特許第6374381号(P6374381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374381
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】医療コネクタ装置における配置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20180806BHJP
   A61M 39/16 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61M39/10
   A61M39/16
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-513966(P2015-513966)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公表番号】特表2015-517377(P2015-517377A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】SE2012050545
(87)【国際公開番号】WO2013176586
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2015年1月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503261731
【氏名又は名称】カルメル ファルマ アクチボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ローゼンクイスト
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−200098(JP,A)
【文献】 特開2011−025066(JP,A)
【文献】 特表2001−505102(JP,A)
【文献】 特表2001−506156(JP,A)
【文献】 特開2004−160206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0060804(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/146012(WO,A1)
【文献】 特表2008−518719(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0249724(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0287920(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0002351(US,A1)
【文献】 米国特許第05555908(US,A)
【文献】 米国特許第06626418(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0284561(US,A1)
【文献】 米国特許第04895570(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の医療器具を第2の医療器具に接続するための医療用移送接続装置(1)であって、
軸方向(A)および半径方向(R)を有し、第1の端部(8)、端部開口(10)のある第2の端部(9)、ならびに前記第1の端部(8)および前記第2の端部(9)間で前記軸方向(A)に延びる穴(4)を有する外側部品(2)を備え、
バリア部材(12)をバリア部材ホルダー(18)に保持し、かつ前記軸方向(A)に延びる中心管(7)を有する内側部品(3)は、前記外側部品(2)の前記穴(4)に入れ子式に配置され、
前記バリア部材(12)を有する前記内側部品(3)は、前記外側部品(2)の前記穴4)の中において、前記バリア部材(12)が前記中心管(7)を遮蔽して前記外側部品(2)の前記穴(4)の中に完全に位置付けされる遮蔽位置と、
前記バリア部材(12)が前記中心管(7)を遮蔽して前記バリア部材(12)の少なくとも一部が前記外側部品(2)の前記端部開口(10)を過ぎて軸方向に延びた状態の洗浄位置と、の間で軸方向に可動であり、前記バリア部材(12)の前記遮蔽位置において前記端部開口(10)に前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のうちの一つが接続され、
前記外側部品(2)は、前記外側部品(2)の開口に設置されるロック縁(26)を有し、
前記内側部品(3)は、当接面(17)を有するばね支柱(15)を有し、
前記バリア部材(12)が前記洗浄位置にある時、前記ばね支柱(15)の前記当接面(17)は、前記ロック縁と接触して前記ロック縁の真下の位置にあることを特徴とする医療用移送接続装置。
【請求項2】
