(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.本発明の一実施形態>
本発明の一実施形態に係る駆動制御機構について説明する。
【0023】
<1−1.駆動制御機構の構成>
図1を参照して、駆動制御機構1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動制御機構1の全体構成の例を示す図である。
【0024】
図1は、ハイブリッド車両の駆動制御機構1を示している。かかる駆動制御機構1は、エンジン10と、第1のモータジェネレータ20と、第2のモータジェネレータ24とを備え、エンジン10、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24を駆動源として併用可能なパワーユニットである。かかる駆動制御機構1では、エンジン走行モードと、シングルモータEV走行モードまたはツインモータEV走行モード(第1の状態、EVモード)と、ハイブリッド走行モード(第2の状態、HEVモード)とが切り替えられながら、車両の駆動力制御が行われる。
【0025】
エンジン走行モードは、エンジン10の出力で車両を駆動するモードである。シングルモータEV走行モードは、第2のモータジェネレータ24の出力で車両を駆動するモードである。ツインモータEV走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24の出力で車両を駆動するモードである。ハイブリッド走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方の出力と、エンジン10の出力とで車両を駆動するモードである。
【0026】
エンジン10は、ガソリン等を燃料としてトルクを生成する内燃機関であり、出力軸としてのクランクシャフト11を有する。クランクシャフト11は、自動変速装置30内に延設されている。また、クランクシャフト11には、ギヤ式のオイルポンプ15が連結されている。かかるオイルポンプ15は、図示しない車軸、CVT31のプライマリ軸34又はセカンダリ軸36に対して、図示しないギヤ機構を介して連結されていてもよい。オイルポンプ15が車軸に対して連結されている場合、駆動輪(車輪)80の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。オイルポンプ15がプライマリ軸34又はセカンダリ軸36に対して連結されている場合、第2の伝達クラッチ46が締結されている間、駆動輪80の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。オイルポンプ15は、エンジン10のトルク又は駆動輪80の回転により駆動されて、自動変速装置30に向けて作動油を供給する。自動変速装置30に供給される作動油は、CVT31及び各クラッチを作動させる作動油して用いられる。自動変速装置30は、第1のモータジェネレータ20と、第2のモータジェネレータ24と、自動変速機としての無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)31とを備える。
【0027】
エンジン10と第1のモータジェネレータ20とはエンジンクラッチ42を介して直列的に配列される。具体的には、エンジン10のクランクシャフト11と、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21との間には、クランクシャフト11とモータ軸21との間を締結又は開放するエンジンクラッチ42が設けられている。エンジンクラッチ42が締結状態にある場合に、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力を伝達することができる。
【0028】
第1のモータジェネレータ20は、例えば、三相交流式のモータであり、インバータ70を介して高電圧バッテリ50に接続されている。第1のモータジェネレータ20は、高電圧バッテリ50の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、エンジン10のトルクを用いて駆動されて発電する発電機としての機能と、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪80の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能とを有する。さらに、第1のモータジェネレータ20は、エンジン10を始動又は停止させるスタータモータとしての機能と、モータ軸21に連結されたオイルポンプ28を回転駆動させるモータとしての機能とを併せ持つ。
【0029】
第1のモータジェネレータ20をスタータモータ、駆動モータ又はオイルポンプ28の駆動モータとして機能させる場合、インバータ70は、高電圧バッテリ50から供給される直流電力を交流電力に変換し、第1のモータジェネレータ20を駆動する。また、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させる場合、インバータ70は、第1のモータジェネレータ20で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ50に充電する。
【0030】
上述のとおり、本実施形態にかかる駆動制御機構1では、エンジンクラッチ42により、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力の伝達が行われる。このため、第1のモータジェネレータ20を駆動モータとして機能させる場合に、第1のモータジェネレータ20とエンジン10とを完全に切り離すことにより、第1のモータジェネレータ20からのトルクがエンジン10で消費されることがない。それにより、第1のモータジェネレータ20の効率の低下を抑制することができる。なお、エンジンクラッチ42の代わりにトルクコンバータによりクランクシャフト11とモータ軸21との間で動力の伝達が行われてもよい。
