(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の上述の目的、特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することでよりよく理解することができる。
【0015】
本開示の実施形態では、スマートガラス構造体が提供される。
図1は、本開示の一実施形態によるスマートガラス構造体の模式立体図である。
図1を参照すると、スマートガラス構造体は、第1のガラス102と、第1のガラス102と向かい合って配置された第2のガラス103と、第1のガラス102と第2のガラス103との間のPDLC集成体101と、第1のガラス102及び第2のガラス103のPDLC集成体101に隣接した少なくとも1つの面に位置しているアンチ放射コーティングとを含んでおり、第1及び第2のガラスのおのおのは少なくとも2つの面を含んでいる。本開示の実施形態では、PDLC集成体に隣接した少なくとも1つの面は第1及び第2のガラスの1つ又は2つ以上の面を含むことができるが、第1及び第2のガラスのガラス構造体の外部に面した面は含まない。
【0016】
図2は、AA’線に沿ったスマートガラス構造体の模式断面図である。
【0017】
一部の実施形態において、第1のガラス102と第2のガラス103は両方とも単層ガラスである。第1のガラス102又は第2のガラス103は、様々な技術により作製することができ、例えばフロートガラス、板ガラス又は強化ガラスなどでよい。第1のガラス102又は第2のガラス103は、平坦なガラス又は特定の曲率を有する湾曲ガラスであることができる。第1のガラス102と第2のガラス103は、所定の透明度を有する。
【0018】
PDLC集成体101は、PDLC層106を含む。一部の実施形態において、PDLC層106は、ポリマー層とこのポリマー層中に分散した液晶微小球とを含むことができる。ポリマー層は高分子材料を含む。一部の実施形態において、ポリマー層は、液晶微小球の通常光の第2の曲率(すなわち液晶微小球のそれらの長軸に沿った曲率)に合致する第1の曲率を有する材料を含むことができる。すなわち、第1の曲率は第2の曲率に等しく、あるいは第1の曲率の第2の曲率に対する比は0.9〜1.1の範囲内である。PDLC層106に電界が印加されていないときには、液晶微小球はポリマー層中にランダムに分散することができる。PDLC層106に電界が印加されると、液晶微小球はそれらの長軸を電界の方向に沿って配列してポリマー層中に規則的に分散することができる。
【0019】
PDLC集成体101は、第1の透明導電性膜107と第2の透明導電性膜108を更に含む。第1の透明導電性膜107はPDLC層106と第1のガラス102との間に配置され、第2の透明導電性膜108はPDLC層106と第2のガラス103との間に配置される。第1の透明導電性膜107と第2の透明導電性膜108は、PDLC層106の駆動電極として働くことができる。
【0020】
一部の実施形態において、第1の透明導電性膜107は第1の基材107Aと、第1の基材107Aの表面を覆う第1の透明導電性層107Bとを含み、第1の透明導電性層107BがPDLC層106の方を向いている。第2の透明導電性膜108は第2の基材108Aと、第2の基材108Aの表面を覆う第2の透明導電性層108Bとを含み、第2の透明導電性層108BがPDLC層106の方を向いている。
【0021】
一部の実施形態において、第1の基材107A又は第2の基材108Aはガラス基材、透明プラスチック基材、又は軟質ポリエステルフィルムでよい。一部の実施形態において、第1の透明導電性層107B及び第2の透明導電性層108Bは、それぞれ第1の基材107A及び第2の基材108Aの上に形成した酸化スズインジウム層でよい。当該実施形態における第1の透明導電性層107Bと第2の透明導電性層108Bの材料を説明してはいるが、本開示はそれに限定されるものではないことに注目すべきである。一部の実施形態では、第1の透明導電性層107Bと第2の透明導電性層108Bはその他の透明導電性材料を含むことができる。第1及び第2の透明導電性層を外部電源と電気接続するためのワイヤを第1及び第2の透明導電性層に接して配置して、第1及び第2の透明導電性層に電圧を印加する。