前記外側部品(2)は少なくとも1つの軸方向に延びる溝(22、25)を備え、前記内側部品(3)は前記外側部品(2)内で前記少なくとも1つの溝(22、25)に摺動係合するための手段(15、19)を備えることを特徴とする請求項1に記載の医療用移送接続装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溝(25)に摺動係合するための前記手段は、前記ばね支柱(15)を備えることを特徴とする請求項2に記載の医療用移送接続装置。
【請求項4】
前記ばね支柱(15)は前記内側部品(3)の第2の端部(6)側へ延び、前記医療用移送接続装置(1)を通る中心軸(16)に対してわずかに外側に傾斜され、前記第2の端部(6)は前記バリア部材(12)同じ側にあることを特徴とする請求項3に記載の医療用移送接続装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝(22)に摺動係合するための前記手段は突起(19)を備えることを特徴とする請求項2、3、または4のいずれか一項に記載の医療用移送接続装置。
【請求項6】
前記溝(22)および前記突起(19)は、前記医療用移送接続装置(1)の前記外側部品(2)および前記内側部品(3)間にバヨネット嵌合を形成することを特徴とする請求項5に記載の医療用移送接続装置。
【請求項7】
前記医療用移送接続装置(1)は、前記内側部品(3)を前記遮蔽位置に解放可能にロックするための手段(24)を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療用移送接続装置。
【請求項8】
前記内側部品を前記遮蔽位置に解放可能にロックするための前記手段はロック突起(24)であることを特徴とする請求項7に記載の医療用移送接続装置。
【請求項9】
前記医療用移送接続装置(1)は、前記内側部品(3)を前記洗浄位置に解放可能にロックするための手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医療用移送接続装置。
【請求項10】
前記医療用移送接続装置(1)を前記第1の医療器具に接続するための接続手段(20、21)を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医療用移送接続装置。
【請求項11】
前記医療用移送接続装置(1)を前記第2の医療器具に接続するための接続手段を備え、前記第2の医療器具は、前記医療用移送接続装置(1)が前記遮蔽位置にあるときに前記バリア部材(12)を穿刺するように配置された穿刺部材を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医療用移送接続装置。
【請求項12】
前記内側部品(3)は前記接続手段(20、21)を備えることを特徴とする請求項10に記載の医療用移送接続装置。
【請求項13】
前記接続手段(20、21)は前記バリア部材(12)が前記洗浄位置にある場合に前記外側部品(2)内にあることを特徴とする請求項12に記載の医療用移送接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生的かつ安全な状態で、第1の医療器具を第2の医療器具に接続するための保護接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤調製、薬剤投与、または他の同様の医薬品の取扱いに関する主な問題は、医療従事者および薬剤師が、周囲空気に流出し得る薬剤または溶剤に晒される危険があることである。この問題は、細胞毒素、抗ウイルス剤、抗生物質、および放射性医薬品に関する場合に特に深刻である。ウイルス感染症等に関する試料を採取する際には、他の危険が生じ得る。
【0003】
一部の薬剤は、投与前に溶解または希釈されなければならず、これは、溶剤を1つの容器から、粉末状または液状の薬剤を含む密封されたバイアルへ、例えば針によって移送することを伴う。バイアル内部と周囲大気との間に圧力差が存在する場合、バイアルから針を引き抜く間、および針がバイアル内にある間、薬剤は気体として、またはエアロゾル化により、意図せず大気中へ放出されるおそれがある。
【0004】
これらの理由で、安全状態を高めた、薬剤および他の医療物質を取り扱い、投与するためのシステムが開発されている。
【0005】
特許文献1は、1つの容器から第2の容器へ物質を移送するときに空気汚染を防止するための流体移送装置を開示する。装置は、容器に取り付けられ、または接続可能であり、中空針等の穿刺部材が封入された第1の部材を備える。第1の部材は、針が通過可能な密封部材を有する。装置は第2の部材をさらに備え、第2の部材は、第1の部材に取外し可能に接続することができ、さらに密封部材を保持する。第1の部材および第2の部材が互いに接続されると、2つの密封部材が互いに対する位置に位置付けられて、密封部材に対して可動な穿刺部材により、それらが貫通され得るようにする。