【0031】
第1のモータジェネレータ20のモータ軸21には、ギヤ式のオイルポンプ28が連結されている。オイルポンプ28は、モータ軸21の回転により回転駆動され、CVT31及び各クラッチに向けて作動油を供給する。かかるオイルポンプ28は、第1のモータジェネレータ20により駆動される電動オイルポンプとして構成される。また、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21は、第1の伝達クラッチ44を介して、CVT31のプライマリ軸34に連設されている。第1の伝達クラッチ44は、モータ軸21とプライマリ軸34との間を締結又は開放する。第1の伝達クラッチ44が締結状態にある場合に、モータ軸21とプライマリ軸34との間で動力を伝達することができる。
【0032】
CVT31は、プライマリ軸34と、当該プライマリ軸34に平行に配設されたセカンダリ軸36とを有する。プライマリ軸34にはプライマリプーリ33が固定され、セカンダリ軸36にはセカンダリプーリ35が固定されている。プライマリプーリ33及びセカンダリプーリ35には、ベルト又はチェーンからなる巻き掛け式のトルク伝達部材37が卷回されている。CVT31は、プライマリプーリ33及びセカンダリプーリ35上でのトルク伝達部材37の巻き掛け半径を変化させてプーリ比を変化させることにより、プライマリ軸34とセカンダリ軸36との間において、任意の変速比で変換された駆動力を伝達する。
【0033】
セカンダリ軸36は、第2の伝達クラッチ46を介して、第2のモータジェネレータ24のモータ軸25に連設されている。第2の伝達クラッチ46は、セカンダリ軸36とモータ軸25との間を締結又は開放する。第2の伝達クラッチ46が締結状態にある場合に、セカンダリ軸36とモータ軸25との間で動力を伝達することができる。第2のモータジェネレータ24のモータ軸25は、図示しない減速ギヤ及び駆動軸を介して駆動輪80に連設され、モータ軸25を介して出力される駆動力が駆動輪80に伝達可能になっている。モータ軸25が、図示しないデファレンシャルギヤに接続され、駆動力が前輪及び後輪に分配されてもよい。
【0034】
第2のモータジェネレータ24は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を介してエンジン10と連設されている。第2のモータジェネレータ24は、第1のモータジェネレータ20と同様、三相交流式のモータであり、インバータ70を介して高電圧バッテリ50に接続されている。第2のモータジェネレータ24は、高電圧バッテリ50の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪80の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能とを有する。
【0035】
第2のモータジェネレータ24を駆動モータとして機能させる場合、インバータ70は、高電圧バッテリ50から供給される直流電力を交流電力に変換し、第2のモータジェネレータ24を駆動する。また、第2のモータジェネレータ24を発電機として機能させる場合、インバータ70は、第2のモータジェネレータ24で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ50に充電する。第2のモータジェネレータ24の定格出力と第1のモータジェネレータ20の定格出力とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24に接続された高電圧バッテリ50には、DC/DCコンバータ55を介して低電圧バッテリ60が接続されている。高電圧バッテリ50は、例えば定格電圧が200Vの充放電可能なバッテリであり、低電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が12Vの充放電可能なバッテリである。低電圧バッテリ60は、ハイブリッド車両のシステムの主電源として用いられる。DC/DCコンバータ55は、高電圧バッテリ50の直流電力の電圧を降圧させて、充電電力を低電圧バッテリ60に供給する。
【0037】
エンジン10は、エンジン制御ユニット(エンジンECU(Electronic Control Unit))200により制御される。自動変速装置30は、トランスミッション制御ユニット(トランスミッションECU)300により制御される。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24は、モータ制御ユニット(モータECU)400により制御される。これらのエンジンECU200、トランスミッションECU300、及び、モータECU400は、システム全体を統合的に制御する、駆動制御装置としてのハイブリッド制御ユニット(ハイブリッドECU)100に接続されている。ハイブリッドECU100は、エンジンECU200、トランスミッションECU300、及び、モータECU400等を用いて、車両の走行制御又は減速制御、あるいは、高電圧バッテリ50の充電制御を行う。
【0038】
それぞれのECUは、マイクロコンピュータをはじめとして各種インタフェース又は周辺機器等を備えて構成される。それぞれのECUは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信ラインを介して双方向通信可能に接続され、制御情報や制御対象に関連する各種の情報を相互に通信する。以下、それぞれのECUの機能の概略について説明する。
【0039】
