【文献】
Atsushi Takagaki,Hydrolysis of Sugars Using Magnetic Silica Nanoparticles with Sulfonic Acid Groups,Chem.Lett.,日本,2011年,vol.40,P.1195−1197
【文献】
C.S.GILL et al.,Sulfonic acid-functionalized silica -coated magnetic nanoparticle catalysts,Jourrnal of Catalysis,2007年,vol.251,P.145-152
【文献】
D.Zhao et al.,MnO2/SiO2-SO3H nanocomposite as hydrogen peroxide scavenger for durability improvement in proton exchange membranes,Journal of Membrane Science,2010年,vol.346,P.143-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
スルホン酸イオン交換基を含有するフッ素化ポリマーは、それらのイオン伝導特性のために、電解セル及び燃料電池等の電気化学的装置用の電解質膜の製造に幅広く使用されている。顕著な例は、例えば、水素を燃料として、及び酸素又は空気を酸化剤として用いるプロトン交換膜(PEM)燃料電池である。
【0004】
典型的なPEM燃料電池において、水素は、アノード部に導入され、ここで水素は反応し、プロトンと電子とに分離する。膜は、プロトンをカソード部に移送させ、一方、電子の流れが外部回路を通ってカソード部に流れて電力を供給することを可能にする。酸素は、カソード部に導入され、プロトン及び電子と反応して水及び熱を生成する。
【0005】
膜は、燃料電池の作動条件において、優れたイオン伝導性、ガスバリア特性(水素と酸素との直接混合を回避するために)、機械的強度並びに化学的、電気化学的及び熱的安定性を必要とする。特に、膜の長期安定性は決定的に重要な必要条件である:固定燃料電池用途向けの寿命目標は、40,000時間までの作動であり、20,000時間の作動は、自動車燃料電池用途向けの必要条件である。
【0006】
燃料電池の作動中に発生する過酸化水素ラジカル(
・OH、
・OOH)によるプロトン交換膜への攻撃が、膜分解の原因の一つとして、多くの場合説明されている。膜のラジカル分解は、燃料電池の寿命が減少する原因となっている。一般に、その他の機構の中でも、膜を通過する水素と酸素との間での反応の結果として、過酸化水素が生成すると考えられている。過酸化水素は次いで分解してペルオキシ及びヒドロペルオキシラジカルを生成する、例えばSCHLICK,S.らDegradation of fuel cell membranes using ESR methods:ex situ and in situ experiments.Polymer Preprints,2009,vol.50,no.2,p.745−746を参照されたい。ラジカルの直接的生成もまた可能であると考えられる。
【0007】
例えば、適切な金属の塩又は酸化物を膜に組み入れることによって、フッ素化プロトン交換膜のラジカル分解を低減させるいくつかの試みがなされてきた。燃料電池で使用するためのイオン交換膜の安定性を高めるための希土類金属、Al及びMnを含む、様々な金属の塩の使用は、とりわけ、欧州特許出願公開第1702378A号明細書(BDF IP HOLDINGS LTD)20.09.2006及び欧州特許出願公開第1662595A号明細書(豊田中央研究所)31.05.2006に開示されている。
【0008】
米国特許出願公開第20070213209号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS)13.09.2007は、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化マンガン、Y
2O
3、Fe
2O
3、FeO、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化ゲルマニウム、酸化セリウムの群からの金属酸化物と;金属イオン及び半金属イオン(例えばホウ素)の群から選択される安定剤と;安定剤とは異なる、そしてセリウム及びルテニウムの群から選択される少なくとも1つの触媒とを含む燃料電池膜電極アセンブリでの過酸化水素を分解させるための化合物を開示している。米国特許出願公開第20070213209号明細書に開示されている化合物は、安定剤で前もって変性された金属酸化物上に触媒を吸着させることによって調製される。触媒粒子は従って、金属酸化物の結晶格子中へ組み込まれておらず、従って膜中へ、そしてその後燃料電池の作動中に膜から浸出し得る。
【0009】
ZHAO,D.らMnO2/SiO2−SO3H nanocomposite as hydrogen peroxide scavenger for durability improvement in proton exchange membranes.J.Membrane Science,2010,vol.346,p.143−151は、有機スルホン酸基がそれらの表面上にグラフトされたナノサイズの混合MnO
2/SiO
2酸化物を開示している。これらの化合物は、SiO
2をナノサイズのMnO
2SiOの表面上に沈澱させ、引き続きSiO
2の表面ヒドロキシル基を、環状スルトン酸エステル等の、適切な有機スルホン化剤と反応させることによって製造される。Zhaoらに開示されている混合MnO
2/SiO
2酸化物において、MnO
2は、SiO
2と物理的に結び付いているにすぎず、これは、燃料電池の作動中にMn(II)へのMn(IV)の還元を、そしてMn(II)化学種のより高い溶解性を考えると、それらのその後の除去をもたらし得る。
