(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この技術を用いて照射領域の位置や形状を制御することにより、照射レンジ内において様々な配光パターンを形成することが可能となる。そこで灯具ユニットに付加的な機構を設けることなく車両の走行状態に応じて最適な配光制御が行なわれる。例えば、照射状態にある部分領域を照射レンジ内で左右にスイブル移動させることにより配光方向を変更することができる。これにより、灯具ユニットを機械的に旋回させて照射位置(灯具光軸の向き)を左右に移動させるスイブル機構を省略することができる。
【0005】
ところで、上記の車両用前照灯装置では、所定の配光パターンを形成するための所定の電流分布が用意されており、その電流分布に基づいて各発光素子にそれぞれ設定された電流値で給電され、略同一の速度で増光及び減光が行われる。そのため、灯具ユニットを消灯させる際に、電流値が低い発光素子が最初に消灯され、電流値が高い発光素子が最後に消灯されることとなり、運転者へ違和感を与えることがあった。また、所定の電流分布において電流値が同一に設定されている場合であっても、電流制御の誤差等によって消灯のタイミングにバラツキが生じ、見栄えの劣化が生じることがあった。
【0006】
本発明の目的は、消灯時における違和感を抑えるとともに、見栄えを高めることが可能な車両用灯具制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の車両用灯具制御システムは、
複数の半導体発光素子が所定方向に並んで配列された光源ユニットと、
複数の前記半導体発光素子によって灯具前方に所定の配光パターンを形成するときにおける複数の前記半導体発光素子の各々の電流値が設定された第1の電流分布と、複数の前記半導体発光素子のうち少なくとも一部の前記半導体発光素子の各々に対して略同一の電流値が設定されるとともに前記第1の電流分布よりも平均電流値が小さい第2の電流分布と、を設定可能な電流設定部と、
前記電流設定部に設定された電流分布に基づいて、複数の前記半導体発光素子の各々の点消灯を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1の電流分布を用いた配光パターンを形成した状態から前記光源ユニットを消灯するとき、前記第2の電流分布に基づいて複数の前記半導体発光素子を点灯状態とした後、全ての前記半導体発光素子を消灯状態とする制御を行う。
【0008】
上記構成の車両用灯具制御システムによれば、第1の電流分布を用いた配光パターンを形成した状態から光源ユニットが消灯されるとき、複数の半導体発光素子のうち少なくとも一部の半導体発光素子の各々に対して略同一の電流値であるとともに第1の電流分布よりも平均電流値が小さい第2の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子が点灯状態とされた後、全ての半導体発光素子が略一斉に消灯状態とされる。したがって、各半導体素子が不規則に消灯することによる運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えを高めることができる。
【0009】
本発明の車両用灯具制御システムにおいて、前記電流設定部は、さらに、前記第2の電流分布よりも平均電流値が小さい第3の電流分布を設定可能であり、
前記制御部は、前記第1の電流分布を用いた配光パターンを形成した状態から前記光源ユニットを消灯するとき、前記第2の電流分布に基づいて複数の前記半導体発光素子を点灯状態とした後、さらに、前記第3の電流分布に基づいて複数の前記半導体発光素子を点灯状態としてから全ての前記半導体発光素子を消灯状態とする制御を行ってもよい。
【0010】
上記構成の車両用灯具制御システムによれば、第2の電流分布で半導体発光素子を点灯状態とした後、さらに、第2の電流分布よりも平均電流値が小さい第3の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子を点灯状態としてから全ての半導体発光素子を消灯状態とすることにより、光源ユニットの消灯時における見栄えをより高めることができる。
【0011】
本発明の車両用灯具制御システムにおいて、前記所定の配光パターンは、ハイビーム用配光パターンであることが好ましい。
【0012】
上記構成の車両用灯具制御システムによれば、ハイビームを消灯する際に、運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消灯時における違和感を抑え、見栄えを高めることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0016】
図1に本発明の実施形態に係る車両用灯具制御システム11が搭載された車両10の全体構成を模式的に示す。車両用灯具制御システム11は、前照灯装置12、統合制御部14、車輪速センサ16、操舵角センサ17、カメラ18、及びナビゲーションシステム19を備えている。
