(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する受信装置の実施例を詳細に説明する。以下では、互いに位相が直交する複数の搬送波(以下、「キャリア」という)を用いて放送されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の信号である直交周波数分割多重信号(以下、「放送信号」と記載する)を受信する場合について説明する。
【0010】
また、以下では、受信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合の例について説明する。ただし、受信装置は、必ずしも移動体に搭載されることを要しない。
【0011】
まず、本実施例に係る受信装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施例に係る受信装置の構成を示すブロック図である。なお、
図1では、受信装置の特徴を説明するために必要な構成要素を示しており、一般的な構成要素についての記載を適宜省略している。
【0012】
図1に示すように、本実施例に係る受信装置1は、チューナ部3と、インパルス除去部4と、ガード合成処理部5と、FFT部6と、位相補正部7と、遅延プロファイル算出部8と、窓位置制御部9とを備える。また、受信装置1は、伝送路算出部10と、等化処理部11と、硬判定部12と、誤り訂正部13と、復調部14とを備える。
【0013】
チューナ部3は、アンテナ2から入力される放送信号をアンテナ2を介して取得する取得部である。かかるチューナ部3は、OFDM方式の放送信号、具体的には、放送内容を含む有効シンボルの後尾部分の複製であるガードインターバルが有効シンボルの先頭に付加された放送信号を受信する。また、チューナ部3は、受信した放送信号を検波・増幅し、アナログ信号からデジタル信号へ変換して、インパルス除去部4へ出力する。
【0014】
インパルス除去部4は、チューナ部3から入力された放送信号に含まれるインパルスノイズを除去する処理部である。ここで、インパルスノイズとは、たとえば雷や電装系の始動などによって発生する瞬間的な高周波ノイズである。
【0015】
たとえば、インパルス除去部4は、入力される放送信号の信号レベル(以下、単に「レベル」と記載する)が所定の閾値以上となる区間をインパルスノイズが含まれる区間として検出する。そして、インパルス除去部4は、検出した区間のデータを所定のデータ(たとえば、0)に置換する。これにより、放送信号からインパルスノイズを除去することができる。
【0016】
インパルス除去部4は、インパルスノイズ除去後の放送信号と、インパルスノイズが検出された区間を示す情報(以下、「ノイズ検出信号」と記載する)をガード合成処理部5へ出力する。このように、インパルス除去部4は、放送信号に含まれるインパルスノイズを検出するノイズ検出部の一例である。
【0017】
ガード合成処理部5は、インパルス除去部4から入力されるインパルスノイズ除去後の放送信号に対してガード合成処理およびガード置換処理を行う。かかるガード合成処理部5の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、ガード合成処理部5の構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、ガード合成処理部5は、ガード合成部51と、ガード置換部52とを備える。また、ガード置換部52は、第1置換処理部52aと、第2置換処理部52bとを備える。
【0019】
ガード合成部51は、ガードインターバルと有効シンボルの後尾部分とを合成することによって、放送信号の受信精度を向上させる。かかるガード合成部51が行うガード合成処理の内容について
図3を参照して説明する。
図3は、ガード合成処理の説明図である。
【0020】
図3に示すように、OFDM方式の放送信号は、マルチパス等に対する耐性を高めるため、放送内容を含む有効シンボルDの後尾部分Cの複製であるガードインターバルGが有効シンボルDの先頭に付加されている。
【0021】
ガード合成部51は、かかる放送信号が入力されると、まず、放送信号を1シンボル分、すなわち、有効シンボルDの区間長に相当する時間遅延させる。
【0022】
つづいて、ガード合成部51は、遅延前の放送信号の後尾部分Cと、遅延後の放送信号のガードインターバルGとを合成する。たとえば、ガード合成部51は、遅延前の放送信号の後尾部分Cと遅延後の放送信号のガードインターバルGとの平均値を合成後の後尾部分C’として生成する。
【0023】
このように、ガード合成部51は、チューナ部3によって受信された放送信号のガードインターバルGと、かかる放送信号の後尾部分Cとを合成するガード合成処理を行う。これにより、たとえば後尾部分Cにエラーが生じていたとしても、ガードインターバルGによってデータを補完することができるため、受信精度を向上させることができる。
【0024】
ところで、ガードインターバルGまたは後尾部分Cにインパルスノイズが含まれている場合、その部分は、前段のインパルス除去部4によって所定のデータ(たとえば、0)に置換されることとなる。このような場合、インパルス除去部4によって置換された本来のデータではない所定のデータが、本来のデータと合成されることとなるため、却って受信精度を低下させてしまうおそれがあった。
【0025】
そこで、ガード置換部52は、ガードインターバルGおよび後尾部分Cのうち、インパルスノイズが含まれていた方のデータ(すなわち、インパルス除去部4によってインパルスノイズが除去されたデータ)を他方のデータに置換するガード置換処理を行うこととした。
【0026】
まず、第1置換処理部52aは、ガードインターバルGが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータである場合に、かかるガードインターバルGを、所定時間遅延させた有効シンボルDの後尾部分Cと置き換える第1置換処理を行う。
【0027】
かかる第1置換処理の内容について
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
図4Aは、ガードインターバルGにインパルスノイズが含まれる場合の例を示す図である。また、
図4Bは、第1置換処理の説明図である。
【0028】