【0010】
GILL,C.S.らSulfonic acid−functionalized silica−coated magnetic nanoparticle catalysts.J.Catalysis,2007,vol.251,p.145−152は、シリカ被覆磁性ナノ粒子支持体上へグラフトされた有機スルホン酸を含むハイブリッド有機/無機触媒を開示している。
【0011】
上記のシステムの両方において、有機水素化部分が、−SO
3H基をSiO
2表面にしっかりと固定している。無機酸化物中のこれらの水素化有機部分の存在は、それが燃料電池の高酸化性作動条件下に膜でのラジカル発生又はラジカル分解の追加源を提供し得るので、このシステムを燃料電池での使用にあまり適切でないものにすると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1目的は、無機基−SO
3Hを含むSiと少なくとも1つの金属Mとの混合酸化物[MO]である。
【0018】
「無機基−SO
3H」という用語は、混合酸化物[MO]中に存在する基−SO
3Hが有機部分に結合していないことを示すために混合酸化物[MO]に関連して本明細書では用いられ、ここで「有機部分」という表現は、少なくとも1個の炭素原子を含有する任意の部分を示す。混合酸化物[MO]中の基−SO
3Hは全て、無機基−SO
3Hである。
【0019】
理論に制約されることなく、基−SO
3Hは、混合酸化物表面に硫黄原子を介して結合していると考えられる。基−SO
3Hは、混合酸化物中の少なくとも1つのSi、金属M又は酸素原子に硫黄原子を介して結合している。典型的には、基−SO
3Hは、混合酸化物[MO]中の少なくとも金属Mの部分に硫黄原子を介して結合している。混合酸化物[MO]の表面上での結合基−SO
3Hの存在は、SiO
2のそれらに対して混合酸化物[MO]中の酸素原子のX線光電子スペクトルにおけるより高い結合エネルギー値の方へのシフトと相間がある。ARICO’,A.S.らSurface properties of inorganic fillers for application in composite membranes−direct methanol fuel cells.J.Power Sources,2004,vol.128,p.113−118に考察されているように、そのようなシフトは、酸化物表面のより高い酸性度と相間があり得る。
【0020】
混合酸化物[MO]中の少なくとも1つの金属Mは、周期表の族4、族5、族6、族7、族8、族9、族10、族11の元素、Al、Zn、La及びCeからなる群から選択される。疑念を回避するために、周期表の表記「族N」は、元素の標準IUPAC命名を意味する。例として「族4元素」という表現は、元素Ti、Zr及びHfを示すことが意図される。
【0021】
好ましくは少なくとも1つの金属Mは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、La、Ceからなる群から選択される。より好ましくは少なくとも1つの金属Mは、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Au、Ceからなる群から選択される。更により好ましくは少なくとも1つの金属Mは、Co、Cr、Ce及びMnからなる群から選択される。
【0022】
フッ素化イオン交換ポリマーの分解の低減の観点から、良好な結果は、少なくとも1つ金属MがCe又はCrである場合に得られた。
【0023】
2つ以上の金属Mが混合酸化物[MO]中に同時に存在してもよい。2つ以上の金属Mの任意の組み合わせが、任意の比で使用されてもよい。2つ以上の金属Mの適切な組み合わせは、例えば、CeとCr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auからなる群から選択される金属のうちのいずれかとの組み合わせ;CrとCe、Mo、W、Mn、Re、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auからなる群から選択される金属のうちのいずれかとの組み合わせ;MnとCr、Mo、W、Ce、Re、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auからなる群から選択される金属のうちのいずれかと組み合わせ;CoとCr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Ce、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auからなる群から選択される金属のうちのいずれかとの組み合わせからなる群から選択されるものである。好ましい組み合わせは、CeとCr、Co、Mnからなる群から選択される金属のうちのいずれかと組み合わせ;CoとCr、Ce、Mnからなる群から選択される金属のうちのいずれかと組み合わせ;CrとCe、Co、Mnからなる群から選択される金属のうちのいずれかと組み合わせ;MnとCr、Co、Ceからなる群から選択される金属のうちのいずれかと組み合わせからなる群から選択されるものである。
【0024】
フッ素化イオン交換ポリマーの分解の低減の観点から、良好な結果は、CeとCrとの組み合わせが少なくとも1つ金属Mとして使用される場合に得られた。典型的には、比Ce:Crは15:1〜1:15の範囲であってもよい。
【0025】
ある実施形態では、一種類の金属Mのみの混合酸化物[MO]が好ましい。
【0026】
混合酸化物[MO]中の重量比Si/M(ここでMは混合酸化物中の任意の金属Mの全量を示す)は、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2である。重量比Si/Mは、一般に40を超えず、好ましくはそれは25を超えない。典型的な重量比Si/Mは2.5〜20の範囲である。
【0027】
混合酸化物[MO]中の無機基−SO
