(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘミアセタールエステルは、前記エポキシ樹脂のエポキシ基に対し0.2〜0.4当量のモノカルボン酸と、前記モノカルボン酸のカルボキシル基に対し1.0〜1.5当量のポリビニルエーテルとが合成されてなる、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
前記硬化剤は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基に対し0.4〜0.5当量のシアノグアニジンと、前記エポキシ基に対し0.08〜0.18当量のメラミンとを含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が適用される表面実装技術における電気接続のために一般的に用いられているはんだは、主に錫と銀と銅からなる合金で、その融点は約220℃であり、リフローはんだ付け工程では、120〜160℃のプリヒートによる1分程度の加熱と、はんだ接続のため10秒程度の220〜260℃の加熱が行われる。
【0015】
このため、熱硬化性樹脂組成物はリフローはんだ付け工程中に種々の反応を開始する。
1)ヘミアセタールエステルの解離反応によるカルボン酸の生成
2)はんだや銅の酸化膜(金属酸化物)とカルボン酸の反応
3)カルボン酸とエポキシ樹脂の反応
4)カルボン酸と熱硬化剤との造塩反応
5)カルボン酸金属塩とエポキシ樹脂の反応
6)エポキシ樹脂と熱硬化剤の反応
【0016】
その結果、リフローはんだ付け後に再度加熱を行っても熱硬化性樹脂組成物の軟化が起こりにくくなり、真空操作によってボイドを除去することが困難となり、巻き込み空気や酸化膜除去時の生成水によるボイドを除去することが難しい。
【0017】
鋭意研究の結果、リフロー後のエポキシ樹脂の反応率を40%以下にすることにより、リフロー後の加熱及び真空操作によって、回路基板と電子部品の間のボイドを除去できることが判明した。
【0018】
(熱硬化性樹脂組成物)
リフロー後のエポキシ樹脂の反応率を40%以下にするため、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、液状のエポキシ樹脂と、モノカルボン酸及びポリビニルエーテルが配合されてなるヘミアセタールエステルと、硬化剤と、フィラーと、を含む。以下、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0019】
本願の表面実装技術に用いられる熱硬化性樹脂組成物には、液状のエポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂は、マトリックス樹脂としての機能を有する。また、エポキシ樹脂は、硬化反応時に後述の活性剤(カルボン酸)とも反応し、活性剤を失活させる機能を有する。これにより、硬化後の塗布樹脂は、非常に熱的安定となり、加熱時(例えば、アンダーフィル樹脂の加熱硬化時)、腐食反応や分解ガスを発生することがない。
【0020】
熱硬化性樹脂組成物は、実質的に溶剤を含まないことが望ましく、常温で液状のエポキシ樹脂を含む。熱硬化性樹脂組成物が溶剤を含まないことにより、溶剤が揮発する際に発生するガスに起因するボイドの発生を防止することができる。
【0021】
液状のエポキシ樹脂とは、常温で液状のエポキシ樹脂をいい、例えば、常温で流動性をもつエポキシ樹脂が挙げられる。そのような液状エポキシ樹脂としては、例えば粘度(室温、mPa・s)が20000以下、特に1000〜10000が好ましい。液状エポキシ樹脂のエポキシ当量(EEW)は、100〜400であり、好ましくは100〜200である。また、液状エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、200〜1000であり、好ましくは300〜600である。
【0022】
好ましくは、液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などがあり、これらを1種以上用いてよい。
【0023】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、次式
【化1】
【0024】
[上記式中、nは0若しくは1を表す。Gは、グリシジル基を表す。]で表され、これらの一種以上、用いてよい。
【0025】
液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、次式
【化2】
[上記式中、nは0若しくは1を表す。Gは、グリシジル基を表す。]で表され、これらの一種以上、用いてよい。
【0026】
