(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
実質的に非水のキャリア組成物、及び、アントラピリドン系列の少なくとも1つの塩を含む少なくとも1つの色素を含む、室温にて固体であり且つより高い温度にて液体であるインク組成物であって、有機スルホン酸化合物を含むインク組成物。
前記有機スルホン酸化合物は、パラトルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸を含む群から選択されるベンゼンスルホン酸化合物である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク組成物。
前記塩は、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、N−メチル−N,N−ジオクチル−1−オクタンアミニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、Primene(商標)81−R、1,3ジ−オ−トリルグアニジン、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリブチルオクチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド及びトリペンチルアミンを含む群から得られるカチオンを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインク組成物。
前記有機スルホン酸は、全インク組成物に対して0.01重量%から10重量%の量で存在するパラトルエンスルホン酸である、請求項11又は12に記載のインク組成物。
インク組成物を調製する方法であって、インクは室温にて固体であり且つより高い温度にて液体であり、インクは、実質的に非水のキャリア組成物、及び、アントラピリドン系列の少なくとも1つの塩を含む少なくとも1つの色素、及び、有機スルホン酸化合物を含み、当該方法は:
− 前記非水のキャリア組成物、前記色素及び前記有機スルホン酸化合物を提供するステップと;
− 前記非水のキャリア組成物が融け、さらに、前記色素及び前記有機スルホン酸化合物が前記非水のキャリア組成物において溶けるまで、前記非水のキャリア組成物、前記色素及び前記有機スルホン酸化合物を高い温度まで加熱するステップと;
− 均一な混合物が得られるまで、前記非水のキャリア組成物、前記色素及び前記有機スルホン酸化合物を前記高い温度にて撹拌するステップと;
を含む、方法。
【背景技術】
【0002】
ホットメルトインクとしても既知のこの種のインク組成物は、特許文献1から知られている。この特許文献は、非水のキャリアと、アントラピリドン系列の少なくとも1つの塩を含む少なくとも1つの色素とを含む、インクジェット印刷装置において適用されることになるホットメルトインクを記載しており、特に、C.I.Acid Red143及び143:1のトリフェニルメチルホスホニウム(TMP)塩が、上記特許文献において開示されている。
【0003】
特許文献1において開示されたインク組成物の欠点は、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンが、例えば原材料における自然発生により、インク組成物に存在する場合に、そのような金属イオンは、発色団C.I.Acid Red143及び143:1のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としてプリントヘッドのノズルにおいて沈殿し得るということである。その例は、上記の発色団のマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩であり、特にそのカルシウム塩である。そのようなノズルでの堆積は、噴射角の欠陥及び印刷品質の問題(例えば、印刷物上の白い筋等)を引き起こし得る。
【0004】
一般に、上記の欠点は、色素としてアントラピリドン系列の塩を含むホットメルトインク組成物に関し、そのインク組成物に存在する少なくとも1つのアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンが、発色団のアニオンとの強い相互作用を、その色素のアニオンと元々結合していたカチオンよりも有する場合に生じる。そのような場合、発色団のアニオンと結合するカチオンのイオン交換が生じ、おそらく上記のようにノズルの堆積が生じる。
【0005】
特許文献1において開示されたインク組成物の別の欠点は、インク組成物におけるそのような色素の溶解性は低く、インク組成物における所望の濃度レベルの色素にて色素の結晶化をもたらし得るという傾向があるということである。色素の結晶は、フィルタ及びノズルの目詰まりを引き起こし得る。
【0006】