3Hの量は、典型的には混合酸化物[MO]中の金属Mの原子の全量の少なくとも0.2%、好ましくは少なくとも0.5%である。混合酸化物[MO]中の無機基−SO
3Hの量は、無機基−SO
3Hが混合酸化物[MO]中のSi又は酸素原子に結合し得るので、混合酸化物中の金属Mの原子の全量に対して50%以下、100%以下であっても、更に100%より高くてもよい。
【0028】
混合酸化物[MO]中の無機基−SO
3H、金属M及びSiの量は、当業者に一般に知られているようにX線蛍光によって測定することができる。
【0029】
好ましくは混合酸化物[MO]は、上に定義されたようにいかなる有機部分も含有しない。
【0030】
本発明の混合酸化物[MO]は、以下の工程:
a)SiO
2、少なくとも1つの金属Mの水溶性塩及び少なくとも1つの無機基−SO
3H源を含む水性懸濁液を提供する工程と;
b)前記懸濁液を30〜100℃の温度で反応させてゲルを形成する工程と;
c)ゲルを30〜180℃の第1温度で、その後180〜350℃の第2温度で熱処理して固体形態の混合酸化物[MO]を得る工程と
を含む方法によって調製され得る。
【0031】
本方法の工程a)では水性懸濁液は、SiO
2、少なくとも1つの金属Mの水溶性塩及び少なくとも1つの無機基−SO
3H源を水相に分散させることによって調製される。この水相は、任意選択でアルコール等の極性溶媒を含んでもよい。
【0032】
コロイドシリカ、ヒュームドシリカ等の、任意のタイプのSiO
2が、混合酸化物の調製のために使用されてもよい。好ましくは、1nm〜100nm、好ましくは5〜50nmの粒径を有するSiO
2が好ましい。
【0033】
混合酸化物[MO]の調製のための適切な無機基−SO
3H源は例えば、NH
4)
2SO
3・H
2O、NH
4SO
3NH
2、HSO
3Cl、Na
2S
2O
5/NaHSO
3、(NH
4)HSO
3、H
2SO
4からなる群から選択されるものである。好ましくは無機基−SO
3H源は、(NH
4)
2SO
3・H
2Oである。
【0034】
「金属Mの水溶性塩」という表現は、20℃での水へのその溶解度が100mLの水当たり少なくとも10gのものである任意の金属Mの任意の塩を意味するように本明細書では用いられる。水溶性塩の顕著な例は、例えば硝酸塩、硫酸塩及び塩化物、好ましくは硝酸塩である。
【0035】
少なくとも1つの金属Mは、周期表の族4、族5、族6、族7、族8、族9、族10、族11の元素、Al、Zn、La及びCeからなる群から選択される。
【0036】
本発明の有利な実施形態では少なくとも1つの金属Mは、Co、Cr、Ce及びMnからなる群から選択される。対応する混合酸化物[MO]の調製のための適切な塩の非限定的な例は、Ce(NO
3)
3・6H
2O、Cr(NO
3)
3・9H
2O、Co(NO
3)
2・6H
2O、Mn(NO
3)
2・4H
2Oである。
【0037】
本方法の工程a)ではSiO
2は典型的には、水性懸濁液に加えられる試薬の全量の70〜90重量%、好ましくは75〜85重量%である。
【0038】
少なくとも1つの金属Mの塩は典型的には、水性懸濁液に加えられる試薬の全量の8〜20重量%、好ましくは10〜18重量%である。
【0039】
無機基−SO
3H源は典型的には、水性懸濁液に加えられる試薬の全量の2〜10重量%、好ましくは5〜7重量%である。
【0040】
水性懸濁液は、SiO
2、少なくとも1つの金属Mの水溶性塩及び少なくとも1つの無機基−SO
3H源、好ましくは(NH
4)
2SO
3・H
2Oを、任意の順に加えることによって調製され得る。
【0041】
本方法の工程b)は、30〜100℃、好ましくは50〜90℃からなる温度で、典型的には攪拌下に、実施される。SiO
2、少なくとも1つの金属Mの水溶性塩及び少なくとも1つの無機基−SO
3H源が、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも1時間反応するのを許される。概して反応時間は20時間を超えず、典型的にそれは15時間を超えない。
【0042】
この反応はゲルの形成をもたらす。ゲルと液相とを含む、二相系が生成する場合、ゲルの分離が、当技術分野で既知の任意の手順に従って実施されてもよい。
【0043】
工程b)で得られたゲルは次いで、2段階熱処理プロセスにかけられる。第1熱処理は、30〜180℃、好ましくは60〜180℃、より好ましくは100〜170℃からなる温度で行われる。第1熱処理は、工程b)で得られたゲルから水を除去するのに十分な時間実施される。典型的には第1熱処理は、少なくとも30分、そして一般に10時間まで実施される。好ましくはゲルの温度は、例えば1〜5℃/分の速度で温度を高めることによって、室温から第1熱処理温度まで徐々に上げられる。
【0044】
第1熱処理に、180〜350℃、好ましくは200〜330℃、より好ましくは250〜320℃からなる温度での第2熱処理が続く。典型的にはこの第2熱処理は、少なくとも30分間実施され、一般にそれは10時間を超えず、好ましくは1〜5時間である。好ましくは温度は、例えば1〜5℃/分の速度で温度を高めることによって、第1熱処理温度から第2熱処理温度まで徐々に上げられる。熱処理の終わりに固体形態の混合酸化物[MO]が得られる。
【0045】
使用前に混合酸化物[MO]は、混合酸化物[MO]の表面上の基を全て酸性基に変換するために、且つ更にその表面上に吸着されている可能性があるいかなる金属、金属イオン及び/又はイオンをも除去するために水性H
2SO
4溶液で処理され、その後乾燥されてもよい。水性H
2SO
4溶液は典型的には、0.1〜3M、好ましくは0.2〜2Mの濃度を有する。この酸処理は、40〜80℃の温度で実施されてもよい。
【0046】
本発明の更なる目的は、−SO
2X官能基[式中、XはX’から又はOZから選択され、ここで、X’は、F、Cl、Br、Iからなる群から選択され、Zは、H、アルカリ金属、NH