【0017】
統合制御部14は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、車両10における様々な制御を実行する。
【0018】
車輪速センサ16は、車両10に組み付けられる左右の前輪及び後輪の4つの車輪の各々に対応して設けられている。車輪速センサ16の各々は統合制御部14と通信可能に接続されており、車輪の回転速度に応じた信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、車輪速センサ16から入力された信号を利用して車両10の速度を算出する。
【0019】
操舵角センサ17は、ステアリングホイールに設けられて統合制御部14と通信可能に接続されている。操舵角センサ17は、運転手によるステアリングホイールの操舵回転角に対応した操舵角パルス信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、操舵角センサ17から入力された信号を利用して車両10の進行方向を算出する。
【0020】
カメラ18は、例えばCCD(Charged Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を備え、車両前方を撮影して画像データを生成する。カメラ18は統合制御部14と通信可能に接続されており、生成された画像データは統合制御部14に出力される。
【0021】
ナビゲーションシステム19は統合制御部14と通信可能に接続されており、車両10が走行している場所を示す情報等を統合制御部14に出力する。
【0022】
前照灯装置12は、前照灯制御部20、右前照灯ユニット22R、及び左前照灯ユニット22Lを備えている。以下、右前照灯ユニット22Rと左前照灯ユニット22Lを、必要に応じて前照灯ユニット22と総称する。前照灯制御部20は、各種演算処理を実行するCPU、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備えている。また、前照灯制御部20は、各種制御プログラムや制御用の情報を格納するROM等からなる記憶部21(電流設定部の一例)を有している。前照灯制御部20は、統合制御部14から送信される制御信号及び記憶部21に記憶されている各種の情報に基づいて、前照灯ユニット22による光の照射を制御する。前照灯制御部20は、本発明における制御部として機能する。記憶部21には、予め設定された第1の電流分布及び第2の電流分布の情報が記憶されている。この記憶部21に記憶されている第1の電流分布及び第2の電流分布の情報は、前照灯制御部20によって引き出されて用いられる。
【0023】
上記の右前照灯ユニット22Rを水平面で切断して上方から見た断面を
図2に示す。右前照灯ユニット22Rは、透光カバー30、ランプボディ32、エクステンション34、第1灯具ユニット36、及び第2灯具ユニット(光源ユニットの一例)38を備えている。
【0024】
透光カバー30は透光性を有する樹脂等によって形成されている。透光カバー30は、ランプボディ32に装着されて灯室を区画形成している。第1灯具ユニット36及び第2灯具ユニット38は灯室内に配置されている。
【0025】
エクステンション34は、第1灯具ユニット36及び第2灯具ユニット38からの照射光を通過させるための開口部を有し、ランプボディ32に固定されている。第1灯具ユニット36は第2灯具ユニット38よりも車両外側に配置されている。
【0026】
第1灯具ユニット36は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、後述するロービーム用配光パターンを形成する。第1灯具ユニット36は、光源42としてハロゲンランプ等のフィラメントを有する白熱灯や、メタルハライドランプ等のHID(High Intensity Discharge)ランプを用いている。第1灯具ユニット36の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
第2灯具ユニット38は、ホルダ46、投影レンズ48、発光素子ユニット49、基板50、及びヒートシンク54を備えている。
【0028】
投影レンズ48は、筒状に形成されたホルダ46の一方の開口部に装着されている。投影レンズ48は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであり、その後側焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0029】
発光素子ユニット49は基板50の前方側表面に設けられており、ヒートシンク54は基板50の後方側表面に設けられている。ヒートシンク54は、アルミニウム等の金属により多数の放熱フィンを有する形状に形成されている。
【0030】
図3に発光素子ユニット49を車両前方から見た構成を示す。発光素子ユニット49は、基板50上に実装された発光素子アレイ52を備えている。発光素子アレイ52は、車両右側から左側に向かって配列された第1半導体発光素子52−1〜第13半導体発光素子52−13を備えている。
