特許第6374507号(P6374507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6374507低密度ポリエチレンの押出コーティング及びそれから製造されるヒートシール品
<>
  • 特許6374507-低密度ポリエチレンの押出コーティング及びそれから製造されるヒートシール品 図000014
  • 特許6374507-低密度ポリエチレンの押出コーティング及びそれから製造されるヒートシール品 図000015
  • 特許6374507-低密度ポリエチレンの押出コーティング及びそれから製造されるヒートシール品 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374507
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】低密度ポリエチレンの押出コーティング及びそれから製造されるヒートシール品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20180806BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180806BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20180806BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B7/02
   C08F12/00 510
   C09K3/10 Z
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-535663(P2016-535663)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-502854(P2017-502854A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2014078274
(87)【国際公開番号】WO2015091676
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】13198650.7
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ヌンミラ−パカリネン,アウリ
(72)【発明者】
【氏名】ペルトヴオリ,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】ベリクヴィスト,マティアス
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−341249(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/178242(WO,A1)
【文献】 特開2003−200540(JP,A)
【文献】 特表2014−533310(JP,A)
【文献】 特表2015−509450(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/178241(WO,A1)
【文献】 特表2015−519447(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/083285(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/124221(WO,A1)
【文献】 三田達 監訳,MARUZEN 高分子大辞典,丸善株式会社,1994年 9月20日,p.103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09K 3/10−3/12
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00
301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシールすることによってヒートシール品を製造するための熱可塑性表面としての、ポリマー層と第一の支持体を含む押出被覆構造の前記ポリマー層の少なくとも一部の使用であって、
前記ポリマー層は組成物(Co)を含み、前記組成物は管型反応器で製造されたエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含み、かつ添加剤を含まず、そして前記ヒートシール品は、前記熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールすることによって製造され、
組成物(Co)が、少なくとも2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)を有し、
さらに、押出前及び後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)は、次の式
【数1】
[式中、
MFR(後)は、押出コーティング後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)であり;
MFR(前)は、押出コーティング前の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)である]を満足している、
前記の使用。
【請求項2】
ヒートシールすることによってヒートシール品を製造するための熱可塑性表面としての、ポリマー層と第一の支持体を含む押出被覆構造のポリマー層の少なくとも一部の使用であって、
前記ポリマー層は組成物(Co)を含み、前記組成物は、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有するエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含み、かつ添加剤を含まず、そして前記ヒートシール品は、前記熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールすることによって製造され、
組成物(Co)が、少なくとも2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)を有し、
さらに、押出前及び後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)は、次の式
【数2】
[式中、
MFR(後)は、押出コーティング後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)であり;
MFR(前)は、押出コーティング前の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)である]を満足している、
前記の使用。
【請求項3】
管型反応器で製造されたエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)が、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
エチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)が、管型反応器で製造されている、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
ポリマー層が何の添加剤も含まない、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
ポリマー層が、少なくとも50wt%の組成物(Co)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
組成物(Co)が、少なくとも50wt%のエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ポリマー層が、少なくとも2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ポリマー層がエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)からなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
下記工程:
a)請求項1〜のいずれか1項に記載のエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を製造する工程;
b)工程a)で得られたエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含む組成物(Co)を製造する工程;および
c)工程b)で得られた組成物(Co)を含むポリマー層を第一の支持体上に押出コーティングする工程、
ここで、
添加剤は組成物中に存在しない、又は組成物に添加されない、又は工程a)〜b)の前又は最中のその成分のいずれかは作用し、
d)工程c)で得られたポリマー層の少なくとも一部である第一の熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールする工程
を所与の順序で含む方法。
【請求項11】
工程c)における温度が275〜330℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程d)が、100〜200℃の温度で実施される、請求項10又は11のいれか1項に記載の方法。
【請求項13】
熱可塑性表面が第二の支持体上にヒートシールされた物品であって、前記熱可塑性表面は、請求項1〜のいずれか1項に記載のエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含む組成物(Co)を含むポリマー層の少なくとも一部であり、
ここで、
組成物(Co)は何の添加剤も含まず
ポリマー層は、第一の支持体をさらに含む被覆構造の一つの層であり、ポリマー層はヒートシールの前に第一の支持体上に押出被覆されている物品。
【請求項14】
ポリマー層が添加剤を含まない、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に押出被覆されたポリマー層(前記ポリマー層は低密度ポリエチレンを含む組成物を含み、前記組成物は何の添加剤も含まない)を含むヒートシール品、そのような物品の製造法、及びそのような組成物をヒートシール構造の層として含むポリマー層の使用に向けられる。
【背景技術】
【0002】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、例えば押出コーティングなどの多くの用途に使用されている。押出コーティング法で使用される高い加工温度が原因で、低密度ポリエチレン(LDPE)の劣化が起こることが一般的に知られている。主な劣化反応は分子の拡大である。すなわちそのような高温ではポリマーの架橋が起こる。そのような架橋の一つの不利益は、低密度ポリエチレン(LDPE)のメルトフローレートが劇的に低下することである。これらの変化は、通常のメルトフローレート測定によって容易に検出できる。しかしながら、そのようなメルトフローレート(MFR)の低下は、押出コーティング法において引落速度(draw down speed)及びポリマーの支持体への浸透を著しく制限するので望ましくない。さらに、そのような架橋は、シール性能にも悪影響を及ぼす。架橋を避けるために、WO2013/124221に記載のように酸化防止剤が使用されることがある。しかしながら、酸化防止剤は、典型的には、ダイから押し出される溶融ポリマー(ポリマーメルト)の酸化を防止してしまい、コーティングの接着性能に悪影響を及ぼす。押出コーティング法においては、コーティングと支持体間の接着の低下は、それがこの技術における最も重要な因子の一つであるため、容認できない。WO2013/124221では、この目的の矛盾に対処しようとして、特別な酸化防止剤が使用されている。
【0003】
押出コーティング法では、支持体がポリマーで被覆される。支持体は典型的には繊維性の支持体、例えば、紙、板紙又はクラフト紙;金属箔、例えばアルミ箔;又はプラスチックフィルム、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム又はセロファンフィルムである。ポリマーは、動いている支持体上にフラットダイを通じて押し出される。溶融ポリマーは、典型的には、高温、典型的には275〜330℃でダイから押し出される。
【0004】
溶融物がダイから押し出される際、溶融フィルムは、ダイの下方に配置された二つのローラー、圧力ロールと冷却ロールの間に形成されたニップに引き落とされる。溶融フィルムより高速で動いている支持体は、フィルムを所要の厚さに延伸する。二つのロール間の圧力により、フィルムは支持体上に圧着される。さらに、フィルムは、冷却ロールの低温によって冷却及び固化される。押出コーティング法の特徴的パラメーターの一つである引落比は、ダイギャップ(ダイ開口部の間隙)の、支持体上のポリマーフィルムの厚さに対する比である。
【0005】
典型的な押出コーティング法において、支持体は、高速、典型的には100m/分を超える又は300m/分を超える速度、大部分の商業的稼働機においては400m/分を超える又は500m/分を超える速度で移動する。現代の機械は、1000m/分までのライン速度(線速度)で稼働するように設計されている。本願において、“ライン速度”及び“引落速度”は、コーティングラインにおける支持体の速度を意味する同義語と見なされる。
【0006】
押出コーティング法に関する説明は、例えば、R.A.V.Raff及びK.W.DoakによるCrystalline Olefin Polymers,Part II(Interscience Publishers,1964),478〜484ページ、又はDominick V.RosatoによるPlastics Processing Data Handbook(Chapman & Hall,1997),273〜277ページに掲載されている。
【0007】
そのような押出被覆された支持体は、支持体と熱可塑性表面を接合するためにヒートシールが使用される包装及びその他の用途に使用できる。これは、接合される表面に熱を加えてそれらを軟化又は溶融しながら、接合が必要な場所に一定の圧力をかけることによって行われる。最も一般的には、加熱は、接合される表面と反対側の表面にホットバーなどの熱物体を接触させることによって、又は表面を熱風、赤外線放射、超音波、又は誘導加熱で加熱することによって実施される。接合される表面を接合に適切な温度に加熱できる速度は、表面をヒートシールできる速度を決定することが多い。高速ヒートシールは、多くのそうした稼働が、低速ヒートシール速度だと著しくコストを増大する大量連続稼働であるので、重要である。多くの場合、シールされる表面間に形成されるシールは、まだ温かいうちに荷重下に置かれる。このことは、冷却前でも強力なシールが形成されることを確実にするために、ポリエチレンの熱間粘着性が重要であることを意味している。
【0008】
しかし、熱間粘着力は比較的高くあるべきと言うだけでなく、ヒートシール開始温度は比較的低くあるべきでもある。低温で稼働することにより、シールされる物品は高温に暴露されないという利益がある。低温は当然ながら生成及び維持が安価であるので、経済的な利益もある。
【0009】
そこで、押出コーティング法の間、添加剤なしでも樹脂の原MFRを維持しながら押し出しでき、その後のヒートシール工程で高い熱間粘着力と低いシール開始温度(SIT)の組合せを有する低密度ポリエチレンが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公開第2013/124221号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Crystalline Olefin Polymers,Part II(Interscience Publishers,1964),478〜484ページ
【非特許文献2】Dominick V.RosatoによるPlastics Processing Data Handbook(Chapman & Hall,1997),273〜277ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、押出コーティング法において高いプロセス速度でも接着性に影響を及ぼすことなく使用でき、添加剤なしでもメルトフローレートを維持しながら押し出すことができ、その後のヒートシール工程においては高い熱間粘着力と低いシール開始温度(SIT)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、第一の態様において、組成物(Co)を含むポリマー層の少なくとも一部の使用を提供する。前記組成物は管型反応器(tubular reactor)で製造された低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくはエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)を含み、前記組成物はポリマー層と第一の支持体を含む押出被覆構造の熱可塑性表面として添加剤を含まず、前記熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールすることによってヒートシール品を製造する。