4からなる群から選択される]を含む少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、上に詳述されたような少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む組成物である。
【0047】
「フッ素化」という表現は、完全にか部分的にかのどちらかでフッ素化されている、即ち、水素原子の全部又は一部のみがフッ素原子で置換されている化合物(例えば、化合物、ポリマー、モノマーなど)を意味するように本明細書では用いられる。好ましくは、「フッ素化」という用語は、水素原子よりも高い割合のフッ素原子を含有する化合物を意味し、より好ましくはこの用語は、水素原子を全く含まない、即ち、水素原子が全てフッ素原子で置き換わっている化合物を意味する。
【0048】
本発明との関連において「少なくとも1つの」という表現は、「フッ素化ポリマー」に及び/又は「混合酸化物[MO]」に言及する場合、1つ又は2つ以上のポリマー及び/又は混合酸化物[MO]を示すことが意図される。ポリマー及び/又は混合酸化物[MO]の混合物は、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0049】
本組成物は、中性型の少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含んでもよく、ここで「中性型」という表現は、−SO
2X官能基において、XがX’であり、且つX’がF、Cl、Br、Iからなる群から選択されることを示す。好ましくはX’はF又はClから選択される。より好ましくは、X’はFである。
【0050】
或いは、本組成物は、イオン(酸又は塩化)型の少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含んでもよく、ここで「イオン型」という表現は、−SO
2X官能基において、XがOZであり、且つZがH、アルカリ金属、NH
4からなる群から選択されることを示す。
【0051】
疑念を回避するために、「アルカリ金属」という用語は、以下の金属を示すことが本明細書によって意図される:Li、Na、K、Rb、Cs。好ましくはアルカリ金属は、Li、Na、Kから選択される。
【0052】
−SO
3Z官能基(ここでX=OZ)を含むフッ素化ポリマーは典型的には、当技術分野で既知の方法によって、−SO
2X’官能基、好ましくは−SO
2F官能基を含むフッ素化ポリマーから製造される。
【0053】
フッ素化ポリマーは、強塩基(例えば、NaOH、KOH)で、−SO
2X’官能基、典型的には−SO
2F官能基を含む対応するポリマーを処理することによって、その塩化型(即ち、ZはNH
4及びアルカリ金属からなる群から選択されるカチオンである)で得ることができる。
【0054】
フッ素化ポリマーは、濃厚酸性溶液で対応する塩化型のポリマーを処理することによって、その酸型(即ち、ZはHである)で得ることができる。
【0055】
−SO
2X’官能基を含む適切なフッ素化ポリマーは、少なくとも1つの−SO
2X’官能基を含有する少なくとも1つのエチレ系不飽和フッ素化モノマー(本明細書で以下に定義されるようなモノマー(A))に由来する繰り返し単位と、少なくとも1つのエチレン系不飽和フッ素化モノマー(本明細書で以下に定義されるようなモノマー(B))に由来する繰り返し単位とを含むそれらのポリマーである。
【0056】
「少なくとも1つのモノマー」という句は、1つ又は2つ以上のそれぞれのタイプのモノマーが、ポリマー中に存在できることを示すために、タイプ(A)及び(B)の両方のモノマーに関して、本明細書では用いられる。本明細書では以下、モノマーという用語は、1つ及び2つ以上の所定のタイプのモノマーの両方を意味するために用いられる。
【0057】
適切なモノマー(A)の非限定的な例は以下である:
− 式:CF
2=CF(CF
2)
pSO
2X’[式中、pは0〜10、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくはpは2又は3に等しく、好ましくは、X’=Fである]のスルホニルハライドフルオロオレフィン;
− 式:CF
2=CF−O−(CF
2)
mSO
2X’[式中、mは1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4の整数であり、更により好ましくはmは2に等しく、好ましくは、X’=Fである]のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
− 式:
CF
2=CF−(OCF
2CF(R
F1))
w−O−CF
2(CF(R
F2))
ySO
2X’
[式中、wは0〜2の整数であり、等しいか又は互いに異なる、R
F1及びR
F2は独立して、F、Cl又は1個若しくは複数のエーテル酸素で任意選択により置換された、C
1〜C
10フルオロアルキル基であり、yは0〜6の整数であり;好ましくはwは1であり、R
F1は−CF
3であり、yは1であり、且つR
F2はFであり、好ましくは、X’=Fである]のスルホニルハライドフルオロアルコキシビニルエーテル;
− 式CF
2=CF−Ar−SO
2X’
[式中、ArはC
5〜C
15芳香族又はヘテロ芳香族置換基であり、好ましくは、X’=Fである]のスルホニルハライド芳香族フルオロオレフィン。
【0058】
好ましくはモノマー(A)は、スルホニルフルオリド(即ち、X’=Fである)の群から選択される。
【0059】
より好ましくはモノマー(A)は、式CF
2=CF−O−(CF
2)
m−SO
2F[式中、mは1〜6、好ましくは2〜4の整数である]のフルオロビニルエーテルの群から選択される。
【0060】
更により好ましくはモノマー(A)は、CF
2=CFOCF
2CF
2−SO
2F(パーフルオロ−5−スルホニルフルオリド−3−オキサ−1−ペンテン)である。
【0061】