【0031】
各半導体発光素子52−1〜52−13は、同一の高さと同一の幅を有する直方体状に形成されている。図示は省略しているが、各半導体発光素子52−1〜52−13は光源及び薄膜を有している。光源は1mm角程度の発光面を有する白色LED(発光ダイオード)であり、薄膜はこの発光面を覆うように設けられている。
【0032】
図3においては、各半導体発光素子52−1〜52−13に番号を記し、第1半導体発光素子52−1と第13半導体発光素子52−13以外の第2半導体発光素子52−2〜第12半導体発光素子52−12については参照符号の表示を省略している。例えば番号7が記された半導体発光素子は、第7半導体発光素子52−7を意味している。
【0033】
各半導体発光素子52−1〜52−13は制御線53を介して前照灯制御部20との間に電流回路を形成している。
図3においては、第1半導体発光素子52−1と第13半導体発光素子52−13以外の第2半導体発光素子52−2〜第12半導体発光素子52−12については制御線53の図示を省略している。前照灯制御部20は、制御線53を通じて供給される電流値を調整することにより、各半導体発光素子52−1〜52−13の点消灯及び点灯時における光度を制御することができる。
【0034】
図2に示すように、基板50がホルダ46の他方の開口部に装着されることにより、発光素子ユニット49がホルダ46の内部に配置される。発光素子ユニット49が備える複数の半導体発光素子52−1〜52−13が各々発光することにより、それぞれの像が灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影される。複数の半導体発光素子52−1〜52−13は、複数の光源として機能する。
【0035】
左前照灯ユニット22Lは右前照灯ユニット22Rと左右対称に構成されており、詳細な説明は省略する。なお右前照灯ユニット22Rにおいても、第1半導体発光素子52−1〜第13半導体発光素子52−13は車両右側から車両左側に向かって配列されている。すなわち第2灯具ユニット38の内部構成に関しては、左前照灯ユニット22Lと右前照灯ユニット22Rは左右対称でない。
【0036】
図4は、右前照灯ユニット22R及び左前照灯ユニット22Lから前方に照射される光により、例えば車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。
【0037】
ロービーム用配光パターンPLは、右前照灯ユニット22R及び左前照灯ユニット22Lの第1灯具ユニット36からの照射光の合成によって形成される。ロービーム用配光パターンPLは左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3を有している。第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3は、灯具正面方向の消点を通る鉛直線であるV−V線を境として左右段違いで水平方向に延在している。
【0038】
第1カットオフラインCL1は対向車線カットオフラインとして利用される。第3カットオフラインCL3は、第1カットオフラインCL1の左端部から左上方に向かって斜めに延在している。第2カットオフラインCL2は、第3カットオフラインCL3とH−H線との交点から左側においてH−H線上に延在している。すなわち第2カットオフラインCL2は自車線側カットオフラインとして利用される。
【0039】
付加配光パターンPAは本発明における照射レンジに対応し、右前照灯ユニット22R及び左前照灯ユニット22Lの第2灯具ユニット38が備える全ての半導体発光素子52−1〜52−13からの照射光によって形成される配光パターンとして定義される。
【0040】
付加配光パターンPAは水平線(H−H線)を含み、下端が第1カットオフラインCL1上に位置するよう水平方向に延在する帯状に形成される。この付加配光パターンPAは、ロービーム用配光パターンPLとともにハイビームを形成する。つまり、第2灯具ユニット38は、ハイビーム用の光源として機能するもので、第2灯具ユニット38によって形成される付加配光パターンPAは、ハイビーム用配光パターンである。
【0041】
次に、前照灯制御部20による第2灯具ユニット38の制御について説明する。
図5は、第2灯具ユニットへ供給する電流分布を示す図であって、(a)は第1の電流分布を示すグラフ、(b)は第2の電流分布を示すグラフ、(c)は消灯時の電流分布を示すグラフである。
図5の(a)から(c)においては、各半導体発光素子52−1〜52−13に番号を記し、参照符号の表示を省略している。例えば番号7が記された半導体発光素子は、第7半導体発光素子52−7を意味している。
【0042】
ハイビームで照射する際、前照灯制御部20は、第1灯具ユニット36と第2灯具ユニット38とを点灯させる。すると、車両10の前方には、第1灯具ユニット36によるロービーム用配光パターンPLとともに付加配光パターンPA(
