(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374539
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】気道閉塞診断方法及び気道閉塞診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20180806BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A61B8/14ZDM
A61B5/08
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-192(P2017-192)
(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公開番号】特開2018-11930(P2018-11930A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2017年1月4日
(31)【優先権主張番号】105118785
(32)【優先日】2016年6月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】516267647
【氏名又は名称】アムキャッド・バイオメッド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AmCad Biomed Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】チェン・アルゴン
(72)【発明者】
【氏名】リー・イー−リィ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・チュン−シアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ・エドワード・チア−ハオ
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−543741(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0289401(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0152965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターを利用して気道の幅を判定する方法であって、
気道からの部位の超音波画像を提供し、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がグレースケール値を有する工程と、
前記超音波画像内で関心領域が選択され、前記関心領域内の画素のグレースケール値の第1統計値が算出される工程と、
前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいグレースケール値を有する前記関心領域内の画素が識別され、気腔領域(airspace region)が定義される工程と、
前記気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の幅が算出される工程と、
を含むと共に、
前記第1統計値が、前記複数のグレースケール値の位置の尺度(ML)と、定数に散らばりの尺度(MD)を乗じた数の和であり、
ML+a*MD
の条件を満たすことを特徴とする、コンピューターを利用して気道の幅を判定する方法。
【請求項2】
前記超音波画像が、複数の断面角度からの気道の前記部位の複数の横断面画像であることを特徴とする、請求項1に記載のコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法。
【請求項3】
前記気道の前記部位が、気道の舌後部(retro−glossal region)または口蓋後部(retro−palatal region)であることを特徴とする、請求項2に記載のコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法。
【請求項4】
気道の幅を判定するシステムであって、超音波イメージング装置と、前記超音波イメージング装置に接続された演算装置を含み、
前記超音波イメージング装置が、気道の一部位の超音波画像を取得し、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がグレースケール値を有し、
前記演算装置が、
前記超音波画像の受け取り、使用者による関心領域の選択、及び前記関心領域内の画素のグレースケール値の第1統計値の算出に用いられる入力モジュールと、
前記関心領域内において第1統計値より大きい、またはそれに等しいグレースケール値を有する画素を識別して気腔領域を定義し、前記気腔領域内の画素の分布に基づき気道の幅を算出するために用いられる分類モジュールと、
前記気道の幅の出力と、超音波画像の表示に用いられる出力モジュールと、
を含むと共に、
前記第1統計値が、前記複数のグレースケール値の位置の尺度(ML)と、定数に散らばりの尺度(MD)を乗じた数の和であり、
ML+a*MD
の条件を満たすことを特徴とする、気道の幅を判定するシステム。
【請求項5】
前記超音波イメージング装置が、2D超音波プローブ、または3D超音波プローブであり、前記超音波画像が平行スキャン(parallel scanning)、扇形スキャン(fan−like scanning)、または自由表面スキャン(free−surface scanning)によって取得されることを特徴とする、請求項4に記載の気道の幅を判定するシステム。
【請求項6】
被験者における気道閉塞に関する状態を分類する方法であって、
a.被験者が通常通り呼吸している間の気道の一部位の複数の横断面超音波画像を提供し、前記各超音波画像が複数の画素を備え、各画素がグレースケール値を有する工程と、
b.前記各超音波画像内で関心領域が選択され、前記関心領域内の画素のグレースケール値の各第1統計値が算出される工程と、
c.前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいグレースケール値を有する前記各関心領域内の画素が識別され、各気腔領域(airspace region)が定義される工程と、
d.前記各気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の各幅が算出される工程と、
e.前記気道の幅の第2統計値が算出される工程と、
