(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374512
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】レーダーマネキン用の人工皮膚
(51)【国際特許分類】
G09B 25/00 20060101AFI20180806BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20180806BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20180806BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
G09B25/00 Z
B32B7/02 104
B32B3/24 Z
H05K9/00 W
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-542253(P2016-542253)
(86)(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公表番号】特表2017-504066(P2017-504066A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】US2014067850
(87)【国際公開番号】WO2015099958
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】14/141,821
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】399042915
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティ リサーチ アンド テクノロジー コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】516183174
【氏名又は名称】ザ オハイオ ステイト ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】チー−チー チェン
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー ユン−ピン チエン
(72)【発明者】
【氏名】リニ シェロニー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩幸
【審査官】
上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−237536(JP,A)
【文献】
特開2012−124236(JP,A)
【文献】
特開2009−216691(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/167426(WO,A1)
【文献】
特開2005−274455(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/050749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00 − 29/14
B32B 1/00 − 43/00
G01M 7/08
G01M 17/007
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダー試験用のマネキン用の人工皮膚であって、前記人工皮膚は、
内面を有する導電層;及び
前記導電層の内面に適用された遮蔽層;
を含み、
前記導電層及び遮蔽層は、前記所定の周波数の電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで前記所定の周波数の電磁線を反射するように構成されており、
前記人工皮膚は内側表面を有し、前記導電層及び遮蔽層が前記人工皮膚の内側表面を前記電磁線から電磁的に遮蔽する、人工皮膚。
【請求項2】
前記所定の周波数が8〜80GHzの範囲内にあり、前記人工皮膚は、8〜80GHzの範囲内の前記電磁線に暴露された人間皮膚の反射係数(HSRC)にほぼ等しい人工皮膚の反射係数(ASRC)を有する、請求項1に記載の人工皮膚。
【請求項3】
前記所定の周波数が76〜78GHzの範囲内にある、請求項2に記載の人工皮膚。
