【実施例】
【0030】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、例示的な実施形態を詳細に記載する。本発明の概念は、本明細書において述べられるこれら例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形で具体化され得る。記載を明確にするために既知の部分についての説明は省かれている。
【0031】
陽イオン基を有するモノマーの製造
製造例1
ジシクロペンタジエン10mL(0.074mmol)および1−アリルイミダゾール20.15mL(0.186mmol)が高圧反応器に加えられた。180℃で8時間撹拌後、分画(fractionation)およびカラムクロマトグラフィー(溶離液として酢酸エチル(EA)およびヘキサン(9:1)を使用して)により精製され、化合物(I)(無色透明の粘性の液体)が得られた。前記反応の合成経路は次のとおりである。
【化37】
【0032】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(1)が分析された。その結果は次のとおりである:
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ7.46(d,J=15.3,1H)、6.98(m,2H)、6.12(m,2H)、3.79(m,2H)、2.66(m,3H)、1.89(m,1H)、1.33(m,2H)、0.62(m,1H)。
【0033】
次いで、化合物(1)0.5g(2.87mmol)およびヨウ化メチル0.268mL(4.30mmol)が反応瓶に加えられた。室温(約25℃)で8時間撹拌後、真空蒸留により残存ヨウ化メチルが除去され、化合物(2)(黄色の粘性の液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化38】
【0034】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(2)が分析された。その結果は次のとおりである:
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ10.03(d,J=12.0Hz,1H)、7.42(m,2H)、6.21(m,2H)、4.19(m,5H)、2.74(m,3H)、1.99(m,1H)、1.41(m,2H)、0.67(m,1H)。
【0035】
製造例2
ジメチルホルムアミド(DMF)15mLが反応瓶に加えられた。次いで、水素化ナトリウム(NaH)1.7g(0.00427mol)が0℃で反応瓶に添加された。次いで、5−ノルボルネン−2−メタノール2.122g(0.0171mol)が0℃で反応瓶に添加された。撹拌後に、1−メチル−2−(クロロメチル)イミダゾール2g(0.0154 mol)が反応瓶に添加された。12時間の撹拌後、水が反応を停止させるために反応瓶に加えられ、そしてその後、反応物がジクロロメタンを用いて抽出された。濃縮後、反応物は分画により精製されて、化合物(3)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化39】
【0036】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(3)が分析された。その結果は次のとおりである:
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ6.90(s,2H)、6.10−5.76(m,2H)、4.59−4.81(m,2H)、3.71(s,3H)、3.51−3.00(m,2H)、2.86−2.69(m,2H)、2.33(m,1H)、1.84−1.66(m,1H)、1.41−1.10(m,2H)、0.47−0.43(m,1H)。
【0037】
次いで、化合物(3)2g(9mmol)が反応瓶に添加され、そしてジクロロメタン中に溶解された。次いで、ヨウ化メチル1mL(17mmol)が反応瓶に添加された。室温で12時間撹拌後、残存ヨウ化メチルおよび溶媒が除去され、化合物(4)(黄色の粘性液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化40】
【0038】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(4)が分析された。その結果は次のとおりである:
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ7.45(s,2H)、6.18−5.84(m,2H)、4.90(s,2H)、3.98(s,6H)、3.68−3.20(m,2H)、2.35(m,1H)、1.86−1.78(m,1H)、1.46−1.14(m,4H)、0.52−0.51(m,1H)。
【0039】
非イオン性基(non−ionic group)を有するモノマーの製造
製造例3
ジシクロペンタジエン13.4mL(0.1mmol)および1−オクテン36mL(0.23mmol)が高圧反応器に加えられた。240℃で12時間撹拌後、反応物は黄色懸濁物質を除去するために中性アルミナを用いてろ過された。次いで、反応物は分画により精製されて、化合物(5)(無色透明の粘性液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化41】
【0040】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(5)が分析された。その結果は次のとおりである:
1H NMR(300MHz,CDCl
3):δ6.08(m,1H,endo)、6.04(m,1H,exo)、5.90(m,1H,endo)、2.67−2.77(m,2H)、2.48(m,1H,exo)、1.97(m,1H,endo)、1.80(m,1H,endo)、1.14−1.38(m,11H)、0.82−0.90(m,3H)、0.43−0.50(m,1H,endo)
【0041】
架橋剤の製造
製造例4
2.73gの以下の物質:
【化42】
および
0.37gの以下の物質:
【化43】
が、モル比2:1で反応瓶に加えられた。次いで、ジメチルアセトアミド(DMAc)97gが反応瓶に添加された。100〜150℃で5〜10時間撹拌後、高分子架橋剤(1)が得られた。
【0042】
ポリマーの製造
実施例1
