(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374489
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】高速真空可変コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 5/013 20060101AFI20180806BHJP
H01G 5/14 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
H01G5/013 100
H01G5/14
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-515665(P2016-515665)
(86)(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公表番号】特表2016-522577(P2016-522577A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2013061174
(87)【国際公開番号】WO2014191041
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504133822
【氏名又は名称】コメット アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルドナー、マルク ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】ビエリ、ロラント
(72)【発明者】
【氏名】アブレヒト、マイク
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー、ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ボイアーマン、ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア、ジャック
【審査官】
馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭46−040969(JP,B1)
【文献】
実開昭62−172407(JP,U)
【文献】
米国特許第02315330(US,A)
【文献】
特開2011−228420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/013
H01G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小静電容量値と最大静電容量値の間で調整可能な真空可変コンデンサ(1)であって、
真空誘電体(12)によって分離されたコンデンサ電極(6、7)を含む第1の真空エンクロージャ(2)であって、当該第1の真空エンクロージャ(2)の壁が、当該第1の真空エンクロージャの外側に配置された駆動手段(9、14、15、28)と当該第1の真空エンクロージャ(2)の内側の前記コンデンサ電極(6、7)のうちの移動電極(7)との間で機械的運動を伝達する、以下で第1のベローズと称される第1の変形可能領域(11)を含む、第1の真空エンクロージャ(2)と、
所定の圧力の気体(20)を含む、以下で前真空エンクロージャと称される第2のエンクロージャ(21)であって、前記第1のベローズ(11)が当該前真空エンクロージャ(21)内の前記気体(20)を前記第1の真空エンクロージャ(2)内の前記真空誘電体(12)から分離するような態様で当該前真空エンクロージャ(21)が配置された第2のエンクロージャ(21)とからなる真空可変コンデンサ(1)であって、
第2の真空エンクロージャ(22)であって、当該第2の真空エンクロージャ(22)を前記前真空エンクロージャ(21)から分離し、前記第1のベローズ(11)が機械的に連結されている、以下で第2のベローズと称される第2の変形可能壁領域(27)を含む第2の真空エンクロージャ(22)を備えること、
を特徴とする真空可変コンデンサ(1)。
【請求項2】
前記第2のベローズ(27)が前記第1のベローズ(11)と実質的に同一である、請求項1に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項3】
前記駆動手段(9、14、15、28)が、前記前真空エンクロージャ(21)内に配置されたモータ(15)を含む、請求項1に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項4】
