特許第6374459号(P6374459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374459
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ポリマーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   C08G61/08
【請求項の数】18
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-176356(P2016-176356)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-119822(P2017-119822A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】104143989
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 邱董
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗端
(72)【発明者】
【氏名】蔡 政修
(72)【発明者】
【氏名】蘇 秋琿
(72)【発明者】
【氏名】陳 銘洲
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−513705(JP,A)
【文献】 特開2009−256654(JP,A)
【文献】 特開2017−119269(JP,A)
【文献】 Timothy J. Clark et.al.,A Ring-Opening Metathesis Polymerization Route to Alkaline Exchange Membranes: Development of Hydroxide-Conducting Thin Films from an Ammonium-Functionalized Monomer,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2009年 8月21日,V131 N36,P12888-12889,DEVELOPMENT OF HYDROXIDE-CONDUCTING THIN FILMS FROM AN AMMONIUM-FUNCTIONALIZED MONOMER
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/08
C08J 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位:
【化1】
(式中、R+は、
【化2】
であり、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
Xは、以下:
【化3】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−である)
であり、
1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
を含むポリマー。
【請求項2】
前記第1の繰り返し単位と前記第2の繰り返し単位との比が、1:99から99:1の間である請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、またはオクチルである請求項1または2記載のポリマー。
【請求項4】
2およびR3が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、またはオクチルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記第1の繰り返し単位が、以下:
【化4】
(式中、R+は、
【化5】
であり、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記第1の繰り返し単位が、以下:
【化6】
(式中、A-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
Xは、以下:
【化7】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−である)
であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記第2の繰り返し単位が、以下:
【化8】
である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーが、以下:
【化9】
で示される第3の繰り返し単位をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記第3の繰り返し単位と前記第1の繰り返し単位および前記第2の繰り返し単位の合計との比が、0.1:100から5:100の間である請求項8記載のポリマー。
【請求項10】
請求項1に記載のポリマーの製造方法であって、組成物を重合反応に付す工程を含み、前記組成物が、式(I)の構造を有する第1のモノマーと式(II)の構造を有する第2のモノマーとを含み、ここで式(I)および式(II)が、以下:
【化10】
(式中、R+は、
【化11】
であり、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
Xは、
【化12】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−である)であり、
1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
の構造である方法。
【請求項11】
前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとのモル比が、1:99から99:1の間である請求項10記載の方法。
【請求項12】
1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、またはオクチルである請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
