特許第6374395号(P6374395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374395追加金属を有する亜鉛酸化物含有層を含む低放射率コーティングを有する被覆製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374395
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】追加金属を有する亜鉛酸化物含有層を含む低放射率コーティングを有する被覆製品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20180806BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C03C17/36
   B32B9/00 A
   B32B15/04 B
   B32B17/06
【請求項の数】30
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-543069(P2015-543069)
(86)(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公表番号】特表2016-503382(P2016-503382A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013067004
(87)【国際公開番号】WO2014078062
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】13/680,541
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512006321
【氏名又は名称】ガーディアン インダストリーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】GUARDIAN INDUSTRIES CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】イムラン・ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】ボイス・ブレント
(72)【発明者】
【氏名】レマー・ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】フランク・マーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュー・ヨンリ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−262968(JP,A)
【文献】 特開平07−010608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に低放射率コーティングを含む被覆製品であって、前記コーティングは、
前記ガラス基板上の誘電体層及びIR反射層を含み、
前記誘電体層は、ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上の酸化物を含む、被覆製品。
【請求項2】
前記IR反射層は、銀を含む、請求項1に記載の被覆製品。
【請求項3】
前記誘電体層は、前記ガラス基板と前記IR反射層の間に位置する、請求項1又は2に記載の被覆製品。
【請求項4】
前記コーティングは、前記ガラス基板と前記IR反射層の間に位置する亜鉛酸化物を含む層をさらに含み、前記IR反射層は、前記亜鉛酸化物層と直接接触して、ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上の酸化物を含む前記誘電体層は、前記亜鉛酸化物を含む層と直接接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項5】
前記コーティングは、他のIR反射層をさらに含み、2つのIR反射層は、銀を含み、前記誘電体層は、前記IR反射層の間に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項6】
前記コーティングは、前記他のIR反射層と直接接触する亜鉛酸化物を含む層をさらに含み、前記誘電体層は、前記IR反射層の間に位置して前記亜鉛酸化物を含む層と直接接触する、請求項5に記載の被覆製品。
【請求項7】
前記コーティングは、銀を含有する1つのIR反射層だけを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項8】
前記被覆製品は、可視光線透過率が少なくとも30%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項9】
前記被覆製品は、可視光線透過率が少なくとも50%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項10】
前記誘電体層は、実質的に完全に酸化及び/又は完全に酸化される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項11】
前記コーティングは、シート抵抗が5Ω/□以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項12】
前記被覆製品は、熱処理される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項13】
前記被覆製品は、熱処理され、前記熱処理によってガラス側反射率ΔEが5.0以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項14】
前記誘電体層は、ZnCuAlの酸化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項15】
前記誘電体層の金属含量は、60〜97%のZn、0.1〜15%のCu、及び0.5〜25%のAlを含む、請求項1又は14に記載の被覆製品。
【請求項16】
前記誘電体層の金属含量は、80〜93%のZn、0.1〜5%のCu、及び〜15%のAlを含む、請求項1又は14に記載の被覆製品。
【請求項17】