前記駆動手段(9、14、15、28)が、DCモータ、ACサーボ・モータ又はリニア・モータを含む、請求項1から請求項3までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項5】
前記最小静電容量値と前記最大静電容量値の間の最短調整時間が0.1秒未満となるように、前記モータ(15、29)、前記電極(6、7)、前記駆動手段(9、14、15、28)及び前記前真空エンクロージャ(21)内の前記所定の圧力が構成された、請求項1から請求項4までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項6】
前記最大静電容量値が、前記最小静電容量値の少なくとも10倍である、請求項1から請求項5までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項7】
前記ベローズ(11)が、1,000万サイクルに耐えるように構成されており、1サイクルが、第1の静電容量値から、前記第1の静電容量値の10倍である第2の静電容量値への第1の静電容量調整と、前記第2の静電容量値から前記第1の静電容量値への第2の静電容量調整とを含む、請求項1から請求項6までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項8】
前記1,000万サイクルのうちの1サイクルに対する最短調整時間が0.05秒未満となるように、前記モータ(15、28)、前記電極(6、7)及び前記駆動手段(9、14、15、28)が構成された、請求項7に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項9】
前記モータ(15)を制御する制御手段を備え、前記制御手段、前記モータ(15)及び前記駆動手段(9、14、15、28)が、前記最大静電容量値と前記最小静電容量値の差の1/5000よりも小さな増分で静電容量が調整可能であるような態様で構成された、請求項1から請求項8までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項10】
前記駆動手段(9、14、15、28)及び/又は前記モータ(15)を前記第1の真空エンクロージャ(2)の可変取付け板(4)から電気的に絶縁する絶縁要素(8)を備える、請求項1から請求項9までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項11】
前記可変取付け板(4)と前記モータ(15)の間の高電圧なしで前記真空可変コンデンサ(1)が動作可能であるような態様で配置された2組以上の連動化された電極(24、25)を、前記第1の真空エンクロージャ(2)が備える、請求項10に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項12】
前記駆動手段(28)が、ボイス・コイル又は他のリニア駆動機構を備える、請求項1から請求項11までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項13】
前記モータ(29)によって供給され前記移動電極(7)へ伝達されるモータ力がねじ接続によっては伝達されないような態様で、前記駆動手段(29、28)が構成された、請求項1から請求項12までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項14】
前記駆動手段(9、14、15、28)が送りねじ(9)及びナット(14)を備え、前記ねじ(9)及び/又は前記ナット(14)がセラミック材料を含む、請求項1から請求項13までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空可変コンデンサ(vacuum variable capacitor)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
