特許第6374499号(P6374499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374499中空タービンエンジンベーンのため繊維プリフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374499
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】中空タービンエンジンベーンのため繊維プリフォーム
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20180806BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180806BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20180806BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20180806BHJP
   D03D 25/00 20060101ALI20180806BHJP
   D03D 15/12 20060101ALI20180806BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F01D9/02 101
   F01D25/00 L
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   F02C7/00 F
   F01D25/00 X
   D03D1/00 A
   D03D25/00
   D03D15/12 Z
   C04B35/80 300
   C04B35/80 600
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-526031(P2016-526031)
(86)(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公表番号】特表2016-540147(P2016-540147A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014059051
(87)【国際公開番号】WO2015061024
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年8月23日
(31)【優先権主張番号】1360339
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】502255911
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル ポドゴルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ ジャック ジェラール ダンブリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ソン リ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク マリー クリスチャン クプ
(72)【発明者】
【氏名】リュドビック エドモン カミーユ モリシェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ゴアーリング
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−216290(JP,A)
【文献】 特開2003−148105(JP,A)
【文献】 特表2013−533158(JP,A)
【文献】 特表2012−530212(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/079860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/80
D03D 1/00
D03D 15/12
D03D 25/00
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空タービンエンジンベーンのための繊維プリフォームであって、3次元織りによって得られる主要繊維構造を備え、且つ、少なくとも1つの主要部分(41)を含む繊維プリフォームであって、
前記主要部分(41)は、第1のリンクストリップ(44b)から延び、エアフォイル(21)の圧力側の壁(26)を実質的に形成するのに適している第1の主要縦方向部分(46)を含み、前記エアフォイルの前縁(28)又は後縁(29)を実質的に形成するのに適しているUターン湾曲部分(45)を含み、前記第1の主要縦方向部分(46)に対面しており且つ前記エアフォイル(21)の吸引側の壁(27)を実質的に形成するのに適しており且つ第2のリンクストリップ(44q)で終端する第2の主要縦方向部分(47)を含み、
前記第1のリンクストリップ(44p)と前記第2のリンクストリップ(44q)が互いに対して固定されており、前記主要繊維構造のリンク部分(44)を形成し、
前記第1の主要縦方向部分(46)及び前記第2の主要縦方向部分(47)は、前記エアフォイルの中に空洞(30)を形成するのに適している、前記第1の主要縦方向部分(46)と前記第2の主要縦方向部分(47)の相互間の間隙(50)を形成するように、互いに間隔を置いて配置されている、繊維プリフォーム。
【請求項2】
前記第1のリンクストリップ(44p)と前記第2のリンクストリップ(44q)が、相互連結した形で一体に織られている請求項1に記載の繊維プリフォーム。
【請求項3】