【請求項4】
前記ASRCが、前記人工皮膚に送信された前記電磁線に対して−4.7dB±1dBであり、前記HSRCが−4.7dB±1dBである、請求項3に記載の人工皮膚。
【請求項5】
前記導電層に導電剤が均一にドープされていて所定のバルク導電率及び所定の厚みを有し、前記所定のバルク導電率及び所定の厚みが前記所定の周波数の電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで前記所定の周波数の電磁線を反射するように設定されている、請求項1に記載の人工皮膚。
【請求項6】
前記導電層が、所定の抵抗率を有するコーティングであり、前記所定の抵抗率は、前記所定の周波数の電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで前記所定の周波数の電磁線を反射するように設定されており、前記所定の抵抗率が100オーム/平方±2オーム/平方である、請求項1に記載の人工皮膚。
【請求項7】
前記導電層が、前記電磁線の波長の0.05倍未満のメッシュサイズを有するメッシュである、請求項1に記載の人工皮膚。
【請求項8】
前記遮蔽層が、前記電磁線の波長の0.05倍未満のメッシュサイズを有するメッシュである、請求項1に記載の人工皮膚。
【請求項9】
前記導電層が、2000オーム/平方の合成抵抗率を有する複数の層である、請求項7に記載の人工皮膚。
【請求項10】
前記遮蔽層が、0.05オーム/平方の合成抵抗率を有する複数の層である、請求項8に記載の人工皮膚。
【請求項11】
前記人工皮膚が、乗り物衝突防止システムに使用されるレーダーシステムを試験するためのマネキン用の人工皮膚である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の人工皮膚。
【請求項12】
レーダー試験用のマネキンであって、
表面を有するマネキン本体と、
遮蔽層及び導電層を有するマネキン皮膚と、
を含み、
前記マネキン皮膚は、前記マネキン本体の表面に適用されており、前記マネキン皮膚は、前記所定の周波数の電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで前記所定の周波数の電磁線を反射するように構成されており、
前記マネキン皮膚は内側表面を有し、前記導電層及び遮蔽層は前記マネキン皮膚の内側表面を電磁線から電磁的に遮蔽する、レーダー試験用のマネキン。
【請求項13】
前記マネキン本体は、内部構造及び複数の電子部品を有し、前記マネキン皮膚は前記内部構造及び複数の電子部品を前記電磁線から電磁的に遮蔽する、請求項12に記載のマネキン。
【請求項14】
前記所定の周波数が8〜80GHzの範囲内にあり、前記マネキン皮膚は、8〜80GHzの範囲内の電磁線に暴露された人間皮膚の反射係数(HSRC)にほぼ等しい人工皮膚の反射係数(ASRC)を有する、請求項12又は13に記載のマネキン。
【請求項15】
前記ASRCが、前記人工皮膚に送信された前記電磁線に対して−4.7dB±1dBであり、前記HSRCが−4.7dB±1dBである、請求項14に記載のマネキン。
【請求項16】
前記所定の身体部分に固有のレベルが前記電磁線に暴露された対応する人間の身体部分の電磁応答を再現するように前記マネキン皮膚が構成されている、請求項12〜15のいずれか一項に記載のマネキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への言及
本出願は、2013年12月27日に出願された米国特許出願第14/141,821号の優先権を主張し、当該出願の全内容を引用により全て本願に援用する。
【0002】
発明の属する分野
本発明は、レーダーマネキン用の人工皮膚に関する。より詳しくは、当該人工皮膚を有するレーダーマネキンは、本物の人間被験者のRCSにほぼ等しいレーダー断面積(RCS)を生じる。
【背景技術】
【0003】
多くの乗り物は、乗り物と、例えば歩行者や、道路上の障害物や、他の乗り物などのハザードとの間の事故を減らすのを助ける衝突防止システムを利用している。これらのシステムは、乗り物の周囲環境にある物体を検出し追跡するために、例えばレーダー、光学センサー、赤外線又はレーザーセンサーなどの相互接続センサーネットワークを利用する。
【0004】
