(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱吸収部品は前記デバイスの筐体を含み、前記少なくとも一つの発熱部品は、前記デバイスのコンピュータ処理ユニット(CPU)を含む、請求項1に記載のデバイス。
前記容器は、内面を形成する少なくとも一層の材料を含み、前記内面の一部分は、前記内面のもう一つの部分に結合されている、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のデバイス。
前記容器は、第二のトレイ構造に連結された第一のトレイ構造を含み、前記第一のトレイ構造および前記第二のトレイ構造の各々は、隆起させた縁を持つ平坦な部分を含み、前記第一のトレイ構造の前記隆起させた縁は、前記第二のトレイ構造の隆起させた縁に連結されている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のデバイス。
前記容器は、フィルム材料に連結されたトレイ構造を含み、前記フィルム材料は非金属フィルムを含み、前記トレイ構造は、隆起させた縁を持つ平坦な部分を含み、前記フィルム材料は、前記トレイ構造の前記隆起させた縁に連結されている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のデバイス。
前記容器は、チューブの第一端および第二端間に前記内部キャビティを区画形成する前記チューブを含み、前記第一端および前記第二端が密閉されている、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のデバイス。
前記容器は、内面を形成する一層の材料を含み、前記一層の材料は、12〜120ミクロンの範囲の厚みを有する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のデバイス。
前記大気圧ガスは、主要大気圧ガスと、前記主要大気圧ガスとは異なる第二の大気圧ガスとを含み、前記主要大気圧ガスは、空気よりも低い第一の熱伝導率と、第一の透過速度とを有し、前記第二の大気圧ガスは、空気よりも低い第二の熱伝導率と、第二の透過速度とを有し、前記第二の透過速度は、前記第一の透過速度よりも高い、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のデバイス。
前記容器は第一の層および第二の層を含み、前記第一の層は柔軟なポリマー・ベースの材料を含み、前記第二の層は金属ベースの材料を含む、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のデバイス。
大気圧ガスを封入するための前記手段は、内部キャビティを規定する柔軟な容器を含み、前記内部キャビティは前記大気圧ガスを格納する、請求項18に記載のインシュレータ。
前記大気圧ガスは、主要大気圧ガスと、前記主要大気圧ガスとは異なる第二の大気圧ガスとを含み、前記主要大気圧ガスは、空気よりも低い第一の熱伝導率と、第一の透過速度とを有し、前記第二の大気圧ガスは、空気よりも低い第二の熱伝導率と、第二の透過速度とを有し、第二の透過速度は、第一の透過速度よりも高い、請求項18または請求項19に記載のインシュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態は、電気デバイスのための比較的小さなギャップを横切る熱移動を減少させるのに効果的な断熱解決策を提供する。この場合の熱移動は、放射や対流よりも伝導が主である。例えば、実施形態は、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガスあるいは近大気圧ガスを封入するインシュレータ構造を含むインシュレータを提供してもよい。インシュレータは、少なくとも一つの発熱部品とデバイスの筐体の内面との間に存在するギャップ内に設けられてもよい。この場合のデバイスは、ユーザが被加熱面に接触する恐れがあるラップトップ・コンピュータ、パーソナル・コンピュータ、スマートフォン、または、一般的な、熱を発生する一つ以上の部品を持つどんな種類の電気デバイスでもよい。一つの特定の実施形態においては、大気圧ガスは、対流や放射を超えて伝導が主である熱移動を減少させるのに効果的な、熱伝導率が空気の20%であるキセノンを含んでもよい。しかし、実施形態は、クリプトン、冷媒ガス等の他の希ガス、そして(例えば、空気より低い)低熱伝導率の他のガスの使用を含む。
