特許第6374494号(P6374494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374494
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】磁気式U字縫合デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   A61B17/04
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-521290(P2016-521290)
(86)(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公表番号】特表2016-532472(P2016-532472A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】US2014052852
(87)【国際公開番号】WO2015053872
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】14/455,354
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/888,170
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505157979
【氏名又は名称】アプライド・メディカル・テクノロジー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, グラント ウェズリー
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアムス, デレク エム.
(72)【発明者】
【氏名】ピチャ, ジョージ ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ, キャスリーン
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−025934(JP,A)
【文献】 特表2010−514467(JP,A)
【文献】 特開2007−090062(JP,A)
【文献】 特開2001−353163(JP,A)
【文献】 特開平07−328020(JP,A)
【文献】 特開2005−245591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合デバイスであって、
第1皮下針及び第2皮下針と、
前記第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、一端に磁気先端を備える、少なくとも一本の縫合糸と、
前記第2皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、磁気先端を備える、磁気回収プローブと、
カニューレを有する縫合糸送り要素とを備え、
前記縫合糸送り要素は、前記第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、前記少なくとも一本の縫合糸は前記カニューレ内に少なくとも部分的に配置され、
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端と、前記磁気回収プローブの磁気先端とが、逆の極性を有し、前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端の直径は前記カニューレの内径よりも大き
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端は、金属管を介さずに、前記第1皮下針の内面に面するように構成される、縫合デバイス。
【請求項2】
前記縫合糸送り要素のカニューレは、前記縫合糸送り要素の押下中に、前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端を押し込むことにより、前記少なくとも一本の縫合糸を送るように構成される、請求項1に記載の縫合デバイス。
【請求項3】
縫合デバイスであって、
第1皮下針及び第2皮下針と、
前記第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、一端に磁気先端を備える、少なくとも一本の縫合糸と、
前記第2皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、磁気先端を備える、磁気回収プローブと、
カニューレを有する縫合糸送り要素とを備え、
前記縫合糸送り要素は、前記第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、前記少なくとも一本の縫合糸は前記カニューレ内に少なくとも部分的に配置され、