上記欠点は、特に、マゼンタ色素を含むインク組成物にあてはまる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるインクを用いて、アントラピリドンの、特にマゼンタアントラピリドンの(誘導体色素として作用する)塩の安定性を改善することができるということが意外にもわかった。この種のインク組成物は、所望の調色レベルにてキャリア組成物において可溶性であり、さらに、ノズルの堆積を形成しない。
【0012】
いかなる理論にも縛られるものではないけれども、インク組成物において存在するアルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンは、スルホン酸に優先的に結合して、スルホン酸塩を形成するということが考えられる。この機構は、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンが発色団のアニオンに結合するのを防ぐ。従って、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、特に、発色団のカルシウム塩のノズルでの堆積を防ぐか又は少なくとも軽減することができる。
【0013】
スルホン酸添加物
一実施形態において、有機スルホン酸化合物は、芳香族有機スルホン酸化合物を含む。
【0014】
一実施形態において、有機スルホン酸化合物は、以下の式:
【化1】
を満たし、ここで、Rは、1から20の炭素原子を有するアルキル基であり、アルキル基は、任意で分枝状であり、さらに、任意でヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基と置換される。
【0015】
一実施形態において、有機スルホン酸化合物は、ベンゼンスルホン酸化合物であり、パラトルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸を含む群から選択される。
【0016】
一実施形態において、有機スルホン酸化合物は、全インク組成物に対して0.01重量%から10重量%、好ましくは0.05重量%から5重量%、より好ましくは0.1重量%から1重量%の量で存在する。
【0017】
本発明によるインク組成物において色素として使用される発色団の塩
一実施形態において、発色団の塩は、少なくとも1つのホスホニウム基及び/又は少なくとも1つのアンモニウム基を含む。1つ又は複数のホスホニウム基及び/又は1つ又は複数のアンモニウム基の適用は、これらの基が塩に比較的良い熱安定性を提供することになるため有利であると考慮される。ホスホニウム基及び/又はアンモニウム基は、一般に、アニオンのアントラピリドンに結合する塩のカチオンに含まれることになる。さらに、ホスホニウム塩の使用は、一般に、観察可能なにおいの放出をもたらすことはない。
【0018】
一実施形態において、塩は、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、N−メチル−N,N−ジオクチル−1−オクタンアミニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、Primene(商標)81−R(Rohm and Haas,USAにて入手可能な一級脂肪族アミン)、1,3ジ−オ−トリルグアニジン、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド及びトリペンチルアミンを含む群から得られるカチオンを含む。
【0019】
Aldrichから入手可能なカチオンのトリフェニルメチルホスホニウム(TMP)ブロミドとアントラピリドンとの化学反応を強制することは有利であるということがさらにわかった。この反応は、一般に、比較的高い産生量を有することになる。さらに、この反応は、比較的容易に開始することができる。アントラピリドン分子と少なくとも1つのトリフェニルメチルホスホニウムブロミド分子との反応の間、(例えばNa
+イオン又はH
+イオン等、使用されるアントラピリドンのタイプに応じて)少なくとも1つのイオンが、アントラピリドン分子から除去されることになり、さらに、臭化物イオン(Br
−)が、各トリフェニルメチルホスホニウムブロミド分子から除去されることになる。このようにして得られる塩は、アニオンのアントラピリドン及びカチオンのトリフェニルメチルホスホニウム(TMP)を含む。
【0020】
一実施形態において、さらに、塩の形成を促進するために、(塩を形成する出発物質として使用される)アントラピリドンは、少なくとも1つのスルホン酸基及び/又はその誘導体を含む。スルホン酸基及びその誘導体は、一般に、比較的反応性であり、アントラピリドンの化学修飾をかなり促進する。さらに、1つ又は複数のスルホン酸基及びその誘導体の適用は、一般に、比較的熱安定の色素をもたらすことになる。
【0021】
一実施形態において、本発明によるインク組成物に対して有色塩を調製するためのアントラピリドンは、以下の式2:
【化2】