ヘミアセタールエステルは、モノカルボン酸及びポリビニルエーテルを反応させることにより合成される。ヘミアセタールエステル中のカルボン酸は、はんだ付け性向上のための活性剤として機能する。カルボン酸は、そのままではエポキシ樹脂中のエポキシ基と室温に於いて反応するため、カルボン酸をビニルエーテルと反応させてヘミアセタールエステルとすることにより、カルボン酸とエポキシ樹脂との反応を抑制できる。更にプリヒート時に解離して反応させないために、ヘミアセタールエステルの解離温度が170℃以上のものが適切である。カルボン酸をヘミアセタールエステル化とすることにより、熱硬化性樹脂の低温副反応を抑えることができ、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0027】
ヘミアセタールエステル化するカルボン酸として、解離した後にエポキシ樹脂と反応しても架橋反応によるゲル化を起こさないように、カルボキシル基が1分子中に1個のモノカルボン酸を使用する。モノカルボン酸は脂肪族系、芳香族系、多環芳香族系、複素環系のいずれでもよいが、エポキシ基と反応して非反応性の側鎖となるため、耐熱性の面から芳香族モノカルボン酸や多環芳香族モノカルボン酸が好ましい。
【0028】
モノカルボン酸の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対し0.2〜0.4当量であることが好ましい。1当量のエポキシ基に対し、モノカルボン酸が0.2当量未満の場合は、はんだの酸化膜除去性が悪くなり接続不良を起こし、0.4等量を超えた場合はエポキシ基との反応により消費されるエポキシ基が減少し、硬化性が低下する。
【0029】
ヘミアセタールエステル化するビニルエーテルとして、1分子中に2個以上のビニル基を持つポリビニル化合物が使用できるが、ヘミアセタールエステル自体の粘度を下げるため、脂肪族ポリビニルエーテルや脂環式ポリビニルエーテルが好ましい。
【0030】
ポリビニルエーテルの配合量は、モノカルボン酸のカルボキシル基に対し1から1.5当量であることが好ましい。モノカルボン酸1当量に対し、ポリビニルエーテルが1.0当量未満の場合、ヘミアセタール化していないカルボン酸が室温でもエポキシ樹脂と反応して消費され接続性が低下し、1.5等量を超えた場合は過剰のビニルエーテルが残存してボイドの原因となり、また硬化物の耐熱性が低下する。
【0031】
ビニルエーテルとしてモノビニルエーテルを使用した場合、ヘミアセタール化するためのビニルエーテル配合量が多くなり、ボイドの発生や硬化物の耐熱性低下等の問題が発生する場合がある。また、ポリカルボン酸とポリビニルエーテルを用いたヘミアセタールエステルについては、高分子量化してゲルを生成するため、エポキシ樹脂との相溶性が低下し、配合物が均一化できなかった。
【0032】
モノカルボン酸とポリビニルエーテルは、それ自体がガス化してボイドを発生しないようにするため、沸点が200℃以上のものを用いる。
【0033】
硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して三次元架橋構造を形成するためのものである。硬化剤としては、リフローはんだ付け後のエポキシ基の反応率が40%以下で、なおかつ一般的な硬化温度(150〜180℃)で完全硬化させるため、シアノグアニジン及びメラミンを用いることが好ましい。シアノグアニジン及びメラミンを用いることにより、シアノグアニジン及びメラミンを用いることにより、短時間の加熱では硬化反応は起きず、従ってリフロー時であっても熱硬化性樹脂組成物が硬化するのを防ぐことができる。
【0034】
シアノグアニジンの配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対し、0.4〜0.5当量が好ましい。シアノグアニジンが0.4当量未満の場合、エポキシ基の反応が完結せず硬化不良を起こし、0.5当量を超えた場合は、リフロー工程によって硬化反応が進みすぎて後脱泡性が低下し、ボイドが残存する。
【0035】
メラミンの配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対し、0.08〜0.18当量が好ましい。メラミンが0.08当量未満の場合も同様に、エポキシ基の反応が完結せず硬化不良を起こし、0.12当量を超えた場合は、リフロー工程によって硬化反応が進みすぎて後脱泡性が低下し、ボイドが残存する。
【0036】
フィラーは、硬化後のエポキシ樹脂組成物の熱膨張係数を小さくし、熱伝導率を向上するために添加され、シリカやアルミナ等の微小球状フィラーを用いることが好ましい。
【0037】
球状フィラーは、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇を押さえるため、平均粒子径は0.5μm以上のものが好ましく、また、はんだバンプの濡れ広がりを阻害しないため、平均粒子径は5μm以下が好ましい。平均粒子径が0.5μm未満の球状フィラーを使用した場合、フィラーの表面積が大きくなりすぎて組成物の粘度が高くなり、後脱泡性が低下し、5μmを越えた場合は、はんだ接続時にフィラーの噛み込みが起こり、接続性が低下する。