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端と、前記磁気回収プローブの磁気先端とが、逆の極性を有し、前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端の直径は前記カニューレの内径よりも大きく、
前記縫合糸送り要素は第1上部プレートに取り付けられ、前記第1上部プレートは中心ロッドに取り付けられ、
前記磁気回収プローブは第2上部プレートに取り付けられて、前記少なくとも一本の縫合糸が、前記縫合糸送り要素の第1上部プレートと前記磁気回収プローブの第2上部プレートとの間で前記カニューレに通される、縫合デバイス。
【請求項4】
更に、3つの平行する穴を備える安定化ハブを備え、前記第1皮下針と前記第2皮下針は各々、前記3つの穴のうちのいずれか1つを通過し、第3の穴内には前記中心ロッドが入り、前記第3の穴内の前記中心ロッドは張力要素を有する、請求項3に記載の縫合デバイス。
【請求項5】
更に、2つの平行する穴を備える拡がり防止要素を備え、前記第1皮下針と前記第2皮下針は各々、前記2つの平行する穴のうちのいずれか1つを通過し、前記拡がり防止要素は、前記第1皮下針及び前記第2皮下針が患者の組織を通過する際に、前記第1皮下針と前記第2皮下針とを平行に保つよう構成される、請求項4に記載の縫合デバイス。
【請求項6】
前記張力要素は、Oリングまたはばねである、請求項4に記載の縫合デバイス。
【請求項7】
縫合デバイスであって、
第1皮下針及び第2皮下針と、
前記第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、一端に磁気先端を備える、少なくとも一本の縫合糸と、
前記第2皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、磁気先端を備える、磁気回収プローブとを備え、
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端と、前記磁気回収プローブの磁気先端とが、逆の極性を有し、
前記磁気回収プローブは、前記磁気回収プローブが前記第2皮下針の空洞内に配置されていない場合には、先端部に湾曲部分が形成されるように、前記磁気先端において付勢されており
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端は、金属管を介さずに、前記第1皮下針の内面に面するように構成される、縫合デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端と前記磁気回収プローブの磁気先端は、それぞれ、前記第1皮下針の空洞内と前記第2皮下針の空洞内に位置し、前記磁気回収プローブの磁気先端は、前記第1皮下針における前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端よりも、前記第2皮下針の先端部の近くに位置付けられる、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも一本の縫合糸は、第1縫合糸及び第2縫合糸に結ばれた案内縫合糸を備え、前記案内縫合糸は、前記磁気先端にも接続されている、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも一本の縫合糸は2本の縫合糸であり、前記2本の縫合糸は、患者に二重縫合を作るために、同一の磁気先端を共有する、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項11】
前記磁気回収プローブは、前記第2皮下針の空洞部に配置されていない場合に、少なくとも磁気先端部に湾曲部分が形成されるように、付勢されている、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項12】
前記縫合糸送り要素と前記磁気回収プローブはそれぞれ、体腔内に導入されると、前記磁気回収プローブの磁気先端が、前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端と磁気によって接続する、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項13】
前記磁気回収プローブが体腔から除去されると、前記少なくとも一本の縫合糸の磁気先端に接続された前記磁気回収プローブの磁気先端は、前記少なくとも一本の縫合糸を、前記縫合糸送り要素から体腔内に引き込み、前記第2皮下針を介して体腔外に引き出す、
請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【請求項14】
