特許第6374436号(P6374436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374436
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】純粋なエルロチニブ
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/94 20060101AFI20180806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20180806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20180806BHJP
   A61K 31/517 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   C07D239/94
   !A61P35/00
   !A61P43/00 111
   !A61K31/517
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-93409(P2016-93409)
(22)【出願日】2016年5月6日
(62)【分割の表示】特願2013-520221(P2013-520221)の分割
【原出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-196463(P2016-196463A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】2112/MUM/2010
(32)【優先日】2010年7月23日
(33)【優先権主張国】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508116469
【氏名又は名称】ジェネリクス・[ユーケー]・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ゴア, ヴィナヤック ゴヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】トライパティ, アニルクマー
(72)【発明者】
【氏名】ジャダーヴ, マダーヴ
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−523949(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/024989(WO,A2)
【文献】 芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,pp.81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型エルロチニブ塩酸塩の調製方法であって、
溶媒からエルロチニブ塩酸塩を結晶化させるステップを含み、
前記溶媒は1−ペンタノールである、
方法。
【請求項2】
A型エルロチニブ塩酸塩の調製方法であって、
エルロチニブ塩基を溶媒に溶解するステップと、水性又は非水性HClと混合するステップと、前記溶媒からエルロチニブ塩酸塩を結晶化させるステップと、を含み、
前記溶媒は1−ペンタノールである、
方法。
【請求項3】
水性HClが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非水性HClが気体として又は非水性溶液として使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
HClの非水性溶液が使用され、前記HClを溶解するために、前記エルロチニブ塩基を溶解するために使用される溶媒と同じ溶媒が使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
結晶化は−10〜40℃の温度で生じる、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1〜30倍体積の前記溶媒が使用される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
20倍体積の前記溶媒が使用される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
A型エルロチニブ塩酸塩が単離される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
単離されたA型エルロチニブ塩酸塩は、3%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
単離されたA型エルロチニブ塩酸塩は、2%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単離されたA型エルロチニブ塩酸塩は、1%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単離されたA型エルロチニブ塩酸塩は、0.5%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、(好ましくは高純度の)エルロチニブ及びその塩及び多形の調製方法に関する。本発明はまた、そのような方法により調製可能なエルロチニブ及びその塩及び多形、そのようなエルロチニブ、塩及び多形の医学的使用、並びにそれらを含む医薬組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン一塩酸塩と化学的に命名されているエルロチニブ塩酸塩(1)は、オンコジェニック及びプロトオンコジェニックタンパク質チロシンキナーゼ、例えば上皮成長因子受容体(EGFR)の阻害剤である。それ故、エルロチニブは、増殖性疾患の治療において有用であり、現在は肺癌及び膵臓癌の治療用に市販されている。
【0003】
【化1】
【0004】
エルロチニブ塩酸塩は種々の多形形態で存在し得ることが報告されている。有効成分である有機化合物が1種を超える多形形態で存在し得ることによって、多くの医薬品の製造プロセスが阻害されている。有効成分を調製する製造プロセスにおいて単一の多形が一定レベルの多形純度で与えられるようにすることが、医薬品開発において重要である。製造プロセスにおいて生成物が様々な程度の多形純度で製造される場合、及び/又は多形相互変換が制御されない場合、有効成分を含む最終的な医薬組成物において溶解性及び/又はバイオアベイラビリティの点で重大な問題が生じる可能性がある。
【0005】
エルロチニブ塩酸塩は米国特許第5,747,498号に開示されている。開示されているエルロチニブ塩酸塩調製法の詳細はスキーム1の通りである。
【0006】
【化2】
【0007】
4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン(2)を、様々な溶媒及び塩基としてのピリジンを用いて3−エチニルアニリン(3)又はその塩酸塩と反応させて、エルロチニブ塩酸塩(1)を得、飽和NaHCO水溶液、クロロホルム及びメタノールからなる二相性の混合物で処理してエルロチニブ塩基(4)を形成させる。有機相において得られる塩基(4)をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、精製エルロチニブ塩基を得る。精製塩基を、ジエチルエーテル及びクロロホルムの存在下塩酸でさらに処理してエルロチニブ塩酸塩を得る。この精製エルロチニブ塩基の単離は、カラムクロマトグラフィーをはじめとする長々しいワークアッププロセスの利用を必要とし、医薬品の商業的生産に適さない塩素化溶媒(クロロホルム)を必要とする。さらに、カラムクロマトグラフィーによる精製は経済的でなく、また工業的規模で実施可能でない。その上、実質的に純粋なエルロチニブを得ることができない。
【0008】
エルロチニブ塩酸塩の2種の結晶形態(多形A及び多形B)は、国際公開第01/34574号パンフレットにおいてXRPDにより特性決定されている。エルロチニブ塩酸塩は、3−エチニルアニリン及び4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリンをトルエンとアセトニトリルとの混合物中で還流することにより、多形Aとして、又は多形Aと多形Bとの混合物として得ることができる。実際、こうすると、多形A、又は多形Aと多形Bとの混合物が得られた。トルエンに対するアセトニトリルの量を減少させることにより多形Aの形成に偏ることも開示されている。さらに、エルロチニブ塩酸塩多形Aをアルコール/水と共に還流することにより多形Aを多形Bに変換することができる。すなわち、開示の方法では、常にA型へのB型の混入及びその逆が存在する。その上、反応の生成物は化学的に純粋ではなく、後の精製が困難である。したがって、これらの方法は、商業的量の純粋な多形Aの調製に適さない。
【0009】
(α,α,α)−トリフルオロトルエン及びHCl中での3−エチニルアニリンと4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンとの縮合反応によるエルロチニブ塩酸塩多形Eの調製法が米国特許出願公開第2004/0162300号に開示されている。多形Eは、XRPD、IR及び融点により特徴づけられている。しかし、(α,α,α)−トリフルオロトルエンは高度に可燃性で環境にとって危険な溶媒であり、商業的生産には適さない。
【0010】
エルロチニブ塩基と水性又は気体HClとの反応によるエルロチニブ塩酸塩多形Aの調製法が米国特許出願公開第2009/0131665号に開示されている。この方法では、トルエン、トルエンとメタノールとの混合物、TBME、酢酸エチル、1−ブタノール又はMIBKが溶媒として使用されている。しかし、DCM、ジエチルエーテル、酢酸イソプロピルを溶媒として使用すると、多形Bが形成された。実際、開示の方法は一貫性がなく多形混合物を生じることが判明している。特に、米国特許出願公開第2009/131665号の実施例1を実施すると、エルロチニブ塩酸塩がわずか97%の純度で得られた。その上、XRPD分析は、実施例においてB型、又はA型とB型との混合物が得られたことを示している。さらに、様々な溶媒及びその組み合わせを用いて実施例を実施して得られるエルロチニブ塩酸塩の結晶化では、ICHガイドラインに適合するのに十分純粋な生成物が得られないであろう。