エンジンECU200は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、エンジン10の出力が制御指令値となるようにエンジン10を制御する。具体的には、エンジンECU200は、エンジン10に備えられた各種センサにより検出される情報に基づいて、スロットル開度、点火時期、及び、燃料噴射量等の制御量を算出する。エンジンECU200は、算出された制御量に基づいてスロットル弁、点火プラグ、及び、燃料噴射弁等に係るアクチュエータを駆動させる。
【0040】
モータECU400は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ24の出力が制御指令値となるように、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ24をそれぞれ制御する。具体的には、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20又は第2のモータジェネレータ24の回転数や電圧、電流等の情報に基づいてインバータ70に対して電流指令や電圧指令を出力する。
【0041】
トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けてCVT31の変速比を決定し、運転状態に応じた適切な変速比に制御する。例えば、トランスミッションECU300は、油圧を制御し、プーリ比を調節することにより、CVT31の変速比を制御する。また、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けて、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び、第2の伝達クラッチ46等の制御を行うことで、走行モードの切り替えを行う。例えば、トランスミッションECU300は、油圧を制御することにより、各クラッチの断接を制御する。
【0042】
エンジン走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46をすべて締結させて、エンジン10からのトルクをCVT31に伝達させる。そして、トランスミッションECU300は、CVT31にエンジン10からのトルクを所定の変速比で変換させ、駆動輪80に伝達させる。
【0043】
シングルモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46をすべて開放させて、第2のモータジェネレータ24からの駆動力を駆動輪80に伝達させる。あるいは、シングル走行モードの場合、トランスミッションECU300は、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を締結させて、第1のモータジェネレータ20からのトルクを、CVT31及びモータ軸25を介して駆動輪80に伝達させてもよい。
【0044】
ツインモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を締結させて、第1のモータジェネレータ20からのトルクをCVT31に伝達させる。そして、トランスミッションECU300は、CVT31を介して第1のモータジェネレータ20からのトルクをモータ軸25に伝達させ、第2のモータジェネレータ24の駆動力と合わせて、駆動輪80に伝達させる。
【0045】
ハイブリッド走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46をすべて締結させて、エンジン10からのトルクをCVT31に伝達させる。そして、トランスミッションECU300は、CVT31に伝達されたトルクを所定の変速比で変換させ、モータ軸25を介して第2のモータジェネレータ24の駆動力と合わせて、駆動輪に伝達させる。
【0046】
さらに、トランスミッションECU300は、エンジン10を始動させる際にエンジンクラッチ42を締結させて、第1のモータジェネレータ20のトルクによりエンジン10にクランキングさせる。このとき、エンジン10と第1のモータジェネレータ20との差回転により車両の前後振動が発生しないように、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を締結させる前に、第1の伝達クラッチ44を開放させる。
【0047】
本実施形態にかかる駆動制御機構1では、すべての走行モードにおいて、車両の減速時に、第2のモータジェネレータ24を回生駆動させることによって、回生ブレーキ力を発生させることができる。また、エンジン走行モード、ツインモータEV走行モード、及び、ハイブリッド走行モードにおいて、車両の減速時に、第1のモータジェネレータ20を回生駆動させることによって、回生ブレーキ力を発生させることができる。また、シングルモータEV走行モード、又は、ハイブリッド走行モードにおいて、エンジン10からのトルクの一部又は全部により第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。さらに、エンジン走行モードにおいて、エンジン10からのトルクの一部により第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。
【0048】
また、本実施形態にかかる駆動制御機構1では、第1のモータジェネレータ20が、エンジン10のスタータモータとしての機能を有する。したがって、エンジン10の始動時又は停止時にしか使用されていなかった従来のスタータモータを省略することができる。また、第1のモータジェネレータ20は、オイルポンプ28と一体となって電動オイルポンプとしての機能を有する。したがって、エンジン10又は駆動輪80が停止し、ギヤ式のオイルポンプ15により作動油圧を生成できない場合にしか使用されていなかった従来の電動オイルポンプを省略することができる。
【0049】
