくとも一部の患者において何らかの刺激の原因である。特に、これらのポリマーは、典型的に、投与時に注射部位を刺激する、乳酸およびグリコール酸等の特定の割合の酸性不純物を含有する。次いでポリマーが分解すると、乳酸およびグリコール酸が分解産物となり、さらなる刺激が引き起こされる。太い針による投与と刺激性内容物との複合効果の結果として、投与部位の不快感および結合性瘢痕組織の形成が望ましい範囲を超えることになる。
【0010】
薬物送達の観点から、ポリマーデポー組成物は、一般的に、比較的少量の薬物装填量しか受け入れられず、「バースト/遅延」放出プロファイルを有するといった欠点がある。ポリマーマトリックスの性質は、特に溶液またはプレポリマーとして適用される場合、組成物が最初に投与された時に薬物放出の初期バーストを引き起こす。この後、放出量の少ない期間が続く一方でマトリックスの分解が始まり、その後、最終的には所望の持続的プロファイルまで放出速度が上昇する。このバースト/遅延放出プロファイルは、活性物質の生体内濃度を、投与直後には有効域を超えて一気に上昇させ、次いで、遅延期間中は有効域の下限を通って低下させ、その後、一定期間、持続的な機能的濃度に到達させる可能性がある。明らかに、機能的および毒物学的観点から、このバースト/遅延放出プロファイルは、望ましいものではなく、危険であり得る。これはまた、「ピーク」時点での有害作用の危険性のために、提供され得る平衡濃度も制限し得る。遅延期間が存在するために、デポーから提供される活性物質の濃度が機能的濃度を下回っている間は、治療用量を維持するために、デポー治療の開始期間中に反復注射を伴う補助的な投薬をさらに必要とする場合がある。具体的には、特定のポリペプチドの場合、低血糖等の副作用を回避するために、組成物の投与時の早急な「バースト」の影響を最小限に抑えることが有利であろう。
【0011】
特に、非常に「バーストが少ない」安定した生体内濃度の恩恵を受けるペプチドホルモンのクラスの1つは、パシレオチド(SOM230)等のソマトスタチン類似体である。生体内試験により、これらのペプチドは、定常状態での血漿濃度で維持された場合に特に有益であり、調節ホルモンとして、特にパシレオチドが、安定した血漿濃度の恩恵を受ける可能性が高いことが示されている。このことは、デポー組成物が、投与時の濃度の「急上昇」および/または毎日の反復投薬を回避するために有利であることを示唆するだけではなく、さらに、そのようなデポー組成物が、治療期間中に可能な限り平坦な放出プロファイルを有するべきであることも示唆している。
【0012】
制御放出製剤は、典型的には、例えば、インプラントまたは注射可能なビーズの形態の生体適合性ポリマーから作製される。パシレオチド、例えば、(パシレオチド LAR)の現在の主力製剤は、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)の微粒子を含む。ポリマーミクロスフェア製剤は、典型的には20ゲージかまたはそれよりも太い、大きな針を用いて投与されなければならない。これは、典型的にはポリマー懸濁液である用いられるポリマー投薬システムの性質の結果として必要である。細い針を通して容易に投与することができ、したがって、手技の間の患者の不快感を軽減する、均質溶液、微粒子の分散液、またはL相等の低粘度システムを提供することが有利である。投与の容易さは、患者が自己投与を行うときに特に重要であるが、同時に、医療従事者が投与を行う際の彼らに対する負担も軽減する。
【0013】
特定の既存のデポーシステムを用いたPLGAマイクロビーズおよび懸濁液の製造も、さらに相当に困難である。具体的には、ビーズは粒子状物質であるため、一般的にそれらを濾過滅菌することができず、さらに、PLGAコポリマーは高温で溶融するため、それらを滅菌のために熱処理することができない。その結果、複雑な製造工程を無菌的に行わなければならない。
【0014】
生体分解性ポリマーミクロスフェアに伴うさらなる問題点は、注射前の複雑な再構成および限定された保存安定性を含み、どちらも、送達システムおよび/または活性物質の凝集および分解に起因する。
【0015】
特定のペプチドに関して、脂質ベースの徐放組成物が記載されている。例えば、WO2006/131730(特許文献1)は、GLP−1およびその類似体のための脂質デポーシステムを開示している。これは、非常に効果的な製剤であるが、製剤に含まれ得る活性物質の濃度が、その溶解性によって制限される。明らかに、より高い濃度の活性物質は、より長い持続期間のデポー製品、より高い全身濃度を維持する製品、およびより少ない注射体積を有する製品の可能性とすることが出来、適切な状況下ではこれらの要因の全てが著しい利点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際出願第2006/131730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、より高い濃度の活性物質を脂質ベースのデポー製剤に含ませることができる方法を確立すること、ならびに、装填、安定性、製造、および/または制御放出の観点から特に効果的な活性物質と送達システムとの組み合わせを特定することは、相当に価値のあることであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、少なくとも1つの中性ジアシルグリセロール、少なくとも1つのホスファチジルコリン、少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒、少なくとも1つの極性溶媒、パシレオチド(SOM230)を含む少なくとも1つのペプチド活性物質、および任意的に、少なくとも1つの抗酸化剤を、分子溶液またはL(逆ミセル)相等の低粘度相中に含む予備製剤を提供することにより、既知のデポー製剤の欠陥の多くに対応し、かつパシレオチド活性物質の制御放出を提供するために適用され得る予備製剤を生成できることを証明した。特定の成分を、慎重に選択した比率で、特に、パシレオチド、アルコール、および極性溶媒の混合物とともに用いることにより、以前の脂質制御放出組成物の性能さえも越える特性の組み合わせを有し、かつパシレオチドLAR等の既知の組成物に勝る利点を提供するデポー製剤を生成することができる。
【0019】
特に、予備製剤は、非常に有利な放出プロファイルを示し、製造し易く、滅菌濾過され得、低粘度を有し(典型的には、細い針を通した、容易かつ痛みの少ない投与を可能にする)、高レベルの生物活性物質を組み込むことを可能にし(したがって、使用される組成物および/または活性物質の量を潜在的により少なくすることができる)、浅い注射を必要とし、かつ/または生体内で「非バースト」放出プロファイルを有する所望の非ラメラデポー組成物を形成する。また組成物は、非毒性、生体許容性、および生体適合性の材料からも形成され、筋肉内または皮下注射によって投与することができ、自己投与に好適である。予備製剤は、さらに、注射時に非常に低いレベルの刺激を有し得、好ましい場合、注射部位における刺激(一過性の刺激を含む)を引き起こさない。
【0020】
本発明の特定の製剤は、投与後に非ラメラ液晶相を形成する。生物活性物質の送達における非ラメラ相構造(非ラメラ液晶相等)の使用は、現在、比較的十分に確立されている。最も効果的な脂質デポーシステムは、WO2005/117830に記載されており、非常に好ましい脂質デポーがその文献に記載されている。しかしながら、いくつかの点において改善された性能を有するデポー製剤を実現するための余地が残っており、具体的には、以前の研究に開示された成分および割合の範囲を慎重に選択し、最適化することにより、驚くべき改善を達成することができる。
【0021】
PLGAミクロスフェア等のポリマー製剤に勝る本発明の組成物の利点は、製造(滅菌を含む)、取り扱い、および使用特性の容易性と併せて、活性物質の初期放出が少ないこと(非バーストプロファイル)を含む。これは、1ヶ月の投薬期間の最初の24時間における時間に対する血漿濃度の曲線下面積が、曲線全体の曲線下面積(0時から無限大、または0時から最後の試料採取時点まで測定されるかまたは推定される)の20%未満、より好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満であるように定義されてもよい。さらに、これは、予備製剤の注入後、生体内での活性物質の最大血漿濃度(Cmax)が、治療期間中の平均血漿濃度(Cave)の10倍以下、好ましくは8倍以下、最も好ましくは5倍以下(すなわち、Cmax/Cave≦10、好ましくは≦8、より好ましくは≦5)であるように定義されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】溶解性スクリーニングのための脂質/SOM230(パシレオチド)試料の調製について説明するフロー図である。
図2】製剤組成の関数として、23G5/8”インチ(16mm)針を有する長さ1mLのガラス製ルアーロック注射器(シリンジ)を使用して、20Nの一定の力で測定した注入性(秒/mL)。製剤番号は、表3の試料ID(最後の二桁)を意味する。データポイントは、反復測定の平均を表す。
図3】製剤粘度の関数として、指定された注射器および針の構成を使用して、20Nの一定の力で測定した注入性(秒/mL)
図4】3つの異なるSOM230(パシレオチド)塩の形態(パモ酸塩(Pm)、酢酸塩(Ac)、および塩酸塩(Cl))を含み、それらのそれぞれの組成(50/50で一定のSPC/GDO荷重配分比)によって区別した脂質/パシレオチド製剤を60℃で2週間保存した後の安定性データの比較。開始時のパシレオチド遊離塩基濃度は、全ての例において約30mg/mLであった。
図5】ラットにおける皮下注射後のSOM230(パシレオチドパモ酸塩)の平均血漿濃度エラーバーは、標準偏差を表す(n=6)。PK−12−437において得られたデータ
図6】ラットにおける皮下注射後のSOM230(パシレオチドパモ酸塩)の平均血漿濃度エラーバーは、標準偏差を表す(n=6)。PK−12−438において得られたデータ
図7】試験PK−12−438における曝露に関する用量直線性(AUC)エラーバーは、標準偏差を表す。
図8】試験PK−12−438におけるCmaxに関する用量直線性エラーバーは、標準偏差を表す。
図9】ラットにおける皮下注射後のSOM230(パシレオチドパモ酸塩)の平均血漿濃度エラーバーは、標準偏差を表す(n=6)。PK−12−451において得られたデータ
図10】5℃で保存した後のSOM230の純度。図の凡例は、図19に示されるそれぞれのバッチ番号を意味する。
図11】25℃/相対湿度60%で保存した後のSOM230の純度図の凡例は、図19に示されるそれぞれのバッチ番号を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、上述のニーズのうちの1つ以上に対応するためのデポー前駆体製剤(本明細書において略して予備製剤と称される)として使用することができる、脂質賦形剤、有機アルコール溶媒、極性溶媒、パシレオチドを含むペプチド活性物質と、特定の任意な成分との適切な組み合わせを含む薬学的製剤を提供する。本発明者は、これらの成分を最適化することにより、非常に有利な特性の組み合わせを有する、パシレオチドのデポー組成物および対応する前駆体製剤を生成できることを証明した。
【0024】
したがって、第1の態様において、本発明は、
a.20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b.20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c.5〜15重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
d.1〜20重量%の極性溶媒と、
e.5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬(遊離塩基として算出)と、
f.任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、の低粘度混合物であって、
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲である、前記低粘度混合物を含む、予備製剤であって、過剰な水性流体に接触すると、少なくとも1つの液晶相構造を形成するか、または形成することができる、前記予備製剤を提供する。
【0025】
そのような組成物は、好ましくは、ジオレイン酸グリセロール(GDO)、大豆PCおよび/もしくは高純度PC(少なくとも95%のPC頭部基と、少なくとも95%の0〜3個の不飽和を有するC16〜C20アシル基とを有するPC等)、エタノール、水/プロピレングリコール、ならびに/またはEDTAを、それぞれ、成分a)、b)、c)、d)、およびf)として含む。成分e)は、好ましくはパシレオチドまたはその塩を含むかまたはそれからなり、前記塩は、例えば、塩化物、酢酸塩、パモ酸塩、および酒石酸塩から選択されるもの等の生体許容性の塩であり、最も好ましくは、本明細書に記載されるパモ酸塩である。
【0026】
第2の実施形態において、本発明はそれに応じて、対象(好ましくは哺乳動物)へのパシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の投与に好適な予備製剤の形成のためのプロセスであって、
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜215重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
d)1〜20重量%の極性溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬(遊離塩基として算出)と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、の低粘度混合物であって、
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲である、前記低粘度混合物を形成することと、前記低粘度混合物に、または前記低粘度混合物を形成する前に、成分a)、b)、c)、d)、および任意にf)のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬(好ましくはソマトスタチン類似体)を溶解または分散させることと、を含む、前記プロセスを提供する。そのような予備製剤は、典型的には、本明細書に記載される製剤である。
【0027】
予備製剤は、特に、非常に平坦な放出プロファイルおよび/または投与時に最小限の「バースト」を必要とするかまたはその恩恵を受けるペプチド活性物質の制御放出および持続放出に非常に有用である。したがって、対応する実施形態において、本発明は、前記ペプチドソマトスタチン受容体作動薬の持続性投与に使用するための予備製剤の製造における、
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜20重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
d)1〜20重量%の極性溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬(遊離塩基として算出)と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、の低粘度混合物であって、