前記誘電体層は、本質的にZnCuAlの酸化物で構成される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項18】
前記誘電体層は、ZnCuの酸化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項19】
前記誘電体層の金属含量は、60〜98%のZn及び0.2〜20%のCuを含む、請求項18に記載の被覆製品。
【請求項20】
前記誘電体層の金属含量は、85〜97%のZn及び〜7%のCuを含む、請求項19に記載の被覆製品。
【請求項21】
前記誘電体層は、本質的にZnCuの酸化物からなる、請求項18〜20のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項22】
前記誘電体層は、ZnCuNiの酸化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項23】
前記誘電体層の金属含量は、60〜97%のZn、0.1〜5%のCu及び0.5〜25%のNiを含む、請求項22に記載の被覆製品。
【請求項24】
前記誘電体層は、本質的にZnCuNiの酸化物で構成される、請求項1〜13又は22のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項25】
前記誘電体層は、ZnNiAlの酸化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項26】
前記誘電体層の金属含量は、60〜97%のZn、0.1〜5%のNi及び0.5〜25%のAlを含む、請求項25に記載の被覆製品。
【請求項27】
前記誘電体層は、本質的にZnNiAlの酸化物で構成される、請求項1〜13又は25のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項28】
前記誘電体層は、ZnNiMgの酸化物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆製品。
【請求項29】
前記誘電体層の金属含量は、60〜97%のZn、0.1〜5%のNi及び0.5〜25%のMgを含む、請求項28に記載の被覆製品。
【請求項30】
前記誘電体層は、本質的にZnNiMgの酸化物で構成される、請求項1〜13又は28のいずれか一項に記載の被覆製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例の実施形態は、基板(例えば、ガラス基板)によって支持される低放射率コーティング(Low−emissivity coating)などのコーティングを含む被覆製品に関する。コーティングは、他の金属でドープされた亜鉛酸化物を含む少なくとも1つの誘電体層を含む。コーティングは、少なくとも一部の赤外線(IR)照射を反射させるために銀などの材料又はこれを含む1つ以上のIR反射層を含んでもよい。特定の例示的な実施形態において、被覆製品は、熱処理(例えば、焼き戻し処理(thermal tempering)、熱曲げ(heat bending)、及び/又は熱強化(heat strengthening))されてもよい。本発明の特定の例示的な実施形態に従う被覆製品は、建物の一体型窓、建物のIG窓、車両の窓を含む、窓に関連して、かつ/又は任意のその他の適切な用途に用いてもよい。
【背景技術】
【0002】
当該分野において、断熱ガラス(IG)窓ユニット、車両の窓など窓の用途に用いられる被覆製品が知られている。特定の例において、焼き戻し、曲げなどの目的のために、このような被覆製品を熱処理(例えば、焼き戻し処理、熱曲げ、及び/又は熱強化)するのが好ましいことが知られている。典型的に、被覆製品の熱処理(HT)は、少なくとも580℃、さらに好ましくは少なくとも約600℃、より好ましくは少なくとも620℃の温度の使用を必要とする。このような高温(例えば、5〜10分以上)では、しばしばコーティングが破壊され、かつ/又は予測不可能な方法で劣化若しくは変化する。したがって、前記コーティングは、必要に応じて予測可能な方法で熱処理(例えば、焼き戻し処理)に顕著に損傷せずに耐えられることが好ましい。
【0003】
特定の状況では、被覆製品の設計者は、所望の可視光線透過率、所望の色、低放射率(又は放射力)、及び低シート抵抗(R)の組合せを試みている。このような被覆製品は、低放射率(low−E)及び/又は低シート抵抗特徴によってかなりのIR照射を遮断し、例えば、車両又は建物内の好ましくない加熱を減らすことができる。
【0004】
米国特許第7,521,096号は、本明細書に参考として含まれ、銀系のIR反射層の下に亜鉛酸化物(ZnO)接触層を用いて下部の銀(Ag)系IR反射層の上にNiCrO接触層、次に中央にスズ酸化物(SnO)誘電体層を用いる低放射率コーティングを開示する。米国特許第7,521,096号のコーティングでSnOは、熱処理の際に微細結晶質及び応力によりSnO、ZnO及びAgの間の界面が粗くなり、耐久性劣化につながって、伝達される色に影響を及ぼしかねないことが分かった。粗い金属含有界面は、特に低い可視スペクトル領域(380〜550nm)で全体層スタックで選択的な吸収をもたらす、いわゆる表面プラズモンを開始する傾向がある。これは、予測不可能な光学特性、あまり中間的でない色(less neutral color)、低い可視光線透過率及び/又は低いLSGのうちの1つ以上を引き起こす傾向がある。また、スズ酸化物(例えば、SnO)は、加熱時の応力及び結晶質が顕著に変化して、ZnOの構造が劣化され、その上にAgが成長することが分かった。また、これは、好ましくない高いΔEなど、コーティングの不良Ag品質及び/又は不良熱安定性につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の点において、純粋なSnO誘電体層に関連する上述した1つ以上の問題を解決する少なくとも1つの誘電体層を含むコーティング(例えば、低放射率コーティング)を有する被覆製品が必要であることが当業者には明白であろう。特定の例示的な実施形態において、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)含有誘電体層内に特定の追加金属が含まれれば、上述した1つ以上の問題を解決できることが分かった。