【0011】
(好ましくは有機溶媒の不存在下で)水を溶媒として用いたエルロチニブ塩酸塩の結晶化を含むエルロチニブ塩酸塩の水和物の調製法が米国特許出願公開第20080167327号に開示されている。この特許には、半水和物のI型及びII型多形の調製法も開示されている。
【0012】
有機溶媒に溶解させたエルロチニブ塩基と水性又は気体HClとの反応によるエルロチニブ塩酸塩多形M、N及びPの調製法が国際公開第2008/102369号パンフレットに開示されている。
【0013】
溶媒としてのイソプロピルアルコール及び塩基としてのピリジン中での4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリンと3−エチニルアニリンとの縮合反応によるエルロチニブ塩酸塩の調製法がMolecules Journal(2006年11巻286貢)に開示されている。しかし、多形に関する詳細は開示されていない。
【0014】
残留量のイソプロパノールを含有する固体エルロチニブ塩基上に塩酸ガスを通過させることを含むエルロチニブ塩酸塩多形Aの調製法が国際公開第2010/040212号パンフレットに開示されている。しかし、実際には、この方法では化学的又は多形的に純粋な生成物が得られないことが判明している。溶媒としてのIPA中でのエルロチニブ塩基と気体HClとの反応によりエルロチニブ塩酸塩を調製する、国際公開第2010/040212号パンフレットの実施例1(8ページ)を実施すると、多形Aと多形Bとの混合物が得られた(XRPDにより確認)。
【0015】
酸性条件下で4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリンと3−エチニルアニリン又は3−エチニルアニリン酸性塩とを反応させて対応するエルロチニブ塩を形成させる、エルロチニブ酸性塩の調製法が米国特許出願公開第2010/0094004号に開示されている。反応を完了させるのに数時間(6時間)の還流が必要であり、そのためこの方法は費用効率のよい方法ではない。さらに、実際には、この方法では化学的又は多形的に純粋な生成物が得られないことが判明している。
【0016】
エルロチニブ塩基多形G1、G2及びG3の調製法が国際公開第2009/002538号及び第2010/05924号パンフレットに開示されている。
【0017】
【化3】
【0018】
エルロチニブ塩酸塩の調製法は米国特許出願公開第2009/0306377号に開示されている。スキーム2に示された方法では、6,7−ジメトキシ−4(3H)−キナゾロン(5)を臭化水素酸又はピリジン塩酸で処理して6,7−ジヒドロキシ−4(3H)−キナゾロン(6)を得、6,7−ジヒドロキシ−4(3H)−キナゾロン(6)を無水酢酸でジアセチル化してジエステル(7)を得、それを塩化オキサリル/DMFで処理して4−クロロ−6,7−ジアセトキシキナゾリン(8)を得る。化合物(8)を3−エチニルアニリンと縮合してN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ジヒドロキシ−4−キナゾリナミン塩酸塩(9)を得、それをアンモニア水/メタノールで処理してジオールN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ジヒドロキシ−4−キナゾリナミン(10)に変換する。ジオール(10)を2−ヨードエチルメチルエーテルで処理して化合物(4)を得、それをHClで処理してエルロチニブ塩酸塩(1)とする。しかし、この調製法は、合成経路が長く、低収率であり、ピリジン、HBrのような非常に毒性の高い試薬、及び無水酢酸のような規制試薬を必要とする。そのため、この調製法は大規模生産には適さない。
【発明の目的】
【0019】
エルロチニブ及びその塩の調製のための上述の先行技術の方法は、化学的及び多形的不純物の形成・除去、有害な反応物質の使用による低い実用性、カラムクロマトグラフィーなどの高価で時間のかかる分離法、及び/又は最終及び中間生成物の低い収率・純度に関する重大な欠点を有する。
【0020】
エルロチニブ塩酸塩の商業的生産は癌の治療にとって非常に重要であるため、先行技術に関連する上記欠点を考慮すると、複数のステップを含まず、(特に化学的及び多形的不純物を除去するための)厄介な精製技術を必要としない、エルロチニブ塩酸塩の改善された代替的調製法が求められる。代替的方法は、経済的で高収率なものでなければならないし、エルロチニブ及びその塩が高度の化学的及び多形的純度で得られるものでなければならない。
【0021】
すなわち、本発明の目的は、先行技術で開示された方法よりも高純度及び高収率でエルロチニブ塩基及びその塩を調製する、改善された効率的な方法を開発することである。他の目的は、多形B及び他の多形を実質的に含まない、エルロチニブ塩酸塩多形Aの調製及び精製である。さらなる目的は、すべての化学的及び多形的不純物を含まないエルロチニブ及びエルロチニブ塩酸塩を提供することである。
【発明の概要】
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、上述の先行技術に関連する問題を回避して、非常に高い化学的及び多形的純度を有するエルロチニブ塩基及びその塩(例えば塩酸塩)の調製を可能とする新規な方法を開発した。
【0023】
すなわち、本発明の第一の態様は、エルロチニブ塩基又はその塩の調製方法であって、反応溶媒中で4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンと3−エチニルアニリンとを反応させるステップを含み、反応混合物は外部酸又は塩基を含有しない、方法を提供する。
【0024】
本明細書において、「外部(の)酸又は塩基」は、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン、3−エチニルアニリン、反応溶媒、それらの任意の反応生成物及びそれらの中の任意の不純物以外の任意の酸又は塩基を指す。好ましくは、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン及び/又は3−エチニルアニリンは遊離塩基の形態で使用され、酸付加塩の形態では使用されない。
【0025】
本明細書において、「不純物」は、反応混合物中に1%(w/w)未満の量で存在する任意の物質を指す。好ましくは、不純物は、反応混合物中に0.5%(w/w)未満、0.2%(w/w)未満又は0.1%(w/w)未満の量で存在する。より好ましくは、不純物は、反応混合物中に0.05%(w/w)未満又は0.01%(w/w)未満の量で存在する。
【0026】
本発明の第一の態様の一実施形態において、「酸」は、pK(対水)が0未満の任意の化合物又はイオンを指す。場合により、「酸」は、pKが5未満又は10未満の任意の化合物又はイオンを指す。
【0027】
同様に、「塩基」は、その共役酸のpK(対水)が9を超える任意の化合物又はイオンを指す場合がある。場合により、共役酸のpKは5を超えるか0を超える。
【0028】
酸及び共役酸のpK値は、例えばJ.Marchの「Advanced Organic Chemistry」第4版(1992年)、250〜252貢の表8.1から当技術分野で公知である。
【0029】
本発明の第一の態様の他の実施形態において反応溶媒は酸又は塩基ではない。
【0030】
反応溶媒は、非極性溶媒、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、又はそれらの混合物であってもよい。好ましくは、反応溶媒は極性プロトン性溶媒である。
【0031】
本発明の第一の態様の一実施形態において反応溶媒は2−プロパノールではない。
【0032】
第一の態様の他の実施形態において、本発明は、実質的に純粋なエルロチニブ塩基又はその実質的に純粋な塩の調製方法であって、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリンと3−エチニルアニリンとを反応溶媒中で反応させるステップを含み、反応混合物は外部酸又は塩基を含有しない、方法を提供する。
【0033】
好ましくは、本発明の第一の態様における反応溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールであり、より好ましくは、反応溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、又はそれらの混合物から選択される。より好ましくは、反応溶媒は、メタノール、エタノール、又はそれらの混合物から選択され、最も好ましくは、反応溶媒はメタノールである。
【0034】
本明細書において、「直鎖、分岐鎖又は環状アルコール」は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されている任意の直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素を指す。炭化水素はさらに置換されていてもよい。
【0035】
好ましくは、「直鎖、分岐鎖又は環状アルコール」は、ROH[式中、Rは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール又はアルキニルアリール基から選択される。]である。好ましくは、Rは、置換されていてもよいアルキル又はアリールアルキル基である。より好ましくは、Rは、置換されていてもよいC〜C20アルキル基であり、より好ましくは、Rは、置換されていてもよいC〜C12アルキル基である。好ましくは、ROHは一水素性である。
【0036】
