特許第6374408号(P6374408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374408電離放射線に対する防護のための装置、及びそのような装置を備えた格納容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374408
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電離放射線に対する防護のための装置、及びそのような装置を備えた格納容器
(51)【国際特許分類】
   G21F 7/053 20060101AFI20180806BHJP
   B25J 21/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G21F7/053
   B25J21/02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-558521(P2015-558521)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公表番号】特表2016-509227(P2016-509227A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】FR2014000040
(87)【国際公開番号】WO2014128368
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】1300391
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マゾディエ、ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ラマゼール、ギ
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−050197(JP,A)
【文献】 実開平02−099397(JP,U)
【文献】 特開平05−269690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0314774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 7/053
B25J 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋の袖部(30)を備えた手袋(31)を装着した壁ブッシュ構造(22)によって画定された穴(32)を通過する電離放射線に対する防護を行うための防護装置(10)において、前記穴(32)を通過する電離放射線を減衰するための構造であって、前記穴(32)を覆う(又は閉鎖する)ために適切な構造と、電離放射線を減衰させる前記構造が前記壁ブッシュ構造(22)に着脱自在に固着することを確実にするための固着手段(16)とを備え、電離放射線を減衰させる前記構造は、第1の開口端部(14)及び第2の開口端部(13)を有し、かつ袖部(11)自体の重量により変形可能である袖部(11)からなり、前記袖部(11)は、前記袖部(11)の前記第1の開口端部(14)で前記固着手段(16)によって前記壁ブッシュ構造(22)に固着され、かつ前記手袋(31)の前記手袋の袖部(30)の内側で部分的に延びるように折り返し可能であるように形成されている、防護装置(10)。
【請求項2】
前記袖部(11)は、折り返したときに、前記穴(32)を通じて前記壁ブッシュ構造(22)よりも内側に部分的に延び、前記構造(22)を部分的に超えることを可能にするための形状、寸法、及び適切に低い剛性を有し、それによって前記袖部(11)及び前記穴(32)に係合される作業者の腕の前記防護を強化する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記袖部(11)は、50μm又は100μm〜500μm、1000μm、又は2000μmまでの範囲内にある厚さ(15)を示す、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記袖部(11)は、金属充填剤を含有するエラストマー材料からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記固着手段は、前記袖部(11)に少なくとも部分的に組み込まれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記固着手段は、前記袖部(11)に組み込まれると共に、前記第1の開口端部(14)に沿って延びる突出部(16)を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記袖部(11)は、少なくとも1つの円筒形部分(110、112)と、少なくとも1つのフレア状部分(111)とのうちの少なくとも一方を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