織りによって得られ且つ前記主要な繊維構造(41)の端縁に嵌合させられるように構成されている、第2の繊維構造(48i)をさらに含む請求項1又は2に記載の繊維プリフォーム。
【請求項4】
前記第2の繊維構造(48i)の少なくとも1つは、前記主要部分(41)の一方の前記主要縦方向部分(46)の底部端縁又は頂部端縁から延びており且つプラットホーム(22)又は締結具フランジを形成するのに適している、少なくとも1つの半径方向部分(52)を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項5】
前記繊維構造の少なくとも1つが、前記繊維構造が平坦である時に前記主要部分(141)の前記リンク部分(144)の少なくとも一部分から上流に位置している重複部分(152m)を含み、間隙(149)が前記重複部分(152m)と前記リンク部分(144)との間に残されている請求項4に記載の繊維プリフォーム。
【請求項6】
前記主要部分(41)の前記リンク部分(44)は、その中間部に比べて、その基部及び/又はその頂部において、より小さい幅を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項7】
特にタービン後置ベーンタイプの中空ベーンにおいて、請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム(40)から複合材料の単一部品として形成されており、且つ、前記繊維プリフォーム(40)は型の中で成形されてマトリックス内に埋め込まれていることを特徴とする中空ベーン。
【請求項8】
前記繊維プリフォーム(40)は、セラミック酸化物、カーボン、又は、カーバイドのタイプであり、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、又は、これらの混合物の繊維で作られている請求項7に記載の中空ベーン。
【請求項9】
前記マトリックスは、セラミック酸化物、セラミック炭化物、又は、セラミック窒化物のタイプであり、又は、エポキシタイプの有機物であり、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、窒化又は炭化ケイ素、カーバイド、又は、これらの混合物で作られている請求項7又は8に記載の中空ベーン。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の中空ベーン(20)を含むことを特徴とするタービンエンジン。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム(40)を織る段階を少なくとも含む、中空ベーンを製造する方法。
【請求項12】
前記織り段階は、経糸の束と、前記経糸の間に緯糸を挿入するのに適している少なくとも1つのシャトルとを有する、3次元織機を使用して行われ、
前記シャトルは、リンク区域(44a)から出発し、第1の主要縦方向区域(46a)内を移動し、湾曲区域(45a)内でUターンし、前記第1の主要縦方向区域(46a)に面する第2の主要縦方向区域(47a)内を移動し、前記リンク区域(44a)に戻る形で、一連の往復移動(U)を行い、この方向において又はその反対方向において各々の往復移動(U)を行うことが可能であり、
前記1つ又は複数の緯糸は、前記リンク区域(44a)内と前記第1の主要縦方向区域(46a)及び前記第2の主要縦方向区域(47a)内と前記湾曲区域(45a)内において3次元織りを形成するように、経糸と協働する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維プリフォーム(40)を切断する段階と、
所望のブランク(60)の形状を有する型の中で前記繊維プリフォーム(40)を折り曲げて成形する段階と、
前記2つの主要縦方向部分(46、47)の間の前記間隙(50)の中にインサートを置く段階と、
前記ブランク(60)を得るために前記繊維プリフォーム(40)の周りに前記マトリックスを注入して固体化する段階と、
前記インサートを取り除く段階と、
最終部品(20)の前記前縁又は後縁(28、29)を得るために、前記繊維プリフォーム(40)の前記リンク部分(44)に相当する前記ブランク(60)の前記リンク部分(64)を機械加工する段階とを含む請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維プリフォーム(40)の前記リンク部分(44)に相当する前記ブランク(60)の前記リンク部分を機械加工する段階は、実質的に、前記後縁(29)を得るために前記リンク部分(64)を先細にすることを含む請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空タービンエンジンベーンのために繊維プリフォームと、上記中空ベーンと、上記中空ベーンの製造方法とに関する。本発明は、さらに、タービンエンジンと、上記中空ベーンを含む航空機とにも関する。
【0002】
上記プリフォームは、例えばタービンの後置ベーン、又は、タービンエンジン内の何らかの他のモジュールのためのベーンのような、中空ベーンを製造するために使用されることがある。
【背景技術】
【0003】
燃料の高コストのせいで、航空機ターボジェットの燃料消費を減少させるために、現在において様々な研究が行われている。航空機ターボジェットの燃料消費に対して影響する大きな要因が、航空機とその機材との重量であり、上記機材はターボジェット自体を含む。
【0004】
したがって、ここ数年間にわたって、航空機ターボジェットにおいて新たな材料が出現しており、著しい重量減少が実現されることを可能にしている。このことは、特に、従来使用されてきた金属材料に比較して、優れた材料強度と低重量とを実現する複合材料に当てはまる。したがって、新世代のターボジェットは、上記複合材料で作られている多数の部品を含む。