図4Aに示すように、受信した放送信号のガードインターバルGにインパルスノイズが含まれているとする。かかる場合、インパルス除去部4は、インパルスノイズを検出して除去するとともに、インパルスノイズが検出された区間を示すノイズ検出信号を第1置換処理部52aへ出力する。第1置換処理部52aは、かかるノイズ検出信号を参照して、ガード合成処理後のガードインターバルGが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータであるか否か、すなわち、インパルス除去部4によって所定のデータに置換された区間を含むものであるか否かを判定する。
【0029】
そして、第1置換処理部52aは、ガード合成処理後のガードインターバルGが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータであると判定すると、
図4Bに示すように、ガード合成処理後の放送信号のガードインターバルGを、所定時間(たとえば、1シンボル分)遅延させた放送信号の後尾部分Cと置き換えて出力する。
【0030】
これにより、ガードインターバルGを、かかるガードインターバルGよりもデータが確からしい後尾部分Cに置き換えることができる。
【0031】
第2置換処理部52bは、放送信号の後尾部分Cが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータである場合に、所定時間遅延させたガード合成処理後の放送信号の後尾部分Cを、放送信号のガードインターバルGと置き換える第2置換処理を行う。
【0032】
かかる第2置換処理の内容について
図5Aおよび
図5Bを参照して説明する。
図5Aは、有効シンボルDの後尾部分Cにインパルスノイズが含まれる場合の例を示す図である。また、
図5Bは、第2置換処理の説明図である。
【0033】
図5Aに示すように、受信した放送信号の後尾部分Cにインパルスノイズが含まれるとする。かかる場合、インパルス除去部4は、インパルスノイズを検出して除去するとともに、インパルスノイズが検出された区間を示すノイズ検出信号を第2置換処理部52bへ出力する。第2置換処理部52bは、かかるノイズ検出信号を参照して、有効シンボルDの後尾部分Cが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータであるか否かを判定する。言い換えれば、第2置換処理部52bは、ガード合成処理後の放送信号の後尾部分Cが、インパルス除去部4によって所定のデータに置換された区間を含む後尾部分Cを用いて生成されたものであるか否かを判定する。
【0034】
そして、第2置換処理部52bは、有効シンボルDの後尾部分Cが、インパルス除去部4によってインパルスノイズが検出・除去されたデータであると判定すると、
図5Bに示すように、所定時間(たとえば、1シンボル分)遅延させたガード合成処理後の放送信号の後尾部分Cを、遅延させていない放送信号のガードインターバルGと置き換えて出力する。
【0035】
これにより、ガード合成処理後の後尾部分Cを、かかる後尾部分Cよりもデータが確からしいガードインターバルGに置き換えることができる。
【0036】
したがって、インパルス除去部4によって置換された本来のデータではない所定のデータが本来のデータと合成されることによって却って受信精度を低下させてしまう事態を回避することができる。
【0037】
次に、上述したガード合成処理部5の回路構成例について
図6を参照して説明する。
図6は、ガード合成処理部5の回路構成例を示す図である。
【0038】
図6に示すように、ガード合成処理部5は、データ遅延部511と、検出信号遅延部512と、加算部513と、乗算部514と、第1セレクタ515と、第2セレクタ516と、第3セレクタ517とを備える。
【0039】
ここで、
図2に示すガード合成部51は、
図6に示す加算部513、乗算部514および第1セレクタ515に相当する。また、
図2に示す第1置換処理部52aおよび第2置換処理部52bは、それぞれ
図6に示す第2セレクタ516および第3セレクタ517に相当する。
【0040】
データ遅延部511は、入力される放送信号を所定時間(たとえば、1シンボル分)遅延させて、それぞれ加算部513、第2セレクタ516および第3セレクタ517へ出力する。
【0041】
検出信号遅延部512は、入力されるノイズ検出信号を所定時間(たとえば、1シンボル分)遅延させて、第3セレクタ517へ出力する。かかる検出信号遅延部512は、データ遅延部511と同じ時間だけノイズ検出信号を遅延させる。
【0042】
加算部513は、データ遅延部511から入力される遅延後の放送信号と、インパルス除去部4から入力される遅延前の放送信号とを加算して乗算部514へ出力する。乗算部514は、加算部513の加算結果を0.5倍に増幅して第1セレクタ515へ出力する。
【0043】
第1セレクタ515は、乗算部514から入力されるガード合成処理後の放送信号およびインパルス除去部4から入力されるガード合成処理前の放送信号の一方をイネーブル信号に基づき選択して出力する。
【0044】
イネーブル信号は、ガード合成処理後の放送信号を出力可能な区間を示す信号である。ここで、イネーブル信号について
図7を参照して説明する。
図7は、イネーブル信号の説明図である。
【0045】
図7に示すように、放送信号は、最も信号レベルが高い主波の他に、主波よりも時間的に早く到来する先行波や、主波よりも時間的に遅れて到来する遅延波などが混在した状態で受信される。イネーブル信号は、これら主波、先行波および遅延波の各ガードインターバルGが重複する区間を示す信号である。
【0046】
第1セレクタ515は、かかるイネーブル信号がHighの区間、つまり、主波、先行波および遅延波の各ガードインターバルGが重複する区間の場合にのみ、ガード合成処理後の放送信号を出力し、それ以外の区間についてはインパルス除去部4から入力される放送信号を出力する。これにより、隣接する他のシンボルの成分を用いてガード合成処理を行うことによって受信精度が低下することを防止することができ、後述する復調部14において放送信号を信頼性高く復調することが可能となる。
【0047】
なお、イネーブル信号は、たとえば後述する遅延プロファイル算出部8によって算出される遅延プロファイルに基づいて図示しないイネーブル信号生成部が生成してガード合成処理部5へ出力する。
【0048】
図6に戻り、第2セレクタ516について説明する。第2セレクタ516は、データ遅延部511から入力される遅延後の放送信号および第1セレクタ515から入力される放送信号の一方をイネーブル信号およびノイズ検出信号に基づき選択して出力する。