【0026】
概して、実施形態は、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガスを封入する多くの異なる種類のインシュレータ構造、例えば、大気圧ガスを封入するための手段を含んでもよい。一つの例においては、インシュレータ構造(または大気圧ガス封入手段)は、ガスを収納可能な薄壁構造を含んでもよい(例えば、
図4を参照)。より詳細な実施形態においては、インシュレータ構造(または大気圧ガス封入手段)は、ジュース容器(例えば、ケチャップやマスタードの一人前用パウチ)に類似の、柔軟なポリマー製パウチまたはポリマー・金属製パウチを持つ3面シールからなる柔軟なパウチ構造であってもよい(例えば、
図5Aを参照)。他の形態は、4面シールを持つ柔軟なパウチ構造(例えば、
図5Bを参照)、デュアル・トレイ構造(例えば、
図5Cを参照)、フィルムあるいはホイルで覆われたトレイ構造(例えば、
図5Dを参照)、そして、練り歯みがき包装材に類似のエンド・シールを持つチューブ構造(例えば、
図5Eを参照)を含んでもよい。また、インシュレータは、筐体に少なくとも部分的に埋められてもよい(例えば、
図6を参照)。電気デバイスに組み入れられた場合、これらの種類のインシュレータは、放射および対流を超えて伝導が主である熱移動を減少させるために、比較的小さなギャップに良好な断熱を提供することが可能である(例えば、
図7を参照)。これらの、そして他の特徴を、さらに以下に記す。
【0027】
図1は、一つの実施形態によるギャップを横切る熱移動の異なるモードを例示する。概して、熱移動は、放射、伝導、自然対流や強制対流を通して行われる。例えば、比較的高い温度(T
1)を持つ発熱部品102は、放射、伝導、自然対流や強制対流により、ギャップ103を通して比較的に低温度(T
2)の熱吸収部品104に熱を伝達する。発熱部品102は、部品自体の作動によって熱を発生させる任意の部品であってよい。電気デバイスの場合、発熱部品102は、コンピュータ処理ユニット(CPU)、または電気デバイス内で使用されたときに熱を発生する一般の任意の部品を含んでもよい。熱吸収部品104は、熱を吸収することが可能な任意の部品であってよい。電気デバイスの場合、熱吸収部品104は、発熱部品102を収納可能なケース、すなわち筐体であってよい。例えば、熱吸収部品104は、複数の電気部品を収納する金属製または非金属製ケースであってよい。
【0028】
また、発熱部品102は、熱吸収部品104の温度(T
2)よりも高い温度(T
1)を含む。当然に、発熱部品102から発生する熱は、以下にさらに説明するように、放射、伝導、自然対流や強制対流により、低温部品、例えば熱吸収部品104に移動する。
【0029】
概して、放射による熱移動は、発熱体(例えば、発熱部品102)の絶対温度と、黒体輻射による電磁放射からの熱を吸収する一つ以上の周囲低温域(例えば、熱吸収部品104)との温度差によって生じる。この場合の輻射は、発熱部品102の絶対温度の関数で表される。輻射能=1(例えば、完全な黒体放射)で、ギャップ103が約3.7mm未満であるときのギャップ103内では、空気を介した伝導が優勢であり、そして、輻射能が減少するに従い、このクロスオーバー・ポイントは比例して上昇する。
【0030】
伝導による熱移動は、液体、気体または固体等の物質それ自体を介しての、その物質の熱伝導率に比例した速度での熱の移動である。熱伝導率は、ダイヤモンド、銅およびアルミニウム等の物質で比較的高く、液体または気体物質では低い。換言すると、伝導による熱移動は、ギャップの物質を通しての熱の移動であり、その物質は、空気または任意のガス、液体あるいは固体であってよい。
【0031】
対流による熱移動は、流体(例えば、気体、液体)の動きによる、一つの場所から他への熱の移動である。特に強制対流は、ファン等の外部ソースによって流体運動を発生させる輸送メカニズムまたは輸送タイプである。対照的に、(自由対流とも呼ばれる)自然対流による熱移動は、発熱部品102と熱吸収部品104との温度差から生ずる。温度差は流体の密度に影響を与えるため、相対浮力にも影響が及ぶ。ボディ内の密度の違いから対流渦が形成され、そこには、ボディを冷却する流体の還流パターンが存在する。特に、熱源を囲む流体が熱を受け、低密度になり、上昇し、その後、周囲の、より冷たい流体が、入れ替わるように移動する。例えば、流体の密度は温度上昇で、体積膨張に起因して減少し、このことが、自然対流を誘発することがある。しかし、下記に説明するように、これは部品の構成に依存することである。