例えば、このようなコーティング内に誘電体層をスパッタ蒸着する場合、Cu、Al、Ni、及びMgの金属のうちの1つ以上の金属を亜鉛酸化物に添加することができる。任意の熱処理(HT)前及び/又は後に誘電体層及び全体コーティングが熱的に安定するようにし、任意の熱処理工程中の応力変化を減少及び/又は遅くするために、三元合金及び/又は二元合金(その酸化物を含む)が亜鉛酸化物含有誘電体層に含まれてもよい。追加金属が含まれるこのような亜鉛酸化物含有誘電体層は、例えば、その他にコーティングに使用することができる1つ以上のスズ酸化物誘電体層を交換するために用いてもよい。追加金属を有する亜鉛酸化物含有誘電体層の構造が無秩序な状態になり、その層及びコーティングはさらに安定化する。材料の構造がさらに無秩序になれば(例えば、HT時)、より安定するようになることが分かった。本発明の特定の例示的な実施形態において、その他の金属が添加されたこのような亜鉛酸化物含有誘電体層は、任意の好適な低放射率コーティング内で誘電体層として用いることができ、例えば、少なくとも第1IR反射層と第2IR反射層との間、IR反射層の下、及び/又はIR反射層の上である。しかし、コーティング内の全ての誘電体層がこのような材料によって構成される必要はない。特定の例示的な実施形態において、その他の金属が添加された亜鉛酸化物含有誘電体層は、シリコン窒化物(例えば、Si)、SnO、ZnO、などのような材料で構成されたその他の誘電体層を含むコーティングで用いられてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特定の例示的な実施形態において、ガラス基板上に低放射率コーティングを含む被覆製品が提供され、コーティングは、ガラス基板上の誘電体層及びIR反射層を含み、誘電体層は、ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上の酸化物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る被覆製品の断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る被覆製品の断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る被覆製品の断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る被覆製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
同様の参照番号は、本明細書に記載した図面における同様の部分を意味する。図1図4の実施形態において、層は、好ましくは本発明の実施例の実施形態でセラミック又は金属ターゲットによってスパッタ蒸着することによって形成される。
【0009】
本発明の特定の例示的な実施形態に係る被覆製品は、建物の一体型窓、建物用IG窓、車両の窓を含む、窓に関連して、かつ/又は任意のその他の適切な用途に用いてもよい。
【0010】
特定の例示的な実施形態において、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)含有誘電体層内に特定の追加金属が含まれれば(図面中の層13,15,23,40のうちの1つ以上を参照)、純粋なSnO誘電体層に関連する上述した問題のうちの1つ以上の問題を解決できることが分かった。例えば、Cu、Al、Ni、及び/又はMgのうちの1つ以上の金属が、このようなコーティング内に誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上をスパッタ蒸着する場合、亜鉛酸化物に添加されることができる。追加金属(その酸化物を含む)と共に、亜鉛酸化物は、任意の熱処理(HT)前及び/又は後で誘電体層及び全体コーティング30,60,70が熱的により安定するようにし、任意の熱処理工程中の応力変化を減少及び/又は遅延させる。例えば、層13,15,23,40のうちの1つ以上は、誘電体層及び全体コーティング30,60,70が熱的により安定できるようにするために、ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上の酸化物であってもよく、又はそれらを含んでもよい。追加金属が含まれるこのような亜鉛酸化物含有誘電体層は、好ましくは完全に酸化又は実質的に完全に酸化されてもよく、任意のHT後に非晶質であってもよい。当然、このような三元合金又は二元合金のうちの1つの酸化物は、層(13,15,23、及び/又は40)の1つ又は2つに対して用いられてもよく、このような三元合金又は二元合金の他の酸化物を層13,15,23,40のうちの残りに対して用いてもよい。同様に、このような三元合金又は二元合金のうちの1つの酸化物は、誘電体層(13,15,23、及び/又は40)のうちの1つ又は2つに対して用いてもよく、SnOは、誘電体層(13,15,23、40)の残りに対して用いてもよい。
【0011】
追加金属を有する亜鉛酸化物含有誘電体層(例えば、層(13,15,23及び/又は40)のうちの1つ以上)の構造がSnOより無秩序になれば、その層及びコーティングはさらに安定化する。材料の構造体が無秩序になれば、さらに安定化する(例えば、HT時)ことが分かった。その他の金属が添加されたこのような亜鉛酸化物含有誘電体層は、本発明の特定の例示的な実施形態において、任意の適切な低放射率コーティングにおける誘電体層として用いることができ、例えば、少なくとも第1IR反射層9と第2IR反射層19との間、IR反射層9,19の下、及び/又はIR反射層9,19の上である。本発明の様々な実施形態において、このような層は、単一銀、二重銀、又は、三重銀の低放射率コーティングに用いてもよい。しかし、コーティング内の全ての誘電体層がこのような材料によって構成される必要はない。特定の例示的な実施形態において、その他の金属が添加された亜鉛酸化物含有誘電体層は、図1図4に示すように、シリコン窒化物(例えば、Si)、SnO、ZnO、ZnAlOなどのような材料で構成されるその他の誘電体層を含むコーティングに用いられてもよい。追加金属が含まれるこのような1つ以上の亜鉛酸化物含有誘電体層を用いれば、例えば、ガラス側反射率ΔEの減少などの改善された熱安定性を可能にする。本発明の特定の例示的な実施形態において、ガラス基板1及び低放射率コーティングを含む被覆製品は、HTによってガラス側反射率ΔEが層にSnOだけを用いる場合の反射率より少なくとも0.5又は1.0小さい(さらに好ましくは、少なくとも1.5小さい)。本発明の特定の例示的な実施形態において、ガラス基板1及び低放射率コーティングを含む被覆製品は、ガラス側反射率ΔEが5.0以下、好ましくは4.5又は4.0以下である。
