特許第6374429号(P6374429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374429車両シートの空気圧制御方法及び車両シートの空気圧制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374429
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両シートの空気圧制御方法及び車両シートの空気圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20180806BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20180806BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20180806BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20180806BHJP
   A47C 27/08 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B60N2/02
   A47C7/14 B
   A47C7/46
   A47C27/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-62306(P2016-62306)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-171232(P2017-171232A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晃良
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】小田 博之
(72)【発明者】
【氏名】早川 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】小牧 慎一郎
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
A47C 7/14
7/46
27/08 − 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートの空気圧制御装置が実行する車両シートの空気圧制御方法であって、
シートの内側に設けられた空気袋の内圧を間隔をあけて繰り返し検出する工程と、
検出値と目標値との差圧に基づき前記空気袋の内圧を補正する工程と、
車両始動からの時間経過に応じて前記内圧の検出間隔を長くする工程と、を備える
車両シートの空気圧制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両シートの空気圧制御方法において、
前記内圧の検出間隔を長くする工程は、
前記車両始動から所定時間が経過するまでの間、前記内圧の検出間隔を第1の間隔に設定する工程と、
前記所定時間の経過後、前記内圧の検出間隔を前記第1の間隔よりも長い第2の間隔に設定する工程と、を含むこと、を特徴とする車両シートの空気圧制御方法。
【請求項3】
シートの内側に設けられた空気袋の内圧を間隔をあけて繰り返し検出する内圧検出部と、
検出値と目標値との差圧に基づき前記空気袋の内圧を補正する内圧補正部と、
車両始動からの時間経過に応じて前記内圧の検出間隔を長くする検出間隔変更部と、
を備える車両シートの空気圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両シートの空気圧制御装置において、
前記検出間隔変更部は、
前記車両始動から所定時間が経過するまでの間、前記内圧の検出間隔を第1の間隔に設定する第1の間隔設定部と、
前記所定時間の経過後、前記内圧の検出間隔を前記第1の間隔よりも長い第2の間隔に設定する第2の間隔設定部と、を備えること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シートの空気圧制御方法及び車両シートの空気圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシート装置には、シートの内側に設けられた空気袋(ブラダ)を拡縮させることにより、そのシートのサポート形状を変更可能なものがある。即ち、このようなシート装置は、空気袋に対して空気を供給(充填)し、及びその空気袋に充填された空気を排出する吸排気装置を備えている。また、多くの場合、空気袋に対する空気の供給経路には、圧力センサが設けられている。そして、この圧力センサを用いて検出される空気袋の内圧を目標値に一致させるべく、その吸排気装置の作動を制御する構成になっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両シートの空気圧制御装置は、空気袋の内圧が目標値未満の所定値に到達するまで、その吸排気装置の空気ポンプが連続動作する。更に、その後、空気袋の内圧が目標値に到達するまで空気ポンプが間欠動作する。尚、このとき、内圧の検出は、その空気ポンプが停止している間に行われる。そして、これにより、より精度よく、その空気袋の内圧を制御することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−235021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シートの内側に設けられた空気袋の内圧は、例えば、シートが配置された車内温度や気圧の変化、或いは空気漏れ(公差範囲内のリーク)等の要因により、その空気の充填が完了した後においても変化する。そこで、その空気袋に対する空気の充填完了後も間隔をあけて繰り返し空気袋の内圧を検出することが考えられる。そして、その検出値と目標値との差圧に基づき空気袋の内圧を補正することによって、最適なサポート形状を保持することができる。