【0032】
例えば、空気中の平行水平プレート間の自然対流に関しては(例えば、熱い方のプレートが上にある場合)、この構成は、軽い流体が既に冷たく重い流体の上に位置するので、本質的に安定している。このシステムが平衡状態から移行する傾向は全く存在せず、そして、いかなるプレート間の熱移動も、伝導を通して達成される。空気中の平行垂直プレート間の自然対流に関しては、ギャップ103は、有意義な自然対流が発生するために、約10mmでなければならない。例えば、ギャップ103が10mm未満である場合、対流渦の形成は不可能である。よって、ギャップ103のサイズが10mm未満である場合、部品からケースへは、伝導および放射が対流に勝ることになる。そしてギャップ103のサイズが3.7mm未満である場合、部品からケースへは、伝導が対流および放射に勝ることになる。
【0033】
(ラップトップ・コンピュータや他の電気デバイスに一般的な)1mmのギャップに対しては、この場合も、伝導が熱移動において放射および対流に勝る。よって、ここに考察したように、伝導が放射および対流に勝るギャップ103のサイズは、3.7mm未満のいずれのサイズでもよく、時々、小さなギャップと呼ばれることもある。また、発明者は、
図2について考察するように、ギャップ103のサイズが、ギャップ103を横切る伝導熱流の量に影響を及ぼすことを認識している。
【0034】
図2は、一つの実施形態によるギャップ103を横切る伝導による熱移動を例示する。この例においては、発熱部品102はCPUを含んでもよく、熱吸収部品104は、CPUを収納する筐体を含んでもよい。第一のギャップ103-1が、発熱部品102の部品(または一部分)と筐体の内面106との間に存在し、そして、第一のギャップ103-1よりも小さな第二のギャップ103-2が、CPU部と熱吸収部品104の内面106との間に存在する。比較的より大きな伝導熱流が、第二のギャップ103-2を横切って存在し、そして、比較的より小さな伝導熱流が、第一のギャップ103-1を横切って存在する。よって、第二のギャップ103-2を横切って伝達される熱によって、ホットスポット107が発生する場合がある。ホットスポットとは、ユーザが接触する可能性のある筐体外面109に生じる比較的熱いあるいは暖かい領域のことである。筐体(例えば、熱吸収部品104)に伝達された熱は、その後、自然対流により周囲の環境空気に伝達される。
【0035】
図3は、一つの実施形態による、ギャップ103内にインシュレータを設けていない熱吸収部品104の外面109上の温度分布108を表す。例えば、温度分布106は、熱吸収部品104の外面109を横切る温度の違いを示すが、その温度は、ギャップ103が比較的に小さいホットスポット107の領域に向かって上昇している。
【0036】
所望量よりも大きな熱量が存在する場合、ギャップ103には、移動熱量を減少させるためにインシュレータを設けてもよい。しかし、上記に論証したように、ギャップ103のサイズは、熱移動のタイプ(例えば、伝導、対流または放射)に影響を与え、そのことが、熱移動に対処するために用いられる断熱のタイプに影響を及ぼす。一つの例においては、対流および伝導を除くのに効果的な、金属面に囲まれた高真空が、インシュレータとして設けられる。しかし、真空で断熱することの問題は、どのような平坦な適用であっても、容器壁が大気圧によって潰され易いことである。これには、ポストやピラーで対処可能であるが、ポストやピラーは、概して、熱リークの大きな要因になってしまうため、真空インシュレータの性能を低下させる。
【0037】
比較的に大きなギャップに対しては、ファイバーグラス等の断熱を追加することは、ファイバーグラスが対流渦発生を無効にするため、比較的に有効であり、これによって、対流による熱移動を阻止できる。よって、大きなギャップでは、ファイバーグラスまたは低比重スチレンフォームあるいはウレタン枠などの断熱は、対流による熱移動を減少させるので有用である。この種のインシュレータは、対流あるいは放射による熱移動を妨げるのに効果的であるが、それでも、断熱を満たすギャップを通しての、そして断熱物質自体を通しての伝導流を許容する。ほとんどの固体は、気体に比べ高い熱伝導率を持つので、従来のインシュレータは、緩いファイバーグラス、または大部分が気体であるエアロゲル等の低密度材を一般的に使用する。また、放射による熱移動を減少させる点については、MLI(多層断熱)等の解決策を利用している。MLIは、真空中での断熱の目的で、あるいは大きな温度差に対して、小さいギャップ内に多層の反射材から構成されてもよい(例えば、自動車アンダーフードでの奇抜な適用)。