前記磁気回収プローブの磁気先端が前記第1皮下針の下で前記少なくとも一本の縫合糸を待ち受けるようにして、前記少なくとも一本の縫合糸と前記磁気回収プローブが体腔内に導入可能に構成される、請求項1または7に記載の縫合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、参照により全体として本書に組み込まれている、2013年10月8日出願の米国仮特許出願第61/888,170号の優先権を有する。
【0002】
本書で説明される発明は、医療用縫合デバイス、及び、患者に医療縫合を提供するための方法に関する。具体的には、本書で説明される発明は、磁石を使用してU字縫合を作るためのデバイス及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
[0001]U字縫合とTファスナは、臓器と組織を固定するのに使用される、2つの一般的な外科技術である。例えば、胃ろう造設デバイスの初期設置に際しては胃を腹壁に合わせて引っ張り上げる必要がある。U字縫合とTファスナはどちらも、それを行うための技術であり、経皮的に実行されうる。例えばU字縫合は、患者の体内の腔部を通るループ状のステッチである。その結果として、体外の縫合糸が、外科医によって引き締められうる。成人に加え、幼児、或いはもっと幼い子供でさえも、胃ろう造設デバイスの受容者になることは多い。上記の例で言及したように、縫合は、患者の胃を通ってループ状になっており、端部に縫合糸が取り付けられた湾曲針を使用する。縫合糸が引き締められる際に、胃は、腹壁側に引っ張られる。この方法は安全かつ確実なものであるが、幼児のような体の小さい子供の場合、皮膚表面と胃腔との間の距離はわずかである。
【0004】
[0002]大きな子供や成人のように、腹壁が厚くなってくると、このU字縫合法は使用できなくなる。また、Tファスナの場合は、患者の大きさにかかわらず容易に設置することはできるものの、胃の内壁を傷つけ易く、内部に入り込み易い点で、Tファスナは劣っている。したがって、どの年齢の患者にとっても好適となる、代替的な固着方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
[0003]後述する詳細な説明及び添付図面における例示的で非限定的な実施形態の各種特徴について、基本的、概略的な理解を容易にするために、簡単な概要を以下に述べる。この概要は、広範又は包括的な概説であることを、意図するものではない。この概要の意図するところは、下記の各種実施形態の詳細な説明の前置きとして、例示的で非限定的な実施形態のうち単純な形態のものについてその概念を紹介することに尽きる。
【0006】
[0004]本書で説明されるデバイスの一実施例により、縫合デバイスは、第1皮下針及び第2皮下針と、磁気先端を備え、第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置される、一本又は複数本の縫合糸と、磁気先端を備え、第2皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置される、磁気回収プローブとを備え、一本又は複数本の縫合糸の磁気先端と、磁気回収プローブの磁気先端とは、逆の極性を有する。例えば、デバイスを介して2本の縫合糸が供給される場合、2本の縫合糸は、説明するように、各端部が共通の磁性先端に取り付けられる。デバイスは、説明するように作動し、一重ステッチではなく二重ステッチを記載のように作り出す。
【0007】
[0005]他の実施形態では、縫合デバイスは更に、カニューレを有する縫合糸送り要素を備え、縫合糸送り要素は、第1皮下針の空洞内に少なくとも部分的に配置され、一本又は複数本の縫合糸がこのカニューレ内に少なくとも部分的に配置される。一本又は複数本の縫合糸の磁気先端の直径は、カニューレの内径よりも大きい。更に別の実施形態では、縫合糸送り要素は第1上部プレートに取り付けられ、第1上部プレートは中心ロッドにも取り付けられ、磁気回収プローブは第2上部プレートに取り付けられて、一本又は複数本の縫合糸が、縫合糸送り要素の第1上部プレートと磁気回収プローブの第2上部プレートとの間でカニューレに通される。更に、縫合デバイスは、3つの平行する穴を備える、安定化ハブも備えてよく、第1及び第2の皮下針は各々、3つの穴のいずれか1つを通過し、中心ロッドは第3の穴内に入り、第3の穴内の中心ロッドは張力要素を有する。及び/又は、縫合デバイスは、2つの平行する穴を備える拡がり防止要素も備えてよく、第1及び第2の皮下針は各々、2つの平行する穴のいずれか1つを通過し、拡がり防止要素は、第1及び第2の皮下針が患者の組織を通過する際に、両者を平行に保つよう構成される。
【0008】