図4参照)が形成され、車両10の前方にハイビーム光が照射される。
【0043】
このとき、前照灯制御部20は、記憶部21から第1の電流分布の情報を引き出す。第1の電流分布は、複数の半導体発光素子52−1〜52−13によって灯具前方に所定の付加配光パターンPAを形成するときにおける半導体発光素子52−1〜52−13の各々の電流値の分布である。
図5の(a)に示すように、第1の電流分布は、中心に配置された第7半導体発光素子52−7が最高電流値に設定され、両端に配置された第1半導体発光素子52−1及び第13半導体発光素子52−13が最低電流値に設定されており、中心の第7半導体発光素子52−7から両端の第1半導体発光素子52−1及び第13半導体発光素子52−13へ向かって次第に電流値が減少した分布とされている。第1の電流分布では、例えば、最高電流値が1.0(A)に設定され、最低電流値が0.2(A)に設定されている。
【0044】
そして、前照灯制御部20は、記憶部21から引き出した第1の電流分布に基づいて、第2灯具ユニット38の各半導体発光素子52−1〜52−13に電流を供給して点灯させる。これにより、車両10の前方には、中央側が明るく、両端へ向かって次第に光度が抑えられた付加配光パターンPAが形成される。このような付加配光パターンPAを形成することにより、運転者が特に注視する車両10の前方における中央が明るくされるとともに両側へ向かって次第に光度が抑えられて運転者への注視行動の負担を抑制できる。
【0045】
この状態から、第2灯具ユニット38を消灯させる際に、前照灯制御部20は、記憶部21から第2の電流分布の情報を引き出す。
図5の(b)に示すように、第2の電流分布は、半導体発光素子52−1〜52−13の各々に対して略同一に設定された電流値の分布であり、平均電流値が第1の電流分布よりも小さくされている。第2の電流分布では、各半導体発光素子52−1〜52−13に対する電流値が0.3(A)に設定されている。
【0046】
そして、前照灯制御部20は、第2灯具ユニット38の各半導体発光素子52−1〜52−13に供給する電流をそれぞれ同一の減少率で減らし、記憶部21から引き出した第2の電流分布に基づいて、半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させる。
【0047】
その後、前照灯制御部20は、消灯電流分布に基づいて、第2灯具ユニット38を消灯させる。この消灯電流分布は、
図5の(c)に示すように、半導体発光素子52−1〜52−13への電流値がゼロに設定された電流値の分布である。これにより、各半導体発光素子52−1〜52−13へ供給される電流値は、同一の減少率で減らされてバラツキなくゼロとなり、第2灯具ユニット38の全ての半導体発光素子52−1〜52−13が消灯される。
【0048】
ここで、前照灯制御部20での第2灯具ユニット38の制御の参考例を説明する。
(参考例1)
図6は、参考例1に係る制御での第2灯具ユニットへ供給する電流分布を示す図であって、(a)は点灯時における電流分布を示すグラフであり、(b)は消灯時における電流分布を示すグラフ図である。
図6の(a),(b)においては各半導体発光素子52−1〜52−13に番号を記し、参照符号の表示を省略している。例えば番号7が記された半導体発光素子は、第7半導体発光素子52−7を意味している。
【0049】
参考例1では、
図6の(a)に示すように、最高電流値とされた中央から最低電流値とされた両端へ向かって次第に電流値が減少した電流分布で第2灯具ユニット38を点灯する。この状態から、第2灯具ユニット38を消灯させる際に、各半導体発光素子52−1〜52−13への電流値がゼロに設定された電流値の分布に基づいて、同一の減少率で電流を減らしてゼロとし、各半導体発光素子52−1〜52−13を消灯させる。
【0050】
このような制御では、各半導体発光素子52−1〜52−13は、点灯時における電流値が小さい両端側から順に消灯されることとなる。したがって、この参考例1の消灯制御では、第2灯具ユニット38の消灯直前では、
図6の(b)に示すように、両端付近が消灯した時点においても、中央付近では、電流値が完全にゼロとされず、僅かに点灯した状態となり、運転者に違和感を与えてしまうこととなる。
【0051】
(参考例2)
図7は、参考例2に係る制御での第2灯具ユニットへ供給する電流分布を示す図であって、(a)は点灯時における電流分布を示すグラフであり、(b)は消灯時における電流分布を示すグラフ図である。
図7の(a),(b)においては各半導体発光素子52−1〜52−13に番号を記し、参照符号の表示を省略している。例えば番号7が記された半導体発光素子は、第7半導体発光素子52−7を意味している。
【0052】
参考例2では、