現在の衝突防止システムは、他の乗り物や、道路上の障害物のような物体を同定するのに熟達し、信頼性できるようになってきたが、歩行者を追跡することはより困難であることが判ってきた。乗り物と歩行者との衝突は非常に深刻な問題であり、歩行者を信頼性高く識別し追跡することができる衝突防止システムが必要とされている。
【0005】
例えばカメラなどの光学系センサーは、通常、高解像度画像及び広い観察視野をもたらすことができる。しかし、これらのシステムは、しばしば、物体の情報を抽出するために相当な計算とデータ処理を必要とすることがある。さらに、光学系システムは、しばしば、天候や照明条件により制限されることがある。
【0006】
赤外技術は光学系センサーの欠点の幾つかを解消することができるが、これらのシステムは、依然として、近距離検出について限界がある。レーザーに基づくセンサーネットワークは、物標(target)の位置及び距離に関する正確な情報を与えることができる。しかし、レーザーネットワークは、物標についてのテクスチャ情報(textured information)を欠くために安全性の問題があり続けている。
【0007】
レーダーシステムは、乗り物の周りの物体の距離及び相対速度の両方を測定するためのものとして当該技術分野でよく知られている。これらのシステムは、視界が悪い場合または例えば死角などの見ることが困難な場所にいる場合に、物体を知覚する運転者の能力を高めるために使用できる。近年、76〜78GHzのレーダー周波数帯域が自動車衝突回避レーダーシステムに割り当てられた。そのより広い検出範囲、良好な位置分解能、及び様々な道路及び天候条件に対する低い感受性のために、この周波数範囲におけるレーダーシステムについてかなりの研究及び開発がなされている。
【0008】
光学センサーシステムと比べて、76〜78GHzレーダーは、検出範囲がより広く、物標位置分解能がより高く、悪い天候及び照明条件の場合の許容度が良好であるという長所を有する。さらに、レーダーデータは、物標の異なる運動部分の動きに伴うドップラー及びマイクロドップラーシグネチャー(Doppler and micro Doppler signatures)を含む。これによって、乗り物に対する歩行者の衝突警告/回避システムにとって理想的なものとなっている。かかるシステムの有効性を試験することは、様々な観察角度から様々な姿勢で本物の人間に似たレーダー応答を生じる特別な歩行者マネキンの使用を必要とする。
【0009】
物体のサイズ及び形状は、レーダー信号に暴露されたときに物体が生じる応答に影響を及ぼす因子のうちの2つである。さらに、異なる表面材料は、76〜78GHzレーダーに対して異なる応答を生じる。したがって、正確に歩行者衝突システムを試験するには、レーダーマネキンが本物の歩行者に似た体形を有することが必要なだけでなく、本物の人間の皮膚のレーダー反射を再現する人工皮膚を有することも必要である。さらに、本物の人により生じたレーダー応答は全身で一貫していない。胴体により生じた応答は、下肢により生じた応答と異なる。そのため、レーダーマネキンは、不均一なレーダー応答を生じるように構成可能なものであるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、特に76〜78GHz乗り物衝突回避レーダー評価及び試験において使用されるレーダーマネキン用に設計された人工皮膚を製造することは有益である。人工皮膚は、レーダーマネキンが本物の人のレーダー断面積(RCS)パターンによく似たレーダー断面積パターンを生じることができるようにするものであるべきである。レーダー断面積は、レーダーにより物体を検知可能であるかについての1つの尺度である。人工皮膚は、レーダーシステムの観点から、レーダーマネキンが人間のように見えるように構成される。さらに、人間のレーダー応答は、身体部分によって変化しうるために、人工皮膚は、レーダーマネキンの特定の身体部分の応答が本物の人間の対応部分と一致し得るように、容易に構成できるものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
レーダーマネキン用の人工皮膚及び当該人工皮膚を有するレーダーマネキンが提供される。人工皮膚及び人工皮膚を有するレーダーマネキンは、本物の人間被験者のRCSにほぼ等しいRCSを生じるように構成される。人工皮膚は、導電材料層及び遮蔽材料層を含む。遮蔽層は導電層の内面に適用されている。導電層及び遮蔽層は、電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答のレベルで所定の周波数を有する電磁線を反射するように構成されている。遮蔽層は、また、人工皮膚の内側表面を電磁線から電磁的に遮蔽する。