【0006】
本明細書に開示された安全性の高い移送接続装置で使用される密封部材は、可撓性の弾性圧縮可能な、液体および気体を通さない膜であり、これは、液体成分および気体成分の流出を防止するために、穿刺部材の貫通および後退後にぴったりと密封することのできるバリアまたはセプタムとしても知られる。
【0007】
一般に使用される密封部材は、熱可塑性エラストマーポリマー材料(TPE)から作製されて、超音波溶着等の熱溶着により、部材が接続装置内に取り付けられるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,564,054号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医療用移送接続装置は、例えば医薬品の個々の用量をバイアルから取り出すとき、または注射装置をカテーテル、静脈注射装置等に接続するときに、繰り返し断続的に使用されるように設計される。各移送接続装置は、最終的に廃棄または交換される前に、最大10回等の多数回使用されることが珍しくない。装置は、使用後、次の使用まで、密封部材が環境に晒された状態で数時間置かれることがしばしばあり得る。接続装置は、無菌でない環境、ならびに病棟等の、細菌および他の危険物質による汚染の危険性が高くなり得る環境で使用される。接続装置はこのような状態で長時間使用されるおそれがあるため、密封部材で細菌が成長する危険に直面している。したがって、特に最後に使用してから長時間経過している場合、装置および特に装置の密封部材は、毎回新たに使用する前に洗浄されることが非常に望ましい。使用前に密封部材を十分に洗浄しないと、細菌が医療用移送システム内に入り、最終的に患者に送られて、苦痛を生じさせ、医療費を増加させる危険がある。
【0010】
したがって、医薬品等の流体の取扱いを伴う医療機器で使用するための医療用移送接続装置であって、容易かつ効率的に洗浄され得る医療用移送接続装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、第1の医療器具を第2の医療器具に接続するための医療用移送接続装置であって、軸方向および半径方向を有し、第1の端部、端部開口のある第2の端部、ならびに前記第1の端部および前記第2の端部間で前記軸方向に延びる穴を有する外側部品を備え、バリア部材を保持し、かつ前記軸方向に延びる中心管を有する内側部品は、前記外側部品の前記穴に入れ子式に配置され、前記バリア部材を有する前記内側部品は、前記外側部品の前記穴の中において、前記バリア部材が前記外側部品の前記穴の中に完全に位置付けされる遮蔽位置と、前記バリア部材の少なくとも一部が前記外側部品の前記端部開口を過ぎて軸方向に延びる状態で前記バリア部材が位置付けされる洗浄位置との間で軸方向に可動である、医療用移送接続装置が提供される。
【0012】
前記遮蔽位置では、前記移送接続装置の前記内側部品が前記外側部品の内側に完全に位置付けされ、前記バリア部材が前記外側部品によって半径方向に遮蔽される。前記洗浄位置では、前記バリア部材が前記移送接続装置の前記外側部品から突出し、洗浄のために容易に接近可能となる。洗浄後、前記内側部品は前記移送接続装置の前記外側部品内へ後退され得、これにより前記移送接続装置が使用できる状態になり、前記バリア部材が穿刺部材によって安全かつ衛生的に穿刺され得る。2つの医療装置間で物質を移送するための前記装置の使用中に、前記外側部品は前記バリア部材および前記穿刺部位を汚染から保護する役割を果たし、前記穿刺部材を保持する前記医療装置の安定接続または支持を形成する。前記装置の前記内側部品の前記中心管は、第1の医療装置の穿刺部材を前記移送接続装置に通すことができ、第2の医療装置から流体を除去するため、または前記第2の医療装置に流体を送達するためにそれが前記第2の医療装置に挿入されるときに、前記穿刺部材を案内および遮蔽する役割を果たす。
【0013】
したがって、本発明によれば、前記移送接続装置の前記内側部品および前記外側部品が互いに対して移動され得るため、前記内側部品の前記バリア部材は、それが容易に洗浄可能な位置へ移動され得る。当技術分野で公知の移送接続装置においては、前記バリア部材の洗浄は、前記移送接続装置内側の前記バリア部材に到達する綿チップを使用して行われる。それが前記移送接続装置内側の固定位置にあるため、前記バリア部材のすべての露出部分に到達して、これらを効率的に洗浄することは困難である。本発明による移送接続装置では、前記バリア部材が洗浄位置に置かれたときに、前記バリア部材が単純な拭取りによって迅速かつ十分に洗浄され得る。
【0014】
本発明による前記移送接続装置の前記外側部品および前記内側部品の相対的な伸縮運動は、任意の適切な方法で達成され得る。
【0015】
