【課題を解決するための手段】
【0009】
本説明は、中空タービンエンジンベーンのための繊維プリフォームを提供し、このプリフォームは、3次元織りによって得られる主要繊維構造を備え、且つ、少なくとも1つの主要部分を含み、この主要部分は、第1のリンクストリップ(link strip)から延び、エアフォイル(airfoil)の圧力側の壁を実質的に形成するのに適している第1の主要縦方向部分を含み、その次に、エアフォイルの前縁又は後縁を実質的に形成するのに適しているUターン湾曲部分を含み、その次に、第1の主要縦方向部分に対面しており且つエアフォイルの吸引側の壁を実質的に形成するのに適しており且つ第2のリンクストリップで終端する第2の主要縦方向部分を含み、第1及び第2のリンクストリップが互いに対して固定されており、主要部分のリンク部分を形成し、主要縦方向部分は、エアフォイルの中に空洞を形成するのに適している上記主要縦方向部分の相互間の間隙を形成するように、互いに間隔を置いて配置されている。
【0010】
このプリフォームによって、中空であり且つ複合材料で作られているので、特に軽量である中空ベーンを得ることが可能である。
【0011】
さらに、この3次元織り(three−dimentional weaving)によって、このような中空ベーンは、非常に優れた機械的特性をもたらす一体的構造を有する。上記部品はさらに異方性が低減しており、これによって、応力が及ぼされる方向に関わりなく、上記部品に大きな機械的強度を与える。特に、その繊維の3次元網状組織が、例えば繊維の共焼結スタックとは異なって、上記部品が層間剥離の危険なしに剪断力に耐えることを可能にする。
【0012】
このプリフォームによって、上記中空ベーンの製造方法も単純化される。この方法は、現在では当業で公知である3次元有ひ織機(three−dimentional shuttle loom)を使用して行われる唯一の織り段階を含んでもよく、これによって、上記中空ベーンを製造するために必要とされる総コストと時間とを低減させる。適切な場合には、この方法は、さらに、この単一の織り段階の最中に、その後で中空ベーンと共に一体的に形成されるプラットホーム又は締結具フランジのような、1組のベーンの他の要素をプリフォームにおいて組み入れることを可能にする。
【0013】
さらに、プリフォームは、最終的なベーンの形状に非常に類似している形状を呈し、したがって、最終的な部品を得るために必要とされる機械加工の量を減少させる。特に、上記プリフォームによって、織り段階からのような前縁のための最終的な形状又は概ね最終的な形状を得ることが可能であり、これによって、後縁に相当するリンク部分に対してだけに機械加工の使用を限定する。さらに、このことは、特にあらゆる特異性を回避することによって、この区域内の良好な機械的特性を実現する。明確に述べると、前縁区域が通常は後縁区域よりも大きい応力を受けるということに留意されたい。
【0014】
さらに、当然であるが、後縁の最終的な形状又は概ね最終的な形状を湾曲部分が形成するプリフォームを想定することが可能であり、機械加工が前縁のためにだけ使用される。
【0015】
リンクストリップが、そのそれぞれの主要縦方向部分の上流側の端縁の全体に沿って延びることが好ましい。
【0016】
本説明では、術語「縦方向の」、「横断方向の」、「底部の」、「頂部の」と、これらの術語の派生語とが、ベーンの主要方向を基準として相対的に定義されている。さらに、プリフォームについて言及する時に、それらは、成形されたプリフォームを基準として相対的に定義されている。術語「軸方向の」、「半径方向の」、「接線方向の」、「内側の」、「外側の」と、これらの術語の派生語とが、タービンエンジンの主軸線を基準として相対的に定義されている。最後に、術語「上流の」、「下流の」は、プリフォームに関連する時に、プリフォームが織られている方向を基準として相対的に定義されている。
【0017】
特定の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは相互連結(interlink)の形で一体状に織られている。この形では、プリフォーム、したがって、その結果として生じる中空ベーンが、リンク部分内に含まれる互いに密着する繊維の3次元網状組織から恩恵を得る。このことが、リンク部分の機械的強度と、したがって、結果的に得られるベーンの前縁又は後縁の機械的強度とを向上させることを可能にする。さらに、このようにして、プリフォームが、織り段階から単一の部品として得られる。
【0018】
特定の実施態様では、Uターン湾曲部分が、実質的に前縁を形成するのに適している。前縁のプロファイルが、相対的に大きく且つ有ひ織機を用いて容易に得られる曲率半径を与える。
【0019】
特定の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップにおいて層が交差させられている。このことが、さらに、リンク部分の結合力(cohesion)を向上させる。
【0020】
別の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは非相互連結状に織られており、これらは共に縫い合わされている。
【0021】