【0006】
ところが、空気袋の内圧検出及び補正を行う際には、その吸排気装置を構成する空気ポンプやバルブの作動音や振動等が問題となる。更に、空気袋の内圧は、その内圧を検出するために吸気バルブを開けることによっても低下する。このため、空気袋の内圧を検出する頻度は、極力少なく抑えることが望ましい。そして、作動頻度の増大は、その吸排気装置の耐久性を確保する観点においても不利であることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、吸排気装置の作動頻度を抑えつつ、空気袋の内圧を好適に維持することのできる車両シートの空気圧制御方法及び車両シートの空気圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する空気圧制御方法は、車両シートの空気圧制御装置が実行する車両シートの空気圧制御方法であって、シートの内側に設けられた空気袋の内圧を間隔をあけて繰り返し検出する工程と、検出値と目標値との差圧に基づき前記空気袋の内圧を補正する工程と、車両始動からの時間経過に応じて前記内圧の検出間隔を長くする工程と、を備えることが好ましい。
【0009】
即ち、車両始動後は、空調装置が作動することにより車内温度に大きな変化が生じやすい。従って、このような状況においては、各空気袋の内圧を短い間隔で検出することで、速やかに、その温度変化を要因とした各空気袋の内圧変化を補正することができる。また、気圧変化や空気漏れ(公差範囲内のリーク)等が各空気袋の内圧に与える影響は、車両始動後の温度変化が当該各空気袋の内圧に与える影響よりも小さい。このため、時間の経過とともに安定する車内温度を考慮して、その内圧検出及び補正の間隔を長くしても、各空気袋の内圧を好適に維持することができる。そして、これにより、吸排気装置の作動頻度を抑えることができる。その結果、作動音や振動の発生、或いは触感の変化等、利用者の使用感覚に与える影響を低減することができる。また、検出実行に伴う各空気袋の内圧低下を抑えることができる。そして、その作動頻度の抑制により高い耐久性を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する空気圧制御方法は、前記内圧の検出間隔を長くする工程は、前記車両始動から所定時間が経過するまでの間、前記内圧の検出間隔を第1の間隔に設定する工程と、前記所定時間の経過後、前記内圧の検出間隔を前記第1の間隔よりも長い第2の間隔に設定する工程と、を含むことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、簡素な構成にて、車内温度に大きな変化が生じやすい車両始動後は、速やかに、その温度変化を要因とした各空気袋の内圧変化を補正することができる。そして、時間経過により車内温度が安定した後は、吸排気装置の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋の内圧を好適に維持することができる。
【0012】
上記課題を解決する空気圧制御装置は、シートの内側に設けられた空気袋の内圧を間隔をあけて繰り返し検出する内圧検出部と、検出値と目標値との差圧に基づき前記空気袋の内圧を補正する内圧補正部と、車両始動からの時間経過に応じて前記内圧の検出間隔を長くする検出間隔変更部と、を備えることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決する空気圧制御装置は、前記検出間隔変更部は、前記車両始動から所定時間が経過するまでの間、前記内圧の検出間隔を第1の間隔に設定する第1の間隔設定部と、前記所定時間の経過後、前記内圧の検出間隔を前記第1の間隔よりも長い第2の間隔に設定する第2の間隔設定部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸排気装置の作動頻度を抑えつつ、空気袋の内圧を好適に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
図2】シート装置の概略構成図。
図3】空気袋の内圧制御の処理手順を示すフローチャート。
図4】空気袋の内圧維持制御の態様を示す説明図。
図5】空気袋の内圧維持制御の処理手順を示すフローチャート。
図6】空気袋の内圧維持制御について別例の態様を示す説明図。
図7】空気袋の内圧維持制御について別例の態様を示すフローチャート。
図8】空気袋の内圧維持制御について別例の態様を示すフローチャート。