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲である、前記低粘度混合物の使用を提供する。そのような低粘度混合物は、好ましくは、本明細書に記載される混合物である。
【0028】
本発明の製剤中のペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、好ましくは薬学的に活性である。すなわち、それらは、好適な対象(典型的には、そのような効果を必要とする対象)に投与されると、治療効果、緩和効果、および/または予防効果を提供する。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、ヒトまたは非ヒト哺乳類対象を治療するための方法であって、本明細書に記載される予備製剤を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0029】
そのような方法は、クッシング病、先端巨大症、I型またはII型糖尿病、特にそれらの合併症、例えば、血管障害、糖尿病増殖網膜症、糖尿病黄斑浮腫、腎症、神経障害および暁現象、ならびにインスリンまたはグルカゴン放出に関連する他の代謝障害、例えば、肥満、例えば、病的肥満または視床下部性もしくは高インスリン性肥満、腸管皮膚瘻および膵臓皮膚瘻、過敏性腸症候群、炎症性疾患、例えば、グレーブス病、炎症性腸疾患、乾癬または関節リウマチ、多発性嚢胞腎疾患、ダンピング症候群、水様下痢症候群、AIDS関連下痢、化学療法誘導性下痢、急性もしくは慢性膵炎および消化管ホルモン分泌性腫瘍(例えば、GEP腫瘍、例えばビポーマ、グルカゴノーマ、インシュリノーマ、カルシノイド等)、リンパ球悪性腫瘍、例えば、リンパ腫または白血病、肝細胞癌腫、ならびに消化器出血、例えば、食道静脈瘤出血から選択される少なくとも1つの状態に対処する(例えば、症状の治癒、治療、改善、予防、緩和、および/または回復)ために、治療を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳類対象の治療のためであってもよい。そのような方法において使用するための本明細書に記載される予備製剤は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0030】
それに対応して、さらなる態様において、本発明は、クッシング病、先端巨大症、I型またはII型糖尿病、特にそれらの合併症、例えば、血管障害、糖尿病増殖網膜症、糖尿病黄斑浮腫、腎症、神経障害および暁現象、ならびにインスリンまたはグルカゴン放出に関連する他の代謝障害、例えば、肥満、例えば、病的肥満または視床下部性もしくは高インスリン性肥満、腸管皮膚瘻および膵臓皮膚瘻、過敏性腸症候群、炎症性疾患、例えば、グレーブス病、炎症性腸疾患、乾癬または関節リウマチ、多発性嚢胞腎疾患、ダンピング症候群、水様下痢症候群、AIDS関連下痢、化学療法誘導性下痢、急性もしくは慢性膵炎および消化管ホルモン分泌性腫瘍(例えば、GEP腫瘍、例えばビポーマ、グルカゴノーマ、インシュリノーマ、カルシノイド等)、リンパ球悪性腫瘍、例えば、リンパ腫または白血病、肝細胞癌腫、ならびに消化器出血、例えば、食道静脈瘤出血から選択される少なくとも1つを治療するためのデポーの生体内形成に使用するための低粘度予備製剤薬物の製造における、
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜15重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
d)1〜20重量%の極性溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬(遊離塩基として算出)と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、の低粘度混合物であって、
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲である、前記低粘度混合物の使用を提供する。
【0031】
本発明の全ての適切な態様において、好ましい状態は、クッシング病および先端巨大症である。
【0032】
多くの他の制御放出組成物に勝る本発明の製剤の利点の1つは、それらが最終形態で保存されるほど安定しており、したがって、投与時に調製がほとんどまたは全く必要ないということである。これによって、予備製剤をすぐに投与することができ、また、便利な、すぐに投与できる形態で供給することができる。したがって、さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載される予備製剤を含む薬剤充填済み投与デバイスを提供する。そのようなデバイスは、一般的に、例えば、0.2〜3mg/日の範囲のソマトスタチン受容体作動薬パシレオチドの投与量を送達する組成物の単回投与または複数回投与のいずれかを提供する。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、本発明による前記投与デバイスを含むキットを提供する。
【0034】
キットは、前記組成物の皮下投与または筋肉内投与のための指示を任意に含むことができる。本明細書に記載される全ての組成物は、そのようなキットにおける使用に好適であり、したがってその中に含まれ得る。
【0035】
本発明のキットは、針、スワブ等のさらなる投与構成要素を任意に含むことができ、また、投与のための指示を任意に含む。
【0036】
[発明を実施するための形態]
本発明の製剤は、投与後に非ラメラ液晶相を形成する。生物活性物質の送達における非ラメラ相構造(液晶相等)の使用は、現在、比較的十分に確立されている。一般的な使用のための最も効果的な脂質デポーシステムは、WO2005/117830に記載され、本発明において使用するのに好適な脂質マトリックスは、その文献に一般論として記載され、その完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような製剤の最も好ましい相構造の記載については、WO2005/117830における考察、特にその29ページに注目されたい。
【0037】
別途指定のない限り、全ての%は、本明細書全体を通して重量によって規定される。さらに、文脈が許す場合、示される重量%は、本明細書に示される成分の全てを含む予備製剤全体の%である。パシレオチドの重量パーセントは、酸またはその塩が用いられるかどうかに関係なく、遊離酸の重量に基づいて算出される。予備製剤は、任意に、本明細書に示される成分(必要に応じて、本明細書で後に示される、および添付の特許請求の範囲内のさらなる任意な成分を含む)のみから本質的になってもよく、一態様において、完全にそのような成分からなる。指定された成分が、製剤の本質的な性質を提供する場合、例えば、指定された成分が、製剤の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%を構成する場合等に、その製剤は、本明細書に記載される特定の成分から「本質的になる」と示される。
【0038】
本明細書に記載される脂質ベースのシステムは、脂質成分a)およびb)に加えて、有機モノアルコール溶媒(c)、極性溶媒(d)、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬(e)、および任意な抗酸化剤(f)成分を含む。
【0039】
好ましくは、本発明による予備製剤は、分子溶液であるか、またはL相構造(投与前)を有する。好ましくは、予備製剤は、投与後に非ラメラ(例えば、液晶)相を形成する。そのような相変化は、典型的には、本明細書に示されるように、生理環境からの水性流体の吸収によってもたらされる。
【0040】
今回、本発明者は、驚くべきことに、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬、およびアルコールを含む少なくとも2つの溶媒、および少なくとも1つの極性溶媒とともに、脂質成分の種類、絶対量、および比率を適切に選択することにより、本発明の予備製剤から形成されるデポー組成物の放出特性を非常に有利にすることができることを証明した。特に、アルコールと極性溶媒の混合物(特に、本明細書に記載される1:1に近い重量比(例えば、10:1〜1:3、好ましくは5:1〜1:2、最も好ましくは2:1〜2:3))を使用することによって、アルコール溶媒が放出プロファイルに与える利点を維持しながら、投与時の快適性および/または製剤の粘度等の他の特性を改善することができる。代替として、またはこれに加えて、ソマトスタチン受容体作動薬の放出プロファイルを著しく水平にすることができ、生体内の最大血漿濃度を、投薬期間中の平均濃度またはさらには最低濃度のわずか数倍にする。そのような利点は、他の脂質デポー組成物との比較においても適用され、それら自体が、制御放出において以前は得ることのできなかった水準を提供する。
【0041】
特に、ソマトスタチン類似体(例えば、パシレオチド)等の特定のペプチド活性物質の場合、例えば、紅潮または重度の吐き気等の副作用を回避する一方で、所望の放出期間にわたって治療有効レベルを提供するかまたは得るために、血漿中の薬物のピーク濃度(Cmax)を、対象が耐えられるレベル以下に制御することが重要である。一般的に、次の用量が投与される前の放出期間中の平均濃度Caveは、治療的な範囲内に属する。経時的に所望の治療を達成するためには、最大濃度(Cmax)および最小濃度(Cmin)の制御も重要である。一実施形態において、初期バースト(例えば、投与後の最初の12時間の間)は、放出プロファイルのCmaxではない。
【0042】
初期バーストもCmaxであるかどうかにかかわらず、好ましくは、Cmax/Caveの比は、50未満、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらにより好ましくは5以下である。さらに、Cmax/Cminの比は、50以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらにより好ましくは5以下であることが好ましい。Cmaxは、当該技術分野で既知のように、次の用量が投与される前の放出期間中に観察されるピーク血漿濃度または最大血漿濃度として定義され、Caveは、その放出期間中の平均血漿濃度として定義される。それに対応して、Cminは、その期間中の最低濃度である。Caveは、選択された期間、一般的には次の用量の投与前の放出期間全体にわたる曲線下面積(AUC)として血漿中に存在する薬物を算出し、その期間で除すことによって算出することができる。
【0043】
成分a)−ジアシルグリセロール
成分a)の好ましい範囲は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは20〜50%、例えば、33〜60%(例えば、43〜60%、30〜43%、もしくは30〜40%)、特に、38〜43%、約32%(例えば、±2)および/または約40%(例えば、±2)である。成分b)の好ましい範囲は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%(例えば、30〜45%)、より好ましくは33〜55%(例えば、35〜55%)、特に38〜43%である。
【0044】
a:bの比率は、典型的には40:60〜70:30、好ましくは45:55〜55:45、より好ましくは40:60〜54:46、または42:58〜48:52である。約50:50(例えば、±2)および約45:55(例えば、±3 a:b)の比率が、非常に効果的である。
【0045】
本明細書に示される成分「a」は、好ましくは、少なくとも1つのジアシルグリセロール(DAG)であり、したがって2つの非極性の「尾」基を有する。2つの非極性基は、同じかまたは異なる数の炭素原子を有してもよく、各々、独立して飽和または不飽和であってもよい。非極性基の例として、典型的には長鎖カルボン酸のエステルとして存在するC−C32アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。これらは、大抵、炭素原子の数および炭素鎖中の不飽和の数を参照することにより記載される。したがって、CX:Zは、X個の炭素原子およびZ個の不飽和を有する炭化水素鎖を示す。例として、特に、ラウロイル基(C12:0)、ミリストイル基(C14:0)、パルミトイル基(C16:0)、フィタノイル基(C16:0)、パルミトレオイル基(C16:1)、ステアロイル基(C18:0)、オレオイル基(C18:1)、エライドイル基(C18:1)、リノレオイル基(C18:2),リノレノイル基(C18:3)、アラキドノイル基(C20:4)、ベヘノイル基(C22:0)、およびリグノセロイル基(C24:9)が挙げられる。したがって、典型的な非極性鎖は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、もしくはリグノセリン酸、または対応するアルコールを含む、天然のエステル脂質の脂肪酸に基づいている。好ましい非極性鎖は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸であり、特にオレイン酸である。
【0046】
任意の数のジアシル脂質の混合物が、成分a)として用いられてもよい。好ましくは、この成分は、C18脂質(例えば、1つ以上(すなわち、1つまたは2つ)のC18:0、C18:1、C18:2、またはC18:3の非極性基を有するDAG)、例えば、ジオレイン酸グリセロール(GDO)および/またはジリノール酸グリセロール(GDL)等の少なくとも一部含む。非常に好ましい例は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%を含み、さらには実質的に100%のGDOを含む、DAGである。
【0047】
GDOおよび他のジアシルグリセロールは、天然の源に由来する生成物であるため、一般的に、他の鎖長等を有する特定の割合の「汚染」脂質が存在する。したがって、一態様において、本明細書において使用されるGDOは、付随する不純物を含む任意の市販グレードのGDO(すなわち、市販純度のGDO)を示すために用いられる。これらの不純物は、精製によって分離および除去され得るが、グレードが一定であるならば、これが必要であることは稀である。しかしながら、必要に応じて、「GDO」は、本質的に、化学的に純粋なGDO、例えば、少なくとも80%純粋、好ましくは少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも90%純粋なGDOであってもよい。
【0048】
成分b)−ホスファチジルコリン
本発明の好ましい脂質マトリックスにおける成分「b」は、少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)である。成分a)と同様に、この成分は、極性頭基と、少なくとも1つの非極性尾基とを含む。成分a)と成分b)の違いは、主に極性基にある。したがって、非極性部は、好適には、成分aについて上で考察した脂肪酸または対応するアルコールに由来してもよい。成分a)と同様に、PCは、2つの非極性基を含有する。この場合も同様に、C18基が好ましく、他の好適な非極性基、特にC16基と組み合わせてもよい。
【0049】
ホスファチジルコリン部は、いずれのジアシルグリセロール部よりもさらに好適に、天然の源に由来し得る。リン脂質の好適な源は、卵、心臓(例えば、ウシ)、脳、肝臓(例えば、ウシ)、および大豆を含む植物源を含む。そのような源は、リン脂質の任意の混合物を含み得る成分bの1つ以上の構成成分を提供してもよい。これらのまたは他の源からのいずれの単一PCまたはPCの混合物が用いられてもよいが、大豆PCまたは卵PCを含む混合物が非常に好適である。PC成分は、好ましくは少なくとも50%の大豆PCまたは卵PC、より好ましくは少なくとも75%の大豆PCまたは卵PC、最も好ましくは本質的に純粋な大豆PCまたは卵PCを含有する。