2およびR3が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、またはオクチルである請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のモノマーが、以下:
【化13】
(式中、R+は、
【化14】
であり、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
である請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のモノマーが、以下:
【化15】
(式中、A-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であり、
Xは、
【化16】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であり、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−である)
であり、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基である)
である請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のモノマーが、以下:
【化17】
である請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、以下:
【化18】
で示される第3のモノマーをさらに含む請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第3のモノマーと前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの合計とのモル比が、0.1:100から5:100の間である請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は、電気透析精製(electrodialysis purification)、燃料電池、電気めっき、および食品産業などに広く用いられている。
【0003】
イオン交換膜は、膜本体となる負荷電基(negatively charged groups)または正荷電基(positively charged groups)を有するポリマー材と、電位または化学ポテンシャルの下で移動可能な(migratable)陽イオンまたは陰イオンと、を含む。陽イオン交換膜は、ポリマー上に固定された負荷電基と、移動可能な陽イオンとを有する。同様に、陰イオン交換膜は、ポリマー上に固定された正荷電基と、移動可能な陰イオンとを有する。一般に、イオン交換膜の特性は、固定されている荷電基の数、タイプおよび分布によって決まる。従来のポリマー材で作られた陰イオン交換膜は、従来のポリマー材が溶解性、機械的強度、および溶媒選択性に劣るために、イオン交換膜燃料電池への使用には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8223472号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のポリマー材は溶解性、機械的強度、および溶媒選択性に劣るため、従来のポリマーを利用するのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態において、第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位を含むポリマーが提供され、ここで、第1の繰り返し単位は、
【化1】
であってもよく、
第2の繰り返し単位は、
【化2】
であってもよく、
ここで、R+は、
【化3】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化4】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよく、Yは−、O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよい)であってもよく、
1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基であってもよい。
【0007】
本発明の別の実施形態において、上記ポリマーの製造方法が提供される。本実施形態の方法は、組成物を重合させる工程を含む。組成物は、特には、式(I)の構造を有する第1のモノマーと、式(II)の構造を有する第2のモノマーとを含み、ここで式(I)および式(II)は以下:
【化5】
(式中、R+は、
【化6】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化7】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよく、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよい)であってもよく、
1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基であってもよい)
の構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ポリマーおよびその製造方法を提供する。本発明のポリマーは、陽イオン基(例えば高度に安定な環状共役陽イオン基(cyclic conjugated cationic group)など)および非イオン性基(non−ionic group)(例えば長鎖基など)を有するポリマーであり得る。ポリマーの導電性を高めるために、化学構造のデザインにおいて、本発明のポリマーは陽イオン基をもつ繰り返し単位を有する。さらに、本発明のポリマーは、溶媒中に溶解される際に陽イオン基をもつポリマーの溶解性が低下してしまうことを防ぐために、非イオン性基をもつ繰り返し単位を有する。本発明の実施形態において、本発明のポリマーは、高い溶解性に加えて、向上された機械的強度および溶媒選択性を示す。