【0038】
しかし、ギャップが3.7mm未満と比較的に小さい場合、難しさは増す。ギャップが1mm以下と、さらに小さい場合、困難性はさらに増加する。通常、ラップトップ・コンピュータ、パーソナル・コンピュータおよびスマートフォン等の電気デバイス内では、より小さく薄いデバイスを求める市場の圧力があるため、小さなギャップ(例えば、>1mm)が一般的である。この状況では、小さなギャップに対して、対流渦は発生不可能である。したがって、対流による熱移動の防止は、もはや重要でない。本質的に、小さなギャップ内の空気は停滞している。もし、ギャップ103内の停滞空気の少なくとも一部を、固体などのインシュレータで置き換えるなら、固体ベースのインシュレータは空気よりも高い熱伝導率を持つので、問題は悪化することになる。したがって、小さなギャップを発泡体やファイバーグラスで断熱することは、ギャップ103を横切る熱移動を減少させるのに効果がない。よって、ギャップ103内にインシュレータとして固体ベースの物質を配置する代わりに、以下にさらに論証するように、実施形態は、インシュレータとしての用途に、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガスを封入するインシュレータ構造を提供することを含む。
【0039】
図4は、一つの実施形態による、伝導が熱移動の主要部分を占めるようギャップ103が比較的に小さい場合に熱移動を減少させるのに有効な、ギャップ103内に設けられるインシュレータ110を例示する。例えば、ギャップ103内に位置するインシュレータ110は、一つ以上の大気圧ガス116を封入するインシュレータ構造114を含む。この場合、一つ以上の大気圧ガス116は、空気よりも低い熱伝導率を持つ。一つの実施形態では、大気圧ガス116はキセノンを含んでもよい。キセノンは、空気の熱伝導率の20%であり、対流や放射よりも伝導が勝る熱移動を減少させるのに有効である。しかし、実施形態は、クリプトン等の他の希ガス、冷媒、空気よりも低い熱伝導率を持つ他の気体の使用をも含む。通常、インシュレータ構造114はガスを収納可能な容器であり、この容器は厚み(幅)を持つ。よって、ラップトップ・コンピュータ(
図8に詳細に図示)等の電気デバイスに使用した場合、インシュレータ110は局所熱伝達を減少させ、局所的なホットスポットを減少させ、そしてユーザ体験を改善する。しかし、インシュレータ110は、平面ソース(例えば、発熱部品102)とヒートシンク(例えば、熱吸収部品104)とが、ギャップを横切って対向するどのような応用例にでも適用できる。一つの例においては、インシュレータ110は、筐体内の熱に弱い任意の種類の部品を保護できる。
【0040】
注目すべきは、以下にさらに説明するように、インシュレータ110には、キセノン等の1種類の大気圧ガス116を満たしてもよいし、または、キセノンおよびアルゴン等の複数の種類の大気圧ガス116を含めてもよいことである。加えて、注目すべきことは、以下にさらに考察するように、(経時的に)インシュレータ110には、インシュレータ構造114内に透過させて他の種類の気体を含ませてもよいことである。
【0041】
インシュレータ構造114は、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガス116を封入するよう構成される単一の材料を含んでもよい。例えば、インシュレータ構造114は、ポリマー等の軟質材料またはポリマー金属ベース材料、あるいは鋼またはアルミニウム等の金属ベース材料を含んでもよい。また、インシュレータ構造114は、ポリマーまたはポリマー金属ベース材料の一つ以上の層、そして金属ベース材料の一つ以上の層からなる複数の層を含んでもよい。いくつかの例では、層の一つ以上が、それ自体に、またはもう一つの層に、構造内にキャビティが存在するようシーラントを使って結合されてもよい。この場合、その後、空洞は、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガス116で満たされる。
【0042】