タイプ(B)の適切なエチレン系不飽和フッ素化モノマーの非限定的な例は以下である:
− テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン等の、C
2〜C
8フルオロオレフィン;
− フッ化ビニリデン;
− クロロトリフルオロエチレン及びブロモトリフルオロエチレン等の、C
2〜C
8クロロ−及び/又はブロモ−及び/又はヨード−フルオロオレフィン;
− 式CF
2=CFOR
f1[式中、R
f1はC
1〜C
6フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である]のフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOR
O1[式中、R
O1は、1個若しくは複数のエーテル基を有するC
1〜C
12フルオロ−オキシアルキル、例えばパーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである]のフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOCF
2OR
f2[式中、R
f2はC
1〜C
6フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7であるか又は1個若しくは複数のエーテル基を有するC
1〜C
6フルオロオキシアルキル基、例えば−C
2F
5−O−CF
3である]のフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル;
− 式:
[式中、等しいか又は互いに異なる、R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6のそれぞれは独立して、フッ素原子、任意選択で1個若しくは複数の酸素原子を含む、C
1〜C
6フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である]
のフルオロジオキソール。
【0062】
好ましくはモノマー(B)は、以下の中で選択される:
− C
3〜C
8フルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン及び/又はヘキサフルオロプロピレン;
− クロロトリフルオロエチレン及び/又はブロモトリフルオロエチレンのような、クロロ−及び/又はブロモ−及び/又はヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン;
− 式CF
2=CFOR
f1[式中、R
f1はC
1〜C
6フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である]のフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOR
O1[式中、R
O1は、パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルのような、1個若しくは複数のエーテル基を有するC
1〜C
12フルオロオキシアルキルである]のフロオロ−オキシアルキルビニルエーテル。
【0063】
より好ましくは、モノマー(B)はテトラフルオロエチレンである。
【0064】
−SO
2X’官能基を含むフッ素化ポリマーは、当技術分野で既知のいかなる重合方法によっても製造可能である。そのようなポリマーの適切な製造方法は、例えば欧州特許出願公開第1323751A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)02.07.2003及び欧州特許出願公開第1172382A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)16.11.2002に記載されているものである。
【0065】
混合酸化物[MO]は、フッ素化ポリマーのラジカル分解の程度を低減するのに十分な任意の量で組成物中に存在する。
【0066】
組成物中の混合酸化物[MO]の量は、フッ素化ポリマー中の−SO
2X官能基のモル当たりの金属Mのモルが、少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.2%、より好ましくは少なくとも0.5%であるようなものである。フッ素化ポリマー中の−SO
2X官能基のモル当たりの金属Mのモルの観点からの組成物中の混合酸化物[MO]の量は一般に、20%を超えず、好ましくはそれは15%を超えず、より好ましくはそれは10%を超えない。
【0067】
本組成物は、従来の方法を用いて調製され得る。
【0068】
フッ素化ポリマー及び混合酸化物[MO]の両方が、固体の形態で、例えば、粉体、ペレット又は顆粒の形態で提供される場合、組成物は、乾燥ブレンディング、メルトブレンディング、又は押出等の技術を用いて調製され得る。
【0069】
或いは、フッ素化ポリマーと少なくとも1つの混合酸化物[MO]とは、液状組成物を提供するために適切な溶媒の存在下でブレンドされてもよい。この方法は、フッ素化ポリマーが、−SO
3Z官能基(式中、Zは、上に定義されている通りである)、及び特に−SO
3H官能基を含む組成物の調製に有利である。
【0070】
液状組成物は、フッ素化ポリマーが、適切な温度条件下に液体媒体と接触する溶解プロセスによって調製され得る。
【0071】
一般に、液状組成物は、液体媒体として水又は水/アルコール混合物を含み、任意選択で更なる成分及び/又は添加剤を含む。
【0072】
特に水/アルコール混合物として、使用可能である適切なアルコールは、特にメタノール、エタノール、プロピルアルコール(即ち、イソプロパノール、n−プロパノール)、エチレングリコール、ジエチレングリコールである。
【0073】