【0009】
例示的な実施形態を以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう多数の具体的な詳細が記載される。しかし、これらの具体的な詳細なしに、1つまたは複数の実施形態が実施されてもよいことは明らかであろう。
【0011】
本発明は、ポリマーおよびその製造方法を提供する。本発明のポリマーは、陽イオン基(例えば高度に安定な環状共役陽イオン基など)および非イオン性基(例えば長鎖基など)を有するポリマーであり得る。ポリマーの導電性を高めるために、化学構造のデザインにおいて、本発明のポリマーは陽イオン基をもつ繰り返し単位を有する。さらに、本発明のポリマーは、溶媒中に溶解される際に陽イオン基をもつポリマーの溶解性が低下してしまうことを防ぐために、非イオン性基をもつ繰り返し単位を有する。本発明の実施形態において、本発明のポリマーは、高い溶解性に加えて、向上された機械的強度および溶媒選択性を示す。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、本実施形態のポリマーは、第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位を含む。第1の繰り返し単位は、
【化8】
であってもよく、
ここで、R+は、
【化9】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化10】
(式中、iおよびjはそれぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよく、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよい)であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素、またはC1-8アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、もしくはオクチルなど)であってもよい。
【0013】
さらに、第2の繰り返し単位は、
【化11】
(式中、R1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、またはオクチルなど)であってもよい)
であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1の繰り返し単位は、
【化12】
(式中、R+は、
【化13】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化14】
(式中、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよく、iおよびjはそれぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよい)
であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基であってもよい)
であり得る。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、本発明のポリマーの分子量(例えば数平均分子量)は、約100000から250000の間である。
【0016】
本発明の一実施形態において、第2の繰り返し単位は、
【化15】
であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ポリマーの第1の繰り返し単位と第2の繰り返し単位との比は、所望のポリマーの特性が得られるように調整され得る。例えば、ポリマーの導電性および陰イオン交換能(anion exchange capacity)を高めるために、第1の繰り返し単位の第2の繰り返し単位に対する比は大きくされ得る。これとは反対に、ポリマーの溶解性、機械的強度、および溶媒選択性を高めるために、第1の繰り返し単位の第2の繰り返し単位に対する比の値は減少され得る。第1の繰り返し単位と第2の繰り返し単位との比は、約1:99から99:1の間であってもよく、例えば約10:90から90:10の間、約20:80から80:20の間、または約30:70から70:30の間であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、本発明のポリマーは、第3の繰り返し単位をさらに含んでいてもよく、ここで、第3の繰り返し単位は、
【化16】
であり得る。第1の繰り返し単位、第2の繰り返し単位、または第3の繰り返し単位において以下の
【化17】
によって示される部分は、他の第1の繰り返し単位、他の第2の繰り返し単位、または他の第3の繰り返し単位の以下の
【化18】
によって示される部分に結合される。さらに、第1の繰り返し単位、第2の繰り返し単位、および第3の繰り返し単位はランダムな方式で配列され得る。例えば、本発明のポリマーは以下の:
【化19】
で示される部分(moiety)、以下の:
【化20】
で示される部分、または以下の:
【化21】
で示される部分を有していてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第3の繰り返し単位と、第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位の合計との比は、約0.1:100から5:100の間であり得、例えば約0.5:100から4:100の間、または約0.5:100から3:100の間であってもよい。第3の繰り返し単位の導入により、ポリマーは、より優れた架橋度および機械的強度を備え得る。第3の繰り返し単位の、第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位の合計に対する比の値が高すぎると、ポリマーの架橋度および分子量が高くなりすぎて、ポリマーは、その後のプロセス溶媒に再溶解(redissolved)され得なくなる。
【0020】