記袖部(11)は、前記袖部の前記第1の開口端部(14)の近くに延びると共に第1の密度を示す第1の袖部部分を有し、かつ前記袖部は、前記袖部の前記第2の開口端部(13)の近くに延びると共に前記第1の密度より大きい第2の密度を示す第2の袖部部分を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記袖部(11)は、前記袖部の前記第2の開口端部(13)の近くに延びるバラスト及び強化手段(1100)のうちの少なくとも一方を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記バラスト及び強化手段(1100)のうちの少なくとも一方は、その第2の開口端部(13)における前記袖部に形成されたカフ(1100)からなる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記壁ブッシュ構造(22)から吊り下げられた前記袖部部分の長さ(33)は、少なくとも前記穴(32)の直径の大きさを有し、場合により、この長さと前記直径の比は、1〜1.5又は2の範囲内にある、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
穴(21)によって穴が空けられた壁(19、20)を有すると共に手袋(31)を装着した壁ブッシュ構造(22)を含み、請求項1〜11のいずれか1項に記載の防護装置(10)を備えた閉込容器(18)。
【請求項13】
前記袖部(11)は、10Pa〜10Paの範囲内にあるヤング率を示す材料で作製されている、請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記袖部(11)は、前記袖部が前記壁ブッシュ構造(22)からその第1の端部(14、16)によって吊り下げられるとき、前記第2の開口端部(13)における前記第2の開口は摘ままれることになり、特に前記袖部のこの部分の重量の作用により、前記第2の開口端部(13)から延びる前記袖部の一部が平らであることを確実にするのに十分である変形の能力を示し、前記袖部は、この構成で、前記袖部が前記壁ブッシュ構造から吊り下げられるときに、前記袖部は、前記穴(32)を覆い(閉鎖し)、前記穴を通過する電離放射線を減衰させるように、前記壁ブッシュ構造によって画定された穴(32)全体の上に延びるように形状及び寸法を有する、請求項12又は13に記載の容器。
【請求項15】
前記袖部(11)は、前記容器(18)の内側に一部延びるように折り返しできるように構成されている、請求項12〜14のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線に対する防護を行う防護装置に関すると共に、そのような装置を装着した閉込容器に関する。
本発明の技術分野は、電離放射線に対する防護を行う物品を製造する分野である。
【背景技術】
【0002】
閉込容器の内側、特に手袋・ボックスの内側で、電離放射線(及び、特にガンマ(γ)線)を放出する物体又は物質を処理する又は取り扱うことが知られている。
このために、容器の少なくとも1つの壁は、容器の内側にアクセスできるようにする及び/又は物質が壁を通過することを可能にする穴によって穴が空けられている。
【0003】
そのような容器は、ダスト(懸濁状態におくことができる粉末又は材料)が穴を通過する結果として容器から外へ移動する容器内に含まれている危険なダストを避けるために、容器が位置する環境又は建物の圧力よりも低い圧力で維持される。
【0004】
そのような穴は、概して環状形状であり容器の壁を通過しこの壁に固定されるブッシュ構造により画定され得る(及びそのような構造を装着し得る)。
そのような壁ブッシュ構造は、場合によっては「手袋・ポート」又は「バッグ・ポート」と呼ばれる。
【0005】
作業者の手、前腕、及び場合により穴を通過して容器の内部に貫入する上腕も保護するため、かつダストを閉じ込めるため、容器の壁の外面から突出している環状部分を有する構造の環状部分のまわりの手袋の袖部の開口端部に係合することによって手袋を壁ブッシュ構造に固定することが知られている。
【0006】
そのような手袋は、電離放射線を減衰させる材料、例えば、金属充填剤を含むエラストマー材料を含むことができ、及び/又はそれから作製することができる。この充填剤は、金属粉末又は金属酸化物粉末であり得る。特許文献1中の例に説明されるように、このために使用される材料は、鉛、タングステン、ビスマス、又はランタンであり得る。
【0007】
特許文献2は、(放射性物質を収容する手袋・ボックスとは異なり)圧力が掛けられていると共に、作業者の手が閉込容器の中に貫く前に袖部及びパネルによって画定された空間を排気することを可能にする、閉込容器への手動アクセス・パネルに面する手袋・ポートに固着された袖部を記載している。
【0008】
特許文献3及び特許文献4は、手袋が、2つの部分、すなわち手袋・ポートに固着された袖部とこの袖部に着脱自在の方式で固着されていると共に袖部を延長する手袋とで構成されている放射性物質を取り扱うように適合された手袋・ボックスを記載している。