【0038】
また、球状フィラーに含まれる0.3μm以下の微粒子の合計が球状フィラーの10質量%以下が更に好ましい。球状フィラーに含まれる0.3μm以下の微粒子の累積含有率が10質量%を超える場合、フィラーの表面積が増大するため組成物の粘度が高くなり、後脱泡性が低下するからである。
【0039】
球状フィラーの含有量が10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。球状フィラーの含有量が10質量%未満の場合硬化収縮が大きくなり、チップや回路基板とエポキシ樹脂組成物の間に隙間が生じやすくなり、50質量%以上の場合、後脱泡性と接続性が低下する。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物には、その他添加剤として、シリコンオイル等の消泡剤、シランカップリング剤、アエロジル等を含有してもよい。
【0041】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、220〜260℃、10〜20秒の熱処理後における前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の反応率が40%以下である。これにより、このような熱処理条件下でリフローはんだ付けが行われた場合であっても、熱硬化性樹脂が硬化するのを抑制することができる。
【0042】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物によれば、リフローはんだ付け後に、当該リフローはんだ付けの熱処理温度よりも低い温度(80℃〜160℃)での再加熱により軟化させることができ、真空操作を行うことによって、樹脂中に含まれるボイドを除去することができる。
【0043】
(表面実装方法)
次に、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が適用される表面実装方法について説明する。
【0044】
図1Aに示すようにプリント配線基板等の回路基板1を用意する。次に、
図1Bに示すように、回路基板1表面上の少なくとも一部(全表面を含む。)に、本願の熱硬化性樹脂組成物3を塗布する。例えば、回路基板1上の少なくとも金属表面の一部に塗布してよい。金属としては、例えば純金属(銅等)及び合金(はんだ等)が挙げられ、これらの一種以上であってよい。熱硬化性樹脂組成物3の層厚は、通常10〜50μmである。
【0045】
次に、
図1Cに示すように、電子部品4を回路基板1上に仮置きする。この仮置きした工程において、空気の巻き込みにより気泡10が発生することがある。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、大型の電子部品、例えば50mm角以上の表面実装技術にも適用できる。電子部品4としては、具体的にはパッケージ部品(BGA部品、CSP部品、MCM部品、IPM部品、IGBT部品等)、半導体チップ等が挙げられる。
【0046】
次に、
図1Dに示すように、リフローはんだ付けを行う。リフローはんだ付けは、プリヒート工程(120〜140℃、40〜80秒)、昇温工程(140〜220℃、5〜15秒)、リフロー工程(220〜260℃、10秒〜30秒)を含む。加熱時間が長過ぎると、塗布樹脂の硬化反応が起こることがあるので、好ましくない。このリフローはんだ付けの際、溶融はんだの表面にある酸化物等が熱硬化性樹脂組成物中のヘミアセタールエステルにより還元等され、その結果、水等が生成することがある。この生成水等が蒸発膨張して気泡10がさらに発生することとなる。
【0047】
次に、
図1Eに示すように、脱泡のため、真空操作及び/又は熱硬化性樹脂組成物の硬化温度未満の加熱を行う。これにより、電子部品の仮置き時の空気の巻き込みや(
図1C)、リフロー工程においてはんだ酸化膜除去(
図1D)により生じた水や気泡10が除去される。真空操作条件は、例えば真空度1〜500(特に50〜300)kPa、1〜60(特に5〜30)分間、が好ましい。
【0048】
脱泡のための加熱は、熱硬化性樹脂組成物の硬化温度未満にて行われる。この加熱により熱硬化性樹脂組成物は軟化し、脱水・脱泡が行われるだけでなく、この軟化した熱硬化性樹脂組成物により回路基板表面上の凹凸が吸収(平坦化)・均される。具体的に、脱泡のための加熱条件としては、例えば60〜150(特に80〜130)℃、1〜60(特に10〜20)分間、が好ましい。
【0049】
その後、
図1Fに示すように熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて、硬化物10とする。加熱硬化条件としては、硬化剤の硬化反応開始温度以上、具体的には150〜200℃、1〜4時間であってよい。これにより、エポキシ樹脂は硬化剤と反応し、3次元架橋構造が形成される。また、この際、ヘミアセタールエステルの解離反応によりカルボン酸が生成され、カルボン酸とエポキシ樹脂の反応が起こることにより、活性剤としての活性力を失う。従って、カルボン酸が残ることはないことから、腐食などによる信頼性を低下させる原因は無くなる。