本発明の一実施形態において、上述のポリマーの製造方法が提供される。本実施形態の方法は、組成物を重合反応、例えば開環メタセシス重合(ROMP)などに付す工程を含む。組成物は、式(I)の構造を有する第1のモノマーと、式(II)の構造を有する第2のモノマーとを含み得、ここで式(I)および式(II)は以下:
【化22】
(式中、R+は、
【化23】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化24】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよく、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよい)であってもよく、
1は、それぞれ独立してC1-8アルキル基であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素またはC1-8アルキル基であってもよい)
の構造である。また、重合反応のあいだに、触媒(例えば第1世代または第2世代のグラブス触媒など)がさらに用いられてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、第1のモノマーは、
【化25】
(式中、R+は、
【化26】
であってもよく、
-は、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、HCO3-、HSO4-、SbF6-、BF4-、H2PO4-、H2PO3-、またはH2PO2-であってもよく、
Xは、
【化27】
(式中、iおよびjは、それぞれ独立して0、または1から6までの整数であってもよく、Yは、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよい)
であってもよく、ならびに
2およびR3は、それぞれ独立して水素、またはC1-8アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、ヘプチル、もしくはオクチルなどであってもよい)
であり得る。
【0022】
さらに、第2のモノマーは、
【化28】
であり得る。
【0023】
本発明の一実施形態において、第1のモノマーと第2のモノマーとのモル比は、約1:99から99:1の間、例えば約10:90から90:10の間、約20:80から80:20の間、または約30:70から70:30の間などであり得る。
【0024】
また、本発明の一実施形態において、組成物は第3のモノマーをさらに含んでいてもよく、ここで第3のモノマーは、
【化29】
であり得る。第3のモノマーと、第1のモノマーおよび第2のモノマーの合計とのモル比は、約0.1:100から5:100の間、例えば約0.5:100から4:100の間、または約0.5:100から3:100の間などであり得る。
【0025】
本発明の一実施形態において、実施形態のポリマーは、イオン交換膜を製造するために用いられ得る。イオン交換膜を製造するための方法は、以下の工程を含む。先ず、前述のポリマーおよび架橋剤を含む組成物が準備される。組成物はさらに溶媒を含んでいてもよく、そして組成物は約5wt%から50wt%の間である固形分を有する。組成物中、架橋剤の重量比は、ポリマーの重量に対して約1wt%から30wt%の間(例えば約5wt%から30wt%の間、または約5wt%から25wt%の間など)であり得る。次いで、組成物は、混合および分散プロセスに付される。次いで、組成物が、コーティングを形成するために、基板(例えばガラス基板)上に塗布される。次いで、コーティングが、大部分の溶媒を除去するために焼成される。次いで、残留溶媒を除去するために、基板上に形成されたコーティングは、高温のオーブン中で焼成される。最後に、コーティングは水酸化カリウム水溶液、続いて脱イオン水に、順に1〜3時間ずつ浸漬される。乾燥後、本実施形態のイオン交換膜が得られる。
【0026】
架橋剤は、少なくとも2つのマレイミド基を有する化合物であり得る。例えば、架橋剤は2つのマレイミド基を有する化合物であってもよい。本発明の一実施形態において、2つのマレイミド基を有する化合物は、以下の:
【化30】
(式中、Zは、
【化31】
(式中、Y1は、単結合、−O−、−S−、−CH2−、もしくは−NHであってもよく、R4は、それぞれ独立して水素もしくはC1-4アルキル基であってもよく、n≧1であり、xは、1から12までの整数であってもよく、yおよびzは、それぞれ独立して1から5までの整数であってもよい)。
であってもよい)
であり得る。
【0027】
例えば、架橋剤は、
【化32】
であり得る。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態において、架橋剤は、少なくとも2つのマレイミド基を有する高分子架橋剤(polymeric cross−linking agent)であり得る。高分子架橋剤は、化合物(a)と化合物(b)との反応生成物であり得る。化合物(a)は、
【化33】
であり得、
ここで、Zは、
【化34】
(式中、Y1は、単結合、−O−、−S−、−CH2−、または−NH−であってもよく、R4は、それぞれ独立して水素またはC1-4アルキル基であってもよく、n≧1であり、xは、1から12までの整数であってもよく、yおよびzはそれぞれ独立して1から5までの整数であってもよい)
であってもよい。化合物(b)は、以下の式(III)または式(IV):
【化35】
(式中、R5は、それぞれ独立して水素またはC1-4アルキル基であり、R6は、それぞれ独立して水素またはC1-4アルキル基である)
で表される化合物であり得る。例えば、化合物(b)は、
【化36】
であってもよい。
【0029】
高分子架橋剤およびポリマーは相互侵入高分子網目(interpenetrating polymer network)を形成することができるため、機械的強度および寸法安定性(dimensional stability)が向上される。
【実施例】