図7の(a)に示すように、均一な電流値に設定された電流分布で第2灯具ユニット38を点灯する。この状態から、第2灯具ユニット38を消灯させる際に、各半導体発光素子52−1〜52−13への電流値がゼロに設定された電流値の分布に基づいて、同一の減少率で電流を減らしてゼロとし、各半導体発光素子52−1〜52−13を消灯させる。
【0053】
この制御では、運転者が特に注視する車両10の前方における中央を明るくし、両側へ向かって次第に光度を抑えて運転者への注視行動の負担を抑制することはできないが、各半導体発光素子52−1〜52−13が同時に消灯されるため、運転者への違和感を抑えることが可能である。
【0054】
しかし、この制御においても、点灯時の高い電流値から一斉に消灯したとしても、
図7の(b)に示すように、電流制御の誤差等によって、消灯直前では、各半導体発光素子52−1〜52−13の電流値にバラツキが生じることがある。このため、第2灯具ユニット38の消灯直前では、統一性のないパターンの光で車両10の前方が照射され、見栄えが劣化することがある。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用灯具制御システムによれば、第1の電流分布を用いた付加配光パターンPAを形成した状態から第2灯具ユニット38が消灯されるとき、複数の半導体発光素子52−1〜52−13の各々に対して略同一の電流値であるとともに第1の電流分布よりも平均電流値が小さい第2の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子52−1〜52−13が点灯された後、全ての半導体発光素子52−1〜52−13が略一斉に消灯される。したがって、消灯直前に半導体発光素子52−1〜52−13の一部が点灯していたり、バラバラに消灯することによる運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えを高めることができる。
【0056】
また、本実施形態のように、第2灯具ユニット38によって形成される付加配光パターンPAがハイビーム用配光パターンである場合では、ハイビームを消灯する際に、運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えの向上を図ることができる。
【0057】
(変形例1)
以下、
図8を参照しつつ変形例1を説明する。
上記実施形態では、第1の電流分布を用いた付加配光パターンPAを形成した状態から第2の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させた後、全ての半導体発光素子52−1〜52−13を消灯させたが、第2の電流分布で半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させた後、さらに、第2の電流分布よりも平均電流値が小さい第3の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させてから全ての半導体発光素子52−1〜52−13を消灯させても良い。
【0058】
この第3の電流分布としては、
図8の(a)に示すように、半導体発光素子52−1〜52−13の中央付近の数個に対して均一で低い電流値を設定したものや、
図8の(b)に示すように、半導体発光素子52−1〜52−13の両端付近の数個に対して均一で低い電流値を設定したものが良い。このような第3の電流分布の情報は、第1の電流分布及び第2の電流分布と同様に記憶部21に記憶され、第2灯具ユニット38の消灯時に前照灯制御部20によって記憶部21から引き出されて用いられる。なお、
図8の(a),(b)においては各半導体発光素子52−1〜52−13に番号を記し、参照符号の表示を省略している。例えば番号7が記された半導体発光素子は、第7半導体発光素子52−7を意味している。
【0059】
このように、第2の電流分布で半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させた後、さらに、第2の電流分布よりも平均電流値が小さい第3の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子52−1〜52−13を点灯させてから全ての半導体発光素子52−1〜52−13を消灯させることにより、第2灯具ユニット38の消灯時に、運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えをより高めることができる。特に、第3の電流分布として、半導体発光素子52−1〜52−13の両端付近の数個に対して均一で低い電流値を設定した電流分布(
図8の(b)参照)を用いれば、投影レンズ48によって中心付近の光度が高くなる照射光を均一な状態として消灯させることができ、より一層、消灯時における見栄えを良くすることができる。
【0060】
(変形例2)
以下、
図9を参照しつつ変形例2を説明する。
図5の(b)を参照して例示した第2の電流分布では、半導体発光素子52−1〜52−13の各々に対して略同一の電流値が設定されていたが、この例に限られない。例えば、