また、本実施形態にかかる駆動制御機構1では、第1のモータジェネレータ20が、第1の伝達クラッチ44を介して、CVT31のプライマリプーリ33に連設されており、走行中において、第1のモータジェネレータ20を駆動モータとして機能させることができる。したがって、車両の動力性能を向上させることができる。さらに、エンジン10に車両の駆動力を発生させている間、エンジン10の出力に余剰のトルクがある場合には、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させることができる。したがって、車両の燃費性能を向上させることができる。
【0050】
<1−2.駆動制御装置の構成>
次に、
図2を参照して、駆動制御装置100すなわちハイブリッドECU100の機能構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドECU100の概略的な機能構成の例を示すブロック図である。なお、ここでは、本発明の一実施形態に係る処理に関するハイブリッドECU100の機能についてのみ説明する。
【0051】
図2に示したように、ハイブリッドECU100は、判定部102および制御部104を備える。
【0052】
(判定部)
判定部102は、モードの切り替え(遷移要求)の有無を判定する。具体的には、判定部102は、EVモードからHEVモードへの切り替え有無を判定する。例えば、判定部102は、エンジン始動要求が発生すると、EVモードからHEVモードへ切り替えると判定する。なお、当該エンジン始動要求は、例えばEVモードにおいて高電圧バッテリ50のSOC(State of Charge)すなわち充電率または電力の残量が閾値以下となる場合またはアクセルペダルの踏み増しなどにより要求駆動力が増加する場合に発生する。
【0053】
さらに、判定部102は、変速比の変更有無を判定する。具体的には、判定部102は、第2のモータジェネレータ24の駆動力の増加可否に基づいて変速比の変更有無を判定する。より具体的には、判定部102は、駆動力の増加後の第2のモータジェネレータ24の出力が上限以下である場合、変速比を下げると判定する。例えば、判定部102は、後述するような変速比の下降に応じた第2のモータジェネレータ24の駆動力の増加による第2のモータジェネレータ24の出力が予め設定される値または算出される値以下である場合に、要求駆動力に応じた目標変速比よりも低い変速比であるモード(以下、シフトHiモードとも称する。)を許可すると判定する。予め設定される値としては、第2のモータジェネレータ24の仕様として設定される出力上限値がある。また、算出される値としては、第2のモータジェネレータ24の温度または第2のモータジェネレータ24に使用可能な高電圧バッテリ50の電力などに基づいて算出される値がある。特に、第2のモータジェネレータ24に使用可能な電力は、車両に搭載されるエアーコンディショナなどの他の装置の電力供給要求などに応じて変化するため、算出される値が用いられる。これにより、第2のモータジェネレータ24の出力不足により変速比の下降に応じた駆動力の増加が見込めない場合に、変速比の下降により駆動力が不足することを防止することができる。
【0054】
また、より具体的には、判定部102は、第2のモータジェネレータ24の駆動に用いられるバッテリに蓄積されている電力に係る値が閾値以上である場合、変速比を下げると判定する。例えば、判定部102は、高電圧バッテリ50のSOCなどの充電率または電力残量が閾値以上である場合、変速比を下げると判定する。これにより、変速比の下降に応じた第2のモータジェネレータ24の駆動力の増加後においても高電圧バッテリ50において電力を確保することができる。
【0055】
なお、第2のモータジェネレータ24に係る故障の有無に基づいて変速比の変更有無が判定されてもよい。例えば、判定部102は、第2のモータジェネレータ24およびモータECU400が故障していない場合に、シフトHiモードを許可すると判定する。
【0056】
(制御部)
制御部104は、判定部102の判定結果に基づいて変速比の制御態様を決定する。具体的には、制御部104は、判定部102により変速比を下げると判定されると、CVT31に要求駆動力に応じた目標変速比よりも変速比を下げさせる。より具体的には、制御部104は、CVT31の入力軸すなわちプライマリ軸34の回転数が、エンジン10が停止する回転数(以下、エンジン最低回転数とも称する。)となる変速比手前までCVT31に変速比を下げさせる。例えば、シフトHiモードが許可されると、第1の伝達クラッチ44および第2の伝達クラッチ46が締結されている場合、制御部104は、エンジンクラッチ42の締結の際にエンジン回転数がエンジン最低回転数に達しない程度の変速比(以下、特定の変速比とも称する。)を算出する。そして、制御部104は、算出された特定の変速比への変速比の変更指令(以下、特定変速比移行指令とも称する。)をトランスミッションECU300へ出力する。特定変速比移行指令を受けたトランスミッションECU300は、CVT31に特定の変速比への変速比の下降を開始させる。
【0057】
また、制御部104は、エンジン10のトルクが駆動輪80すなわちCVT31に伝達される前にCVT31に変速比を下げさせる。具体的には、制御部104は、エンジンクラッチ42が締結される前に、特定変速比移行指令をトランスミッションECU300へ出力する。例えば、制御部104は、エンジンクラッチ42の締結指令を出力する前に、特定変速比移行指令を出力する。これにより、エンジン10のトルクが伝達される際にはCVT31の変速比が既に下げられているため、エンジンクラッチ42の締結の際に発生するおそれのあるショックをより確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、制御部104は、HEVモードへの遷移以後に、CVT31に変速比を目標変速比へ戻させる。具体的には、制御部104は、エンジンクラッチ42が締結された後、変速比が特定の変速比へ下げられる際の変化よりも緩やかに目標変速比へ戻す指令(以下、目標変速比移行指令とも称する。)をトランスミッションECU300へ出力する。例えば、制御部104は、特定の変速比への下降の速さよりも遅く変速比を目標変速比に向けて上昇させる目標変速比移行指令を出力する。これにより、変速比の下降による駆動力の不足を解消することができる。また、変速比の単位時間当たりの変化の程度が小さくされることにより、変速比の変更によるショックの発生を抑制することができる。なお、制御部104は、目標変速比移行指令に相当する指令を含む特定変速比移行指令をトランスミッションECU300へ出力してもよい。この場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を締結させた後、CVT31に変速比を目標変速