【0005】
重量減少を実現するための別の解決策が、特定の部品の形状を単純化すること、又は、不必要である特定の要素を排除することを求める。特に、過去においては慣習的に中実である特定の部品を中空化することが可能である。このことは、特に、新世代のタービンエンジンにおいては中空である、特定のベーン、特にタービン後置ベーンに該当する。このことが、特に、従来の材料に比べてその材料の重量がわずかに重たい場合でさえ、重量増加を生じさせることなしに、タービン内に存在する高温度に対する耐久性がより優れている材料を選択することを可能にする。さらに、上記中空ベーンは、サービス又は冷却空気のための通路として使用されることが可能である。
【0006】
このような状況において、上記中空ベーン(hollow vane)を複合材料で形成することによって重量を削減するというこの両方法によって実現される利点を組み合わせることが理論的に可能であるはずである。しかし、複合材料を用いて中空部品を製造するという方法は、希であり、複雑であり、且つ、あまり満足できるものではない。
【0007】
特に、1つの既知の方法が、複数の2次元繊維を織ることと、これらの繊維を積み重ねることによって成形することと、その次に、共焼結によってこれらの繊維を一体的に接合することとにある。しかし、この方法は、多数の繊維が織られることを必要とし、繊維をスタックの形に接合成形する際に難題を生じさせ、繊維の積層構造を原因とする構造的脆弱性を有する部品を結果的にもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上述した既知の方法に固有である欠点を少なくとも部分的に回避するのと同時に、中空タービンエンジンベーンのための繊維プリフォームと、上記中空ベーンと、さらには、上記中空ベーンを製造する方法とが切実に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本説明は、中空タービンエンジンベーンのための繊維プリフォームを提供し、このプリフォームは、3次元織りによって得られる主要繊維構造を備え、且つ、少なくとも1つの主要部分を含み、この主要部分は、第1のリンクストリップ(link strip)から延び、エアフォイル(airfoil)の圧力側の壁を実質的に形成するのに適している第1の主要縦方向部分を含み、その次に、エアフォイルの前縁又は後縁を実質的に形成するのに適しているUターン湾曲部分を含み、その次に、第1の主要縦方向部分に対面しており且つエアフォイルの吸引側の壁を実質的に形成するのに適しており且つ第2のリンクストリップで終端する第2の主要縦方向部分を含み、第1及び第2のリンクストリップが互いに対して固定されており、主要部分のリンク部分を形成し、主要縦方向部分は、エアフォイルの中に空洞を形成するのに適している上記主要縦方向部分の相互間の間隙を形成するように、互いに間隔を置いて配置されている。
【0010】
このプリフォームによって、中空であり且つ複合材料で作られているので、特に軽量である中空ベーンを得ることが可能である。
【0011】
さらに、この3次元織り(three−dimentional weaving)によって、このような中空ベーンは、非常に優れた機械的特性をもたらす一体的構造を有する。上記部品はさらに異方性が低減しており、これによって、応力が及ぼされる方向に関わりなく、上記部品に大きな機械的強度を与える。特に、その繊維の3次元網状組織が、例えば繊維の共焼結スタックとは異なって、上記部品が層間剥離の危険なしに剪断力に耐えることを可能にする。
【0012】
このプリフォームによって、上記中空ベーンの製造方法も単純化される。この方法は、現在では当業で公知である3次元有ひ織機(three−dimentional shuttle loom)を使用して行われる唯一の織り段階を含んでもよく、これによって、上記中空ベーンを製造するために必要とされる総コストと時間とを低減させる。適切な場合には、この方法は、さらに、この単一の織り段階の最中に、その後で中空ベーンと共に一体的に形成されるプラットホーム又は締結具フランジのような、1組のベーンの他の要素をプリフォームにおいて組み入れることを可能にする。
【0013】
さらに、プリフォームは、最終的なベーンの形状に非常に類似している形状を呈し、したがって、最終的な部品を得るために必要とされる機械加工の量を減少させる。特に、上記プリフォームによって、織り段階からのような前縁のための最終的な形状又は概ね最終的な形状を得ることが可能であり、これによって、後縁に相当するリンク部分に対してだけに機械加工の使用を限定する。さらに、このことは、特にあらゆる特異性を回避することによって、この区域内の良好な機械的特性を実現する。明確に述べると、前縁区域が通常は後縁区域よりも大きい応力を受けるということに留意されたい。
【0014】
さらに、当然であるが、後縁の最終的な形状又は概ね最終的な形状を湾曲部分が形成するプリフォームを想定することが可能であり、機械加工が前縁のためにだけ使用される。
【0015】
リンクストリップが、そのそれぞれの主要縦方向部分の上流側の端縁の全体に沿って延びることが好ましい。
【0016】
本説明では、術語「縦方向の」、「横断方向の」、「底部の」、「頂部の」と、これらの術語の派生語とが、ベーンの主要方向を基準として相対的に定義されている。さらに、プリフォームについて言及する時に、それらは、成形されたプリフォームを基準として相対的に定義されている。術語「軸方向の」、「半径方向の」、「接線方向の」、「内側の」、「外側の」と、これらの術語の派生語とが、タービンエンジンの主軸線を基準として相対的に定義されている。最後に、術語「上流の」、「下流の」は、プリフォームに関連する時に、プリフォームが織られている方向を基準として相対的に定義されている。