別の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは非相互連結状に織られており、共焼結によって共に接合されている。
【0022】
特定の実施態様では、プリフォームは、織りによって得られ且つ主要繊維構造の端縁に嵌め込まれるように構成されている、第2の繊維構造を含む。これは、特に、織機のシャトルがUターン移動を行う区域から下流にプリフォームの一部分が位置している時に有効であり、したがって、このプリフォームの一部分は、同じ織り段階中にプリフォームの残り部分と共に織られることが不可能である。このことは、主要繊維構造の主要部分の湾曲部分から下流に位置しており、且つ、例えばプラットホームの一部分又は締結具フランジの一部分を形成することが意図されている、あらゆる部分に特に該当する。
【0023】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は3次元織りによって得られる。
【0024】
別の実施態様では、第2の繊維構造は1つ又は複数の2次元層(two−dimentional ply)を有する。
【0025】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、縫合によって主要繊維構造の端縁に嵌合させられている。
【0026】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、共焼結によって主要繊維構造の端部に嵌合させられている。
【0027】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、マトリックスの共射出成形(co−injection)によって主要繊維構造の端部に嵌合させられている。
【0028】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、主要部分の主要縦方向部分のうちの1つの主要縦方向部分の底部端縁又は頂部底部から延び且つプラットホーム又は締結具フランジを形成するのに適している、少なくとも1つの半径方向部分を備える。上述したように、このことが、プラットホーム又は締結具フランジを一体状に形成することと、中空ベーンを形成するために使用される段階と同じ段階においてそうすることとを可能にする。こうして、このアセンブリの機械的強度と、特に、中空ベーンとプラットホーム又はフランジとの間の境界面の機械的強度とが、向上させられる。さらに、このことは、必要とされる部品の個数を減少させ、特に締結具の個数を減少させることを可能にし、これによって、そのアセンブリの重量とコストとを減少させることを可能にする。
【0029】
特定の実施態様では、上記半径方向部分は、上記主要縦方向部分の底部端縁又は頂部端縁の全体に沿って延びる。
【0030】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、さらに、上記半径方向部分の端縁から延び且つ締結具フランジを形成するのに適している、少なくとも1つの副次的縦方向部分を含む。
【0031】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、繊維構造が平坦である時に主要部分のリンク部分の少なくとも一部分から上流に配置されている重複部分を含み、上記重複部分とリンク部分との間に間隙が残されている。この間隙は、繊維構造が織りの終了時に得られる時に、この繊維構造内で切り取られてもよい。このことが、中空ベーンの弦面(cord plane)を越えて突き出すプラットホーム部分又はフランジ部分を形成することを可能にする。したがって、さらに、成形後に様々な繊維構造シートが互いに重なり合う重複区域を形成し、これによって、最終的に得られる時に、完成したプラットホーム又は締結具フランジのための、より適切な結合力とより高い強度とを実現することが可能である。
【0032】
特定の実施態様では、主要部分のリンク部分は、その基部及び/又はその頂部において、その中間部よりも小さい幅を有する。基部又は頂部におけるより小さい幅が、その主要部分のこの区域内で必要とされる機械加工の量を制限する働きをする。これは、ベーンの前縁又は後縁とプラットホームとの間の接合の故に、重要である。これとは対照的に、より大きい幅は、高い強度を得るためにリンク区域の間の中間部において実現可能であるが、これはこの区域では制約がより少ないからである。
【0033】
特定の実施態様では、プリフォームを織るために使用される糸(yarn)が、セラミック酸化物、カーボン、又は、カーバイドのタイプであり、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、又は、これらの混合物である。しかし、例えばガラス繊維又はケブラー繊維のような任意の他のタイプの繊維が使用されてもよい。
【0034】
特定の実施態様では、プリフォームの3次元織りのために使用される織り方が、特にリンク部分においては、3Dインターロック(3D interlock)タイプである。しかし、プリフォームの外側表面の織り方が、例えばサテン(satin)タイプの、実質的に2次元的な織り方であってもよい。
【0035】