によって表すことができ、ここで、Xは、フェニル、アルキルフェニル及びシクロアルキルフェニルの基を含む群から選択される要素を意味し、Yは、フェニル、アルキルフェニル、フェノキシフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ジフェニル及びテトラヒドロナフチルのラジカルを含む群から選択される要素を意味し、さらに、Rは、水素、メチル、クロリド、ブロミド、メトキシ又はニトロを含む群から選択される要素である。有色塩を調製するためにそのようなアントラピリドン分子を使用することの利点は、得られることになる塩が、一般に、比較的良い且つ耐久性のあるカラーレジスタンス(color−resistance)を有することになるということである。
【0022】
一実施形態において、本発明によるインク組成物の色素は、以下の式3:
【化3】
によって表される塩を含む。
【0023】
上記の塩は、アニオンのマゼンタアントラピリドン、特にC.I.Acid Red 143:1、及び、カチオンのTMPを含む。C.I.Acid Red 143:1は、Nippon Kayaku,Tokyo,Japanから入手可能である。この製品は、比較的純であるとして考慮され、実際に全ての分子が、2つのスルホン酸基を含む。
【0024】
一実施形態において、色素は、以下の式4:
【化4】
によって表される塩を含む。
【0025】
上記の塩は、アニオンのマゼンタアントラピリドン、特にC.I.Acid Red 143、及び、カチオンのTMPを含む。C.I.Acid Red 143は、Clariant AG,Basel,Switzerlandから入手可能である。この製品は、C.I.Acid Red 143:1よりも純ではないとして考慮されるけれども、依然として、満足のいく且つ比較的安定した塩を、この化合物を用いて得ることができる。
【0026】
別の態様において、本発明は、インク組成物を調製する方法に関し、インクは室温にて固体であり且つより高い温度にて液体であり、インクは、実質的に非水のキャリア組成物、及び、アントラピリドン系列の少なくとも1つの塩を含む少なくとも1つの色素、及び、有機スルホン酸化合物を含み、当該方法は:
− 非水のキャリア組成物、色素及び有機スルホン酸化合物を提供するステップと;
− 非水のキャリア組成物が融け、さらに、色素及び有機スルホン酸化合物が非水のキャリア組成物において溶けるまで、非水のキャリア組成物、色素及び有機スルホン酸化合物を高い温度まで加熱するステップと;
− 均一な混合物が得られるまで、非水のキャリア組成物、色素及び有機スルホン酸化合物を高い温度にて撹拌するステップと;
を含む。
【0027】
当該方法は、供給業者から得られる原材料を用いて、又は、アントラピリドン系列の少なくとも1つの塩を含む色素を含む現存するホットメルトインク組成物を用いて、融けたインク組成物に有機スルホン酸化合物を添加するステップを有して行うことができる。
【0028】
一実施形態において、本発明による方法は:
− 100nmから500nm、好ましくは150nmから300nm、より好ましくは200nmから250nmのポアサイズを有するフィルタで、得られた液体の混合物を濾過するステップ;
をさらに含む。
【0029】
このさらなるステップで、形成された有機スルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、特に有機スルホン酸のカルシウム塩を除去して、ノズルの目詰まりのリスクをさらに減らすことができる。インク組成物において存在する有機スルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の小さい粒子は、フィルタ上で層を、すなわちフィルタケーク層を容易に形成し得る。フィルタケーク層は、フィルタ自体として作用し、さらに、フィルタのポアよりも小さいポアを有してもよい。フィルタケークの形成は、従って、インク組成物において存在する有機スルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の除去を高める。ホットメルトインクの場合には、濾過ステップは高い温度にて、少なくとも、インクキャリア組成物が融けた状態にある温度にて行われるということが明らかである。しかし、有機スルホン酸の沈殿物は噴出させることができるため、このステップは任意である。
【0030】
実施例
材料
特に明記しない限り、全ての化学物質をSigma Aldrichから得た。その化学物質は、受け入れたままの状態で使用した。
【0031】
実施例において使用したTonerPearls CW600 Magentaは、Oceから得られる。
【0032】
実験及び測定方法
カルシウム濃度
ホットメルトサンプルにおけるカルシウム濃度を以下のように決定した:
− ポリプロピレン(PP)チューブを使用して、2グラムのホットメルト組成物を、(Sigma Aldrichから得た)6mlのクロロホルムにおいて溶かし、さらに、1mlのUHQ水を添加した;
− Multi−RS60(BioSan)を使用して、2つの相を2時間混ぜ合わせた;
− 明瞭な相分離に達するまで、Hermle Z323遠心分離機(5000rpm)を使用して、チューブを5分間遠心分離した;