真空可変コンデンサは例えば、1つ又は複数の真空可変コンデンサを調整することによって時間依存高周波負荷(time−dependent high−frequency load)のインピーダンスを発電機のインピーダンスと整合させることができるインピーダンス整合ネットワークにおいて有用である。このようなコンデンサの静電容量は、一方の電極又は電極セットをもう一方の電極又は電極セットに対して移動させることによって制御可能に調整することができ、誘電媒質として真空を使用することによって、例えばkV範囲の電圧又は数十kVの電圧で動作して、最大数百アンペアの電流を、200kHzという低い周波数又は200MHzという高い周波数で運ぶ大電力用途で、このようなコンデンサを使用することができる。このようなコンデンサは、大電力インピーダンス整合ネットワーク内の同調要素として使用することができ、このようなコンデンサはしばしば、高い分解能(通常はその範囲内の10000を超える設定点)及び長年数の動作寿命を有する広範囲(通常は1:50以上)にわたる迅速で、制御可能で信頼性の高い静電容量調整を必要とする、大電力無線周波(RF)用途に対して使用される。
【0003】
真空コンデンサは通常、ポンプ排気され密封されたエンクロージャ(enclosure)を備え、前記エンクロージャは通常、円筒形(管状)のセラミック(又は他の電気絶縁)片によって互いに電気的に絶縁された2つの金属カラー(collar)を備え、この円筒形(管状)のセラミック(又は他の電気絶縁)片は前述のカラーに、真空密(vacuum tight)状態を生み出すように接合されている。エンクロージャの内側には複数の電極があり、それらの電極は、それぞれの金属カラーに電気伝導可能に取り付けられている。これらの電極の機能は、(誘電体とともに)電気静電容量を生み出すことである。一方の電極は通常、一方のカラーに機械的に固定されており、もう一方の電極は、シャフト及びねじ/ナット・システムを備える駆動システムによって移動させることができる。真空の外側のねじ/ナット案内システムの軸方向の運動が、真空の内側の可動電極の軸方向の運動に変えられる。これは通常、以後一般にベローズ(bellows)と呼ぶ伸縮可能継手によって実行されるが、他の伸縮可能継手を使用してもよい。この真空誘電媒質が、このようなコンデンサの名称のもとになっている。この真空圧力は通常10
−4ミリバールよりも良い(低い)。コンデンサ誘電体として真空を使用することには、(具体的には温度にも又は周波数にも依存しない)安定した誘電体値を与えるという利点があり、コンデンサ誘電体として真空を使用すると、高電圧及び大電流でのコンデンサの安定した動作が可能となり、誘電損が非常に小さくなる。例えば、米国特許出願公開第2010202094(A1)号は真空可変コンデンサを記載している。真空コンデンサの具体的ないくつかの用途は、放送(例えば大出力送信機の発振回路)、又は半導体、ソーラ・パネル及びフラット・パネル製造における、例えば工業的なプラズマ増強化学蒸着(PECVD)プロセス中のプラズマ制御プロセスを含む。このような用途では、真空可変コンデンサの静電容量を調整することによって、(PECVDプロセスによって生成された負荷などの)RF負荷間のインピーダンス、及び工業規格によって固定された大電力RF発電機の固定されたインピーダンスを、
【数1】
に変化(及び整合)させることができる。
【0004】
真空コンデンサは、時間変化する負荷へRF電力を伝達するための鍵となる同調可能要素である。比較的にかさが大きいにもかかわらず、誘導同調又は他の形態の容量性同調(非機械式技術又は非真空技術)などの他の同調機構と比べると、真空可変コンデンサはいくつかの利点を提供する。実際に、真空可変コンデンサは、ほぼ連続的な同調を可能にし、非常に広い静電容量範囲にわたって優れた分解能を有し(典型的なステッパ・モータの微小ステップ特徴が使用されるときには、静電容量範囲を、10000を超える設定点に容易に分割することができる)、真空誘電体のおかげで非常に高い電圧能力を有する。さらに、極めて小さい誘電損のため、真空コンデンサは、多くの熱を生み出すことなく大電流を流すことを可能にし、その結果、最も要求の厳しい電力用途に関して実質上、競合するものがない。静電容量値の調整は、一方の電極をもう一方の電極に対して機械的に移動させ、それによって2つの電極表面間の距離又は電極表面の重なりを変更する(後者が最も一般的である)ことによって達成される。電極表面間の距離の変更及び電極表面の重なりの変更はともに静電容量値の変化に帰着する。
【0005】
MHz用途向けの典型的な真空可変コンデンサは、pF範囲(時に低nF範囲まで拡張される)の静電容量値を提供するよう設計され、単一のユニットは、約1:50又はそれ以上の静電容量範囲をカバーする。すなわち、最小設定C
minが例えば10pFである場合、同じユニットを使用して通常は最大設定C
max=500pFを設定することができる。先行技術のコンデンサでは、C
minとC