[0006]上記縫合デバイスの更に別の実施形態では、磁気回収プローブは、磁気先端が付勢されていて、第2皮下針の空洞内に配置されていない場合に、先端部に湾曲部分が形成される。一本又は複数本の縫合糸の磁気先端と、磁気回収プローブの磁気先端は、それぞれ、第1皮下針、第2皮下針の空洞内に位置し、磁気回収プローブの磁気先端は、第1皮下針における一本又は複数本の縫合糸の磁気先端よりも、第2皮下針の先端部の近くに位置付けられ、及び/又は、張力付加構成要素はOリング又はばねである。更なる実施形態では、一本又は複数本の縫合糸は、第1及び第2の縫合糸に結ばれた案内縫合糸であって、磁気先端にも接続されている案内縫合糸を含んでよく、あるいは患者に二重縫合を作るために同一の磁気先端を共有する、2本の縫合糸であってもよい。
【0009】
[0007]本書で説明する方法の一実施例により、方法は、第1及び第2の皮下針を、患者の皮膚を通して患者の体腔内に挿入するステップと、磁気先端を備える磁気回収プローブを押下して、第2皮下針に通すステップと、磁気先端を備える少なくとも1本の縫合糸を押下して、第1皮下針に通すステップと、少なくとも1本の縫合糸が、第1皮下針を通って患者の体腔内に引き込まれてから、第2皮下針を通って患者の体腔から引き出されるように、第2皮下針を通して磁気回収用プローブを回収する(抜き出す)ステップと、第1及び第2の皮下針を回収する(抜き出す)ステップとを、含む。方法の他の実施形態では、磁気回収プローブを押下するステップと、少なくとも1本の縫合糸を押下するステップとが、同時に実施され、少なくとも1本の縫合糸を押下するステップは、カニューレを有する縫合糸送り要素を押下することによって実施され、少なくとも1本の縫合糸は、カニューレの中に少なくとも部分的に位置付けられ、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端の直径は、カニューレの内径よりも大きく、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端と、磁気回収プローブの磁気先端とは、逆の極性を有し、磁気回収プローブは、押下されて第2皮下針の針端を通って出た時に、磁気回収プローブの先端部で湾曲部分を形成するように、磁気先端において元々付勢されており、及び/又は、第1及び第2の皮下針は、磁気回収プローブの湾曲部分の角が第1皮下針に対面するように配設される。更なる実施形態では、少なくとも1本の縫合糸は、第1及び第2の縫合糸に結ばれた案内縫合糸を含んでよく、案内縫合糸は、磁気先端に接続されて、引き通しループ縫合を作る、あるいは、少なくとも1本の縫合糸は単一の縫合糸2本であってよく、この2本の縫合糸が患者に二重縫合(ループではない)を作るために同一の磁気先端を共有する。
【0010】
[0008]本書で説明する縫合デバイスの別の実施例の場合、縫合デバイスは、磁気先端を備え、カニューレを有する縫合糸送り要素内に少なくとも部分的に配置された、少なくとも1本の縫合糸を備え、少なくとも1本の縫合糸は、カニューレの中に少なくとも部分的に配置され、カニューレは、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端の直径よりも小さい内径を有し、縫合糸送り要素の作動中に、縫合糸送り要素のカニューレにより、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端を押すことで、少なくとも1本の縫合糸を前進させることが可能になる。さらに縫合デバイスは、磁気先端を備える、付勢された磁気回収プローブであって、少なくとも磁気先端が設けられた1つのプローブ端部が湾曲する、磁気回収プローブを備え、縫合糸送り要素と磁気回収プローブがそれぞれ、第1の導入点、第2の導入点から体腔内に導入されると、磁気回収プローブの湾曲した先端と、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端とが磁気によって接続し、体腔から縫合糸送り要素と磁気回収プローブが除去される際に、磁気回収プローブの磁気先端には少なくとも1本の縫合糸の磁気先端が接続されていて、接続された少なくとも1本の縫合糸が、第1導入点から体腔内に引き込まれた後、この磁気回収プローブの磁気先端を介して、第2導入点から体腔外に引き出される。他の実施形態では、少なくとも1本の縫合糸と磁気回収プローブは、磁気回収プローブの湾曲端部が第1導入点の下で少なくとも1本の縫合糸を待ち受けるように、体腔内に導入される。
【0011】
[0009]更に別の実施形態では、縫合デバイスは更に、縫合糸送り要素と磁気回収プローブを、それぞれ第1の導入点、第2の導入点から体腔内に導入する第1皮下針と第2皮下針、及び/又は、第1皮下針と第2の皮下針が患者の皮膚を通過する際にそれらを平行に保つよう構成された、拡がり防止要素を、備える。また更なる実施形態では、少なくとも1本の縫合糸の磁気先端と磁気回収プローブの磁気先端とは、逆の極性を有し、かつ/又は、磁気回収プローブの湾曲端部は、L字型を形成する。また更なる実施形態では、少なくとも1本の縫合糸は、第1及び第2の縫合糸に結ばれた案内縫合糸を含んでよく、案内縫合糸は磁気先端にも接続される。あるいは、少なくとも1本の縫合糸は、例えば、2本の縫合糸であってもよく、2本の縫合糸は、患者に二重縫合を作るために同一の磁気先端を共有する。