本発明において、「アルキル」基は、直鎖又は分岐鎖であっても環状基を含んでもよい一価飽和炭化水素として定義される。アルキル基は、炭素骨格に少なくとも1個のヘテロ原子N、O又はSを含んでもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル及びn−ペンチル基である。好ましくは、アルキル基は直鎖又は分岐鎖であり、炭素骨格内に任意のヘテロ原子を含まない。好ましくは、アルキル基は、炭素原子を1〜12個含むアルキル基として定義されるC〜C12アルキル基である。より好ましくは、アルキル基は、炭素原子を1〜6個含むアルキル基として定義されるC〜Cアルキル基である。「アルキレン」基は、二価アルキル基として同様に定義される。
【0037】
「アルケニル」基は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個含み、直鎖又は分岐鎖であっても環状基を含んでもよい一価炭化水素として定義される。アルケニル基は、炭素骨格に少なくとも1個のヘテロ原子N、O又はSを含んでもよい。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブタ−1−エニル及びブタ−2−エニル基である。好ましくは、アルケニル基は直鎖又は分岐鎖であり、炭素骨格内に任意のヘテロ原子を含まない。好ましくは、アルケニル基は、炭素原子を2〜12個含むアルケニル基として定義されるC〜C12アルケニル基である。より好ましくは、アルケニル基は、炭素原子を2〜6個含むアルケニル基として定義されるC〜Cアルケニル基である。「アルケニレン」基は、二価アルケニル基として同様に定義される。
【0038】
「アルキニル」基は、炭素−炭素三重結合を少なくとも1個含み、直鎖又は分岐鎖であっても環状基を含んでもよい一価炭化水素として定義される。アルキニル基は、炭素骨格に少なくとも1個のヘテロ原子N、O又はSを含んでもよい。アルキニル基の例は、エチニル、プロパルギル、ブタ−1−イニル及びブタ−2−イニル基である。好ましくは、アルキニル基は直鎖又は分岐鎖であり、炭素骨格内に任意のヘテロ原子を含まない。好ましくは、アルキニル基は、炭素原子を2〜12個含むアルキニル基として定義されるC〜C12アルキニル基である。より好ましくは、アルキニル基は、炭素原子を2〜6個含むアルキニル基として定義されるC〜Cアルキニル基である。「アルキニレン」基は、二価アルキニル基として同様に定義される。
【0039】
「アリール」基は、一価芳香族炭化水素として定義される。アリール基は、炭素骨格に少なくとも1個のヘテロ原子N、O又はSを含んでもよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニル基である。好ましくは、アリール基は、炭素骨格内に任意のヘテロ原子を含まない。好ましくは、アリール基は、炭素原子を4〜14個含むアリール基として定義されるC〜C14アリール基である。より好ましくは、アリール基は、炭素原子を6〜10個含むアリール基として定義されるC〜C10アリール基である。「アリーレン」基は、二価アリール基として同様に定義される。
【0040】
本発明においては、基の組み合わせが一つの部分(moiety)をなし、例えばアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール又はアルキニルアリールと呼ばれる場合、該部分(moiety)が分子の残りの部分に結合する原子は最後に挙げられた基に含まれる。アリールアルキル基の典型的な例はベンジルである。
【0041】
本発明において、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール又はヒドロカルビル基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CI、−OH、−SH、−NH、−CN、−NO、−N、−COOH、−Rα−O−Rβ、−Rα−S−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−ORβ、−RαO−SO−Rβ、−Rα−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−Rβ、−RαO−SO−ORβ、−RαO−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−ORβ、−Rα−NRβ−SO−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−P(Rβ、−Rα−Si(Rβ、−Rα−CO−Rβ、−Rα−CO−ORβ、−RαO−CO−Rβ、−Rα−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−Rβ、−RαO−CO−ORβ、−RαO−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−ORβ、−Rα−NRβ−CO−N(Rβ、−Rα−CS−Rβ、−Rα−CS−ORβ、−RαO−CS−Rβ、−Rα−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−Rβ、−RαO−CS−ORβ、−RαO−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−ORβ、−Rα−NRβ−CS−N(Rβ、−Rβ、架橋置換基(例えば、−O−、−S−、−NRβ−、−Rα−)又はπ−結合置換基(例えば、=O、=S、=NRβ)のうちの少なくとも1種で置換されていてもよい。これに関連して、−Rα−は、独立して、化学結合、C〜C10アルキレン、C〜C10アルケニレン又はC〜C10アルキニレン基である。−Rβは、独立して、水素、非置換のC〜Cアルキル又は非置換のC〜C10アリールである。任意選択の置換基で置換されている親基の合計炭素原子数を計算する場合、好ましくは該任意選択の置換基を考慮に入れる。好ましくは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール又はアルキニルアリール基は架橋置換基で置換されていない。好ましくは、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール又はアルキニルアリール基はπ−結合置換基で置換されていない。好ましくは、置換されている基は置換基を1、2又は3個、より好ましくは1又は2個、より好ましくは1個含む。
【0042】
任意選択の置換基は保護されていてもよい。任意選択の置換基を保護するための適切な保護基は、例えばT.W.Greene及びP.G.M.Wutsの「Protective Groups in Organic Synthesis」(Wiley−Interscience、第4版(2006年))から当技術分野で公知である。
【0043】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態において、反応混合物は、
(a)4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン;
(b)3−エチニルアニリン;
(c)メタノール、エタノール及びそれらの混合物から選択される反応溶媒;及び
(d)それらの反応生成物及び不純物
からなる。
【0044】
より好ましくは、反応混合物は、
(a)4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン;
(b)3−エチニルアニリン;
(c)メタノール;及び
(d)それらの反応生成物及び不純物
からなる。
【0045】
本発明の第一の態様の一実施形態では、1〜100倍体積の反応溶媒が使用される、すなわち、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリン出発物質1gにつき1〜100mlの反応溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の反応溶媒が使用され、より好ましくは10〜30倍体積の反応溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の反応溶媒が使用される。
【0046】
本発明の第一の態様の他の実施形態では、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンに対して3−エチニルアニリン0.5〜5当量が使用される。好ましくは3−エチニルアニリン1〜2当量、より好ましくは1.05〜1.50当量が使用される。最も好ましくは3−エチニルアニリン約1.1当量が使用される。
【0047】
好ましくは、本発明の第一の態様の方法において反応混合物は加熱される。好ましくは、反応混合物は反応溶媒の還流温度前後で加熱されるか35〜40℃で加熱される。
【0048】
一実施形態において、反応混合物は10分間〜48時間加熱されてもよい。好ましくは、反応混合物は30分間〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間、最も好ましくは2時間〜4時間加熱される。
【0049】
一実施形態において、反応混合物は、第一の期間に35〜40℃の第一の温度に加熱され、その後、第二の期間に溶媒の還流温度前後に加熱される。好ましくは、第一の期間は5〜60分間であり、より好ましくは10〜30分間であり、最も好ましくは約15分間である。好ましくは、第二の期間は30分間〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間、最も好ましくは2時間〜3時間である。
【0050】
好ましくは、本発明の第一の態様の方法においてエルロチニブの塩は塩酸塩である。
【0051】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態において、エルロチニブ塩酸塩は反応混合物から結晶化及び/又は単離される。
【0052】