【0017】
特定の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは相互連結(interlink)の形で一体状に織られている。この形では、プリフォーム、したがって、その結果として生じる中空ベーンが、リンク部分内に含まれる互いに密着する繊維の3次元網状組織から恩恵を得る。このことが、リンク部分の機械的強度と、したがって、結果的に得られるベーンの前縁又は後縁の機械的強度とを向上させることを可能にする。さらに、このようにして、プリフォームが、織り段階から単一の部品として得られる。
【0018】
特定の実施態様では、Uターン湾曲部分が、実質的に前縁を形成するのに適している。前縁のプロファイルが、相対的に大きく且つ有ひ織機を用いて容易に得られる曲率半径を与える。
【0019】
特定の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップにおいて層が交差させられている。このことが、さらに、リンク部分の結合力(cohesion)を向上させる。
【0020】
別の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは非相互連結状に織られており、これらは共に縫い合わされている。
【0021】
別の実施態様では、第1及び第2のリンクストリップは非相互連結状に織られており、共焼結によって共に接合されている。
【0022】
特定の実施態様では、プリフォームは、織りによって得られ且つ主要繊維構造の端縁に嵌め込まれるように構成されている、第2の繊維構造を含む。これは、特に、織機のシャトルがUターン移動を行う区域から下流にプリフォームの一部分が位置している時に有効であり、したがって、このプリフォームの一部分は、同じ織り段階中にプリフォームの残り部分と共に織られることが不可能である。このことは、主要繊維構造の主要部分の湾曲部分から下流に位置しており、且つ、例えばプラットホームの一部分又は締結具フランジの一部分を形成することが意図されている、あらゆる部分に特に該当する。
【0023】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は3次元織りによって得られる。
【0024】
別の実施態様では、第2の繊維構造は1つ又は複数の2次元層(two−dimentional ply)を有する。
【0025】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、縫合によって主要繊維構造の端縁に嵌合させられている。
【0026】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、共焼結によって主要繊維構造の端部に嵌合させられている。
【0027】
特定の実施態様では、第2の繊維構造は、マトリックスの共射出成形(co−injection)によって主要繊維構造の端部に嵌合させられている。
【0028】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、主要部分の主要縦方向部分のうちの1つの主要縦方向部分の底部端縁又は頂部底部から延び且つプラットホーム又は締結具フランジを形成するのに適している、少なくとも1つの半径方向部分を備える。上述したように、このことが、プラットホーム又は締結具フランジを一体状に形成することと、中空ベーンを形成するために使用される段階と同じ段階においてそうすることとを可能にする。こうして、このアセンブリの機械的強度と、特に、中空ベーンとプラットホーム又はフランジとの間の境界面の機械的強度とが、向上させられる。さらに、このことは、必要とされる部品の個数を減少させ、特に締結具の個数を減少させることを可能にし、これによって、そのアセンブリの重量とコストとを減少させることを可能にする。
【0029】
特定の実施態様では、上記半径方向部分は、上記主要縦方向部分の底部端縁又は頂部端縁の全体に沿って延びる。
【0030】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、さらに、上記半径方向部分の端縁から延び且つ締結具フランジを形成するのに適している、少なくとも1つの副次的縦方向部分を含む。
【0031】
特定の実施態様では、繊維構造の少なくとも1つが、繊維構造が平坦である時に主要部分のリンク部分の少なくとも一部分から上流に配置されている重複部分を含み、上記重複部分とリンク部分との間に間隙が残されている。この間隙は、繊維構造が織りの終了時に得られる時に、この繊維構造内で切り取られてもよい。このことが、中空ベーンの弦面(cord plane)を越えて突き出すプラットホーム部分又はフランジ部分を形成することを可能にする。したがって、さらに、成形後に様々な繊維構造シートが互いに重なり合う重複区域を形成し、これによって、最終的に得られる時に、完成したプラットホーム又は締結具フランジのための、より適切な結合力とより高い強度とを実現することが可能である。
【0032】
特定の実施態様では、主要部分のリンク部分は、その基部及び/又はその頂部において、その中間部よりも小さい幅を有する。基部又は頂部におけるより小さい幅が、その主要部分のこの区域内で必要とされる機械加工の量を制限する働きをする。これは、ベーンの前縁又は後縁とプラットホームとの間の接合の故に、重要である。これとは対照的に、より大きい幅は、高い強度を得るためにリンク区域の間の中間部において実現可能であるが、これはこの区域では制約がより少ないからである。
【0033】