【0012】
一実施形態において、導電層及び遮蔽層は、1つの材料層又は複数の材料層から製造されたものであることができる。導電層は、電磁線を減衰して所定の周波数で所望の反射率を生じるように設定されたメッシュサイズを有するべきである。好ましくは、メッシュサイズは電磁線の波長の0.05倍未満である。遮蔽層は、非常に低い抵抗率を有し、しかも、電磁線を反射するとともに人工皮膚の内側表面を電磁線から電磁的に遮蔽するように構成されたものであるべきである。
【0013】
人工皮膚の電磁反射率は、人工皮膚に使用される導電層及び遮蔽層の数を調節することにより調整できる。人工皮膚の電磁反射率は、所定の導電層及び/又は遮蔽層を構成する材料層の数を調節することにより調整できる。
【0014】
人工皮膚の導電層及び遮蔽層は、さらに、人間皮膚の電磁応答を再現するように構成されたものであることができる。場合によっては、人工皮膚は、8〜80GHzの範囲内の所定の周波数を有する電磁線に暴露された人間皮膚を再現するように構成される。他の例では、人工皮膚は76〜78GHzの範囲内の所定の周波数を有する電磁線に曝露された人間皮膚を再現するように構成される。そのため、人工皮膚は、80GHzの範囲内のレーダー信号に暴露された人間皮膚の特異的応答を生じるように調整される。しかし、場合によっては、人工皮膚は、76〜78GHzの範囲内のレーダー信号に暴露された人間皮膚の特異的応答を生じるように調整される。
【0015】
人工皮膚は、電磁線に曝露されたヒトの皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで所定の周波数を有する電磁線を反射するように構成される。前記レベルが電磁線に曝露された場合の人間皮膚のレーダー断面積であるように導電層及び遮蔽層を構成することができる。特に、電磁線は、8〜80GHz、より具体的には76〜78GHzの範囲内の所定の周波数を有する。人工皮膚の反射係数(ASRC)は、さらに、人工皮膚に送られた電磁線に対して約−4.7dB±1dBであることができる。
【0016】
別の実施形態において、導電層に導電剤が均一にドープされていて所定のバルク導電率及び所定の厚みを有する。所定のバルク導電率及び所定の厚みは、所定の周波数の電磁線に曝露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで所定の周波数の電磁線を反射するように設定されている。
【0017】
別の実施形態において、導電層は所定の抵抗率を有するコーティングであり、当該所定の抵抗率は、所定の周波数の電磁線に曝露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで所定の周波数の電磁線を反射するように設定される。
【0018】
本発明の別の実施形態において、8〜80GHz、より具体的には76〜78GHzのレーダーシステムを試験及び較正するためのレーダーマネキンが提供される。当該レーダーマネキンは、上記の人工皮膚で覆われた表面を有する。当該マネキンは、さらに、複数の電子部品を有する内部構造を有する。電子部品としては、モーター、センサー、他の試験用電子機器が挙げられる。マネキンの皮膚は、電磁線から内部構造及び電子部品を電磁的に遮蔽する。
【0019】
レーダーマネキン本体は、人間の体の様々な部分、例えば腕部、脚部などを再現するように構成された複数の身体部分を有する。人間の体の異なる部分は異なるレベルで電磁線を反射する。レーダーマネキンの身体部分は、複数の身体部分の各々が所定の身体部分に特異的なレベルで電磁線を反射するように構成できる。レーダーマネキンの身体部分の各々についての所定の身体部分に特異的なレベルは、対応する人間の身体部分の電磁応答を再現するように構成することができる。例えば、レーダーマネキンの腕部を覆うマネキンの皮膚は、人間の腕部の電磁応答を再現するように構成することができる。レーダーマネキンの皮膚の他の部分は、同様に、人間の体の様々な部分に一致するように構成することができる。
【0020】