【0022】
第1の透明導電性膜107及び第2の透明導電性膜108に電圧を印加していないときには、液晶微小球をポリマー層中にランダムに分散させることができる。その結果、ポリマー層の曲率は液晶微小球の曲率と異なることになり、PDLC層に入る光は液晶微小球で散乱して、PDLC層106から光が様々な方向に放射されるのを可能にする。従って、PDLC層106は散乱状態にある。第1の透明導電性膜107と第2の透明導電性膜108とにそれぞれ異なる電圧を印加すると、第1の透明導電性膜107と第2の透明導電性膜108の電界がPDLC層に形成されて、液晶微小球はそれらの長軸を電界の方向と平行にしてポリマー層中に規則的に分散することができる。その結果、ポリマー層の曲率が液晶微小球の曲率と同じになって、PDLC層は透明に見える。このようにして、PDLC層106が透明状態と散乱状態の間で切り替わることができて、スマートガラス構造体は調光機能を有する。
【0023】
一部の実施形態において、PDLC集成体101は電圧が印加されていないときに白色又は黒色に、あるいはカラフルに見える。例えば、電圧が印加されていないときにカラフル又は黒色に見える二色性色素をPDLC層中に取り入れることができる。取り入れる二色性色素の種類に基づいて、電圧が印加されていないときにPDLC層106は様々な色に見え、例えば緑色又は赤色に見える。第1の透明導電性膜107及び第2の透明導電性膜108に電圧が印加されると、PDLC層106の色の飽和度が低下する。第1の透明導電性膜107と第2の透明導電性膜108との電位差が増すとともに、PDLC層はしだいに無色になる。
【0024】
一部の実施形態において、PDLC層106は紫外線硬化法又はその他の硬化法により形成することができる。硬化処理後に、PDLC層106は粘着性になり、その結果第1の透明導電性膜107を第2の透明導電性膜108としっかり結び付けることができ、これがスマートガラス構造体を安定にする。
【0025】
図2を参照すると、アンチ放射コーティング10が第1及び第2のガラスのPDLC層の方を向いた面を覆っている。すなわち、一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は、第1のガラス102のPDLC層の方を向いた面を覆うことができ、あるいは第2のガラス103のPDLC層の方を向いた面を覆うことができる。一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は、第1のガラス102と第2のガラス103のPDLC層の方を向いた面を覆うことができる。
【0026】
一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は、Low−Eガラスで一般に使用されるLow−Eコーティングであることができる。アンチ放射コーティング10は、銀層を含む多層コーティングであってもよい。アンチ放射コーティング10は、ほとんどの高エネルギー赤外光をアンチ放射コーティング10で反射させることができそしてそれがスマートガラス構造体を通過できないように、赤外光を反射させることができる。その結果、スマートガラス構造体は向上した断熱能力を持つことができる。スマートガラス構造体は、建築材料分野又は自動車分野で使用されるガラスに適用することができる。外部の温度が相対的に低い場合、スマートガラス構造体を使用する部屋又は輸送機関を相対的に温かくしておくことができる。外部の温度が相対的に高い場合、スマートガラス構造体を使用する部屋又は輸送機関を相対的に涼しくしておくことができる。このようにして、スマートガラス構造体は調光機能を有するだけでなく、熱の保持機能も有する。
【0027】
一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は1つの銀層、2つの銀層、又は3つの銀層を含んでもよい。
【0028】
一部の実施形態において、銀層を1つ含むアンチ放射コーティング10は、Si
3N
4とAlの複合層、NiCrの層、Agの層、NiCrの層、及びSi
3N