特定の実施態様では、プリフォームを織るために使用される糸(yarn)が、セラミック酸化物、カーボン、又は、カーバイドのタイプであり、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、又は、これらの混合物である。しかし、例えばガラス繊維又はケブラー繊維のような任意の他のタイプの繊維が使用されてもよい。
【0034】
特定の実施態様では、プリフォームの3次元織りのために使用される織り方が、特にリンク部分においては、3Dインターロック(3D interlock)タイプである。しかし、プリフォームの外側表面の織り方が、例えばサテン(satin)タイプの、実質的に2次元的な織り方であってもよい。
【0035】
この説明が、上述した実施態様のいずれにおいても、繊維プリフォームから単一の複合材料部品として形成された中空ベーンに関し、上記プリフォームは型の中で成形され、マトリックスの中に埋め込まれる。
【0036】
特定の実施態様では、中空ベーンはタービン後置ベーン(TRV)である。
【0037】
他の実施態様では、この中空ベーンはノズルベーンである。これは、特に、出口ガイドベーン(OGV)であってもよい。
【0038】
特定の実施態様では、マトリックスはセラミック酸化物又はセラミック炭化物のタイプである。このマトリックスは、好ましくは、アルミナ、ムライト、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素、又は、これらの混合物で作られているマトリックスである。このマトリックスが微孔質であることが好ましい。しかし、さらに、このマトリックスは、硼化物又は窒化物を主成分とするセラミックマトリックスであってもよい。このマトリックスは、同様に、例えばエポキシタイプのような有機マトリックスであることも可能である。
【0039】
この説明は、さらに、上記実施態様のいずれかによる中空ベーンを含む、タービンエンジンにも関する。
【0040】
本説明は、さらに、上述したタービンエンジンを含む航空機にも関する。
【0041】
最後に、本説明は、中空ベーンを製造する方法を提供し、この方法は、上記実施態様のいずれか1つによる繊維プリフォームを織って裁断する少なくとも1つの段階を含む。
【0042】
この方法は、プリフォームのリンク部分の末端によって形成される上流の突起を除いて、プラットホーム又はフランジ部分を恐らくは含む最終部品のために必要とされる形状を実質的に有するブランクを得ることを可能にする。その次に、この突起は、最終部品のために必要とされる前縁又は後縁を得るために機械加工される。
【0043】
特定の実施態様では、織り段階は、経糸の束と、経糸の間に緯糸を挿入するのに適している少なくとも1つのシャトルとを有する、3次元織機を使用して行われる。このシャトルは、リンク区域から出発し、第1の主要縦方向区域内を移動し、湾曲区域内でUターンし、第1の主要縦方向区域に面する第2の主要縦方向区域内を移動し、リンク区域に戻る形で、一連の往復移動を行い、一方の方向において又はその反対方向において各々の往復移動を行うことが可能であり、1つ又は複数の緯糸が、リンク区域内と第1及び第2の主要縦方向区域内と湾曲区域内において3次元織りを形成するように、経糸と協働する。Uターンを含む上記織り方法を行うことを可能にするこのような有ひ織機をすることによって、その中空バーンの一方の端部に1つだけのリンク部分を有する中空ベーンを得ることが可能であり、その他方の端部は直接的に所望の形状に織られている。
【0044】
特定の実施態様では、この方法は、さらに、次の諸段階、即ち、繊維プリフォームを切断する段階と、所望のブランクの形状を有する型の中で繊維プリフォームを折り曲げて成形する段階と、2つの主要縦方向部分の間の間隙の中にインサートを置く段階と、ブランクを得るために繊維プリフォームの周りにマトリックスを注入し、好ましくは乾燥によって、固体化する段階と、最終部品の前縁又は後縁を得るために、インサートを取り除き、繊維プリフォームのリンク部分に相当するブランクのリンク部分を焼結して機械加工する段階とを含む。
【0045】
特定の実施態様では、中空ベーンは、当業で公知の液体複合成形(LCM)法を使用してプリフォームから得られる。注入される液体は、この場合に、恐らくは粉末を充填されている、プリセラミックポリマー(pre−ceramic polymer)、又は、同様に粉末を充填されているゾルゲル、又は、好ましくは粉末と有機バインダと溶剤との混合物である懸濁液である。
【0046】
他の実施態様では、中空ページは、ポリフレックス(polyflex)タイプの方法を使用してプリフォームから得られる。この方法では、繊維プリフォームは、完成製品のために必要とされるプロファイルを有する表面を有する機械設備(tooling)上の位置に置かれる。その次に、プリフォームは可とう性の不浸透性膜によって覆われ、マトリックスがその膜とプリフォームとの間に注入される。この膜の反対側上には、流体によって膜に対して均衡補正圧力が加えられる。この流体は、繊維の間の樹脂を圧迫して、マトリックスが乾燥している段階中にその圧力を維持する。
【0047】
他の実施態様では、注入と固体化の前に主要繊維構造に対して固定されていない第2の繊維構造をプリフォームが含む時に、この第2の繊維構造は、同一の型の中に主要繊維構造と共に入れられ、中空ベーンは、共射出タイプの方法でプリフォームから得られる。
【0048】
特定の実施態様では、繊維プリフォームのリンク部分に相当するブランクのリンク部分を機械加工する段階は、実質的に、後縁を得るために上記リンク部分を先細にすることを含む。
【0049】
特定の実施態様では、この方法は、プリフォームの湾曲部分に相当するブランクの湾曲部分を機械加工する段階を含まない。
【0050】
上述した特徴と利点等が、提案されているプリフォームの実施形態と提案されている方法の具体例との以下の詳細な説明を理解する時に明らかになる。この詳細な説明は添付図面を参照する。