化合物(2)3.08g(9.74mmol)および化合物(5)0.19g(1.08mmol)が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比約9:1で窒素雰囲気下反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLがその反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(Grubbs’s solution)(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物はアセトン100mLで洗浄され、そしてその後固体が収集された。乾燥後、ポリマー(1)(以下の:
【化44】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化45】
で示される繰り返し単位と、を有し、前者の繰り返し単位と後者の繰り返し単位との比が約9:1であった)が得られた。ポリマー(1)の数平均分子量(Mn)は、約110000であり、ポリマー(1)の多分散指数(polydispersity index,PDI)は、約1.4であることが測定された。
【0043】
実施例2
実施例2が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約8:2としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(2)が得られた(ここで、以下の:
【化46】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化47】
で示される繰り返し単位との比は約8:2であった)。
【0044】
実施例3
実施例3が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約7:3としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(3)が得られた(ここで、以下の:
【化48】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化49】
で示される繰り返し単位との比は約7:3であった)。
【0045】
実施例4
実施例4が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約4:6としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(4)が得られた(ここで、以下の:
【化50】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化51】
で示される繰り返し単位との比は約4:6であった)。
【0046】
実施例5
実施例5が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約2:8としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(5)が得られた(ここで、以下の:
【化52】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化53】
で示される繰り返し単位との比は約2:8であった)。
【0047】
実施例6
化合物(4)3.53g(9.74mmol)および化合物(5)0.19g(1.08mmol)が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比約9:1で窒素雰囲気下、反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLが反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物はアセトン100mLで洗浄され、そしてその後、固体が収集された。乾燥後、ポリマー(6)(以下の:
【化54】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化55】
で示される繰り返し単位と、を有し、ここで、前者の繰り返し単位と後者の繰り返し単位との比は約9:1であった)を得た。
【0048】
実施例7
実施例7が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比を約6:4としたことを除き、実施例6と同じ方法で行なわれて、ポリマー(7)が得られた(ここで、(以下の:
【化56】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化57】
で示される繰り返し単位との比は約6:4であった)。
【0049】
実施例8
実施例8が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比を約3:7としたことを除き、実施例6と同じ方法で行なわれて、ポリマー(8)が得られた(ここで、(以下の:
【化58】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化59】
で示される繰り返し単位との比は約3:7であった)。
【0050】
実施例9
化合物(2)3.08g(9.74mmol)、化合物(5)0.19g(1.08mmol)およびジシクロペンタジエン12mg(0.097mmol)が、化合物(2)と化合物(5)とジシクロペンタジエンとのモル比約9:1:0.09で窒素雰囲気下、反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLが反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物は、アセトン100mLで洗浄され、そしてその後固体が収集された。乾燥後、ポリマー(9)(以下の:
【化60】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化61】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化62】
で示される繰り返し単位と、を有し、ここで、それぞれ繰り返し単位の比は順に約9:1:0.09であった)を得た。
【0051】
陰イオン交換膜の製造
実施例10