【0012】
特定の例示的な実施形態において、追加金属が含まれる亜鉛酸化物含有誘電体層(13,15及び/又は40)は、IR反射層の品質を改善するために、IR反射層(9及び/又は19)を支持する亜鉛酸化物又は亜鉛アルミニウム酸化物シード層(7及び/又は17)の下に位置し直接接触する(例えば、図1図2の層15、図3の層40、図4の層13を参照)。ZnO又はZnAlO系接触層(7又は17)の下の層の構造及び熱安定性は、テクスチャ加工されたZnO成長(002)及びAg成長(111)に関連する。純粋なSnOの層は、高い応力などの構造的変化を起こし、例えば、HT時のコーティングの光及び熱安定性を劣化させる傾向がある。純粋なSnOの層は、典型的に、スパッタ蒸着時には非晶質であるが、HT時には結晶質になる。本明細書に記載した亜鉛酸化物含有誘電体層内に提供される追加金属は、このような構造変化を減らし、HT前後に層の応力制御を改善して、特定の例示的な実施形態において、層がHT後にも非晶質又は実質的に非晶質の状態になる。これは、低放射率コーティングのパフォーマンスを向上させる。
【0013】
本発明の特定の例示的な実施形態において(例えば、図1図2、及び図4)、コーティングは、二重銀スタックを含むが、本発明の全ての例において、このように限定されるものではない。本発明の例示的な実施形態によれば、低放射率コーティングを有する被覆製品は、シート抵抗(R)が7.0以下(さらに好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0又は3.0以下)である(任意のHT前及び/又は後に測定される)。本発明の例示的な実施形態によれば、低放射率コーティングを有する被覆製品は、垂直放射率(E)が約0.09以下、好ましくは約0.07以下、最も好ましくは約0.05又は0.04以下である(任意のHT前及び/又は後に測定される)。特定の例示的な実施形態において、任意の熱処理(HT)前及び/又は後に一体型の形態で測定された本発明の例示的な実施形態によれば、被覆製品は、可視光線透過率(Ill.C、2度)が少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%である。
【0014】
本明細書に記載した「熱処理」及び「熱処理する」は、ガラス含有被覆製品の焼き戻し処理、熱曲げ及び/又は熱強化を得るために十分な温度まで製品を加熱することを意味する。この定義は、焼き戻し、曲げ及び/又は熱強化を得るために、例えば、少なくとも約580℃、好ましくは少なくとも約600℃の温度でオーブン又は炉で十分な期間の間被覆製品を加熱することを含む。特定の例において、HTは、少なくとも約4から5分以上の間実施されてもよい。本発明の別の例示的な実施形態において、被覆製品は、熱処理してもしなくてもよい。
【0015】
図1は、本発明の実施例の非限定的な実施形態による被覆製品の側断面図である。被覆製品は、基板1(例えば、厚さが約1.0から10.0mm、さらに好ましくは約1.0から3.5mmである、透明、緑色、青銅色、又は、青緑色ガラス基板)及び基板1上に直接又は間接的に提供される低放射率コーティング(又は層システム)30を含む。コーティング(又は層システム)30は、ヘイズ減少用Siリッチ型の、又は、本発明の他の実施形態において、任意の異なる適切な化学量論の、Siであり得る下部シリコン窒化物含有誘電体層3、第1下部接触層7(これは、IR反射層9と接触する)、第1伝導性(好ましくは金属性又は実質的に金属性)赤外線(IR)反射層9、第1上部接触層11(IR反射層9に接触)、亜鉛酸化物含有誘電体層13、他のシリコン窒化物含有層14、亜鉛酸化物含有誘電体層15、第2下部接触層17(これは、IR反射層19に接触する)、第2伝導性(好ましくは金属性又は実質的に金属性)IR反射層19、第2上部接触層21(IR反射層19に接触する)、特定の例において、亜鉛酸化物を含んでもよい誘電体層23、シリコン窒化物含有誘電体層25、及びジルコニウム酸化物の又はこれを含有する任意の保護誘電体層27を含む。「接触」層7,11,17,21は、各々少なくとも1つのIR反射層(例えば、Ag系層)に接触する。前記スパッタ蒸着層3〜27は、ガラス又はプラスチック基板1上に提供される低放射率コーティング30を構成する。
【0016】
一体型の例として、被覆製品は、図1(及び図2図4)で図に示すように1つのガラス基板1だけを含む。しかし、本明細書に記載した一体型被覆製品(例えば、図1図4参照)は、積層された車両遮蔽版、IG窓ユニットなどの装置に用いてもよい。IG窓ユニットに関しては、IG窓ユニットは、2つの離隔されたガラス基板を含んでもよい。例示のIG窓ユニットは、米国特許第6,632,491号に図示して記載され、その全体内容は、参照として含まれる。例示のIG窓ユニットは、例えば、図1図4に示した(又は本明細書に記載した)コーティングされたガラス基板1が他のガラス基板(図示せず)との間に限定された間隙を有するように、スペーサ、シール剤等を介して他のガラス基板に結合されたものを含む。IGユニット実施形態で基板の間の間隙は、特定の例において、アルゴン(Ar)などの気体で充填してもよい。
【0017】
図2の実施形態は、層13,15,23のうちの1つ又は2つ内において追加金属材料を含む亜鉛酸化物に替えてSnOが用いられ得ることを強調するために、図2の実施形態の誘電体層23がSnOであると説明されていることを除いて図1の実施形態と同一である。
【0018】
図3の実施形態は、低放射率コーティング60が二重銀のコーティングでない単一銀のコーティングである被覆製品を示す。図1で識別された参照符号と同一の図3の実施形態の層は、同様の層であると考えてもよい。
【0019】