図9の(b)に示すように、半導体発光素子52−3〜52−11、すなわち、複数の半導体発光素子のうち一部の半導体素子の各々に対して略同一の電流値が設定された電流分布を第2の電流分布として用いても良い。この場合、
図9の(a)に示す第1の電流分布を用いた付加配光パターンPAを形成した状態から第2灯具ユニット38が消灯されるとき、複数の半導体発光素子52−1〜52−13のうち一部の半導体発光素子52−3〜52−11の各々に対して略同一の電流値であるとともに第1の電流分布よりも平均電流値が小さい第2の電流分布に基づいて複数の半導体発光素子52−3〜52−11が点灯され且つ半導体発光素子52−1,52−2,52−12,52−13が消灯した状態になった後(
図9の(b)を参照)、点灯状態の半導体発光素子52−3〜52−11が略一斉に消灯される(
図9の(c)を参照)。この構成であっても、消灯直前に半導体発光素子52−1〜52−13の一部が点灯していたり、不規則に消灯することによる運転者への違和感を抑えることができるとともに、見栄えを高めることができる。
【0061】
(変形例3)
以下、
図10を参照しつつ変形例3を説明する。
上記の実施形態や変形例1〜2では、記憶部21に予め記憶された第1の電流分布に基づいて各半導体発光素子が発光しているときに消灯動作に移行する例を説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、車両10に搭載した照度センサによって車両10の周辺環境が明るいことが検知されたとき、前照灯制御部20は、各半導体発光素子を発光させるのに使用していた電流分布A1を、電流分布A1より各電流値が低く設定された電流分布A2に徐々に遷移させる場合がある。本発明は、各半導体発光素子を発光させるのに使用している電流分布を、電流分布A1から電流分布A2に遷移させている途中で消灯動作に移行する場合にも適用可能である。この場合、消灯を命令する信号が入力された時点の電流分布が、本発明の第1の電流分布となる。
【0062】
電流分布A1から電流分布A2に遷移させている途中の電流分布は、前照灯制御部20等の演算部(電流設定部の一例)によって演算によって求めても良い。また、消灯が命令された後の動作は上述の例と同様で良い。なお、車両10に搭載された各種センサによって、前照灯装置12が高温に到達したことが検知されたときに使用中の電流分布を電流値が低い電流分布に遷移させる場合や、車両10が停止状態であることが検知されたときに使用中の電流分布を電流値が低い電流分布に遷移させる場合等であっても、上記の例と同様に、消灯を命令する信号が入力された時点の電流分布が、本発明の第1の電流分布となり得る。
【0063】
(変形例4)
以下、
図11を参照しつつ変形例4を説明する。
上記の実施形態や変形例1〜2では、予め設定された第2の電流分布が記憶部21に記憶されている例を説明したが、本発明はこの例に限られない。第2の電流分布は、前照灯制御部20等の演算部(電流設定部の一例)によって演算によって求められるものであっても良い。例えば、
図11の(a)に示されるように最低電流値が0.22(A)に設定された第1の電流分布B1を用いて各半導体発光素子が発光している場合がある。この場合において消灯を命令する信号が入力されたとき、前照灯制御部20等の演算部が、第1の電流分布B1の最低値を抽出して、その最低値を用いて
図11の(b)に示す第2の電流分布B2を演算により求めてもよい。
図11の(b)に示すように、第2の電流分布B2は、半導体発光素子の各々に対して略同一に設定された電流値の分布であり、第2の電流分布では、各半導体発光素子に対する電流値が第1の電流分布B1の最低値である0.22(A)に設定されている。なお、消灯が命令されて第2の電流分布が演算された後の動作は上述の例と同様で良い。なお、変形例1において説明した第3の電流分布も第2の電流分布と同様に演算により直前の電流分布の最低値を用いて演算しても良い。
【0064】
(変形例5)
上記の実施形態や変形例1〜2では、予め設定された第1の電流分布と第2の電流分布が記憶部21に記憶されている例を説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、上述の変形例3と変形例4とを組み合わせて、第1の電流分布と第2の電流分布とを、前照灯制御部20等の演算部(電流設定部の一例)によって演算によって求めても良い。すなわち、演算により求めた第1の電流分布の最低値に基づいて第2の電流分布を演算により求めても良い。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0066】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2014年2月4日出願の日本特許出願・出願番号2014-19689に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。