【0049】
具体的には、第2セレクタ516は、イネーブル信号およびノイズ検出信号がともにHighの場合、つまり、インパルス除去部4から入力されたデータが、主波、先行波および遅延波の各ガードインターバルGが重複する区間かつインパルスノイズが検出された区間のデータである場合には、データ遅延部511から入力されたデータ、すなわち、有効シンボルDの後尾部分Cを出力する。
【0050】
一方、第2セレクタ516は、イネーブル信号およびノイズ検出信号のいずれか一方のみがHighの場合またはイネーブル信号およびノイズ検出信号がともにLowの場合には、第1セレクタ515から入力されたデータ、つまり、ガードインターバルGを選択して出力する。このように、第2セレクタ516は、第1置換処理部52aに相当する。
【0051】
第3セレクタ517は、インパルス除去部4から入力される放送信号およびデータ遅延部511から入力される遅延後の放送信号の一方をイネーブル信号および遅延後のノイズ検出信号に基づき選択して出力する。
【0052】
具体的には、イネーブル信号および遅延後のノイズ検出信号がともにHighの場合、つまり、データ遅延部511から入力されたデータが、有効シンボルDの後尾部分Cであり、かつ、インパルスノイズが検出された区間である場合には、インパルス除去部4から入力されたデータ、つまり、ガードインターバルGを選択して出力する。
【0053】
一方、第3セレクタ517は、イネーブル信号および遅延後のノイズ検出信号のいずれか一方のみがHighの場合またはイネーブル信号および遅延後のノイズ検出信号がともにLowの場合には、データ遅延部511から入力されたデータ、つまり、有効シンボルDの後尾部分Cを選択して出力する。このように、第3セレクタ517は、第2置換処理部52bに相当する。
【0054】
このように、本実施例に係る受信装置1は、ガード置換部52を備えることにより、ガード合成処理を行った際に、インパルス除去部4によって置換された本来のデータではない所定のデータが本来のデータと合成されて受信精度が低下することを防止することができる。
【0055】
図1に戻り、FFT部6について説明する。FFT部6は、ガード合成処理部5から入力される放送信号をFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理することで、放送信号を時間領域における信号から周波数領域における信号へ変換する高速フーリエ変換部である。FFT部6は、FFT処理後の放送信号を位相補正部7へ出力する。
【0056】
FFT部6は、FFT処理を所定の処理区間(以下、「FFT窓」と記載する)ごとに実行するが、かかるFFT窓は、窓位置制御部9によって設定される。
【0057】
ここで、窓位置制御部9によって設定されるFFT窓の位置、すなわち、FFT処理の開始位置(以下、「FFT窓位置」と記載する)によって、FFT処理後の放送信号に位相回転が生じることがある。かかる点について
図8Aおよび
図8Bを参照して説明する。
図8Aは、FFT窓が適切な位置に設定された場合の例を示す図であり、
図8Bは、FFT窓が適切な位置よりも前方に設定された場合の例を示す図である。
【0058】
図8Aの左図に示すように、FFT窓位置が適切な位置、具体的には、有効シンボルDの先頭に設定された場合、
図8Aの右図に示すように、FFT処理後の放送信号に位相回転は生じない。一方、
図8Bの左図に示すように、FFT窓位置が有効シンボルDよりも前方に設定されると、
図8Bの右図に示すように、FFT処理後の放送信号に位相回転が生じる。
【0059】
上述したように、放送信号には、主波や先行波、遅延波が混在している。このため、たとえば主波の有効シンボルDの先頭位置に合わせてFFT窓位置を設定した場合、主波については位相回転が生じないが、先行波や遅延波において位相回転が生じる。したがって、これら主波、先行波、遅延波が混在する放送信号においては、FFT処理することによって位相回転が生じることとなる。先行波や遅延波の位置や数は時々刻々と変化し、FFT窓位置もFFT処理ごとに変化する。このため、異なる位相回転量の放送信号がFFT処理ごとに出力されることとなる。
【0060】
そこで、本実施例に係る受信装置1は、FFT部6の後段に位相補正部7を設けることとした。かかる位相補正部7が行う位相補正処理の内容について
図9を参照して説明する。
図9は、位相補正処理の説明図である。
【0061】
図9に示すように、FFT窓は、窓位置制御部9によってFFT処理ごとの最適な位置に設定され、FFT部6からは、FFT処理ごとに異なる位相回転量の放送信号が出力される。位相補正部7は、かかるFFT処理後の各放送信号の位相を補正して所定の基準位相と一致させる処理を行う。
【0062】
具体的には、位相補正部7は、FFT処理後の各放送信号の位相回転量が、一定周期で到来する基準位置(以下、「FFT窓基準位置」と記載する)においてFFT処理が行われたかのような位相回転量になるように、FFT処理後の各放送信号の位相を回転させる。これにより、FFT処理後の各放送信号の見かけ上の位相回転量を一致させることができる。
【0063】
このように、本実施例に係る受信装置1では、位相補正部7が、FFT処理後の放送信号の位相を補正して所定の基準位相と一致させることとした。
【0064】
これにより、たとえば、FFT処理後の放送信号からキャリア間干渉成分(以下、「ICI:Inter Carrier Interference」という)を除去するICIキャンセラを受信装置1に設けた場合にも、位相補正時にICIキャンセラを停止させる必要がなくなる。
【0065】
すなわち、従来においては、FFT処理後の放送信号を複数のバッファに順次記憶していき、そのうちの1つの放送信号の位相回転量と一致するようにその他の複数(たとえば、3つ)の放送信号の位相を補正して出力していた。この場合、出力される放送信号の位相回転量は、基準とされる放送信号の位相回転量によって変化することとなる。
【0066】
ICIキャンセラは、放送信号の変化に基づいてICI成分が含まれるかを推定して除去する。このため、位相補正後の放送信号の位相回転量がFFT処理ごとに変化すると、ICIキャンセラが正常に動作しないおそれがある。このような事情から、従来においては、位相回転補正時にICIキャンセラを停止させることによってICIキャンセラの誤動作を防止していた。
【0067】