4とAlの複合層を順に含むことができる。当該実施形態においては銀層が1つの構造体を説明してはいるが、本開示はそれに限定されるわけではない。
【0029】
一部の実施形態において、銀層を2つ含むアンチ放射コーティング10は、Si
3N
4とAlの複合層、ZnOの層、NiCrの層、Agの層(1)、NiCrの層、ZnOの層、Si
3N
4とAlの複合層、ZnOの層、NiCrの層、Agの層(2)、NiCrの層、ZnOの層、及びSi
3N
4とAlの複合層を順に含むことができる。Agの層(1)は第1の銀層に相当し、Agの層(2)は第2の銀層に相当する。銀層を1つ含むアンチ放射コーティング10と比較して、銀層を2つ含むアンチ放射コーティング10は赤外光を反射するより良好な能力を持つことができ、従って銀層を2つ含むアンチ放射コーティング10を使用するスマートガラス構造体は、より良好な断熱能力を持つことができる。とは言え、銀層を2つ含むアンチ放射コーティング10の製造原価は高くなるであろうし、そのためその作製工程は相対的に面倒になるであろう。
【0030】
一部の実施形態において、銀層を3つ含むアンチ放射コーティング10は、Si
3N
4とAlの複合層、ZnOの層、NiCrの層、Agの層(1)、NiCrの層、ZnOの層、Si
3N
4とAlの複合層、ZnOの層、NiCrの層、Agの層(2)、NiCrの層、ZnOの層、Si
3N
4とAlの複合層、ZnOの層、NiCrの層、Agの層(3)、NiCrの層、ZnOの層、Si
3N
4とAlの複合層を順に含むことができる。Agの層(1)は第1の銀層に相当し、Agの層(2)は第2の銀層に相当し、Agの層(3)は第3の銀層に相当する。銀層を2つ含むアンチ放射コーティング10と比較して、銀層を3つ含むアンチ放射コーティング10は赤外光を反射するより良好な能力を持つことができ、従って銀層を3つ含むアンチ放射コーティング10を使用するスマートガラス構造体は、より良好な断熱能力を持つことができる。
【0031】
現実的な製造方法と詳細な構造によれば、アンチ放射コーティング10は1%〜15%の範囲内の赤外光反射率を有することができる。一部の実施形態において、赤外光反射率は銀層の数に正比例する。当該実施形態においてアンチ放射コーティング10の詳細な構造を説明してはいるが、本開示はそれに限定されるものではない。一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は4以上の銀層を含んでもよい。
【0032】
一部の実施形態では、アンチ放射コーティング10を、マグネトロンスパッタリング法により第1のガラス102と第2のガラス103の少なくとも一方の上に位置させることができる。しかし、本開示はこれに限定されない。一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は蒸着法などの他の方法によって形成してもよい。
【0033】
図2を参照すると、第1のガラス102と第1の透明導電性膜107との間に第1の紫外線(UV)保護フィルム104を設けており、第2のガラス103と第2の透明導電性膜108との間に第2のUV保護フィルム105を設けている。
【0034】
一部の実施形態において、第1のUV保護フィルム104と第2のUV保護フィルム105はポリビニルブチラール(PVB。可塑剤DHAを使用してPVBを可塑化し押し出して成形した高分子材料)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)を含むことができる。第1のUV保護フィルム104と第2のUV保護フィルム105は、外部の紫外線がスマートガラス構造体を通過するのを防ぐのに適合させることができる。スマートガラス構造体を建築材料分野又は輸送機関分野で用いられる窓ガラスに適用すると、部屋又は輸送機関内に入る紫外線の強度を低下させることができる。その上、PDLC集成体101の調光性能は紫外線の影響を受けやすいので、第1のUV保護フィルム104と第2のUV保護フィルム105はPDLC集成体101を保護することができる。PVB又はEVAは粘着性の材料なので、PVB又はEVAを含む第1のUV保護フィルム104は第1のガラス102を第1の透明導電性膜107にしっかりと接続することができ、PVB又はEVAを含む第2のUV保護フィルム105は第2のガラス103を第2の透明導電性膜108にしっかりと接続することができる。