図9】空気袋の内圧維持制御について別例の態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、空気圧式のシートサポート機能を有したシート装置及びその空気圧制御の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0017】
また、本実施形態のシート1において、シートバック3は、その両サイド部3a,3bが、それぞれ、前方に向かって膨出した形状を有している。更に、シートクッション2もまた、両サイド部2a,2bが、それぞれ、上方に向かって膨出した形状を有している。そして、本実施形態のシート1は、これにより、その乗員の良好な着座姿勢を確保し及びその着座姿勢を維持することが可能になっている。
【0018】
また、このシート1には、そのシートクッション2及びシートバック3の内側に複数の空気袋10(11〜16)が設けられている。具体的には、本実施形態のシート1において、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部(ショルダ)、腰部(ランバ)及び下端部(バックペルビス)、並びに両サイド部3a,3bに対応する位置に、それぞれ、独立した空気袋11(11a,11b),12(12a〜12c),13,14(14a,14b)が設けられている。更に、シートクッション2についてもまた、その着座面2sにおける後端部(クッションペルビス)の内側、及び両サイド部2a,2bの内側に、それぞれ、独立した空気袋15,16(16a,16b)が設けられている。そして、本実施形態のシート1においては、これにより、その各空気袋10の拡縮に基づきシート1のサポート形状を変更可能なシート装置20が形成されている。
【0019】
詳述すると、図2に示すように、本実施形態のシート装置20は、各空気袋10に空気を圧送する空気ポンプ21を備えている。また、各空気袋10と空気ポンプ21との間を接続する流路Lには、逆止弁22、吸気バルブ23、排気バルブ24、及び圧力センサ25が設けられている。具体的には、本実施形態のシート装置20において、排気バルブ24及び圧力センサ25は、流路L内における吸気バルブ23と逆止弁22との間の位置に設けられている。そして、本実施形態のシート装置20においては、これにより、その各空気袋10に対して空気を供給(充填)し、及びその各空気袋10に充填された空気を排出するための吸排気装置30が形成されている。
【0020】
さらに詳述すると、本実施形態のシート装置20において、空気ポンプ21、吸気バルブ23及び排気バルブ24は、それぞれ、制御装置31によって、その作動が制御されている。また、この制御装置31は、圧力センサ25の出力信号に基づき各空気袋10の内圧Pを検出する。更に、この制御装置31は、各空気袋10の内圧Pについて、その目標値(内圧目標値P0)を記憶領域31a内に保持する。尚、本実施形態のシート装置20において、各空気袋10の内圧目標値P0は、その乗員が、シート1に設けられた操作スイッチ(図示略)を用いて最適なサポート形状を設定することにより更新される(サポート形状調整制御)。そして、本実施形態の制御装置31は、その検出される各空気袋10の内圧Pを内圧目標値P0に一致させるべく、吸排気装置30を構成する空気ポンプ21、吸気バルブ23及び排気バルブ24の作動を制御する構成になっている。
【0021】
即ち、本実施形態の制御装置31は、各空気袋10の内圧Pを検出する際には、排気バルブ24を閉塞した状態で、その内圧検出の対象となる空気袋10に連通する支線L´の吸気バルブ23を開放する。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、その空気袋10の内圧Pと圧力センサ25が設けられた流路Lの空気圧とが等しくなるように構成されている。
【0022】
尚、本実施形態のシート装置20において、この圧力センサ25を用いた内圧検出は、吸気バルブ23が一定時間開放された状態で行われる。そして、本実施形態の制御装置31は、この間に入力される圧力センサ25の出力信号を平均化処理することで、車両走行に伴う外乱の影響を低減し、精度よく、その各空気袋10の内圧Pを検出することが可能になっている。
【0023】
また、本実施形態の制御装置31は、各空気袋10に空気を充填する際には、対象とする空気袋10の支線L´に設けられた吸気バルブ23を開放するとともに排気バルブ24を閉塞した状態で、その空気ポンプ21を駆動する。そして、空気袋10から空気を排出する際には、その吸気バルブ23及び排気バルブ24を開放する構成になっている。
【0024】
図3のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置31は、車両始動時(ステップ101:YES)、その記憶領域31aから各空気袋10の内圧目標値P0を読み出すと(ステップ102)、これらの内圧目標値P0に基づいて、各空気袋10を展開すべく、その吸排気装置30の作動を制御する(展開制御、ステップ103)。
【0025】
即ち、本実施形態のシート装置20は、車両停止後(IGオフ)、全ての乗員が降車した状態となることにより、その各空気袋10内の空気が排出される構成になっている。また、本実施形態のシート装置20において、制御装置31には、その車両の始動を示す信号としてイグニッション信号(IG信号)Sigが入力される(図2参照)。更に、本実施形態の制御装置31は、それぞれ独立に設けられた空気袋10毎に、その内圧目標値P0を保持する。そして、本実施形態の制御装置31は、車両始動後(IGオン)、検出される各空気袋10の内圧Pが、それぞれ、その内圧目標値P0に一致した状態となるまで、これら各空気袋10に空気を充填する構成になっている。