【0009】
これらの手袋の放射線減衰力は、特に手袋のメンブレン/壁の薄い厚さのために制限される。それにもかかわらず、この薄い厚さは、手袋が、手及び腕を手袋に係合する作業者によって実行される操作に必要な十分な柔軟性を保つことを可能にしている。
【0010】
結果として、容器内に収容された物体又は物質から放出される電離放射線は、手袋及び容器の壁に作製された穴を通過することができる。
この放射線を減少させるために、壁ブッシュ構造からキャップが分離することなく作業
者がそれを手袋に付ける又はそれを外すことを可能にするように、壁ブッシュ構造を装着するだけでなく、穴を覆うと共に作業者の手及び腕がキャップ及び穴を通過することを可能にするキャップも装着する提案がなされている。
【0011】
ストラップ又はフラップの形態で放射線減衰用の変形可能な壁要素を含むそのようなキャップは、以下の特許文献5、6、7及び8に記載されている。
手袋が使用中でなく、容器は減圧で維持されているとき、この手袋は、内部の圧力が低いので容器内部で展開されることになり得、これは、容器に装着された別の壁ブッシュ構造に固定された別の手袋を用いた作業者による容器の内側の物体又は物質の処理又は操作に干渉する可能性があり、それは、容器内部に配置された回転機器又は加熱機器により手袋が引きちぎられる又は損傷を受けるというリスクももたらし得る。
【0012】
未使用の手袋が容器の内部でそのように展開するのを避けるため、特許文献7は、手袋を容器の外側へ引っ張り、キャップの変形可能な壁要素によって手袋を固定することを提案している。欠点は、この構成では、キャップの壁要素が手袋のまわりに延び、そしてキャップの中央部分がもはや放射線を減衰させるその役割を十分に実行しないことである。
【0013】
さらに、作業者が手袋から手を取り除く度に、未使用の手袋の袖部に結び目を作ることが推奨され、この結び目は、手及び腕を手袋の中に入れる前にも、再度手及び腕を手袋の中に入れる際にも、解かれる必要がある。前記キャップの存在は、そのような作業を大いに妨げる。
【0014】
変形可能な壁要素を含むキャップの別の欠点は、キャップを通じて手袋に係合される手及び腕を有する作業者の手及び腕の移動を、変形可能な壁要素が妨げることである。
手袋の柔軟性を減少させずに、壁ブッシュ構造に固着された手袋に係合される作業者の腕及び身体の他の部分について電離放射線に対する防護を強化する必要性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許第2948672号明細書
【特許文献2】仏国特許第2254409号明細書
【特許文献3】仏国特許第2500355号明細書
【特許文献4】米国特許第3009164号明細書
【特許文献5】英国特許1455863号明細書
【特許文献6】仏国特許第2590198号明細書
【特許文献7】仏国特許第2642221号明細書
【特許文献8】仏国特許第2920334号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、壁ブッシュ構造に固着するためのものであると共に電離放射線に対する防護を行う既知の装置の弱点又は欠点が少なくとも一部改良及び/又は改善されている電離放射線に対する防護を行う防護装置を提供することである。
【0017】
本発明の目的は、前述及び後述の目的の少なくとも1つ、好適には2つ以上を満足する壁ブッシュ構造に固着する電離放射線に対する防護を行う防護装置を提供することである。
【0018】
・ 作業者の手(及び場合により腕も)が壁ブッシュ構造に固着された手袋に係合され、作業者の身体の防護を強化すること。
・ 特に上記防護装置が別の防護装置によって置き換えられることを可能にするために、壁ブッシュ構造から容易に取り外し可能/分離可能であること。
【0019】
・ 作業者を邪魔することを制限又は回避すること、特に、作業者の腕、手、及び指の移動の振幅を制限しないこと。
・ 作業者が壁ブッシュ構造に固着される手袋に手及び腕を係合しようとするとき、又は作業者が壁ブッシュ構造に固着される手袋から手及び腕を取り除こうとするとき、壁ブッシュ構造から分離されることを必要としないこと。
【0020】
・ 電離放射線に対しての防護を減少させることなく、未使用の手袋が壁ブッシュ構造を装着した容器内部で展開されるのを避けることを可能にすること。
・ (既存の閉込容器における)既存の壁ブッシュ構造に装着するのに適していること。
【0021】
本発明の目的は、そのような防護装置を装着した閉込容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、壁ブッシュ構造により画定された穴を通過する電離放射線に対する防護を行う防護装置であって、穴を覆う又は実際には閉鎖することに適している、この穴を通過する電離放射線を減衰するための構造を含み、かつ電離放射線を減衰させる構造が、壁ブッシュ構造に着脱自在に固着することを可能にするように構成された固着手段を含む防護装置に特に適用される。