【0035】
添付図面中の断面図には、スマートガラス構造体の各層をよりよく示すために、スマートガラス構造体の層の間に隙間を入れている。実際には、スマートガラス構造体の隣り合った層は互いにくっついていることに注目すべきである。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態によるスマートガラス構造体の断面図を図示している。この実施形態では、PDLC集成体101は
図1と2に示した上記実施形態のPDLC集成体と同じである。この実施形態におけるスマートガラス構造体の立体図は、
図1と同じでよい。
【0037】
この実施形態と上述の実施形態との共通点はここで詳しくは説明せず、以下ではこの実施形態と上述の実施形態との違いを説明する。
【0038】
一部の実施形態において、第1のガラス102は中空ガラスでよく、第2のガラス103は単層ガラスでよい。第1のガラス102は、第1のガラス基材11と、第2のガラス基材12と、第1のガラス基材11と第2のガラス基材12との間のシールされたガス中間層102Eとを含むことができる。
【0039】
第1のガラス基材11と第2のガラス基材12は、全体として4つの面を含む。第1のガラス基材11は、PDLC集成体101から遠い方を向いた第1の面102Aと、第1の面102Aと別の方を向いた第2の面102Bを含んでいる。第2のガラス基材12は、第2の面102Bと向かい合って配置された第3の面102Cと、第3の面102Cと別の方を向いた第4の面102Dを含んでいて、第2の面と第3の面との間にガス中間層102Eが位置している。
【0040】
本開示の実施形態において、PDLC集成体から遠い方を向いたガラス基材の面は、ガラス基材の他方の面と比べてその面がPDLC集成体からより遠いことを意味していることに注目すべきである。更に、1つのガラス基材において、面がもう一つの面と別の方を向いているというのは、2つの面がガラス基材の相対する2つの側に配置されていることを意味している。
【0041】
一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は第1のガラス102の第2の面102Bを覆うことができる。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は、第1のガラス102の第2、第3、第4の面、及び第2のガラス103のPDLC集成体101の方を向いた面のうちの、少なくとも1つを覆うことができる。
【0042】
アンチ放射コーティング10が複数の面を覆う場合、スマートガラス構造体はより良好な断熱能力を有することができる。
【0043】
一部の実施形態において、第1のガラス102に含まれるガス中間層102Eは、第1のガラス102がより良好な断熱及び防音能力を持ち、それゆえにスマートガラス構造体がより良好な断熱及び防音能力を有するようにすることができる。
【0044】
一部の実施形態において、ガス中間層102Eは空気の中間層又は不活性ガスの中間層であることができる。特に、スマートガラス構造体は、ガス中間層102Eが不活性ガスの中間層である場合に相対的に良好な断熱及び防音能力を有することができる。
【0045】
図4は、本開示の一実施形態によるスマートガラス構造体の模式断面図である。この実施形態では、PDLC集成体101は
図3に示した上記実施形態のPDLC集成体と同じである。この実施形態におけるスマートガラス構造体の立体図は、
図1と同じでよい。
【0046】
この実施形態と
図3に示した上記実施形態との共通点はここで詳しくは説明せず、以下ではこの実施形態と
図3に示した上記実施形態との違いを説明する。
【0047】
一部の実施形態において、第1のガラス102と第2のガラス103は両方とも中空ガラスである。第2のガラス103は、第3のガラス基材13、第4のガラス基材14、及び第3のガラス基材13と第4のガラス基材14の間のシールされたガス中間層103Eを含むことができる。