図4の実施形態は、本発明の他の実施形態として低放射率コーティング70を含む被覆製品を示す。図4の実施形態は、多数の面で図1の実施形態と互いに異なる。例えば、図1の実施形態からの層14,15,27は、図4の実施形態に存在する必要はない。また、図4の実施形態は、下部シリコン窒化物含有層3と下部亜鉛酸化物又は亜鉛アルミニウム酸化物含有層7との間にチタン酸化物(例えば、TiO)又はこれを含む誘電体層4を含む。上記のように、同様の参照番号は、図面で類似の部分/層を意味する。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、誘電体層3,14,25は、シリコン窒化物であるかシリコン窒化物を含んでもよい。シリコン窒化物層3,14は、特に被覆製品の熱処理性(例えば、焼き戻し処理など)を向上することができる。シリコン窒化物層(3及び/又は14)は、化学量論形態(すなわち、Si)であったり、本発明の他の実施形態ではSiリッチ型のシリコン窒化物であってもよい。例えば、銀系のIR反射層の下に亜鉛酸化物及び/又はスズ酸化物が組み合わせられたSiリッチシリコン窒化物3(及び/又は14)により、銀が(例えば、スパッタリング等を介して)蒸着し、それによりシート抵抗は特定のその他の材料が銀の下にある場合に比べて減少する。また、Siリッチシリコン窒化物含有層3において、フリーSi(free−Si)が存在すれば、熱処理(HT)中にガラス1から外側に移動するナトリウム(Na)などの特定の原子が銀に到達することができ、損傷する前にSiリッチシリコン窒化物含有層によって特定の原子が効率的に遮断されてもよい。したがって、熱処理による酸化は可視光線透過率を増加させ、本発明の特定の例示的な実施形態において、層3のSiリッチSiがHT中に損傷する銀層の部分を減らし、シート抵抗(R)を満足する方法によって減少させたり保持できることが分かる。
【0021】
特定の例示的な実施形態において、Siリッチシリコン窒化物が層(3及び/又は14)に用いられる場合、蒸着されたSiリッチシリコン窒化物層は、Si層を特徴として、x/yは、0.76から1.5、さらに好ましくは0.8から1.4、より好ましくは0.85から1.2であってもよい。また、特定の例示的な実施形態において、HT前及び/又は後に、SiリッチSi層は、屈折率「n」が少なくとも2.05、好ましくは少なくとも2.07、場合によって少なくとも2.10(例えば、632nm)である(注:用いることができる化学量論Siは、屈折率nが2.02〜2.04である)。特定の例示的な実施形態において、驚くべきことに、改善された熱安定性は、特に蒸着されたSiリッチSi層の屈折率「n」が少なくとも2.10、好ましくは少なくとも2.20、最も好ましくは2.2から2.4である場合に実現可能になることが分かった。また、特定の例示的な実施形態において、SiリッチSi層は、消滅係数kが少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.003であってもよい(注:化学量論Siは、消滅係数「k」が実質的に0である)。また、特定の例示的な実施形態において、改善された熱安定性は、驚くべきことにSiリッチSi層に対する「k」が550nmの蒸着時に0.001から0.05である場合に実現され得ることが分かった。n及びkは、熱処理のために減少する傾向があることに留意する。
【0022】
本発明の特定の例示的な実施形態において、本明細書に検討されたシリコン窒化物層の一部及び/又は全部がステンレス鋼又はアルミニウムなどのその他の材料でドープされてもよい。例えば、本明細書で検討されたシリコン窒化物層の一部及び/又は全体は、本発明の特定の例示的な実施形態において、任意に約0〜15%のアルミニウム、好ましくは約1〜10%のアルミニウムを含んでもよい。シリコン窒化物は、本発明の特定の実施形態において、少なくとも窒素ガスを含む雰囲気でSi又はSiAlのターゲットをスパッタリングすることによって蒸着してもよい。
【0023】
赤外線反射層(9及び19)は、好ましくは実質的に又は全体的に金属性及び/又は伝導性を有し、銀(Ag)、金、又は、任意のその他の適切なIR反射材料を含んでもよく、本質的にこれらによって構成されてもよい。IR反射層(9及び19)は、コーティングが低E及び/又は良好な日光制御特徴を有するように助ける。しかし、本発明の特定の実施形態において、IR反射層は、僅かに酸化されてもよい。
【0024】
本発明の特定の例示的な実施形態において、上部接触層11,21は、ニッケル(Ni)酸化物、クロム/クロム(Cr)酸化物、又は、ニッケル合金酸化物、例えば、ニッケルクロム酸化物(NiCrO)、又は、その他の適切な材料であったり、又はそれらを含んでもよい。例えば、このような層(11及び/又は21)において、NiCrO又はNiCrを用いれば、耐久性を向上させることができる。層(11及び/又は21)のNiCrOは、本発明の特定の実施形態で完全に酸化されたり(すなわち、完全に化学量論的)、又は部分的に酸化されたり(すなわち、下位酸化物)、又はNiCrの実施形態において金属性であってもよい。特定の例において、NiCrO層(11及び/又は21)は、少なくとも約50%酸化されてもよい。本発明の他の実施形態において、接触層(11及び/又は21)(例えば、Ni及び/又はCrの酸化物又はそれを含む)は、酸化勾配(oxidation graded)したり酸化勾配しないこともある。酸化勾配は、層の厚さ全体で層の酸化程度が変化することを意味する。例えば、接触層(11及び/又は21)は、直接隣接したIR反射層から、さらに又はより/最も遠い接触層の一部でよりも、直接隣接したIR反射層と接触した界面において少なく酸化されるように勾配することができる。様々な形態の酸化物勾配接触層の説明は、米国特許第6,576,349号に記載されており、その開示は本明細書に参照として含まれる。本発明の他の実施形態において、接触層(11及び/又は21)(例えば、Ni及び/又はCrであったり、Ni及び/又はCrを含む)は、全体の下部IR反射層で連続的であっても連続的でなくてもよい。
【0025】
本発明の特定の例示的な実施形態において、誘電体シード層7,17は、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)及び/又は亜鉛アルミニウム酸化物(ZnAlO)であってもよく、又はそれらを含んでもよい。しかし、他の例として、本明細書に記載したその他の層と同様に、その他の材料を用いてもよい。亜鉛酸化物層7,17は、その他の材料を含有してもよい。例えば、本発明の特定の例示的な実施形態において、1つ以上の亜鉛酸化物層7,17は、約1から10%のAl、好ましくは約1から5%のAl、最も好ましくは約1から4%のAlでドープされてもよい。
