(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374441
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】安全なペンニードルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-119337(P2016-119337)
(22)【出願日】2016年6月15日
(62)【分割の表示】特願2010-546832(P2010-546832)の分割
【原出願日】2009年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-179226(P2016-179226A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】61/029,133
(32)【優先日】2008年2月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン リン リチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルアン ティエミン
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05964739(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0288607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全なペンニードルアセンブリであって、
遠位端、近位端、および前記近位端と前記遠位端との間に位置して開口を有する横断係合壁を有する管状のキャリアと、
患者に注入するための遠位端および近位端を有するニードルと、
前記ニードルがニードルハブと共に移動するように固定されたニードルハブであって、前記キャリアの中に保持される、該ニードルハブと、
前記ニードルの前記遠位端を選択的に覆うシールドと、
前記ニードルの前記近位端が前記横断係合壁の前記開口を貫通して延出する第1のハブ位置から、前記ニードルの前記近位端が前記横断係合壁の前記開口を貫通して延出しない第2のハブ位置に前記ニードルハブを進めるための第1の付勢手段と、
前記ニードルの前記遠位端が前記シールドによって覆われていない第1のシールド位置から、前記ニードルの前記遠位端が前記シールドによって覆われる第2のシールド位置へ前記シールドを進めるための第2の付勢手段と、
前記シールドを前記第1のシールド位置に解放可能に保持するためのロック固定手段とを備え、前記ロック固定手段を解放すると、前記第2の付勢手段が前記第1のシールド位置から前記第2のシールド位置に前記シールドを進め、
前記第1の付勢手段は、前記横断係合壁と前記ニードルハブとの間に配置され、
前記ニードルハブは、前記第1の付勢手段を保持するための第1の保持溝と、前記第2の付勢手段を保持するための第2の保持溝とを備えたことを特徴とする組立体。
【請求項2】
前記ロック固定手段は、
前記シールドから延出する戻り止めと、
前記戻り止めを受けるように構成された前記管状のキャリアの側壁上のロック固定開口と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記戻り止めは、前記第1のシールド位置において前記ロック固定開口に係合することを特徴とする請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記戻り止めは、前記第2のシールド位置において前記ロック固定開口から開放されることを特徴とする請求項2に記載の組立体。
【請求項5】
前記ロック固定開口は、トリガーアームに位置し、
前記トリガーアームは、トリガーボタンを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の組立体。
【請求項6】
前記トリガーボタンに押圧力が加えられたときに、前記トリガーアームは変位し前記ロック固定開口に前記戻り止めを解放させることを特徴とする請求項5に記載の組立体。
【請求項7】
前記シールドは、前記ニードルハブと、前記第1のハブ位置と前記第2のハブ位置との間に配置される前記第1の付勢手段とに対して作用する停止面を含むことを特徴とする請求項2に記載の組立体。
【請求項8】
前記管状のキャリアは、ガイドスロットを含み、
前記シールドは、ロック固定タブを含み、
前記ガイドスロットは、前記ロック固定タブを用いて前記シールドを前記第1のシールド位置と前記第2のシールド位置との間を移動させることができる
ことを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項9】
前記ニードルハブが前記第1のハブ位置にある場合、前記シールドは前記第1のシールド位置にあることを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記ニードルハブが前記第2のハブ位置にある場合、前記シールドは前記第2のシールド位置にあることを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項11】
前記ニードルハブの前記第1のハブ位置から前記第2のハブ位置への動きと、前記シールドの前記第1のシールド位置から前記第2のシールド位置への動きは、同時に動くことを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
前記第1の付勢手段が、前記第2の付勢手段を囲むことを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン型注射器用のペンニードルアセンブリに関し、より詳細には安全なペンニードルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