これに対し、本実施例に係る受信装置1によれば、FFT処理ごとにFFT窓位置が変化しても位相補正部7からは一定の位相回転量の放送信号が出力されるようになるため、従来のように位相補正時においてもICIキャンセラを停止させる必要がなくなる。
【0068】
また、上記のように、従来においては複数の位相補正部を用いていたのに対し、本実施例に係る受信装置1では1つの位相補正部7のみを用いるため、回路規模を小さくすることもできる。
【0069】
さらに、本実施例に係る受信装置1によれば、位相補正部7を設けることにより、後述する遅延プロファイル算出部8(
図1参照)や伝送路算出部10が備えるLMS部112(
図20参照)の動作を最適化させることができるが、かかる点については、後述する。
【0070】
図1に戻り、遅延プロファイル算出部8について説明する。なお、
図1では、位相補正部7から出力される放送信号のうち、パイロット信号であるスキャッタード・パイロット信号(以下、「SP信号」と記載する)を「SP」で示し、データ信号を「data」で示している。
図1に示すように、データ信号は、等化処理部11へ入力され、SP信号は、遅延プロファイル算出部8および伝送路算出部10へそれぞれ入力される。
【0071】
遅延プロファイル算出部8は、位相補正部7から入力されるSP信号に基づき、放送信号に含まれる主波、先行波、遅延波といった到来波の到来時刻に関する情報である遅延プロファイルを生成して窓位置制御部9へ出力する。
【0072】
たとえば、遅延プロファイル算出部8は、位相補正部7から入力されたSP信号に基づき、放送信号の伝送路に関する伝達関数を算出する。つづいて、遅延プロファイル算出部8は、算出した伝達関数をIFFT(逆高速フーリエ変換:Inverse Fast Fourier Transform)することにより放送信号に含まれる各到来波の到来時刻を算出する。そして、遅延プロファイル算出部8は、主波の到来時刻を基準とする各到来波の遅延時間と各到来波のレベルを含んだ情報を遅延プロファイルとして窓位置制御部9へ出力する。
【0073】
ここで、上述したように、本実施例に係る受信装置1では、FFT部6の後段に位相補正部7を設けることにより、遅延プロファイル算出部8の動作を最適化することができる。かかる点について
図10A、
図10B、
図11Aおよび
図11Bを参照して説明する。
図10Aおよび
図10Bは、従来の遅延プロファイルの一例を示す図であり、
図11Aおよび
図11Bは、本実施例における遅延プロファイルの一例を示す図である。
【0074】
従来において位相補正を行う場合、FFT処理の開始位置(FFT窓位置)を基準として位相補正を行っていた。このため、たとえば
図10Aに示すように先行波が存在しない場合と、
図10Bに示すように先行波が存在する場合とで、遅延プロファイル上での各到来波の位置が変化していた。
【0075】
これに対し、本実施例に係る位相補正部7は、上述したように、一定周期で到来するFFT窓基準位置においてFFT処理が行われたかのような位相回転量になるように、FFT処理後の各放送信号の位相を回転させる。具体的には、このFFT窓基準位置は、遅延プロファイルの中心位置である。
【0076】
これにより、たとえば
図11Aに示すように先行波が存在しない場合と、
図11Bに示すように先行波が存在する場合とで、FFT窓位置が変化したとしても、遅延プロファイル上での各到来波の位置は変化しない。したがって、たとえばどの到来波が主波であり先行波であるかといった推定が容易になるなど、遅延プロファイル算出部8の動作を最適化することができる。
【0077】
遅延プロファイル算出部8によって算出された遅延プロファイルは、窓位置制御部9へ出力される(
図1参照)。ここで、窓位置制御部9の構成について説明する前に、従来のFFT窓の設定方法について
図12Aおよび
図12Bを参照して説明する。
図12Aは、遅延プロファイルの一例を示す図であり、
図12Bは、FFT窓位置の設定条件を示す図である。
【0078】
なお、
図12Aには、主波(1)の他に1つの先行波(4)および3つの遅延波(2),(3),(5)が存在する場合の例を示している。なお、各到来波に付された数字は、レベルの高い順を示している。
【0079】
図12Bに示すように、従来においては、シンボル間干渉がなるべく発生しないように、(a)「主波を必ず取り込む」、(b)「主波以外についてレベルの高い到来波から順に取り込む」、(c)「先行波を取りこぼさない」、(d)「遅延波をなるべく多く取り込む」といった設定条件に従ってFFT窓位置を設定する。これらの設定条件は、(a)〜(d)の順に優先度が高いものとする。
【0080】
たとえば、設定条件(a)に従うと主波(1)が選択され、設定条件(b)に従うと遅延波(2)、(3)、先行波(4)、遅延波(5)の順に選択される。また、設定条件(c)に従うと先行波(4)が選択され、設定条件(d)に従うと遅延波(2),(3),(5)の順に選択される。従来は、これらを総合的に判断してFFT処理の処理区間(FFT窓)に取り込む到来波を選択していた。なお、
図12Aに示す例では、主波(1)、遅延波(2)および先行波(4)を取り込むFFT窓が設定されている。
【0081】
しかしながら、従来の設定方法では、FFT窓位置を適切に設定することができない場合があった。かかる点について
図13を参照して説明する。
図13は、遅延プロファイルの他の一例を示す図である。
【0082】
たとえば、
図13に示す例の場合、従来は、主波(1)、レベルの高い遅延波(2)、(3)を選択したうえで、先行波(4)および遅延波(5)を比較し、よりレベルの高い先行波(4)を選択しようとして、
図13に示す実線の位置にFFT窓を設定していた。
【0083】
かかる場合、先行波(4)も遅延波(5)〜(8)もFFT窓内に取り込むことができないため、シンボル間干渉を起こす可能性が高い。
【0084】
たとえば、先行波(4)を取り込むことを諦めて、遅延波(5)〜(8)を取り込んだ方が受信精度が向上する場合があるが、状況によっては必ずしも受信精度が向上するとは限らない。
【0085】
そこで、本実施例に係る窓位置制御部9は、より確実にシンボル間干渉を発生させないように、FFT窓位置をステップトラック的に調整することとした。
【0086】
ここで、本実施例に係る窓位置制御部9の構成について
図14を参照して説明する。
図14は、窓位置制御部9の構成を示すブロック図である。
図14に示すように、窓位置制御部9は、窓位置設定部91と、窓位置調整部92とを備える。
【0087】