任意選択で、本発明の第一の態様の方法は、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップをさらに含む。好ましくは、エルロチニブの塩はエルロチニブ塩酸塩であり、これは反応混合物から結晶化及び/又は単離されたものであってもよい。
【0053】
塩基は、有機塩基(例えばアミン)であっても無機塩基(例えば、アンモニア、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩)であってもよい。好ましくは、塩基は炭酸塩又は重炭酸塩である。より好ましくは、塩基は、金属炭酸塩若しくは重炭酸塩、又は炭酸若しくは重炭酸アンモニウム、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムである。最も好ましくは、塩基は炭酸ナトリウムである。
【0054】
典型的には、塩基1〜10当量がエルロチニブの塩に対して使用されてもよい。好ましくは塩基1.5〜5当量が使用され、最も好ましくは塩基約2当量が使用される。
【0055】
本発明の第一の態様の一実施形態において、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは反応溶媒中で実施されてもよい。或いは他の溶媒が使用されてもよい。いずれの場合でも、エルロチニブの塩は溶媒に懸濁されても溶解されてもよい。好ましくは、エルロチニブの塩は溶媒に懸濁される。
【0056】
他の溶媒が使用される場合、溶媒は、非極性溶媒、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、又はそれらの混合物から選択されてもよい。好ましくは、溶媒は、極性プロトン性溶媒、例えば、水、又は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルコール、又はそれらの混合物である。直鎖、分岐鎖又は環状アルコールはC〜C20アルコールであってもよい。好ましくは、アルコールはC〜C12アルコール、より好ましくはC〜Cアルコール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、又はそれらの混合物である。
【0057】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態において、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは、メタノール及び/又はエタノールを含む溶媒中で実施される。任意選択で溶媒は水をさらに含む。
【0058】
特に好ましい実施形態において、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは、(a)メタノール及び/又はエタノールと、(b)任意選択で水と、からなる溶媒中で実施される。
【0059】
最も好ましくは、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは水とメタノールとの混合物中で実施される。
【0060】
エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップが、水と直鎖、分岐鎖又は環状アルコールとの混合物を含む溶媒中で実施される場合、水及びアルコールは1:19〜19:1の体積比で存在することが好ましい。より好ましくは、水及びアルコールは1:3〜3:1の体積比で存在する。最も好ましくは、水及びアルコールは約1:1の体積比で存在する。
【0061】
本発明の第一の態様の一実施形態では、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップにおいて、1〜100倍体積の溶媒が使用される、すなわち、エルロチニブの塩1gにつき1〜100mlの溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の溶媒、より好ましくは10〜30倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の溶媒が使用される。
【0062】
本発明の第一の態様の他の実施形態において、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは0〜100℃、好ましくは10〜50℃で、最も好ましくは25〜30℃で実施される。
【0063】
典型的には、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップは15分間〜24時間、より好ましくは30分間〜6時間、最も好ましくは約2時間実施されてもよい。
【0064】
好ましくは、本発明の第一の態様の方法においてエルロチニブ塩基は単離される。例えば、エルロチニブ塩基は、エルロチニブの塩を塩基で処理してエルロチニブ塩基を得るステップが実施される溶媒から結晶化により単離されてもよい。
【0065】
好ましくは、単離されたエルロチニブ塩基は、典型的には溶媒からの結晶化によりさらに精製され、ここでの溶媒は、好ましくは直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、又はそれらの混合物から選択され、最も好ましくは1−ブタノールである。
【0066】
或いは、単離されたエルロチニブ塩基は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C20アルコールである溶媒からの結晶化によりさらに精製されてもよい。好ましくは、溶媒は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C12アルコール又はC〜Cアルコール、例えば、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、溶媒は1−ブタノールである。
【0067】
単離されたエルロチニブ塩基が溶媒からの結晶化によりさらに精製される場合、結晶化は、単離されたエルロチニブ塩基を、エルロチニブ塩基が溶解するまで溶媒中で第一の温度で加熱し、その後、該溶液を第二の温度まで冷却して、精製したエルロチニブ塩基を結晶化させることにより行われてもよい。好ましくは、第一の温度は60〜100℃、より好ましくは80〜90℃である。好ましくは、第二の温度は−10〜40℃、より好ましくは25〜30℃である。
【0068】
任意選択で、単離されたエルロチニブ塩基は溶媒に溶解され、活性炭(activated charcoal)(activated carbonとしても知られる。)で処理された後、溶媒から結晶化される。
【0069】
好ましくは、単離されたエルロチニブ塩基が溶媒からの結晶化によりさらに精製される場合、1〜20倍体積の溶媒が使用される、すなわち、単離されたエルロチニブ塩基1gにつき1〜20mlの溶媒が使用される。より好ましくは3〜15倍体積の溶媒が使用され、最も好ましくは6〜8倍体積の溶媒が使用される。
【0070】
好ましくは、粗エルロチニブ塩基は、任意選択で活性炭を共存させて、65〜100℃で1−ブタノールに溶解することにより精製される。より好ましくは、ここでの温度は80〜90℃である。
【0071】
本発明の第一の態様の好ましい方法は、単離されたエルロチニブ塩基が任意選択で前述のようにさらに精製され、該エルロチニブ塩基が、溶媒中での水性HCl又は非水性HClとの反応によりエルロチニブ塩酸塩に変換される場合である。好ましくは、溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、又はそれらの混合物から選択され、最も好ましくは1−ペンタノールである。
【0072】
或いは、単離されたエルロチニブ塩基は任意選択で前述のようにさらに精製され、該エルロチニブ塩基は、溶媒中での水性HCl又は非水性HClとの反応によりエルロチニブ塩酸塩に変換されるが、溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜C20アルコールであってもよい。好ましくは、溶媒は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C12アルコール又はC〜Cアルコール、例えば、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、溶媒は1−ペンタノールである。
【0073】
単離されたエルロチニブ塩基が溶媒中での水性HCl又は非水性HClとの反応によりエルロチニブ塩酸塩に変換される場合、好ましくは1〜100倍体積の溶媒が使用される、すなわち、エルロチニブ塩基1gにつき1〜100mlの溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の溶媒、より好ましくは10〜30倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の溶媒が使用される。好ましくは、エルロチニブ塩酸塩は溶媒から結晶化される。
【0074】
一実施形態では、水性HClが使用される場合、単離されたエルロチニブ塩基は−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは5〜10℃でエルロチニブ塩酸塩に変換される。
【0075】
水性HClが使用される場合、好ましくは、水性HClの濃度は10〜50%(w/w)である。より好ましくは、濃度は20〜40%(w/w)、より好ましくは30〜38%(w/w)、最も好ましくは約35%(w/w)である。
【0076】
他の実施形態では、非水性HClが使用される場合、エルロチニブ塩基は−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは20〜25℃でエルロチニブ塩酸塩に変換される。
【0077】
非水性HClが使用される場合、それは気体として又は非水性溶液として使用されてもよい。好ましくは、非水性HClは、非水性溶液、例えば直鎖、分岐鎖又は環状アルコール中のHClの溶液である。任意選択で、エルロチニブ塩基をエルロチニブ塩酸塩に変換するために使用される溶媒と同じ溶媒が、HClを溶解するために使用される。
【0078】