インシュレータ構造114の幅に関しては、例えば、全スペースが大気圧ガス116のために確保されるよう、インシュレータ構造114を構成する材料が、全く厚みを持たないことが理想的である。一般に、インシュレータ構造114を構成する材料は、大気圧ガス116よりも高い熱伝導率を持つため、この材料は、対応する厚み(幅)でギャップを減ずるサーマル短絡回路と考えてもよい。1mm未満の長さのギャップ103に対しては、材料の厚みは重要である。一つの実施形態では、インシュレータ構造114の厚みは、放射および対流に伝導が勝っている熱移動を減少させるのに有効な、12から120ミクロンの範囲でよい。
【0043】
また、もう一つの実施形態によれば、インシュレータ構造114は、キセノン(およびアルゴン)等の空気よりも低い熱伝導率を持つ一つ以上の大気圧ガス116だけでなく、例えば、ヘリウムまたは水素等の軽ガス117をも含んでよい。言い換えれば、キセノンで満たした、あるいは他のガスで満たしたインシュレータ構造114内に、比較的に少量の、ヘリウムまたは水素等の軽ガス117を混入してもよい。ここで考察するキセノンまたは他の大気圧ガスとは対照的に、ヘリウムや水素は、空気の6倍と比較的に高い熱伝導率を持つ。よって、技術の通常の知識を有する者は、伝導が対流および放射に勝る場合にギャップ103を横切る熱移動を防止するようにとのデザインで、軽ガス117をインシュレータ構造114内に混入することは理屈に反している、と考えるかもしれない。例えば、軽ガス117の包含は、熱伝導率を実際に増加させ、減少させない。
【0044】
しかし、ここで考察するキセノンや他の大気ガスを含有するインシュレータ構造114内への軽ガス117の包含は、かなり簡単な方法で人がインシュレータ構造114のリークを感知することを可能にする。例えば、ヘリウムまたは水素は、非常に簡単に漏れる特性を持ち、固体金属さえも、かなりの率で通過する。特に、非常に少量のヘリウムあるいは水素リークを検知するための質量分析計ヘリウム漏れ検知器が開発された。ヘリウムあるいは水素で満たされた容器の外側に真空を適用してから、質量分析計ヘリウム漏れ検知器を使用して、個々の分子または原子を検出するのである。よって、一つの実施形態によれば、インシュレータ構造114に対して一つ以上の非破壊試験を実行し、インシュレータ構造114が適当な量の大気圧ガス116を含んでいるかどうかを判定するために、インシュレータ構造114内には特定パーセンテージの軽ガス117を注入してもよい。
【0045】
一つの特定の実施形態においては、大気圧ガス116は、重量で約2%の軽ガス117等、軽ガス117を意図的に混入させてもよい。2%の軽ガス117は、約20%ほど、大気圧ガス116の熱伝導率を増加させるかもしれない。しかし、軽ガス117は比較的より簡単に漏れるので、軽ガス117がインシュレータ構造114から経時的に消失して行くにつれ、実施形態のインシュレータ110は、実際、インシュレータ110のライフスパンに渡って改善されることになる。また、軽ガス117の包含は、生産ラインの終端で、断熱材に対する漏れ試験を実行するための有効なメカニズムを提供する。
【0046】
上記のように、インシュレータ構造114は、空気よりも低い熱伝導率を持つ複数の種類の大気圧ガス116を含んでもよい。例えば、インシュレータ構造114は、主要大気ガス116(例えば、キセノン)の他に、第二の大気圧ガス(例えば、アルゴン)を含んでもよい。この第二の大気圧ガスは、主要大気圧ガス(キセノン)よりも高い透過速度を持つアルゴンまたは類似の種類のガスを含んでもよい。また、第二の大気圧ガスの透過速度は、インシュレータ構造114の外側に存在するガスの透過速度に類似してもよい(透過速度が例えば窒素や酸素に類似)。しかし、第二の大気圧ガスの熱伝導率は、ガス混合気の全体的な熱伝導率に過度の影響を及ぼすことがないよう、十分に低いことが好ましい(例えば、空気よりも低い)。特定のガスの透過は、バリアの各側面に対する分圧によって引き起こされる。特定のガスは、全圧に関係なく、高分圧の領域から低分圧の領域へ移動する。そういうわけで、ヘリウムを満たしたゴム製バルーンは、たとえバルーン内外で全圧がほぼ同じであっても速くしぼむのである。
【0047】