maxの間で可動電極を移動させるのに通常は1秒以上かかる。より小さな調整は、それに比例してより短い時間を必要とする。最近、チップ製造プロセス又は他の半導体製造プロセスで使用されるプラズマ・プロセス中及び連続したプラズマ・プロセス間の調整時間がかなり短縮され、その結果、インピーダンス整合において、及び無線周波電力を使用するプロセス全体において、真空可変コンデンサが時にボトルネック要素となっている。制御ソフトウエアの高速化については進歩が見られるが、所与のモータを使用して機械部品(移動電極)を移動させることができる速度には物理的な限界がある。速度を制限する1つの因子は、真空密エンクロージャの内側と外側の圧力差(1バール)に起因するかなり大きな力に逆らうのに必要なモータ出力である。
【0006】
このように、現状技術の真空可変コンデンサは、主にモータの出力、並びにコンデンサの可動電極を移動させるのに使用する駆動システムのねじ及びナットの圧力−速度限界(いわゆるPV値)によって、速度が制限されている。高いPV値は、駆動システムのナットとねじ山との間の高い接触圧力につながり、このことは、前記ねじ/ナット・システムの摩耗に負の影響を及ぼし、より早期の故障に帰着する(又は、その代わりにねじ/ナット・システムの定期的な交換が必要となる)。
【0007】
先行技術のコンデンサにはさらに、ベローズの膜応力及び曲げ応力がかなり大きいという欠点がある。これらの応力が大きいほど、故障するまでにベローズが耐え得る圧縮/伸張サイクル数(ライフサイクル)は低下する。
【0008】
駆動システムに対して使用されているモータのタイプにかかわりなく、先行技術の真空可変コンデンサの圧力差に抗して機能するためには、後に説明するように、必然的に大きなトルクが必要となる。
【0009】
真空可変コンデンサを駆動する目的には通常、ステッパ・モータが使用される。これは、ステッパ・モータの位置決め精度(分解能)及びその高い剛性(stiffness)(ステッパ・モータは、その最大保持トルクを静止状態(standstill)で発生させ、通常はブレーキを必要としない)のためであり、また、ステッパ・モータが、大部分の用途に対して満足のいく速度を有するためである。ステッパ・モータは通常、600RPM又は1200RPMで動作して、最も一般的な真空可変コンデンサを駆動することができ、それでも、真空力(vacuum force)に逆らって機能するのに十分なトルクを提供することができる。しかしながら、残念なことに、ステッパ・モータの1つの特性は、速度を速めると使用可能なトルクが小さくなることである。その結果、非常に速い速度ではステップ損が生じ、精度が低下する。(サーボ・モータ、リニア・モータなどの)その他モータでも高速ではトルクが低下する。より高いトルクとより速い速度の組合せを得ることを可能にする唯一の方策は、モータのサイズ及びコストを思い切って増大させることである。これは、OEM(original equipment manufacturer:相手先商標製造会社)インピーダンス整合ネットワークに組み込む構成要素に対して受け入れられる選択肢ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010202094(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、先行技術の真空可変コンデンサの上記の欠点及びその他の欠点を解決することにある。具体的には、本発明の目的は、調整速度が増した改良された真空可変コンデンサを、好ましくはモータのサイズを増大させずに、且つ/又は装置のサイズを増大させずに、且つ/又は装置の調整分解能を低下させずに提供することにある。
【0012】
追加の利点は、最大動作電圧/電力、装置のコンパクト性又は装置の調整分解能に関する妥協なしに装置の寿命を延ばす(具体的には静電容量調整サイクル数を増加させる)ことを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、最小静電容量値と最大静電容量値の間で調整可能な真空可変コンデンサであって、
真空誘電体によって分離されたコンデンサ電極を含む第1の真空エンクロージャであり、第1の真空エンクロージャの壁が、第1の真空エンクロージャの外側に配置された駆動手段と第1の真空エンクロージャの内側のコンデンサ電極のうちの移動電極との間で機械的運動を伝達する第1の変形可能領域(ベローズとも呼ぶ)を含む第1の真空エンクロージャと、大気圧よりも低い所定の圧力の気体を含む前真空エンクロージャ(pre−vacuum enclosure)と呼ぶ第2のエンクロージャであり、第1の変形可能領域が前真空エンクロージャを第1の真空エンクロージャから分離するような態様で配置された第2のエンクロージャと