【0014】
本発明は、第二の態様において、組成物(Co)を含むポリマー層の少なくとも一部の使用を提供する。前記組成物は、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有する低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくはエチレンの低密度ホモポリマー(本明細書ではLDPEホモポリマーと呼ぶ)を含み、前記組成物はポリマー層と第一の支持体を含む押出被覆構造の熱可塑性表面として添加剤を含まず、前記熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールすることによってヒートシール品を製造する。
【0015】
本発明を通じて、低密度ポリエチレン(LDPE)は、好ましくはエチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマー)である。
好ましくは、第一の態様において、管型反応器で製造された低密度ポリエチレンは、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有する。
【0016】
好ましくは、第二の態様において、低密度ポリエチレン(LDPE)は管型反応器で製造される。
以下においては、それに反することが明記されない限り、上記二つの態様の好適な特徴が記載される。
【0017】
押出被覆支持体において、ポリマー層は支持体上に押出被覆される。
好ましくは、ポリマー層は添加剤を含まない。
本発明はさらに、下記工程を所与の順序で含む方法にも向けられる。
【0018】
a)本発明の態様のいずれか一つに従って低密度ポリエチレン(LDPE)を製造する工程;
b)工程a)で得られた低密度ポリエチレン(LDPE)を含む組成物(Co)を製造する工程;そして
c)工程b)で得られた組成物(Co)を含むポリマー層を第一の支持体上に押出コーティングする工程、
ここで、
添加剤は組成物中に存在しない、又は組成物に添加されない、又は工程a)〜b)の前又は最中のその成分のいずれかは作用し、
d)工程c)で得られたポリマー層の少なくとも一部である第一の熱可塑性表面を第二の支持体とヒートシールする工程。
【0019】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、好ましくは、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有し、及び/又は、好ましくは
管型反応器で製造される。
【0020】
好ましくは、添加剤は組成物中に存在しない、又は組成物に添加されない、又は工程a)〜c)の前又は最中のその成分のいずれかは作用する。
本発明はさらに、熱可塑性表面が第二の支持体上にヒートシールされた物品にも向けられる。前記熱可塑性表面は、本発明の態様のいずれか一つに従って、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む組成物(Co)を含むポリマー層の少なくとも一部である。
ここで、
組成物(Co)は何の添加剤も含まず
ポリマー層は、第一の支持体をさらに含む被覆構造の一つの層であり、ポリマー層はヒートシールの前に第一の支持体上に押出被覆されている。
【0021】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、好ましくは、
− 3.0g/10分より高い、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR);
− 10より大きい分子量分布Mw/Mn;及び
− 少なくとも15/100kCであるビニリデン含量
を有し、及び/又は、好ましくは
管型反応器で製造されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、熱間粘着性試験におけるシール開始温度と熱間粘着力を示すグラフである。
図2図2は、複素弾性率と複素粘度の関係を示すグラフである。
図3図3は、角周波数と複素粘度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、発明的使用の好適な態様又は技術的詳細への言及がなされる場合、これらの好適な態様又は技術的詳細は、それに反することが明記されない限り、本明細書中に記載されている発明的方法ならびに発明的物品にも及ぶことは理解されるべきである。
【0024】
被覆される支持体、すなわち第一の支持体は、当該技術分野で公知の任意の支持体でよい。好ましくは、支持体は、繊維性の支持体、例えば、紙、板紙又はクラフト紙;金属箔、例えばアルミ箔;及びプラスチックフィルム、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム又はセロファンフィルムからなる群から選ばれる。
【0025】
第二の支持体も、本発明によるポリマー層又は本発明によるポリマー層で被覆された支持体を含む、当該技術分野で公知の任意の支持体でよい。第一の支持体と比較して同じでも又は異なっていてもよい。好ましくは、第二の支持体は、本発明によるポリマー層、繊維性の支持体、例えば、紙、板紙又はクラフト紙;金属箔、例えばアルミ箔;及びプラスチックフィルム、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム又はセロファンフィルム又は本発明によるポリマー層で被覆された本発明によるポリマー層を除く上記支持体の一つからなる群から選ばれる。
【0026】
従って、ヒートシールされる二つの表面のうち、一つの表面だけが、本発明による組成物(Co)を含むポリマー層の少なくとも一部である熱可塑性表面であればよい。言い換えれば、被覆支持体は、上記態様の一つに従って、第二の支持体上に直接ヒートシールできる。
【0027】
第二の支持体は、第一の支持体と同じ材料でありうる、及び好ましくは第一の支持体と同じ材料から製造される。
第二の支持体と第一の支持体は、同じ支持体の異なる領域などのように同じであってもよい。
【0028】
これは、ポリマー層を含む被覆構造を、ポリマー層が同じポリマー層の異なる領域と接触するように折り畳むことによって達成できる。従って、本発明においては“少なくとも一部”という表現が使用される。
【0029】
あるいは、第二の支持体は第一の支持体と同じでもよく、支持体は本発明によるポリマー層で部分的にのみ被覆されている。それによって、本発明によるポリマー層は、同じ支持体の非被覆領域とシールできる。
【0030】
支持体は継目(シーム)を含んでいてもよい。そのような継目は、例えば上記態様の場合のように、支持体が折り畳まれるべき場合に特に有益である。
好ましくは、第一の支持体は本発明によるポリマー層を含み、第二の支持体は本発明によるポリマー層又は本発明によるポリマー層で被覆された支持体、好ましくは本発明によるポリマー層で被覆された支持体である。
【0031】
第二の支持体と第一の支持体は、同じ支持体の異なる領域などのように同じであってもよい。
これは、上で概略したように、ポリマー層を含む被覆構造を、ポリマー層が同じポリマー層の異なる領域と接触するように折り畳むことによって達成できる。
【0032】
好ましくは、それぞれ本発明による一つ又は二つのポリマー層の少なくとも一部である二つの熱可塑性表面はヒートシールされている。さらに好ましくは、各ポリマー層は、ポリマー層と支持体を含む被覆構造の層であり、ポリマー層はヒートシールの前にそれぞれの支持体上に押出被覆されている。
【0033】
好ましくは、本発明による使用、方法及び/又は物品において、ポリマー層及び/又は組成物(Co)は、少なくとも2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)を有し、
さらに、押出前及び後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)は実質的に同じである。すなわち、