レーダーマネキンの皮膚の導電層及び遮蔽層は、さらに、所定の身体部分に特異的なレベルが電磁線に曝露された場合の人間皮膚のレーダー断面積であるように構成されてもよい。特に、電磁線は、8〜80GHz、より具体的には76〜78GHzの範囲内の周波数を有する。所定のレベルは、さらに、人工皮膚の反射係数が約−4.7dB±1dBであるように設定することができる。このようにして、レーダーマネキンは、76〜78GHzの範囲の周波数でレーダーを試験及び校正するために本物の人間被験者のRCSにほぼ等しいRCSを正確に生じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、人工皮膚の複数の層の分解立体図である。
【0022】
【
図2】
図2は、人工皮膚で覆われたレーダーマネキンの図である。
【0023】
【
図3】
図3は、人工皮膚を有するレーダーマネキンの応答を測定するレーダーシステムの例である。
【0024】
【
図4】
図4は、
図3に示した線4−4に沿った人工皮膚の例示的な図である。
【0025】
【
図5】
図5は、
図3に示した線5−5に沿った人工皮膚の例示的な図である。
【0026】
【
図6】
図6は、人工皮膚で覆われたレーダーマネキンの内部構造の例示的な図である。
【0027】
【
図7】
図7は、77GHzレーダーにより標的にした人工皮膚で覆われたレーダーマネキンと、レーダーマネキンの例示的な平滑化レーダー断面積パターンを示す。
【0028】
【
図8】
図8は、レーダーにより標的にした人間と、77GHzでの平均的な大人の人間の平均レーダー断面積パターンを示す。
【0029】
【
図9】
図9は、人工皮膚で覆われたレーダーマネキンの例示的な平滑化レーダー断面積パターンと77GHzでの平均的な大人の人間の平均レーダー断面積パターンとを重ねたレーダー断面積パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず
図1及び2に関し、本発明の一実施形態にしたがうレーダーマネキン100のための人工皮膚10が提供される。人工皮膚10は、導電材料層20と遮蔽材料層30から製造される。人工皮膚10は、あるレベル、より具体的には、電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答であるレベルで、例えばレーダー送信機110(
図3)からの電磁線110aを反射する。導電層20は、内面22及び外面24を有する。遮蔽層30も、内面32及び外面34を有する。
【0031】
一実施形態において、導電層20の材料は、一般的には、ポリエステル、綿、及びステンレス鋼のブレンドであることができる。一例において、導電層20は、質量基準で、およそ36%のポリエステル、36%の綿及び28%のステンレス鋼のブレンドから構成される。得られる導電層20は、約1mmの厚み、260g/m
2の重さ、及び2000オーム/平方の電気抵抗率を有することができる。例示的な導電層20は、Less EMF Inc.により製造された2枚のSTATICOT(登録商標)遮蔽布(SHIELDING FABRIC)(#1232)から構成することができる。当業者は、上記の特性に類似する特性を有する他の材料が人工皮膚10の導電層20として使用するのに適することを理解するであろう。
【0032】
遮蔽材料層30は、導電層20の内面22に適用される。導電層20及び遮蔽層30は、縫合、接着剤、又は当該技術分野で知られている他の結合方法により結合させることができる。遮蔽層30は、人工皮膚10の内面32を電磁線110aから電磁的に遮蔽する。遮蔽層30の材料は、一般的に、ポリエステルと銅のブレンドであることができる。一例では、遮蔽層30は、およそ65%のポリエステルと35%の銅のブレンドから構成される。得られる遮蔽層30は、およそ0.08mmの厚み、80g/m
2の重さ、及び0.05オーム/平方の電気抵抗率を有することができる。遮蔽材料30の一例は、Less EMF Inc.により製造された純銅ポリエステルタフタ布(PURE COPPER POLYESTER TAFFETA FABRIC)(#1212)であることができる。当業者は、上記の特性に類似する特性を有する他の材料が人工皮膚10の遮蔽層30として使用するのに適することを理解するであろう。
【0033】
導電及び遮蔽層20,30は、1つの材料層又は複数の材料層から成るものであることができる。導電層20は、電磁線110aを減衰して所定の周波数で所望の反射率を生じるように設定されたメッシュサイズを有するべきである。好ましくは、導電及び遮蔽層20,30のメッシュサイズは、電磁線110aの波長の0.05倍未満である。遮蔽層30は、非常に低い抵抗率を有し、しかも、電磁線110aを反射するとともに人工皮膚10の内側表面32を電磁線110aから電磁的に遮蔽するように構成されたものであるべきである。