【0023】
本発明の一態様によれば、電離放射線を減衰させる構造は、両端部で開いており、それ自体の重量により変形可能である袖部であって、袖部の第1の開口端部で前記固着手段によって壁ブッシュ構造に固着されるように構成されている袖部によって本質的に構成されている。
【0024】
好適には、袖部は、それが折り返され、それによって画定された穴を通じて壁ブッシュ構造の内側に、すなわちブッシュ構造を装着した壁を有する閉込容器の内側に一部延び、構造を一部超えることを可能にするように形状、寸法、及び適切に低い剛性(すなわち、適切に高い柔軟性)を示しており、それによって袖部及び穴に係合される作業者の腕の防護を強化する。
【0025】
袖部は、前記固着手段に固定され、固着手段は、袖部の第1の開口端部に設けられ、又はその近くに位置することができる。
袖部は、袖部が前記固着手段によって壁ブッシュ構造から吊り下げられるときに前記構造によって画定された穴を閉鎖するように、袖部が壁ブッシュ構造から前記固着手段によって吊り下げられるときにこの第1の開口端部を覆うのに十分大きくかつ柔軟である。
【0026】
袖部の柔軟性、及び特にそれ自体の重量によって変形するその能力は、袖部が作製されている材料の柔軟性及び/又は厚さに起因し得る。
特に、袖部は、約50マイクロメートル(μm)又は100μmから約500μm、1000μm、又は2000μmの範囲内にある厚さを示し得る。
【0027】
袖部は、金属充填剤を含むエラストマー材料製とすることができ、例えば、特許FR2948672に記載された材料から、この特許に記載された方法を適切に使用する場合、作製することができる。
【0028】
前記固着手段は、特に第1の開口端部に沿って延びる突出部(例えば、ビーズ)の形態
で袖部に組み込むことができる。
袖部の寸法は、壁ブッシュ構造の寸法及び/又は前記構造によって画定された穴の寸法に適合する。
【0029】
袖部の形状は、直線とすることができ、すなわち、袖部は円筒形とすることができ、又はそれはフレア状とすることができる。
袖部は、少なくとも1つのフレア状部分によって拡張することができる少なくとも1つの円筒形部分を含むことができる。
【0030】
言い換えると、本発明の別の態様では、電離放射線を減衰させる構造は、壁ブッシュ構造に固定されるように配置された第1の開口端部と、壁ブッシュ構造に固定される手袋を通す(通すのに適している)ように配置された第2の開口端部とを有する袖部であり、この袖部は、袖部が壁ブッシュ構造からその第1の端部によって吊り下げられるとき、前記第1の端部は垂直に対してほとんど傾斜していない平面に沿って延び、その第2の開口端部における第2の開口は摘ままれることになり、特に袖部のこの部分の重量の作用により、第2の端部から延びる袖部の一部が平らであることを確実にするのに十分である(可逆的な)変形の能力を示し、袖部は、この構成において、袖部が壁ブッシュ構造から吊り下げられるときに、穴を覆い又は閉鎖し、穴を通過する電離放射線を減衰させるように、壁ブッシュ構造によって画定された穴全体の上に袖部が延びるように形状及び寸法も示す。
【0031】
袖部は、袖部の第1の開口端部の近くに延びると共に第1の密度を示す第1の袖部部分を含むことができ、かつ袖部は、袖部の第2の開口端部の近くに延びると共に第1の密度より大きい第2の密度を示す第2の袖部部分を含むことができ、それによってそれ自体の重量によって袖部の吊り下がった部分を湾曲及び平らにさせるのを容易にさせる。
【0032】
このために、袖部は、袖部の第2の開口端部の近くに延びるバラスト及び/又は強化手段、例えば、その第2の開口端部における袖部に形成されたカフを含むことができる。
壁ブッシュ構造によって画定された穴が円形であるとき、穴が覆われることを可能にするように、前記構造から吊り下げられた袖部部分の長さは、穴の直径に少なくとも等しく、直径より概してわずかに大きく、詳細には、この長さと直径の比は、約1から約1.5、2、又は4の範囲内にあり得る。
【0033】
本発明の別の態様では、手袋を装着した壁ブッシュ構造を含む壁を有すると共に本出願に定められ又は記載された防護装置を備えた閉込容器が提供される。
袖部の剛性は、容器に装着された手袋の剛性と同じ程度の大きさであり得、より詳細には、少なくとも容器に装着された手袋の剛性と等しい剛性であり、詳細には、袖部の剛性と手袋の剛性の比は、約0.1から約10の範囲内に、特に約0.5から約2又は3の範囲内にあり得る。
【0034】
十分に小さい剛性のある袖部を得るために、袖部は、約10パスカル(Pa)から約10Paの範囲内にあるヤング率(弾性率)を示す材料で作製され得る。
本発明の他の態様、特徴、又は利点は、以下の詳細な説明から明らかになり、この詳細な説明は、添付図面を参照し、特徴を何ら限定することなく、本発明の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電離放射線に対する防護を行う装置の一実施形態の概略を示す縦断面図。
図2】別の実施形態における電離放射線に対する防護を行う装置の概略を示す縦断面図。