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、
MFR(後)は、押出コーティング後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)であり;
MFR(前)は、押出コーティング前の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)である。
【0036】
既に上で概略したように、“少なくとも一部“という用語は、同じポリマー層の異なる領域がヒートシールされうる又は層全体がヒートシールに付されるわけではないことを表すのに使用されている。同じポリマー層の異なる領域は同一の物理的性質を有する。
【0037】
そのようなLDPEを使用することにより、驚くべきことに、添加剤が存在しないにも関わらず、メルトフローレートの低下は全くないか又はほんの無視できる程度であることが分かった。さらに、接着性、熱間粘着力及びシール開始温度は、類似の融点を有するオートクレーブ樹脂と比べてさらに改良されている。
【0038】
ヒートシール前、ポリマー層は、被覆構造の外層の一つである。外層とは、外層と環境の間に更なる層がないことを意味する。両外層とも本発明によるポリマー層であってもよい。
【0039】
本発明において、“添加剤”という用語は、反応器、好ましくは管型反応器で低密度ポリエチレン(LDPE)を製造するのに使用されるラジカル開始剤を除く、ポリマー性材料とは異なるすべての無機又は有機化合物を包含する。特に、用語“添加剤”は、ポリマーの酸化サイクルに影響を与える化合物を包含し、それらは、通常酸化防止剤及びラジカルスカベンジャーと呼ばれる化合物を含む。酸化防止剤は、ポリマーが酸化されるのを防止する化合物で、立体障害フェノール、硫黄含有酸化防止剤、芳香族アミン及びヒンダードアミンを含む。ラジカルスカベンジャーは、ポリマー中のラジカルと反応できる化合物である。例としては、ホスファイト及びホスホナイト及びヒドロキシルアミン及びアミンオキシドが挙げられる。
【0040】
好ましくは、ポリマー層は何の添加剤も含まない。本発明によるポリマー層が二つ以上存在する場合、好ましくはすべてのポリマー層が何の添加剤も含まない。
本発明によれば、“ポリマー層”及び“押出被覆層”という用語は、同じ対象、すなわち支持体上に押出被覆されるポリマー層を定義しているので、互換的に使用される。
【0041】
上述のように、支持体は押出被覆されるので、支持体の少なくとも一つの表面は被覆される。しかしながら、支持体の両面、すなわち支持体の外面及び内面(側)が押出被覆されるのも本発明の範囲内である。従って、本発明によるポリマー層は支持体と直接接触する。“直接接触”という用語は、ポリマー層と支持体間の接着を改良するために、それぞれポリマー層がオゾン処理に付され、支持体がコロナ処理又は火炎処理に付される態様も含む。
【0042】
本発明の物品は、被覆支持体を少なくとも含まねばならず、最終用途に応じて一つ又は複数、通常三つ以下の被覆支持体からなりうる。典型的には、物品は、ジュースパック(carton)、牛乳パックなどである。しかしながら、本発明による物品は、フレキシブル包装及び工業包装品、ならびに使い捨てのカップ、プレートなどであってもよい。従って、本発明の物品は、その最も広い意味において、二つの熱可塑性表面がそのようにしてヒートシールされている物品である。
【0043】
押出被覆支持体のポリマー層は、好ましくは、2〜1,000μmの範囲、さらに好ましくは5〜100μmの範囲の厚さを有する。具体的な厚さは、支持体の性質、その後に予定されるその取扱条件、そして最も重要なことには、その後の最終製品の用途に応じて選択される。特に、LDPEが本発明で定義されているとおりの場合、実質的により薄いコーティングが製造できる。例えば、オートクレーブベースのLDPEでは2μmの厚さに到達することは通常不可能であるが、本発明によるLDPEは問題なく2μmのコーティングの製造を可能にする。支持体の厚さは一般的に自由に選ぶことができ、コーティング法に何の影響も及ぼさない。それは典型的には1〜1,000μm、例えば5〜300μmでありうる。
【0044】
押出コーティング法は、好ましくは従来の押出コーティング技術を用いて実施される。従って、ポリマー組成物(Co)は押出装置に供給される。押出機から溶融ポリマーがフラットダイを通じて被覆される支持体に受け渡される。ダイリップとニップ間の距離のために溶融プラスチックは空気中で短時間酸化されるが、これにより、通常、押出被覆層と支持体間の接着の改良がもたらされる。被覆支持体は冷却ロール上で冷却され、その後、エッジトリマー(耳切り機)に受け渡され、巻き取られる。
【0045】
ダイ幅は典型的には使用される押出機のサイズに依存する。従って、90mmの押出機を用いた場合、幅は600〜1,200mm、115mmの押出機の場合、900〜2,500mm、150mmの押出機の場合、1,000〜4,000mm、そして200mmの押出機の場合、3,000〜5,000mmの範囲内が適切でありうる。
【0046】
好ましくは、ライン速度(引落速度)は、75m/分以上、さらに好ましくは100m/分より大、さらに好ましくは300m/分より大、そして大部分の商業的稼働機においては400m/分より大又は500m/分より大である。現代の機械は、1,000m/分までのライン速度で稼働するように設計されている。従って、一つの好適な態様において、ライン速度(引落速度)は1,500m/分まで、好ましくは1,200m/分までであり、従って、ライン速度(引落速度)は、好ましくは300〜1,500m/分の範囲以上、さらに好ましくは300〜1,400m/分の範囲又は500〜1,400m/分の範囲、例えば300〜800m/分の範囲又は500〜1,200m/分の範囲である。
【0047】
溶融ポリマー、すなわち溶融組成物(Co)の温度は、典型的には270〜330℃、例えば275〜330℃の範囲である。
異なるポリマーを用いた多層コーティングの製造を可能にするために、少なくとも二つの押出機を用いるコーティングラインを使用することも可能である。接着を改良するために、ダイから押し出される溶融ポリマーを例えばオゾン処理によって、及び/又は支持体をコロナ処理もしくは火炎処理によって処理するための手配をすることも可能である。コロナ処理の場合、例えば、支持体を、電極として働く二つの導体素子間に通す。電極間にはスプレー又はコロナ放電を起こせるような高電圧、通常交流電圧(約10000V及び10000Hz)が印加される。スプレー又はコロナ放電により、支持体表面上の空気がイオン化され、支持体表面の分子と反応する。様々な技術に関する概説は、例えば、Enercon Industries Corporation社のDavid A Markgrafにより、http://www.enerconind.com/files/7f/7fb3c045-dee6-461c-b508-259b816d0bf4.pdfに示されている(火炎処理に関しては2〜8ページ、コロナ処理に関しては9〜20ページ、そしてオゾン処理に関しては20〜21ページ参照)。
【0048】
本発明によれば、ポリマー層は組成物(Co)を含まねばならない。好ましくは、組成物(Co)はポリマー層の主要部分を構成する。従って、ポリマー層は、好ましくは、少なくとも50wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、なおさらに好ましくは少なくとも85wt%、なおさらに好ましくは95wt%以上の組成物(Co)を含み、なおさらに好ましくは組成物(Co)からなる。従って、ポリマー層は、70〜100wt%、例えば70〜90wt%、さらに好ましくは85〜100wt%、例えば85〜90wt%、なおさらに好ましくは95〜100wt%、例えば95〜99wt%の組成物(Co)を含むと理解される。
【0049】
好ましくは、ポリマー層は、少なくとも2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃)を有し、さらに好ましくは2.0〜15.0g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(190℃)を有し、なおさらに好ましくは2.5〜15.0g/10分の範囲、なおさらに好ましくは3.5〜10.0g/10分の範囲、なおさらに好ましくは4.5〜9.0g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(190℃)を有する。当業者には容易に分かるように、ポリマー層のメルトフローレートは押出後の層に適用される。この同じ値及び範囲は、押出コーティング法後ポリマー層の一部である組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)に対しても適用される。