比に戻させる。
【0059】
次に、第2のモータジェネレータ24の制御態様について説明する。制御部104は、判定部102の判定結果に基づいて第2のモータジェネレータ24の制御態様を決定する。具体的には、制御部104は、判定部102により変速比を下げると判定されると、第2のモータジェネレータ24に駆動力を増加させる。より具体的には、制御部104は、変速比が下げられた後の駆動力と要求駆動力との差以上の駆動力を第2のモータジェネレータ24に増加させる。例えば、シフトHiモードが許可されると、制御部104は、特定の変速比における駆動力と要求駆動力との差を算出する。次に、制御部104は、算出された駆動力の差に相当する駆動力(以下、差分駆動力とも称する。)を第2のモータジェネレータ24に増加させる指令(以下、差分駆動力増加指令とも称する。)をモータECU400へ出力する。これにより、変速比の下降による駆動力の不足を補うことができる。
【0060】
さらに、制御部104は、HEVモードへの遷移以後に、第2のモータジェネレータ24に駆動力を元に戻させる。例えば、制御部104は、エンジンクラッチ42が締結された後、駆動力の増加分を減少させる指令(以下、差分駆動力減少指令とも称する。)をモータECU400へ出力する。これにより、第2のモータジェネレータ24の駆動に消費される電力を適切な量に低減することができる。
【0061】
また、制御部104は、変速比の変化に応じて第2のモータジェネレータ24の駆動力を変化させる。具体的には、制御部104は、特定の変速比への変速比の下降に応じて第2のモータジェネレータ24の駆動力を増加させ、目標変速比への変速比の上昇に応じて第2のモータジェネレータ24の駆動力を減少させる。例えば、制御部104は、特定変速比移行指令のトランスミッションECU300への出力と、差分駆動力増加指令のモータECU400への出力とを同じタイミングで行う。これにより、変速比の変化による駆動力の変化に応じた駆動力の補完が可能となる。
【0062】
<1−3.駆動制御装置の処理>
次に、本発明の一実施形態に係る駆動制御装置100すなわちハイブリッドECU100の処理について説明する。
【0063】
(全体処理)
まず、
図3を参照して、ハイブリッドECU100の全体処理について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドECU100の全体処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0064】
ハイブリッドECU100は、エンジン始動要求が発生したかを判定する(ステップS502)。具体的には、判定部102は、EVモードからHEVモードへの遷移要求、すなわちモータECU400などから得られるバッテリ情報などに基づいて発生するエンジン始動要求、の発生有無を判定する。
【0065】
エンジン始動要求が発生したと判定されると、ハイブリッドECU100は、シフトHiモードを許可するかを判定する(ステップS504)。具体的には、判定部102は、第2のモータジェネレータ24の駆動力の増加可否に基づいてシフトHiモードを許可するかを判定する。詳細については後述する。
【0066】
シフトHiモードを許可すると判定されると、ハイブリッドECU100は、シフトHiモードをONに設定する(ステップS506)。具体的には、判定部102は、シフトHiモードを許可すると判定されると、シフトHiモードの状態を示すフラグをONに設定する。
【0067】
次に、ハイブリッドECU100は、CVT31に変速比を目標変速比よりも低い変速比にスライドさせる(ステップS508)。具体的には、制御部104は、シフトHiモードに係るフラグがONになると、特定変速比移行指令をトランスミッションECU300へ出力する。
【0068】
次に、ハイブリッドECU100は、第2のモータジェネレータ24に駆動力を増加させる(ステップS510)。具体的には、制御部104は、シフトHiモードに係るフラグがONになると、差分駆動力増加指令をモータECU400へ出力する。
【0069】
次に、ハイブリッドECU100は、エンジン始動処理が完了したかを判定する(ステップS512)。具体的には、制御部104は、HEVモードへの遷移が完了したか、すなわちエンジンクラッチ42が締結され、エンジン10のトルクがCVT31を通じて駆動輪80に伝達される状態に達したか、を判定する。
【0070】
エンジン始動処理が完了したと判定されると、ハイブリッドECU100は、CVT31に変速比を目標変速比へ戻させる(ステップS514)。具体的には、制御部104は、HEVモードへの遷移が完了したと判定されると、目標変速比移行指令をトランスミッションECU300へ出力する。
【0071】
また、ハイブリッドECU100は、第2のモータジェネレータ24に駆動力を元に戻させる(ステップS516)。具体的には、制御部104は、HEVモードへの遷移が完了したと判定されると、差分駆動力減少指令をモータECU400へ出力する。
【0072】
次に、ハイブリッドECU100は、シフトHiモードをOFFにする(ステップS51
8)。具体的には、制御部104は、シフトHiモードに係るフラグをOFFに設定する。
【0073】
(シフトHiモード許可判定処理)