を備える真空可変コンデンサによって達成される。
【0014】
前真空エンクロージャ(2次真空エンクロージャとも呼ぶ)は、大気圧よりも低圧の気体を含み、それによって、ベローズの両側の圧力差を低減させる役目を果たす。圧力差のこの低減によって、ベローズを移動させるのに必要なモータ・トルクの量が低減し、且つ/又は所与のモータを使用して達成することができる調整速度が増大する。
【0015】
本発明の他の変形形態は従属請求項に記載されている。
【0016】
前真空エンクロージャの存在は、ナットを駆動し、ベローズを圧縮し又は伸張させ、第1の真空エンクロージャ(1次真空エンクロージャとも呼ぶ)の内側の可動電極を移動させるのにモータがより小さなトルクを必要とすることを意味する。このことは、同じサイズ及び出力のモータを使用したより速い速度を可能にする。この必要なトルクの低減は、ベローズに対する真空力の低減だけによるものではないことに留意されたい。この真空力は、ナットとシャフトのねじ山との間に軸方向の力を生じさせる。この軸方向力は、ナットとねじの間にかなり大きな摩擦を生じさせる。圧力差の低減、したがって真空力の低減の結果、ナットとねじ山との間の回転摩擦の量がかなり低下する。この低減した回転摩擦の結果、シャフトを駆動するためにモータが必要とするトルクの量もかなり低下する。
【0017】
この2次真空エンクロージャは、1次真空と同じ程度に減圧されている必要はない。実際に、1次真空圧力は、誘電体として十分に性能を発揮するために大気圧よりも何桁も低くなければならないが、前真空エンクロージャ内の圧力は、大気圧よりも1桁低いだけでよく、この大気圧よりも1桁低い圧力は、例えば駆動システム(ねじ/ナットなど)に作用する軸方向力を約1/10にするのに既に十分である。駆動システムに作用する力が低減すると、モータの必要トルクがかなり小さくなり、これにより速度を速くすることができる。
【0018】
さらに、この構成は、ベローズの寿命を延ばすことができる。ベローズは、低減された圧力差の下で2つの容積を分離し、したがって圧縮/伸張時により小さな膜応力及び曲げ応力を受ける。この低減された真空力はさらに、ねじ及びナット駆動システムの摩耗を低減させ、したがってそれらの構成要素の寿命を延ばす。
【0019】
本明細書に記載された高速真空可変コンデンサは例えば、前真空エンクロージャ内にモータが配置され、前真空エンクロージャ内の気体が例えば約0.1バールの圧力を有するように構成され得る。0.1バールの圧力は、ベローズに対する真空力を約90%減らすが、それでも、モータが過熱しないような対流冷却を可能にするのに十分な分子を提供する。より良い真空(より低い圧力)は、外部環境に向かって熱を十分に排出することを許さない可能性があり、それによってモータの過熱及びシステムの故障につながる可能性がある。一般に、0.05バールから0.5バールの間の圧力は、追加の冷却手段を必要とせずに、真空力の有用な低減を提供することが分かっている。しかしながら、大気圧までの任意の圧力を使用することができ、大気圧までの圧力は依然として改良を提供する。
【0020】
原理上は、前真空チャンバを完全に排気することによって真空力をゼロまで低減させることができる。これによって、ねじ/ナットを駆動するのに必要なモータ・トルクは非常に小さな値にまで低減するであろう。しかしながら、真空力は、ねじ−ナット駆動機構に対して有用な軸方向バイアス力を提供する。この軸方向バイアス力は、ねじ/ナット駆動機構の遊びの量をかなり低減させ、それによってコンデンサ調整の精度(分解能)に寄与する。ベローズは、ばねのような固有の力を有することがあり、この力も、ねじ−ナット機械界面をバイアスする効果を有する。しかしながら、ベローズは、その伸長範囲の1点では圧縮されており、その伸長範囲の別の部分では引っ張られていることがあり、そのため、ベローズは、その伸長範囲のどこにベローズがあるのかに応じて、正のバイアス力及び負のバイアス力を駆動ねじ/ナットに対して発揮する。したがって、真空力とは反対の方向に作用するベローズの最大ばね力よりも真空力の方が大きくなるような態様で、ベローズの両側の圧力差を構成した方が有利である。言い換えると、ベローズがその中立位置を(圧縮から伸長へ)通過するときであっても、合力「真空力+ベローズばね力」が向きを変えるべきではない。実際には、それだけを見れば、ベローズ力は、それが圧縮モードで動作しているのか又は伸長モードで動作しているのかに応じて向きを変えているであろうが、(減らされた)真空力の追加が、これらの力の和が向きを変えないことを依然として保証する。これは、2次真空圧力を、コンデンサのベローズばね力の最大振幅を少なくとも等しくするのに十分な大きさとすることによって保証することができる。この合力の向きが変化すると、ねじ−ナット・システムのバックラッシ(backlash)が可能になると考えられ、それによってコンデンサ(並びに関連する静電容量値及びインピーダンス値)の劣等な位置制御に帰着すると考えられる。言い換えると、減らされた真空力は、その真空力がそれでも、反対方向のベローズ力(この力は、使用するベローズの機械的な特性に依存する)をちょうど補償するのに十分な大きさであるように決定されるべきである。