【0050】
他方、押出コーティング法前のポリマー組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)はより高くなりうる。従って、押出コーティング法前のポリマー組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)は少なくとも2.5g/10分であり、さらに好ましくは3.5〜20.0g/10分の範囲、なおさらに好ましくは5.0〜15.0g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(190℃)を有する。
【0051】
本発明の一つの利点は、低密度ポリエチレン(LDPE)、ひいてはポリマー組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)が、押出コーティング法の影響を、仮にあったとしてもごくわずかしか受けないことである。好ましくは、押出前及び後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)は実質的に同じ、すなわち、
【0052】
【数2】
【0053】
さらに好ましくは、
【0054】
【数3】
【0055】
なおさらに好ましくは、
【0056】
【数4】
【0057】
である。
ここで、
MFR(後)は、押出コーティング後の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)であり;
MFR(前)は、押出コーティング前の組成物(Co)のメルトフローレートMFR(190℃)である。
【0058】
本発明によるポリマー組成物(Co)は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含まねばならない。このため、ポリマー組成物(Co)は、本発明で明記されていない更なるポリマーを含むこともできる。従って、ポリマー組成物は、少なくとも50wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、なおさらに好ましくは少なくとも80wt%、例えば80〜100wt%又は80〜90wt%、なおさらに好ましくは少なくとも90wt%、例えば90〜99wt%又は90〜100wt%の低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。ここで重量パーセンテージはポリマー組成物に基づく。好適な態様において、低密度ポリエチレン(LDPE)は組成物(Co)中の唯一のポリマーである。
【0059】
特に好適な態様において、ポリマー層は低密度ポリエチレン(LDPE)からなる。
低密度ポリエチレン(LDPE)は、好ましくはエチレンの低密度ホモポリマー(本明細書においてはLDPEホモポリマーと呼ぶ)である。
【0060】
一般的に、低密度ポリエチレン(LDPE)の重合は、通常及び好ましくは管型反応器内で、一つ又は複数のラジカル開始剤、例えば過酸化物、酸素、アゾ化合物又はそれらの組合せなどの作用下、約150〜350℃の温度及び約100〜400MPaの圧力で、モノマーを反応させることによって実施される。モノマーは、反応器に導入される前に、数段階で所望の圧力にまで圧縮される。本発明に従って使用されるLDPEは好ましくは管型反応器で製造される。管型反応器は、典型的には、180°に折り曲げて接続された一連の直線部分として配列された数百メートルのジャケット付き高圧管(high pressure tubing)からなる。管型反応器は、シングルフィード式か、又はスプリットフィード式反応器を含むマルチフィード式反応器である。シングルフィード式管型反応器(フロントフィード式反応器とも呼ばれる)では、全モノマー流が第一の反応ゾーンの入口に供給される。マルチフィード式反応器では、モノマーは、反応器に沿った数ヶ所の位置で反応器に供給される。スプリットフィード式反応器では、圧縮モノマー混合物がいくつかのストリームに分かれ、反応器の異なる位置で反応器に供給される。反応はラジカル開始剤の注入によって開始される。反応混合物は第一の反応ピークの後冷却するので、追加の開始剤を加えて第二の反応ゾーンを開始させる。開始剤注入ポイントの数が反応ゾーンの数を決定する。高圧ラジカル重合によるエチレンポリマー製造のための管型反応器は、通常2〜5個の反応ゾーンを含む。反応が完了したら、高圧セパレーター及び低圧セパレーターを用いて典型的には二段階で温度及び圧力を下げる。得られたポリマーを回収し、未反応モノマーは除去されるか又は反応器にリサイクルされる。ラジカル開始剤としては、当該技術分野で一般的に知られている開始剤が使用できる。高圧ラジカル重合によるエチレンポリマー製造の更なる詳細は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.6(1986),pp383〜410に見出すことができる。
【0061】
適切な管技術(tubular technology)/方法は当該技術分野で周知である。例としては、LyondellBasell社のLupotech(R) T,SABTEC CTR(R)管型LDPE技術、ExxonMobil Chemical社の高圧管法、又はDSM社の‘Clean Tubular Reactor Technology’が挙げられる。
【0062】
低密度ポリエチレン(LDPE)の意味は周知であり、文献に記載されている。LDPEという用語は低密度ポリエチレンの略語であるが、この用語は、密度範囲を限定しているのではなく、高圧法でラジカル重合により製造された、低、中及び高密度を有するLDPE様HPポリエチレンを含むと理解されている。LDPEという用語は、オレフィン重合触媒の存在下で製造されるポリエチレンと比べて、異なる枝分かれアーキテクチャなどの典型的な特徴を有するHPポリエチレンの性質を説明及び区別しているにすぎない。さらに、前記低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーは、不飽和であってもよい。
【0063】
低密度ポリエチレン(LDPE)がコポリマーの場合、それは、典型的なコモノマー、例えばアクリレート、メタクリレート、非共役ジエン、ビニルシラン及びアセテートなどを含む。
【0064】
上で既に概説したように、本発明の低密度ポリエチレンは、好ましくは管型反応器で、ラジカル開始重合により製造される。この場合、重合は、エチレンモノマーを、一つ又は複数のラジカル開始剤、例えば過酸化物、酸素又はそれらの組合せの作用下で反応させることによって実施される。
【0065】
本発明のポリエチレンは、好ましくは、国際特許公開第WO−A−2013/083285号及びWO−A−2103178242号に開示されている方法に従って製造される。上記方法を使用することにより、我々は驚くべきことに、有益な性質を示す低密度ポリエチレンを製造することができた。かくして、例えば、損失弾性率G”=5kPaにおける貯蔵弾性率G’は、本発明の低密度ポリエチレンの場合、従来技術を用いて製造された標準的な管型材料(低密度ポリエチレン)より一般的に高いことが示された。本発明の新規低密度ポリエチレンは、標準的な管型材料と比べて改良された押出コーティング性などの有益な加工性を示す。
【0066】
管型反応器で製造される低密度ポリエチレンは、オートクレーブ材料に存在する顕著な高分子量テールのない分子量分布を有する。分子量分布の見かけにおけるこの相違は、当業者には予想され、検出可能である。
【0067】
本発明の低密度ポリエチレンは、好ましくは910〜940kg/mの区間、さらに好ましくは910〜935kg/mの区間の密度を有するポリエチレンである。
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、好ましくは、11より大きい、最も好ましくは12より大きい分子量分布Mw/Mnを有する。通常、Mw/Mnは28未満、好ましくは26未満である。
【0068】
Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)の分野で公知の方法に従って決定される。枝分かれ材料の場合、平均分子量は光散乱の助けを借りて決定される。というのも、分枝構造は、直鎖材料の場合のように分子量に従って溶出しないからである。分子量分布Mw/Mnは、MWD又はPDI(多分散度指数)とも呼ばれるが、押出コーティング性のキーパラメーターである。
【0069】
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、好ましくは、5kPaの損失弾性率G”での測定で、3000Paより大、さらに好ましくは3250Paより大きい貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。通常、上記貯蔵弾性率は3900Paよりは低い。
【0070】
ゼロ剪断速度粘度ηは、典型的には3000〜6000Pas、好ましくは4000〜6000Pas、さらに好ましくは4500〜6000Pasである。
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、好ましくは、少なくとも20/100kC、なおさらに好ましくは少なくとも25/100kC、最も好ましくは少なくとも28/100kCのビニリデン含量を有する。
【0071】
さらに、ビニリデン含量区間(vinylidene content interval)の適切なビニリデン含量上限は、38、36、あるいは34でありうる。これらのビニリデン含量上限は、それぞれ、本明細書中に記載の任意のビニリデン含量区間(開区間でも閉区間でも)で使用できる。すなわち、本明細書中に記載の任意のビニリデン含量区間の所与のビニリデン含量下限と組み合わせて使用できる。
【0072】
ビニリデンは、第三級炭素基のベータ切断によって形成される。多量のラジカル開始剤によって枝分かれが増加すると、第三級炭素基の数が増加し、ベータ切断及びビニリデン生成の可能性も増大する。従って、ビニリデン含量は、本発明の低密度ポリエチレン中に導入された枝分かれの量に対する間接的尺度となる。
【0073】
枝分かれは、ポリマー主鎖への基移動に起因する。これらの移動反応は、鎖同士の分子量の差別化、長鎖分枝をもたらす成長、又は2本鎖から1本鎖への融合をもたらす組合せによる停止のために必要である。長鎖分枝及び高分子量材料の導入は、溶融物における絡み合いを示す、すなわち高い溶融強度(ネックインの減少)をもたらす材料(ここでは低密度ポリエチレン)を作り出す。
【0074】
好ましくは、本発明の低密度ポリエチレンは、ISO 1133(190℃、2.16kg)によるメルトフローレート(MFR)3.5〜15g/10分、最も好ましくは4.0〜7.0g/10分を有する。
【0075】
好ましくは、低密度エチレンポリマーは、40000〜250000g/mol、さらに好ましくは47000〜240000g/molの重量平均分子量Mwを有する。
本発明による組成物(Co)は、一軸スクリュー押出機ならびに二軸スクリュー押出機などの特殊な押出機を含む、ポリマー性化合物を製造するための適切な溶融混合装置内で成分を混合することによって製造できる。他の適切な溶融混合装置は、遊星形多軸スクリュー押出機(planet extruder)及び一軸スクリュー共ニーダー(single screw co-kneader)などである。
【0076】
三つ以上の表面を共にシールできる。例えば、被覆構造は、本発明による第二の支持体のような二つ以上の支持体と共にシールできる。
好ましくは、シールされるすべての表面は、本明細書中に記載のポリマー層の表面である。好ましくは、シールされる領域の加熱は、熱材料(例えばシールバー又はローラー)からの熱伝導により、マイクロ波加熱、誘電加熱、超音波などにより実施される。
【0077】
使用される圧力の大きさは、シールされる二つ(以上)の表面を接触させるのに必要な圧力、例えば、指圧からプレス機又はローラーによって印加される圧力、例えばシールバーの約3MPaまでの間で変動しうる。加熱は、圧力の印加前でも印加と同時でもよい。圧力は加熱前に印加することもできるが、通常、加熱が実施されるまでは効力はない。
【0078】
シールされるヒートシール可能ポリエチレンのシール面の温度は、一般的にガラス転移温度Tgより高い。商業的に行われるヒートシールの多くは高速ライン上で行われるので、十分な強度のシールをもたらすのに必要な温度が低いほど、ラインはより速く走行できることが多い。なぜならば、シール面を所要温度に加熱するのにかかる時間が少なくて済むからである。
【0079】
通常、ヒートシールは、90〜200℃、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは105〜130℃の温度で実施される。
通常、ヒートシールは、0.5〜3MPaの圧力で実施される。
【0080】
さらに、上記態様のいずれにおいても、ポリマー層は、125℃以下、さらに好ましくは100〜120℃の範囲、なおさらに好ましくは102〜118℃の範囲のヒートシール開始温度(SIT)を有するのが好適である。
【実施例】
【0081】
1.測定法
用語及び測定法に関する下記定義は、別途記載のない限り、以下の実施例のみならず本発明の上記一般的説明にも適用される。
【0082】
分子量、分子量分布(Mn、Mw、MWD)−GPC
屈折率(RI)、オンライン4キャピラリーブリッジ粘度計(PL−BV 400−HT)、及び角度15°と90°のデュアル光散乱検出器(PL−LS 15/90光散乱検出器)を備えたPL 220(Agilent社)のGPCを使用した。Agilent社の3×Olexis及び1×Olexis Guardカラムを固定相として、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジtertブチル−4−メチル−フェノールで安定化)を移動相として、160℃及び一定流量1mL/分を適用した。200μLのサンプル溶液を分析ごとに注入した。すべてのサンプルは、8.0〜12.0mgのポリマーを10mL(160℃)の安定化TCB(移動相と同じ)中に、PPの場合2.5時間又はPEの場合3時間、160℃で連続的に穏やかに振盪しながら溶解することにより調製した。160℃におけるポリマー溶液の注入濃度(c160℃)は、以下のように決定した。
【0083】
【数5】
【0084】
式中、w25はポリマー重量、V25は25℃におけるTCBの体積。
対応する検出器定数ならびに検出器間の遅延容量(ディレイボリューム)は、モル質量132900g/mol及び粘度0.4789dl/gを持つ狭いPS標準(MWD=1.01)を用いて決定した。使用されたTCB中PS標準の対応するdn/dcは0.053cm/gである。計算は、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2(Agilent社)を用いて実施した。
【0085】
各溶出スライス(elution slice)におけるモル質量は、15°の光散乱角を用いることにより計算した。データ収集、データ処理及び計算は、Cirrus Multi SECSoftware Version 3.2を用いて実施した。分子量は、Cirrusソフトウェアの“sample calculation options subfield slice MW data from”のフィールド内の“use LS 15 angle”のオプションを用いて計算した。分子量決定のために使用されたdn/dcは、RI検出器の検出器定数、サンプルの濃度c及び分析サンプルの検出器応答の面積から計算した。
【0086】
各スライスにおけるこの分子量は、C.Jackson及びH.G.Barthによる(C.Jackson及びH.G.Barth,“Molecular Weight Sensitive Detectors”:Handbook of Size Exclusion Chromatography and related techniques,C.−S.Wu,第2版,Marcel Dekker,ニューヨーク,2004,p.103)に記載されているようにして低角度で計算する。LS検出器又はRI検出器のシグナルがそれぞれ少ない低分子及び高分子領域については、線形近似(linear fit)を用いて溶出体積を対応する分子量に相関させた。サンプルによって線形近似の領域を調整した。
【0087】