窓位置設定部91は、遅延プロファイル算出部8から遅延プロファイルが出力されるまでの間において、FFT窓位置の設定を行う処理部である。ここで、窓位置設定部91による窓位置設定処理の内容について
図15を参照して説明する。
図15は、窓位置設定処理の説明図である。
【0088】
図15に示すように、窓位置設定部91は、たとえばガード合成処理部5(
図1参照)から出力される放送信号を取得する。つづいて、窓位置設定部91は、取得した放送信号と、かかる放送信号を1シンボル分遅延させた信号との移動平均値を算出する。ここで、上述したように、ガードインターバルGは有効シンボルDの後尾部分Cの複製であるため、ガードインターバルGおよび後尾部分Cの部分において移動平均値が高くなる。
【0089】
そして、窓位置設定部91は、かかる移動平均値のピーク位置(以下、「ガード相関ピーク」と記載する)、すなわち、有効シンボルDの先頭位置をFFT窓位置として設定する。
【0090】
窓位置調整部92は、遅延プロファイル算出部8から遅延プロファイルが出力された後において、FFT窓位置の設定を行う処理部である。かかる窓位置調整部92は、前回設定されたFFT窓位置を、FFT窓の区間外に位置する到来波の強度に基づいて調整することによって今回のFFT窓位置を設定する窓位置調整処理を行う。
【0091】
ここで、窓位置調整部92が行う窓位置調整処理の内容について
図16A〜
図16Dを参照して説明する。
図16A〜
図16Dは、窓位置調整処理の説明図である。
【0092】
図16Aには、主波(1)の他に、1つの先行波(4)および4つの遅延波(2),(3),(5),(6)が存在し、前回の処理によって、主波(1)および遅延波(2),(3)を取り込むようにFFT窓位置が設定された場合の例を示している。また、先行波(4)および遅延波(5),(6)に付された数字は、これらの到来波のレベルを示している。
【0093】
窓位置調整部92は、まず、前回設定されたFFT窓の区間外に位置する到来波のレベルを用い、前回設定されたFFT窓を右方向(遅延側)に移動させる力と左方向(先行側)に移動させる力とをそれぞれ定義する。
【0094】
具体的には、FFT窓を右方向に移動させる力は、FFT窓に対して右方向にはみ出ている到来波のレベルの合計値であり、FFT窓を左方向に移動させる力は、FFT窓に対して左方向にはみ出ている到来波のレベルの合計値である。
【0095】
図16Aに示す場合では、前回設定されたFFT窓の右方向に遅延波(5),(6)がはみ出ており、これらのレベルはそれぞれ「20」および「5」であるため、FFT窓を右方向に移動させる力は、「25」となる。また、前回設定されたFFT窓の左方向には先行波(4)がはみ出ており、かかる先行波(4)のレベルは「15」であるため、FFT窓を左方向に移動させる力は、「15」となる。
【0096】
つづいて、窓位置調整部92は、算出した左右の力に基づいて、前回設定されたFFT窓の移動方向および移動量Δを算出する。具体的には、窓位置調整部92は、算出した左右の力のうち大きい方をFFT窓の移動方向として決定する。
図16Aに示す場合には、右方向に移動させる力の方が大きいため、窓位置調整部92は、FFT窓の移動方向を「右方向」に決定する。
【0097】
このように、窓位置調整部92は、FFT窓の区間よりも時間的に先行する到来波の強度と、FFT窓の区間よりも時間的に遅延する到来波の強度との大小関係に応じて、前回設定されたFFT窓位置を移動させる方向を決定する。
【0098】
また、窓位置調整部92は、算出した左右の力の差が大きいほどFFT窓の移動量Δを多くする。なお、上記のように移動量Δを多くすることでFFT窓の移動速度を速くする場合に限らず、たとえば移動量Δを固定量とし、左右の力の差が大きいほど更新間隔を短くすることによってFFT窓の移動速度を速くしてもよい。
【0099】
つづいて、窓位置調整部92は、上記のようにして仮決定した移動方向および移動量Δで、前回設定されたFFT窓を移動させたと仮定して(
図16B参照)、FFT窓を右方向に移動させる力および左方向に移動させる力を再び算出する。
【0100】
図16Bに示す場合には、仮移動後においても左右の力に変化はなく、移動前と同様に、FFT窓を右方向へ移動させる力の方が大きい。このように、移動の前後で力の方向が変わらない場合、窓位置調整部92は、仮移動後のFFT窓位置を今回のFFT処理のFFT窓位置として設定する。
【0101】
一方、移動方向および移動量Δを仮決定した後、左右の力を再び算出した結果、左右の力の大小関係が変化した場合について説明する。
【0102】
図16Cには、
図16Aに示した各到来波(1)〜(6)に加え、先行波(7)がさらに存在し、前回の処理によって、主波(1)、遅延波(2),(3)および先行波(7)を取り込むようにFFT窓位置が設定された場合の例を示している。
【0103】
窓位置調整部92は、仮決定した移動方向および移動量Δで、前回設定されたFFT窓を移動させたと仮定して、FFT窓を右方向に移動させる力および左方向に移動させる力を再び算出する。この結果、仮移動後のFFT窓を右方向に移動させる力は「25」、左方向に移動させる力は「39」となり、移動の前後で左右の力の大小関係が逆転する。
【0104】
かかる場合、窓位置調整部92は再調整処理を行う。たとえば、
図16Dに示すように、窓位置調整部92は、仮移動時とは逆方向(ここでは、左方向)に、かつ、仮移動時の移動量Δよりも少ない移動量(たとえば、Δ/2)で仮移動後のFFT窓を再移動させる。そして、窓位置調整部92は、再移動後のFFT窓位置を今回のFFT処理のFFT窓位置として設定する。
【0105】
なお、窓位置調整部92は、移動の前後で左右の力の大小関係が変化しなくなるまで、上記の再移動処理を繰り返して最適解を求めることとしてもよい。また、窓位置調整部92は、その他の再調整処理として、たとえば、前回のFFT窓位置をそのまま今回のFFT窓位置として設定してもよい。
【0106】
次に、上述した窓位置設定処理および窓位置調整処理の具体的な処理手順についてそれぞれ
図17および
図18を参照して説明する。
図17は、窓位置設定処理の処理手順を示すフローチャートであり、
図18は、窓位置調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0107】
なお、
図17に示す窓位置設定処理は、遅延プロファイル算出部8から遅延プロファイルが入力されるまでの間実行され、
図18に示す窓位置調整処理は、遅延プロファイルが入力された後に実行される。また、窓位置設定部91および窓位置調整部92は、FFT処理ごとに、