【0012】
[0010]上記の実施形態及び他の実施形態について、下記でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、本書で説明する縫合デバイスの一実施例の斜視図であり、 図1Bは、図1Aの縫合デバイスの、上部の拡大図であり、 図1Cは、図1Aの縫合デバイスの、下部の拡大図である。
図2図2Aは、患者の体腔内に挿入された縫合デバイスの斜視図であり、 図2Bは、患者の体腔内の、縫合デバイスの下部の拡大断面図である。
図3図3Aは、縫合デバイスの縫合糸及び回収プローブの配置を示す斜視図であり、 図3Bは、縫合糸及び回収プローブの配置中の、縫合デバイスの下部の拡大断面図である。
図4図4Aは、縫合デバイスの縫合糸と回収プローブとの磁気接続を示す斜視図であり、 図4Bは、縫合デバイスの縫合糸と回収プローブとの間の磁気接続を示す拡大断面図である。
図5図5Aは、縫合デバイスの回収プローブ及び接続された縫合糸の除去を示す斜視図であり、 図5Bは、回収プローブ及び接続された縫合糸の除去中の、縫合デバイスの下部の拡大断面図である。
図6図6Aは、縫合デバイスからの、接続された縫合糸を伴う回収プローブの完全な除去を示し、 図6Bは、回収プローブの除去後の、縫合デバイスの下部及び体腔内部の縫合糸の拡大断面図を示す。
図7】いつでも引き締められる状態の、縫合デバイスによって作られた縫合を示す。
図7A】縫合デバイスによって作られた二重縫合を示す。
図8】本書で説明する縫合のための方法の一実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0011]本書で説明するデバイス及び方法は、医療縫合に関する。より具体的には、本書で説明するデバイス及び方法は、磁石を使用してU字縫合を作ることを対象とする。いくつかの実施形態では、縫合デバイスは、特に皮下針が関与することから、一回限りの使用のために設計されうる。このような場合、廃棄に適する材料を使用することが望ましいしかし、複数回使用できるデバイスを有することが望ましいこともある。その場合、より丈夫な材料、並びに、消毒プロセスにより感応しやすい材料が、一層有益でありうる。下記の開示全体を通じて、患者の胃の内腹壁への固定のような、例示的な様態で縫合デバイスを使用するための方法の一実施形態に関して、一回限りの使用で使い捨ての縫合デバイスの一実施例を説明する。しかし、下記の説明は、限定された一実施形態のためのものではないことに、留意すべきである。デバイス及び方法に対しては、様々な修正例が行われうるが、それらも本開示の範囲内に含まれる。例えば、かかる縫合は、胃ろう造設関連の処置、盲腸ろう造設、ヘルニア治療、又は、U字縫合が求められる他の処置にも、使用されうる。
【0015】
[0012]胃ろう造設処置の場合、U字縫合デバイスは、胃ろう造設デバイスの初期設置のために、患者の内腹壁に合わせて胃を引っ張るために、使用される。下記でより詳細に説明する例示的なデバイスは、縫合糸及び回収用プローブが、患者の腔部(例えば胃腔)内へと前進することを可能にする、2つの皮下針で作られている。縫合糸と回収用プローブは両方とも、それらの先端部に逆の極性の磁石を備える。ゆえに、縫合糸及び回収用プローブが胃腔内に入った後に、縫合糸と回収用プローブとが繋がり、縫合糸は、磁力を使用して一方の皮下針から他方へと移されうる。そうすることで、縫合糸は腔部内にループを形成する。デバイスが患者から除去されると、患者の体外に位置付けられている2つの端部を有するこの縫合ループは、胃壁を引っ張って患者の体表面に近づけるために、引き締められうる。胃壁が引っ張られて患者の体表面に近づいている状態では、胃ろう造設デバイスの挿入がより容易になる。
【0016】
[0013]これより図の説明を行うが、図1Aは、本書で説明する縫合デバイス100の一実施例の斜視図を示している。この実施例では、縫合デバイス100は、第1及び第2の皮下針102、104を備える。皮下針102、104は、極薄壁の18ゲージステンレス鋼針として示されているが、当業者には既知の、同様の能力を有する任意の皮下針が、本発明の範囲内で使用されることが可能である。図1Aの実施例では、皮下針102、104は、針安定化ハブ106に恒久的に取り付けられている。針安定化ハブ106は、ABSのようなプラスチックから作られるが、他のポリマー又は金属からも作られることが可能である。縫合デバイス100は、それに加えて、磁気回収プローブ108と縫合糸送り要素110とを備える。針安定化ハブ106と同様に、磁気回収プローブ108及び縫合糸送り要素110も、ABSなどの様々なプラスチック、又はステンレス鋼のような金属から作られうる。