【0051】
添付図面は概略的であり、特に本発明の原理を示そうとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明のタービンエンジンの断面図である。
図2】1組のタービン後置ガイドベーンの斜視図である。
図3】中空ベーンの断面図である。
図4】第1のプリフォームの具体例の主要部分の斜視図である。
図5】プリフォームのこの主要部分のための織り経路(weaving path)を示す説明図である。
図6】この主要部分のための織り経路の一例を示す。
図7】平らである時のプリフォームの第1の例の説明図である。
図8】同じプリフォームが成形され終わった後のそのプリフォームを示す。
図9】成形後のプリフォームの後縁の詳細図である。
図10】プリフォームから得られたブランクの斜視図である。
図11】ブランクを機械加工した後に得られる最終的な中空ベーンの斜視図である。
図12】平らである時のプリフォームの第2の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明をより具体的にするために、添付図面を参照しながら、プリフォームの具体例と製造方法の具体例とを以下で詳細に説明する。本発明がこれらの具体例だけに限定されないということを忘れてはならない。
【0054】
図1は、その主軸線Aを含む垂直平面上における本発明のバイパスターボジェット1の断面図である。空気流の流動方向の上流から下流に、このバイパスターボジェット1は、ファン2と、低圧圧縮機3と、高圧圧縮機4と、燃焼チャンバ5と、高圧タービン6と、低圧タービン7とを備える。このバイパスターボジェットは、その下流側の端部に、低圧タービン7からの出口の一次空気通路の中に挿入されている1組のタービン後置ガイドベーン10を含む。
【0055】
図2は、このような1組のタービン後置ガイドベーン10の斜視図である。この組は、一般的にTRVと呼ばれているガイドベーン20によって互いに半径方向に連結されている内側ハブ11と外側シュラウド12とを含む。
【0056】
図11は、特にTRVのような、本発明の例示的なベーン20の斜視図である。このベーンは、エアフォイル21と、底部プラットホーム22と、頂部プラットホーム23と、底部締結具フランジ24と、頂部締結具フランジ25とを備える。エアフォイル部分21は、主としてベーン20の空気力学的機能を実現する働きをする。プラットホーム22、23は、滑らかで空気力学的である空気通路のための内側壁と外側壁とを構成する働きをする。締結具フランジ24、25は、それぞれに、内側ハブ11と外側ハブ12とにベーン20が締結されることを可能にする働きをする。
【0057】
このTRV20のエアフォイル21が、図3に断面図の形で示されている。このエアフォイルは、前縁28を介して一方の端部において且つ後縁29を介して反対側の端部において互いに接合されている圧力側の壁26と吸引側の壁27とを備える。これらの圧力側及び吸引側の壁26、27は、ベーン空洞を形成する内側空洞30を画定する。この例では、ベーン空洞30は、一組のガイドベーンの重量を減少させるために、空のままの状態である。しかし、他の例では、特に他のタイプの部品の場合に、上記ベーン空洞は、サービス又は空気流を通過させるために使用されることも可能である。さらに、前縁28と後縁29とが弦面Pを画定する働きをするということに留意されたい。
【0058】
図4は、繊維プリフォームが織られ終わった後の繊維プリフォーム40の主要部分41を示す説明図であり、このプリフォームは、上記ベーン20を得る働きをする。これらの図では、緯糸の織り方向が、矢印Tによって、即ち、図では右から左へ示されており、一方、経糸方向が矢印Cで示されている。しかし、織りが他方の端部から且つ反対の方向に行われている構成を想定することが可能である。
【0059】
この実施形態では、プリフォーム40は、3Dインターロック織り(3D intelock weave)の形でアルミナ繊維を3次元的に織ることによって作られている。
【0060】
プリフォーム40のこの主要部分41は、基本的に、リンク部分44と、第1の主要縦方向部分46と、Uターン湾曲部分45と、第2の主要縦方向部分47とをそのループ周りに連続的に含む、ループの形状である繊維構造を備える。したがって、主要縦方向部分46、47がエアフォイル21の圧力側の壁26と吸引側の壁27とを形成する働きをするということと、Uターン湾曲部分45が前縁28を形成する働きをし、リンク部分44が後縁29を形成するために使用されるということを理解されたい。
【0061】
図5図6は、プリフォーム40のこの主要部分41がどのように織られるかを説明する役割を果たす。このプリフォームは、緯糸を引っ張り且つ経糸の間を自由に移動することが可能である少なくとも1つのシャトルを有する3次元織機上で織られてもよい。このようなループでは、シャトルは、リンク部分44が中に形成される上記リンク区域44aと、湾曲部分45が中に形成される上記湾曲区域45aとの間に、往復経路Uを形成するように方向付けられる。
【0062】
したがって、各々の往復移動時に、シャトルは、リンク区域44aから出発して、第1の主要縦方向部分46が中に形成される第1の主要縦方向区域46aを通過し、その次に、湾曲区域45aを通過し、この湾曲区域45aでは、シャトルがUターンを行って、第2の主要縦方向部分47が中に形成される第2の主要縦方向区域47aを通過することによってリンク区域44aに戻る。
【0063】
各々の往復移動Uは、同一方向に又は反対方向に、即ち、時計回り方向の移動と反時計回り方向の移動との間の交番の形で行われてもよい。
【0064】