安全なペンニードルアセンブリは、従来技術において既知である。これらの組立体は、特に使用後、ニードルの遠位側、すなわち患者側のニードル端部をシールドするように構成されている。しかしながらペン注射ニードルは両端ニードルとなっており、薬剤カートリッジの内容物にアクセスするために薬剤カートリッジの隔壁(septum)に挿入する露出した近位端を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に従来技術は、ニードルの近位側、すなわち患者側でない方のニードル端部をシールドする機構は備えていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
遠位端、近位端、および近位端と遠位端の間に位置する横断係合壁を有する管状のキャリアを含む安全なペンニードルアセンブリが本明細書において提供される。係合壁は、近位方向に向いた外面と、係合壁を貫通するように形成された開口とを有する。さらに、患者に注入するための遠位端と、近位端とを有するニードルがニードルハブと共に提供される。ニードルは、ニードルハブと共に移動するようにニードルハブに固定され、ニードルハブは、係合壁の遠位方向でキャリアの中に配置される。組立体はまた、ニードルの遠位端を選択的に覆うためのシールドを有する。ニードルが係合壁の開口を貫通して延出する第1のハブ位置から、ニードルの近位端が係合壁の近位方向に向いた外面の遠位方向に位置する第2のハブ位置にニードルハブを進めるために第1の付勢要素が設けられる。さらに、ニードルの遠位端がシールドによって覆われていない第1のシールド位置から、ニードルの遠位端がシールドによって覆われる第2のシールド位置へシールドを進めるために第2の付勢要素が設けられる。
【発明の効果】
【0005】
有利には、本発明はペン注射ニードルの近位端と遠位端の両方をシールドする組立体を提供する。
【0006】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、以下の詳細な記載および添付の図面を検討することによってより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明によって形成される安全なペンニードルアセンブリの斜視図である。
【
図2】本発明によって形成される安全なペンニードルアセンブリの分解組立図である。
【
図3】シールド位置にある、本発明によって形成される安全なペンニードルアセンブリの側部立面図である。
【
図4】
図1の線4−4に沿って切り取った断面図である。
【
図5】
図1の線5−5に沿って切り取った断面図である。
【
図6】
図3の線6−6に沿って切り取った断面図である。
【
図7】
図3の線7−7に沿って切り取った断面図である。
【
図8】本発明と共に使用可能なキャリアの図である。
【
図9】本発明と共に使用可能なキャリアの図であり、
図8とは異なる方向から見た図である。
【
図10】本発明と共に使用可能なキャリアの図であり、
図8及び
図9とは異なる方向から見た図である。る。
【
図11】本発明と共に使用可能なシールドの図である。
【
図12】本発明と共に使用可能なシールドの図であり、
図11とは異なる方向から見た図である。
【
図13】本発明と共に使用可能なニードルハブの図である。
【
図14】本発明と共に使用可能なニードルハブの図であり、
図13とは異なる方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、使用する前の安全なペンニードルアセンブリ10が示されている。
図2によりはっきりと示されるように、組立体10は一般にキャリア12と、ニードル16が固定されたニードルハブ14と、シールド18と、第1の付勢要素20と第2の付勢要素22とを有する。組立体10の構成要素は、
図3に示されるように、ニードル16をシールドすることができるように協働するように配置される。
【0009】
図4〜
図10を参照すると、キャリア12は、概ね管状であり遠位端26から近位端28まで延在する側壁24を有する。キャリア12の内部にこれを横切るように係合壁30が配置される。係合壁30の中、好ましくはその中央に開口32が形成される。キャリア12をペン型注射器に取り外し可能に設置させる機構34(例えばねじおよび/またはルアコネクタ)をキャリア12が備えるのが好ましい。この機構34は係合壁30の近位方向に配置されるのがさらに好ましい。
【0010】
ニードル16はペン型注射器ニードルであり、患者に注入するための遠位端36を有する。ニードル16はまた、中に含まれる医療内容物へのアクセスを得る目的で、医療用カートリッジの隔壁を突き刺すのに使用することができる反対側の近位端38を有する。ニードル16がニードルハブ14と協調して移動するように、ニードル16がニードルハブ14に固定される。ニードル16が中に設置され固定される(例えば接着剤によって取付けられる)チャネル15(
図13および
図14)をニードルハブ14の中を貫通して形成することができる。
【0011】
図5〜
図8に最もよく示されるように、ニードルハブ14は、係合壁30の遠位方向に配置される。最初の状態では、
図4および
図5に示されるように、ニードル16は係合壁30の中に形成された開口32の中を貫通して延出している。最初の状態では、ニードル16の近位端38は、薬剤カートリッジの中への適切なアクセスを得るために薬剤カートリッジ内に十分に挿入されるような位置にある。組立体10を(例えば機構34を使用して)ペン注射器上に設置することによって薬剤カートリッジへのアクセスが得られ、ニードル16の近位端38をペン型注射器の中を近位方向に移動させ、関連するペン型注射器の中に収容された薬剤カートリッジの隔壁を突き刺すようにする。
【0012】
シールド18は、遠位端42および近位端44を有する本体40を含む。シールド18は、ニードル16の遠位端36を選択的に覆うように構成される。組立体10が最初の状態にある
図1、
図4および
図5に示されるように、シールド18はニードル16の遠位端36を覆っていない。シールド18が最初の状態にある場合、遠位端42の中にニードル16が中を通過することを可能にする開口19が形成される。シールド位置にある
図3、
図6および
図7を参照すると、シールド18はニードル16の遠位端36を覆っている。
【0013】
第1の付勢要素20および第2の付勢要素22はそれぞれ、コイルばねまたは圧縮ばねであるのが好ましい。他の既知の付勢要素を本発明と共に使用することもできる。
図4および