【0017】
[0014]図1Bに追加的な詳細を示しているように、磁気回収プローブ108と縫合糸送り要素110は、それぞれ、上端部に恒久的に取り付けられた、第1のプレート112、第2のプレート114を有する。代替的には、第1及び第2のプレート112、114の取り付けは、半恒久的で、プレート112、114が押下された時に磁気回収プローブ108及び縫合糸送り要素110を前進させるに十分なものとなる。縫合糸送り要素のプレート112は更に、針安定化ハブ106の中心穴を通って自由に動く、中心ロッド120を備える。いくつかの実施形態では、下記でより詳細に説明するように、中心ロッド120は、縫合糸送り要素110及び磁気回収プローブ108のゆっくりとした前進を制御するために、Oリング又はばねを包含しうる。磁気回収プローブのプレート112は、縫合糸送り要素のプレート114の上に位置付けられ、かつ、それに軽く接続される。図に示すように、第1と第2のプレート112、114の間には空間がある。縫合糸送り要素のプレート114と磁気回収プローブのプレート112との間で縫合糸送り要素110のカニューレ内に通された、縫合糸116が図示されている。一回限りの使用の実施形態では、縫合デバイス100は、縫合糸116が上記の説明に従って事前に装着された状態で、入手されうる。最後に、(以下でより詳細に説明するように、)更なる支持を提供し、かつ、皮下針102、104が患者に挿入される間にそれらを平行に保つための、拡がり防止要素118が、縫合デバイス100の下端部に図示されている。図示を目的として、皮膚10、内腹部20、及び胃壁30が示されている。胃壁の下の領域は、胃腔と見なされる。
【0018】
[0015]図1Cは、図1Aに示す縫合デバイス100の、下部の断面図を示している。図1Cに示すように、縫合糸送り要素110は皮下針102の内部に位置付けられ、磁気回収プローブ108は皮下針104の内部に位置付けられる。更に、縫合糸116は、縫合糸送り要素110のカニューレの中に位置づけられる。多数の実施形態において、縫合糸送り要素のカニューレの内径は、縫合糸116がカニューレを通って緩く納まるには十分な大きさであるが、縫合糸の先端部に接続された磁石122が納まるには小さ過ぎる。この様態では、縫合糸送り要素110が縫合糸の磁石122を押すことによって、縫合糸116が前進しうる。カニューレの外径も、皮下針102を通ってゆるく納まるサイズのものでありうる。カニューレのサイズの一実施例は、外径0.035”×長さ0.100であるが、これには限られない。カニューレの寸法は、上述の様態で機能するために、皮下針の寸法に比例する。同様に、磁気回収プローブ108も、皮下針104(例えば、外径0.038”)の中にゆるく納まり、磁気回収プローブ108の先端部に位置付けられた磁石124を有しうる。この図には示されていないが、縫合糸の磁石122と回収プローブの磁石124とは、逆の極性のものであるべきである。磁石122、124は、金メッキされた円筒型のネオジムでありうるが、人体の中で安全に使用できる他の磁性材料も、本開示の範囲内に含まれると想定される。
【0019】
[0016]縫合デバイス100について、図2Aから図7の概略図によるその使用、並びに、図8のフロー図に示された方法に関して、以下で説明する。方法における第1のステップ800は、図2A及び図2Bに示すように、所望の縫合場所において皮下針102、104を挿入することを含む。上記で紹介した実施例を依然として参照するに、患者の胃の一部分を患者の内腹壁に固定するために、U字縫合が作られうる。皮下針102、104を挿入するために、ユーザは、縫合デバイス100の針安定化ハブ106を把持し、皮下針102、104の両方の先端が胃腔(胃壁30の下方の領域として示されている)の中に入るまで、患者の皮膚10、内腹部20、及び胃壁30を通して、皮下針102、104を前進させうる。皮下針102、104の前進は、図2Aでは、下向きの矢印200で示されている。上述のように、拡がり防止要素118は、皮下針102、104が患者の組織10、20、30を通って前進する際に、皮下針102、104を平行に保つことに役立つ。加えて、「分離防止」構成要素118は、皮下針102、104が患者の皮膚10の外側の層を前進し、そこに留まる際に、皮下針102、104の上方へ摺動しうるように、皮下針102、104を緩く取り巻いていてよい。図2Bに示すように、拡がり防止要素118は、皮下針102、104が患者の組織を通って前進する際に、皮下針の水平位置を維持する。図2Bには、縫合糸送り要素110、縫合糸116、及び、皮下針102の中の縫合糸の磁石122の位置付けも描かれており、磁気回収プローブ108、及び、皮下針104の中の回収プローブの磁石124の位置付けは、図1Cに示す、縫合デバイス100を患者の組織を通しての挿入する前と、同一である。
【0020】