【0030】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、例示的な実施形態を詳細に記載する。本発明の概念は、本明細書において述べられるこれら例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形で具体化され得る。記載を明確にするために既知の部分についての説明は省かれている。
【0031】
陽イオン基を有するモノマーの製造
製造例1
ジシクロペンタジエン10mL(0.074mmol)および1−アリルイミダゾール20.15mL(0.186mmol)が高圧反応器に加えられた。180℃で8時間撹拌後、分画(fractionation)およびカラムクロマトグラフィー(溶離液として酢酸エチル(EA)およびヘキサン(9:1)を使用して)により精製され、化合物(I)(無色透明の粘性の液体)が得られた。前記反応の合成経路は次のとおりである。
【化37】
【0032】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(1)が分析された。その結果は次のとおりである:1H NMR(300MHz,CDCl3):δ7.46(d,J=15.3,1H)、6.98(m,2H)、6.12(m,2H)、3.79(m,2H)、2.66(m,3H)、1.89(m,1H)、1.33(m,2H)、0.62(m,1H)。
【0033】
次いで、化合物(1)0.5g(2.87mmol)およびヨウ化メチル0.268mL(4.30mmol)が反応瓶に加えられた。室温(約25℃)で8時間撹拌後、真空蒸留により残存ヨウ化メチルが除去され、化合物(2)(黄色の粘性の液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化38】
【0034】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(2)が分析された。その結果は次のとおりである:1H NMR(300MHz,CDCl3):δ10.03(d,J=12.0Hz,1H)、7.42(m,2H)、6.21(m,2H)、4.19(m,5H)、2.74(m,3H)、1.99(m,1H)、1.41(m,2H)、0.67(m,1H)。
【0035】
製造例2
ジメチルホルムアミド(DMF)15mLが反応瓶に加えられた。次いで、水素化ナトリウム(NaH)1.7g(0.00427mol)が0℃で反応瓶に添加された。次いで、5−ノルボルネン−2−メタノール2.122g(0.0171mol)が0℃で反応瓶に添加された。撹拌後に、1−メチル−2−(クロロメチル)イミダゾール2g(0.0154 mol)が反応瓶に添加された。12時間の撹拌後、水が反応を停止させるために反応瓶に加えられ、そしてその後、反応物がジクロロメタンを用いて抽出された。濃縮後、反応物は分画により精製されて、化合物(3)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化39】
【0036】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(3)が分析された。その結果は次のとおりである:1H NMR(300MHz,CDCl3):δ6.90(s,2H)、6.10−5.76(m,2H)、4.59−4.81(m,2H)、3.71(s,3H)、3.51−3.00(m,2H)、2.86−2.69(m,2H)、2.33(m,1H)、1.84−1.66(m,1H)、1.41−1.10(m,2H)、0.47−0.43(m,1H)。
【0037】
次いで、化合物(3)2g(9mmol)が反応瓶に添加され、そしてジクロロメタン中に溶解された。次いで、ヨウ化メチル1mL(17mmol)が反応瓶に添加された。室温で12時間撹拌後、残存ヨウ化メチルおよび溶媒が除去され、化合物(4)(黄色の粘性液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化40】
【0038】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(4)が分析された。その結果は次のとおりである:1H NMR(300MHz,CDCl3):δ7.45(s,2H)、6.18−5.84(m,2H)、4.90(s,2H)、3.98(s,6H)、3.68−3.20(m,2H)、2.35(m,1H)、1.86−1.78(m,1H)、1.46−1.14(m,4H)、0.52−0.51(m,1H)。
【0039】
非イオン性基(non−ionic group)を有するモノマーの製造
製造例3
ジシクロペンタジエン13.4mL(0.1mmol)および1−オクテン36mL(0.23mmol)が高圧反応器に加えられた。240℃で12時間撹拌後、反応物は黄色懸濁物質を除去するために中性アルミナを用いてろ過された。次いで、反応物は分画により精製されて、化合物(5)(無色透明の粘性液体)が得られた。上記反応の合成経路は次のとおりである。
【化41】
【0040】
核磁気共鳴(NMR)分光法により化合物(5)が分析された。その結果は次のとおりである:1H NMR(300MHz,CDCl3):δ6.08(m,1H,endo)、6.04(m,1H,exo)、5.90(m,1H,endo)、2.67−2.77(m,2H)、2.48(m,1H,exo)、1.97(m,1H,endo)、1.80(m,1H,endo)、1.14−1.38(m,11H)、0.82−0.90(m,3H)、0.43−0.50(m,1H,endo)
【0041】
架橋剤の製造
製造例4
2.73gの以下の物質:
【化42】
および
0.37gの以下の物質:
【化43】
が、モル比2:1で反応瓶に加えられた。次いで、ジメチルアセトアミド(DMAc)97gが反応瓶に添加された。100〜150℃で5〜10時間撹拌後、高分子架橋剤(1)が得られた。
【0042】
ポリマーの製造
実施例1