f.前記第2統計値に基づき、被験者における気道閉塞に関する状態が分類される工程であって、前記第2統計値がパーセンタイル値である、工程と、
を含むと共に、
前記第1統計値が、前記複数のグレースケール値の位置の尺度(ML)と、定数に散らばりの尺度(MD)を乗じた数の和であり、かつ
ML+a*MD
の条件を満たすことを特徴とする、気道閉塞に関する状態を分類する方法。
【請求項7】
前記複数の横断面超音波画像が、複数の各断面角度からの気道の前記部位の複数の横断面画像であることを特徴とする、請求項6に記載の気道閉塞に関する状態を分類する方法。
【請求項8】
気道の前記部位が、気道の舌後部または口蓋後部であることを特徴とする、請求項6に記載の気道閉塞に関する状態を分類する方法。
【請求項9】
さらに、
g.被験者に特定の方法で呼吸するように求め、その間に前記工程aから工程fまでを繰り返し、前記気道の幅の第3統計値を取得する工程であって、前記第3統計値は、パーセンタイル値である、工程と、
h.前記第2統計値と前記第3統計値を比較して、前記被験者が気道閉塞の状態変化を有するか否かを判定する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の気道閉塞に関する状態を分類する方法。
【請求項10】
前記特定の方法が、タイダル呼吸法(tidal breathing method)、強制吸気、またはミューラー法(Muller maneuver)であることを特徴とする、請求項9に記載の気道閉塞に関する状態を分類する方法。
【請求項11】
被験者における気道閉塞を診断するシステムであって、超音波イメージング装置と、第1演算装置と、第2演算装置と、識別装置を含み、
前記超音波イメージング装置が、気道の一部位の超音波画像を取得し、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がグレースケール値を有し、
前記第1演算装置が前記超音波イメージング装置に接続され、
前記超音波画像の受け取り、使用者による関心領域の選択、及び前記関心領域内の画素のグレースケール値の第1統計値の算出に用いられる入力モジュールと、
前記関心領域内において第1統計値より大きい、またはそれに等しいグレースケール値を有する画素を識別して気腔領域を定義し、前記気腔領域内の画素の分布に基づき気道の幅を算出するために用いられる分類モジュールと、
前記気道の幅の出力と、超音波画像の表示に用いられる出力モジュールを含み、
前記第2演算装置が前記第1演算装置に接続され、前記気道の幅の第2統計値の算出に用いられ、前記第2統計値は、パーセンタイル値であって、
前記識別装置が前記第2演算装置に接続され、前記被験者における気道閉塞に関する状態を分類するように構成され、
前記第1統計値が、前記複数のグレースケール値の位置の尺度(ML)と、定数に散らばりの尺度(MD)を乗じた数の和であり、かつ
ML+a*MD
の条件を満たすことを特徴とする、気道閉塞を診断するシステム。
【請求項12】
前記超音波イメージング装置が、2D超音波プローブ、または3D超音波プローブであり、前記超音波画像が平行スキャン(parallel scanning)、扇形スキャン(fan−like scanning)、または自由表面スキャン(free−surface scanning)によって取得されることを特徴とする、請求項11に記載の気道閉塞を診断するシステム。
【請求項13】
さらに、前記識別装置に接続された判定装置を含み、前記判定装置が前記第2演算装置により算出された第2統計値と第3統計値を比較して、被験者が気道閉塞を有するか否かを判定するために用いられると共に、被験者に特定の方法で呼吸するように求め、前記第3統計値は、その間における前記気道の幅であり、前記第3統計値は、パーセンタイル値であることを特徴とする、請求項11に記載の気道閉塞を診断するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者における気道閉塞を診断する方法と気道閉塞診断システムに関し、特に、本発明はコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法とそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸は、人の睡眠中に呼吸が停止するときに発生する慢性睡眠障害である。睡眠時無呼吸は中年男性に最も多く診断される。成人20人に約1人が睡眠時無呼吸と診断されると見積もられており、男性は女性と比較して約2〜8倍多い。最近の研究では、小児睡眠時無呼吸の有病率が予想よりもずっと高いことが示されている。さらに、肥満、扁桃腺組織肥大、鼻中隔湾曲、アルコール摂取、喫煙、鎮痛剤使用が睡眠時無呼吸の高リスクに関係がある。
【0003】
睡眠時無呼吸の標準的な診断ツールは終夜睡眠ポリグラフと終夜オキシメトリである。無呼吸のよく知られた評価法の1つは、呼吸間における10秒以上の間隔、または10秒間気流が50%減少する呼吸低下を含む。評価プロセスには時間と労力がかかる。さらに、標準化された評価手順では資格を持つスタッフが睡眠ポリグラフの値を正確に測定することができない。
【0004】
先行技術においては、気道閉塞の診断に2D超音波センサー装置が使用される。しかしながら、2D超音波センサー装置は横断面表面と気道間の相対位置による制限を受けるため、気道の部位によっては正確に配置することができない。さらに、異なる操作者が2D超音波センサー装置を使用して気道の同一部位を異なる時間にスキャンすると、異なる位置と異なる断面角度によって結果が異なることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コンピューターを利用して気道の幅を判定する方法とそのシステムであって、より具体的には、気道の幅の判定に基づく気道閉塞診断方法及び気道閉塞診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において提供されるコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法は、気道の一部位の超音波画像が提供され、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する工程と、前記超音波画像内の関心領域が選択され、前記関心領域内の前記画素のカラースケール値の第1統計値が算出される工程と、前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素が識別され、気腔領域(airspace region)が定義される工程と、前記気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の幅が算出される工程と、を含む。