【0034】
人工皮膚10の電磁反射率は、人工皮膚10に使用される導電及び遮蔽層20,30の数を調節することにより調整できる。人工皮膚10の電磁反射率は、所定の導電及び/又は遮蔽層20,30を構成する材料層の数を調節することにより調整できる。
【0035】
典型的な衝突回避システムにおいて、レーダー送信機110は、物標に向けてレーダー波110aを送信する。反射レーダー波110bはレーダー受信機112により検出される。
図3に示す単純化された例では、レーダー送信機110はレーダーマネキン100に向けてレーダー波110aを送信する。レーダーマネキン100により反射された反射レーダー波110bはレーダー受信機112により検出される。
【0036】
人工皮膚10は、人間皮膚のレーダー反射率にほぼ等しいレーダー反射率を有するように構成される。人間皮膚は、人を検出するために使用されるレーダー110aの周波数に応じて異なるレーダー反射応答を生じることが判る。場合によって、本発明の人工皮膚10は、76〜78GHzの周波数範囲を有するレーダーに暴露された人間皮膚のレーダー反射率に近似するレーダー反射率を有するように構成される。人工皮膚10がこの特定の周波数範囲でレーダーにより作用するように設計された場合、当業者は、レーダー110の周波数を変化させることは人工皮膚10の性能に必ず影響を及ぼすことを理解するであろう。同様に、人工皮膚10は、人間皮膚のレーダー反射率に近似するレーダー反射率を有するように構成されるため、人工皮膚10は、別のタイプの物標、例えば自動車その他の一般的な物標などの応答を正確に再現するように変更される。
【0037】
人工皮膚10の層20,30の厚みは、人工皮膚10のレーダー反射率を調節するために調整することができる。例えば、
図4及び5に示されているように、レーダーマネキン100の胴体140及び脚部150の断面図が示されている。好ましい一実施形態において、
図5に示されている脚部150上のレーダーマネキン皮膚10は
図4に示されている胴体140上のレーダーマネキン皮膚10と同じ厚みを有する。しかし、当業者は、人工皮膚10の反射率は、導電層20の厚みを変えることにより調節できることを理解するであろう。例えば、同じ材料が使用されると仮定すると、より厚い導電層20ほど、比較的より薄い導電層20を有するマネキン皮膚10よりもレーダー波110aを減衰する。このようにして、マネキン皮膚10を、異なるレーダー反射率を有する物標をより正確に再現するように調整することができる。
【0038】
導電層20は、抵抗布から作られ、レーダー波110に暴露された人間皮膚の電磁応答に類似するレベルで反射性を生じることを左右する。例えば、導電層20は、76〜78GHzレーダーに暴露された人間皮膚の電磁応答と同等のレベルで反射性を生じる。遮蔽層30は、高い導電性を有し、人工皮膚10の内側表面の後方の構造体、部品などに対する電磁シールドとしての役割を果たす。内側表面42及び外側表面44を有するさらなるフォーム層40は、肉盛り及び輪郭整形の目的のために遮蔽層30の後方に位置していても位置していなくてもよい。
【0039】
一実施形態において、人工皮膚10は布メッシュから製造された導電層20及び遮蔽層30を有するが、当業者は、76〜78GHzレーダーに暴露された人間皮膚の電磁応答と同等のレベルで反射性を生じさせるために別の構成の人工皮膚を使用できることを理解するであろう。
【0040】
人工皮膚10の別の一実施形態において、導電層20に導電剤が均一にドープされていて所定のバルク導電率及び所定の厚みを有する。1つの典型的な導電層20は、約3.5の比誘電率を有する銅連続ナイロン層(copper continuous nylon layer)である。導電層20には、導電剤、例えばカーボンなどがドープされ、様々な有効バルク導電率を有する。所定のバルク導電率σ及び所定の厚みdは、所定の周波数の電磁線110aに暴露された人間皮膚の電磁応答にほぼ等しいレベルで所定の周波数の電磁線110aを反射するように構成される。
【0041】
以下の表1に、−4.7dBの所望の反射係数を得るために層厚dを有する典型的なカーボンドープ銅連続ナイロン導電層20のバルク導電率σに関する4つの例を示す。
【0043】