【0050】
上記のようにして、本願に係る電子部品搭載基板が、製造される。このように上述した電子部品搭載基板の製造方法では、個別のフラックスを設ける必要がない。
【0051】
上記のようにして製造された、本実施形態に係る電子部品搭載基板は、回路基板1と、回路基板1上に実装された電子部品4と、回路基板1と電子部品4との間に設けられた、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物3を熱硬化して得られる硬化物10と、を備える。
【0052】
本実施形態に係る電子部品搭載基板によれば、回路基板1と電子部品4との間の接合材10中にボイドが生じることを抑制できることから、回路基板1と電子部品4との電気的な接続及び機械的な接合の信頼性を向上させることができ、ひいては電子部品搭載基板の信頼性を向上させることができる。
【0053】
(実施例)
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
下記表1、2に示すように、エポキシ樹脂、ヘミアセタールエステル、シアノグアニジン、メラミン、球状フィラーをそれぞれ計量し、撹拌機を用いて30分間混合し、三本ロールミルで分散させた。得られたエポキシ樹脂組成物を真空下(100kPa)で10分間撹拌・脱泡を行い実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物を得た。表1、2に示す数値は、エポキシ樹脂を100質量部とした場合の質量部を示す。また、表1、2において、「0.3μm以下」とは、0.3μm以下の累積含有率を意味する。表1、2には使用したフィラーの平均粒径を記載しているが、平均粒径はレーザー回折・散乱法により測定した。
【0057】
[ヘミアセタールエステルの合成]
表1、2に示すヘミアセタールエステルは下記のように合成した。
【0058】
合成例1(実施例1参照)
エトキシ安息香酸(当量166、沸点315℃)25.34質量部(エポキシ樹脂のエポキシ基に対して0.29当量に相当)とシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(当量88、沸点310℃)18.13重量部(エトキシ安息香酸のカルボキシル基に対して1.35当量に相当)を混合し、80℃で10時間撹拌反応させた。反応終了後、反応物のFT−IR測定を行い、カルボキシル基の吸収が消失したことを確認した。
【0059】
合成例2(実施例16)
メトキシ安息香酸(当量152、沸点200℃)24.00質量部(エポキシ樹脂のエポキシ基に対して0.30当量に相当)とトリエチレングリコールジビニルエーテル(当量101、沸点220℃)21.53質量部(メトキシ安息香酸のカルボキシル基に対して1.35当量に相当)を用いた以外は合成例1と同様に反応させ、反応物のFT−IR測定を行い、カルボキシル基の吸収が消失したことを確認した。
【0060】
合成例3(比較例1)
2官能カルボン酸であるセバシン酸(当量101、沸点386℃)15.95質量部(エポキシ樹脂のエポキシ基に対して0.30当量に相当)とモノビニルエーテルであるイソプロピルモノビニルエーテル(当量86、沸点55℃)18.33質量部(メトキシ安息香酸のカルボキシル基に対して1.35当量に相当)を用いた以外は合成例1と同様に反応させ、反応物のFT−IR測定を行い、カルボキシル基の吸収が消失したことを確認した。
【0061】
なお、表1、2に示す合成例1,2及び3におけるカルボン酸の欄における数値は、合成に用いたカルボン酸のエポキシ基に対する当量を示す。また、ビニルエーテルの欄における数値は、合成に用いたビニルエーテルのカルボキシル基に対する当量を示す。
【0062】
また、2官能以上のカルボン酸と2官能以上のビニルエーテルによるセミアセタール化については、反応中にポリマー化しゲル化物を生成するため、好ましくない。
【0063】
[回路基板とチップ]
熱硬化性樹脂組成物の評価のため、回路基板1として接続ランドを設けた回路基板(30mm角、厚さ0.4mm、接続ランド数196、接続ランドピッチ300μm、接続ランド表面処理はニッケル−金メッキ)を用い、電子部品として試験用TEGチップ(4.2mm角、厚さ0.4mm、バンプ数196、バンプピッチ300μm、はんだ種は錫96.5質量%と銀3.0質量%と銅0.5質量%の合金)を用いた。また、導通試験のため、回路基板と評価用TEGチップはディジーチェーン回路を構成した。
【0064】
[試験方法]