[0017]方法の次のステップは、図3A及び図3Bに示すように、磁気回収プローブ108を押下すること802Aと、縫合糸送り要素110を押下すること802Bとを含む。図全体を通じて示し、かつ、上述しているように、磁気回収プローブのプレート112は、縫合糸送り要素のプレート114の上に位置付けられる。従って、本書で描かれている実施例では、矢印300で示すように、第2プレート112を介して磁気回収プローブ108を押下することで、第1プレート114を介しての縫合糸送り要素110の押下も、同時に引き起こされる。縫合糸送り要素のプレート114に磁気回収プローブのプレート112が重なった配設によって、(上側の)第2プレート112が押下される時に、2枚のプレートが同時に作動する。代替的なプレート配設が利用されることもあり、それによって、磁気回収プローブのプレート112と縫合糸送り要素のプレート114の押下は、個別に、かつ、本書で説明するような所望のU字縫合が実現する限りにおいて任意の順番で、行われうる。
【0021】
[0018]図3Bでより詳細に示すように、縫合糸送り要素110及び磁気回収プローブ108は各々、それぞれのプレート112、114を用いて押下されることにより、それぞれの皮下針102、104を通って前進する。中心ロッド120のOリング又はばねは、縫合糸送り要素110及び磁気回収プローブ108の、制御された安定的な配置を容易にすることにも役立つ。
【0022】
[0019]いくつかの実施形態では、磁気回収プローブ108の位置付けは、皮下針102内の縫合糸送り要素110に対して、皮下針104の先端部に向かってオフセットされうる。図1C及び図2Bを想起するに、皮下針102の先端部に対する、縫合糸送り要素110の端部の磁気先端122の距離よりも、皮下針104の先端部に対する、磁気回収プローブ108の磁気先端124の距離の方が、短い。図3Bは、縫合糸送り要素110に対する、磁気回収プローブ108のオフセット位置付けの一態様を、明示している。この様態では、磁気回収プローブ108と縫合糸送り要素110の両方が同時に押下される場合、磁気回収プローブ108は皮下針102の下方で、縫合糸送り要素110の磁気先端が、前進して皮下針102から出るのを、待ち受けうる。しかし、上記のオフセット配設は、磁気回収プローブ108と、縫合糸送り要素110の中の縫合糸116との間の接続をより容易にすることに、留意すべきである。かかる実施形態は、縫合デバイス100が適切に機能するために、必要というわけではない。
【0023】
[0020]加えて、磁気回収プローブは、磁気回収プローブが皮下針104の中で真っ直ぐに保たれていない時には、磁気回収プローブ108の先端部が湾曲部分を形成し、それによって「L字型」を作るように、元々備わった付勢を有することが、望ましいかもしれない。これは図3Bに明示されている。そうすることで、磁気回収プローブ108は、「差し伸ばされ」て、皮下針102内の縫合糸送り要素110からの縫合糸116との接続をより容易にしうる。この場合も、かかる特徴は、縫合デバイス100の動作に必要なものと見なされるべきではない。
【0024】
[0021]図4A及び図4Bは、完全に押下され、皮下針102、104から出て配置された、縫合糸送り要素110及び磁気回収プローブ108を示している。縫合糸送り要素110は、完全に押下されると、定位置に不可逆的にロックされうる。この段階において、磁気回収プローブ108はまた、完全かつ自然に湾曲している。縫合糸116が緩く保持されている場合には、縫合糸の磁石122と回収プローブの磁石124との間の磁力により、縫合糸116は、縫合糸送り要素110のカニューレから自然に引き出されることが可能になる。磁石122、124は次いで、胃腔の中で、縫合糸116がいくらか緩んだ状態で繋がりうる。
【0025】
[0022]次のステップ804は、図5A図5B図6A、及び図6Bに示すように、磁気回収プローブ102を回収することによって、縫合糸116を回収することを含む。縫合糸送り要素のプレート114が定位置にロックされている状態では、磁気回収プローブ108は、矢印500で示すように第2プレート112を引き上げることによって、縫合糸送り要素110とは無関係に後退しうる。そうすることで、縫合糸116は、縫合糸送り要素110を通って胃腔内へと前進し、磁気回収プローブ108を備えた皮下針104を通って上方向に引き込まれ始める。その結果として、縫合糸116は、胃腔の中でU字形状になる。図6A及び図6Bに示すように、磁気回収プローブ108は、磁気によって磁気回収プローブ108と接続されたままの縫合糸116と共に、患者の胃腔から、かつ皮下針104から、完全に後退しうる。
【0026】