これらの往復移動Uの連続が、特定の厚さの層を有するプリフォーム40の主要部分41を形成する働きをし、当然であるが、シャトルがリンク区域44a内をより頻繁に通過するので、これらの層の厚さはリンク部分44内においてより大きい。この目的のために、リンク部分44が、互いに重なり合っており且つ連結された形態に互いに織られている、第1のリンクストリップ44pと第2のリンクストリップ44qで形成されていると言うことに留意されたい。しかし、これら2つのストリップの間には物理的境界が実際には存在せず、リンク部分44は全体として、3次元織りによって均一に相互連結されているユニットを形成するので、これは単なる1つの精神的発想であるにすぎない。
【0065】
図6は、プリフォーム40のこのような主要部分41を形成するためにシャトルが通過することがある経路Vの一例を示す。この例では、シャトルは、その度毎に移動方向を交番する3つの往復移動を行う。さらに、シャトルが、リンク部分44と主要縦方向部分46、47との間の結合部において層が交差することを生じさせるということにも留意されたい。この例では、したがって、そのリンク部分44内において3つの緯糸の厚さと6つの層の厚さとを有するプリフォーム40の主要部分41が得られる。
【0066】
当然であるが、図5図6がプリフォームの1つの特定の平面内でシャトルが移動する経路を示すが、このプリフォームが、3次元織り、特に、3Dインターロックタイプの織り(weave)を形成するために、プリフォームの他の平面内において同様の仕方で織られるが、しかし、糸の局所的な配置が各々の織り平面(weave plane)の間で変化するということを理解されたい。したがって、各々の織り平面がそれ自体のシャトルを有してもよく、プリフォームの様々な平面が平行に織られる。そうでない場合には、別の構成では、単一のシャトルが連続的に各平面を完全に織る。
【0067】
したがって、単一の織り段階の後に、単一の部品の形で主要プリフォーム部分41が得られ、この単一の部品は、そのリンク部分内に含むその部分の各々において3次元織りを有し、織り段階の直後において、前縁のために必要とされる形状に概ね一致するために適切である形状の湾曲部分45を有する。
【0068】
図7は、切断された後に平らにされているプリフォーム40の部分を示す。図8は、プリフォーム40が成形され終わった後の同じプリフォーム40を示す。これらの図では、分かり易いように、カットアウト(cut out)としてのプリフォーム40の前部シートだけが示されている。しかし、プリフォーム40が、図示されているシートの背後に存在し且つ概ね類似した形状を有する他のシートを有することに留意されたい。
【0069】
プリフォーム40では、それぞれに第1の主要縦方向部分46の上流端部と下流端部とに全体的に沿って延びる、リンク部分44と湾曲部分45との間の第1の主要縦方向部分46を有する主要部分41が見てとれる。
【0070】
プリフォーム40は、さらに、互いに独立的に織られており且つ実質的に第1の縦方向部分46を介して主要部分41の頂部端縁と底部端縁とにそれぞれに嵌合させられている頂部前部シート48sと底部前部シート48iとを有する。この例では、これらの副次的繊維構造48s、48iは縫合によって主要部分41に固定されている。さらに、これらのシートを型の中に入れることと、共射出とその後の焼結とによって主要部分にこれらのシートを固定することとが可能だろう。
【0071】
底部前部シート48iは、主要縦方向部分46の底部端縁からプリフォーム40の底部端縁に延びる、底部半径方向部分と呼ばれる部分52を有する。この底部半径方向部分52は、さらに、リンク部分44の周りを延び且つ部分的にリンク部分44の上流に延びる上流重複部分52mを有する。底部半径方向部分52は、さらに、湾曲部分45の周りを延び且つ部分的に湾曲部分45の上流に延びる下流重複部分52vを有する。
【0072】
プリフォーム40が成形されている間に、この半径方向部分52は、底部プラットホーム22の圧力側の部分を形成するように、半径位置に折り曲げられる。
【0073】
この半径方向部分52は、さらに、上流副次的縦方向部分54mによって上流に延ばされ、下流副次的縦方向部分54vによって下流に延ばされている。これらの部分は、底部締結具フランジ24を形成するように縦方向に折り曲げられることに適している。
【0074】
同様の形で、頂部前部シート48sは、主要縦方向部分46の頂部端縁からプリフォーム40の頂部端縁に延びる、頂部半径方向部分と呼ばれる部分53を有する。この頂部半径方向部分53は、上流重複部分53mと下流重複部分53vとを有する。この頂部半径方向部分53は、頂部プラットホーム23の圧力側の部分を形成するように、半径方向位置に折り曲げられることに適している。
【0075】
この頂部半径方向部分53は、さらに、下流副次的縦方向部分55vに達する一連の中間部分59によって下流に延ばされ、且つ、上流副次的縦方向部分55mによって下流に延ばされている。これらの部分は、頂部締結具フランジ25を形成するように、縦方向位置に折り曲げられることに適している。
【0076】
プリフォーム40は、そのプリフォーム40を柔軟化させて、位置合わせがずれる(out of register)ように繊維を動かすことをより容易にするために、濡らされることがある。その次に、プリフォーム40は、そのプリフォーム40のために必要とされる形状に一致する内部空間を有する成形型の中に挿入される。
【0077】
プリフォーム40の後縁の成形を、図9を参照しながら、より詳細に説明する。この図は、重ね合わせの形で、点線によってプリフォーム40の形状を示し、太線によって最終部品20の形状を示す。成形中に、主要縦方向部分46、47は、間隙50を残すように互いから間隔を開けられる。その次に、注入と硬化との最中にマトリックスが間隙50を埋めないように、インサートが間隙50の中に挿入され、これによってエアフォイル内に空洞30を得ることを可能にする。