【0026】
本発明の特定の例示的な実施形態において、オーバーコート誘電体層27は、ジルコニウム酸化物(例えば、ZrO)であってもよく、又はそれらを含んでもよい。本明細書に記載したその他の層のように、この層は、任意であって、本発明の特定の例示的な実施形態において提供される必要はない。
【0027】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnCuAlの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化されている。本明細書中に使用される「実質的に完全に酸化」とは、完全に酸化された場合の少なくとも約80%まで酸化されることを意味することに注意する。例えば、ZnCuAl酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnCuAl酸化物材料は、図1の実施形態で示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnCuAl酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnCuAl酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnCuAl酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にCu及びAlに比べて多くのZnを含有して、Cuに比べて多くのAlを含有し、例えば、層の金属含量は、約50〜98%のZn(好ましくは約60〜97%、さらに好ましくは約70〜97%、より好ましくは約80〜93%のZn)、約0.1〜15%のCu(さらに好ましくは約0.1〜5%、より好ましくは約0.1〜30%、さらに好ましくは約0.3〜3%のCu)、及び約0.5〜50%のAl(さらに好ましくは約0.5〜25%、より好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約4〜15%のAl)である。一例として、ZnCuAl酸化物を挙げることができ、金属含量は、約87%のZn、約0.5%のCu、及び約12.5%のAlである。本明細書において、材料のパーセンテージ(%)は原子%を表す。当然、その他の少量の材料は層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Cu及びAlが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよく、このような文献は、本明細書に参照として含まれる。
【0028】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnCuの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化される。例えば、ZnCu酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnCu酸化物材料は、図1の実施形態に示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnCu酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnCu酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnCu酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にCuに比べて実質的に多くのZnを含有し、例えば、その層の金属含量は、約50〜99%のZn(好ましくは約60〜98%、さらに好ましくは約70〜98%、より好ましくは約85〜97%のZn)、約0.2〜50%のCu(さらに好ましくは約0.2〜20%、より好ましくは約1〜15%、さらに好ましくは約2〜7%のCu)である。一例として、ZnCu酸化物を挙げることができ、金属含量は、約95%のZn、約5%のCuである。当然、その他の少量の材料はその層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Cuが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよい。
【0029】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnCuNiの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化される。例えば、ZnCuNiの酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnCuNiの酸化物材料は、図1の実施形態に示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnCuNiの酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnCuNiの酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnCuNiの酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にCu及びNiに比べて多くのZnを含有し、例えばその層の金属含量は、約50〜98%のZn(好ましくは約60〜97%、さらに好ましくは約70〜97%、より好ましくは約80〜93%のZn)、約0.1〜15%のCu(さらに好ましくは約0.1〜5%、より好ましくは約0.1〜30%、さらに好ましくは約0.3〜3%のCu)及び約0.5〜50%のNi(さらに好ましくは約0.5〜25%、より好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約4〜15%のNi)である。一例として、ZnCuNi酸化物を挙げることができ、金属含量は、約87%のZn、約0.5%のCu、及び約12.5%のNiである。当然、その他の少量の材料はその層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Cu及びNiが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよい。