【0050】
本発明の全ての態様に適用可能な一実施形態において、成分b)は、PCを含む。好ましくは、PCは、大豆に由来する。好ましくは、PCは、18:2脂肪酸を主要な脂肪酸成分として含み、16:0および/または18:1脂肪酸を副次的な脂肪酸成分として含む。これらは、好ましくは、1.5:1〜6:1の比率でPC中に存在する。約60〜65%の18:2、10〜20%の16:0、5〜15%の18:1を有し、残りは主として他の16炭素および18炭素の脂肪酸であるPCが好ましく、それは典型的には大豆PCのPCである。
【0051】
代替であるが等しく好ましく、また本発明の全ての態様に適用可能な実施形態において、PC成分は、合成ジオレオイルPCを含んでもよい。これは、安定性の増加を提供すると考えられるため、長期保存のための安定性を必要とする組成物および/または生体内での長期放出期間を有する組成物に特に好ましい。この実施形態において、PC成分は、好ましくは少なくとも50%の合成ジオレオイルPC、より好ましくは少なくとも75%の合成ジオレオイルPC、最も好ましくは実質的に純粋な合成ジオレオイルPCを含有する。あらゆる残りのPCは、好ましくは、上記のような大豆または卵PCである。
【0052】
一実施形態において、本発明の前駆体製剤は、合成DOPCを少なくとも部分的に含み(すなわち、少なくとも95%のPC頭基および少なくとも90%のオレオイルアシル基を有するPC)、ペプチド純度によってアッセイされる5%未満のペプチド分解として定義される、少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月、最も好ましくは少なくとも24か月、15〜25℃で保存するための安定性を有する。
【0053】
本発明の予備製剤は、ペプチド活性物質の制御放出のために対象に投与されるため、成分が生体適合性であることが重要である。この点において、PCおよびDAGのどちらも、忍容性が良好であり、生体内で分解されて哺乳動物の体内に自然に存在する成分になるため、本発明の予備製剤に用いるのに好ましい脂質マトリックスは非常に有利である。
【0054】
合成PCまたは高度に生成されたPC、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)およびパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ならびに本明細書に記載される他の種々の高純度PCは、成分b)の全てまたは一部として非常に適切である。
【0055】
非常に好ましい実施形態において、成分b)は、以下のような「高純度」PCである:
b)
i.少なくとも95%のホスファチジルコリンを含む極性頭基と、
ii. 各々、独立して、16〜20個の炭素を有する2つのアシル鎖であって、少なくとも1つのアシル鎖は、鎖の中に少なくとも1つの不飽和を有し、2つの炭素鎖にわたって4つ以下の不飽和が存在する、アシル鎖と、を有するリン脂質を含む、少なくとも1つのリン脂質成分。
【0056】
典型的には、これは、少なくとも95%のPC頭基と、少なくとも95%の0〜3個の不飽和を有するC16〜C20アシル鎖とを有するPCであり得る。
【0057】
合成ジオレオイルPCは、最も好ましくは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンであり、他の合成PC成分は、DDPC(1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DEPC(1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DLOPC(1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DLPC(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DOPC(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DPPC(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);DSPC(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);MPPC(1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);MSPC(1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);PMPC(1−パルミトイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);PSPC(1−パルミトイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3-ホスホコリン);SMPC(1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3-ホスホコリン);SOPC(1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン);およびSPPC(1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0058】
EDTA等の保存剤が存在しない等のある状況において、合成PCまたは高度に生成されたPC(例えば、DOPC)の使用は、製剤中のソマトスタチン受容体作動薬により大きな安定性を提供し得る。したがって、一実施形態において、成分b)は、合成PCまたは高度に生成された(例えば、純度>90%)PC(例えば、DOPC)を含み得る(例えば、少なくとも75%を含み得る)。これは、特に、EDTA等のキレート剤が存在しない場合であり得る。代替の実施形態において、成分b)は、大豆PCまたは卵PC等の天然由来のPCを含み得る(例えば、少なくとも75%を含み得る)。これは、特に、前駆体製剤に少なくとも1つの安定化成分(抗酸化剤、キレート剤等)が含まれている場合であろう。
【0059】
成分a)とb)の特に好ましい組み合わせは、GDOとPC、特に、GDOと大豆PCおよび/または「高純度」PCである。組み合わせに好適な各成分の適切な量は、任意の組み合わせにおける個々の成分について本明細書に示される量である。文脈が許す場合、これは本明細書に示される成分のいずれの組み合わせにも適用される。
【0060】
成分a:bの比率は、40:60〜54:46の範囲である。好ましくは、a:bの比率は、45:55〜54:46の範囲であり、より好ましくは47:53〜53:47である。最も好ましくは、a:bの比率は、約50:50である。
【0061】
本発明の全ての態様に適用可能な一実施形態において、a:bの比率が40:60〜49:51の範囲であることが好ましい。代替の実施形態において、比率は、42:58〜52:48の範囲であってもよい。
【0062】
成分c)−有機モノアルコール溶媒
本発明の予備製剤の成分c)は、有機モノアルコール溶媒である。予備製剤は、(例えば、生体内)投与後、典型的には過剰な水性流体に接触すると、デポー組成物を形成するため、この溶媒は、患者に認容性があり、かつ水性流体と混合することおよび/または予備製剤を水性流体に分散もしくは溶解させることが可能であることが望ましい。したがって、少なくとも中程度の水溶性を有する溶媒が好ましい。
【0063】
最も好ましくは、成分c)は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールまたはそれらの混合物を含むかまたはそれからなる。最も好ましくは、成分c)は、エタノールを含むかまたはそれからなる。
【0064】
好ましい実施形態において、溶媒は、a)およびb)を含む混合物への比較的少量の添加(即ち、好ましくは15%未満)により、1桁以上の大きな粘度の低下をもたらす。本明細書に記載されるように、10%の有機モノアルコール溶媒の添加により、溶媒を含まない組成物に比べて、または水もしくはグリセロール等の極性溶媒のみを含有するデポーに比べて、2桁以上の粘度の低下をもたらすことができる。
【0065】
予備製剤中の成分c)の量は、いくつかの特徴に多大な影響を及ぼす。特に、粘度および放出の速度(および期間)は、溶媒レベルによって著しく変化する。したがって、溶媒の量は、少なくとも低粘度混合物を提供するのに十分な量であるが、さらに、所望の放出速度を提供するように決定される。これは、後述の実施例を考慮して、日常的な方法によって決定され得る。典型的には、0.1〜35%、特に5〜25%の溶媒のレベルが、好適な放出特性および粘度特性を提供する。これは、好ましくは5〜16%(例えば、6〜14%)であり、約8%(例えば、8±2%)の量が、非常に効果的である。
【0066】
前述の通り、本発明の予備製剤中の成分c)の量は、少なくとも構成要素a)、b)、c)、およびd)、ならびに任意にf)の低粘度混合物(例えば、分子溶液、上記を参照)を提供するのに十分であり、標準的な方法によって、いずれの特定の成分の組み合わせについても容易に決定される。
【0067】
相挙動は、溶液、L相もしくはL相、または液晶相、あるいはcryoTEMの場合はそのような相の分散フラグメントを求めるための、偏光顕微鏡法、X線散乱法およびX線回折法、核磁気共鳴法、ならびに極低温透過電子顕微鏡法(cryo−TEM)と組み合わせた目視観察等の技法によって分析することができる。粘度は、標準的な手段によって直接測定され得る。上述のように、適切な実用粘度は、効果的に注射器で採取できる、そして特に滅菌濾過できる粘度である。これは、本明細書に示されるように容易に評価される。
【0068】
本発明において使用するのに好適な典型的な有機モノアルコール溶媒は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびベンジルアルコールから選択される少なくとも1つの溶媒、特にエタノールを含む。
【0069】
成分a)、b)、およびc)の非常に好ましい組み合わせは、大豆PCおよび/または「高純度PC」、GDO、およびエタノールである。前述の通り、組み合わせに好適な各成分の適切な量は、任意の組み合わせにおける個々の成分について本明細書に示される量である。
【0070】
ハロゲン置換炭化水素は、より低い生体適合性を有する傾向があるため、成分c)は、これらをほとんどまたは全く含有しないことが好ましい。例えば、ハロゲン化有機溶媒の含有量は、0.5%未満、好ましくは0.1%未満であってもよい。
【0071】
本明細書において使用される成分c)は、単一の溶媒であっても、または好適な溶媒の混合物であってもよいが、一般的に低粘度である。本発明の重要な側面の1つは、低粘度の予備製剤を提供することであり、好適な溶媒の主な役割は、この粘度を低下させることであるため、これは重要である。この低下は、より粘度の低い溶媒の効果と、溶媒と脂質組成物との間の分子相互作用の効果との組み合わせである。本発明者の1つの所見は、本明細書に記載される低粘度の酸素含有溶媒は、組成物の脂質部分との非常に有利かつ予想外な分子相互作用を有するため、少量の溶媒の添加によって粘度の非直線的な低下がもたらされるというものである。
【0072】
「低粘度」溶媒成分c)(単一の溶媒または混合物)の粘度は、典型的には、20℃で18mPas以下であるべきである。これは、20℃で、好ましくは15mPas以下であり、より好ましくは10mPas以下であり、最も好ましくは7mPas以下である。
【0073】
成分d)−極性溶媒
本発明の組成物の特定の利点のいくつかは、ジオールまたは水等の極性溶媒と組み合わせたアルコール溶媒の使用が、特定の脂質ベースの制御放出組成物の性能を著しく改善できるという、予想外の発見に基づくものである。具体的には、ジオール(プロピレングリコール等)または水の添加により、放出プロファイルに悪影響を及ぼすことなくアルコールの割合を増加できること、および/または放出プロファイルを改善できること、および/またはソマトスタチン受容体作動薬をより多く装填できることが観察されている。「放出プロファイルに悪影響を及ぼす」とは、Cmax/Caveの比率が増加すること、および/またはCmax/Cminの比率が増加すること(例えば、少なくとも1.2倍の増加)を示すことが意図される。同様に、放出プロファイルの改善とは、Cmax/Caveおよび/またはCmax/Cminの比率が減少すること(例えば、少なくとも1.2倍の減少)を示す。
【0074】
典型的な極性溶媒は、それらの高い極性に対応する比較的高い誘電率を有する。そのため、好適な極性溶媒は、一般的に、25℃で少なくとも28の誘電率を有し、より好ましくは25℃で少なくとも30の誘電率を有する。非常に好適な例として、水(約80)、プロピレングリコール(約32)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP、約32)が挙げられる。
【0075】
以前は、脂質制御放出組成物は実質的に水を含まずに配合されるべきであると提案されていたが、現在ではさらに、高粘度液晶相への転換を回避するために、少量の慎重に制御された水等の極性溶媒が著しい利益を提供できることが証明されている。具体的には、極性溶媒(好ましくは水を含む)の包含により、ソマトスタチン受容体作動薬の初期放出の制御におけるさらなる改善が可能となり、いくつかのペプチドソマトスタチン受容体作動薬のより安定した装填が可能になり、より迅速なデポー形成を提供し、かつ/または、注射時の不快感がさらに軽減される。これらの要因のうちのいずれか1つは、治療薬の送達、患者の健康、および/または患者コンプライアンスに関連して、著しい改善を潜在的に提供する。
【0076】
したがって、本発明の予備製剤は、極性溶媒である成分d)も含有しなければならない。好適な量は、典型的には、予備製剤の1重量%より多く、例えば、1〜30重量%、特に1.2〜20重量%、特に2〜18重量%である。より好ましくは、成分d)は、5〜15重量%、特に6〜12重量%の範囲で存在する。成分d)は、好ましくは、水、プロピレングリコール、またはそれらの混合物である。好ましい一態様において、本発明の予備製剤は、成分c)としてエタノールを含有し、成分d)として水および/またはプロピレングリコールを含有する。
【0077】
一実施形態において、予備製剤は、少なくとも1.5%(例えば、少なくとも4.5%)の水を成分d)の一部として含み(組成物全体の重量%)、残りはプロピレングリコールである。水が少なくとも5%であり、成分d)の残りがPGであることが好ましい。成分d)は、水を含んでもよいかまたはそれからなってもよい。
【0078】
代替の実施形態において、成分d)は、プロピレングリコールを含んでもよいかまたはそれからなってもよい。
【0079】
好ましくは、成分c)およびd)の総レベルは、35重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。例えば、成分c)およびd)の総レベルは、10〜30重量%、好ましくは12〜25重量%、最も好ましくは15〜20重量%の範囲である。
【0080】