別の実施形態において、人工皮膚10は、基材に適用された薄い導電層コーティングを有する。導電層30は、薄い導電層20コーティングで化粧された導電体、例えば銅などであることができる。導電層20コーティングは、同じ電磁線110aに暴露された人間皮膚のレベルとほぼ等しいレベルで電磁線110aを反射するように設定された所定の抵抗率を有する。好ましい実施形態において、導電層20コーティングは、約100オーム毎平方±2オーム毎平方の所定の抵抗率を有して−4.7dBの反射係数を生じる。
【0044】
当業者は、人工皮膚10の上記実施形態では、人工皮膚10の反射率は、少なくとも部分的に、導電層20の密度、厚み及び/又はドーピングにより決まることを理解するであろう。このようにして、所定の周波数、例えば76〜78GHzのレーダーに暴露された人間皮膚の電磁応答と同等のレベルで反射性を生じさせるために、人工皮膚10において異なる材料を使用できる。さらに、人工皮膚10において使用される材料は、人工皮膚10に送信された電磁線110aに対して約−4.7dB±1dBのASRCを有するように構成することができる。
【0045】
厚みd、誘電率ε
m 、透磁率μ
m 及び良好な導電性バッキングを有する均質材料層の反射係数Γは、
【0049】
である)
と表すことができる。可能性のある材料の誘電率ε
m 及び透磁率μ
m は、公知の供給源、例えば製造業者、又は既知の材料特性のルックアップテーブルから得ることができる。
【0050】
誘電率ε
m 及び透磁率μ
m は、周波数f、自由空間の誘電率ε
0 、及び自由空間の透磁率μ
0 の関数であり得る。材料の誘電率ε
m は、
【0052】
のように、比誘電率ε
r 及びバルク導電率σの関数として表すこともできる。
【0053】
当業者は、式(1)〜(6)を使用することによって、人工皮膚10用のさらなる導電層20を見分けることができる。導電層20を−4.7dBの所望の反射係数を有するように構成するために、バルク導電率σ及び厚みdを調節することができる。同様に、導電層20を、異なる設計パラメータに適応するように別の反射係数を有するように構成することができる。このようにして、式(1)〜(6)は、可能性のある材料の周波数f、誘電率ε
m 及び透磁率μ
m に基づいて、所望の反射係数Γを達成する方法を与える。
【0054】
上記記載から、周波数fが変わると、所望の反射係数Γも調節されることが判る。具体的には、周波数fが減少すると、所望の反射係数Γは、1GHz当り約0.027dB増加する。例えば、周波数fが20GHz減少して56〜53GHzの範囲になると、所望の反射係数Γは約0.54dB増加して約−4.16dBになる。
【0055】
送信レーダー波110aが人工皮膚10に向けて送信されると、波110aは導電層20を伝搬し、その抵抗のために減衰する。これによって、レーダー波110aからの電磁エネルギーが熱に変換される。導電層20の厚みを透過後、レーダー波110aは遮蔽層30に当たる。遮蔽層30は、レーダー110aを反射するため、反射波110bは導電層20に戻されて導電層20をもう一度伝搬し、人工皮膚20から出る前に導電層20の厚みを逆行する。そのため、導電層20に入る及び導電層20から出るレーダー波の各パスでレーダー波110a,110bは総往復減衰量の約1/2ずつ減衰する。よって、導電層20の総減衰量は、乾燥した人間皮膚の反応を再現するために77GHzで約4.7dBであるように設定されるべきである。
【0056】
次に
図6〜8を参照すると、別の好ましい実施形態において、人工皮膚10は、レーダー試験用のレーダーマネキン100の表面領域に適用されている。レーダーマネキン100は、人体310に似せた形状に作られている。レーダーマネキン100は、レーダーシステム、例えば乗り物の衝突防止システムにおいて使用するためのものなどを試験及び較正するために使用される。レーダーマネキン100は、内部構造120及び複数の電子部品130を有する。人工皮膚10はレーダーマネキン100の内部構造120,130を電磁線110aから遮蔽する。人工皮膚10は、さらに、レーダーマネキン100の身体部分140,150,160により反射された電磁応答が人間の体の対応する部分340,350,360の電磁応答と一致するように構成されることができる(
図8参照)。
【0057】