例えば、前記装置の前記外側部品は少なくとも1つの軸方向に延びる溝を備えることができ、前記内側部品は前記外側部品の少なくとも1つの溝に摺動係合するための対応する手段を備えることができる。
【0016】
前記少なくとも1つの溝に摺動係合するための手段は、ばね支柱、突起、隆起、または前記内側部品から突出する同様の要素を備えることができる。
【0017】
前記外側部品の溝に摺動係合するための前記手段がばね支柱を備えるとき、前記ばね支柱は前記内側部品の前記第2の端部側へ延びていてもよく、前記移送接続装置を通る中心軸に対してわずかに外側に傾斜されていてもよい。少なくとも2つのばね支柱が前記移送接続装置の前記内側部品に配置されることが好ましいとされ得る。2つ以上のばね支柱が使用されている場合、それらが前記内側部品に対称に配置されることが好ましい。例えば、2つのばね支柱が、前記内側部品上で互いに直径方向に対向して配置されることが好ましい。
【0018】
前記少なくとも1つの溝に摺動係合するための前記手段は、1または複数の突起を備えることができる。1または複数のばね支柱に加えて、または1または複数のばね支柱の代わりに、前記1または複数の突起が使用されてもよい。
【0019】
前記外側部品の前記溝および前記突起は、前記移送接続装置の前記外側部品および前記内側部品間にバヨネット嵌合を形成するように構成されてもよい。
【0020】
前記移送接続装置は、前記内側部品を前記遮蔽位置に解放可能にロックするための手段を備えることができる。さらに、前記移送接続装置は、前記内側部品を前記洗浄位置に解放可能にロックするための手段を備えることができる。前記ロック手段は、バヨネット嵌合、または、当技術分野で公知のように、前記外側部品の前記穴に配置された、止め切欠き、止め突起、スナップロック等の止め要素であってもよい。
【0021】
前記移送接続装置は、前記装置を医療バイアル、カテーテル等の第1の医療装置に接続するための手段を備えることができる。
【0022】
前記移送接続装置は、前記装置を、穿刺部材を備える第2の医療装置に接続するための接続手段を備えることができる。
【0023】
定義
「滅菌した」または「無菌」装置とは、生存微生物を除去するために滅菌方法を受けた装置を意味し、この方法は関連機関により現行製品について認められているものである。医療装置を「無菌」と指定するため欧州の現行規則は、欧州標準EN558−1に見られる。他の国では他の規則が存在し得る。滅菌は、エチレンオキシド滅菌、放射線による滅菌、または(湿)熱滅菌、または任意の他の認められた方法であってよい。欧州標準要件は、滅菌した装置に生存微生物が存在する理論上の可能性が1×10-6以下であることを意味する。
【0024】
本発明の移送接続装置のバリア部材は、「可撓性」、「拡張性」、および「圧縮性」と呼ばれる材料から作製される。本明細書で使用される場合、これらの表現は、外力の影響下で弾性的に屈曲、拡張または圧縮可能であり、外力が除去されると実質的に元の状態に戻る材料を意味するものである。「可撓性」材料とは、手で容易に折り畳まれ、ねじられ、もしくは湾曲され得る材料、または、ISO472:1999「プラスチック−用語」の定義による破壊または可視欠陥の発生なしで、繰り返し屈曲および/もしくは湾曲され得る材料を意味するものである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「エラストマー」は、弱い応力および応力の解除による実質的な変形後にその最初の寸法および形状に迅速に戻る高分子材料を意味する。この定義は室温試験条件下で当てはまり、IS0472:1999に見られる。
【0026】
移送接続装置の部品は、当技術分野で公知のように、比較的剛性のプラスチックから成形されてもよい。本発明の目的の剛性プラスチック材料は、通常の使用中にその形状を保持し、遮蔽位置および洗浄位置間で移送接続装置を操作するのに必要な力、または装置を第1の医療装置および第2の医療装置に接続するのに必要な力によって、屈曲または変形されない材料である。しかしながら、本発明による移送接続装置で有用な剛性プラスチック材料は、移送接続装置の組立中に生じる力等のより大きな力によって弾性的に屈曲および変形可能であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の添付図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
図1】使用中の構成における移送接続装置を示す図である。
図2図1の移送接続装置の端面図である。
図3図1の移送接続装置の分解図である。
図4図1の移送接続装置の外側部品の斜視図である。
図5図1の移送接続装置の内側部品の側面図である。
図6図2の線VI−VIに沿って取った、図1の移送接続装置の横断面図である。
図7図2の線VII−VIIに沿って取った、図1の移送接続装置の横断面図である。
図8図2の線VI−VIに沿って取った、洗浄位置における図1の移送接続装置の横断面図である。