成分c)とd)の比率もまた、本発明の組成物における潜在的な利点を有する。具体的には、モノアルコール成分(特に水)と混和できるいくつかの極性溶媒を包含することにより、アルコール含有量によって注射部位で引き起こされ得るわずかな感覚を実質的に排除することができる。したがって、一実施形態において、成分c):d)の比率は、30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜60:40の範囲であってもよい。一実施形態において、アルコール成分c)の重量による量は、極性溶媒d)の量以下である。したがって、そのような実施形態では、30:70〜50:50の範囲のc):d)の比率が適切である。ほぼ等しいA量の成分c)およびd)が、非常に適切である。
【0081】
脂質マトリクッスの態様に非常に好ましい組み合わせは、大豆PCおよび/または少なくとも95%の純度のC16〜C20PC、例えばDOPC等(本明細書に記載される)と、GDO、エタノール、および水/プロピレングリコール、またはそれらの混合物である。溶媒は、例えば、PGを含まないエタノールと水、水を含まないエタノールとPG、または3つ全ての混合物であってもよい。前述の通り、組み合わせに好適な各成分の適切な量は、任意の組み合わせにおける個々の成分について本明細書に示される量である。
【0082】
成分e)−ペプチド活性物質(ソマトスタチン受容体作動薬)
本発明の予備製剤は、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含有する。必要なペプチドソマトスタチン受容体作動薬において使用するのに好適なペプチドは、天然に生じてもよいかもしくは天然のペプチドに由来してもよく、または化学修飾されたペプチドもしくは完全に合成されたペプチド分子であってもよい。本明細書に記載されるものを含むいずれのアミノ酸がペプチドに含まれてもよく、ペプチドは、化学修飾または酵素修飾されてもよい。同様に、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、直線的であってもよいか、または1つ以上の共有結合もしくは非共有結合的な相互作用によって環化されてもよい。パシレオチドは、例えば、6つのペプチド残基の環状部分を含む(以下を参照)。
【0083】
典型的なペプチド活性物質は、500〜100,000amuの範囲の分子量であり、明らかに、タンパク質ソマトスタチン受容体作動薬を含むことができる。一実施形態において、ポリペプチドは、中性のpHおよび/または生理学的なpHで、少なくとも1つのカチオン電荷を持つことができ、また最も好ましくは、pH6.5以上、好ましくはpH7.5以上で、少なくとも1つのアニオン性対イオンを必要とする。この対イオンは、生理学的に許容されるため、ハロゲン化合物であり得るか、または生理学的に許容される酸のイオンであり得る。酢酸対イオン、パモ酸対イオン、酒石酸対イオン、および/または塩化イオンが特に好ましく、したがって、本発明の一実施形態において、ソマトスタチン受容体作動薬はパシレオチドパモ酸塩である。
【0084】
具体的には、本発明は、意外なことに、パシレオチドパモ酸塩を本明細書に記載される脂質賦形剤と配合すると、対応する酢酸塩または塩化物塩よりも驚くほど安定に保存されるということを証明した。酢酸塩は、ソマトスタチン類似体オクトレオチド等の多くの低分子ペプチド活性物質の最も一般的に用いられる形態であるため、これは特に驚くべきことである。さらに、以前の研究において、塩化物塩が、オクトレオチド等の特定の活性物質の製剤に驚くほど効果的であることが示されている。しかしながら、本発明の場合、本発明の製剤における60℃の保存により、パモ酸塩が、酢酸塩およびさらにはパシレオチドの塩化物よりも著しく高い安定性を示した(後述する実施例および図を参照のこと)。したがって、パモ酸塩は、パシレオチドを含むソマトスタチン受容体作動薬の好ましい形態である。
【0085】
本発明のペプチド活性物質において、ペプチドは、遺伝暗号に示される20のαアミノ酸から選択されるアミノ酸のみを含有してもよいか、またはより好ましくは、それらの異性体および他の天然および非天然のアミノ酸(一般的に、α、β、またはγアミノ酸)、ならびにそれらの類似体および誘導体を含有してもよい。
【0086】
アミノ酸誘導体は、ペプチドの末端において特に有用であり、末端のアミノ基またはカルボキシ酸基は、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基(N末端)、エステル基、アミド(amide)基、チオ基、アミド(amido)基、アミノ基(C末端)、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基もしくはトリアルキルアミノ基、アルキル基(本明細書を通して、C−C20アルキル、好ましくは、C〜C18アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、もしくはt−ブチル等)、アリール基(例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル等)、ヘテロアリール基の任意の他の官能基、または好ましくは少なくとも1つのヘテロ原子を含み、好ましくは全部で20個以下の原子、より好ましくは10個以下、最も好ましくは6個以下の原子を有する(任意に水素を除外する)他の官能基によって、置換されてもよいかもしくはそれらと一緒に存在してもよい。
【0087】
本発明において、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、ソマトスタチン類似体であるパシレオチドを含む。ソマトスタチン受容体作動薬はまた、ソマトスタチンの他のペプチド類似体等の他のペプチドを含んでもよく、オクトレオチド、ソマトスタチン14、および/またはソマトスタチン28を含んでもよい。
【0088】
ソマトスタチンは、単一のプレタンパク質の交互の切断によって生成される2つの活性形態を有する:一方は14個のアミノ酸からなり、他方は28個のアミノ酸からなる。ソマトスタチン1−14は、配列Ala−Gly−Cys−Lys−Asn−Phe−Phe−Trp−Lys−Thr−Phe−Thr−Ser−Cysを有する環状ペプチドホルモンであり、主要な結合配列であるPhe−Trp−Lys−ThrでII型 β−ターンを生成するようにジスルフィド橋によって2つのシスチン残基が接続されている。ソマトスタチンは、成長ホルモン放出抑制因子としても知られる天然のペプチドホルモンであり、インスリン、グルコーゲン、およびソマトトロピン(ヒト成長ホルモン)の放出における特定の他のホルモンの拮抗薬としての役割を有する。天然のソマトスタチンの生物学的半減期は非常に短く(1〜3分)、そのため、それ自体を実現可能な治療薬として配合することは困難である。しかしながら、本発明の脂質デポー組成物は、寿命の短い活性物質に非常に効果的であり、より高い活性および/またはより長いクリアランス時間を有するますます多くのソマトスタチン類似体が生体内で利用可能となる。パシレオチドは、そのような類似体の1つであり、本発明の組成物の本質的なペプチド活性物質を形成する。
【0089】
パシレオチドのみならず、オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、および関連ペプチド等も含むソマトスタチン類似体が、様々な状態の治療に使用され、またその適応であるとされているが、それらは、典型的には長期間にわたって投与される。本発明の一実施形態において、ペプチド活性物質は、パシレオチド、ならびにオクトレオチド、ランレオチド、およびバプレオチドからなる群から選択される別のソマトスタチン類似体を含むかまたはそれからなる。一実施形態において、本発明のペプチド活性物質は、パシレオチドおよびオクトレオチドを含むかまたはそれからなる。さらなる実施形態において、パシレオチドは、唯一の活性物質を形成し得る。
【0090】
オクトレオチドは、例えば、配列D−Phe−Cys−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Cys−Thr−ol(2〜7ジスルフィド橋)を有する合成オクタペプチドであり、典型的には酢酸塩として投与される。いくつかの臨床試験は、パモ酸オクトレオチドにも注目している。この誘導体は、主要なPhe−(D)Trp−Lys−Thr βターンを保持するが、天然のホルモンとは対照的に、約1.7時間の終末半減期を有する。オクトレオチドは、カルチノイド腫瘍および先端巨大症を含む状態の治療に使用され、最初の投薬後、典型的には、長期間にわたって、より一般的には何ヶ月間または何年間にもわたって投与される。さらに、様々な腫瘍がソマトスタチン受容体を発現することが分かっているため、ソマトスタチン類似体は、多くの癌の治療に適応される。特に該当するのは、「sst(2)」および/または「sst(5)」受容体を発現するものである。
【0091】
本明細書において使用される場合、「ソマトスタチン受容体作動薬」という用語は、1つ以上のソマトスタチン受容体(SSTR)において作動性機能を有する化合物を示すために使用される。SST−14に対して等しく高い親和性を示す5つの種類のSSTR(SSTR1〜SSTR5)が知られている。オクトレオチドを含む、最も調査されたソマトスタチン受容体作動薬は、SSTR2およびSSTR5に対する高い選択性を示す。したがって、好ましい一実施形態において、本明細書に示されるソマトスタチン受容体作動薬は、SSTR2および/またはSSTR5を含むソマトスタチン受容体において作動性機能を有する。
【0092】
オクトレオチドの最も一般的な「単純な」製剤は、Novartis社の「Sandostatin」(登録商標)である。これは、皮下(s.c)注射用の溶液であり、100μgの用量が、注射後0.4時間で5.2ng/mlのピーク濃度に達する。作用の持続時間は最長で12時間であり得るが、皮下投与は、一般的に8時間ごとに行われる。明らかに、数ヶ月間または数年間の1日3回の皮下注射は、理想的な投与計画ではない。
【0093】
オクトレオチドを1日複数回注射する必要性を回避するために、さらなる製剤が利用可能である:同じくNovartis社の「Sandostatin LAR」(登録商標)である。これは、ポリ乳酸グリコール酸コポリマーミクロスフェア中のオクトレオチドの製剤であり、水性希釈剤中で再構成した後、筋肉内(i.m)注射によって投与され得る。
【0094】
パシレオチドは、神経内分泌疾患の治療のために開発された、ソマトスタチン受容体サブタイプsstr1、2、3、およびsstr5に高い親和性を示す、複数の受容体を標的とするソマトスタチン類似体である。現在のところ、皮下(sc)注射用の即時放出製剤と、長時間作用型徐放性(LAR)製剤の2つのパシレオチドの製剤が開発されている。パシレオチドの構造は次の通りである:
【0095】
【化1】
【0096】
パシレオチドは、最初はクッシング病/症候群および先端巨大症の治療薬としてNovartis Pharmaによって開発されたが、オクトレオチド等のソマトスタチン類似体が適応とされるカルチノイド腫瘍等のいくつかの状態の治療において潜在的な適用性を有する。
【0097】
パシレオチドの単回皮下投与後、ヒト血漿レベルは、典型的には投与後約15分〜1時間後に急速にピークを迎え、そのピーク後に2〜3時間の最初の半減期を迎える。クリアランス半減期は、下降の後期段階でより長いが、そのような送達のCmax/Caveがむしろ高いことは明らかである。
【0098】
パシレオチドLARは、上記問題のうちのいくつかに対処するパシレオチドの長時間作用型製剤である。しかしながら、当該技術分野で既知であるように、また本明細書で上述したように、これは、そのようなシステムに本来備わっている限界を有するポリマー微粒子に基づくシステムである。
【0099】
カルチノイド腫瘍は、パラクリン機能を有する特定の細胞(APUD細胞)から生じる腸内腫瘍である。原発性腫瘍は、一般的に虫垂内であるが、その場合は臨床的に良性である。続発性の転移性腸内カルチノイド腫瘍は、過剰な量のセロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、およびポリペプチドホルモンを含む血管作動性物質を分泌する。臨床結果は、カルチノイド症候群(心臓弁膜症、ならびにあまり一般的ではないが、喘息および関節症に罹患する患者における、突発性皮膚紅潮、チアノーゼ、腹部痙攣、および下痢の症候群)である。これらの腫瘍は、消化管(および、肺)のあらゆる場所で増殖し得るが、その約90%は虫垂である。残りは、回腸、胃、結腸、または直腸に起こる。現在、カルチノイド症候群の治療は、静脈内ボーラス注射によって開始され、静脈内注入がそれに続く。症状に対する十分な効果が確立されると、ポリ乳酸グリコール酸コポリマー(PLGA)ミクロスフェア中に配合されたオクトレオチドのデポー製剤による治療が開始される。しかしながら、デポーの注射後、最初の2週間またはそれ以上は、PLGA球体からの徐放を補うために、オクトレオチドを用いた毎日の皮下注射が推奨される。
【0100】
先端巨大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(GH)を産生したときに起こる、稀有な慢性かつ潜行性のホルモン障害である。これは、中年成人に最も一般的に発症し、早世をもたらし得る。
【0101】
糖尿病、高血圧、および循環器系疾患のリスクの増加は、先端巨大症の最も深刻な健康上の影響である。さらに、先端巨大症に罹患する患者は、癌性となる可能性のある結腸ポリープを発症するリスクが高い。先端巨大症の有病率は、人口100万人当たり約60人であり、発生率は、1年間に100万人当たり3.3人の新症例である。先端巨大症という単語は、ギリシャ語の「四肢(acro)」および「巨大な(megaly)」に由来するが、これは、この状態の最も一般的な症状の1つが、手および足の異常な成長であるためである。
【0102】
先端巨大症は、成長ホルモン(GH)の長期過剰産生、およびインスリン様成長因子−I(IGF−I)の過度の産生によって引き起こされる。症例の98パーセントにおいて、GHの長期過剰産生は、下垂体腺腫が原因である。GH産生の速度および腫瘍の侵襲性は、患者ごとに異なる。一般的に、より若年の患者において、より侵襲性の高い腫瘍が見られる。
【0103】
先端巨大症は、診断が遅くなることが多い深刻な疾患である。特に、付随する心血管、脳血管、および呼吸器系の障害、ならびに悪性腫瘍のために、罹患率および死亡率が高い。
【0104】
現在の先端巨大症の治療は、典型的には、1日3回の皮下注射(最適な1日用量=300μgのオクトレオチド)の期間から開始される。最後の皮下投与後、好適な効果が観察された場合には、ポリ乳酸グリコール酸コポリマー(PLGA)ミクロスフェア中のオクトレオチドに配合されたデポー製剤を用いた治療が開始される。バイオマーカー(HGおよびIGF−1)の測定後、典型的には約3ヶ月後に、用量の調整が行われる。
【0105】
既存のオクトレオチド徐放製剤は、十分に確立された分解型のデポー製剤に依存する。典型的には、そのような製剤は、ポリ(乳酸)(PLA)および/またはポリ(乳酸グリコール酸コポリマー)(PLGA)等の生分解性ポリマーに基づいており、有機溶媒中の溶液、開始剤と混合されたプレポリマー、カプセル化ポリマー粒子、または(オクトレオチドの場合のように)ポリマーミクロスフェアの形態であってもよい。
【0106】
典型的な一実施形態において、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、一般的に、全製剤の0.02〜12重量%として配合される。典型的な値は、0.1〜10%であり、好ましくは0.2〜8%、より好ましくは0.5〜6%(例えば、1〜3%)である。これらのレベルは、文脈が許す場合、本発明の全ての態様に適用され得る。さらなる好ましい範囲は、0.5〜4重量%、より好ましくは1〜3重量%、最も好ましくは1.5〜2.5重量%である。