HClが非水性溶媒に溶解される場合、典型的には、非水性溶媒中のHClの濃度は1〜50%(w/w)であってもよい。好ましくは、濃度は10〜30%(w/w)、より好ましくは15〜20%(w/w)、最も好ましくは16〜18%(w/w)である。
【0079】
好ましくは、単離されたエルロチニブ塩基は、5分間〜24時間、より好ましくは15分間〜6時間、より好ましくは30分間〜3時間、最も好ましくは約1時間の溶媒中での水性HCl又は非水性HClとの反応によりエルロチニブ塩酸塩に変換される。
【0080】
好ましくは、本発明の第一の態様の方法により得られたエルロチニブ塩酸塩は、溶媒からの結晶化によりさらに精製される。好ましくは、溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、又はそれらの混合物から選択され、最も好ましくは1−ペンタノールである。
【0081】
或いは、本発明の第一の態様の方法により得られたエルロチニブ塩酸塩は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C20アルコールから選択される溶媒からの結晶化によりさらに精製される。好ましくは、溶媒は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C12アルコール又はC〜Cアルコール、例えば、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、溶媒は1−ペンタノールである。
【0082】
エルロチニブ塩酸塩が溶媒からの結晶化によりさらに精製される場合、好ましくは1〜100倍体積の溶媒が使用される、すなわち、エルロチニブ塩酸塩1gにつき1〜100mlの溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の溶媒が使用され、より好ましくは10〜30倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の溶媒が使用される。
【0083】
一実施形態において、エルロチニブ塩酸塩は、−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは5〜10℃での溶媒からの結晶化によりさらに精製される。
【0084】
他の実施形態において、エルロチニブ塩酸塩は、20〜25℃での溶媒からの結晶化によりさらに精製される。
【0085】
好ましくは、エルロチニブ塩酸塩はA型多形として単離される。
【0086】
本発明において、エルロチニブ塩酸塩の「A型」多形は、Cuアノード、Kα=1.54056Å、Kα=1.54439Åを用いて測定した場合、5.6、6.2、7.5、8.0、8.7、9.8、11.3、13.3、15.1、15.5、16.2、17.0、18.4、18.9、19.5、21.2、21.3、22.4、22.7、23.5、24.2、24.6、25.4、26.2、26.6、27.1、29.2、30.0、30.7、32.8、34.4、36.2、37.4及び38.9±0.2°2θから選択される少なくとも3つの特徴的ピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを示す多形形態を指す。つまり例として、A型は、少なくとも特徴的ピーク5.6、9.8、18.9、22.7及び23.5±0.2°2θを含む粉末X線回折パターンを示す場合がある。
【0087】
好ましくは、A型は、5.6、6.2、7.5、8.0、8.7、9.8、11.3、13.3、15.1、15.5、16.2、17.0、18.4、18.9、19.5、21.2、21.3、22.4、22.7、23.5、24.2、24.6、25.4、26.2、26.6、27.1、29.2、30.0、30.7、32.8、34.4、36.2、37.4及び38.9±0.2°2θから選択される少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、又は34すべての特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0088】
したがって、本発明において、「A型」は、純度がより高いことはあるものの、実質的には国際公開第01/34574号パンフレットに記載の通りである。
【0089】
本発明の第二の態様は、エルロチニブ塩基の調製方法であって、
(a)メタノール及び/又はエタノールと、
(b)任意選択で水と、
からなる溶媒中でエルロチニブの塩を塩基と反応させるステップを含む方法を提供する。
【0090】
本発明の第二の態様の一実施形態において、塩基は、有機塩基(例えばアミン)であっても無機塩基(例えば、アンモニア、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩)であってもよい。好ましくは、塩基は炭酸塩又は重炭酸塩である。
【0091】
本発明の第三の態様は、エルロチニブ塩基の調製方法であって、少なくとも1種の極性プロトン性溶媒からなる溶媒中でエルロチニブの塩を炭酸又は重炭酸塩基と反応させるステップを含む方法を提供する。
【0092】
本発明の第三の態様の一実施形態において、溶媒は、水、又は直鎖、分岐鎖若しくは環状アルコール、又はそれらの混合物からなっていてもよい。
【0093】
好ましくは、直鎖、分岐鎖又は環状アルコールはC〜C20アルコールである。より好ましくは、アルコールはC〜C12アルコール、より好ましくはC〜Cアルコール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、直鎖、分岐鎖又は環状アルコールはメタノール及び/又はエタノールである。
【0094】
本発明の第二又は第三の態様のいずれにおいても、好ましい実施形態において溶媒は水及びメタノールからなる。
【0095】
本発明の第二又は第三の態様のいずれにおいても、エルロチニブの塩は溶媒に懸濁されても溶解されてもよい。好ましくは、エルロチニブの塩は溶媒に懸濁される。
【0096】
本発明の第二又は第三の態様のいずれにおいても、好ましい実施形態においてエルロチニブの塩はエルロチニブ塩酸塩である。
【0097】
任意選択で、エルロチニブの塩は本発明の第一の態様の方法により調製される。本発明の第二又は第三の態様の一実施形態において、溶媒は、本発明の第一の態様で使用された反応溶媒と同一である。或いは他の溶媒が使用されてもよい。
【0098】
本発明の第二又は第三の態様により使用される塩基が炭酸塩又は重炭酸塩である場合、好ましくは、塩基は、金属炭酸塩若しくは金属重炭酸塩又は炭酸アンモニウム若しくは重炭酸アンモニウム、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムである。最も好ましくは、塩基は炭酸ナトリウムである。
【0099】
典型的には、塩基1〜10当量がエルロチニブの塩に対して使用されてもよい。好ましくは塩基1.5〜5当量が使用され、最も好ましくは塩基約2当量が使用される。
【0100】
本発明の第二又は第三の態様の方法が、水と直鎖、分岐鎖又は環状アルコールとの混合物からなる溶媒中で実施される場合、水及びアルコールは1:19〜19:1の体積比で存在することが好ましい。より好ましくは、水及びアルコールは1:3〜3:1の体積比で存在する。最も好ましくは、水及びアルコールは約1:1の体積比で存在する。
【0101】
本発明の第二又は第三の態様の一実施形態では、1〜100倍体積の溶媒が使用される、すなわち、エルロチニブの塩1gにつき1〜100mlの溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の溶媒、より好ましくは10〜30倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の溶媒が使用される。
【0102】
本発明の第二又は第三の態様の他の実施形態において、該方法は0〜100℃、好ましくは10〜50℃、最も好ましくは25〜30℃で実施される。
【0103】
典型的には、本発明の第二又は第三の態様の方法は15分間〜24時間、より好ましくは30分間〜6時間、最も好ましくは約2時間実施されてもよい。
【0104】
好ましくは、エルロチニブ塩基は本発明の第二又は第三の態様の方法に従って単離される。例えば、エルロチニブ塩基は溶媒からの結晶化により単離されてもよい。
【0105】
本発明の第四の態様は、エルロチニブ塩基の調製方法であって、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C20アルコールを含む溶媒からエルロチニブ塩基を結晶化させるステップを含む方法を提供する。
【0106】
好ましくは、本発明の第四の態様の方法においてエルロチニブ塩基は精製される。
【0107】
本発明の第四の態様で使用されるエルロチニブ塩基は、任意選択で、本発明の第一〜第三の態様のいずれかの方法により調製されたものであってもよい。
【0108】
本発明の第四の態様の一実施形態において、溶媒は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C12アルコール又はC〜Cアルコール、例えば、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール又は1−オクタノールである。好ましくは、溶媒は1−ブタノールである。
【0109】
本発明の第四の態様の他の実施形態において、結晶化は、エルロチニブ塩基が溶解するまでエルロチニブ塩基を溶媒中で第一の温度で加熱し、その後、該溶液を第二の温度まで冷却して、精製したエルロチニブ塩基を結晶化させることにより実施されてもよい。好ましくは、第一の温度は60〜100℃、より好ましくは80〜90℃である。好ましくは、第二の温度は−10〜40℃、より好ましくは25〜30℃である。
【0110】
任意選択で、エルロチニブ塩基は溶媒に溶解され、活性炭(activated charcoal(activated carbonとしても知られる。))で処理された後、溶媒から結晶化される。