化合物(2)3.08g(9.74mmol)および化合物(5)0.19g(1.08mmol)が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比約9:1で窒素雰囲気下反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLがその反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(Grubbs’s solution)(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物はアセトン100mLで洗浄され、そしてその後固体が収集された。乾燥後、ポリマー(1)(以下の:
【化44】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化45】
で示される繰り返し単位と、を有し、前者の繰り返し単位と後者の繰り返し単位との比が約9:1であった)が得られた。ポリマー(1)の数平均分子量(Mn)は、約110000であり、ポリマー(1)の多分散指数(polydispersity index,PDI)は、約1.4であることが測定された。
【0043】
実施例2
実施例2が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約8:2としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(2)が得られた(ここで、以下の:
【化46】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化47】
で示される繰り返し単位との比は約8:2であった)。
【0044】
実施例3
実施例3が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約7:3としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(3)が得られた(ここで、以下の:
【化48】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化49】
で示される繰り返し単位との比は約7:3であった)。
【0045】
実施例4
実施例4が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約4:6としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(4)が得られた(ここで、以下の:
【化50】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化51】
で示される繰り返し単位との比は約4:6であった)。
【0046】
実施例5
実施例5が、化合物(2)と化合物(5)とのモル比を約2:8としたことを除き、実施例1と同じ方法で行なわれて、ポリマー(5)が得られた(ここで、以下の:
【化52】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化53】
で示される繰り返し単位との比は約2:8であった)。
【0047】
実施例6
化合物(4)3.53g(9.74mmol)および化合物(5)0.19g(1.08mmol)が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比約9:1で窒素雰囲気下、反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLが反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物はアセトン100mLで洗浄され、そしてその後、固体が収集された。乾燥後、ポリマー(6)(以下の:
【化54】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化55】
で示される繰り返し単位と、を有し、ここで、前者の繰り返し単位と後者の繰り返し単位との比は約9:1であった)を得た。
【0048】
実施例7
実施例7が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比を約6:4としたことを除き、実施例6と同じ方法で行なわれて、ポリマー(7)が得られた(ここで、(以下の:
【化56】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化57】
で示される繰り返し単位との比は約6:4であった)。
【0049】
実施例8
実施例8が、化合物(4)と化合物(5)とのモル比を約3:7としたことを除き、実施例6と同じ方法で行なわれて、ポリマー(8)が得られた(ここで、(以下の:
【化58】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化59】
で示される繰り返し単位との比は約3:7であった)。
【0050】
実施例9
化合物(2)3.08g(9.74mmol)、化合物(5)0.19g(1.08mmol)およびジシクロペンタジエン12mg(0.097mmol)が、化合物(2)と化合物(5)とジシクロペンタジエンとのモル比約9:1:0.09で窒素雰囲気下、反応瓶に加えられた。次いで、ジクロロメタン30mLが反応瓶に添加された。次いで、グラブス溶液(9.2mg、ジクロロメタン6mL中に溶解)が30℃で反応瓶中にゆっくり添加された。4時間撹拌後、得られた反応物がエチルエーテル250mL中にゆっくり添加された。約30分の撹拌および濃縮後、反応物は、アセトン100mLで洗浄され、そしてその後固体が収集された。乾燥後、ポリマー(9)(以下の:
【化60】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化61】
で示される繰り返し単位と、以下の:
【化62】
で示される繰り返し単位と、を有し、ここで、それぞれ繰り返し単位の比は順に約9:1:0.09であった)を得た。
【0051】
陰イオン交換膜の製造
実施例10