図9図2の線VII−VIIに沿って取った、洗浄位置における図1の移送接続装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図9に示す医療用移送接続装置1は、全体が細長の管状を有し、内側部品3が外側部品2の中心穴4に挿入された状態で入れ子式に配置された外側部品2および内側部品3を備える。移送接続装置1は、軸方向Aおよび軸方向Aに垂直な半径方向Rを有する。内側部品3は、第1の端部5、第2の端部6、および軸方向Aに延び、外側部品2の中心穴4に同心に配置された中心通過管(中心管)7を有する。外側部品2は、第1の端部8および端部開口10のある第2の端部9を有し、中心穴4が第1の端部8と第2の端部9との間で延びる。内側部品3の中心管7は、外側部品2の第1の端部8に位置付けされた別の医療装置に穿刺部材を挿入する間、外側部品2の第2の端部9に位置決めされた医療装置上で穿刺部材を案内し保護するように配置される。
【0029】
内側部品3はバリア部材12を保持し、このバリア部材12は、図6および図7に最もよく見られるように、内側部品3の第2の端部6で、内側部品3の中心管7に当てられて中心管7を密封する。バリア部材は、本明細書で開示されるように、可撓性の弾性圧縮可能な膜またはセプタムであり、バリア部材12の一側からバリア部材12の他側への望ましくない物質の移送に対してバリアを形成する役割を果たして、2つの医療装置間の衛生的かつ安全な接続を確実にする。本発明のバリア部材は、当技術分野で公知のように、医療グレードのエラストマーポリマー材料から作製され得る。このような材料の例として、シリコーンエラストマー、天然エラストマー、および熱可塑性エラストマーポリマー材料(TPE)が挙げられる。熱可塑性エラストマーの例として、スチレンブロックコポリマー(TPS)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステル、およびポリエーテルブロックアミドが挙げられる。
【0030】
特に図2図3図5を参照すると、内側部品3は2つのばね支柱15を有する円筒体14を備え、ばね支柱15は、内側部品3の第2の端部へ向かって延び、移送接続装置1を通る中心軸16に対してわずかに外側に傾斜している。ばね支柱15は、互いに直径方向に対向して配置され、移送接続装置1の外側部品2の対応する当接面と協働するように配置された当接面17を有する自由端でそれぞれ終端する。ばね支柱15はロック部材および案内要素の両方としての役割を果たし、本明細書に開示されたようなこのような機能を果たす他の手段と置き換えられてもよい。ばね支柱の機能は、異なるロック要素および案内要素を使用することにより別個に行われてもよい。互いに対向して配置された2つのばね支柱を使用することが好ましいとされ得るが、1つのばね支柱のみを使用することが考えられる。2つ以上のばね支柱が使用されている場合、ばね支柱が内側部品上で対称に配置されることが好ましい。
【0031】
バリア部材ホルダ18は、内側部品3の第2の端部6に配置される。弾性バリア部材は、一般に、熱可塑性エラストマーポリマー材料(TPE)から作製されて、部材が超音波溶着によってバリア部材ホルダに取り付けられるようにすることができる。しかしながら、他のタイプの医療グレードのエラストマー材料が使用されてもよく、当業者に公知の任意の手段によってバリア部材が内側部品に取り付けられてもよい。バリア部材ホルダ18はバリア部材12を保持し、移送接続装置1の外側部品2の対応する溝と協働するように配置された、2つの半径方向に対向する突起19をさらに備える。
【0032】
内側部品3の第1の端部5は、内側部品3の円筒体14から延びる雄コネクタ20を備える。内側部品3の円筒体14の内側は、内ねじ21を備える。雄コネクタおよび内ねじは、カテーテル等の嵌合する医療装置と接続するための手段を構成する。本明細書に示す特定の接続手段は、本発明を限定するものと考えられるべきではなく、移送接続装置が装着される医療装置に応じて、他の接続手段が使用されてもよいことを理解されたい。
【0033】
図4に示すように、移送接続装置1の外側部品2は対向する溝22を備えており、これらの溝22は、外側部品2の内壁23に形成され、内側部品3の対応する突起19とバヨネット嵌合を形成するように配置される。ロック突起24が外側部品2の内壁に配置されて、内側部品3が外側部品2の遮蔽位置に解放可能にロックされた状態で維持する。移送接続装置1の内側部品3上のばね支柱15と協働する案内トラック25も、外側部品2の軸方向に配置される。本発明の範囲内で、ねじ結合等の、外側部品2と内側部品3との代わりの結合が使用されてもよい。さらに、ロック突起24は、外側部品2の壁に配置された弾性的に可撓性のロック舌等の別のロック要素に置き換えられてもよい。
【0034】