続いて、
図4を参照して、上記ステップS504の処理の詳細について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドECU100のシフトHiモード許可判定処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0074】
ハイブリッドECU100は、第2のモータジェネレータ24の駆動用バッテリのSOCが閾値以上であるかを判定する(ステップS602)。具体的には、制御部104は、高電圧バッテリ50のSOCが閾値以上であるかを判定する。
【0075】
第2のモータジェネレータ24の駆動用バッテリのSOCが閾値以上であると判定されると、ハイブリッドECU100は、駆動力増加後の第2のモータジェネレータ24の出力が上限以下であるかを判定する(ステップS604)。具体的には、制御部104は、駆動力増加後の第2のモータジェネレータ24の出力が仕様の出力上限以下であるかを判定する。
【0076】
駆動力増加後の第2のモータジェネレータ24の出力が上限以下であると判定されると、シフトHiモードを許可すると判定されたとして、上述したステップS506へ処理が進められる。そうでない場合、シフトHiモードを許可しないと判定されたとして処理が終了する。
【0077】
なお、上記ステップS602またはS604の一方のみが行われてもよく、別の判定処理が追加されてもよい。
【0078】
<2.動作例>
以上、本発明の一実施形態に係る駆動制御機構1について説明した。次に、
図5を参照して、駆動制御機構1の動作例について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る駆動制御機構1の動作例を示すタイミングチャートである。なお、
図5に示した実線は駆動制御機構1の動作を示し、
図5に示した破線は従来の駆動制御機構の動作を示している。
【0079】
駆動制御機構1は、EVモードにおいて、要求駆動力に応じてCVT31および第2のモータジェネレータ24を制御する。例えば、ハイブリッドECU100は、EVモードにおいてはモータECU400を介して第2のモータジェネレータ24を所定の駆動力で駆動させ、トランスミッションECU300を介してCVT31に要求駆動力に応じた目標変速比に変速比を変更させる。
【0080】
EVモードからHEVモードへの遷移要求が発生すると(時間t1)、駆動制御機構1は、CVT31に変速比を特定の変速比まで下降させる(時間t1〜t2)。例えば、ハイブリッドECU100は、EVモードにおいてエンジン始動要求が発生すると、トランスミッションECU300を介してCVT31に特定の変速比に変速比を下降させる。なお、当該特定の変速比への変速比の変更は、変速比の変更によるショックが所定の程度以下である範囲で可能な限り速く行われてよい。これは、変速比の変更が長期化することによる駆動力の応答性の低下を回避するためである。
【0081】
また、駆動制御機構1は、第2のモータジェネレータ24に駆動力を差分駆動力分だけ増加させる(時間t1〜t2)。例えば、ハイブリッドECU100は、EVモードにおいてエンジン始動要求が発生すると、モータECU400を介して第2のモータジェネレータ24に算出される差分駆動力分だけを駆動力を増加させる。なお、第2のモータジェネレータ24の駆動力の増加は、CVT31の変速比の下降に応じて、例えば相関的に行われる。
【0082】
次に、駆動制御機構1は、エンジン10を始動させ、エンジン10のトルクの駆動輪80への伝達を開始する。例えば、変速比および第2のモータジェネレータ24の駆動力の制御後に、ハイブリッドECU100は、エンジンECU200を介してエンジン10を始動させ、エンジンクラッチ42の締結を開始させる。
【0083】
ここで、従来では、変速比が目標変速比のままであるため、エンジンクラッチ42の締結の際にショックが発生するおそれがあった。例えば、時間t2においてエンジンクラッチ42の締結が開始されると、
図5の破線で示したように、前後加速度が急峻に変化している。これは、エンジンクラッチ42の締結によるショックの発生を示している。
【0084】
他方で、駆動制御機構1によれば、時間t2においてエンジンクラッチ42の締結が開始されても、
図5の実線で示したように、前後加速度の変化が従来に比べて抑制されており、前後加速度がほとんど変化していない。これは、エンジンクラッチ42の締結によるショックの発生が抑制されていることを示している。
【0085】
さらに、アクセルペダルの踏み増しなどによる駆動力の増加要求が発生すると(時間t3)、駆動制御機構1は、第2のモータジェネレータ24の駆動力を増加させる(時間t3〜t4)。例えば、
図5に示したようにアクセル開度が大きくなると、要求駆動力も増大する。そこで、ハイブリッドECU100は、増大した要求駆動力と出力されている駆動力との差分を算出し、算出される駆動力の差分に相当する駆動力を、モータECU400を介して第2のモータジェネレータ24に増加させる。その結果、アクセル開度の変化に応じて前後加速度も増大している。
【0086】
HEVモードへの遷移が完了すると(時間t4)、駆動制御機構1は、CVT31に変速比を目標変速比まで上昇させる(時間t4〜t5)。例えば、エンジンクラッチ42の締結が完了すると、ハイブリッドECU100は、トランスミッションECU300を介してCVT31に変速比を目標変速比まで上昇させる。なお、変速比の目標変速比への上昇の速さは、変速比の特定の変速比への下降に比べて遅い。これにより、変速比の変更によるショックの発生を抑制することができる。
【0087】
また、駆動制御機構1は、第2のモータジェネレータ24に駆動力を差分駆動力分だけ減少させる(時間t4〜t5)。例えば、エンジンクラッチ42の締結が完了すると、ハイブリッドECU100は、モータECU400を介して第2のモータジェネレータ24に増加させた差分駆動力分だけ駆動力を減少させる。なお、第2のモータジェネレータ24の駆動力の減少は、CVT31の変速比の上昇に応じて、例えば相関的に行われる。