複数の身体部分140,150,160は、胴体140、脚部150、腕部160及び頭部170を含む。マネキンの身体部分140,150,160の各々は、人間310の対応する身体部分340,350,360に似せた形状に作られている。例えば、レーダーマネキンの腕部160は、本物の人間の腕部360と同様のサイズ及び形状を有する。サイズ及び形状の変化のために、人間の体の部分340,350,360は、電磁線を様々な程度に反射する。例えば、人間の胴体340は、電磁線110aを人間の腕部360と違ったように反射する。したがって、レーダーマネキン100の特定に身体部分上のマネキン皮膚10は、対応する人間の身体部分のレベルと一致する特定のレベルで電磁線110aを反射するように構成される。
【0058】
図7〜9に示されているように、人工皮膚10の性能を評価するために、人工皮膚10により覆われたレーダーマネキン100からの平滑化レーダー断面積パターン200を、数人(例えば9人)の人間310被験者の平均平滑化レーダー断面積パターン300と比較した。平滑化レーダー断面積パターン200を得るために、レーダーマネキン100を、無響室内の回転支柱上に載せた。レーダー送信機110から77GHzの電磁線110aを送信しながらレーダーマネキン100を回転させた。レーダー受信機112により反射レーダー110bを検出し、データをプロットした。
図7に示されている平滑化レーダー断面積パターン200は、5°の移動窓を使用した平滑化レーダー断面積パターンである。平滑化パターンは、異なる回数で戻る異なる身体部分140,150,160,170の散乱による同位相(in-phase)及び逆位相(out-of-phase)干渉によりもたらされる急速振動なしに主なパターンバリエーションを可視化することを助けることが判る。
【0059】
空気−材料境界に入射した平面電磁界の反射係数は、式(2):
【0061】
により与えられる。ここで、Z
m は式(3)に従う材料のインピーダンスであり、Z
0 は式(4)に従う自由空間のインピーダンスである。均質な導電材料のインピーダンスZ
m は、周波数ω(ラジアン)、透磁率u、誘電率ε及び導電率σの関数であり、
【0063】
により与えられる。77GHzでの乾燥した人間皮膚のおよその比誘電率は約6.62である。同じ周波数での乾燥した人間皮膚の導電率は38.1S/mである。したがって、式(2)及び(7)から、乾燥した人間皮膚の反射係数は77GHzで約−4.68dBであることが判る。これらの値は、公然と利用可能であり、当該技術分野で知られている。
【0064】
乾燥した人間皮膚のレーダー断面積は、完全導電体から作られた同じ人間のモデルのレーダー断面積よりも低い4.68dBである。そのため、人工皮膚10は、乾燥した人間皮膚の反応を再現するために完全導電体の反射係数に対して−4.7dB±1dBのASRCを有するように構成される。
【0065】
上記のように、レーダーマネキン100と同じ装置及び方法を使用して人間のレーダー反射特性を測定した。人間310被験者のサイズ及び体型の範囲は典型的な人間の代表的なものであった。9人の被験者についての77GHzでの平滑化レーダー断面積パターン300は
図8に示されている。
【0066】
人工皮膚10を有するレーダーマネキン100から得た平滑化レーダー断面積パターン200を検証するために、
図9に示すように、9人の人間310被験者の平滑化レーダー断面積パターン(点線)をレーダーマネキン100の平滑化断面積パターン(実線)と比較した。
【0067】
図9は、人工皮膚10を有するレーダーマネキン100が平均人間310被験者に似たレーダー断面積レベル及びパターンを生じることを示している。レーダーマネキン100の平滑化レーダー断面積パターン200のレベルも、人間の平滑化レーダー断面積パターン300のレベルよりも約2dB高い。これは、試験に使用したレーダーマネキンの胴体140の前後方向の厚みが平均的な大人の男性よりも厚かったためである。
【0068】
人工皮膚10は、76.5GHzで約−4.7dBの反射係数を生じることが判る。この反射係数は、乾燥した人間皮膚の反射係数に似ていることが判る。人工皮膚10により覆われたレーダーマネキン100についての測定された平滑化レーダー断面積パターン200のデータは、人間310被験者の平滑化レーダー断面積パターン300と比較した場合に類似のレーダー反射特性を示した。そのため、この試験データは、人工皮膚10が、77GHzレーダーを、電磁線に暴露された人間皮膚の電磁応答のレベルで反射することを実証している。
【0069】
明らかに、本発明の多くの改良及び変更が、上記教示内容に照らして可能であり、別の方法で、具体的に記載したように、添付の特許請求の範囲の範囲内で実施することができる。