使用可能であるその他の液体媒体は、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチルのようなエステル類、アセトニトリルのようなニトリル類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンのようなピロリドン類等の極性の非プロトン性有機溶媒である。
【0074】
良好な結果は、液体媒体が水又は水とアルコールとの、好ましくは水とプロピルアルコールとの混合物である液状組成物を使って得られた。
【0075】
液状組成物は、オートクレーブ中で40℃〜300℃の温度で、水又は水とアルコールとの混合物とフッ素化ポリマーを接触させることによって有利には調製され得る。
【0076】
混合酸化物[MO]は、純粋な状態で又は上記のものように、溶媒に事前に懸濁させた後に、フッ素化ポリマーを含む液状組成物に加えられてもよい。
【0077】
本発明の更なる目的は、液体媒体中に分散又は溶解させた、−SO
2X官能基を含む少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む液状組成物である。典型的には液体媒体は、水又は水とアルコールとの混合物である。
【0078】
好ましくは液状組成物中のフッ素化ポリマーは、そのイオン形態にある、即ち、それは、−SO
3Z官能基(式中、Zは上に定義された通りである)、特に−SO
3H官能基を含む。
【0079】
少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む液状組成物は、任意選択で更なる成分を含んでもよい。
【0080】
本発明の組成物は、本発明の混合酸化物[MO]の存在が、使用条件でのそれらから得られたプロトン交換膜のより長い寿命によって示されるように−SO
2X官能基を含むフッ素化ポリマーのラジカル分解に対する耐性を向上させることを示しているので、燃料電池で使用するためのプロトン交換膜及び電極触媒層の製造に特に適切である。
【0081】
本発明の更なる目的は、−SO
2X官能基を含む少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、上に定義されたような少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む物品である。
【0082】
第1実施形態ではこの物品は、本明細書では「膜」とも言われる、燃料電池用途向けのプロトン交換膜である。
【0083】
典型的には−SO
2X’官能基、好ましくは−SO
2F官能基を含む少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、少なくとも1つの固体形態での混合酸化物[MO]とを含む組成物は有利には、従来の押出技術によって膜へ変換されてもよい。
【0084】
押出成形されたフィルムは、その後、上述のように、加水分解、即ち、対応する−SO
3H官能基への−SO
2X’官能基の変換によって、イオン伝導膜に変換することができる。
【0085】
膜は、含浸、キャスティング、塗工、例えばローラー塗工、グラビア塗工、リバースロール塗工、浸し塗工、吹付塗工等の、当技術分野で既知の技術を用いて、−SO
3Z官能基、好ましくは−SO
3H官能基を典型的には含む、少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む液状組成物から得ることができる。
【0086】
本発明の膜は任意選択で、例えば、押出成形した膜を適切な補強支持体に積層することによって、又は液状組成物を多孔質支持体に含浸させることによって、補強されてもよい。適切な支持体は、多種多様な構成要素から作成することができる。多孔質支持体は、織又は不織ポリオレフィン膜、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等の炭化水素ポリマー、又はポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)から作成することができる。フッ素化ポリマーの多孔質支持体が一般に、化学的に非常に不活性であることから、燃料電池用途での使用に好ましい。二軸延伸PTFE多孔質支持体(別名ePTFE膜としても知られる)は、好ましい支持体の一つである。これらの支持体はとりわけ、商品名GORE−TEX(登録商標)、TETRATEX(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0087】
第2実施形態ではこの物品は、電極触媒層である。
【0088】
電極触媒層は、典型的には−SO
3Z官能基、好ましくは−SO
3H官能基を含む、少なくとも1つのフッ素化ポリマー、及び少なくとも1つの混合酸化物[MO]に加えて触媒粒子を含む液状組成物から出発して有利には製造され得る。前記液状組成物は一般に、「触媒インク」と言われる。典型的な触媒粒子は、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、白金、ルテニウム、金、パラジウム、ロジウム、イリジウムのような金属;それらの導電性酸化物及び合金の中から選択される活性化合物を含む。活性化合物は一般に、本明細書で「支持体」と呼ばれる、適切な材料、好ましくは導電性である材料上に担持される。支持体は有利には、炭素粉末、例えばカーボンブラックから選択される。
【0089】
触媒インク中の触媒粒子(支持体がある場合はそれを含む)の量は一般に、触媒インクの全重量を基準として少なくとも1重量%である。好ましくは、その量は少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%である。触媒インク中の触媒粒子(支持体がある場合はそれを含む)の量は有利には、触媒インクの全重量を基準として最大で50重量%、好ましくは最大で40重量%、より好ましくは最大で30重量%である。
【0090】