図17および
図18に示す処理手順を実行する。
【0108】
まず、
図17を参照して窓位置設定処理の処理手順について説明する。
図17に示すように、窓位置設定部91は、ガード相関ピークに基づいてFFT窓位置を設定する(ステップS101)。すなわち、窓位置設定部91は、ガード合成処理部5から取得した放送信号と、かかる放送信号を1シンボル分遅延させた信号との移動平均値を算出し、かかる移動平均値のピーク位置であるガード相関ピークをFFT窓位置として設定する。
【0109】
つづいて、
図18を参照して窓位置調整処理の処理手順について説明する。
図18に示すように、窓位置調整部92は、遅延プロファイル算出部8から遅延プロファイルを取得する(ステップS201)。
【0110】
つづいて、窓位置調整部92は、前記のFFT窓位置の環境前後のパス情報を抽出する(ステップS202)。すなわち、窓位置調整部92は、前回のFFT窓の区間外の到来波の位置およびレベルの情報を抽出する。
【0111】
つづいて、窓位置調整部92は、前回のFFT窓位置を移動させる左右の力をそれぞれ算出し(ステップS203)、算出結果に基づいて、前回のFFT窓位置の移動方向および移動量Δを仮決定する(ステップS204)。
【0112】
つづいて、窓位置調整部92は、仮決定した移動方向および移動量Δで仮移動させた後のFFT窓位置について、かかるFFT窓を移動させる左右の力を算出する(ステップS205)。
【0113】
つづいて、窓位置調整部92は、ステップS203で算出した力の方向(A)とステップS205において算出した力の方向(B)が同方向であるか否かを判定する(ステップS206)。そして、(A)と(B)とが同方向であると判定した場合(ステップS206,Yes)、窓位置調整部92は、仮移動後のFFT窓位置を今回のFFT窓位置に設定して(ステップS207)、今回の窓位置調整処理を終える。一方、ステップS206において(A)と(B)とが同方向でない場合(ステップS206,No)、窓位置調整部92は、再調整処理を行って(ステップS208)、今回の窓位置調整処理を終える。
【0114】
このように、本実施例に係る受信装置1では、窓位置制御部9が、前回設定されたFFT窓位置を、FFT窓の区間外に位置する到来波の強度に基づいて調整することによって今回のFFT窓位置を設定することとした。これにより、FFT窓位置をより適切に設定することが可能となるため、受信精度を向上させることができる。
【0115】
なお、上述した例では、仮移動の前後で力の方向が変わらない場合に、仮移動後のFFT窓位置を今回のFFT処理のFFT窓位置として設定する場合の例について示したが、窓位置調整部92は、かかる場合に、FFT窓を僅かに右方向に移動させてもよい。これは、電波環境が一定ということは通常では考えにくく、また、基本的には主波+遅延波という環境が主になるためであり、仮移動の前後で力の方向が変わらない場合でも、主波が常にFFT窓の左側に位置するようにFFT窓を右方向に移動させることで、FFT窓をより最適な位置に設定することができる。
【0116】
また、窓位置調整部92は、回路を簡略化してシンボル間干渉を受けている到来波のみを対象にして動作するように構成してもよい。かかる場合、FFT窓の区間からはみ出たすべての到来波を処理対象とするのではなく、たとえばFFT窓を中心とする所定範囲に存在する到来波のみを用いてFFT窓を左右の移動させる力を算出するようにしてもよい。このようにすることで、FFT窓の範囲内に収まっていた到来波が瞬間的に範囲外に出て劣化したとしてもすぐに劣化前の状態に戻ることができる。
【0117】
また、窓位置調整部92は、FFT窓を中心とする所定範囲に存在する到来波のみを用いてFFT窓を左右の移動させる力を算出することで、必要な到来波を取りこぼす事態を低減することができる。
【0118】
なお、窓位置制御部9は、遅延プロファイル算出部8から入力される遅延プロファイルから所定の閾値以上のレベルの到来波のみを検出して窓位置制御処理の対象とする。窓位置制御処理の対象とする到来波の数は特に限定されるものではない。また、上記の閾値は適宜変更可能であり、たとえば閾値をゼロとし、遅延プロファイルに含まれるすべての到来波を処理対象としてもよい。
【0119】
また、誤判定防止のため、FFT窓位置を移動させるか否かは、1回の制御結果ではなく、複数回の制御結果に基づいて判定することとしてもよい。
【0120】
次に、伝送路算出部10(
図1参照)について説明する。伝送路算出部10は、各放送信号のキャリアごとに伝送路応答推定値を算出する処理部である。ここで、従来における伝送路応答推定値の算出方法について
図19Aおよび
図19Bを参照して説明する。
図19Aおよび
図19Bは、従来における伝送路応答推定値の算出方法の説明図である。
【0121】
図19Aに示すように、従来では、中心タップのない平均化フィルタを用いてSP信号を平均化することによってSP信号に含まれるノイズを除去し、ノイズ除去後のSP信号を伝送路応答推定値として出力していた。
【0122】
平均化フィルタは、たとえばFIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、LMS部から入力されるタップ係数を用いてSP信号を平均化する処理を行う。また、LMS部は、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムと呼ばれる最適化アルゴリズムに従って平均化フィルタのタップ係数を適応的に更新する。
【0123】
たとえば、
図19Aに示すように、SP信号SP3に対応するタップ係数を更新する場合について考える。かかる場合、まず、平均化フィルタが、SP信号SP3の周囲に存在する4つのSP信号SP1,SP2,SP4,SP5と、各SP信号SP1,SP2,SP4,SP5に対応するタップ係数Wnとを用いた重み付き平均値を算出する。
【0124】
つづいて、LMS部は、平均化フィルタによって算出された重み付き平均値(すなわち、SP信号SP3の推定値)と、SP信号の実測値とに基づいてタップ係数Wnを更新する。
【0125】
SP信号は、振幅や位相が既知の信号であり、LMS部は、SP信号の推定値と既知の値との誤差e(n)を求め、かかる誤差e(n)が小さくなるようにLMS実行部においてタップ係数Wnを更新する。更新後のタップ係数Wn+1は、平均化フィルタへ出力される。LMS部は、かかる処理をたとえば時間方向に沿って順次行うことによって、各SP信号に対応するタップ係数Wnを更新していく。