【0030】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnNiの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化される。例えば、ZnNiの酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnNiの酸化物材料は、図1の実施形態に示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnNiの酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnNiの酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnNiの酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にNiに比べて多くのZnを含有し、例えばその層の金属含量は、約50〜99%のZn(好ましくは約60〜98%、さらに好ましくは約70〜98%、より好ましくは約85〜97%のZn)及び約0.2〜50%のNi(さらに好ましくは約0.2〜20%、より好ましくは約1〜15%、さらに好ましくは約3〜12%のNi)である。一例として、ZnNi酸化物を挙げることができ、金属含量は、約90%のZn及び約10%のNiである。当然、その他の少量の材料はその層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Niが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよい。
【0031】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnNiAlの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化される。例えば、ZnNiAlの酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnNiAlの酸化物材料は、図1の実施形態に示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnNiAlの酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnNiAlの酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnNiAlの酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にNi及びAlに比べて多くのZnを含有し、例えばその層の金属含量は、約50〜98%のZn(好ましくは約60〜97%、さらに好ましくは約70〜97%、より好ましくは約80〜93%のZn)、約0.1〜15%のNi(好ましくは約0.1〜5%、さらに好ましくは約0.1〜30%、より好ましくは約0.3〜3%のNi)、及び約0.5〜50%のAl(さらに好ましくは約0.5〜25%、より好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約4〜15%のAl)である。一例として、ZnNiAl酸化物を挙げることができ、金属含量は、約87%のZn、約0.5%のNi、及び約12.5%のAlである。当然、その他の少量の材料はその層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Al及びNiが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよい。
【0032】
図1図4を参照すると、誘電体層13,15,23,40のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的な実施形態において、ZnNiMgの酸化物であったり、又はそれを含んでもよく、その層は、実質的に透明で完全に酸化又は実質的に完全に酸化される。例えば、ZnNiMgの酸化物材料は、図1図2の実施形態における層15に対してだけ用いてもよく、基本的にSnO又はその他の適切な誘電体材料は、誘電体層13,23に対して用いられる。また、例えば、ZnNiMgの酸化物材料は、図1の実施形態に示された層13,15,23のうち2つ又は3つに対して用いてもよい。別の例として、ZnNiMgの酸化物材料は、図3の実施形態における層(40及び/又は13)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよく、図4の実施形態における層(13及び/又は23)のうちの1つ又は両方に対して用いてもよい。例えば、ZnNiMgの酸化物は、図4の実施形態における層13に対して用いられる場合、SnO、SnZnO、又は、その他の適切な誘電体材料は、誘電体層23に対して用いてもよい。特定の例示的な実施形態において、ZnNiMgの酸化物は、1つ以上の層13,15,23,40内に又はそのために用いられる場合、その層は、好ましくは実質的にNi及びMgに比べて多くのZnを含有し、例えばその層の金属含量は、約50〜98%のZn(好ましくは約60〜97%、さらに好ましくは約70〜97%、より好ましくは約80〜93%のZn)、約0.1〜15%のNi(好ましくは約0.1〜5%、さらに好ましくは約0.1〜30%、より好ましくは約0.3〜3%のNi)、及び約0.5〜50%のMg(さらに好ましくは約0.5〜25%、より好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約4〜15%のMg)である。一例として、ZnNiMg酸化物を挙げることができ、金属含量は、約87%のZn、約0.5%のNi、及び約12.5%のMgである。当然、その他の少量の材料はその層内に含まれてもよい。本発明のその他の実施形態において、追加金属Ni及びMgが含まれるこのような亜鉛酸化物含有材料は、米国特許第7,521,096号、同第7,879,448号、同第8,142,622号、同第7,648,769号、同第8,017,243号、同第7,597,965号、又は、同第7,858,191号の任意の文献における任意のコーティング中のスズ酸化物系の誘電体層のうちのいずれか1つに対して用いてもよい。