図5を参照すると、ニードルハブ14は最初の位置で示されており、ニードル16は係合壁30の開口32を貫通して延出している。さらに、最初の状態ではシールド18はニードル16の遠位端36を覆っていない。ニードルハブ14を最初の位置から第2のシールド位置に進めるために第1の付勢要素20が配置される。同様にシールド18を最初の位置から第2のシールド位置に進めるために第2の付勢要素22が配置される。
図6および
図7を参照すると、ニードルハブ14は第2のシールド位置で示されており、ニードル16の近位端38は係合壁30の近位方向に向いた面46の遠位方向に位置している。さらに第2の状態では、シールド18がニードル16の遠位端36を覆っている。このように、ニードル16の遠位端36と近位端38の両方がそれによって不慮にニードルが刺さる可能性を最小限にするために覆われる。
【0014】
好ましい配置では、第1の付勢要素20は、ニードルハブ14を係合壁30から離れるように遠位方向に進めるために係合壁30とニードルハブ14の間に配置される。
図14を参照すると、第1の保持溝50を備えてよいニードルハブ14の近位面48が示されている。
図4〜
図7に示されるように、第1の付勢要素20は第1の保持溝50の中に設置されることが可能である。第1の保持溝50は、第1の付勢要素20に円柱状の剛性を与えることができる。さらにシールド18をニードルハブ14から離れるように遠位方向に進めるために、ニードルハブ14とシールド18の間に第2の付勢要素22を配置することができる。
図13を参照すると、ニードルハブ14の遠位面54の中に、第2の付勢要素22を中に設置することができる第2の保持溝52が形成されている。遠位端42から近位方向に延在する保持環56をシールド18上に設けることができる。第2の付勢要素22は保持環56に外接してよい。
【0015】
ニードルハブ14およびシールド18を
図1、
図4および
図5に示されるように最初の状態に解放可能に保持するために、ロック固定構成を設けるのが好ましい。トリガー作動式のロック固定構成を使用することができ、作動するとニードルハブ14およびシールド18を最初の状態から解放させ、これにより
図3、
図6および
図7に示されるシールド状態に変位することを可能にする手動のトリガーが設けられる。
【0016】
図面を参照すると、ロック固定構成は、シールド18の本体40から延出するように形成された戻り止め58を有して設けることができる。
図4に示されるように、キャリア12の側壁24の中に戻り止め58を入れ子式に収容するように形成されたロック固定開口60が設けられる。戻り止め58およびロック固定開口60は、最初の状態にある組立体10と協働する位置にある。ロック固定開口60は、支点64のところで側壁24に単独で取付けられたトリガーアーム62上に位置している。支点64の近位方向のトリガーアーム62上にトリガーボタン66が位置している。
図4の矢印Fによって示されるようにトリガーボタン66に対して加えられる押圧力によって、トリガーボタン66がトリガーアーム62の支点64の近位方向に位置する部分を内側に偏向させ、これによりトリガーアーム62の支点64の遠位方向に位置する部分を外側に偏向させる。したがってトリガーボタン66に対して加えられる押圧力によって、トリガーアーム62を変位させ、その結果ロック固定開口60に戻り止め58を解放させることができる。止め具58とロック固定開口60が相互に係合することによって、第1の付勢要素20および第2の付勢要素22の進める力に逆らってシールド18を最初の状態に保持する保持力が与えられる。戻り止め58を解放することによって、第2の付勢要素22がシールド18を最初の状態からシールド状態に進めることが可能になる。
【0017】
シールド18はまた、最初の状態でニードルハブ14に対して作用する1つまたは複数の停止面68を備えることができる。
図4に示されるように、第1の付勢要素20の力を受けてニードルハブ14が最初の状態から遠位方向に移動するのを阻止するために停止面68を設け配置することができる。したがって戻り止め58がロック固定開口60内で受けられる場合、戻り止め58とロック固定開口60が互いに係合することによってニードルハブ14とシールド18両方の移動に対する抵抗をもたらす。戻り止め58とロック固定開口60は、第1の付勢要素20および第2の付勢要素22によって生成される集合的な力に抵抗するように構成される必要がある。
【0018】
組立体10にシールド18をシールド位置にロック固定するためにロック固定構成を設けることがさらに好ましい。
図5および
図7を参照すると、シールド18は1つまたは複数のロック固定タブ70を備えることができる。キャリア12の側壁24の中に、対応するガイドスロット72が形成される。ガイドスロットによってロック固定タブ70がその中を並進し、シールド18が遠位方向に移動することが可能になる。
図7に示されるように、ロック固定タブ70を入れ子式に受けるように形成されたスナップ式のロック固定穴74が、ガイドスロット72の遠位方向に位置している。第2の付勢要素22の力を受けて、ロック固定タブ70がロック固定穴74に嵌るように弾性式に押しやられ、これにより
図7に示されるようにシールド18をシールド位置にロック固定することができる。
【0019】
ニードルハブ14は、係合壁30から離れるようにニードルハブ14を進める第1の付勢要素20によってシールド位置にロック固定される必要はない。第1の付勢要素20の力を受けたニードルハブの許容できる遠位方向の移動を制限するために、側壁24から内側に向かって1つまたは複数の境界76が延在してよい。
図6に示されるように、境界76は、ニードル16の近位端38が係合壁30の近位方向に向いた面46の遠位方向に位置するように、ニードルハブ14を遠位方向に十分移動させることができるように配置されている。境界76を受けるためにシールド18内にバイパススロット78が形成される。このバイパススロット78によって、境界76に邪魔されずにシールド18が並進することが可能になる。
【0020】
シールド18は、ニードルハブ14がその最初の状態から遠位方向に再配置された場合シールド位置でニードル16の遠位端36を覆うように形成され配置される必要があることも理解される。換言するとニードル16の遠位端36は、最初の位置よりも係合壁30からさらに遠位方向に位置している。