図3】いくつかの異なる構成で示された電離放射線に対する防護を行う手袋及び袖部を装着した壁ブッシュ構造を含む閉込容器の壁の概略を示す断面図(図3に示された構成では、手袋及び袖部が折り返されていると共に、壁ブッシュ構造及び閉込容器の内側に延びており、これは、作業者が容器の内側の物体又は物質を処理又は操作する手袋及び袖部を用いている段階に対応する)。
図4】いくつかの異なる構成で示された電離放射線に対する防護を行う手袋及び袖部を装着した壁ブッシュ構造を含む閉込容器の壁の概略を示す断面図(図4に示された構成では、手袋及び袖部が引き出されていると共に壁ブッシュ構造及び閉込容器の外側に延び、これは、作業者が容器の外側に手袋及び袖部を抜き取る段階に対応する)。
図5】いくつかの異なる構成で示された電離放射線に対する防護を行う手袋及び袖部を装着した壁ブッシュ構造を含む閉込容器の壁の概略を示す断面図(図5に示された構成では、手袋が短くされており、手袋及び袖部は壁ブッシュ構造及び閉込容器の外側に延びている)。
図6】いくつかの異なる構成で示された電離放射線に対する防護を行う手袋及び袖部を装着した壁ブッシュ構造を含む閉込容器の壁の概略を示す断面図(図6に示された構成では、短くされた手袋が袖部及び壁ブッシュ構造の内側に延び、一方、袖部が、壁ブッシュ構造から吊り下げられており、手袋が使用されていない段階に対応する)。
図7図6に示されるように、穴を閉鎖するためのその構成で袖部の2つのそれぞれの端部分の概略を示す横断面図。
図8図6に示されるように、穴を閉鎖するためのその構成で袖部の2つのそれぞれの端部分の概略を示す横断面図。
図9】それぞれが電離放射線に対する防護を行う装置を装着した複数の壁ブッシュ構造を有する閉込容器の概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
明示的に又は暗黙的に示されない限り、それとは反対に、構造的又は機能的に同一又は類似する要素又は部材は、様々な図において同一の符号により示される。
特に図1を参照すると、防護装置10は、袖部を形成する壁又はメンブレンを貫通する電離放射線を減衰させるために金属粒子で満たされているエラストマータイプのポリマー材料製の袖部11により構成されている。
【0037】
袖部11は、軸12に沿って延びていると共に、両端部13及び14で開口している。
一例によれば、この袖部を形成するメンブレンの厚さ15は、約100μm(μm)〜2000μmとすることができる。
【0038】
袖部11の内面17上及び袖部11の第1の開口端部14の近くに、袖部11は、袖部を構造に固定するために、図3〜6に示すように、壁ブッシュ構造に形成された環状溝に係合するように設計されている開口14の外形のまわりでそこからある距離で全部延びる丸い断面の環状突出部(例えば、ビーズ)16を有する。
【0039】
図1に示した防護装置10は、特に環状(又は管状)形状かつ円形断面の壁ブッシュ構造に取り付けられるために、例えば円形断面の軸12を中心とした円筒形状である。
図2を参照する。防護装置10は、第1の開口端部14から延びる第1の円筒形部分112と、第2の開口端部13から延びる第2の円筒形部分110と、第1の部分112と第2の部分110とを相互接続する(中央の)第3の部分111とを備えた袖部によって構成され、この第3の部分は、切頭円錐形状又はいくつかの他のフレア形状である。
【0040】
3つの袖部部分110から112は、円対称性の共通軸12を示すことができる。
図2に示した実施形態では、環状突出部16は、袖部の第1の端部で延びると共に、第1の開口14の境界をなす。
【0041】
加えて、この例では、袖部の部分110の末端部分1110は、袖部部分の上へ折り畳
まれ(又は折り重ねられ)、袖部部分110の密度の2倍に近い密度を示す外側カフを形成し、剛性が増加させられている。
【0042】
このカフは、袖部11が軸12に対して湾曲するのを促すバラストとして働くことができ、それは、特に図6及び図8を参照してより詳細に説明されるように、開口13が摘ままれる範囲の補強又は剛化の制限及びこの部分の重量の作用による袖部の部分110の平坦化の制限として働き得る。
【0043】
図3〜6,9を参照すると、閉込容器18は、例えば鉛ガラス製であり得ると共に円形穴21により穴を開けられる平らな壁19、20によって画定され、それぞれは内部に係合された壁ブッシュ構造22を有する。
【0044】
図3から図6を参照すると、構造22は、壁19の平面に直交する軸24の管状部分23からなり、この部分23は、壁の両側面に存在するように壁19に作製された穴21を通じて延びる。
【0045】
構造22は、軸24の第1の環状ショルダ25も有しており、環状ショルダ25は、部分23の、容器18の内側に延びる端部において、この部分23の、ショルダ25が固定される外面から、容器18の内側に延びる。
【0046】
構造22は、軸24の環状当接部26も有しており、環状当接部26は、部分23の、この当接部26が固定される外面から容器18の外側に延びる。