【0026】
また、本実施形態のシート装置20において、制御装置31は、その車両始動後の展開制御により各空気袋10に空気を充填した後は、これら各空気袋10の内圧Pを維持すべく、その吸排気装置30の作動を制御する(内圧維持制御、ステップ104)。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、そのシート1の内側で展開した各空気袋10が形成する最適なサポート形状を安定的に保持することが可能な構成になっている。
【0027】
詳述すると、図4に示すように、本実施形態の制御装置31は、各空気袋10の内圧Pを間隔であけて繰り返し検出することにより、当該各空気袋10の内圧維持制御(図3参照、ステップ104)を実行する。
【0028】
具体的には、本実施形態の制御装置31は、車両始動(IGオン)から所定時間T0(例えば、15分程度)が経過するまでの間、予め設定された第1の間隔t1(例えば、5分程度)で各空気袋10の内圧Pを検出する。また、制御装置31は、車両始動から所定時間T0が経過した後は、上記第1の間隔t1よりも長い第2の間隔t2(例えば、60分程度)で各空気袋10の内圧Pを検出する。そして、本実施形態の制御装置31は、これらの各内圧検出タイミングにおいて、その内圧Pの検出値が内圧目標値P0から乖離した状態にある場合には、当該各空気袋10の内圧Pを補正すべく、その吸排気装置30の作動を制御する構成になっている。
【0029】
即ち、車両始動後は、空調装置の作動によって、車内温度が変化しやすい状態にある。例えば、気温の低い冬場には、暖房によって、急速に車内が暖められる。また、気温の高い夏場には、冷房によって、急速に車内が冷やされる。そして、各空気袋10の内圧Pは、当該各空気袋10が設けられたシート1の雰囲気温度、つまりは、車内温度の変化に大きな影響を受けやすい傾向がある。
【0030】
この点を踏まえ、本実施形態の制御装置31は、車内温度に大きな変化が生じやすい車両始動から所定時間T0が経過するまでの間(T<T0)については、各空気袋10の内圧Pを検出する間隔(検出間隔tx)を、比較的短い第1の間隔t1に設定する(tx=t1)。また、この制御装置31は、車内温度が安定する車両始動から所定時間T0の経過後(T≧T0)については、その内圧Pの検出間隔txを、より長い第2の間隔t2に設定する(tx=t2)。そして、本実施形態の制御装置31は、このように、その車両始動からの時間経過に応じて内圧Pの検出間隔txを長くすることで、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、各空気袋10の内圧Pを好適に維持することが可能になっている。
【0031】
次に、本実施形態の制御装置31が実行する空気袋10の内圧維持制御について、その処理手順を説明する。
図5のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置31は、先ず、現在、各空気袋10の内圧検出タイミング間にあることを示す待機フラグがセットされているか否かを判定する(ステップ201)。そして、待機フラグがセットされていない場合(ステップ201:NO)には、当該待機フラグをセットし、及びその内圧検出の実行タイミングを計る間隔計時用のタイマをセットする(t=0、ステップ202)。
【0032】
次に、制御装置31は、車両始動後の経過時間Tを取得し(ステップ203)、その経過時間Tを予め設定された所定時間T0と比較する(ステップ204)。そして、所定時間T0の経過前である場合(T<T0、ステップ204:YES)には、その内圧Pの検出間隔txを第1の間隔t1に設定し(tx=t1、ステップ205)、所定時間T0の経過後である場合(T≧T0、ステップ204:NO)には、その検出間隔txを第2の間隔t2に設定する(tx=t2、ステップ206)。
【0033】
尚、本実施形態の制御装置31は、その内部に、車両始動後の経過時間Tを計測する専用のタイマを備えている。そして、上記ステップ201において、既に待機フラグがセットされている場合(ステップ201:YES)には、上記ステップ202〜ステップ206の処理を実行しない。
【0034】
次に、本実施形態の制御装置31は、上記ステップ202において待機フラグとともにセットされたタイマの計測値、即ち前回の内圧検出タイミングからの経過時間tを取得し(ステップ207)、その経過時間tが、上記ステップ205又はステップ206において設定された検出間隔txに到達したか否かを判定する(ステップ208)。そして、その経過時間tが検出間隔txに到達した場合(t≧tx、ステップ208:YES)には、各空気袋10について、その内圧Pの検出を実行する(ステップ209)。
【0035】