【0048】
第3のガラス基材13と第4のガラス基材14は、全体として4つの面を含む。第3のガラス基材13は、PDLC集成体101から遠い方を向いた第1の面103Aと、第1の面103Aと別の方を向いた第2の面103Bとを含む。第4のガラス基材14は、第2の面103Bの方を向いて配置された第3の面103Cと、第3の面103Cと別の方を向いた第4の面103Dとを含んでいて、第2の面と第3の面との間にガス中間層103Eが位置している。
【0049】
一部の実施形態では、アンチ放射コーティング10が第1のガラス102の第2の面102Bを覆うことができる。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。一部の実施形態において、アンチ放射コーティング10は、第1のガラス102の第2、第3、第4の面及び第2のガラス103の第2、第3、第4の面、のうちの少なくとも1つを覆うことができる。
【0050】
アンチ放射コーティング10が複数の面を覆う場合に、スマートガラス構造体はより良好な断熱能力を持つことができる。
【0051】
一部の実施形態において、第2のガラス103に含まれるガス中間層103Eは、第2のガラス103がより良好な断熱及び防音能力を持ち、それゆえにスマートガラス構造体がより良好な断熱及び防音能力を有するようにすることができる。
【0052】
図2〜4を参照して、一部の実施形態では、第1の透明導電性膜107は第1の基材107Aを含まなくてよく、そして第2の透明導電性膜108は第2の基材108Aを含まなくてよい。第1の透明導電性膜107は第1の透明導電性層107Bを含むだけであり、第2の透明導電性膜108は第2の透明導電性層108Bを含むだけである。第1の透明導電性層107Bと第2の透明導電性層108Bは、第1のガラス102と第2のガラス103のPDLC層106の方を向いた面に位置しており、PDLC層106の駆動電極として働く。一部の実施形態において、第1の透明導電性層107Bと第2の透明導電性層108Bは酸化スズインジウムを含むことができる。第1のガラス102と第2のガラス103のPDLC層106から遠い方を向いた面には、UV保護コーティング(図示せず)が設けてある。粘着性のPVB又はEVAがもたらすPDLC層106への影響を回避するため、第1のガラス102とPDLC層106との間、あるいは第2のガラス103とPDLC層106との間に、PVB又はEVAは配置しない。
【0053】
図5は、本開示の一実施形態によるスマートガラス構造体の模式立体図である。この実施形態におけるスマートガラス構造体のPDLC集成体の構造は、上記の実施形態のものと異なる。
【0054】
図6は、
図5のスマートガラス構造体のBB’線に沿った模式断面図である。この実施形態と
図1及び2に示した上記実施形態との共通点はここで詳しくは説明せず、以下ではこの実施形態と
図1及び2に示した上記実施形態との違いを説明する。
【0055】
一部の実施形態において、PDLC集成体201はPDLC層106を含むだけである。PDLC層106が透明状態と散乱状態の間で切り替わるのを可能にするため、第1のガラス202と第2のガラス203のPDLC層106の方を向いた面をアンチ放射コーティング20が覆っている。アンチ放射コーティング20は、PDLC層106の駆動電極として働くことができる。
【0056】
上述のように、一部の実施形態において、アンチ放射コーティング20は1つの銀層、2つの銀層、又は3つの銀層を含むことができる。アンチ放射コーティング20は、主として、金属と金属酸化物とを含み、従って良好な導電性を有する。その上、アンチ放射コーティング20は大部分の可視光を通過させ、従ってそれは導電性電極として働くことができる。一部の実施形態において、マグネトロンスパッタリング法で形成したアンチ放射コーティング20は比較的平坦であり、従ってPDLC層106で均一な電界を生じさせることができて、このことにより透明状態においてPDLC層106の各点はほとんど同じ透明性を有する。
【0057】