100重量部のポリマー(1)(実施例1で製造されたもの)が反応瓶に加えられ、そして667重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解された。次いで、10重量部の高分子架橋剤(1)(製造例4で製造されたもの)が反応瓶に添加された。次いで、反応物が、高速ホモジナイザー(high speed homogenizer)を用いて混合および分散され、そしてその後消泡されて、溶液が得られた。次いで、得られた溶液がスピンコーティングによりガラス基板上に塗布されて、コーティングが形成された。次いで、コーティングが、大部分の溶媒を除去するために、40〜150℃で焼成された。次いで、残存溶媒を除去するために、コーティングは120〜200℃で1〜6時間焼成された。次いで、コーティング中に溶媒が残存していないことを確実にするために、コーティングは水酸化カリウム水溶液中に室温で1.5時間浸漬され、続いて、脱イオン水中に室温で1.5時間浸漬された。乾燥後、陰イオン交換膜(1)が得られた。次いで、得られた陰イオン交換膜(1)のイオン伝導率(ionic conductivity)が測定された。その結果は表1に示されている。
【0052】
実施例11〜14
実施例11〜14が、ポリマー(1)をポリマー(2)〜(5)にそれぞれ置き換えたことを除き、実施例10と同じ方法でそれぞれ行なわれて、陰イオン交換膜(2)〜(5)が得られた。次いで、各陰イオン交換膜(2)〜(5)のイオン伝導率がそれぞれ測定された。その結果が表1に示されている。さらに、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(3)の降伏応力(yield stress)および破断応力(break stress)が測定された。結果が表2に示されている。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されているように、以下の:
【化63】
で示される繰り返し単位の、以下の:
【化64】
で示される繰り返し単位に対する割合が増大するにしたがって、陰イオン交換膜のイオン伝導率が向上した。
【0055】
実施例15
実施例15が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から7重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(6)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(6)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0056】
実施例16
実施例16が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から20重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(7)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(7)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0057】
実施例17
実施例17が、使用する高分子架橋剤(1)の量を10重量部から25重量部に変更したことを除き、実施例12と同じ方法で行なわれて、陰イオン交換膜(8)が得られた。次いで、ASTM D882−02にしたがって、陰イオン交換膜(8)の降伏応力および破断応力が測定された。結果が表2に示されている。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示されるように、高分子架橋剤の濃度が高くなるにしたがって、機械的強度(例えば降伏応力および破断応力)が向上した。表1および表2から明らかなように、本発明の陰イオン交換膜は、優れたイオン伝導率および機械的強度を示すものである。
【0060】
実施例18
100重量部のポリマー(6)(実施例6で製造されたもの)が反応瓶に加えられ、そして667重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解された。次いで、10重量部の高分子架橋剤(1)(製造例4で製造されたもの)が反応瓶中に添加された。次いで、反応物が、高速ホモジナイザーを用いて混合および分散され、そしてその後消泡され、溶液が得られた。次いで、得られた溶液がスピンコーティングによりガラス基板上に塗布されて、コーティングが形成された。次いで、コーティングが、大部分の溶媒を除去するために40〜150℃で焼成された。次いで、残存溶媒を除去するために、コーティングが120〜200℃で1〜6時間焼成された。次いで、コーティング中に溶媒が残存していないことを確実にするために、コーティングは水酸化カリウム水溶液中に室温で1.5時間、浸漬され、続いて脱イオン水中に室温で1.5時間浸漬された。乾燥後、陰イオン交換膜(9)が得られた。次いで、得られた陰イオン交換膜(9)のイオン伝導率および寸法安定性が測定された。結果が表3に示されている。
【0061】
実施例19〜20
実施例19および20が、ポリマー(6)をポリマー(7)または(8)にそれぞれ置き換えたことを除き、実施例18と同じ方法でそれぞれ行なわれて、陰イオン交換膜(10)および(11)が得られた。次いで、各陰イオン交換膜(10)および(11)のイオン伝導率および寸法安定性がそれぞれ測定された。結果が表3に示されている。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示されているように、以下の:
【化65】
で示される繰り返し単位の、以下の:
【化66】
で示される繰り返し単位に対する割合が増大するにしたがって、陰イオン交換膜のイオン伝導率が向上した。さらに、本発明の陰イオン交換膜は、高い寸法安定性も示した。
【0064】
このように、本発明のポリマーは、安定な陽イオン基が導入されたことによって高いイオン伝導率を示し、かつ同時に、非イオン性基の導入によって、高い溶解度、機械的強度および溶媒選択性を示している。
【0065】
開示された方法および物質に各種修飾および変化が加えられ得ることは、明らかであろう。本明細書の記載および実施例は単に例示を目的とするように意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示される。