【0007】
別の一態様において提供される本発明の気道の幅を判定するシステムは、超音波イメージング装置と演算装置を含み、前記演算装置が、入力モジュールと、分類モジュールと、出力モジュールを含み、前記超音波イメージング装置が、気道の部位の超音波画像を取得するために用いられ、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する。
【0008】
前記演算装置が前記超音波イメージング装置に接続され、前記入力モジュールが、超音波画像の受け取りと、使用者がコマンドを入力することによる関心領域の選択と、前記画素の前記カラースケール値の各第1統計値の算出に用いられ、前記分類モジュールが、前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素を識別し、気腔領域(airspace region)を定義するために用いられ、さらに前記分類モジュールが、前記気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の幅を算出するために用いられ、前記出力モジュールが、前記気道の幅を出力し、超音波画像を表示するために用いられる。
【0009】
別の一態様において提供される、本発明の必要とする被験者における気道閉塞診断方法は、被験者の通常の呼吸中における気道の一部位の複数の横断面超音波画像が提供され、前記各超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する工程と、前記各超音波画像内で関心領域が選択され、前記関心領域内の画素のカラースケール値の各第1統計値が算出される工程と、前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記各関心領域内の画素が識別され、各気腔領域(airspace region)が定義される工程と、前記各気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の各幅が算出される工程と、前記気道の幅の第2統計値が算出される工程と、前記第2統計値に従って、被験者における気道閉塞に関する状態が分類される工程と、を含む。
【0010】
別の一態様において提供される、本発明の必要とする被験者における気道閉塞診断システムは、超音波イメージング装置と、第1演算装置と、第2演算装置と、識別装置を含み、前記超音波イメージング装置が、気道の一部位の超音波画像を取得するように構成され、前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する。
【0011】
前記第1演算装置が前記超音波イメージング装置に接続され、かつ入力モジュールと、分類モジュールと、出力モジュールを含み、前記入力モジュールが超音波画像の受け取りと、使用者による関心領域の選択と、前記関心領域内の画素のカラースケール値の各第1統計値の算出に用いられ、前記分類モジュールが、前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素を識別して各気腔領域(airspace region)を定義し、さらに前記分類モジュールが、前記各気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の各幅を算出するために用いられ、前記出力モジュールが、前記気道の各幅の出力と、超音波画像の表示に用いられる。
【0012】
前記第2演算装置が前記第1演算装置に接続され、前記気道の幅の第2統計値の算出に用いられ、前記識別装置が前記第2演算装置に接続され、前記被験者における気道閉塞に関する状態を分類するように構成される。
【0013】
前述およびその他の態様は、以下の好ましい実施例の説明と、添付の図面を組み合わせることでより明白になるであろう。ただし、本発明の新規的概念の要旨と範囲を逸脱せずに、変化や変更を加えることも可能であろう。
【0014】
本発明の前述の概要、および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことでより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】コンピューターを利用して気道の幅を判定する方法のフローチャートである。
【
図2A】一実施態様に基づく超音波イメージング装置による複数の断面角度からの気道の舌後部(retro−glossal region)または口蓋後部(retro−palatal region)から取得された横断面画像である。
【
図2B】一実施態様に基づく超音波イメージング装置による複数の断面角度からの気道の舌後部または口蓋後部から取得された横断面画像である。
【
図2C】一実施態様に基づく超音波イメージング装置による複数の断面角度からの気道の舌後部または口蓋後部から取得された別の横断面画像である。
【
図3】気道の幅を判定するシステムの概略図である。
【
図4】被験者における気道閉塞を診断する方法のフローチャートである。
【
図5】一実施態様に基づき通常通り呼吸するように求められた被験者の複数の超音波画像である。
【
図6】一実施態様に基づき特定の方法で呼吸するように求められた被験者の気道の断面画像から取得した複数の超音波画像である。
【
図7】前述の実施態様に基づき前記特定の方法で呼吸するように求められたS−OSA患者、M−OSA患者、N−OSA患者などの閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者から取得された複数の比較値のグラフである。
【
図8】被験者における気道閉塞を診断するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
別途定義されている場合を除き、ここで使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。
【0017】
ここで使用される単数形の「1つ」、「一」、「その」などは、文脈上明確に記載されていない限り、複数形の意味を含む。したがって、例えば、「1つの試料」には、複数のそのような試料および当業者の知るところである同等物が含まれる。
【0018】
ここで使用される「位置の尺度(Measure of Location;ML)」という用語は、区間値の平均値を指す。区間の全体データを代表する適した値であり、算術平均値、統計パーセンタイル値、幾何平均値、調和平均値、中央値、最頻値、加重算術平均値、またはその他中心傾向値を表すために使用される尺度とすることができる。本発明の実施態様によれば、MLは最頻値、統計パーセンタイル値、平均値、及びその他中心傾向値を表すために使用される尺度で構成される群より選択される値である。