したがって、構造22は、ショルダ25によって壁19の内面190を押圧するように、及び当接部26を介して壁19の外面191を押圧するように配置される。
【0047】
取り外し可能なやり方で手袋31を壁ブッシュ構造22に固定するために、外面191及び当接部26から突出している容器18の外側に延びる管状部分23の一部は、手袋31の袖部30の(開いた)自由端に設けられた弾性リング29を受け入れる第1の環状溝27を含む。
【0048】
取り外し可能なやり方で装置10を壁ブッシュ構造22に固定するために、外面191及び当接部26から突出している容器18の外側に延びる管状部分23の一部は、装置10の袖部11の開いた第1の端部に設けられた弾性リング16を受け入れる第2の環状溝28も備える。
【0049】
袖部11を固着する溝28は、手袋31を固着する溝27から後退させられており、袖部11が、図3から図6に示した構成のいずか1つで構造22に固定できるようになっている。
【0050】
装置10の構造22への固着は、水密であることが必ずしも必要とされないと共に、袖部を固着する他の手段、例えば、袖部を囲む締め付けカラーが、その開いた第1の端部を閉鎖するものによって得られてもよい。
【0051】
図3から図6に示したように、装置10が袖部11に組み込まれる環状突出部16によって固着されるとき、環状突出部16は、袖部及び突出部16を(弾性)変形させることにより、袖部11の開口14を大きくすることによって、構造22の部分23のまわりに溝28の中にまで係合することができる。
【0052】
そのような状況下では、袖部11の開口14の外形の外周は、袖部が「不使用(at rest)」であるとき、すなわち、袖部が開口14を拡大するために弾性変形されてい
ないとき、部分23の外形の外周より小さい。
【0053】
袖部11の開口14の外形、例えば、図7に示すような円の外形は、次いで、構造22の部分23の外形に緊密に嵌る。
このようにして、装置10及び袖部11は、可逆的に変形するように、かつ特に以下の3つの構成の各々をとるように構成されている。
【0054】
・ 袖部11が「正しい位置に」延びる第1の構成が図4に示されており、袖部11の2つの開口端部は、壁19の同じ側で、容器18の外側に延びており、この構成では、袖部11の開口端部13、14、及び壁19に設けられた穴21は、実質的に平行であり、1直線となっており、作業者の腕と構造22に固定された手袋31とを袖部11及び構造22に通過させることが容易にされている。
【0055】
図3に示すように、袖部11が「裏側に」又は「折り返されて」延びている第2の構成では、袖部11の2つの開口端部13、14は、壁ブッシュ構造22により画定された穴21及び穴32の反対側にあり、この構成では、袖部11の一部が、壁ブッシュ構造22に固定されている手袋31に係合された作業者の腕の防護を強化し、袖部11のこの一部は、手袋31の袖部30の内側かつ容器18の内側を延びる。
【0056】
図6に示すように、穴32が袖部11によって閉鎖されている構成では、袖部11は、穴32を覆う(閉鎖する)ように、その第1の端部14に設けられた固着手段16によって壁ブッシュ構造から吊り下げられている。
【0057】
このために、袖部11の端部13と端部14との間、又は固着手段16と第2の端部13との間で測定されるような袖部11の長さ(図1及び図2中の参照符号33)は、袖部11の吊り下げられた部分が穴全体を覆って延びるように構造22及びこの構造によって画定された穴32の(直径に適合している)高さ34に適合している。
【0058】
さらに、この閉鎖された構成では、図8に示すように、第2の開口端部13における第2の開口は摘ままれおり、第2の端部13から延びる袖部11の一部は特に袖部のこの部分の重量の作用により平らになっている。
【0059】
袖部11及び装置10は、作業者がさほどの努力を必要とすることなく、これらの3つの構成の何れかの間で変更することが可能になされており、それらは、作業者にとって大きな障害とならないように袖部により与えられる追加の防護を可能にする。
【0060】
さらに、袖部11及び装置10は、手袋31が使用されていない間に、袖部11及び構造22によって画定された空間内に手袋31が短くされて収納されることを可能にする。
このために、図4に示された構成から、図5に概略的に示すように、結び目300が、手袋31の伸ばされた袖部30に形成され、次いで、手袋の張力が解除され、図6に示すように、手袋が、袖部11及び構造22の内側に収納されることになっている。
【0061】
手袋31が使用されていない図6に示した構成から、作業者は、摘ままれたが閉じられていない袖部11の開口13の中に手を挿入することによって手袋31を把持することができ、それによって、図3に示す作業構成に到達するまで、袖部11から外へ手袋の袖部を引っ張り、手袋の袖部30における結び目300をほどき、次いで手袋31内で手と腕を係合し、構造22の内側で手袋31及び袖部11を折り返す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9