【0107】
本発明の一実施形態において、本発明の前駆体製剤中のパシレオチドの濃度は、4%より高く、成分a)/b)の比率は1未満である。すなわち、成分a)の重量パーセントは、成分b)のものより低い。具体的には、パシレオチド含有量の高いこの実施形態において、a)対b)の比率は、49:51〜40:60、好ましくは48:52〜42:58であってもよい。
【0108】
関連する実施形態において、混合物の極性溶媒成分の非存在下では容易に実現することができないレベルのペプチドソマトスタチン受容体作動薬が配合され得る。そのような実施形態において、パシレオチドの含有量は、典型的には、製剤の少なくとも0.7重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.8重量%、または少なくとも2重量%である。少なくとも3%および少なくとも4%のレベルが本発明によって達成可能であり、同様に、最高で8、10、または12%の装填レベルも達成可能である。本発明のそのような組成物は、典型的には、示されるように非常に高いレベルのペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含有するだけでなく、さらに、本明細書に示されるように、著しい期間の間、ソマトスタチン受容体作動薬をほとんどまたは全く分解させないで(例えば、5%未満)保存するように安定でもある。そのような期間は、一般的に、25℃で少なくとも1ヶ月、または5℃で少なくとも1ヶ月、5℃でまたは代替として25℃で、好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月、最も好ましくは12〜24か月である。これらの安定性の程度は、文脈が許す場合、本発明の全ての態様に適用可能であり、ソマトスタチン受容体作動薬、および予備製剤の相挙動の両方の安定性に関連する。
【0109】
関連する実施形態において、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬がアルコール成分中での溶解性が高い状況では、この物質のこの溶解性を制限することが有利であり得る。理論に拘束されるものではないが、このアルコール成分における過剰な溶解性のために、生体内でデポー組成物が形成すると、アルコールがデポー組成物から著しい量のソマトスタチン受容体作動薬を輸送する結果になり得ると考えられる。したがって、本発明の一実施形態において、放出プロファイルを制御する補助となるように、予備製剤中のソマトスタチン受容体作動薬の溶解性を制御するための極性溶媒が使用される。
【0110】
したがって、さらなる態様において、本発明は、デポー前駆体製剤を形成するように極性溶媒成分d)を包含することによって、
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜15重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、を含む低粘度混合物中の、
パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の溶解性を制御するための方法を提供する。そのような方法における極性溶媒の使用は、さらなる態様を形成する。
【0111】
予備製剤および混合物の成分、ならびにそれらの性能等は、他の態様について本明細書に記載されるものに明らかに対応する。
【0112】
同様に、本発明は、デポー前駆体製剤を形成するように前記低粘度混合物に極性溶媒成分d)を包含することによって、
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜15重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、
を含む低粘度混合物の注入によって形成されるデポー組成物からの、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の放出プロファイルを改善するための方法を提供する。そのような方法における極性溶媒の使用は、さらなる態様を形成する。
【0113】
予備製剤および混合物の成分、ならびにそれらの性能等は、他の態様について本明細書に記載されるものに明らかに対応する。
【0114】
対応する方法および使用は、デポー前駆体製剤を形成するように前記低粘度混合物に極性溶媒成分d)を包含することによって、注射部位の不快感の軽減、予備製剤の粘度の低下、および/または
a)20〜50重量%の少なくとも1つのジアシルグリセロールと、
b)20〜54重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)と、
c)5〜15重量%の少なくとも1つの生体適合性有機モノアルコール溶媒と、
e)5〜150mg/mLの、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬と、
f)任意に、少なくとも1つの抗酸化剤と、
を含む低粘度混合物の初期「バースト」放出の減少を提供する。そのような方法における極性溶媒の使用は、さらなる態様を形成する。
【0115】
予備製剤および/または得られるデポー組成物の種々の特性を改善するための上記の使用および方法の全ては、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬の放出プロファイルに悪影響を及ぼすことなく適用されることが好ましい。
【0116】
ペプチドソマトスタチン受容体作動薬がパシレオチドを含み、したがって、製剤に含まれる好適な用量、ひいては使用される製剤の体積は、放出速度(例えば、溶媒の種類および使用される量、抗酸化剤の含有量等によって制御される)および放出期間、ならびに所望の治療レベル、特定の物質の活性、および選択される特定の活性物質のクリアランス速度に依存する。典型的には、1週間のデポー持続期間当たり約0.05〜40mgの量であり、好ましくは、1〜24週間、好ましくは2〜16(例えば、3、4、8、10または12)週間の継続期間に、1週間の継続期間当たり0.1〜20mg(例えば、1週間当たり1〜5mg)の量である。代替的な実施形態において、予備製剤は、毎週投与する(例えば7±1日ごと)ために配合されてもよい。投与当たり0.05〜250mgの総用量が、7〜168日間治療レベルを提供するのに好適である。これは、好ましくは、0.1〜200mg、例えば、0.2〜150mg、0.1〜100mg、20〜160mg等である。明らかに、活性物質の安定性および放出速度の影響は、装填量と持続期間とが直線的な関係ではないかもしれないことを意味する。30日ごとに投与されるデポーは、例えば、0.2〜20mgのソマトスタチン受容体作動薬を有してもよく、または90日デポーは、30〜60mgのソマトスタチン受容体作動薬を有してもよい。
【0117】
また、明らかに、特定の活性物質の生物学的半減期も特に重要である。ソマトスタチンの半減期は5分未満であるため、持続放出の場合、(例えば、範囲の上限に向かって)比較的大量が必要となる。より長い半減期(少なくとも2〜3時間)を有するオクトレオチド等の類似体の場合、必要な量は明らかにより少ない。特定の活性物質の適切なレベルは、既知の治療レベル、所望の作用持続期間、および注入される体積を参照することにより、当業者によって容易に確立される。有効な基本の計算は、活性物質の典型的な1日用量にデポーの持続日数を乗じることであろう。次いで、放出の直線性について製剤を試験し、必要に応じて調整することができる。
【0118】
非常に好ましい実施形態において、脂質マトリックスの態様は、大豆PCまたは「高純度PC」(DOPC等)、GDO、エタノール、および水/プロピレングリコール、またはその混合物であり、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬は、パシレオチドを含む。前述の通り、組み合わせに好適な各成分の適切な量は、任意の組み合わせにおける個々の成分について本明細書に示される量である。
【0119】
好ましい一実施形態において、GLP−1、GLP−1類似体、ならびにGLP−1受動体作動薬および/またはGLP−1受容体拮抗薬は、本発明の前駆体製剤中には存在しない。
【0120】
任意な成分f)−抗酸化剤
成分f)は、抗酸化剤である。最も好ましくは、これは、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩、ならびにクエン酸から選択される。
【0121】
本発明の全ての態様において、成分f)は、典型的には、1:50〜1:6000、好ましくは1:100〜1:1300、最も好ましくは1:150〜1:1250の抗酸化剤対ペプチドソマトスタチン受容体作動薬の重量比で存在する。典型的な抗酸化剤は、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬よりも分子量が低いため、抗酸化剤の重量比は比較的小さくなり得る。例えば、低分子量抗酸化剤(例えば、500amu未満)の場合、組成物の0.0001〜0.5%が抗酸化剤であってもよく、好ましくは0.0005〜0.2%、より好ましくは0.0008〜0.1%、例えば、0.001〜0.02%が抗酸化剤であってもよい。
【0122】
残念なことに、多くの一般的な抗酸化剤は、脂質システムとの互換性が高くない。実際、本発明者は、以前のシステムで一般的に使用されていたいくつかの抗酸化剤が、脂質システム中の活性物質の分解の増大を引き起こし得ることを以前に証明している。これは、特にペプチド活性物質に当てはまる。そこで、本発明者が、脂質ベースのマトリックスシステムとともに用いるための様々な潜在的な抗酸化剤の化合物およびクラスを分析したところ、ある特定のクラスの抗酸化剤が、これらのシステムにおける使用に例をみないほど好適であることを予想外に発見した。
【0123】
抗酸化剤化合物は、一般的に、予備製剤全体の0.0001〜0.5重量%の範囲で含まれる。とりわけ、本明細書において前述したおよび後述される他の好ましい化合物および範囲と組み合わせた、約0.0005〜0.015%の抗酸化剤(特にEDTA)が特に好ましい。
【0124】
多くの異なる抗酸化剤を用いた安定性データは、生物活性物質の酸化分解を抑制する際に、EDTA抗酸化剤が、他の抗酸化剤と比べて驚くほど効率的であることを証明している。また、抗酸化剤としてのEDTAは、ペプチド活性物質および完全な予備製剤の化学的および物理的安定性を維持する上でも、本発明の抗酸化剤と組み合わせた相乗効果を示すことができる。EDTAは、活性物質に対する安定化効果を有する。
【0125】
「安定化」とは、溶解または分散したソマトスタチン受容体作動薬の物理的および化学的な安定性の増加を意味する。安定性の増加は、抗酸化剤の非存在下で観察されるであろうよりも長い期間の脂質製剤中のペプチドソマトスタチン受容体作動薬の化学的および/または物理的な安定性によって示され得る。これは、好ましくは、2〜8℃、25℃、および/または周囲温度等の、典型的な保存の条件下で試験される。これについては、本明細書において後に詳細に記載する。
【0126】
本発明の好ましい実施形態において、抗酸化剤は、予備製剤に含まれない。
【0127】
任意な追加成分
本発明の特に好ましい一実施形態において、組成物(予備製剤および得られるデポー)は、ポリエチレンオキシドまたはポリ(エチレングリコール)(PEG)断片化剤、例えば、PEGグラフト化脂質および/または界面活性剤等の断片化剤を含まない。
【0128】
例えば、組成物は、ポリソルベート80(P80、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン)、または他のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)、ペグ化リン脂質(PEG脂質、例えば、DSPE−PEG(2000)、DSPE−PEG(5000)、DOPE−PEG(2000)、およびDOPE−PEG(5000)等)、ソルトールHS 15、ペグ化脂肪酸(例えば、オレイン酸PEG)、Pluronic(登録商標)F127およびPluronic(登録商標)F68等のブロックコポリマー、エトキシ化ヒマシ油誘導体(例えば、クレモホア)、ペグ化グリセリル脂肪酸エステル(日光ケミカルズ社のTMGO−15等)、およびペグ化トコフェロール(Eastman社のビタミンE TPGSとして知られるコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000等)の断片化剤を含まないことが好ましい。
【0129】
単回投与形式は、使用前の保存において安定かつ効力のある状態を維持しなければならないが、1回使用した後で使い捨てされる。一実施形態において、単回投与形式は、少なくとも12か月間、冷蔵条件下(例えば、0〜5または2〜8℃)で安定である。さらに、そのような予備製剤は、少なくとも12ヶ月間、室温(例えば、25℃)で安定であり得る。反復投与形式は、使用前の保存時に安定かつ効力のある状態を維持するだけではなく、密封が損なわれる最初の使用後の反復投与使用計画にわたって安定であり、効力があり、比較的細菌を含まない(特に、本質的に細菌を含まない)状態を維持しなければならない。この理由から、反復投与形式は、抗菌剤または静菌剤、例えば抗菌剤、保存料を必要とすることが多い。
【0130】
しかしながら、保存料が用いられると、それらが安定性の問題を引き起こすことから、タンパク質またはペプチド活性物質を含有する保存型医薬品の生成はしばしば困難であることが証明されている。大抵、タンパク質が不活化され、凝集物が形成され、時には注射部位における不耐性、または活性物質に対する免疫原性の報告につながり得る。これは、付加的な添加剤または製剤成分によってさらに悪化し得る。
【0131】
一態様において、本明細書に記載される各実施形態は、任意に、静菌剤および保存料を含む、抗菌剤または微生物静止剤を含有することができる。そのような薬剤は、塩化ベンザルコニウム、m−クレゾール、ベンジルアルコール、または他のフェノール系保存料を含む。当該技術分野で既知の典型的な濃度を用いることができる。
【0132】
成分a)〜f)として上述した追加成分が、少しでも存在する場合、0〜5重量%(例えば、0.01重〜5重量%)、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下で存在することが好ましい。
【0133】
一実施形態において、成分a)およびb)(これらの成分の性質に固有のあらゆる不純物は認められる)は、組成物の脂質成分の少なくとも95%を占める。好ましくは、予備製剤の全脂質成分の少なくとも99%は、成分a)およびb)からなる。好ましくは、予備製剤の脂質成分は、本質的に成分a)およびb)からなる。
【0134】
[投与]
本発明の予備製剤は、一般的に、非経口投与されるように配合される。この投与は、一般的に、血管内法ではなく、好ましくは、皮下(s.c)、腔内、または筋肉内(i.m)である。典型的には、投与は注射によるものであり、この用語は、針、カテーテル、またはニードルレス(無針)インジェクター等によって製剤に皮膚を通過させるためのあらゆる方法を示すために本明細書において使用される。好ましい非経口投与は、筋肉内または皮下注射によるものであり、最も好ましくは皮下注射によるものである。本発明の組成物の重要な特徴は、毒性または著しい局所的影響を引き起こさずに、筋肉内および皮下の両方、ならびに他の経路によって投与できることである。これはまた、体腔内投与にも好適である。皮下注射は、いくつかの現在のデポーに用いられている(深い)筋肉内注射と比べて、深くなく、かつ対象への苦痛が少ないという利点を有し、注射し易さと局所的な副作用のリスクが少ないことを併せると、本発明の場合において技術的に最も好適である。製剤が、皮下注射および筋肉内注射の両方によって、予測可能な期間にわたって活性物質の持続放出を提供することは、本発明者にとって驚くべき観察である。そのため、注射部位を大幅に変更することができ、注射部位の組織の深さを詳細に考慮することなく用量を投与することができる。