【0021】
同様の理由で、低減されてはいるが完全には補償されていない真空力の他の利点は、低減された真空力が依然として、ベローズの軸が水平でないときに可動電極に加わる重力をも少なくとも補償する場合に、コンデンサを、任意の向きに位置決めし、インピーダンス整合ネットワークに組み込むことができる点である。ベローズ及び電極質量の典型的な選択では、0.1バールの圧力が適当であることが分かった。しかしながら、他の状況では、これよりも高い圧力又は低い圧力の方が有効なこともある。
【0022】
次に、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】先行技術の真空可変コンデンサの略断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これらの図は、例示だけを目的に提供するものであり、これらの図を、請求する特許保護の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0025】
異なる図面で同じ参照符号が使用されている場合、それらの符号は、同種の特徴又は対応する特徴を指すことが意図されている。しかしながら、異なる参照符号の使用が、それらの符号が指す特徴間に違いがあることを示しているとは限らない。
【0026】
図1は、先行技術の真空可変コンデンサの実例の高度に簡略化された略断面図を示す。この真空可変コンデンサは、ポンプ排気され密封された真空エンクロージャ(2)を備え、真空エンクロージャ(2)は、円筒形のセラミック片(5)によって互いに電気的に絶縁された2つの金属カラー(3、4)によって形成されており、円筒形のセラミック片(5)はカラー(3、4)に、真空密状態を生み出すように接合されている。エンクロージャ(2)の内側には静止電極(6)及び可動電極(7)があり、それらの電極は、それぞれの金属カラー(3、4)に電気伝導可能に取り付けられている。これらの電極の機能は、真空誘電体(12)とともに、電気静電容量を生み出すことである。静止電極(6)は一方のカラー(3)に機械的に固定されており、可動電極(7)は、送りねじ(lead screw)(9)及びナット(14)を備える駆動システムによって移動させることができる。伸縮継手又はベローズ(11)が、真空エンクロージャ(2)の外側の大気圧から真空誘電体(12)を分離している。圧力差(ΔP≒1バール)のため、ベローズ(11)に対して、及びナット(14)と送りねじ(9)の間の接触表面に対して力が作用することに留意されたい。真空可変コンデンサの静電容量値を変化させるため、ねじ(9)を適当な回数だけ又は適当な数分の1回転だけ回転させることによって、電極(6)と電極(7)の重なりを調整することができる。この回転は通常、モータ(15)を使用することによって実行される。300N以上にもなることがある真空力がベローズ(11)に作用して、ベローズ及びナットを真空の方へ(すなわち
図1では下向きに)引っ張る。この真空力の大きさは、真空(12)と周囲の大気との間の界面を形成するベローズ(11)の幾何形状に依存する。上で論じたとおり、この真空力が、モータ(15)に対する大トルク要件につながり、この要件がモータ(15)の速度を制限する。
【0027】
図2は、本発明に基づく真空可変コンデンサ(1)の実例を、同様に簡略化された形で示す。この真空可変コンデンサは、
図1に関して既に説明したものと同様の第1の真空密エンクロージャ(2)、電極(6、7)、モータ(15)、送りねじ(9)、ナット(14)及びベローズ(11)を備える。加えて、部分真空エンクロージャ又は前真空エンクロージャとも呼ぶ低圧エンクロージャ(21)が、第1の真空エンクロージャ(2)に対して密封されている。前真空エンクロージャ(21)は、大気圧よりも低い例えば0.1バールの圧力を有する気体(20)を含む。
【0028】
図1のように大気から真空(12)を分離する代わりに、