【0111】
本発明の第四の態様の他の実施形態では、結晶化のために1〜20倍体積の溶媒が使用される、すなわち、エルロチニブ塩基1gにつき1〜20mlの溶媒が使用される。より好ましくは3〜15倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは6〜8倍体積の溶媒が使用される。
【0112】
本発明の第四の態様の好ましい実施形態において、エルロチニブ塩基は、任意選択で活性炭を共存させて、1−ブタノールに65〜100℃で溶解することにより精製される。より好ましくは、ここでの温度は80〜90℃である。
【0113】
本発明の第一〜第四の態様のいずれにおいても、エルロチニブ塩基又はその塩は実質的に純粋であってもよい。
【0114】
本発明の第一〜第四の態様のいずれにおいても、一実施形態において、得られたエルロチニブ塩基又は塩のHPLC純度は97%を超え、より好ましくは98%を超え、より好ましくは99%を超え、より好ましくは99.5%を超え、より好ましくは99.8%を超え、最も好ましくは99.9%を超える。好ましくは、得られた塩は塩酸塩である。
【0115】
本発明において、HPLCの%純度は面積正規化法により測定される。
【0116】
エルロチニブ塩基が単離される場合、それは水和物として単離されてもよい。好ましくは、水和物は5%(w/w)以下の水分量を有する。
【0117】
他の実施形態では、エルロチニブ塩基が単離される場合、それは無水物として単離されてもよい。好ましくは、無水物は0.5%(w/w)以下の水分量を有する。より好ましくは、無水物は0.2%(w/w)以下の水分量を有する。
【0118】
本発明の第五の態様は、HPLC純度が99.0%を超え、より好ましくは99.5%を超え、より好ましくは99.8%を超え、最も好ましくは99.9%を超えるエルロチニブ塩基又はその塩を提供する。好ましくは、本発明の第五の態様において塩は塩酸塩である。
【0119】
本発明の第五の態様の一実施形態では、HPLC純度が99.80%以上であるエルロチニブ塩基が生成される。より好ましくは、HPLC純度が99.85%以上であるエルロチニブ塩基が生成され、最も好ましくは、HPLC純度が99.90%以上であるエルロチニブ塩基が生成される。
【0120】
本発明の第五の態様のエルロチニブ塩基は水和物であってもよい。好ましくは、水和物は5%(w/w)以下の水分量を有する。
【0121】
或いは、本発明の第五の態様のエルロチニブ塩基は無水物であってもよい。好ましくは、無水物は0.5%(w/w)以下の水分量を有する。より好ましくは、無水物は0.2%(w/w)以下の水分量を有する。
【0122】
本発明の第五の態様の他の実施形態では、HPLC純度が99.85%以上であるエルロチニブ塩酸塩が生成される。より好ましくは、HPLC純度が99.90%以上であるエルロチニブ塩酸塩が生成される。
【0123】
本発明の第六の態様は、A型エルロチニブ塩酸塩の調製方法であって、溶媒からエルロチニブ塩酸塩を結晶化させるステップを含む方法を提供する。
【0124】
任意選択で、エルロチニブ塩酸塩は、本発明の第一の態様の方法により調製されたエルロチニブ塩酸塩及び/又は本発明の第五の態様のエルロチニブ塩酸塩であってもよい。
【0125】
本発明の第七の態様は、A型エルロチニブ塩酸塩の調製方法であって、エルロチニブ塩基を溶媒に溶解するステップと、水性又は非水性HClと混合するステップと、溶媒からエルロチニブ塩酸塩を結晶化させるステップと、を含む方法を提供する。
【0126】
任意選択で、エルロチニブ塩基は、本発明の第一〜第四の態様のいずれかの方法により調製されたエルロチニブ塩基及び/又は本発明の第五の態様のエルロチニブ塩基であってもよい。
【0127】
本発明の第七の態様の一実施形態では、水性HClが使用される場合、エルロチニブ塩基は−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは5〜10℃でエルロチニブ塩酸塩に変換される。
【0128】
水性HClが使用される場合、好ましくは、水性HClの濃度は10〜50%(w/w)である。より好ましくは、濃度は20〜40%(w/w)、より好ましくは30〜38%(w/w)、最も好ましくは約35%(w/w)である。
【0129】
本発明の第七の態様の他の実施形態では、非水性HClが使用される場合、エルロチニブ塩基は−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは20〜25℃でエルロチニブ塩酸塩に変換される。
【0130】
非水性HClが使用される場合、非水性HClは気体として又は非水性溶液として使用されてもよい。好ましくは、非水性HClは、非水性溶液、例えば直鎖、分岐鎖又は環状アルコール中のHClの溶液である。任意選択で、HClを溶解するために使用される溶媒と同じ溶媒が、エルロチニブ塩基を溶解するために使用される。
【0131】
本発明の第七の態様の一実施形態では、HClが非水性溶媒に溶解される場合、HClの濃度は1〜50%(w/w)である。好ましくは、濃度は10〜30%(w/w)、より好ましくは15〜20%(w/w)、最も好ましくは16〜18%(w/w)である。
【0132】
好ましくは、エルロチニブ塩基を、5分間〜24時間、より好ましくは15分間〜6時間、より好ましくは30分間〜3時間、最も好ましくは約1時間、水性HCl又は非水性HClと反応させる。
【0133】
本発明の第六又は第七の態様の一実施形態において、溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、又はそれらの混合物から選択される、直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールである。最も好ましくは、溶媒は1−ペンタノールである。
【0134】
或いは、溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜C20アルコールであってもよい。好ましくは、溶媒は、直鎖、分岐鎖又は環状C〜C12アルコール又はC〜Cアルコール、例えば、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、又はそれらの混合物である。最も好ましくは、溶媒は1−ペンタノールである。
【0135】
本発明の第六又は第七の態様のいずれにおいても、他の実施形態において、1〜100倍体積の溶媒が使用される、すなわち、それぞれエルロチニブ塩酸塩又はエルロチニブ塩基1gにつき1〜100mlの溶媒が使用される。好ましくは5〜50倍体積の溶媒、より好ましくは10〜30倍体積の溶媒が使用される。最も好ましくは約20倍体積の溶媒が使用される。
【0136】
好ましくは、本発明の第六又は第七の態様のいずれにおいても、結晶化は−10〜40℃、より好ましくは0〜30℃、最も好ましくは5〜10℃で生じる。
【0137】
他の実施形態において結晶化は20〜25℃で生じる。
【0138】
エルロチニブ塩酸塩A型多形が、本発明の方法において単離される場合、それは、好ましくは3%(w/w)未満、より好ましくは2%(w/w)未満、より好ましくは1%(w/w)未満、最も好ましくは0.5%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む。
【0139】
エルロチニブ塩酸塩A型多形におけるB型又は他の多形形態の量はXRPDなどの技術により決定されてもよい。
【0140】
本発明の第五の態様のエルロチニブ塩酸塩は好ましくはA型である。好ましくは、本発明の第五形態のA型エルロチニブ塩酸塩は、3%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む。
【0141】
本発明の第八の態様は、3%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含むA型エルロチニブ塩酸塩を提供する。
【0142】
好ましくは、本発明の第五又は第八の態様のA型エルロチニブ塩酸塩は、2%(w/w)未満、より好ましくは1%(w/w)未満、最も好ましくは0.5%(w/w)未満のB型又は他の多形形態のエルロチニブ塩酸塩を含む。
【0143】
本発明の第九の態様は、本発明の第一〜第四、第六又は第七の態様のいずれかの方法により調製可能である又は調製された、エルロチニブ塩基又はその塩を提供する。
【0144】
本発明の第十の態様は、医薬における使用のための、本発明の第五、第八又は第九の態様のいずれかのエルロチニブ塩基又はその塩を提供する。例えば、エルロチニブ塩基又はその塩はタンパク質チロシンキナーゼを阻害するために使用されてもよい。
【0145】
本発明の第十一の態様は、本発明の上記態様のいずれかのエルロチニブ塩基若しくはその塩又は本発明の上記態様のいずれかの方法により調製されたエルロチニブ塩基若しくはその塩を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は少なくとも1種の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0146】
好ましくは、本発明の第十一の態様の医薬組成物は、少なくとも1種の他の有効成分との組み合わせを含むか、又は少なくとも1種の他の有効成分と組み合わせて使用するためのものである。好ましくは、少なくとも1種の他の有効成分は抗癌剤、好ましくはゲムシタビンである。
【0147】
本発明の第十二の態様は、タンパク質チロシンキナーゼの阻害が有効な疾患の治療又は予防に使用するための、本発明の第十の態様のエルロチニブ塩基若しくはその塩又は本発明の第十一の態様の医薬組成物を提供する。好ましくは、疾患は癌であり、より好ましくは、癌は肺癌又は膵臓癌である。
【0148】
本発明の第十三の態様は、タンパク質チロシンキナーゼの阻害が有効な疾患の治療又は予防用医薬を製造するための、本発明の第五又は第八〜第十の態様のいずれかのエルロチニブ塩基若しくはその塩の使用を提供する。好ましくは、疾患は癌であり、より好ましくは、癌は肺癌又は膵臓癌である。