電極触媒層は例えば、プロトン交換膜の表面上に触媒インクをスクリーン印刷又は溶液塗布することによって製造され得る。プロトン交換膜は、触媒インク中に存在する混合酸化物[MO]と同じ若しくは異なる組成を有する、混合酸化物[MO]を含んでもよいし、又はそれは混合酸化物[MO]を含まなくてもよい。
【0091】
第3実施形態ではこの物品は、膜電極アセンブリである。膜電極アセンブリは、第1および第2表面を有する膜と、前記第1表面に接着された第1電極触媒層と、前記第2表面に接着された第2電極触媒層とを含み、ここで前記膜、前記第1又は第2電極触媒層の少なくとも1つは、−SO
2X官能基を含む少なくとも1つのフッ素化ポリマーと、上に定義されたような少なくとも1つの混合酸化物[MO]とを含む。混合酸化物[MO]が膜電極アセンブリの2つ以上の構成要素中に存在する場合、それは同じものであっても異なるものであってもよい。
【0092】
混合酸化物[MO]という又はその調製方法という脈絡の中で以前に定義された全ての定義及び好ましさは、混合酸化物とフッ素化ポリマー組成物とを含む組成物に並びに前記組成物を含有するあらゆる物品に適用される。
【0093】
本発明はこれから、以下の実施例に関してより詳細に説明されるが、その目的は単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0094】
参照により本明細書に援用されている特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、万一、用語を不明瞭にしかねないほどに本記載に抵触する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0095】
特性決定
X線蛍光(XRF)分析は、Si、Sの、及び金属Mの量を測定するために混合酸化物について標準手順に従って行われ、試料のXRF分析は、1kWの電力で作動する、そしてRh X線源、LiF220結晶分析計及び0.12°発散コリメータを備えたBruker AXS S4 Explorer分光計で実施された。
【0096】
X線光電子分光法(XPS)分析は、酸化状態及び結合エネルギーの観点から混合酸化物の表面特性を特性決定するために行われた。XPS測定は、Physical Electronics(PHI)5800−01分光計を用いることによって行われた。単色AlKαX線源を350Wの電力にて用いた。スペクトルは、元素分析(組成)のためには58.7eV及び酸化状態の測定のためには11.75eVのパスエネルギーで得られた。分光計の分析チャンバー中の圧力は、測定の間ずっと1×10
−9トールであった。AgフォイルのAg 3d5/2ピークを、結合エネルギー尺度の較正をチェックするために、アルゴンスパッタリング後に撮影した。各ピークの定量的評価は、積分ピーク面積を、イオン化断面積、平均自由電子の脱出深さ及び分光計の測定透過関数から計算される原子感度因子で割ることによって得られた。XPSデータは、PHI MULTIPAK 6.1ソフトウェアに実装された酸化状態のオンライン図書館及びPHI Handbook of X−ray photoelectron spectroscopy(X線光電子分光法ハンドブック)を用いることによって解釈された。XPSスペクトルの解析は、MULTIPAKソフトウェアを用いることによって実施された。
【0097】
実施例1−本発明による混合酸化物[MO]の調製のための一般的な手順
密閉容器中でSiO
2(Cabot Corp.によって供給されるCab−o−sil(登録商標)EH−5)、金属Mの水溶性無機塩及び(NH
4)
2SO
3・H
2Oを水に懸濁させた。
【0098】
重量比SiO
2:金属Mの塩:(NH
4)
2SO
3・H
2Oは8:1.5:0.5であった。スラリーを80℃にて10時間攪拌し、ゲルを提供した。このようにして得られたゲルを、以下の条件に従って熱処理した:
− 室温から150℃まで(1時間昇温、2.5℃/分);
− 150℃にて2時間;
− 150℃から300℃まで(1時間昇温、2.5℃/分);
− 300℃にて2時間。
【0099】
熱処理の終わりに得られた粉末を室温まで冷却し、次いで0.5MのH
2SO
4 溶液で金属M及び硫黄の量の変化が試料のXRF分析によって全く測定されなくなるまで70℃にて洗浄した。粉末を、80℃にて2時間真空下に乾燥し、次いで200rpmにて2時間惑星のボールミルですり潰した。
【0100】
表1は、調製された混合酸化物ならびにそれらの組成をリストする。
【0101】
【0102】
CeとCrとの混合酸化物は、SiO
2、Ce(NO
3)
3・6H
2O、Cr(NO
3)
3・9H
2O及び(NH
4)
2SO
3・H
2Oを、8:0.75:0.75:0.5のSiO
2:Ceの塩:Crの塩:(NH
4)
2SO
3・H
2Oの重量比で水中で混合することによって同じ一般的な手順に従って調製した。結果として生じた混合酸化物[MO−Ce−Cr]中の比Ce:Crは1:9であった。
【0103】
実施例2−−SO
3H官能基を含むフッ素化ポリマー(P1)の製造
22Lのオートクレーブ中に以下の試薬を装入した:
11.5Lの脱塩水;
980gの式:CF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fのモノマー
3100gのCF
2ClO(CF
2CF(CF
3)O)
n(CF
2O)
mCF
2COOK(平均分子量=521、比n/m=10)の水中5%重量%溶液。
【0104】
470rpmにて攪拌される、オートクレーブを60℃に加熱した。6g/Lの過硫酸カリウムの水性溶液を150mLの量で加えた。圧力を、テトラフルオロエチレンを供給することで12バール(絶対)の値に維持した。
【0105】
1200gのトリフルオロエチレンを反応器に加えた後、220gのモノマーCF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fを、オートクレーブに供給された200gのトリフルオロエチレン毎に加えた。