【0126】
そして、平均化フィルタは、
図19Bに示すように、更新後のタップ係数Wn+1を用いて上記の平均化処理を再度行う。このように、周辺のSP信号を用いた重み付け平均処理を行うことで、周辺のSP信号との相関を持たないAWGN(Additive White Gaussian Noise)等のノイズ成分を元のSP信号から除去することができる。そして、平均化フィルタは、平均化処理後のSP信号を伝送路応答推定値として出力する。
【0127】
しかしながら、上述したように平均化フィルタとして、中心タップのない平均化フィルタを用いた場合、状況によっては、LMS部から出力されるタップ係数が適切に収束しない可能性があった。たとえば、遅延波の数が多く、帯域幅を広くしなければならない場合に、LMS部から出力されるタップ係数が適切に収束せず、平均化フィルタの特性が、帯域外が持ち上がったような形に歪んでしまうおそれがあった。
【0128】
これは、遅延波の数が多く、帯域幅を広くしなければならない環境においては、タップ係数が、インパルス応答に近い形(すなわち、中心タップのみ大きい形)にLMS部によって収束するが、従来の方式では中心タップがない平均化フィルタを用いているため、インパルス応答に近い形を求められると帯域外が持ち上がったような形に収束してしまうためであると考えられる。
【0129】
そこで、本実施例に係る伝送路算出部10は、中心タップを有する平均化フィルタを用いることとした。かかる点について
図20を参照して説明する。
図20は、本実施例に係る伝送路算出部10の概要説明図である。
【0130】
図20に示すように、本実施例に係る伝送路算出部10は、時間方向平均化フィルタ111と、LMS部112とを含んで構成される。また、LMS部112は、減算部112aと、LMS実行部112bとを備える係数更新部である。
【0131】
時間方向平均化フィルタ111は、上述した従来の平均化フィルタとは異なり、中心タップを有するFIRフィルタ等の平均化フィルタである。
【0132】
たとえば、
図20に示すように、SP信号SP3に対応するタップ係数を更新する場合について考える。かかる場合、時間方向平均化フィルタ111は、SP信号SP3およびSP信号SP3の周囲に存在する4つのSP信号SP1,SP2,SP4,SP5と、各SP信号SP1〜SP5に対応するタップ係数Wnとを用いた重み付き平均値を算出する。
【0133】
つづいて、LMS部112は、時間方向平均化フィルタ111によって算出された重み付き平均値(すなわち、SP信号SP3の推定値)と、SP信号の実測値とに基づいてタップ係数Wnを更新する。かかるLMS部112では、減算部112aが、位相補正部7(
図1参照)から入力されるSP信号から時間方向平均化フィルタ111によって得られるSP信号の推定値を減じることによって誤差e(n)を算出する。そして、LMS実行部112bが、減算部112aから入力される誤差e(n)が小さくなるようにLMSアルゴリズムに従ってタップ係数Wnを更新する。
【0134】
そして、時間方向平均化フィルタ111は、更新後のタップ係数Wn+1を用いて上記の平均化処理を再度行い、平均化処理後のSP信号を伝送路応答推定値として等化処理部11へ出力する。
【0135】
このように、本実施例に係る伝送路算出部10では、時間方向平均化フィルタ111が、平均化の対象となるSP信号(ここでは、SP信号SP3)と、かかるSP信号に対して時間的に前後する複数のSP信号(ここでは、SP信号SP1,SP2,SP4,SP5)とを用いて上記平均化の対象となるSP信号を平均化することとした。これにより、たとえば、遅延波の数が多く、帯域幅を広くしなければならない場合であっても、LMS部112から出力されるタップ係数を適切に収束させることができる。
【0136】
ところで、本実施例に係る時間方向平均化フィルタ111のように中心タップを有する平均化フィルタを用いると、入力=出力となるようにタップ係数が収束することとなる。つまり、中心タップのタップ係数が1となり、その他のタップ係数が0となるように収束することとなる。
【0137】
そこで、本実施例に係る時間方向平均化フィルタ111は、LMS部112から出力される中心タップのタップ係数に対して所定の忘却係数αを乗じることとした。
【0138】
このように、LMS部112によって更新された平均化の対象となるSP信号のタップ係数に対して所定の忘却係数αを乗じた値をかかるSP信号に対応するタップ係数として用いることにより、入力=出力となるようにタップ係数が収束することを防止することができる。
【0139】
忘却係数αは、0<α<1とする。ここでは、忘却係数αが固定値であるものとするが、忘却係数αは自動で更新される値であってもよい。たとえば、伝送路算出部10は、タップ係数の更新処理ごとに、中心タップ以外のタップ係数×β(β>1)を上限とする値に忘却係数αを更新してもよい。
【0140】
次に、本実施例に係る伝送路算出部10の構成について
図21を用いて説明する。
図21は、伝送路算出部10の構成を示すブロック図である。
図21に示すように、伝送路算出部10は、第1ノイズ除去部101と、第2ノイズ除去部102とを備える。
【0141】
第1ノイズ除去部101は、SP信号を時間方向に平均化することによってSP信号に含まれるノイズを除去する処理部である。また、第2ノイズ除去部102は、SP信号をキャリア方向に平均化することによってSP信号に含まれるノイズを除去する処理部である。これら第1ノイズ除去部101および第2ノイズ除去部102の構成について
図22Aおよび
図22Bを参照して説明する。
図22Aは、第1ノイズ除去部101の構成を示すブロック図であり、
図22Bは、第2ノイズ除去部102の構成を示すブロック図である。
【0142】
図22Aに示すように、第1ノイズ除去部101は、
図20に示す時間方向平均化フィルタ111およびLMS部112を備える。第1ノイズ除去部101によってノイズが除去されたSP信号である伝送路応答推定値h1は、第2ノイズ除去部102に入力される。
【0143】
ここで、第1ノイズ除去部101が行う時間方向平均化処理の内容について
図23Aおよび
図23Bを参照して説明する。
図23Aは、時間方向平均化処理の説明図であり、
図23Bは、第1ノイズ除去部101から出力される時間方向平均化処理後の伝送路応答推定値を示す図である。なお、
図23Aに示す黒丸は、SP信号を示している。また、