【0135】
本発明の好ましい脂質予備製剤は、特に生体内で水性流体に曝露されると非ラメラ液晶デポー組成物を提供する。本明細書において使用される場合、「非ラメラ」という用語は、正常な、またはより好ましくは逆の、液晶相(立方相もしくは六方相等)、またはL3相、またはそれらの任意の組み合わせを示すために用いられる。液晶という用語は、全ての六方液晶相、全ての立方液晶相、および/またはそれらの全ての混合物を示す。本明細書において使用される六方は、「正常な」または「逆の」六方(好ましくは逆)を示し、「立方」は、別途指定のない限り、任意の立方液晶相を示す。当業者は、本明細書に提供される説明および実施例、ならびにWO2005/117830を参照することによって適切な相挙動を有する組成物を特定する上で何の困難もないが、相挙動に最も好ましい組成領域は、成分a:bの比率が40:60〜70:30、好ましくは45:55〜55:45、最も好ましくは40:60〜54:46の範囲である場合である。(特定の例外が本明細書に記載されるものの)ほとんどの製剤にとって約50:50(例えば、±2)の比率が非常に好ましく、最も好ましくは約50:50である。
【0136】
本発明の予備製剤は低粘度であるということを理解することが重要である。そのため、これらの予備製剤は、バルク液晶相であってはならない(全ての液晶相は、注射器または同様の注入ディスペンサーによって投与され得るよりも著しく高い粘度を有するため)。したがって、本発明の予備製剤は、溶液、L相またはL相、特に、溶液またはL等の非液晶状態にある。本明細書全体を通して使用されるL相は、好ましくは、粘度低減効果を有する有機モノアルコール溶媒(成分c)を、5重量%より多く、好ましくは7%よりも多く、最も好ましくは9%よりも多く含有する、「膨張した」L相である。L相にある本発明の予備製剤は、一連の好ましい予備製剤を形成し、これらは一般的に少なくとも2%の水を極性溶媒として含有する。
【0137】
本明細書で使用される場合、「低粘度混合物」という用語は、すぐに対象に投与できる、特に、標準的な注射器および針の構成によってすぐに投与できる混合物を示すために用いられる。これは、例えば、ゲージの小さい針を通して使い捨ての1ml注射器から分注される能力によって示され得る。好ましくは、低粘度混合物は、手動圧により、19ゲージの針を通して、好ましくは19ゲージ未満、より好ましくは23ゲージ(または最も好ましくはさらに27ゲージ)の針を通して分注することができる。特に好ましい実施形態において、低粘度混合物は、0.22μm注射器フィルター等の標準的な滅菌濾過膜を通過できる混合物でなければならない。好適な粘度の典型的な範囲は、例えば、20℃で、0.1〜5000mPas、好ましくは1〜1000mPas、より好ましくは10〜750mPas、最も好ましくは25〜500mPasであろう。
【0138】
少量の低粘度有機モノアルコール溶媒の添加によって、本明細書に示すように、粘度に非常に著しい変化がもたらされ得ることが観察されている。例えば、脂質混合物へのわずか5%の溶媒の添加によって粘度を100倍低下させることができ、10%の添加によって最大で1万倍低下させ得る。粘度を低下させる上でこの非直線的な相乗効果を達成するためには、適度に低粘度であり、かつ好適な極性の溶媒が用いられることが重要である。そのような溶媒は、本明細書に後述するものを含む。好ましい低粘度混合物は、他の成分の分子溶液中のペプチドソマトスタチン受容体作動薬の分散液を含む、分子溶液を含む。
【0139】
本発明の好ましい脂質ベースの予備製剤は、投与されると、低粘度混合物から高粘度(一般的に、組織に付着性の)デポー組成物へと相構造転移を起こす。一般的に、これは、分子混合物、膨潤したL相および/またはL相から、1つ以上の(高粘度)液晶相、例えば、逆六方液晶相または立方液晶相またはその混合物等のへの転移である。投与後に、さらなる相転移も起こり得る。明らかに、本発明が機能するために完全な相転移は必要ではないが、投与される混合物の少なくとも表面層は、液晶構造を形成する。一般的に、この転移は、投与される製剤の少なくとも表面領域(空気、体表面、および/または体液と直接接触する部位)において急速である。これは、数秒または数分(例えは、1秒から最長30分、好ましくは最長10分、より好ましくは5分以下)にわたることが最も好ましい。組成物の残りは、分散によって、および/または表面領域が分散するにつれて、より緩徐に液晶相へと相変化する。
【0140】
理論に拘束されるものではないが、本発明の予備製剤は、過剰な水性流体に曝露されると、その中に含まれる有意溶媒の一部または全てを(例えば、分散によって)損失し、(例えば、生体内環境)から水性流体を取り込むと考えられる。脂質予備製剤の場合、該製剤の少なくとも一部が、非ラメラ構造、とりわけ液晶相構造を生成することが好ましい。ほとんどの場合、これらの非ラメラ構造は非常に粘度が高いため、生体内環境に容易に溶解または分散されない。その結果は、生体内で形成されるモノリシックな「デポー」であり、限られた領域のみが体液に曝露される。さらに、非ラメラ構造は、大きな極性領域、非極性領域、および境界領域を有するため、脂質デポーは、ペプチド等の活性物質を溶解および安定化する上で、ならびに分解機構からそれらを保護する上で、非常に効果的である。予備製剤から形成されるデポー組成物は、数日間、数週間、または数ヶ月間の期間にわたって徐々に分解するため、活性物質は、組成物から徐々に放出され、かつ/または分散する。デポー組成物内の環境は比較的保護されているため、本発明の予備製剤は、比較的短い生物学的半減期(上記参照)を有する活性物質に非常に好適である。
【0141】
少なくとも5%(例えば、少なくとも10%)の極性溶媒(特に、少なくとも5%の水および/またはPG)を予備製剤に組み込むことによって、実質的に水の非存在下において有機溶媒を含有する組成物と比較して、注射される予備製剤の表面における非ラメラ(例えば、液晶)相への相転移の速度を向上することができると考えられる。したがって、得られるデポーの性能が改善され、活性物質の放出に対するさらなる制御が実現される。
【0142】
本発明の製剤によって形成されるデポーシステムは、活性物質を分解から保護する上で非常に効果的であるため、長い放出期間が可能となる。したがって、本発明の製剤は、5〜90日、好ましくは5〜60日、より好ましくは6〜32日ごとに1回のみ投与を必要とする、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬の生体内デポーを提供し得る。明らかに、より長い安定した放出期間は、患者の快適性およびコンプライアンスのために望ましく、また、組成物が自己投与されない場合に医療従事者を必要とする時間がより少ない。組成物を自己投与する場合、投与する必要性を忘れないように、患者コンプライアンスは、毎週(例えば、7日ごと、任意に±1日)または毎月(例えば、28または30日ごと(任意±7日))の投与によって促進される。
【0143】
本発明のデポー前駆体の注目に値する利点は、それらが安定した均一な相であるということである。すなわち、それらは、相分離することなく、かなりの期間(好ましくは、少なくとも6ヶ月)室温または冷蔵庫の温度で保存され得る。このことは、有利な保存および容易な投与を提供することに加えて、選択された体積を注射することによって、個々の対象の種、年齢、性別、体重、および/または健康状態を参照してペプチドソマトスタチン受容体作動薬(例えば、パシレオチド)の用量を選択することを可能にする。
【0144】
したがって、本発明は、特に対象の体重による、個体に特有の投薬量の選択を含む方法を提供する。この用量選択のための手段は、投与量の選択である。
【0145】
好ましい一態様において、本発明は、本明細書に示される成分a)、b)、c)、d)、f)と、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬とを含む予備製剤を提供する。これらの成分の量は、典型的には、a)が30〜60%、b)が30〜70%、c)が5〜20%、およびd)が1〜20%の範囲であり、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬が0.01%〜10%で存在し(例えば、a)が36〜44%、b)が36〜44%、c)が3〜18%、およびd)が5〜18%(好ましくは、少なくとも2%の水を含む)であり、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬が1%〜8%で存在)、a:bの比率の範囲は、40:60〜54:46である。
【0146】
典型的には、成分f)は、1:50〜1:6000、好ましくは1:100〜1:1300、最も好ましくは1:150〜1:1250のペプチドソマトスタチン受容体作動薬に対する抗酸化剤のモル比で存在する。典型的な抗酸化剤は、ペプチドソマトスタチン受容体作動薬(例えば、ソマトスタチン類似体、例えば、オクトレオチド)よりも分子量が低いため、抗酸化剤の重量比は、比較的小さくなり得る。例えば、低分子量の抗酸化剤(例えば、500amu未満)の場合、組成物の0.001〜5%、好ましくは0.002〜2%、より好ましくは0.002〜0.15%、例えば、0.002〜0.015%が抗酸化剤であってもよい。
【0147】
本発明の予備製剤は、それらの最終的な「すぐに投与できる」形態で長期保存されるように安定であるという点において、非常に有利である。その結果として、それらは、医療従事者によって、または患者によって、または、十分に訓練を受けた医療従事者である必要はなく、複雑な調製物を作製するための経験もしくは技術を有しないかもしれない患者の介護者のいずれかによって、投与のために容易に供給され得る。これは、糖尿病等の長期にわたって緩徐に発症する疾患において特に重要である。
【0148】
本発明の予備製剤は、いずれのGLP−1、GLP−1類似体、ならびにGLP−1受容体作動薬および/または拮抗薬も含まないことが好ましい。本発明の予備製剤は、以下の予備製剤を含まないことが好ましい。
【0149】
【表1】
【0150】
表中、EtOHは、エタノールであり、PCは、LIPOID S100大豆ホスファチジルコリンまたはLIPOID E 80卵ホスファチジルコリン(で標示)であり、GDOは、以下の品質(ACによる)を有するジオレイン酸グリセロールである。
【0151】
【表2】
【0152】
[デバイス]
さらなる態様において、本発明は、測定された用量の本発明の予備製剤が予め装填された使い捨て投与デバイス(デバイスの構成要素も含む)を提供する。そのようなデバイスは、典型的には、すぐに投与できる単回用量を含み、一般的には、投与まで組成物がデバイス内に保存されるように無菌包装される。適切なデバイスは、カートリッジ、アンプル、および、特に、一体型の針を備えるか、または好適な使い捨ての針を受け入れるように適合させた標準的な取付具(例えば、ルアー)のいずれかを備える、注射器および注射筒を含む。同様に適切なデバイスは、ニードルレスインジェクター、薬剤充填済み注射器と組み合わせた複数回もしくは単回使用の自動インジェクター、任意に複数回使用ペンデバイスと組み合わせたカートリッジ、またはバイアルを含む。明らかに、そのような薬剤充填済み注射器およびカートリッジは、複数回もしくは単回使用インジェクター、または無針注射ユニット等の、いずれの適切な注入デバイスのためであってもよい。
【0153】
本発明のデバイスは、5〜150mg/mL、好ましくは10〜100mg/mL、最も好ましくは10〜70または10〜90mg/mL、例えば、20〜60または20〜80mg/mL、例えば、20〜60または30〜60mg/mL等の範囲の投薬量を送達する本発明の予備製剤を含み得ることが好ましい。
【0154】
本発明の全ての態様に適用可能な一実施形態において、本発明のデバイスは、単回用量1〜200mg、例えば1〜150mg(例えば、1〜120mg)の、パシレオチド、好ましくはパシレオチドパモ酸塩を含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含み得る。
【0155】
本発明のデバイスは、予定された投与の間に1日当たり約0.1〜6mg(例えば、0.2〜4mg)、例えば、1日当たり約0.6(例えば、0.6〜3)mg、特に1〜2mg/日の、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬、好ましくはパシレオチドパモ酸塩を含み得る。
【0156】
本発明のデバイスは、5ml以下、例えば2ml以下、例えば約1.5mlの総投与量を含み得る。
【0157】
本発明の薬剤充填済みデバイスはまた、投与キットに好適に含まれもよく、該キットもまた、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、さらなる態様において、本発明は、パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬の投与のためのキットを提供し、前記キットは、測定された用量の本発明の製剤を含み、任意に投与デバイスまたはその構成要素を含む。好ましくは、用量は、筋肉内、または好ましくは皮下投与に好適であるデバイスまたは構成要素に保持される。キットは、針、スワブ等のさらなる投与構成要素を含んでもよく、任意にかつ好ましくは、投与のための指示を含む。そのような指示は、典型的には、本明細書に記載される経路による投与、および/または本明細書で前述した疾患の治療のための投与に関する。
【0158】
[キット]
本発明は、本明細書に記載される予備製剤を含む、本明細書に示される薬剤充填済み投与デバイスおよび本明細書に示されるキットを提供する。
【0159】
本発明の代替の態様において、「キット」は、少なくとも2つの容器を含んでもよく、第1の容器は、本明細書に記載される成分a)〜d)の低粘度混合物を含み、第2の容器は、測定された用量の本明細書に記載のパシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含む。抗酸化剤成分f)は、活性物質とともに、またはより好ましくは低粘度混合物の一部として配合されていてもよく、次いで、成分a)〜d)およびf)を含む。
【0160】
そのような「2成分キット」は、一方のバイアルまたは薬剤充填済み注射器内に粉末製剤としてペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含んでもよく、第2のバイアルまたは薬剤充填済み注射器内に成分a)〜d)(および任意にf))を含んでもよい。2つの注射器の場合、注射前に、薬剤充填済み注射器を接続し、注射筒を前後に動かすことによって活性物質を含む粉末をマトリックス製剤と混合し、注射する溶液または懸濁液を形成する。代替として、液体脂質製剤は、一方のバイアルから出されるか、または注射器に予め充填され、ペプチド粉末を含むバイアル中に注入される。この製剤は、その後、手で振盪させることによって、または他の好適な再構成法(例えば、ボルテックス混合等)によって混合されてもよい。溶媒成分は、一方または両方の容器(例えば、バイアルまたは注射器)内に存在してもよい。溶媒が少なくとも部分的に活性物質とともに構成されている場合、これは、一般的に溶液または懸濁液の形態である。