例えば、主要大気圧ガス116がキセノンであると仮定すると、キセノンは、比較的に大きな分子であるため、インシュレータ構造114を通過する透過速度が低い。言い換えれば、キセノンはインシュレータ構造114内に留まり、構造外へ漏れない傾向がある。しかし、酸素および窒素などの他のガスは、インシュレータ構造114を透過することができる(例えば、酸素および窒素は、より小さな分子であり、インシュレータ構造114内へ透過する可能性がある)。このため、インシュレータ構造114のサイズが増大し、構造がふくらんでしまう原因となり得る。インシュレータ構造114のサイズの増大は、周囲の部品に影響を及ぼす可能性がある。例えば、経時的に(例えば、酸素や窒素の付加によるサイズの増大によって)インシュレータ構造114は過大なパウチになり、デバイスまたはデバイス内の他の部品の作動に影響を与えるかもしれない。
【0048】
よって、実施形態によれば、インシュレータ構造114は、キセノン(そして、おそらく軽ガス117)だけでなく、空気よりも低い(例えば、50%ほど低いがキセノンよりは高い)熱伝導率そして窒素および酸素に類似の透過速度を持つアルゴン等の第二の大気圧ガスを含んでもよい。したがって、インシュレータ110は、空気よりも低い熱伝導率を持つ二つの種類の大気圧ガスを含んでもよい。しかしながら、第二の大気圧ガス(例えば、アルゴン)は、キセノン(または他の類似大気圧ガス116)よりも高い熱伝導率を持つかもしれないが、それでもギャップ103を横切る熱移動を減少させるのに十分有効である。さらに、第二の大気圧ガスは、キセノンよりも高い、そしておそらく、酸素や窒素に類似の透過速度を持ってもよい。その結果、酸素や窒素がインシュレータ構造114内に透過するとき、第二の大気圧ガス(例えば、アルゴン)はインシュレータ構造114から外へ透過するため、インシュレータ構造114は同じ(または実質的に同等な)サイズに維持される。
【0049】
図5A〜5Eは、複数の異なる実施形態による、大気圧ガス116を封入するインシュレータ構造114を持つインシュレータ110を例示する。
図5A〜5Eはインシュレータ構造114の特定の実施形態を例示するが、実施形態は、例えば、
図4の一般的なインシュレータ構造などの、大気圧ガス116を封入する任意のタイプの構造を含んでもよい。
【0050】
一つの例として、
図5Aは、一つの実施形態による、3面パウチ・シールを持つ柔軟なパウチ構造を含むインシュレータ110aを示す平面図と横断面図である。柔軟なパウチ構造は、シーラント126を用いて3側面が熱溶封された調味料容器(例えば、ケチャップやマスタードの一人前用パウチ)に類似の「パウチ」に構成されるポリマーまたはポリマー金属材料を含んでもよい。
図5Aの左部分が柔軟なパウチ構造の平面図であり、そして
図5Aの右部分が、線分A-Aで横切る横断面図である。この例においては、ポリマーまたはポリマー金属材料の単一部分127を半分に折り、パウチが形成されるよう、インシュレータ110aの熱融着領域122の3側面に沿ってシーラント126を使用し、パウチ構造に封をする。シーラント126は、ポリマー、ポリマー金属または金属材料に封をするのに有効な、その技術で既知である、接着剤、ハンダあるいは任意のシーラントを含んでもよい。シールの破裂強度は、システムが固い面に落下した場合の一時的な超過圧に耐え得るに十分な強さであってよい。その結果、柔軟なパウチ構造の内側にはキャビティ124が生じる。このキャビティは、例えば、キセノン、アルゴン、そしておそらく軽ガス117等の、空気よりも低い熱伝導率を持つ一つ以上の大気圧ガス116で満たされる。
【0051】
一つの実施形態によれば、柔軟なパウチ材料は、プリント可能なポリマー外層、アルミニウム層、内側ポリマー層、そして一つ以上の接着あるいは熱融着層など、複数の層を含んでもよい。柔軟なパウチ構造は、複数の層を熱融着する機械を通して柔軟なパウチ材料の連続ロールを配置し、柔軟なパウチ構造の3側面に封をすることによって形成してもよい。これにより、一人前用マスタード・パッケージに類似の、3面シールを持つ柔軟なパウチ構造が製造できる。
【0052】
もう一つの実施形態によれば、柔軟なパウチ材料は、ポリマー層またはポリマーに基づく層と、金属、ガラスあるいはセラミック等のバリヤー層を含んでもよい。例えば、ポリマー層またはポリマーに基づく層は、断熱層内に使用される大気圧ガス116に高透過性があると考えられる。また、一般的なガスにも透過性がある。よって、大気圧ガス116のパッケージ透過能力を低減するために、パッケージ・フィルムには、金属、ガラスまたはセラミックから作成されたバリヤー層を統合する。金属、ガラスおよびセラミックは、ガスを通さないと一般に考えられている。一つの特定の実施形態では、バリヤー層はアルミ箔の薄層を含んでもよい。この場合のアルミ箔の厚みは、インシュレータ構造114の柔軟性を許容可能な程度である(例えば、厚さ7ミクロン〜25ミクロンの範囲)。もう一つの実施形態においては、バリヤー層は、ガラス層またはセラミック層あるいは二酸化ケイ素層を含んでもよい。しかし、ガラス層またはセラミック層あるいは二酸化ケイ素層のアプローチにおいては、この層にひびが入る傾向がある。そうなってしまった場合、ガラスまたはセラミックまたは二酸化ケイ素材料を通ってではなく、フィルム内のひび割れを通ってガスが移行することになり、それらのリークが、インシュレータ構造114からのガス移送を独占することになる。