更に、本実施形態の制御装置31は、上記ステップ209において検出された各空気袋10の内圧Pについて、その検出値(P)と目標値(P0)との差圧(|P0−P|)が所定の閾値α以上であるか否かを判定する(ステップ210)。そして、その検出値と目標値との差圧が所定の閾値α以上となった空気袋10がある場合(|P0−P|≧α、ステップ210:YES)には、該当する空気袋10について、その目標値(P0)から乖離した内圧Pを補正すべく、吸排気装置30の作動を実行する(内圧補正制御、ステップ211)。
【0036】
即ち、本実施形態の制御装置31は、検出された空気袋10の内圧Pが、その内圧目標値P0よりも低い場合には、当該空気袋10に空気を充填し、その内圧目標値P0よりも高い場合には、当該空気袋10から空気を排出する。尚、本実施形態の制御装置31は、そのシート1に設けられた各空気袋10(11〜16)について、それぞれ、一つずつ、順次、その内圧検出及び内圧補正制御を実行する。また、本実施形態の制御装置31は、上記ステップ210において、その内圧Pの検出値と目標値との差圧が所定の閾値αに満たない空気袋10(|P0−P|<α、ステップ210:NO)については、上記ステップ211の処理を実行しない。更に、上記ステップ209において各空気袋10の内圧Pを検出した後は、上記ステップ211における内圧補正制御の実行の有無に関わらず、その待機フラグをクリアする(ステップ212)。そして、上記ステップ208において、その前回の内圧検出タイミングからの経過時間tが、上記ステップ205又はステップ206において設定された検出間隔txに到達していない場合(t<tx、ステップ208:NO)には、上記ステップ209〜ステップ212の処理を実行しない構成になっている。
【0037】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)即ち、車両始動後は、空調装置(図示略)の作動により車内温度に大きな変化が生じやすい。従って、このような状況においては、各空気袋10の内圧Pを短い間隔で検出することで、速やかに、その温度変化を要因とした各空気袋10の内圧変化を補正することができる。また、気圧変化や空気漏れ(公差範囲内のリーク)等が各空気袋10の内圧Pに与える影響は、車両始動後の温度変化が当該各空気袋10の内圧Pに与える影響よりも小さい。このため、時間の経過とともに安定する車内温度を考慮して、その内圧検出及び補正の間隔を長くしても、各空気袋10の内圧Pを好適に維持することができる。そして、これにより、吸排気装置30の作動頻度を抑えることができる。その結果、作動音や振動の発生、或いは触感の変化等、利用者の使用感覚に与える影響を低減することができる。また、検出実行に伴う各空気袋10の内圧低下を抑えることができる。そして、その作動頻度の抑制により高い耐久性を確保することができる。
【0038】
(2)車両始動から所定時間T0が経過するまでの間(T<T0)は、各空気袋10の内圧Pの検出間隔txを第1の間隔t1に設定し(tx=t1)、所定時間T0の経過後(T≧T0)は、その内圧Pの検出間隔txを第1の間隔t1よりも長い第2の間隔t2(tx=t2)に設定する。
【0039】
上記構成によれば、簡素な構成にて、車内温度に大きな変化が生じやすい車両始動後は、速やかに、その温度変化を要因とした各空気袋10の内圧変化を補正することができる。そして、時間経過により車内温度が安定した後は、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋10の内圧Pを好適に維持することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・シート1の内側に設けられる各空気袋10の数、及び配置は任意に変更してもよい。そして、空気ポンプ21、吸気バルブ23及び排気バルブ24の数及び配置、或いは逆止弁22の有無等、吸排気装置30の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、車両始動から所定時間T0が経過する前後で、その各空気袋10の内圧Pの検出間隔txを切り替えることとした(tx=t1又はtx=t2)。しかし、これに限らず、例えば、図6に示すように、各空気袋10の内圧検出(及び補正)を実行する毎に、その検出間隔txを長くする構成としてもよい(tx=ta<tb<tc<td…)。このような構成としても、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋10の内圧Pを好適に維持することができる。
【0042】
・また、各空気袋10の内圧検出について、その検出間隔txの切り替えを行う車両始動からの所定時間T0は、必ずしも予め定められた規定値ではなく、車両始動後における車内温度の変化に基づき設定される値であってもよい。そして、その車両始動から所定時間T0の経過が事後的に認定される構成であってもよい。
【0043】
例えば、図7のフローチャートに示すように、制御装置31は、車内温度TmpAを検出するとともに(ステップ301)、その前回の演算周期において検出された車内温度TmpAの前回値(車内温度前回値TmpB)を記憶領域31aから読み出す(ステップ302)。次に、制御装置31は、その車内温度TmpAと車内温度前回値TmpBとの差分(絶対値)をとることで車内温度変化量βを演算し(β=|TmpB−TmpA|、ステップ303)、この車内温度変化量βが所定の閾値β0以下であるか否かを判定する(ステップ304)。そして、車内温度変化量βが所定の閾値β0以下である場合(β≦β0、ステップ304:YES)に、車両始動から所定時間T0を経過したものと認定する(所定時間経過認定、ステップ305)。