【0161】
したがって、この態様において、本発明は、
i)本明細書に記載される成分a)〜d)の低粘度混合物を含む第1の容器と、
ii)パシレオチドを含む少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含む第2の容器と、
iii)任意に選択的に第3の容器内、好ましくは第2の容器内、最も好ましくは第1の容器内の抗酸化剤成分f)と、
iv)任意に、かつ好ましくは、
1)少なくとも1つの注射器(前記第1および第2の容器の一方または両方であってもよい)、
2)本明細書に記載されるもの等の投与のための針、
3)第1および第2の容器の内容物から本発明の組成物を生成するための指示、
4)本明細書に記載されるデポーを形成するための、投与に関する指示、のうちの少なくとも1つとを含む、2成分キットを提供する。
【0162】
[好ましい特徴および組み合わせ]
本明細書に示される特徴および好ましい特徴と合せて、本発明の予備製剤は、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を独立してまたは組み合わせて有することができる:
本明細書に示される全ての割合は、任意に、規定される量から最大10%異なってもよく、任意にかつ好ましくは、最大5%異なってもよい。
成分a)は、GDOを含むか、実質的にそれからなるか、または好ましくはそれからなる。
成分b)は、大豆PCおよび/または「高純度PC」、例えばDOPC等を含むか、実質的にそれからなるか、または好ましくはそれからなる。
成分c)は、1、2、3または4炭素アルコール、好ましくはイソプロパノール、より好ましくはエタノールを含むか、実質的にそれからなるか、または好ましくはそれからなる。
成分d)は、水、プロピレングリコール、またはその混合物等の極性溶媒を含むか、実質的にそれからなるか、または好ましくはそれからなる。
成分f)は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、および/またはクエン酸を含むか、実質的にそれからなるか、または好ましくはそれからなる。
予備製剤は、パシレオチド、好ましくはパシレオチドパモ酸塩を含む、少なくとも1つのペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含有する。
【0163】
予備製剤は、本明細書に示される低粘度を有する。
【0164】
予備製剤は、生体内に投与されると、本明細書に示される液晶相を含み、形成する。
【0165】
予備製剤は、生体内投与の後にデポーを生成し、デポーは、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも28日間、より好ましくは少なくとも60日間の期間にわたって、治療レベルの少なくとも1つのソマトスタチン受容体作動薬を放出する。
【0166】
予備製剤は、成分d)の存在しない同じ製剤中で安定であるよりも高いパシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の装填量を有する。
【0167】
予備製剤は、成分d)の存在しない製剤を25℃で平衡化させることによって得られるよりも高いパシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の装填量を有する。
【0168】
本明細書に示される特徴および好ましい特徴と合せて、本発明の治療の方法(複数可)は、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を独立してまたは組み合わせて有することができる。
方法は、前述の1つ以上の好ましい特徴を有する少なくとも1つの製剤の投与を含む。
方法は、筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深皮下注射による、本明細書に示される少なくとも1つの製剤の投与を含む。
方法は、本明細書に示される薬剤充填済みデバイスを用いた投与を含む。
方法は、20ゲージ以下、好ましくは20ゲージ未満、最も好ましくは23ゲージ以下の針を通した投与を含む。
方法は、20〜100日、好ましくは28〜60日(例えば、30〜45日)ごとの単回投与を含む。
【0169】
本明細書に示される特徴および好ましい特徴と合せて、薬物の製造における本明細書に示される予備製剤の使用(複数可)は、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を独立してまたは組み合わせて有することができる。
使用は、前述の1つ以上の好ましい特徴を有する少なくとも1つの製剤の使用を含む。
使用は、筋肉内注射、皮下注射、または好ましくは深皮下注射による本明細書に示される少なくとも1つの製剤の投与のための薬物の製造を含む。
使用は、本明細書に示される薬剤充填済みデバイスを用いた投与のための薬物の製造を含む。
使用は、20ゲージ以下、好ましくは20ゲージ未満、最も好ましくは23ゲージ以下の針を通した投与のための薬物の製造を含む。
使用は、20〜100日、好ましくは28〜60日、より好ましくは30〜45日ごとの投与のための薬物の製造を含む。
【0170】
本明細書に示される特徴および好ましい特徴と合せて、本発明の薬物充填済みデバイスは、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を独立してまたは組み合わせて有することができる。
それらは、本明細書に示される好ましい製剤を含む。
それらは、20ゲージ未満、好ましくは23ゲージ以下の針を含む。
それらは、1〜300mg、好ましくは1〜200mg、より好ましくは5〜150mg、例えば、10〜100mg、最も好ましくは20〜70mg、特に好ましくは30〜60mgの、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の単回用量を含む。
【0171】
それらは、本発明の組成物の均質な混合物をすぐに注射できる形態で含む。
【0172】
それらは、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬と組み合わせるための成分a)〜c)の製剤を含み、それによって本発明の予備製剤を形成する。
【0173】
それらは、成分a)〜d)および任意にf)の製剤と組み合わせるためのパシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬を含み、それによって本発明の予備製剤を形成する。
【0174】
それらは、5ml以下、好ましくは3ml以下、例えば2ml以下、より好ましくは1.5ml以下の総投与量を含む。
【0175】
本明細書に示される特徴および好ましい特徴と合せて、本発明のキットは、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を独立してまたは組み合わせて有することができる。
それらは、本明細書に示される好ましい製剤を含む。
それらは、本明細書に示される薬剤充填済みデバイスを含む。
それらは、20ゲージ未満、好ましくは23ゲージ以下の針を含む。
それらは、1〜300mg、好ましくは1〜200mg、より好ましくは5〜150mg、例えば、10〜100mg、最も好ましくは20〜70mg、特に好ましくは30〜60mgの、パシレオチドを含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬の単回用量を含む。
それらは、本発明の脂質製剤と、パシレオチド粉末を含むペプチドソマトスタチン受容体作動薬とをそれぞれ含む少なくとも2つの容器を含む「二区画キット」を含む。
【0176】
それらは、5ml以下、好ましくは3ml以下、例えば2ml以下、より好ましくは1.5ml以下の総投与量を含む。
【0177】
それらは、本明細書に示される経路によるおよび/または周期での投与のための指示を含む。
【0178】
それらは、本明細書に記載される治療方法に用られる投与のための指示を含む。
【実施例】
【0179】
次に、以下の非限定的な実施例および添付の図面を参照して本発明をさらに例示する。
材料
【0180】
【表3】
【0181】
実施例1:溶解性スクリーニング
表1に従って、プラセボ脂質混合製剤、およびそれぞれの単一脂質のみの製剤を10Rバイアル中で調製した。試料サイズは6gであった。1重量%のS230のみを評価した製剤型15を除いて、薬物装填量3重量%(ペプチドの純度および含有量に対して補正した)のそれぞれの製剤型のSOM230(パシレオチドパモ酸塩)試料を2Rバイアル中で調製した。試料を周囲室温で平衡化させた:製剤型1〜8の試料は転倒回転させ、製剤型9〜12の試料は磁気撹拌した。図1のフローチャートは、試料調製プロセスについて説明している。スクリーニングは、以下の製剤変数を考慮に入れた。
●脂質重量比(SPC/GDO重量比)
●共溶媒の性質および濃度
●単一脂質製剤
●単一溶媒(PGのみ)
【0182】
【表4】
【0183】
目視検査により試料を確認し、外観を記した。1重量%(CoAに従ってペプチドの純度および含有量に対して補正した)刻みで、製剤型15を除いたあらゆる均質かつ透明な試料にさらなるSOM230薬粉を加えた。さらにSOM230薬粉を加えた後、周囲室温で混合および目視観察を続けた。
【0184】
溶解性スクリーニングの結果を表2に要約する。いくつかの製剤型では、最大で少なくとも10重量%または約100mgのSOM230遊離塩基/mLの用量強度が達成可能であると結論付けられた。さらに、EtOH(<<1重量%)における不良な溶解性と比較して、PGは、比較的優れたSOM230(>1重量%)の溶媒であると考えられる。
【0185】
EtOH/PGの共溶媒の組み合わせを各々10重量%の濃度で用いて、最大10重量%(または約100mg/mL(補正済み))のより高い薬物装填量のSOM230を実現した。共溶媒としてEtOHのみを含む製剤は、EtOH/PGまたはEtOH/WFIの組み合わせほどSOM230の装填に効果的ではなかった。それぞれの単一脂質賦形剤のみを含む製剤(製剤型13および14)は、同等の溶媒組成物を含む脂質混合物と比較してより低い装填能力(<3重量%)を示したことから、本発明の製剤の成分を組み合わせることによる強い相乗的溶解性増強効果が示唆される。
【0186】
【表5】
【0187】
溶解性スクリーニングの結果を次のように要約する。
・複数の製剤型が、30〜60mg/mLの薬物装填レベルを許容することがわかった。
・共溶媒レベルの増加、およびEtOHとPGまたはEtOHと水の組み合わせが、SOM230の溶解性を高めた。
・少なくとも1つの製剤変形例について(少なくとも)10重量%の薬物装填量(ca 100mg/mL)を確認した。
・SPCおよびGDOの組み合わせが、単一脂質混合物と比較して相乗的様式でSOM230の溶解性を高めた。
・PGは、比較的優れたSOM230の溶媒であると考えられた。
【0188】
実施例2−注入性、密度、および粘度
表3による製剤を調製し、注入性、密度、および粘度の評価に使用した。それぞれ3および6重量%の薬物装填量を有する脂質/SOM230製剤を15Rガラス製注射用バイアル中で調製した。
【0189】
【表6】
【0190】
試料の調製手順は、表1に記載する通りであった。磁気撹拌棒を試料(試料サイズ6g)に加えた後、周囲室温で磁気撹拌した。目視検査により試料を確認し、溶解を終了するのに適切な時間を記した。
【0191】
30mg/gの製剤は、48時間以内に透明かつ均質になった。60mg/gの試料は、3日以内に均質かつ透明になった。これらの調製物の溶解時間を速めるための特別の努力(撹拌速度の増加等)は行われなかった。
注入性(flow rates)
【0192】
以下の方法に従って、各製剤の注入性または流速を評価した:それぞれの製剤を充填した選択された注射器構成に一定の力を印加する。次いで、周囲室温で空のバイアルに注入を行い、注入された製剤の重量を記し、注入を終了するための時間を測定する。注入試験当たりの注入量は、約0.4〜0.6mLであり、二重反復試験を行った。印加した一定の力は20Nであった。注入性試験に使用した注射器および針の形態を表4に示す。
【0193】
【表7】
【0194】
使用したストッパーはWest(4432/50 grey B240 Westar(登録商標))のものであり、プランジャーロッド55103はFresenius Kabi(FKA)から供給された。
【0195】
注入性の結果を図2に要約する。注入性は、1mL当たりの秒数として表される(流速の逆数)。製剤の密度値を用いて、1グラム当たりの秒数を1mL当たりの秒数に変換した(下を参照)。20Nという一定の力を用いた場合、注入時間は、製剤に応じて約8〜30秒と異なっていた。
【0196】
[密度]
Anton Paar社の密度計DMA 4500 M(I360)を20℃で使用して各製剤の密度を決定した。各製剤について単一の試験を行った。
その結果を表5に提示する。
【0197】
【表8】
【0198】
[粘度]
Bohlin Visco 88 BV機器(内部回転シリンダ、外部静止シリンダ)を3つの速度設定(3つのせん断速度)で使用して粘度を測定した。各製剤について単一の試験を行った。
【0199】
測定は室温(周囲温度)で行った。その結果を、異なる速度設定の平均粘度として表6に示す。異なるせん断速度間で粘度値の違い(実験変動の範囲内)は観察できなかったことから、ニュートン挙動が示唆される。
【0200】
【表9】
【0201】
SOM230薬物装填量をca 30から60mg/mLへと2倍にすることにより、EtOH/PGを含む製剤では粘度がほぼ2倍になったのに対し、対応するEtOH/WFI製剤の粘度増加は、わずかに約20%であったことに留意することができる。注入性と粘度との関連性を、図3に示す。これらの種類の製剤の場合に予想されるように、注入性(1mLを注入する時間として算出される)は、粘性にほぼ直線的に比例する。
【0202】
実施例3−SOM230酢酸塩およびSOM230塩酸塩を用いた製剤の比較試験
SOM230塩酸塩の調製
イオン交換プロセスを用いて、SOM230酢酸塩からSOM230塩酸塩を調製した。Sigma−Aldrich社の200mLガラス製クロマトグラフィーカラムの底にグラスウール(HPLCグレード)を入れることにより、イオン交換カラムを調製した。Dowex 1x2塩化物の形態(Sigma−Aldrich)と蒸留水との約20mLの混合物(体積比1:1)を加えた後、カラムの上部にグラスウール片を加えた。蒸留水でカラムをすすぎ、伝導率を測定した。伝導率が35μS/cm未満の場合、体積40mLのWFIをカラムに加えた。
【0203】
イオン交換のために、100mL Pyrexフラスコ内でSOM230酢酸塩(SOM230(Ac))試料を調製した。試料をWFIで希釈して最終体積を65.55mLとし、濃度をSOM230(Ac)3.8mg/mLとした。プラスチック製の使い捨てピペットを使用してSOM230(Ac)溶液をイオン交換カラムに移した。さらに20mLのWFIでPyrexフラスコをすすぎ、これもカラムに移した。カラムをWFIですすいだ際に、20mLの試料画分を収集した。各画分において伝導率を測定し、伝導率が75μS/cm未満になるまで画分を収集した。1000mL丸底フラスコ内に全ての画分を一緒にプールした(プール体積ca 180mL)。
【0204】