【0053】
図5Bは、一つの実施形態による、4面シールを持つ柔軟なパウチ構造を含むインシュレータ110bを示す平面図と横断面図である。インシュレータ110bの柔軟なパウチ構造は、インシュレータ110aに関して上述の、柔軟なパウチ材料を含んでもよい。しかし、柔軟なパウチ材料は、シーラント126を用いて4側面に沿って密封される。
図5Bの左部分は、4面シールを持つパウチ構造の平面図であり、
図5Bの右部分は、線分B-Bで横切る横断面図である。この例においては、柔軟なパウチ材料の二つの部分(例えば、第一の部分133-1と第二の部分133-2)は、インシュレータ110bの熱融着領域130の4側面に沿って、シーラント126を使って一緒に溶封され、パウチ構造を密封し、パウチを形成する。その結果、パウチ構造の内側にはキャビティ132が生じる。このキャビティは、例えば、キセノン、アルゴン、そしておそらく軽ガス117等の、空気よりも低い熱伝導率を持つ一つ以上の大気圧ガス116で満たされる。
【0054】
インシュレータ110aおよびインシュレータ110bは、例えば、ユーザとの接触が起こり得るホットスポットを生じるような、比較的に大量の熱を発生する発熱部品102など、指定領域に断熱を施すためにインシュレータとして適用できる。
【0055】
図5Cは、一つの実施形態による、デュアル・トレイ構造を含むインシュレータ110cを示す平面図と横断面図である。例えば、
図5Cの左部分はデュアル・トレイ構造の平面図であり、
図5Cの右部分は、線分C-Cで横切る横断面図である。この例においては、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2は、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2との間にキャビティ134が存在するよう、相互に結合される。この場合、キャビティ134は、空気よりも低い熱伝導率を持つ一つ以上の大気圧ガス116(そして、おそらく軽ガス117)で満たされる。第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2は、シーラント139で相互に結合されてもよい。シーラント139は、シーラント126に関わる種類のシーラント、または例えば、ハンダ溶接を含んでもよい。第二のトレイ構造135-2が第一のトレイ構造135-1に対称形、あるいは、その逆であってもよい。
【0056】
さらに、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2の各々は、縁を隆起させた平坦な部分を含んでもよい。また、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2の各々が、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、または他の金属から、あるいは、金属およびポリマー複合体フィルムから組成され、それらがトレイとして構成されてもよい。一つの例においては、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2の各々の厚みは、通常、25ミクロン〜100ミクロンの範囲内にであってよい。また、注目すべきは、トレイ構造内の金属の厚みがあまりに薄い場合、金属は複数のピンホールを含むことがあり、その場合、大気圧ガス116が漏れることになる。
【0057】
図5Dは、一つの実施形態による、フィルム138で覆われるシングル・トレイ構造137を含むインシュレータ110dを示す平面図および横断面図である。
図5Dの左部分はインシュレータ110dの平面図であり、