【0088】
<3.本発明の一実施形態のまとめ>
このように、本開示の一実施形態によれば、駆動制御機構1は、駆動輪80と接続される第2のモータジェネレータ24と、駆動輪80と接続されるCVT31と、CVT31のプライマリ軸34と接続されるエンジン10と、を備える。そして、CVT31は、第2のモータジェネレータ24の駆動力が駆動輪80に伝達され、エンジン10のトルクが駆動輪80に伝達されないEVモードにおいて、第2のモータジェネレータ24およびエンジン10のトルクが駆動輪80に伝達されるHEVモードへの遷移要求が発生すると、要求駆動力に応じた目標変速比より変速比を下げる。また、第2のモータジェネレータ24は、当該遷移要求が発生すると、駆動輪80に伝達する駆動力を増加させる。また、上述の駆動制御機構1の動作を実現する駆動制御装置(ハイブリッドECU)100も提供される。
【0089】
従来では、EVモードからHEVモードへの切り替えの際に、セカンダリ回転数(セカンダリ軸の回転数)が出力軸(駆動輪)の回転数を超えるようにエンジン回転数およびCVTの変速比のうちの少なくとも一方が制御されていた。しかし、変速比が下降させられると、駆動輪へ伝達される駆動力が減少する。また、エンジン回転数が上昇させられると、燃費の低下または排気ガスに含まれる有害物質の増加などが引き起こされかねない。
【0090】
これに対し、駆動制御機構1によれば、変速比の下降と共に、第2のモータジェネレータ24の駆動力が増加させられることにより、駆動力の減少を補うことができる。そのため、駆動力の不足なしで変速比を下降させることができ、エンジン10のトルク伝達の際にショックが発生するおそれおよびショックの程度を抑制することができる。従って、EVモードからHEVモードへの切り替えにおいて、動力伝達に係るショックの抑制と駆動力の維持とを両立することが可能となる。
【0091】
また、CVT31は、上記遷移要求が発生すると、プライマリ軸34の回転数が、エンジン10が停止する回転数となる変速比手前まで変速比を下げる。ここで、エンジンクラッチ42の締結が開始されると、エンジン回転数がプライマリ軸34の回転数に合わせるように低下する。そのため、変速比の下降によりプライマリ軸34の回転数が下がり過ぎると、エンジンクラッチ42の締結の際にエンジン回転数がエンジン最低回転数以下に低下するおそれがある。その結果、エンジン10においてショックまたはエンジンストールが発生しかねない。これに対し、上述した特定の変速比が、プライマリ軸34の回転数がエンジン最低回転数となる変速比手前に設定されることにより、エンジンクラッチ42の締結に際のショックまたはエンジンストールの発生を抑制することができる。
【0092】
また、CVT31は、上記遷移要求が発生すると、エンジン10のトルクが駆動輪80に伝達される前に上記目標変速比より変速比を下げる。このため、エンジン10のトルクが伝達される時点で、CVT31の変速比を下降させておくことができる。従って、エンジンクラッチ42の締結の際に発生するおそれのあるショックをより確実に抑制することができる。
【0093】
また、CVT31は、第2のモータジェネレータ24が駆動力を増加させる場合に、上記目標変速比より変速比を下げる。ここで、第2のモータジェネレータ24が駆動力を増加させることができない場合にも一律に変速比が下降させられると、駆動力の不足が発生しかねない。そこで、第2のモータジェネレータ24が駆動力を増加させることができる場合に変速比を下降させることにより、駆動力の不足による車速の低下などを防止することができる。
【0094】
また、第2のモータジェネレータ24は、駆動力の増加後の第2のモータジェネレータ24の出力が上限以下である場合、駆動力を増加させる。このため、第2のモータジェネレータ24の出力不足により変速比の下降に応じた駆動力の増加が見込めない場合には、変速比を下降させなくすることができる。従って、駆動力不足の発生を防止することができる。また、第2のモータジェネレータ24に過剰な負荷がかかることを回避することができる。
【0095】
また、第2のモータジェネレータ24は、第2のモータジェネレータ24の駆動に用いられるバッテリに蓄積されている電力に係る値が閾値以上である場合、駆動力を増加させる。このため、変速比の下降に応じて第2のモータジェネレータ24の駆動力が増加させられた後においても高電圧バッテリ50において電力を確保することができる。高電圧バッテリ50は、車両の他の装置に対しても電力を供給するため、高電圧バッテリ50の枯渇を抑制することにもなる。従って、車両の走行を維持することが可能となる。
【0096】
また、第2のモータジェネレータ24は、変速比が下げられた後の駆動力と要求駆動力との差以上の駆動力を増加させる。このため、変速比の下降による駆動力の不足の全てを補うことができる。従って、車両のドライバに駆動力不足が感じさせることを回避でき、車両の操作性または応答性を維持することが可能となる。
【0097】
また、第2のモータジェネレータ24は、変速比の変化に応じて駆動力を変化させる。ここで、CVT31の変速比の変化と第2のモータジェネレータ24の駆動力の変化との間にずれがある場合、駆動力の不足または過剰が発生するおそれがある。そして、駆動力の不足または過剰のいずれについても車両のドライバは違和感を覚えることになる。これに対し、変速比の変化と駆動力の変化とが対応させられることにより、ドライバの違和感を抑制することが可能となる。
【0098】
また、CVT31は、HEVモードへの遷移以後に、変速比を目標変速比へ戻す。HEVモードへの遷移が完了しているため、エンジン10のトルク伝達に係るショックは発生しない。そのため、変速比が上昇させられることにより、CVT31を介して駆動輪80へ伝達される駆動力を増加させることができる。また、これにより、第2のモータジェネレータ24の駆動力を減少させることができ、すなわち第2のモータジェネレータ24の出力を低下させることができるため、高電圧バッテリ50の電力の使用量を低減させることができる。