一部の実施形態において、PDLC集成体201はPDLC層106を含むだけであり、そして第1のガラス202と第2のガラス203のPDLC層106から遠い方を向いた面にUV保護コーティング(図示せず)が設けられる。粘着性のPVB又はEVAがもたらすPDLC層106への影響を避けるため、第1のガラス202とPDLC層106との間、あるいは第2のガラス203とPDLC層106との間に、PVB又はEVAは配置しない。一部の実施形態では、PDLC層106を紫外線硬化法又はその他の硬化方法により形成することができる。硬化処理後に、PDLC層106は粘着性になり、その結果第1のガラス202を第2のガラス203としっかり結び付けることができ、これがスマートガラス構造体を安定にする。
【0058】
図7は、本開示の一実施形態によるスマートガラス構造体の模式断面図である。この実施形態では、PDLC集成体201は、
図5と6に示した実施形態におけるPDLC集成体と同じである。この実施形態におけるスマートガラス構造体の立体図は、
図5と同じでよい。
【0059】
この実施形態と
図5及び6に示した上記実施形態との共通点はここで詳しくは説明せず、以下ではこの実施形態と
図5及び6に示した上記実施形態との違いを説明する。
【0060】
一部の実施形態において、第1のガラス202は中空ガラスでよく、第2のガラス203は単層ガラスでよい。第1のガラス202は、第1のガラス基材21と、第2のガラス基材22と、第1のガラス基材21と第2のガラス基材22との間のシールされたガス中間層202Eとを含むことができる。
【0061】
第1のガラス基材21と第2のガラス基材22は、全体として4つの面を含む。第1のガラス基材21は、PDLC集成体201から遠い方を向いた第1の面202Aと、第1の面202Aと別の方を向いた第2の面202Bとを含む。第2のガラス基材22は、第2の面202Bに向き合って配置された第3の面202Cと、第3の面202Cと別の方を向いた第4の面202Dとを含んでいて、第2の面と第3の面との間にガス中間層202Eが位置している。
【0062】
一部の実施形態では、アンチ放射コーティング20が第1のガラス202の第4の面202Dと、第2のガラス203のPDLC集成体201に向かい合った面とを覆って、PDLC層106を駆動するための電極としての機能を果たすことができる。とは言え、本開示はこれに限定されるものではない。一部の実施形態では、第1のガラス202の第4の面202Dと第2のガラス203のPDLC集成体201の方を向いた面とに加えて、第1のガラス202の第2及び第3の面のうちの少なくとも一方をアンチ放射コーティング20が更に覆ってもよい。
【0063】
図8は、本開示の一実施形態によるスマートガラス構造体の模式断面図である。この実施形態において、PDLC集成体201は、
図5及び6に示した実施形態のPDLC集成体と同じである。この実施形態のスマートガラス構造体の立体図は、
図5と同じでよい。
【0064】
この実施形態と
図5及び6に示した上記実施形態との共通点はここで詳しくは説明せず、以下ではこの実施形態と
図5及び6に示した上記実施形態との違いを説明する。
【0065】
一部の実施形態において、第1のガラス202と第2のガラス203は両方とも中空ガラスである。第2のガラス203は、第3のガラス基材23と、第4のガラス基材24と、第3のガラス基材23と第4のガラス基材24との間のシールされたガス中間層203Eとを含むことができる。
【0066】
第3のガラス基材23と第4のガラス基材24は、全体として4つの面を含む。第3のガラス基材23は、PDLC集成体201から遠い方を向いた第1の面203Aと、第1の面203Aと別の方を向いた第2の面203Bとを含む。第4のガラス基材24は、第2の面203Bに向き合って配置された第3の面203Cと、第3の面203Cと別の方を向いた第4の面203Dとを含んでいて、第2の面と第3の面との間にガス中間層203Eが位置している。
【0067】
一部の実施形態では、アンチ放射コーティング20が第1のガラス202の第4の面202Dと、第2のガラス203の第4の面203Dとを覆って、PDLC層106を駆動するための電極としての機能を果たすことができる。とは言え、本開示はこれに限定されるものではない。一部の実施形態では、第1のガラス202の第4の面202Dと第2のガラス203の第4の面203Dとに加えて、第1のガラス202の第2及び第3の面と第2のガラス203の第2及び第3の面のうちの少なくとも一つをアンチ放射コーティング20が更に覆うことができる。