【0078】
後縁29では、主要縦方向部分46、47がリンク部分44に向かって規則的な形で収斂する。成形は、最終部品20の後縁29がリンク部分44の中央平面44′上に位置するように行われる。
【0079】
成形型の補助による成形が終わると、プリフォーム40は、硬化するように乾燥させられ、このようにして、成形中に与えられた形状にプリフォーム40を保持する。その次に、プリフォーム40は、所望のベーンブランク(vane blank)60の寸法を有する射出成形型の中に入れられ、マトリックス、特に多孔性アルミナマトリックスが、その型の中に注入される。この注入が、例えばLCM法によって行われてもよい。この段階の完了時には、乾燥とインサートの取り除きとの後に、アルミナ繊維を使用して織られており且つアルミナマトリックス内に埋め込まれているプリフォーム40を備える、複合材料で作られているベーンブランク60が得られる。
【0080】
図10では、ベーンブランク60が、前縁28と、プラットホーム22、23と、必要に応じて、締結具フランジ24、25とを既に有することが見てとれる。これとは対照的に、ブランク60のエアフォイル61は、リンク部分44から得られたリンク部品の遠位端部から結果的に得られた突起64を有する。図9にも見てとれるこの突起は、最終的なベーン21を得るために機械加工によって除去される必要がある。この機械加工は、突起64を切り離すことと、リンク部分44の中央平面44′のどちらかの側において後縁を先細にすることとを含む。
【0081】
エアフォイル21とプラットホーム22、23との間の接合部の機械加工を容易化するために、且つ、そうすることにおけるベーンの構造の脆弱化を回避するために、リンク部分44は、その頂部端部と底部端部において約5ミリメートル(mm)に等しい小さな幅を有し、エアフォイル21の中間部では、その幅はより大きく、約10mmに等しい。
【0082】
他の仕上げ段階、特に機械加工段階が、ベーン20を仕上げるために、場合によっては、追加して使用されてもよい。
【0083】
図12は、上述した例の頂部及び底部前部シート48s、48iの大きな部分が共通織り段階中にプリフォームの主要部分141と同時に織られる、別の例示的なプリフォーム140を示す。
【0084】
織り段階中に前縁に適した形状を形成するためにシャトルが湾曲区域内でUターンを行うことを生じさせることが必要であることは、この同一の段階中に、湾曲区域から厳密に下流に配置されているプリフォームの一部分を織ることが不可能であることを意味する。しかし、この湾曲区域の上方及び下方では、シャトルは、同一の段階中に頂部シートと底部シートのより大きい部分を織るために、さらに下流でそのUターンを自由に行う。
【0085】
したがって、この第2の例では、主要織り段階は、リンク部分144と湾曲部分145との間のその第1及び第2の主要縦方向部分146を有する主要部分141と、底部半径方向部分152と、頂部半径方向部分153と、第1の例における同一のタイプの部分に類似している上流副次的縦方向部分154m、155mとを備える、単一部品として主要繊維構造を形成することになって終わる。
【0086】
プリフォーム140の主要繊維構造は、さらに、それぞれに下流に及びその上方に、湾曲部分145から下流に延びる底部及び頂部下流部分157i、157sを有する。図12には前部シートだけが示されているということを思い出すべきであるが、後部シートが同様に上記部分を含むことが可能であり、この場合に、シャトルが例えばその前進経路上で前部部分を織り、その戻り経路上で後部部分を織ってもよいということに留意されたい。
【0087】
底部及び頂部下流シート158i、158sも別個に織られて、底部下流部分157iの頂部端縁と頂部下流部分157sの底部端縁とにそれぞれに縫合によって固定される。これらの付加型の繊維構造の故に、プリフォーム140は、第1の例における下流副次的縦方向部分に類似している下流副次的縦方向部分154v、155vを有する。
【0088】
さらに、プリフォーム140の主要繊維構造が、さらに、上流重複部分152m、153mを含み、この上流重複部分152m、153mは、それぞれに下方から及び上方からリンク部分144の周りを回り、且つ、そこから部分的に上流に延び、繊維構造の中に切り抜かれている間隙149が、リンク部分144からこれらの重複部分152m、153mを分離する。間隙149を形成する切り抜きは、特に、加圧された水流によって、又は、レーザビームによって行われてもよい。
【0089】
本説明の中で説明した実施形態又は具体例は、非限定的な例示として示されており、本発明の範囲内に留まりながら、これらの実施形態と具体例を変更すること、又は、この説明を考慮して他のものを想定することは、当業者にとって容易である。
【0090】
さらに、これらの実施形態又は具体例の様々な特徴が、それ自体として、又は、互いに組み合わされて使用されてもよい。これらの特徴が組み合わされる時には、これらの特徴は、上述したように、又は、他の形で、組み合わされてもよく、本発明は、本説明で説明されている特定の組合せだけに限定されない。特に明記されない限り、1つの特定の実施形態又は具体例に関して説明している特徴が、何らかの他の実施形態又は具体例に類似の形で適用されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 バイパスターボジェット
2 ファン
3 低圧圧縮機
4 高圧圧縮機
5 燃焼室
6 高圧タービン
7 低圧タービン
10 タービン後置ガイドベーン
20 ベーン
21 エアフォイル
22 底部プラットホーム
23 頂部プラットホーム
24 締結具フランジ
25 締結具フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12