【0099】
また、CVT31は、変速比が下げられる際の変化よりも緩やかに変速比を目標変速比に戻す。このため、変速比の特定の変速比への下降の場合よりも、変速比の単位時間当たりの変化の程度が小さくなるように変速比が上昇させられることにより、変速比の変更によるショックの発生を抑制することができる。
【0100】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明した。なお、本発明の一実施形態は、上述の例に限定されない。以下に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0101】
本発明の一実施形態の変形例として、駆動制御機構1は、要求駆動力が減少した場合に、CVT31の変速比または第2のモータジェネレータ24の駆動力の少なくとも一方を戻してもよい。具体的には、駆動制御機構1は、要求駆動力が減少すると、CVT31の変速比を特定の変速比よりも上昇させる。例えば、ハイブリッドECU100は、アクセルペダルの踏力が減少することによる要求駆動力の減少に応じた変速比の戻し量を算出する。そして、ハイブリッドECU100は、算出された変速比の戻し量だけ変速比を特定の変速比から上昇させる指令をトランスミッションECU300へ出力する。
【0102】
また、具体的には、駆動制御機構1は、要求駆動力が減少すると、第2のモータジェネレータ24の駆動力を差分駆動力分だけ増加された駆動力よりも減少させる。例えば、ハイブリッドECU100は、アクセルペダルの踏力が減少することによる要求駆動力の減少に応じた第2のモータジェネレータ24の駆動力の戻し量を算出する。そして、ハイブリッドECU100は、算出された駆動力の戻し量だけ駆動力を減少させる指令をモータECU400へ出力する。
【0103】
このように、本発明の一実施形態の変形例によれば、駆動制御機構1は、要求駆動力が減少した場合に、CVT31の変速比または第2のモータジェネレータ24の駆動力の少なくとも一方を戻す。基本的にはシフトHiモードがONである状況では要求駆動力が増加していることが想定されるが、当該状況においても上述したように要求駆動力が減少する場合がある。この場合に、上記変形例のように、シフトHiモードで制御されている変速比または第2のモータジェネレータ24の駆動力を調整することで要求駆動力の減少に対応することにより、別の駆動力制御を行わずに済む。そのため、駆動力制御が複雑化することを抑制することができる。また、それにより要求駆動力の減少への追従性を高めることができる。従って、要求駆動力の減少について応答良く減速感をドライバに与えることができる。なお、第2のモータジェネレータ24の駆動力を変更させる方が、CVT31の変速比を変更させる場合よりも燃費の観点および応答性の観点では有利である。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、上記実施形態では、変速機が無段変速機(CVT)であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、変速機は有段変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第1の伝達クラッチ44および第2の伝達クラッチ46が締結された状態において、エンジンクラッチ42が締結されることによりエンジン10のトルクが駆動力として駆動輪80に伝達される例を説明した。しかし、エンジンクラッチ42および第1の伝達クラッチ44が締結された状態において、第2の伝達クラッチ46が締結されることによりエンジン10のトルクが駆動力として駆動輪80に伝達されるとしてもよい。また、エンジンクラッチ42および第2の伝達クラッチ46が締結された状態において、第1の伝達クラッチ44が締結されることによりエンジン10のトルクが駆動力として駆動輪80に伝達されるとしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、HEVモードへの遷移完了後にCVT31の変速比および第2のモータジェネレータ24の駆動力が戻される例を説明したが、CVT31の変速比および第2のモータジェネレータ24の駆動力はHEVモードへの遷移中から戻され始めてもよい。例えば、エンジン回転数とプライマリ軸34の回転数との差回転が所定値以下になるとCVT31の変速比および第2のモータジェネレータ24の駆動力が戻され始めてもよい。概して、駆動力伝達に係るショックは、伝達開始の際に発生しやすく、伝達が安定してくると相対的には発生しにくくなる。例えば、エンジンクラッチ42の締結開始後であって完全には締結されていない状態において変速比が戻され始めてもショックが発生しにくい。他方で、エンジンクラッチ42が締結中すなわちHEVモードへの遷移中に変速比を戻し始めることにより、発生する駆動力と要求駆動力との乖離を小さくすることができる。すなわち、第2のモータジェネレータ24に増加させる駆動力を減らすことができ、高電圧バッテリ50の省電力化が可能となる。
【0108】
また、上記の実施形態のフローチャートに示されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的にまたは個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【0109】
また、駆動制御装置(ハイブリッドECU)100に内蔵されるハードウェアに上述した駆動制御装置100の各機能構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該コンピュータプログラムが記憶された記憶媒体も提供される。