【0106】
攪拌を止め、オートクレーブを冷却し、トリフルオロエチレンをベントして内部圧力を低減することによって、280分後に反応を止めた;合計4000gのトリフルオロエチレンを供給した。
【0107】
次いで、ラテックスを、凍結及び解凍することによって凝固させ、回収されたポリマーを水で洗浄し、150℃にて24時間乾燥した。次いでポリマーを、80℃にて8時間金属容器中フッ素ガスで処理し、次いで窒素で数時間パージして、あらゆる残存する不安定な末端基を除去した。
【0108】
このようにして得られたポリマーを80℃にて8時間KOH溶液(10重量%)に浸漬し、引き続き室温にて脱塩水で洗浄した。室温にて2時間HNO
3溶液(20重量%)に浸漬させた後、室温にて脱塩水で洗浄して、全ての官能基を−SO
3H官能基に変換させた。
【0109】
次いで、結果として生じた−SO
3H形のフッ素化ポリマー(P1)を80℃にて真空オーブン中で乾燥した。ポリマーの当量(EW)は、790g/当量であると(前駆体ポリマーに関するIR分析で)測定された。
【0110】
実施例3−P1と実施例1で調製された混合酸化物とを含む液状組成物
実施例1で調製された混合酸化物のそれぞれ1つを、1−プロパノール中に室温にて懸濁させ([MO]/1−ポロパノール=1/50w/w)、次いで2時間超音波処理し、固体の完全な分散系を得た。分散系中の固形分を、熱天秤を用いて測定した(160℃、45分)。次いで、このようにして得られた混合酸化物の分散系を、1−プロパノール(36g)及びN−エチルピロリドン(15.5g)を更に含むP1(100g)の水分散系に加えた。この混合物を室温にて15分間攪拌し、無色透明の溶液を得た。
【0111】
液状組成物のそれぞれの調製に加えられる混合酸化物[MO]の及びP1の量は、フッ素化ポリマーP1中の−SO
3H基のモル当たり1%モルの金属Mという組成物中の金属の最終濃度を得るように計算した。
【0112】
実施例4−膜の製造−一般的な手順
100mmの内径を有するPTFE円形フレーム上に取り付けられた、0.2μmの平均孔径(製品データシートに明記されているように)及び35±10μmの厚さを有する、発泡PTFE支持体(TETRATEX(登録商標)#3101)を、実施例3で得られた液状組成物のそれぞれに並びにポリマーP1単独を含有する液状組成物に浸漬し、次いで、65℃の温度で1時間、90℃にて1時間及び次いで90℃〜190℃にて1時間ベントオーブン中で乾燥した。
【0113】
このようにして得られた膜は、透明であり、且つ無色であり、支持体の細孔の完全な閉鎖状態を示した。結果として生じた膜の厚さは25±5μmであった。
【0114】
実施例5−実施例4で製造された膜の燃料電池の特性決定
実施例4に記載されたように得られた膜を、25cm
2の活性面積で単一電池(Fuel Cell Technology(登録商標))に組み付け、Arbin(登録商標)50W試験台で試験した。膜を、E−TEK(登録商標)LT250EWガス拡散電極(0.5mg/cm
2 Pt)に組み付けた。
【0115】
0.6Vの固定電圧における24時間の調整後に、分極曲線を測定して膜性能を検証した。本発明の混合金属酸化物を含有する膜の導電率は、基準膜(M1)の導電率と違わないことが分かった。
【0116】
膜を、以下の作動条件にて試験した。
アノード側方流:500sccm純H
2、64℃露点、1バール(絶対)
カソード側方流:500sccm純O
2、64℃露点、1バール(絶対)
電池温度:90℃
開放回路電圧条件(=電流0アンペア)
【0117】
電圧を試験の間ずっとモニターした。試験の終了は、典型的には膜にピンホールの形成を示すとされる、0.7V未満の電圧に設定した。結果を表2に報告する。
【0118】
【0119】
フッ素化ポリマー(P1)単独を含む膜(基準膜M1)に対して、本発明の混合酸化物を含む膜は、燃料電池作動条件下に安定性の著しい増加を示す。
【0120】
実施例6及び比較例1−[MO−Ce]及びCe(III)を含む膜
液状組成物を、実施例1で調製された[MO−Ce]とポリマーP1とから出発して実施例3に記載されたように調製してフッ素化ポリマーP1中の−SO
3H基のモル当たり2.5%モルのCeの組成物中のセリウムの最終濃度を得た。
【0121】
フッ素化ポリマーP1とフッ素化ポリマーP1中の−SO
3H基のモル当たり2.5%モルのCe(III)イオンとを含有する第2液状組成物を、P1の液状組成物にCe(NO
3)
3・6H
2Oを溶解させることによって調製した。
【0122】
膜を、実施例4に記載された一般的な手順に従って各液状組成物から製造した。
【0123】
膜を、実施例5に記載されたように単一燃料電池に組み付け、各燃料電池抵抗を以下の作動条件下に測定した。
アノード側方流:空気、カソード側方流:純H
2、
電池温度:65℃
反応物質湿度レベル:125%(70℃露点)
電流の強さ:2A〜16A
【0124】
この試験は、[MO−Ce]を含有する膜を使って製造された電池がCe(III)イオンを使って製造された電池よりも低い抵抗(60対70mOhm cm
−2)を表すことを示した。本発明の混合酸化物[MO]を含有する膜のより低い抵抗は、Ceイオンとイオン配位しているフッ素化ポリマーP1中の−SO
3H基のより低い数に対して、フッ素化ポリマーP1中の利用可能な導電性−SO
3H基のより高い数と関係がある。より低い抵抗は、燃料電池の作動の0時間対100時間の間の比較によって示されるように長期間にわたって持続する(62対60mOhm cm
−2)。
【0125】
従って、本発明の混合酸化物の使用は、混合酸化物中の金属Mが膜の電気抵抗を増加させることなく(表2のデータによって示されるように)経時的に膜の安定性を向上させるという点において可溶性形態の金属Mを含有する先行技術システムの使用よりも有利である。更に、金属Mは混合酸化物格子中に含有されているので、より長期間燃料電池の作動中の浸出に対してより安定であると考えられる。