内側部品3のばね支柱15は、内側に押されたときに、半径方向Rにわずかに内側に湾曲され得る。本明細書に開示されたもの以外の案内要素およびロック手段の他の構成が本発明の範囲内で考えられるが、本明細書に開示されたばね支柱15が有する利点は、それらにより、外側部品2の第2の端部9の端部開口10から外側部品2の中心穴4へ内側部品3を押し込むことによって、移送接続装置1が容易に組み立てられ得ることである。内側部品3は、ばね支柱15が外側部品2の壁23のロック縁26を通り過ぎるまで、外側部品2に押し込まれる。内側部品3が外側部品2に入ると、ばね支柱15は最初に半径方向に押し合わされて、外側部品2の中心穴4に嵌入するためにわずかに湾曲する。ばね支柱15の傾斜構成により、内側部品3を外側部品2内へ案内するのを助ける。外側部品2の内側の所定位置に押し込まれると、外側部品2のロック縁26の真下に位置するばね支柱15の当接面17によって、ばね支柱15が弛緩した張力のかからない位置へ跳ね返ることにより、内側部品3が外側部品2から外れて落下することが禁止される。ばね支柱15がロック縁26の真下の位置にある状況が図9に最もよく示され、ここでは、バリア部材12が外側部品2の中心穴4の口で端部開口10から突出するように、第2の端部6が外側部品2の第2の端部9に位置決めされた状態で、内側部品3が配置される様子を示す。図8および図9に示されるように、外側部品2内での内側部品3の位置は、移送接続装置1の洗浄位置に対応する。
【0035】
内側部品3は、遮蔽位置および洗浄位置間で、外側部品2の穴4の中において軸方向に可動である。遮蔽位置は、図1図6図7に示され、移送接続装置1が動作可能であり、装置間で流体を移送するための2つの医療装置を接続するために使用され得る「使用中」位置でもある。
【0036】
遮蔽位置において、バリア部材12が、移送接続装置1の外側部品2内に完全に引き込まれ、外側部品2の壁により半径方向に遮蔽され保護されるように外側部品2の穴4の中に位置付けされる。遮蔽位置にあるときに、内側部品は外側部品2に関連して移動されて、図1に示すように内側部品3の第1の端部5が外側部品の第1の端部8で外側部品2から突出する状態で、内側部品3の第2の端部6が外側部品2の第1の端部8に位置付けされるようにする。これは、装置1が動作可能な遮蔽位置にあるときに、内側部品3の第1の端部5が装置1の第1の端部を形成し、外側部品2の第2の端部9が装置1の第2の軸方向反対側の端部を形成することを意味する。この構成では、移送接続装置1が、内側部品3の第1の端部5の雄コネクタ20および内ねじ21によって、カテーテル、バイアル、点滴バッグ、静脈注射装置、または別の医療用結合装置等の第1の医療装置に接続され得る。
【0037】
内側部品および装置の第1の端部5に結合される医療装置のタイプに応じて、第1の端部の接続手段は、図示した雄コネクタおよび内ねじと異なっていてもよい。したがって、当技術分野で公知のように、任意のタイプのねじ結合、バヨネット嵌合、スナップロック、ロックリング、スライド嵌合、クランプ等が使用されてもよい。図示した実施形態により示されるように、同一または異なる構造の2つ以上のロック要素が組み合わされて使用されて、接続装置1と第1の医療装置との結合を生じさせてもよい。同様の考察が、接続装置1の反対側端部と、第2の医療装置をその反対側端部に結合する結合要素を設けることに適用される。
【0038】
移送接続装置1が第1の医療装置に接続されると、それは続いて穿刺部材を保持する第2の医療装置に接続され得る。第2の医療装置は、外側部品2および移送接続装置1の第2の端部で移送接続装置1に接続される。第2の医療装置は、シリンジ、別の接続装置、針保護装置等の穿刺装置であってもよい。
【0039】
洗浄位置においては、ばね支柱15の当接面17が外側部品2の開口でロック縁26に接触するまで、内側部品3を外側部品2の穴4の中で摺動させることによって、バリア部材12が外側部品2の第2の端部9に移動される。図示した例では、バリア部材が摩擦力によって洗浄位置に保持される。希望に応じて、バリア部材を洗浄位置に解放可能にロックするための1または複数の要素が、装置に設けられていてもよい。このようなロック要素は、当技術分野で公知のように、ロック舌、ロック突起、ロック縁等であってもよい。洗浄位置において、バリア部材12は、移送接続装置1の軸方向Aで、移送接続装置1の外側部品2の少なくとも部分的に外側に位置付けされ、移送接続装置1が動作可能な遮蔽位置に戻される前に容易に洗浄され得る。
【0040】
特許請求の範囲内における本発明のさらなる修正が、当業者に明らかであろう。例えば、本明細書に開示されたロックおよび案内機構は、本発明から逸脱することなく、異なって設計され構成されてもよい。
図1
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図7
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図9