図5Dの右部分は、線分D-Dで横切る横断面図である。一つの実施形態においては、フィルム138は、任意のプラスチック材料などの非金属フィルムであってよい。これ以外では、フィルム138は、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属箔であってもよい。第一および第二のトレイ構造135と同様に、シングル・トレイ構造137は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅あるいは他の金属トレイ、または金属ポリマー複合体であって、縁を隆起させた平坦な部分として構成されてもよい。しかし、この実施形態においては、シングル・トレイ構造137だけが用いられる。フィルム138とシングル・トレイ構造137との間にキャビティ136が存在するよう、フィルム138は、シーラント139を用いてシングル・トレイ構造137へ熱融着される。この場合、キャビティ136は、空気よりも低い熱伝導率を持つ一つ以上の大気圧ガス116、そしておそらく軽ガス117で満たされる。
【0058】
図5Eは、一つの実施形態による、エンド・シール140を持つ(例えば、練り歯みがきチューブに類似の)フレキシブルチューブ構造144を含むインシュレータ110eの平面図と横断面図である。
図5Eの左側はインシュレータ110eの平面図であり、
図5Eの右の側は、線分E-Eで横切る横断面図である。この例においては、チュービング構造144は、円形に構成されたポリマーまたはポリマー金属材料などの、フレキシブル・チューブ材を含んでもよい。この場合、チュービング内には、最初は円形のキャビティ142が存在し、そのキャビティは、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガス116で満たされる。チュービング構造144の両端は、インシュレータ110Eの平面図に示すように、シーラント126で密閉される。チューブは、ギャップ103内に嵌め合わせる際に平坦化されてもよい。
【0059】
図6は、一つの実施形態による、熱吸収部品(例えば、筐体)に少なくとも部分的に埋め込んだ、
図5Dのインシュレータ110dを示す。例えば、
図6に示すように、インシュレータ110dは、デバイスの筐体に少なくとも部分的に埋められてもよい。特に、シングル・トレイ構造137は、例えば、デバイスの筐体などの、熱吸収部品104に埋め込まれてもよい。熱吸収部品104の表面にはフィルム138を設けて、シングル・トレイ構造137を封入してもよい。また、注意すべきは、
図5Cのインシュレータ110cは、例えば、第一のトレイ構造135-1と第二のトレイ構造135-2の一方の少なくとも一部分が筐体に埋められて、同様に構成されてもよいことである。
【0060】
図7は、一つの実施形態によるインシュレータ110がある場合と、ない場合の、熱吸収部品104の表面を横切る温度分布150を表す。例えば、
図7に示すように、発熱部品102と熱吸収部品104との間に存在するギャップ103内に、インシュレータ110が設けられる。
図7に示すように、放射および対流よりも伝導が勝る熱移動が生じるに十分なほどギャップ103が小さい場合、インシュレータ110は、熱吸収部品104の表面のピーク温度を減少させるのに有効である。対照的に、実施形態のインシュレータ110を用いないでギャップ103を空気で満たした場合は、ホットスポットの領域の表面温度がより高くなる。
【0061】
図8Aは、一つの実施形態によるラップトップ・コンピュータ200の斜視図であり、
図8Bは、線分F-Fで横切るラップトップ・コンピュータ200の断面図である。
図8Bに示すように、ラップトップ・コンピュータ200は、ディスプレイ202、キーボード部204、そして、一つ以上のCPU206を有する回路基板208を収納する筐体210を含んでもよい。上記の図面に関して、筐体210を熱吸収部品104と考え、そして一つ以上のCPU206を発熱部品102と考えることができる。一つ以上のCPU206と筐体210の内面との間にギャップが存在してもよい。実施形態によれば、CPU206と筐体210の内面との間のそのギャップ内に、インシュレータ110が配置される。上記のように、インシュレータ110は、空気よりも低い熱伝導率を持つ大気圧ガス116を封入するインシュレータ構造114を含んでもよい。インシュレータ構造114は、
図4に関して考察した一般的な構造、または
図5および
図6に示したより特定の実施形態のいずれを含んでもよい。
【0062】
理解すべきは、特定して詳細に説明した上記実施形態は、単に例または可能な実施形態であり、多くの他の組合せ、追加あるいは選択肢が存在する、ということである。