[0023]最後に、縫合デバイス100全体が、ステップ806に従って、図7に描かれているように、後退しうる。これは、例えば、針安定化ハブ120をつかんで縫合デバイス100を上方向に引っ張ることによって、達成されうる。皮下針102、104を含む縫合デバイス100が患者から除去される際に、縫合糸116は、後に残されて、患者の組織を通りステッチ116の両端部が患者の体外にある、U字型となる。図7に示すように、縫合糸は、縫合糸送り要素110を通って完全に引っ張られており、縫合糸の磁石122と回収プローブの磁石124とは、手動で断接されている。この時点において、ユーザは、U字縫合を引き締めて完成させ、それによって、胃壁30を皮膚10の内腹壁に当接させて引っ張りうる。
【0027】
[0024]一部の用途では、一度に、つまり第1及び第2のプレート112、114の単一の押下によって、複数の縫合糸を配置することが望ましいかもしれない。例えば、2本の縫合糸のためのかかる実施形態では、皮下針102及び縫合糸送り要素110は、第1及び第2の縫合糸704,706(例えば図7Aを参照のこと)を収容するに十分な大きさのゲージを有する。第1及び第2の縫合糸704、706は、上述のように、単一の磁石122(図示せず)に取り付けられうる。皮下針104は、これも前述されているように、縫合糸704、706に取り付けられた磁石の極性とは逆極性を有する磁石を備える、磁気回収プローブ108を用いる。そのため、磁気回収プローブ108の磁石は、縫合糸の磁石122に接続しうる。次いで、磁気回収プローブ108が患者の胃腔から引き抜かれる際に、第1及び第2の縫合糸704、706の両方は、皮下針102を通って胃腔内へと引き込まれ、皮下針104を通って胃腔の外に引き戻され、それによって、2本の縫合糸が後に残る(例えば二重縫合)。
【0028】
[0025]別の実施形態では、図7Aに明示されている引き通しループ縫合が、図1から図7で上述したように、使用され、供給されることも可能である。引き通しループ縫合700は、図1から図7で上述した、先端部に取り付けられた磁石又は磁気先端を有するような、引き通しループ縫合700の案内縫合糸702が、一重縫合に見える。しかしこの実施形態では、2本の縫合糸704、706が、単一の案内縫合糸702に(例えば案内縫合糸のだいたい同じ位置、又は同様の位置において)取り付けられており、案内縫合糸は、磁気端部又は磁気先端を有している。デバイス100で使用される時に、案内縫合糸702は(皮下針102を介して)配置され、その磁気先端(例えば122)は、磁気回収用プローブ108の磁気先端(例えば124)と接続し、案内縫合糸702は、体腔を通って皮下針104を上方へと引っ張られ、案内縫合糸702に接続された2本の縫合糸704、706もそれに従う。その結果として、体腔の中に二重縫合710が作られ、体腔の外側に引き通しループ718が作られる。
【0029】
[0026]複数縫合糸の実施形態の多くの変形例が存在してよく、それらは、本開示の範囲内に含まれると当業者には理解されることに、留意されたい。
【0030】
[0027]「実質的に」という用語は、本書で使用される場合、推定の用語である。ある用語法は、本書では便宜上使用されているにすぎず、本発明に対する限定とみなすべきではない。本書で使用される関連語は、図面を参照することでもっとも良く理解され、図面においては、同種の参照番号が、同種の、又は類似したアイテムを特定するために使用されている。更に、図面では、ある特定の特徴は、幾分概略的な形態で示されうる。
【0031】
[0028]本書で使用される場合、本書に記載の複数の部材が後に続く「〜のうちの少なくとも1つ」という言い回しが、部材のうちの1つ、又は、1を上回る数の部材の組み合わせを意味することにも、留意されたい。例えば、「第1ウィジェット及び第2ウィジェットのうちの少なくとも1つ」という言い回しは、本出願においては、第1ウィジェット、第2ウィジェット、又は、第1ウィジェット及び第2ウィジェットを意味する。同じように、「第1ウィジェット、第2ウィジェット、及び第3ウィジェットのうちの少なくとも1つ」は、本出願においては、第1ウィジェット、第2ウィジェット、第3ウィジェット、第1ウィジェット及び第2ウィジェット、第1ウィジェット及び第3ウィジェット、第2ウィジェット及び第3ウィジェット、又は、第1ウィジェット、第2ウィジェット及び第3ウィジェットを意味する。
【0032】
[0029]様々な特徴が上記で提示されているが、これらの特徴は、当然ながら、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用することができる。更に、請求項に記載した形態に関連する当業者には、各種変形例や修正例に想到しうる。本書で説明している実施例は、例示にすぎない。当業者は、請求項に記載した要素と均等な代替的な要素を有する、代替的な設計を、本開示に基づいて、作成し、使用することが可能である。したがって、その範囲は、請求項の文言と同一、又は、実質同一の他の実施例を含むと解される。したがって、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図8