【0149】
本発明の第十四の態様は、タンパク質チロシンキナーゼの阻害が有効な疾患の治療又は予防方法であって、それを必要とする患者に治療又は予防有効量の本発明の第五若しくは第八〜第十の態様のいずれかのエルロチニブ塩基若しくはその塩又は本発明の第十一の態様の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。好ましくは、疾患は癌であり、より好ましくは、癌は肺癌又は膵臓癌である。
【0150】
本発明の第十四の態様の好ましい実施形態において患者はホ乳類である。より好ましくは、患者はヒトである。
【0151】
本明細書において、「エルロチニブ」とは、特に断らない限り、エルロチニブ塩基、すなわちN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン及び/又はその塩、溶媒和物若しくは多形を意味する。
【0152】
同様に、「エルロチニブ塩基」は、特に断らない限り、その溶媒和物(例えば水和物)及び多形を含む。しかし、好ましくは、本発明においてエルロチニブ塩基は無水物及び/又は非溶媒和物である。
【0153】
同様に、「エルロチニブの塩」、例えばエルロチニブ塩酸塩は、特に断らない限り、その溶媒和物(例えば水和物)及び多形を含む。しかし、好ましくは、本発明においてエルロチニブの塩は無水物及び/又は非溶媒和物である。
【0154】
特に断らない限り、本発明の化合物は遊離塩基及び酸付加塩の両方の形態で使用することができる。本発明において、本発明の化合物の「塩」は酸付加塩であってもよい。酸付加塩は、好ましくは、適切な酸の薬学的に許容し得る非毒性付加塩である。酸としては、これらに限定されないが、例えば:無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸)又は他の無機酸(例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸、リン酸);又は有機酸、例えば、有機カルボン酸(例えば、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、リンゴ酸、ヒドロキシコハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、粘液酸又はガラクタル酸、グルコン酸、パントテン酸、パモ酸)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエン−p−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ショウノウスルホン酸)又はアミノ酸(例えば、オルニチン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸)が挙げられる。酸付加塩は一又は二酸付加塩であってもよい。好ましい塩は、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸又は有機酸の付加塩である。より好ましい塩は塩酸付加塩である。
【0155】
他の酸付加塩は、他の例えば薬学的に許容し得る酸付加塩の精製若しくは調製における中間体として働く可能性を有し、又は遊離塩基の同定、特徴づけ若しくは精製に有用であることから、薬学的に許容し得る酸付加塩に加えて他の酸付加塩も本発明に包含される。
【0156】
本発明においては、エルロチニブ又はその塩に含まれる化学的不純物及び/又は多形的不純物の量が3%(w/w)未満、好ましくは2%(w/w)未満、好ましくは1%(w/w)未満、好ましくは0.5%(w/w)未満、好ましくは0.2%(w/w)未満、最も好ましくは0.1%(w/w)未満である場合、エルロチニブ又はその塩は「実質的に純粋」である。
【0157】
念のために言うと、実施可能である限り、本発明の所定の態様の任意の実施形態は、本発明の同じ態様の他の任意の実施形態と組み合わせて実施されてもよい。加えて、実施可能である限り、本発明の任意の態様の任意の好ましい又は任意選択の実施形態は、本発明の他の任意の態様の好ましい又は任意選択の実施形態とみなされるべきであることも理解されよう。
【発明の詳細な説明】
【0158】
化学的に純粋で多形的に純粋なエルロチニブ及びエルロチニブ塩(例えば塩酸塩)の簡便な調製法が本発明により提供される。本発明の方法では、温和な条件及び低温が使用され、そのため多形相互変換の発生が最小限に抑制され、A型エルロチニブ塩酸塩が非常に高い多形純度で得られる。
【0159】
以下、本発明の方法の好ましい実施形態をより詳細に記載する。
【0160】
好ましくは、本発明は、エルロチニブ塩酸塩の調製方法であって、外部酸又は塩基を用いずにメタノール中で4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン(2)と3−エチニルアニリン(3)とを反応させることを含む方法を提供する。外部酸又は塩基は、先行技術の方法において触媒として使用されてきたものである。
【0161】
好ましくは、粗エルロチニブ塩基(4)の精製を1−ブタノールからの結晶化により行い、非常に高い収率及び純度で、ICHガイドラインに十分に適合した不純物プロファイルを有する生成物を得る。
【0162】
好ましくは、精製塩基(4)は、1−ペンタノール及び水性HCl(又は1−ペンタノールに溶解させた気体HCl)からの結晶化によりエルロチニブ塩酸塩(多形A)(1)に変換する。
【0163】
本発明の好ましい実施形態をスキーム3に示す。
【0164】
本発明の他の好ましい実施形態は、エルロチニブ塩酸塩(1)の調製方法であって、直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコール溶媒中で、外部の酸又は3−エチニルアニリンの酸性塩又は塩基を用いずに還流することによって、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン(2)と3−エチニルアニリン(3)との縮合反応を行うことを含む方法を提供する。
【0165】
本発明の他の好ましい実施形態では、得られた粗エルロチニブ塩酸塩(1)をメタノールなどの溶媒に懸濁させ、炭酸ナトリウムなどの塩基で処理して粗エルロチニブ塩基(4)を得る。必要な場合、水などの貧溶媒(anti solvent)を添加して粗エルロチニブ塩基を沈殿させることができる。エルロチニブ塩基は、典型的にはろ過、遠心分離などの公知の方法により単離する。
【0166】
エルロチニブ塩基を単離するために使用される塩基は、好ましくは炭酸ナトリウムであるが、任意の適切な塩基を代わりに使用してもよい。好ましい代わりの塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、アンモニア、ピリジン及びトリエチルアミンからなる群より選択される。
【0167】
【化4】
【0168】
好ましくは、粗エルロチニブ塩基(4)から純粋なエルロチニブ塩基(4)への精製は1−ブタノール/活性炭からの結晶化により行う。好ましくは、精製エルロチニブ塩基は99.9%を超えるHPLC純度で得られる。
【0169】
好ましくは、得られた精製エルロチニブ塩基は5%(w/w)を超えない水分量を有する。精製エルロチニブ塩基を65〜75℃で乾燥させて無水塩基を得てもよい。
【0170】
好ましくは、エルロチニブ塩酸塩A型多形は、適切な溶媒中の精製エルロチニブ塩基(4)と水性HCl又は気体HClとの反応により調製される。好ましくは、溶媒は1−ペンタノールである。好ましくは、エルロチニブ塩酸塩は99.9%を超えるHPLC純度で得られる。
【0171】
好ましくは、得られたエルロチニブ塩酸塩は実質的に純粋であり、多形B又は他の多形形態を含まない。
【0172】
エルロチニブ塩酸塩(1)を調製するための本発明の特に好ましい実施形態は下記ステップを含む。
(a)有機反応溶媒中で4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン(2)と3−エチニルアニリン(3)とを縮合して粗エルロチニブ塩酸塩(1)を得るステップ
(b)粗エルロチニブ塩酸塩(1)を塩基(例えば炭酸ナトリウム)で処理して粗エルロチニブ塩基(4)を得るステップ
(c)粗エルロチニブ塩基(4)を1−ブタノールから結晶化させて純粋なエルロチニブ塩基(4)を得るステップ
(d)精製エルロチニブ塩基(4)を1−ペンタノール中、水性HClで結晶化させてA型エルロチニブ塩酸塩を得るステップ
【0173】
好ましくは、ステップ(a)において、反応溶媒は直鎖、分岐鎖又は環状C〜Cアルコールである。最も好ましくは、溶媒はメタノールである。好ましくは5〜50倍体積、より好ましくは20倍体積の溶媒を使用する。
【0174】
好ましくは、3−エチニルアニリンを、25〜45℃、より好ましくは35〜40℃のメタノール中の4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンの溶液に添加する。
【0175】
好ましくは、3−エチニルアニリンをメタノール中の4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンの溶液に完全に添加した後、反応混合物を1〜5時間、より好ましくは2〜3時間加熱還流する。
【0176】
好ましくは、粗エルロチニブ塩酸塩を25〜30℃でろ過により単離する。
【0177】
好ましくは、塩基(例えば炭酸ナトリウム)を10〜40℃、より好ましくは25〜30℃で添加する。
【0178】
必要な場合、添加される貧溶媒(例えば水)の体積は、好ましくは5〜15倍体積、より好ましくは10倍体積である。
【0179】
好ましくは、単離された粗エルロチニブ塩基を40〜80℃、より好ましくは65〜70℃で減圧下乾燥する。
【0180】
好ましくは、乾燥された粗エルロチニブ塩基は、カールフィッシャー滴定(KF)により測定した場合に30%(w/w)を超えない、より好ましくは10%(w/w)を超えない水分量を有する。
【0181】