前のステップからの丸底フラスコを、次に使用するまで2〜8℃に維持した。Rotavaporにフラスコを装着し、最大回転速度の約80%で始動させた。ドライアイスと、99.5%および96%EtOHの混合物(体積比1:1)とを含むEtOH槽内に回転するフラスコを10分間降ろすことにより、溶液をシェル凍結させた。シェル凍結後、丸底フラスコを−80℃で30分維持してから凍結乾燥を開始した。
【0205】
材料をほぼ30時間凍結乾燥させた。その後、得られたSOM230塩酸塩(SOM230(Cl))の粉末を250mL Pyrexフラスコに量り入れて移した。回収されたSOM230(Cl)の総量は0.215gであり、イオン交換プロセスの収率86%をもたらした。ペプチド粉末は、次に使用するまで冷凍庫(<−15℃)内で保存した。
【0206】
SOM230塩酸塩の製剤分析
SOM230(Ac)とSOM230(Cl)の純度データ(HPLC)の比較は、イオン交換プロセスを通してSOM230材料の完全性が損なわれなかったことを示唆していた。酢酸塩/塩化物の重量比を考慮した場合、HPLCにより塩化物の含有量が5.15重量%であることが決定されたが、それは元のSOM230(Ac)薬粉中に測定された酢酸塩含有量である8.90重量%に良好に対応していた。SOM230(Cl)薬紛の分析によっていずれの酢酸イオンも検出されなかったことから、イオン交換プロセスが成功し、かつ完全であったことが示された。
【0207】
[溶解性]
表8および9に従ってSOM230(Ac)およびSOM230(Cl)をそれぞれ含む脂質製剤を、実施例1に記載されるように調製した。標的濃度は、約30mg/mLのSOM230(遊離塩基)濃度であった。
【0208】
【表10】
【0209】
【表11】
【0210】
短時間のボルテックス混合後、磁気撹拌機(500rpm)上で試料を室温で平衡化させた。1.5および24時間後に目視検査を行った。表8および9に示す全ての製剤は、24時間の混合後に透明かつ均質であったことから、酢酸塩形態および塩酸塩形態の両方の良好な溶解性が示唆される。同じ手順に従って、表8および9に記載されるものと同一の脂質および共溶媒組成物を含むSOM230パモ酸塩(SOM230(Pm))の製剤を調製した。
【0211】
[安定性の比較]
脂質/SOM230(Pm)、脂質/SOM230(Cl)、および脂質/SOM230(Ac)製剤を、60℃に設定した2つの2Rバイアルに分割し、調製物の残りの量をHPLCによりアッセイした(ゼロ時点)。
【0212】
60℃で保存した試料を、2週間後に目視検査およびHPLCのために保存から取り出した。
【0213】
HPLC分析の結果を図4に提供し、調査した製剤変形例について塩形態間の安定性プロファイルの違いを示す(SPC/GDOの重量比が全ての塩形態と均等であるため、製剤変形例は、図4中のそれらの溶媒組成物によって区別される)。60℃で2週間保存した後の結果は、SOM230パモ酸塩が脂質製剤中で最も安定した塩形態であることを明らかに示唆している。SOM230の塩酸塩も酢酸塩より安定していたが、パモ酸塩ほど安定ではなかった。
【0214】
実施例4−生体内薬物動態試験IおよびII
[製剤]
ラットにおける生体内薬物動態(PK)試験I(試験番号PK−12−437)に使用した製剤を表10に要約する。全ての製剤について、30mgのSOM230遊離塩基/mLに対応する一定のSOM230装填量(パモ酸塩)を選択した。異なる溶媒EtOH、EtOH/PG、およびEtOH/WFIの組み合わせについて調査した。SOM230パモ酸塩の異なる製剤変形例のPKプロファイルを特徴付けることが主要目的であった。
【0215】
【表12】
【0216】
ラットにおける生体内PK試験II(試験番号PK−12−438)に使用した製剤を表11に要約する。SOM230装填量の増加がPKプロファイルに与える影響を特徴付けることが主要目的であった。この試験には、表11に示されるように、各成分が10重量%である一定濃度の製剤の溶媒として、EtOHと水(WFI)の組み合わせを用いた。両方のPK試験において製剤4071S230−Cについて調査し、試験間に関連性を提供した。
【0217】
【表13】
【0218】
均質な液体製剤になるよう完全に混合した後に滅菌濾過ステップを加えて、本質的に実施例1に記載されるように表10および11中の製剤の製造を行った。Millipore社のPVDF0.2ミクロン膜フィルタを使用して、2.5バールの窒素圧下で製剤を滅菌濾過した。
【0219】
生体内試験の実行
オスSprague−Dawleyラット(体重ca 330g)に、表10中の製剤(PK−12−437)を動物当たり0.2mL(6mgのSOM230/動物)の投与量で皮下注射し、表11中の製剤(PK−12−438)を0.1mL/動物の投与量(4071S230−C、4071S230−E、4071S230−F、および4071S230−Gそれぞれについて、3、4、5、および6mgのSOM230/動物に対応する)で注射した。薬物動態のために、投与前、ならびに投与から1時間後、6時間後、1日後、7日後、14日後、21日後、28日後、および35日後に血液を採取した。舌下から出血させて0.5mLの血液試料をEDTA処理した試験管(Capiject 3T−MQK、Terumo Medical Corporation)に採取した。血液を採取した後、素早く氷上に配置し、30〜60分以内で遠心分離した(約1500×g、5℃で10分間)。適切に標示した半透明の1.5mLプロピレン製試験管(微小遠心管、Plastibrand,Buch&Holm)に血漿を移し入れ、ELISAアッセイによる生物学的分析まで−70℃未満で保存した。
【0220】
[薬物動態]
表10および11中のそれぞれの製剤のPKプロファイルを図5および6に提供する。
【0221】
図5のデータから明らかであるように、PKプロファイルは、Cmax/C28d血漿濃度の比が約3.1〜4.9と非常に平坦であり、Cmaxは、観察された最大血漿濃度であり、C28dは、注射後28日に観察された血漿濃度である。Cmax/Caverageの比に関して、Caverageは、標的とする28日の期間にわたる平均血漿濃度であり、この比は、それぞれのCmax/C28dの比よりも低くさえある。したがって、初期放出(またはバースト)が低く、その後一貫した血漿レベルが続いており、効果的なデポー製剤のPK要件を満たしている。表12に、PK−12−437で得られた主なPKパラメータを一覧にする。
【0222】
【表14】
【0223】
図6のデータも同様に、放出速度が経時的に一貫しており、非常に平坦なPKプロファイルが得られたことを示している。表11に示す製剤のCmax/C28dの血漿濃度の比は、約3.4〜9.2であった。Cmax/Caverageの比に関して、この比は、それぞれのCmax/C28dの比よりも低くさえある。表13に、PK−12−438で得られた主なPKパラメータを一覧にする。
【0224】
【表15】
【0225】
図7に示されるように、曝露に関する用量直線性(AUC)が明らかに示唆された(R=0.977)。図8に示唆されるように、Cmaxに関する用量直線性も示された(R=0.975)。
【0226】
実施例5−予備安定性試験
PK試験で評価した製剤(表10および11)を、予備安定性試験にも供した。これらの製剤に加えて、抗酸化剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含むさらに1つの製剤を製造した。さらなる製剤の製剤組成は、表14に提供される(他の製剤の組成については表10および11を参照のこと)。
【0227】
【表16】
【0228】
予備安定性試験設定の概要
各製剤をバイアル当たり0.8gで2Rバイアルに充填した後、窒素を5秒間流し、Teflonコーティングしたゴム製ストッパーおよびアルミ製圧着キャップで封をした。表10および14に提供される製剤の保存条件は、5℃、25℃/相対湿度60%、40℃/相対湿度75%、および60℃であったのに対し、表11に提供される製剤は、5℃および25℃/相対湿度60%で評価したのみであった。HPLC UV−DAD(ダイオードアレイ検出)分析の開始前に、必ず周囲室温で60分間試料を平衡化させた。
【0229】
[結果]
最長8週間保存した後にアッセイした(HPLCUV−DAD)ペプチドの含有量を表15および16に要約し、SOM230のピーク面積をSOM230のピークおよび関連物質の総面積で除して算出したペプチド純度を表17および18に要約する。
【0230】
【表17】
【0231】
【表18】
【0232】
【表19】
【0233】
【表20】
【0234】
以下の結論は、ペプチドの含有量および純度データに基づいて導き出された。
5℃では、SOM230の含有量および純度に変化は検出されなかった(実験変動の範囲内)。
【0235】
25℃では、ペプチドの含有量および純度におけるわずかな変化が検出されたのみであった。
【0236】
製剤型に応じて、40℃で8週間後にはペプチドの純度が2.6〜4.2%低下し、保存時間とともに分解速度が低下する傾向が見られた。
【0237】
B4071S230−1202−03(EDTAを含まない)と4071S230−1202−109(EDTAを含む)を比較することによって、EDTAを含めることの好ましい効果が検出された。
【0238】
実施例6−生体内PK試験III(PK−12−451)
[製剤]
ラットにおける生体内薬物動態(PK)試験III(試験番号PK−12−451)に使用した製剤を表19に要約する。調査したSOM230の濃度は、それぞれの製剤で40mgおよび50mgのSOM230遊離塩基/mLに対応する。全ての製剤にエタノール(EtOH)とプロピレングリコール(PG)の組み合わせを用いた。SOM230パモ酸塩の異なる製剤変形例のPKプロファイルを特徴付けることが主要目的であった。
【0239】
【表21】
【0240】
均質な液体製剤になるよう完全に混合した後に滅菌濾過ステップを加えて、本質的に実施例1に記載されるように表19中の製剤の製造を行った。Millipore社のPVDF 0.2ミクロン膜フィルタを使用して、2.5バールの窒素圧下で製剤を滅菌濾過した。
【0241】
[生体内試験の実行]
オスSprague−Dawleyラット(体重ca 330g)に、表19の製剤(PK−12−451)を動物当たり0.1mL(6mgのSOM230/動物)の投与量(4071S230−H、4071S230−J、4071S230−K、および4071S230−Iそれぞれについて、4および5mgのSOM230/動物に対応する)で皮下注射した。薬物動態分析のために、投与から1時間後、6時間後、1日後、3日後、7日後、14日後、21日後、28日後、および35日後に血液を採取した。舌下から出血させて0.5mLの血液試料をEDTA処理した試験管(Capiject 3T−MQK、Terumo Medical Corporation)に採取した。血液を採取した後、素早く氷上に配置し、30〜60分以内で遠心分離した(約1500×g、5℃で10分間)。適切に標示した半透明の1.5mLプロピレン製試験管(微小遠心管、Plastibrand,Buch&Holm)に血漿を移し入れ、ELISAアッセイによる生物学的分析まで−70℃未満で保存した。
【0242】
表19中のそれぞれの製剤のPKプロファイルを図10に提供する。
【0243】
図9のデータから明らかであるように、PKプロファイルは概して平坦であり、4071S230−Iでは最初の14日にわたっていくらか高めの血漿レベルが見られた。Cmax/C28dayの血漿濃度は、製剤変形例に応じて2.6〜8.4の範囲で異なっていた。
【0244】
最も低いCmax/C28day血漿レベルの比、したがってこの観点から、最も魅力的なPKプロファイルが、SPCではなくDOPCを含む4071S230−Jで得られたという事実は注目に値する(組成については表19を参照)。
【0245】
表20に、PK−12−451で得られた主なPKパラメータを一覧にする。
【0246】
【表22】
【0247】
実施例7−さらなる予備安定性試験
予備安定性試験設定の概要
安定性試験で調査した製剤の組成を表19に提供する。各製剤をバイアル当たり1.0gで2Rバイアルに充填した後、窒素を5秒間流し、Teflonコーティングしたゴム製ストッパーおよびアルミ製圧着キャップで封をした。保存条件は、5℃および25℃/相対湿度60%であった(ICHに準拠する)。HPLC UV−DAD(ダイオードアレイ検出)分析の開始前に、必ず周囲室温で60分間試料を平衡化させた。
【0248】
最長12週間の(HPLCUV−DADによる)SOM230純度分析
最長12週間保存した後のSOM230純度分析の結果を図10および11に表す。5℃ではSOM230の純度に変化は検出されなかった。25℃で12週間後に観察された全関連物質(RS=100%−分かったペプチドの純度)は、1.4〜1.9%の範囲であり、放出時の開始値(ゼロ時)は、0.9〜1.1%の範囲であった。SOM230(パモ酸塩)薬粉は、約0.7%の関連物質を含有することが分かり、したがって、このレベルは基準レベルとして採用されるべきである。SOM230薬粉の基準レベルに対して調節された、25℃で12週間後に見られた全関連RSまたは全分解産物が0.7〜1.3%の範囲であったのに対し、ゼロ時を基準とした最長12週間の全RSの増加は0.3〜0.9%の範囲であり、DOPCに基づく製剤は最も低いRSを示した(B4071S30−1206−11、表19を参照)。
【0249】
実施例8-DOPCを含むさらなるSOM230組成物
DOPCを含むSOM230の脂質製剤を実施例1に記載されるように調製し、混合プロセスの後に均質な液体を得た。製剤組成は、表21に提供される。
【0250】
【表23】
【0251】
23G薄壁16mm針を装着した使い捨ての1mLルアーロック注射器を使用して、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS pH 7.4)に製剤(0.2g)を注入した。全ての製剤が、PBSと接触すると粘着性の液晶ゲルを形成した。
【0252】
実施例9-DOPCおよび異なる溶媒含有量を含むSOM230組成物
均質な液体製剤になるよう完全に混合した後に滅菌濾過ステップを加えて、本質的に実施例1に記載されるように、DOPCおよび異なる溶媒含有量を含むSOM230の脂質製剤を調製した。Millipore社のPVDF 0.2ミクロン膜フィルタを使用して、2.5バールの窒素圧下で製剤を滅菌濾過した。製剤組成は、表22に提供される。
【0253】
【表24】
【0254】
23G薄壁16mm針を装着した使い捨ての1mLルアーロック注射器を使用して、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS pH 7.4)に製剤(0.2g)を注入した。全ての製剤が、PBSと接触すると粘着性の液晶ゲルを形成した。
【0255】
実施例10-高装填量SOM230組成物
均質な液体製剤になるよう完全に混合した後に滅菌濾過ステップを加えて、本質的に実施例1に記載されるように、DOPCおよび異なる溶媒含有量を含むSOM230の高装填量脂質製剤を調製する。Millipore社のPVDF 0.2ミクロン膜フィルタを使用して、2.5バールの窒素圧下で製剤を滅菌濾過する。製剤組成は、表23に提供される。
【0256】
【表25】
【0257】
23G薄壁16mm針を装着した使い捨ての1mLルアーロック注射器を使用して、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS pH 7.4)に製剤(0.2g)を注入する。全ての製剤が、PBSと接触すると粘着性の液晶ゲルを形成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11