− ピペットを使用して水相を分離し、さらに、1.5mlのポリプロピレンバイアルにおいて保管した。
【0033】
CG12aプレカラム及びCS12aメインカラムを備えたイオンクロマトグラフシステム(DionexからのICS−5000)を使用して、サンプルを分析した。検出は、電気伝導度検出器を使用して行われる。システムの較正は、Dionexから入手可能な6陰イオン標準液(6cation standard)を使用して実行した。
【0034】
PTSA濃度
パラトルエンスルホン酸(PTSA)の濃度は、ホットメルト組成物の成分の重さを、それらを混ぜ合わせる前に量ることによって決定される。本発明に関してPTSA濃度は、測定されていない。
【0035】
ドロップサイズ/噴射角/プリンタのテスト
CCDカメラを含む専用の測定ツールを用いて測定を行った。
【0036】
プリンタのテストを開始する前に、動作パルス振幅(actuation pulse amplitude)を調節することによって6.0m/sの液摘速度にプリントヘッドを調整した。
【0037】
プリンタのテストは、上記のように調整したOce ColorWaveプリントヘッドと共にOce ColorWave600を用いて行った。テストは、ホットメルトインクでプリントヘッドをすすいだ後で開始した。テスト中、プリンタは持続的に印刷していたか、又は、少ない印刷物を0.5〜3時間毎に印刷することによって(プリントヘッドをクールダウンすることなく)待機/省電力の状態であった。
【0038】
全インク使用量は、1つの色あたり約0.5g/時間であった。
【0039】
テストの後、各プリントヘッドに対する液摘サイズを、(上記のように)6.0m/sに噴射速度を再調整した後で測定した。この速度にて、全ノズルに対する平均液摘サイズ[μm]を、重さを量ることによって測定した。
【0040】
既知の数のインク液摘を射出し、さらに、(予め重さを量った)アルミニウムカップにおいて遮断した。射出したインクを含有するカップの重さを量ることによって、インク液摘の平均重量を計算し、さらに、インク組成物の質量密度を用いて液摘体積を計算した。
【0041】
Δd
droplet=(プリンタのテストの開始時の液滴の直径)−(プリンタのテストにおける#Warm Ours後の液滴の直径)。
【0042】
また、噴射角が測定され、さらに、そのプリントヘッドに対する平均が測定される(σ
jet angle=プリンタにおける紙輸送方向に垂直な噴射角の標準偏差[°])。
【0043】
本発明は、次に、以下の非限定的な実施例を参考にして説明される。
【0044】
C.I.Acid Red 143のTMP塩の調製
200gのC.I.Acid Red 143(Lanasyn Red F−5Bという商標名でClariant,Basel,Switzerlandから入手可能)を、室温にて約2lのミネラル除去した水において溶かした。
【0045】
400mlのミネラル除去した水中135gトリフェニルメチルホスホニウムブロミドの溶液を調製した。
【0046】
後者の溶液を、撹拌しながらC.I.Acid Red 143溶液に液摘で添加した。後に、その混合物に、撹拌しながら2lのジクロロメタンを液摘で添加した。次に、その混合物を約1時間そのままにして、満足のいく相分離を達成した。2つの層の相分離が完了した後、上の層(水性層)を除去した。
【0047】
ジクロロメタン相を、例えば6回等、少なくとも2回、それぞれ約2lの水ですすいで、生成された付属的な塩を洗い流した。
【0048】
ジクロロメタン相の濾過の後、ジクロロメタン相を、45℃での蒸発によって濃縮した。最終的な溶媒の残りを真空で蒸発させた。当該方法によって形成される生成物は、トリフェニルメチルホスホニウム及びC.I.Acid Red 143の塩である。
【0049】
C.I.Acid Red 143のカルシウム塩の調製
200gのC.I.Acid Red 143(Lanasyn Red F−5Bという商標名でClariant,Basel,Switzerlandから入手可能)を、室温にて約2lのミネラル除去した水において溶かした。乳酸カルシウム等の適したカルシウム塩を添加することによって、過剰量のCa
2+イオンを、得られた混合物に添加した。
【0050】
次に、その混合物を24時間撹拌し、さらに、濾過した。残留物を、少なくとも3回水で洗浄した。最後に、得られた塩(カルシウムの発色団の塩)を乾燥した。
【0051】
比較例A:従来技術によるホットメルトインク
1,4−ジメタノールトランスシクロヘキサンと2モル当量のオルトメチル安息香酸との反応から形成される65重量%のビス−エステルを含有するキャリア組成物を調製することによって、ホットメルトインク組成物を調製した。Cyclo−2Tとしても知られるこの化合物は、特許文献2において開示されている(表2、D、化合物17)。或いは、65%の上記化合物を使用する代わりに、特許文献3において記載されている式IIによる65%の結晶成分を含むインクを調合することができる(例えば、特許文献3の表3に記載されている化合物8等)。