【0044】
尚、上記ステップ304において、車内温度変化量βが所定の閾値β0よりも大きい場合(β>β0、ステップ304:NO)には、上記ステップ305を実行しない。そして、上記ステップ301において検出された車内温度TmpA(今回値)により車内温度前回値TmpBを更新する構成とすればよい(TmpB=TmpA、ステップ306)。このような構成を採用することで、より好適に、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋10の内圧Pを維持することができる。
【0045】
・更に、図8のフローチャートに示すように、車内温度TmpA及び車外温度TmpXを検出し(ステップ401)、これらの車内温度TmpA及び車外温度TmpX、並びに空調装置の作動状況(及び性能)に基づいて、車内温度TmpAが安定(例えば、β≦β0)するまでの所要時間Tsを推定する(車内温度安定化時間推定、ステップ402)。尚、車内温度TmpAが安定するまでの所要時間Tsの推定方法については、例えば、車外温度TmpXを用いない等、任意に変更してもよい。そして、その推定された所要時間Tsを上記所定時間T0とする構成としてもよい(T0=Ts、ステップ403)。このような構成を採用しても、より好適に、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋10の内圧Pを維持することができる。
【0046】
・また、図9に示すように、車内温度TmpA(今回値)と車内温度前回値TmpBとの差分(絶対値)をとることにより車内温度変化量βを演算する(図7参照、ステップ303)。そして、この車内温度変化量βに基づいて、各空気袋10の内圧Pの検出間隔txを設定する構成としてもよい。即ち、車内温度変化量βが小さいほど、その検出間隔txを長くする。このような構成を採用しても、より好適に、吸排気装置30の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋10の内圧Pを維持することができる。
【0047】
・上記実施形態及び別例では、制御装置31が吸排気装置30の作動を制御することにより、その内圧検出部、内圧補正部、検出間隔変更部、第1の間隔設定部、第2の間隔設定部、車内温度検出部、所定時間経過認定部、車内温度安定化時間推定部、及び第2の検出間隔変更部として機能することとした。しかし、これに限らず、これらの各機能制御部が複数の制御装置により構成されるものであってもよい。
【0048】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)車内温度を検出する工程と、前記車内温度が安定した場合に前記所定時間が経過したものと認定する工程と、を特徴とする車両シートの空気圧制御方法。
【0049】
(ロ)車両始動後、車内温度が安定するまでの所要時間を推定する工程と、推定された前記所要時間を前記所定時間に設定する工程と、を備えること、を特徴とする車両シートの空気圧制御方法。
【0050】
(ハ)車内温度を検出する工程と、車内温度の変化量が小さいほど前記内圧の検出間隔を長くする工程を備えること、を特徴とする車両シートの空気圧制御方法。
上記各構成によれば、より好適に、吸排気装置の作動頻度を抑えつつ、その各空気袋の内圧を維持することができる。
【0051】
(ニ)車内温度を検出する車内温度検出部と、前記車内温度が安定した場合に前記所定時間が経過したものと認定する所定時間経過認定部と、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【0052】
(ホ)車両始動後、車内温度が安定するまでの所要時間を推定する車内温度安定化時間推定部と、推定された前記所要時間を前記所定時間に設定する所定時間設定部と、を備えること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【0053】
(ヘ)車内温度を検出する車内温度検出部と、車内温度の変化量が小さいほど前記内圧の検出間隔を長くする第2の検出間隔変更部を備えること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【符号の説明】
【0054】
1…シート、2…シートクッション、2a,2b…サイド部、2s…着座面、3…シートバック、3a,3b…サイド部、3s…背もたれ面、4…ヘッドレスト、10(11(11a,11b),12(12a〜12c),13,14(14a,14b),15,16(16a,16b))…空気袋、20…シート装置、21…空気ポンプ、22…逆止弁、23…吸気バルブ、24…排気バルブ、25…圧力センサ、30…吸排気装置、31…制御装置、31a…記憶領域、L…流路、L´…支線、P…内圧、P0…内圧目標値、Sig…イグニッション信号、T…経過時間、T0…所定時間、t…経過時間、tx…検出間隔、t1…第1の間隔、t2…第2の間隔、α…閾値、β…車内温度変化量、β0…閾値、Ts…所要時間、TmpA…車内温度、TmpB…車内温度前回値、TmpX…車外温度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9