【0033】
上述したコーティングの上又は下にその他の層がまた提供されてもよい。したがって、層システム又はコーティングが基板1「上に」あったり、基板1に「よって支持される」(直接又は間接的)ものであっても、その間に他の層が提供されてもよい。したがって、例えば、図1図4のコーティングは、層3と基板1との間にその他の層が提供されても、基板1「上に」あったり、基板1に「よって支持される」ものと見ることができる。また、特定の実施形態において、図示されたコーティングの特定の層は、除去されてもよいが、本発明の特定の実施形態の全体の思想を逸脱しない範囲で、その他の層が様々な層の間に追加されたり、本発明のその他の実施形態において、様々な層が分離した領域の間に追加されるその他の層によって分離されてもよい。
【0034】
本発明の他の実施形態において、様々な厚さ及び材料が層に用いられるが、図1図2の実施形態において、ガラス基板1上のガラス基板から外部へのそれぞれの層の厚さ及び材料の例は次のようになる(下記亜鉛酸化物+M層のうちの1つ以上は、誘電体層が追加金属を有する亜鉛酸化物又はそれを含む上述した材料中の任意のものであってもよく、又はスズ酸化物であってもよいことに注意する)。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明の特定の例示的な実施形態において、ガラス基板上に低放射率コーティングを含む被覆製品が提供され、コーティングは、前記ガラス基板上の誘電体層及びIR反射層を含み、前記誘電体層は、ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上の酸化物を含む。誘電体層は、完全に酸化されたり実質的に完全に酸化されてもよい。コーティングは、(例えば、銀であるか銀を含む)1つ、2つ、又は3つのIR反射層を含んでもよい。
【0037】
直前の段落の被覆製品で、IR反射層は、銀であるか銀を含んでもよい。
【0038】
前記2つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ガラス基板と前記IR反射層の間に配置されてもよい。
【0039】
前記3つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、ガラス基板とIR反射層の間に位置する亜鉛酸化物又はそれを含む層をさらに含んでもよく、前記IR反射層は、亜鉛酸化物層と直接接触してもよい。ZnCuAl、ZnCu、ZnCuNi、ZnNi、ZnNiAl、及びZnNiMgのうちの1つ以上又はそれを含む誘電体層は、亜鉛酸化物を含む層と直接接触してもよい。
【0040】
前記4つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティングは、他のIR反射層をさらに含んでもよく、2つのIR反射層は、銀を含んでもよく、誘電体層は、IR反射層の間に配置されてもよい。コーティングは、前記他のIR反射層と直接接触する亜鉛酸化物を含む層をさらに含んでもよく、誘電体層は、IR反射層の間に位置できて亜鉛酸化物を含む層と直接接触してもよい。
【0041】
前記5つの段落のうちいずれか1つの被覆製品は、可視光線透過率が少なくとも30%、好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも約50%又は60%であってもよい。
【0042】
前記6つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記コーティングは、シート抵抗が5Ω/□以下であってもよい。
【0043】
前記7つの段落のうちいずれか1つの被覆製品は、熱処理(例えば、焼き戻し処理)されてもよい。被覆製品は、熱処理によってガラス側反射率ΔEが5.0以下(好ましくは4.5又は4.0以下)であってもよい。
【0044】
前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnCuAlの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。前記誘電体層の金属含量は、約60〜97%のZn、約0.1〜15%のCu及び約0.5〜25%のAl、好ましくは約80〜93%のZn、約0.1〜5%のCu及び約4〜15%のAlを含んでもよい。前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnCuの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。前記誘電体層の金属含量は、約60〜98%のZn及び約0.2〜20%のCu、好ましくは約85〜97%のZn及び約2〜7%のCuを含んでもよい。前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnNiの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。前記誘電体層の金属含量は、約60〜98%のZn及び約0.2〜20%のNi、好ましくは約85〜97%のZn及び約1〜15%のNiを含んでもよい。前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnCuNiの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnNiAlの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。前記8つの段落のうちいずれか1つの被覆製品において、前記誘電体層は、ZnNiMgの酸化物を含んだり実質的にこれらで構成されてもよい。本発明の特定の例示的な実施形態において、コーティングの異なる誘電体層は、このような材料からなる様々なコーティングであってもよい。
【0045】
本発明は、現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、添付する請求の範囲の思想と範囲内に含まれる様々な変更及び同等な配列を含むものと理解される。
図1
図2
図3
図4