この説明が、上述した実施態様のいずれにおいても、繊維プリフォームから単一の複合材料部品として形成された中空ベーンに関し、上記プリフォームは型の中で成形され、マトリックスの中に埋め込まれる。
【0036】
特定の実施態様では、中空ベーンはタービン後置ベーン(TRV)である。
【0037】
他の実施態様では、この中空ベーンはノズルベーンである。これは、特に、出口ガイドベーン(OGV)であってもよい。
【0038】
特定の実施態様では、マトリックスはセラミック酸化物又はセラミック炭化物のタイプである。このマトリックスは、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、又は、これらの混合物で作られているマトリックスである。このマトリックスが微孔質であることが好ましい。しかし、さらに、このマトリックスは、硼化物又は窒化物を主成分とするセラミックマトリックスであってもよい。このマトリックスは、同様に、例えばエポキシタイプのような有機マトリックスであることも可能である。
【0039】
この説明は、さらに、上記実施態様のいずれかによる中空ベーンを含む、タービンエンジンにも関する。
【0040】
本説明は、さらに、上述したタービンエンジンを含む航空機にも関する。
【0041】
最後に、本説明は、中空ベーンを製造する方法を提供し、この方法は、上記実施態様のいずれか1つによる繊維プリフォームを織って裁断する少なくとも1つの段階を含む。
【0042】
この方法は、プリフォームのリンク部分の末端によって形成される上流の突起を除いて、プラットホーム又はフランジ部分を恐らくは含む最終部品のために必要とされる形状を実質的に有するブランクを得ることを可能にする。その次に、この突起は、最終部品のために必要とされる前縁又は後縁を得るために機械加工される。
【0043】
特定の実施態様では、織り段階は、経糸の束と、経糸の間に緯糸を挿入するのに適している少なくとも1つのシャトルとを有する、3次元織機を使用して行われる。このシャトルは、リンク区域から出発し、第1の主要縦方向区域内を移動し、湾曲区域内でUターンし、第1の主要縦方向区域に面する第2の主要縦方向区域内を移動し、リンク区域に戻る形で、一連の往復移動を行い、一方の方向において又はその反対方向において各々の往復移動を行うことが可能であり、1つ又は複数の緯糸が、リンク区域内と第1及び第2の主要縦方向区域内と湾曲区域内において3次元織りを形成するように、経糸と協働する。Uターンを含む上記織り方法を行うことを可能にするこのような有ひ織機をすることによって、その中空バーンの一方の端部に1つだけのリンク部分を有する中空ベーンを得ることが可能であり、その他方の端部は直接的に所望の形状に織られている。
【0044】
特定の実施態様では、この方法は、さらに、次の諸段階、即ち、繊維プリフォームを切断する段階と、所望のブランクの形状を有する型の中で繊維プリフォームを折り曲げて成形する段階と、2つの主要縦方向部分の間の間隙の中にインサートを置く段階と、ブランクを得るために繊維プリフォームの周りにマトリックスを注入し、好ましくは乾燥によって、固体化する段階と、最終部品の前縁又は後縁を得るために、インサートを取り除き、繊維プリフォームのリンク部分に相当するブランクのリンク部分を焼結して機械加工する段階とを含む。
【0045】
特定の実施態様では、中空ベーンは、当業で公知の液体複合成形(LCM)法を使用してプリフォームから得られる。注入される液体は、この場合に、恐らくは粉末を充填されている、プリセラミックポリマー(pre−ceramic polymer)、又は、同様に粉末を充填されているゾルゲル、又は、好ましくは粉末と有機バインダと溶剤との混合物である懸濁液である。
【0046】
他の実施態様では、中空ページは、ポリフレックス(polyflex)タイプの方法を使用してプリフォームから得られる。この方法では、繊維プリフォームは、完成製品のために必要とされるプロファイルを有する表面を有する機械設備(tooling)上の位置に置かれる。その次に、プリフォームは可とう性の不浸透性膜によって覆われ、マトリックスがその膜とプリフォームとの間に注入される。この膜の反対側上には、流体によって膜に対して均衡補正圧力が加えられる。この流体は、繊維の間の樹脂を圧迫して、マトリックスが乾燥している段階中にその圧力を維持する。
【0047】
他の実施態様では、注入と固体化の前に主要繊維構造に対して固定されていない第2の繊維構造をプリフォームが含む時に、この第2の繊維構造は、同一の型の中に主要繊維構造と共に入れられ、中空ベーンは、共射出タイプの方法でプリフォームから得られる。
【0048】
特定の実施態様では、繊維プリフォームのリンク部分に相当するブランクのリンク部分を機械加工する段階は、実質的に、後縁を得るために上記リンク部分を先細にすることを含む。
【0049】
特定の実施態様では、この方法は、プリフォームの湾曲部分に相当するブランクの湾曲部分を機械加工する段階を含まない。
【0050】
上述した特徴と利点等が、提案されているプリフォームの実施形態と提案されている方法の具体例との以下の詳細な説明を理解する時に明らかになる。この詳細な説明は添付図面を参照する。
【0051】
添付図面は概略的であり、特に本発明の原理を示そうとするものである。