100重量部のポリマー(1)(実施例1で製造されたもの)が反応瓶に加えられ、そして667重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解された。次いで、10重量部の高分子架橋剤(1)(製造例4で製造されたもの)が反応瓶に添加された。次いで、反応物が、高速ホモジナイザー(high speed homogenizer)を用いて混合および分散され、そしてその後消泡されて、溶液が得られた。次いで、得られた溶液がスピンコーティングによりガラス基板上に塗布されて、コーティングが形成された。次いで、コーティングが、大部分の溶媒を除去するために、40〜150℃で焼成された。次いで、残存溶媒を除去するために、コーティングは120〜200℃で1〜6時間焼成された。次いで、コーティング中に溶媒が残存していないことを確実にするために、コーティングは水酸化カリウム水溶液中に室温で1.5時間浸漬され、続いて、脱イオン水中に室温で1.5時間浸漬された。乾燥後、陰イオン交換膜(1)が得られた。次いで、得られた陰イオン交換膜(1)のイオン伝導率(ionic conductivity)が測定された。その結果は表1に示されている。
【0052】
実施例11〜14
実施例11〜14が、ポリマー(1)をポリマー(2)〜(5)にそれぞれ置き換えたことを除き、実施例10と同じ方法でそれぞれ行なわれて、陰イオン交換膜(2)〜(5)が得られた。次いで、各陰イオン交換膜(2)〜(5)のイオン伝導率がそれぞれ測定された。その結果が表1に示されている。さらに、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(3)の降伏応力(yield stress)および破断応力(break stress)が測定された。結果が表2に示されている。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されているように、以下の:
【化63】
で示される繰り返し単位の、以下の:
【化64】
で示される繰り返し単位に対する割合が増大するにしたがって、陰イオン交換膜のイオン伝導率が向上した。
【0055】
実施例15
実施例15が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から7重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(6)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(6)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0056】
実施例16
実施例16が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から20重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(7)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(7)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0057】
実施例17
実施例17が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から25重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(8)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(8)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示されるように、高分子架橋剤の濃度が高くなるにしたがって、機械的強度(例えば降伏応力および破断応力)が向上した。表1および表2から明らかなように、本発明の陰イオン交換膜は、優れたイオン伝導率および機械的強度を示すものである。
【0060】
実施例18
100重量部のポリマー(6)(実施例6で製造されたもの)が反応瓶に加えられ、そして667重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解された。次いで、10重量部の高分子架橋剤(1)(製造例4で製造されたもの)が反応瓶中に添加された。次いで、反応物が、高速ホモジナイザーを用いて混合および分散され、そしてその後消泡され、溶液が得られた。次いで、得られた溶液がスピンコーティングによりガラス基板上に塗布されて、コーティングが形成された。次いで、コーティングが、大部分の溶媒を除去するために40〜150℃で焼成された。次いで、残存溶媒を除去するために、コーティングが120〜200℃で1〜6時間焼成された。次いで、コーティング中に溶媒が残存していないことを確実にするために、コーティングは水酸化カリウム水溶液中に室温で1.5時間、浸漬され、続いて脱イオン水中に室温で1.5時間浸漬された。乾燥後、陰イオン交換膜(9)が得られた。次いで、得られた陰イオン交換膜(9)のイオン伝導率および寸法安定性が測定された。結果が表3に示されている。
【0061】
実施例19〜20
実施例19および20が、ポリマー(6)をポリマー(7)または(8)にそれぞれ置き換えたことを除き、実施例18と同じ方法でそれぞれ行なわれて、陰イオン交換膜(10)および(11)が得られた。次いで、各陰イオン交換膜(10)および(11)のイオン伝導率および寸法安定性がそれぞれ測定された。結果が表3に示されている。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示されているように、以下の:
【化65】
で示される繰り返し単位の、以下の:
【化66】
で示される繰り返し単位に対する割合が増大するにしたがって、陰イオン交換膜のイオン伝導率が向上した。さらに、本発明の陰イオン交換膜は、高い寸法安定性も示した。
【0064】
このように、本発明のポリマーは、安定な陽イオン基が導入されたことによって高いイオン伝導率を示し、かつ同時に、非イオン性基の導入によって、高い溶解度、機械的強度および溶媒選択性を示している。
【0065】
開示された方法および物質に各種修飾および変化が加えられ得ることは、明らかであろう。本明細書の記載および実施例は単に例示を目的とするように意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示される。