【0068】
上述の実施形態においては、第1のガラスと第2のガラスとを固定するために、第1のガラスと第2のガラスの周囲にフレーム(図示せず)が配置されることに注目すべきである。
【0069】
一実施形態において、上述の実施形態のいずれか1つによるスマートガラス構造体を含む輸送機関用窓ガラスが提供される。この輸送機関用窓ガラスは、調光機能を有することができるだけでなく、熱を保持する必要条件を満足することができる良好な断熱能力を有することもできる。
【0070】
本開示はその好ましい実施形態を参照して開示されてはいるものの、本開示は一例としてのみ提示しているのであって、限定するものではないことを理解すべきである。当業者は、これらの実施形態を本開示の精神と範囲から逸脱することなく改変及び変更することができる。従って、本開示の保護範囲は特許請求の範囲に規定した範囲を対象とするものである。
本発明の代表的態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
少なくとも2つの面を含む第1のガラス、
少なくとも2つの面を含み、第1のガラスと向き合って配置された第2のガラス、
第1のガラスと第2のガラスとの間のポリマー分散型液晶集成体、及び、
第1及び第2のガラスの、当該ポリマー分散型液晶集成体に隣接している少なくとも1つの面に位置するアンチ放射コーティング、
を含むスマートガラス構造体。
《態様2》
前記アンチ放射コーティングが1つの銀層、2つの銀層、又は3つの銀層を含む、態様1記載のスマートガラス構造体。
《態様3》
前記ポリマー分散型液晶集成体が、
ポリマー分散型液晶層、
前記ポリマー分散型液晶層と前記第1のガラスとの間に配置された第1の透明導電性膜、及び、
前記ポリマー分散型液晶層と前記第2のガラスとの間に配置された第2の透明導電性膜、
を含み、当該第1及び第2の透明導電性膜が前記ポリマー分散型液晶層を駆動するための電極としての機能を果たす、態様1記載のスマートガラス構造体。
《態様4》
前記第1及び第2の透明導電性膜のおのおのが基材と当該基材の面を覆う透明導電性層とを含んでいて、当該透明導電性層が前記ポリマー分散型液晶層の方を向いている、態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様5》
前記第1のガラスと前記第1の透明導電性膜との間、及び前記第2のガラスと前記第2の透明導電性膜との間に、紫外線保護フィルムがそれぞれ設けられている、態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様6》
前記紫外線保護フィルムがポリビニルブチラール又はエチレン酢酸ビニルを含んでいる、態様5記載のスマートガラス構造体。
《態様7》
前記第1の透明導電性膜が前記第1のガラスを覆う第1の透明導電性層であり、前記第2の透明導電性膜が前記第2のガラスを覆う第2の透明導電性層である、態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様8》
前記第1のガラス及び第2のガラスが両方とも単層ガラスであり、前記アンチ放射コーティングが位置している前記少なくとも1つの面が前記ポリマー分散型液晶集成体の方を向いている、態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様9》
前記第1のガラスが中空ガラスであり、前記第2のガラスが単層ガラスであり、そして当該第1のガラスが、
前記ポリマー分散型液晶集成体から遠い方を向いた第1の面、
当該第1の面と別の方を向いた第2の面、
当該第2の面に向き合って配置された第3の面、及び、
当該第3の面と別の方を向いた第4の面、
を含んでいて、
前記第2の面と前記第3の面との間にガス中間層が存在し、