図2のベローズ(11)は、密封された前真空エンクロージャ内に含まれる低圧気体(20)から真空(12)を分離する。
【0029】
前真空エンクロージャ内の圧力が0.1バールである場合、ベローズ(11)及びナット(14)に作用する真空力は、
図1に示した真空可変コンデンサ内の対応する真空力の約1/10になる。
【0030】
真空力が低減されるため、モータ(15)が必要とするトルクも、
図1の真空可変コンデンサで必要となるトルクよりも小さくなる。その結果、
図1で使用されているモータ(15)と同じモータ(15)は、より速い速度で動作することができる。
【0031】
この実施例では、真空可変コンデンサ(1)がRF動作しているときに、前真空エンクロージャ(21)内にあるモータ(15)が、大電力を運ぶカラー(4)から電気的に絶縁されることに気づく。
図2ではこれが、絶縁材料(8)によって象徴的に示されている。
【0032】
真空可変コンデンサ(1)の可変側のこのカラー(4)は、インピーダンス整合ネットワーク又は他のシステム内に真空可変コンデンサを取り付けるために使用されるため、しばしば「可変取付け板(variable mounting plate)」と呼ばれる。第1の真空密エンクロージャ(2)の内側の異なる電極配置は、モータ(15)の取付けを単純にすることを可能にする。これについては本発明の第2の実施例に関して説明する。
【0033】
この実施例(
図2)に戻る。真空可変コンデンサの寿命の延長についての以下の議論のため、前真空エンクロージャ(21)内の圧力が0.1バールであると仮定する。
【0034】
第1に、ベローズ(11)の両側の圧力差(ΔP)が90%低減し、この低減によって、伸長又は圧縮の際のベローズ(11)の膜応力及び曲げ応力がより小さくなり、したがって寿命が延長されるため、ベローズ(11)の寿命が向上する。第2に、より低い圧力値のおかげでPV値が低減するため、ねじ(9)及びナット(14)の寿命も改善される。PVは、圧力(pressure)と速度(velocity)の積であり、ここでの圧力及び速度は、ねじ(9)とナット(14)の対合するねじ山の接触表面における圧力及び速度である。PV値は、例えばねじ及びナットの摺動表面などの接触した2つの摺動表面の機械的摩耗及び故障寿命(time to failure)を予測する目的に使用されることがある一般的な工学値である。ベローズ(11)の両側の圧力差が低減される結果、ねじ(9)とナット(14)の対合するねじ山の表面間の接触圧力が小さくなる。
図2に示した真空可変コンデンサ(1)を使用すると、ねじ(9)とナット(14)の間の接触圧力が低減することによって、以下の有益な特性のうちの1つ又は複数の特性が生じる。
所与のねじ/ナット対について、摩耗が減り、寿命が長くなる。
所与のねじ/ナット・システム及び同じ寿命要件について、寿命を縮めることなく、ねじ/ナット駆動システムがより速い速度で動作することができる。
ねじ/ナット材料のより安価な組合せを選択しても、同じ速度で同じ寿命に到達する。
寿命を縮めることなくより小さなねじ及びナットを選択することができる(したがって真空コンデンサの小型化に寄与する)。
【0035】
モータ(15)は例えばステッパ・モータとすることができる。或いは、他のタイプのDCモータ又はACサーボ・モータを使用することもできる。駆動機構内に回転部品が一切ないリニア・モータを使用することも可能であり、それによって所与のサイズのモータでよりいっそう速い速度を達成することが可能である。
【0036】
図3は、本発明の第2の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す。この実例では、第1の真空エンクロージャ(2)の内側の連動化された(ganged)2組の電極(24、25)の配置、及び真空エンクロージャ(2)の部分としての第2のセラミック絶縁体(32)の使用が、前真空エンクロージャ(21)内に位置するモータ(15)を、真空可変コンデンサ(1)の動作中に印加される高電圧からモータを電気的に絶縁するための追加の絶縁片を前真空エンクロージャが必要としないような態様で接続することを可能にする。これによって、第2の真空エンクロージャ内のモータのよりコンパクトなレイアウトが可能になる。
【0037】
図2及び3ではともに、モータ(15)が、前真空エンクロージャ(21)の内側に位置するものとして示されている。しかしながら、その代わりに、モータ(15)を、前真空エンクロージャ(21)の外側に完全に又は部分的に配置することもできる。前真空エンクロージャ(21)は、ベローズ(11)の両側の圧力差を低減させる圧力容器の役目を果たし、モータ(15)を収容するための前真空エンクロージャ(21)の使用は2次的なものである。