【0052】
加えて、キャリア組成物は、異なる化合物の混合物である非結晶成分を35重量%含有した。この非結晶成分は、特許文献4の実施例3において説明されているように得ることができる。
【0053】
上記のように得られた色素(TMP及びC.I.Acid Red 143の塩)を、100gのキャリア組成物あたり4gの量で添加した。この方法で得られたインクは、普通紙の受け材料に移される場合にいかなる可視の着色剤の移行もほとんど示すことのない輝くマゼンタ色を有しているように思われる。この受け材料が後に、例えば透明なホイル等の別の層でラミネートされる場合でさえも、移されるイメージは、その鮮明さ及び画質を実質的に保持することになる。
【実施例1】
【0054】
ホットメルトインクのカルシウム含有量
マゼンタのCrystalPointトナーカプセル(toner pill)を、Oceから得て、さらに、原材料及び参照材料として実施例1の実験1〜3において使用した。
【0055】
50グラムのマゼンタのCrystalPointトナーカプセル(Oceから取得、すなわち標準トナー)を融かした。上記のように調製した1000ppm(50mg)のC.I.Acid Red 143のカルシウム塩、及び、ある量の添加物をもしあれば(表1を参照)、融かしたホットメルト組成物に添加した。その混合物を4時間130℃にて撹拌し、後に、200nmナイロンフィルタで濾過した。濾過したトナー組成物におけるカルシウム濃度を測定した。
【0056】
【表1】
Oceから得られ使用した標準のマゼンタのCrystalPointトナーパールは、約0.3ppmのカルシウムを含有している。1000ppmのC.I.Acid Red 143のカルシウム塩を添加することによって、カルシウムが、25から50ppmの量で添加される。表1は、ホットメルトインク組成物の濾過の後で、14.3ppmのカルシウムがインク組成物において残っているということを示している(実験1)。
【0057】
表1は、4−ドデシルベンゼンスルホン酸を使用することによって(実験3)、カルシウムの除去は、添加物を使用していない場合と同位であるということも示している。しかし、ノズルにおける発色団のカルシウム塩の沈殿物の形成のリスクが有意に減らされる方法で、使用した添加物はカルシウムイオンに優先的に結合するため、これらの実施例によるインク組成物は、依然として、本発明に従った実施例である。
【0058】
最後に、表1は、PTSA一水和物を添加することによって、ほとんど全てのカルシウムを濾過後にホットメルトインク組成物から除去することができるということを示している。これは、おそらく、上記のように細かいポアのフィルタを形成するフィルタケークの形成によるものである。
【0059】
ホットメルトインク組成物におけるカルシウム濃度の減少のため、C.I.Acid Red 143発色団の溶解性は増し、これは、メルトマイクロスコープ(melt microscope)下での結晶化作用の目視検査によって確認される。
【0060】
発色団の結晶化は減少したため、フィルタ及びノズルの目詰まりのリスクは有意に減らされた。
【実施例2】
【0061】
本発明に従ったホットメルトインク組成物におけるPTSAの濃度の関数としての噴射安定性
500グラムのマゼンタのCrystalPointトナーカプセル(Oceから取得、すなわち標準トナー)を融かした。ある量のPTSA一水和物(表2における実験4〜7を参照)を、融けたホットメルト組成物に添加した。その混合物を1時間130℃にて撹拌し、さらに、トナーカプセルを、適した鋳型を用いて作製した。上記の測定方法に従って測定したトナー組成物におけるカルシウム濃度は、全てのケース(実験4〜7)において1ppmであった。
【0062】
上記の方法に従って、プリンタのテストを290時間行った。その後、プリントヘッドの全ノズル中のドロップサイズの変化(Δd
droplet)及び噴射角の変動(σ
jetting angle)を上記のように決定した。表2は、PTSA濃度が増すと、ドロップサイズの変化及び噴射角の変化は小さくなり、より安定した噴射作用を示すということを示している。
【0063】
【表2】
いかなる理論にも縛られるものではないけれども、カルシウムイオンは、PTSAに優先的に結合して、カルシウムパラトルエンスルホン酸を形成するということが信じられる。これは、安定した噴射作用を損ない得るノズルにおけるC.I.Acid Red 143アニオンのカルシウム沈殿物の形成を防ぐ。表2は、PTSAの濃度が増すと、ドロップサイズ及び噴射角の変化はより少なくなり、より安定した噴射作用を示すということを示している。この特定の実施例において、0.1重量%のPTSA一水和物の濃度(すなわち実験7)にて、290時間の噴射の後でドロップサイズの変化はなく、さらに、噴射角の標準偏差は非常に小さく、290時間の噴射後、プリントヘッドは、実験7によるインク組成物を用いて安定した噴射作用を依然として示すということを示していると結論づけられる。