図23Aでは、破線で囲まれたシンボルのSP信号からノイズを除去する場合の例を示している。
【0144】
時間方向平均化フィルタ111は、破線で囲まれた時間帯のSP信号SP03のノイズを除去するために、SP信号SP03を中心とし、かかるSP信号SP03およびその周囲に存在するSP信号SP01,SP02,SP04と、これらに対応するタップ係数とを用いた重み付き平均値を算出する(パターン0)。
【0145】
また、
図23Aに示すように、SP信号は、たとえば12キャリアに1個の割合で挿入される。時間方向平均化フィルタ111は、かかるSP信号を擬似的に増やす補間処理も行う(パターン1〜3)。
【0146】
パターン1〜3の場合、中心タップの位置にはSP信号が存在しない。このため、パターン1〜3については、たとえば中心タップのタップ係数に乗じられる忘却係数αが0に設定される。これにより、パターン1〜3については、従来と同様、中心タップのない平均化フィルタを用いた場合と同様の結果が得られる。
【0147】
このように、時間方向平均化フィルタ111は、補間処理を行うことにより、
図23Bに示すように、SP信号を擬似的に増加させることができる。したがって、本実施例に係る受信装置1によれば、補間処理を行わない場合よりも多くのSP信号を用いてノイズ除去処理を行うことができるため、ノイズ除去の精度を高めることができる。
【0148】
なお、第1ノイズ除去部101は、上記のパターン1〜4に対応する4種類のタップ係数パターンを有しており、パターン1〜4ごとに、各パターン1〜4に対応するタップ係数を更新する。
【0149】
第2ノイズ除去部102は、
図22Bに示すように、キャリア方向平均化フィルタ121と、LMS部122とを備える。キャリア方向平均化フィルタ121は、時間方向平均化フィルタ111と同様、中心タップを有するFIRフィルタ等の平均化フィルタである。かかるキャリア方向平均化フィルタ121は、第1ノイズ除去部101から入力される伝送路応答推定値h1をキャリア方向、言い換えれば、周波数軸方向に平均化することによって、SP信号に含まれるノイズをさらに除去する。LMS部122は、第1ノイズ除去部101が備えるLMS部112と同様の構成を有する係数更新部である。第2ノイズ除去部102によってノイズが除去されたSP信号である伝送路応答推定値h2は、等化処理部11に入力される。
【0150】
図1に戻り、等化処理部11について説明する。等化処理部11は、伝送路算出部10から出力される伝送路応答推定値を用いてデータ信号の歪みを補正する等化処理を行う処理部である。具体的には、等化処理部11は、データ信号を伝送路応答推定値で除することによってデータ信号の歪みを補正する。等化処理後のデータ信号は、硬判定部12へ出力される。
【0151】
硬判定部12は、等化処理部11から入力された等化処理後のデータ信号に対して硬判定処理を行う処理部である。具体的には、硬判定部12は、等化処理後のデータ信号の各受信点を同相成分軸(I軸)および直交成分軸(Q軸)であらわしたコンスタレーション上へデマッピングする。このとき、データ信号の各受信点は、伝送路で受けたノイズや反射等の影響が低いほどコンスタレーション上の各マッピング枠の基準点から近い位置へデマッピングされる。硬判定部12は、硬判定処理後のデータ信号を誤り訂正部13へ出力する。
【0152】
誤り訂正部13は、硬判定部12から入力されたデータ信号に対し、たとえばビタビ復号(Viterbi decoding)や、リード・ソロモン復号(Reed-Solomon decoding)といった誤り訂正復号方式を用いて誤りを検出して訂正する。誤り訂正後のデータ信号は、復調部14へ出力される。
【0153】
復調部14は、誤り訂正部13から入力されるデータ信号をOFDM復調し、復調後の信号を出力装置15へ出力する。出力装置15は、たとえば、デジタルテレビ放送の映像を表示するディスプレイ装置やデジタルテレビ放送の音声を出力するスピーカ等である。
【0154】
上述してきたように、本実施例に係る受信装置1は、チューナ部3と、インパルス除去部4と、ガード合成部51と、ガード置換部52とを備える。チューナ部3は、有効シンボルDの先頭にガードインターバルGが付加された放送信号を受信する。ガード合成部51は、チューナ部3によって受信されたガードインターバルGと、有効シンボルDの後尾部分Cとを合成するガード合成処理を行う。インパルス除去部4は、放送信号に含まれるインパルスノイズを検出する。ガード置換部52は、インパルス除去部4からのノイズ検出信号に基づき、ガードインターバルGおよび有効シンボルDの後尾部分Cのうちインパルスノイズが検出されたデータを他方のデータと置換する。
【0155】
また、本実施例に係る受信装置1は、FFT部6と、位相補正部7とを備える。FFT部6は、直交周波数分割多重信号である放送信号に対してFFT処理を行う。位相補正部7は、FFT処理後の放送信号の位相を補正して所定の基準位相と一致させる。
【0156】
また、本実施例に係る受信装置1は、FFT部6と、窓位置制御部9とを備える。FFT部6は、直交周波数分割多重信号である放送信号に対してFFT処理を行う。窓位置制御部9は、FFT処理の処理区間の開始位置を示すFFT窓位置をFFT処理ごとに設定する。また、窓位置制御部9は、前回設定されたFFT窓位置を、FFT窓の区間外に位置する到来波の強度に基づいて調整することによって今回のFFT窓位置を設定する。
【0157】
また、本実施例に係る受信装置1は、FFT部6と、時間方向平均化フィルタ111およびキャリア方向平均化フィルタ121と、LMS部112,122とを備える。FFT部6は、直交周波数分割多重信号である放送信号に対してFFT処理を行う。時間方向平均化フィルタ111およびキャリア方向平均化フィルタ121は、FFT処理後の放送信号から抽出されるSP信号をそれぞれ時間方向およびキャリア方向に平均化する。LMS部112,122は、時間方向平均化フィルタ111およびキャリア方向平均化フィルタ121のタップ係数をLMSアルゴリズムに従って更新する。そして、時間方向平均化フィルタ111およびキャリア方向平均化フィルタ121は、平均化の対象となるSP信号と、かかるSP信号に対して時間的に前後する複数のSP信号とを用いて、平均化の対象となるSP信号を平均化する。
【0158】
したがって、本実施例に係る受信装置1によれば、受信精度を高めることができる。
【0159】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。