回路基板のランド部に、ディスペンサーを用いて実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物を3mg塗布した。その上に評価用TEGチップを載せ、リフロー装置(プリヒート120〜140℃、60秒、昇温140〜220℃、8秒、リフロー220〜260℃、12秒)を用いてはんだ付けを行った。はんだ付け終了後、ホットプレート付きの真空チャンバーを用いて、120℃に加熱して、真空操作(到達真空度100kPa、15分)を行った。真空操作後、真空チャンバーから取り出し、乾燥機を用いて、160℃で2時間加熱して硬化し、TEG実装基板を得た。
【0065】
[評価方法と判定基準]
上記のようにして得られたTEG実装基板について、表1、2に示すように、ボイド(後脱泡性)、硬化性、はんだ接続性、低硬化収縮性の観点から評価した。下記に各評価の評価方法と判定基準を示す。
【0066】
(ボイド:後脱泡性)
ボイドの確認は、実装基板のTEGチップを熱硬化性樹脂の硬化物が現れるまで琢磨機で削り、20倍の顕微鏡を用いて目視で観察した。ボイドが全く無いものを◎とし、ボイドの大きさがバンプ間距離の半分である75μm以下の物が3個以下のものを○とし、ボイドの大きさが75μmを超えたもの、及び4個以上のボイドのあるものを×とした。
【0067】
(硬化性)
硬化性は、上記と同じ回路基板に2mm角の開口を持つ150Meshのスクリーン板を用いて約50μの厚さで印刷し、上記と同じ条件で硬化した熱硬化性樹脂組成物について、JIS K 5600−5−4引っかき硬度(鉛筆法)に準じて測定し、鉛筆硬度が2H以上で、更にその測定塗膜を再度160℃で1時間加熱し、加熱後に鉛筆の傷に変化(だれや消失)がないものを○とし、鉛筆硬度がH以下、または再加熱によって鉛筆の傷が変化したものを×とした。
【0068】
(はんだ接続性)
はんだ接続性は、実装基板に施されたディジーチェーン回路を用いて導通試験を行い、導通しているものを○とし、導通していないものを×とした。
【0069】
(低硬化収縮性)
低硬化収縮性は、評価用TEGチップを実装した回路基板について、断面を削りだし、50倍の顕微鏡で断面を観察し、断面が完全に充填されているものを○とし、回路基板側またはTEGチップ側に隙間があるものを×とした。
【0070】
[リフロー後のエポキシ基の反応率]
試験前の熱硬化性樹脂組成物のFT−IRチャートにおいて、1508cm−1にあるベンゼン環の吸収ピークの強度に対する910cm−1のあるエポキシ基の吸収ピークの比と、リフロー後の熱硬化性樹脂組成物のFT−IRチャートのベンゼン環とエポキシ基の吸収ピークの強度比からエポキシ基の反応率を算出した。
【0071】
[実施例及び比較例の結果について]
実施例は、総じて、ボイドが少なく、後脱泡性に優れることが確認された。特に、1)液状のエポキシ樹脂と、2)エポキシ樹脂のエポキシ基に対し0.2〜0.4当量のモノカルボン酸(安息香酸)と、前記モノカルボン酸のカルボキシル基に対し1.0〜1.5当量のポリビニルエーテルとが合成されてなるヘミアセタールエステルと、3)エポキシ樹脂のエポキシ基に対し0.4〜0.5当量のシアノグアニジンと、エポキシ基に対し0.08〜0.18当量のメラミンとを含む硬化剤と、4)平均粒子径が0.5〜5μmの球状フィラーを10〜40質量%含み、5)フィラーに含まれる0.3μm以下の微粒子の累積含有率が前記フィラーの全量の10質量%以下であって、6)220〜260℃、10〜20秒のリフロー後におけるエポキシ樹脂中のエポキシ基の反応率が40%以下である、実施例1〜16は、表1に列挙した全ての評価試験において高い評価が得られた。
【0072】
実施例17−31は、実施例1〜16に比べて劣る結果となった。具体的には下記に示すとおりである。
実施例17では、カルボン酸がエポキシ基に消費され、酸化膜除去性が不十分となった。
実施例18では、カルボン酸とエポキシ基が反応し、硬化に必要なエポキシ基が不十分となった。
実施例19では、硬化剤が不足した。
実施例20では、リフロー時の反応が進みゲル化した。
実施例21では、硬化剤が不足し硬化不十分となった。
実施例22では、リフロー時の反応が進みゲル化した。また、樹脂がはんだ溶融前に固化し接続不可となった。
実施例23では、硬化後の断面観察でTEG側に隙間が発生した。
実施例24では、組成物の粘度が上昇し、後脱泡不可、粒子がはんだの濡れ性を阻害し、接続不良となった。
実施例25では、組成物の粘度が上昇し、後脱泡不可となった。
実施例26では、大粒子がはんだの濡れ性を阻害し接続不良となった。
実施例27では、組成物の粘度が上昇し、後脱泡不可となった。
実施例28〜31では、リフロー時の反応が進みゲル化した。はんだ溶融前に固化し接続不可となった。
比較例1は、カルボン酸として2官能のセバシン酸を使用したが、リフローの加熱によってエポキシ樹脂の3次元硬化が進行したためはんだ接続性が阻害され、更に脱泡性が低下してボイドが多量に残った。
比較例2は、フィラーを加えていないため、硬化収縮が大きくなりアンダーフィルとTEGチップの剥離が発生した。