前記アンチ放射コーティングが次の面のうちの少なくとも1つ、すなわち、前記第1のガラスの第2、第3、第4の面、及び前記第2のガラスの前記ポリマー分散型液晶集成体の方を向いた面、のうちの少なくとも1つを覆っている、
態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様10》
前記第1のガラスと第2のガラスが両方とも中空ガラスであり、そしておのおのが、
前記ポリマー分散型液晶集成体から遠い方を向いた第1の面、
当該第1の面と別の方を向いた第2の面、
当該第2の面に向き合って配置された第3の面、及び、
当該第3の面と別の方を向いた第4の面、
を含んでいて、
前記第2の面と前記第3の面との間にガス中間層が存在し、
前記アンチ放射コーティングが次の面のうちの少なくとも1つ、すなわち、前記第1のガラスの第2、第3、第4の面、及び前記第2のガラスの第2、第3、第4の面、のうちの少なくとも1つを覆っている、
態様3記載のスマートガラス構造体。
《態様11》
前記ポリマー分散型液晶集成体がポリマー分散型液晶層を含んでおり、そして前記アンチ放射コーティングが前記第1及び第2のガラスの当該ポリマー分散型液晶層の方を向いた面を覆っていて、且つ前記ポリマー分散型液晶層を駆動するための電極としての機能を果たす、態様1記載のスマートガラス構造体。
《態様12》
前記第1及び第2のガラスの前記ポリマー分散型液晶層から遠い方を向いた面が、紫外線保護コーティングをそれぞれ備えている、態様7又は11記載のスマートガラス構造体。
《態様13》
前記第1のガラス及び第2のガラスが両方とも単層ガラスであり、前記アンチ放射コーティングが前記第1及び第2のガラスの前記ポリマー分散型液晶層の方を向いてそれと接する面を覆っている、態様11記載のスマートガラス構造体。
《態様14》
前記第1のガラスが中空ガラスであり、前記第2のガラスが単層ガラスであり、そして当該第1のガラスが、
前記ポリマー分散型液晶集成体から遠い方を向いた第1の面、
当該第1の面と別の方を向いた第2の面、
当該第2の面に向き合って配置された第3の面、及び、
当該第3の面と別の方を向いた第4の面、
を含んでいて、
前記第2の面と前記第3の面との間にガス中間層が存在し、
前記アンチ放射コーティングが前記第1のガラスの前記第4の面と、前記第2のガラスの前記ポリマー分散型液晶集成体の方を向いた面とを覆っている、
態様11記載のスマートガラス構造体。
《態様15》
前記アンチ放射コーティングが前記第1のガラスの前記第2及び第3の面のうちの少なくとも一方を更に覆っている、態様14記載のスマートガラス構造体。
《態様16》
前記第1のガラス及び第2のガラスが両方とも中空ガラスであり、そしておのおのが、
前記ポリマー分散型液晶集成体から遠い方を向いた第1の面、
当該第1の面と別の方を向いた第2の面、
当該第2の面に向き合って配置された第3の面、及び、
当該第3の面と別の方を向いた第4の面、
を含んでいて、
前記第2の面と前記第3の面との間にガス中間層が存在し、
前記アンチ放射コーティングが前記第1のガラスの第4の面と前記第2のガラスの第4の面とを覆っている、
態様11記載のスマートガラス構造体。
《態様17》
前記アンチ放射コーティングが、前記第1のガラスの第2、第3の面及び前記第2のガラスの第2、第3の面のうちの少なくとも1つを更に覆っている、態様16記載のスマートガラス構造体。
《態様18》
前記透明導電性層が酸化スズインジウムを含んでいる、態様4又は7記載のスマートガラス構造体。
《態様19》
前記第1及び第2のガラスを固定するため当該第1及び第2のガラスの周囲にフレームが配置されている、態様1記載のスマートガラス構造体。
《態様20》
前記ポリマー分散型液晶集成体が電圧の非印加時に白色又は黒色に見え、あるいはカラフルに見える、態様1記載のスマートガラス構造体。
《態様21》
前記ポリマー分散型液晶集成体中に、電圧の非印加時にカラフル又は黒色に見える二色性色素が取り入れられている、態様20記載のスマートガラス構造体。
《態様22》
前記ガス中間層が空気の中間層又は不活性ガスの中間層である、態様9、10、14又は16記載のスマートガラス構造体。
《態様23》
態様1〜22のいずれか1つに記載のスマートガラス構造体を含む、輸送機関用窓ガラス。