粗エルロチニブ塩基の精製は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1−ペンタノールなどのアルコール溶媒から選択される溶媒、最も好ましくは1−ブタノールからの結晶化により行う。
【0182】
最も好ましくは、粗エルロチニブ塩基の精製は、75〜80℃で6〜8倍体積の1−ブタノール及び活性炭を用いた結晶化により行う。
【0183】
好ましくは、精製エルロチニブ塩基の乾燥を、600mmHg〜50mmHgの減圧下、50〜100℃、より好ましくは65〜75℃で行って、5%(w/w)を超えない水分量(KFにより測定)を有するエルロチニブ塩基水和物を得る。
【0184】
本発明の他の実施形態では、得られた精製エルロチニブ塩基を65〜75℃で乾燥して、0.2%(w/w)を超えない水分量を有する無水形態のエルロチニブ塩基を得る。
【0185】
本発明の好ましい態様では、エルロチニブ塩基を、下記手順を用いてエルロチニブ塩酸塩に変換する。
(i)エルロチニブ塩基を1−ペンタノールに添加する。
(ii)水性HClを添加する。
(iii)混合物を攪拌する。
(iv)得られた固体を単離する。
【0186】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)において、エルロチニブ塩基を0〜30℃、より好ましくは5〜10℃で1−ペンタノールに添加する。好ましくは、1−ペンタノールは10〜30倍体積、より好ましくは20倍体積で使用する。
【0187】
好ましくは、ステップ(ii)において、塩酸を0〜30℃、より好ましくは5〜10℃で溶液に緩やかに添加する。使用される塩酸は、好ましくは、水性塩酸の形態、又は塩化水素気体若しくは1−ペンタノール中に溶解された塩化水素の形態である。好ましくは、塩酸は、0.25倍体積〜2倍体積の水性HCl、より好ましくは0.5倍体積の水性HClを使用する。典型的には、使用される水性HClの濃度はおよそ35%(w/w)である。好ましくは、塩酸添加の後、反応物を少なくとも1〜3時間、より好ましくは約1時間攪拌する。
【0188】
好ましくは、エルロチニブ塩酸塩を0〜30℃、より好ましくは5〜10℃でろ過により単離する。
【0189】
得られる白色結晶エルロチニブ塩酸塩多形Aは、ICHガイドラインに適合した不純物プロファイルを有する。得られるHPLC純度は、好ましくは99.5%を超え、より好ましくは99.8%を超え、最も好ましくは99.9%を超える。
【0190】
エルロチニブ塩酸塩のA型結晶多形をXRPDにより特徴づけると、XRPDパターン及び2θ値は、先行技術(例えば国際公開第01/34574号パンフレット)において特徴づけられたA型とよく一致するが、本発明のA型はより純粋である。
【0191】
本発明の医薬組成物は溶液又は懸濁液であってもよいが、好ましくは固体経口投与剤型である。好ましい本発明の経口投与剤型としては例えば錠剤、カプセル剤が挙げられ、所望によりコーティングされていてもよい。錠剤は、直接打錠、湿式造粒及び乾式造粒をはじめとする従来の技術により調製することができる。カプセル剤は、一般にはゼラチン材料から形成され、従来の方法で調製された賦形剤の顆粒を含むことができる。
【0192】
本発明の医薬組成物は、典型的には、充填剤、結合剤、崩壊剤及び滑沢剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬学的に許容し得る賦形剤を含み、任意選択で、着色剤、吸着剤、界面活性剤、皮膜形成剤及び可塑剤から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含む。
【0193】
固体医薬製剤が、コーティングされた錠剤の形態である場合、コーティングは少なくとも1種の皮膜形成剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリラートポリマー)から調製されてもよく、皮膜形成剤は、少なくとも1種の可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル)及び皮膜コーティングにおいて従来から使用されている他の薬学的補助物質(例えば、顔料、充填剤)を含んでもよい。
【0194】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、投与されるエルロチニブの量が1日にkgあたり0.1mg〜100mgになるように、1mg〜500mgの量のエルロチニブを含む単位投与剤型である。
【0195】
本発明の詳細、目的及び利点は、以下、非限定的な実施例により詳細に説明される。
【実施例】
【0196】
[実施例1:粗エルロチニブ塩基の調製]
4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン(50g、0.1598mol)をメタノール(900ml、18倍体積)に添加し、混合物を35〜40℃に加熱して均一懸濁液を得た。3−エチニルアニリン(20.6g、0.1758mol)をメタノール100ml(2倍体積)と混合して、4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)キナゾリンの均一懸濁液に、35〜40℃で15分間かけて滴下した。反応混合物の温度を60〜65℃に緩やかに上昇させて、2〜3時間保持した。反応物をTLC及びHPLCによりモニタリングした。反応混合物中の4−クロロ−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−キナゾリン含量が3%を超えていない場合には、反応混合物を25〜30℃に冷却して、粗エルロチニブ塩酸塩をろ過により単離した。ろ過ケークをメタノール100ml(2倍体積)で洗浄して吸引乾燥した。
【0197】
粗エルロチニブ塩酸塩の湿潤ケークを、25〜30℃で攪拌しながらメタノール500ml(10倍体積)に添加して、懸濁液を得た。炭酸ナトリウム(33.8g、0.3197mol)を25〜30℃の混合物に添加して、25〜30℃で1時間攪拌した。水500ml(10倍体積)を反応混合物に添加して、1時間攪拌した。粗エルロチニブ塩基をろ過により単離して吸引乾燥した後、25〜30℃の水250ml(5倍体積)に添加して、30分間攪拌した。エルロチニブ塩基をろ過により単離して、水50ml(1倍体積)で洗浄し、吸引乾燥して70gを湿潤ケークとして得た。この湿潤ケークを、100mmHgの減圧下、60〜65℃で3時間乾燥させて、エルロチニブ塩基63gをオフホワイト色の粉末として得た。
モル収率:100%
HPLC純度:>99%
【0198】
[実施例2:粗エルロチニブ塩基のさらなる精製]
粗エルロチニブ塩基60gを、25〜30℃で攪拌中の1−ブタノール480ml(8倍体積)に添加した。混合物を80〜85℃に加熱して透明溶液を得、80〜90℃で1時間保持した。溶液を25〜30℃に緩やかに冷却して、生成物をろ過により単離して、1−ブタノール120ml(2倍体積)で洗浄した。湿潤ケークを再度、1−ブタノール360ml(6倍体積)に添加し、混合物を80〜90℃に加熱して、透明溶液を得た。活性炭2.7g(ノリットB(Norit B))を透明溶液に添加して、80〜85℃で1時間保持した。反応混合物を80〜85℃のセライト(Celite)(登録商標)ベッドでろ過して、セライト(登録商標)ベッドを高温1−ブタノール1倍体積で洗浄した。ひとまとめにした母液を25〜30℃に緩やかに冷却して、1時間攪拌した。生成物をろ過により単離して、1−ブタノール120ml(2倍体積)で洗浄した。精製されたエルロチニブ塩基を減圧下(160mmHg)65〜75℃で8時間乾燥させて、35gを白色粉末として得た。
モル収率:58.3%
HPLC純度:99.9%
【0199】
[実施例3:エルロチニブ塩酸塩A型多形の調製]
エルロチニブ塩基115g(0.292mol)を25〜30℃の1−ペンタノール2300ml(20倍体積)に添加した。混合物を5〜10℃に冷却し、30分間攪拌して懸濁液を得た。35%(w/w)の濃度の水性塩酸57.5gを5〜10℃で滴下して、混合物を1時間攪拌した。生成物をろ過により単離して、1−ペンタノール230ml(2倍体積)で洗浄した。生成物を0〜60℃で減圧下(50mmHg)乾燥させて、エルロチニブ塩酸塩多形A 113gを白色固体として得た。
モル収率:90%
HPLC純度:99.85%
【0200】
B型多形又は他の多形形態のいずれも、XRPD(検出限界:0.2%(w/w);定量限界:0.4%(w/w))により生成物中に検出することはできなかった。
【0201】
[実施例4:エルロチニブ塩酸塩A型多形の調製]
攪拌装置、サーモメーターポケット及び還流冷却器を具備した2.0リットル四ツ口丸底フラスコにおいて、1−ペンタノール420ml(エルロチニブ塩基に対して16.8倍体積)及びN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン(エルロチニブ塩基)25g(0.0635mol)を、攪拌しながら25〜30℃で充填した。その後、反応混合物を20〜25℃に冷却して懸濁液を得た。1−ペンタノール−HCl溶液(HCl気体を1−ペンタノールに16〜18%(w/w)のアッセイ濃度までスクラビングすることにより調製)30mlを、20〜25℃で15分間かけて滴下した。反応混合物をさらに1時間攪拌した。生成物をろ過により単離して、1−ペンタノール25mlで洗浄し、50〜55℃で減圧下(50mmHg)乾燥させてエルロチニブ塩酸塩多形A 25gを得た(乾燥による損失:0.5%未満)。
モル収率:91.5%
HPLC純度:>99.8%
【0202】
B型多形又は他の多形形態のいずれも、XRPD(検出限界:0.2%(w/w);定量限界:0.4%(w/w))により生成物中に検出することはできなかった。
【0203】
本発明に関する以上の説明が単なる例示的なものであることは理解されよう。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ規定され、本発明の範囲及び主旨を逸脱せずに様々な改良及び実施形態を行うことが可能である。