【0038】
図4は、本発明の第3の実施例に基づく真空可変コンデンサ(1)の実例を示し、この真空可変コンデンサは、第1及び第2の実施例と同様に、第1の真空エンクロージャ(2)を備え、第1の真空エンクロージャ(2)は、第1及び第2の実施例に関して説明したものと同様に、真空(12)中の電極(6、7)と、低圧の気体(20)を含む前真空エンクロージャ(21)から真空(12)を分離するベローズ(11)とを含む。
【0039】
図4の真空可変コンデンサはさらに、第2の真空エンクロージャ(22)及び第2の変形可能壁領域又はベローズ(27)と、前真空エンクロージャ(21)とを備え、これらは、第2の真空(13)と前真空気体(20)の間の圧力差に起因する第2のベローズ(27)の正味の真空力及び第2のベローズ(27)のベローズばね力が、第1のベローズ(11)に対する、対応する正味の真空力及びベローズばね力と実質的に同じとなり、しかしこれらとは反対の方向に作用するように構築されている。
【0040】
図4に示されているとおり、第1のベローズと第2のベローズは、機械式連結手段(このケースでは共通のシャフト(9))によって接続されており、このことは、第1のベローズ(11)の運動に対して、第2のベローズ(27)の同様だが逆向きの運動が起こり、逆に第2のベローズ(27)の運動に対して第1のベローズ(11)の運動が起こることを保証する。言い換えると、第1のベローズ(11)がその真空力に逆らって(
図4では上方へ)移動する場合には、第2のベローズ(27)がその真空力によって(
図4ではやはり上方へ)移動する。
【0041】
このように、ベローズ(11)に対する真空力及びばね力を、第2の同様の(しかし反対に作用する)ベローズ(27)及び真空エンクロージャ(22)の配置によって、実質的に(又は完全に)補償することができる。
【0042】
2つのベローズ(11及び27)を連結する可能なさまざまな機械式連結機構を思い浮かべることができるが、それぞれの端が、第1のベローズ(11)及び第2のベローズ(27)の対応するそれぞれの端部に固定されたまっすぐな貫通シャフト(28)は、ねじ継手又は他の可動部品を必要としないという利点を有する。
【0043】
図4は、第1の真空エンクロージャ(2)と第2の真空エンクロージャ(22)が共通の前真空エンクロージャ(21)を共用して、対応するそれぞれのベローズ(11、27)の両側の圧力差を低減させる配置を示している。しかしながら、2つの別個の前真空エンクロージャを使用して同じ結果を達成することも可能であると考えられる。
【0044】
この配置を使用するときには、リニア駆動機構又はねじ及びナットを含まない任意の他の移動手段を使用すると特に有利である。さらに、この実施例を使用すると、真空可変コンデンサを調整するのに必要な力が、上で論じた実施例よりもいっそう低減し、よりいっそう速い速度を達成することができる。
図4の真空可変コンデンサを調整する目的には例えば、リニア誘導モータ、ボイス・コイル型モータなどのリニア・モータ(29、34)を使用することができる。さらに、ベローズに対する正味の真空力及びばね力が事実上ゼロまで低減するため、静電容量調整速度が、前真空エンクロージャ(21)内の圧力に依存しない。したがって、前真空エンクロージャ(21)内の圧力は、大気圧又は大気圧よりも高い圧力を含む任意の値とすることができる。実際、この第3の実施例の真空可変コンデンサは、前真空エンクロージャ(21)が全くなくとも機能することができる。それでも、ベローズ(11、27)によって機械式連結機構(28)に伝達される真空力/ばね力は相殺されると考えられる。
【0045】
本発明の3つの全ての実施例では、第1の真空エンクロージャ(2)の内側の真空(12)中にモータ(15)若しくはボイス・コイル(29)を配置することが可能であると考えられること、又は、第3の実施例では、第2の真空エンクロージャ(22)の内側の真空(13)中にモータ(15)若しくはボイス・コイル(29)を配置することが可能であると考えられることに留意されたい。しかしながら、いくつかのモータは大気圏外で機能することが知られており、したがって真空に適合しているが、電極を含む真空エンクロージャ内に電気モータを直接に組み込むことは実行可能ではない。その理由は、このようなモータでさえも気体を放出し、誘電目的に必要な真空を劣化させるためである。10
−3ミリバールよりも良い(低い)真空圧力を維持する必要があるが、そのような真空圧力は、モータ部品の長期気体放出速度と両立しないことが分かった。