分子量平均(M、M及びM)、分子量分布(MWD)及び多分散度指数PDI=Mw/Mn(式中、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)によって説明されるその幅広さは、ISO 16014−4:2003及びASTM D 6474−99に従ってゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、下記計算式を用いて決定した。
【0088】
【数6】
【0089】
一定の溶出体積区間ΔVについて、Ai及びMiは、GPC−LSによって決定されたクロマトグラフィーピークスライス面積及びポリオレフィン分子量(MW)である。
動的剪断測定(周波数掃引測定)
動的剪断測定による溶融ポリマーの特徴付けは、ISO標準6721−1及び6721−10に準拠する。測定は、25mmのパラレルプレートの配置を備えたAnton Paar MCR501応力制御回転式レオメーターで実施した。測定は、圧縮成形プレート上で、窒素雰囲気を用い、線形の粘弾性領域(linear viscoelastic regime)内の歪を設定して実施した。振動剪断試験は、190℃で、0.01〜600rad/sの周波数範囲を適用し、1.3mmのギャップを設定して実施した。
【0090】
動的剪断実験では、プローブは、正弦波的に変動する剪断歪又は剪断応力(それぞれ歪及び応力制御モード)で均一な変形に付される。制御された歪実験では、プローブは、
γ(t)=γsin(ωt) (1)
によって表すことができる正弦波歪に付される。印加された歪が線形の粘弾性領域内であれば、得られる正弦波応力応答は、
σ(t)=σsin(ωt+δ) (2)
[式中、
γ及びσは、それぞれ応力及び歪の振幅であり、
ωは、角周波数であり、
δは、位相シフト(印加された歪及び応力応答間の損失角)であり、
tは、時間である]によって与えられる。
【0091】
動的試験の結果は、典型的には、いくつかの異なるレオロジー関数、すなわち剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”、複素剪断弾性率G、複素剪断粘度η、動的剪断粘度η’、複素剪断粘度の異相成分η”、及び損失正接tanδによって表される。これらは以下のように表すことができる。
【0092】
【数7】
【0093】
上記レオロジー関数のほかに、いわゆる弾性指数EI(x)などのその他のレオロジーパラメーターも決定することができる。弾性指数EI(x)は、xkPaの損失弾性率G”の値に対して決定される貯蔵弾性率G’の値で、等式(9)によって記載できる。
【0094】
EI(x)=(G”=xkPa)に対するG’[Pa] (9)
例えば、EI(5kPa)は、5kPaに等しいG”の値に対して決定された貯蔵弾性率G’の値によって定義される。
【0095】
ゼロ剪断速度粘度ηは、以下のように計算される:
関数f’及びf”は以下のように定義される:
f’(ω)=G”(ω)ω/[G’(ω)+G”(ω)
及び
f”(ω)=G’(ω)ω/[G’(ω)+G”(ω)
f”に対するf’のプロットは、5個の最低測定周波数に対応するf’の点をf”のそれぞれの点に対してプロットすることにより作成される(f’はy軸上、f”はx軸上)。次に、点を通る最良適合直線を引き、その線をf”=0に外挿する。こうして、ゼロ剪断速度粘度は、切片値の逆数、すなわち、η=1/f’(f”=0)と見なされる。
【0096】
参考文献
[1] Rheological characterization of polyethylene fractions” Heino, E.L., Lehtinen, A., Tanner J., Seppala, J., Neste Oy, Porvoo, Finland, Theor. Appl. Rheol., Proc. Int. Congr. Rheol, 11th (1992), 1, 360-362
[2] The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene”, Heino, E.L., Borealis Polymers Oy, Porvoo, Finland, Annual Transactions of the Nordic Rheology Society, 1995.).
[3] Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers, Pure & Appl. Chem., Vol. 70, No. 3, pp. 701-754, 1998.
NMR分光法による微細構造の定量化
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマー中に存在する不飽和基の含量を定量した。定量的1H NMRスペクトルを、400.15MHzで運転するBruker Advance III 400 NMR分光計を用い、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルは、13C最適化10mm選択励起プローブヘッドを用い、125℃で、全空気圧について窒素ガスを用いて記録された。
【0097】
約200mgの材料を、約3mgのHostanoxを安定剤として使用し、1,2−テトラクロロエタン−d2(TCE−d2)中に溶解した。30度のパルス、10sの緩和遅延及び10Hzのサンプル回転を利用する標準的シングルパルス励起を使用した。4回のダミースキャンを用い、各スペクトルあたり合計128のトランジェントを得た。この設定が選ばれたのは、主に不飽和の定量及びビニリデン基の安定に高分解能が必要とされたためであった。{he10a,busico05a}すべての化学シフトは、5.95ppmの残留プロトン化溶媒に由来するシグナルに対して内部参照された。
【0098】
末端ビニル基(R−CH=CH2)の存在に対応する特徴的シグナルが観察され、ビニリデン基の量が、官能基あたりのレポーティング部位の数を説明するそれぞれ4.95、4.98及び5.00、5.05ppmにおける連結末端Va及びVbプロトンの積分を用いて定量された:
Nvinyl=(IVa+IVb)/2
ビニル基の含量は、存在する炭素の総数に対するポリマー中のビニル基の割合として計算された:
Uvinyl=Nvinyl/Ctotal
内部ビニリデン基(RR’C=CH2)の存在に対応する特徴的シグナルが観察され、ビニリデン基の量が、官能基あたりのレポーティング部位の数を説明する4.74ppmにおける2個のD末端プロトンの積分を用いて定量された:
Nvinylidene=ID/2
ビニリデン基の含量は、存在する炭素の総数に対するポリマー中のビニリデン基の割合として計算された:
Uvinylidene=Nvinylidene/Ctotal
内部シス−ビニレン基(ERCH=CHR’)の存在に対応する特徴的シグナルが観察され、シス−ビニレン基の量が、官能基あたりのレポーティング部位の数を説明する5.39ppmにおける2個のCプロトンの積分を用いて定量された:
Ncis=IC/2
シス−ビニレン基の含量は、存在する炭素の総数に対するポリマー中のシス−ビニレン基の割合として計算された:
Ucis=Ncis/Ctotal
内部トランス−ビニレン基(Z−RCH=CHR’)の存在に対応する特徴的シグナルが観察され、トランス−ビニレン基の量が、官能基あたりのレポーティング部位の数を説明する5.45ppmにおける2個のTプロトンの積分を用いて定量された:
Ntrans=IT/2
トランス−ビニレン基の含量は、存在する炭素の総数に対するポリマー中のトランス−ビニレン基の割合として計算された:
Utrans=Ntrans/Ctotal
炭素の全量は、レポーティング核の数を説明する2.85〜−1.00の間のバルク脂肪族の積分に、この領域に含まれない不飽和に関連する部位を補って計算した:
Ctotal=(1/2)*(Ialiphatic+Nvinyl+Nvinylidene+Ncis+Ntrans)
不飽和基の全量は、個別に観察された不飽和基の合計として計算され、これも存在する炭素の総数に対して報告された:
Utotal=Uvinyl+Uvinylidene+Ucis+Utrans
不飽和含量は、不飽和基の量/100kCとして与えられる。ここで、100kCは100000個の炭素を意味する。
【0099】
特定の不飽和基(x)の相対含量は、不飽和基全量に対する所与の不飽和基の割合又はパーセンテージとして報告される:
[Ux]=Ux/Utotal
参考文献
he10a
He, Y., Qiu, X, and Zhou, Z., Mag. Res. Chem. 2010, 48, 537-542.
busico05a
Busico, V. et. al. Macromolecules, 2005, 38 (16), 6988-6996
メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、190℃で2.16kgの荷重を用いて測定される(MFR)。メルトフローレートは、ISO 1133に標準化された試験装置が2.16kgの荷重下、190℃の温度で10分以内に押し出すポリマーの量(グラム数)である。
【0100】
コーティング層のMFRは以下のようにして決定した。
コーティング層を支持体から剥ぎ取り、収集した。次に、コーティングをはさみで細かく切り刻み、細片を自動プレス機に入れた。自動プレス機を使用したのは、サンプルから空気を除去するためであった。自動プレス機内でポリマーフィルムの細片を溶融し、サンプルプレートにした。次にプレート(気泡を含まない)を小片にカットし、これらの小片を上記のようなMFR測定に使用した。自動プレス機によるサンプルプレートの製造は、ISO 293に準拠して実施した。
【0101】
密度
低密度ポリエチレン(LDPE):密度は、ISO 1183−2に従って測定した。サンプルの調製は、ISO 1872−2 表3 Q(圧縮成形)に従って実施した。
【0102】
引落速度DD(10g/m)は、試験中、コーティング重量を一定(10g/m)に維持することにより決定した。開始時のライン速度は100m/分で、それを5秒間で100m/分ずつ、フィルムが破断するか又は600m/分に達するまで、段階的に増大させた。
【0103】
ネックインは、ダイ開口部の幅と支持体上のコーティングの幅との差として決定した。
接着試験は、支持体とコーティング間の接着を評価するために行われる。コーティングと支持体を互いから手で引き剥がした。同じオペレーターが比較例及び実施例のサンプルを試験した。以下のように1〜5のランク付けを行った。
1 コーティングは支持体から非常に容易に剥離する。分離中、コーティングは支持体を全く引き裂かない。
2 コーティングは支持体から容易に分離できるが、支持体の一部は分離されたコーティングに付いてくる。
3 コーティングは支持体にほぼ完全に接着しているが、まだ狭い領域からは剥離することができる。
4 コーティングは支持体によく接着している。ゆっくり引き裂くことにより、狭い領域からコーティングを剥がすことも可能でありうる。
5 コーティングと支持体を分離することはできない。分離しようとすると支持体を引き裂いてしまう。
【0104】
熱間粘着力:
最大の熱間粘着力、すなわち力/温度図の最大値が決定され、報告される。
熱間粘着性の測定は、J&B熱間粘着性試験機を用い、方法ASTM F 1921に従って実施された。標準法では、サンプルを15mm幅の切片に切断することが求められる。サンプルを熱間粘着性試験機に垂直方向に入れ、両端を機械的ロックに取り付ける。次に、試験機により、シールし、ホットシールを引っ張り、抵抗力を測定する。
シール圧、1.5N/mm
シール時間、0.5秒
冷却時間、0.2秒
剥離速度、200mm/s
各サンプルの熱間粘着性は、90℃から、測定された熱間粘着力が1N未満の温度までの温度範囲で熱間粘着力を試験することにより確立された。標準法では、少なくとも3個の平行測定を実施することが求められる。温度は10℃ずつ上げた。
【0105】
実施例
PE1 は、Borealis AG社の市販の低密度ポリエチレン(LDPE)CA7230で、密度923kg/m及びメルトフローレートMFR(190℃)4.5g/10分を有する。さらに、4600Pasのηも有する。
【0106】
PE2 は、Borealis AG社の市販の低密度ポリエチレン(LDPE)CA8200で、密度920kg/m及びメルトフローレートMFR(190℃)7.5g/10分を有する。さらに、2600Pasのηも有する。
PE1とPE2はオートクレーブ反応器を用いて製造された。
【0107】
PE3 は、管型反応器で製造されたLDPEで、密度918kg/m及びメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO 1133)5.7g/10分を有する。さらに、Mw:203000g/mol、ビニリデン含量:32/100kC、Mw/Mn:14.5、G’(G”=5kPa):3500Pa及びη:5200Pasを有する。これは、国際特許公開第WO−A−2013178242号の材料Aに関する記載のようにして製造された。
【0108】
MFRの低下
上記ポリマーPE1〜PE3を、ライン速度100m/分、コーティング重量20g/m、下表に記載の温度で押出コーティングに付し、MFR(190℃、2.16kg荷重)[g/10分]を決定した。結果を以下の表に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
接着性
コーティング重量30g/mを有するコーティングを、下表に示された温度で、UGクラフト紙にライン速度100m/分で適用し、接着性を上で概説したようにして決定した。
【0111】
【表2】
【0112】
第二の試験で、コーティング重量30g/mを有するコーティングを、315℃で、下表に示された支持体上にライン速度100m/分で適用した。
【0113】
【表3】
【0114】
このように、本発明の物品は改良された接着性を示す。
熱間粘着性試験でシール開始温度が決定された。結果を図1に示す。ライン速度は100m/分、UGクラフト紙へのコーティング重量は20g/mであった。PE3は、高いゼロ剪断粘度も示す。すなわち、シールバーの下から散逸する溶融物の量が少なくなる。結果を図2及び3に示す。
【0115】
PE3は、PE1と同じDSC融点、すなわち110℃を有する。
図から分かるように、PE3の熱間粘着性試験におけるシール開始温度は、PE1と比べて、DSC融点が同一であるにも関わらず著しく高い。さらに、PE3のシール開始温度は、PE2と比べて、融点が高い(110℃⇔108℃)にも関わらず同様である。さらに、PE3の接着性は、PE2と比べて、シール開始温度が同様であるにも関わらず著しく改良されている。
図1
図2
図3