【0019】
ここで使用される「散らばりの尺度(Measure of Dispersion;MD)」という用語は、1セットのデータの分散度合いを示す統計的特性を指す。「散布度」とも呼ばれる。MDは散らばり変動(dispersion variation)と非散らばり変動(non−dispersion variation)に分類される。本発明の実施態様によれば、MDは標準偏差、全範囲、及びその他中心散布値を表すために使用される尺度で構成される群より選択される値である。
【0020】
本発明は必要とする被験者において、コンピューターを利用して気道の幅を判定する方法と気道閉塞を診断する方法を提供する。本発明の方法は超音波センサー装置に適用される。さらに、本発明の方法は、超音波センサー装置に接続して画像データを取得・保存するためのコンピューターまたはマイクロプロセッサにも適用される。加えて、本発明の方法はプログラム可能であり、マイクロプロセッサユニットを備えた記録媒体、または記録媒体を備えた装置に保存される。前記装置は、ハードディスク、フロッピーディスク、コンパクトディスク、光磁気装置、集積回路(IC)チップ、またはランダムアクセスメモリであるが、これらに限らない。
【0021】
図1に示すように、本発明のコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法は、次の工程を含む。まず、工程S1010に示すように、気道の一部位の超音波画像が提供される。前記超音波画像は複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する。その後、工程S1020に示すように、前記超音波画像内の関心領域が選択される。前記関心領域内の前記画素のカラースケール値の第1統計値が算出される。その後、工程S1030に示すように、前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素が識別され、気腔領域(airspace region)が定義される。最後に、工程S1040に示すように、前記気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の幅が算出される。
【0022】
図2A〜
図2Cに本発明の一実施態様を示す。前記超音波画像は複数の断面角度からの前記気道の一部位の複数の横断面画像である(
図2Aを参照)。さらに、2D超音波プローブは平行スキャン、扇形スキャン、または自由表面スキャンなど異なる方法で使用し、2D超音波画像を取得することができる。各超音波画像は複数の画素を備え、各画素が分析される。一部の実施態様において、前記超音波画像は2D超音波画像により形成された3D超音波画像としてもよい。前記超音波画像は複数のボクセルを備え、各ボクセルが分析される。
【0023】
図2Bに示すように、気道の舌後部(retro−glossal region)または口蓋後部(retro−palatal region)が超音波センサー装置によりスキャンされ、各断面角度からの前記気道の部位の横断面画像である超音波画像が取得される。さらに、各画素がグレースケールを有する。
【0024】
図2Cに示すように、前記超音波画像において関心領域210が選択される。前記画素のグレースケールが算出され、前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域210内の画素を識別することにより、気腔領域(airspace region)が定義される。最後に、本発明の実施態様に基づき、前記気腔領域内の任意の2画素の最も離れた距離として気道の幅が定義される。
【0025】
本発明の具体的な一実施態様において、前記第1統計値は、前記カラースケール値の位置の尺度(ML)と、定数に散らばりの尺度(MD)を乗じた数の和である。つまり、前記第1統計値は次の条件を満たす。
ML+a*MD
【0026】
前記MDは標準偏差、全範囲、及びその他散布値で構成される群より選択される。前記MLは最頻値、統計パーセンタイル値、平均値、またはその他位置散布度で構成される群より選択される。前記定数は、中央散布度(central dispersion)の値を表す正数であるが、これに限らず、医療従事者により選択される。
【0027】
図3に示すように、前記のコンピューターを利用した方法を達成するためのシステムが提供される。前記システムは、超音波イメージング装置310と、演算装置320を含む。前記超音波イメージング装置310は、気道の部位の超音波画像を取得するために用いられる。前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有し、一実施態様において、前記超音波イメージング装置310は2D超音波プローブまたは3D超音波プローブであるが、これに限らない。好ましくは、前記超音波イメージング装置310が2D超音波プローブであり、前記超音波画像が平行スキャン、扇形スキャン、または自由表面スキャンによって取得される。
【0028】
前記演算装置320は前記超音波イメージング装置310に接続される。さらに、前記超音波イメージング装置310は、入力モジュール321と、分類モジュール322と、出力モジュール323を含む。一実施態様において、前記演算装置320はコンピューター、またはハンドヘルド端末であるが、これに限らない。好ましくは、前記演算装置320がメモリと中央処理装置(CPU)を備えたコンピューターである。前記コンピューターを利用した方法をCPUで運用するために適切なプログラムがメモリにインストールされる。
【0029】
前記演算装置320の入力モジュール321は前記超音波画像の受け取りに用いられる。使用者はコマンドを入力して関心領域を選択することができる。さらに、前記入力モジュール321は、前記画素の前記カラースケール値の各第1統計値を算出するために用いられる。一実施態様において、前記入力モジュール321は前記演算装置320の信号入力端末である。前記入力モジュール321は有線または無線で前記超音波イメージング装置310に接続される。例えば、前記入力モジュール321は、タッチスクリーン、またはマウスであるが、これに限らない。
【0030】
前記分類モジュール322は、前記第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素を識別し、気腔領域(airspace region)を定義するために用いられる。さらに前記分類モジュール322は、前記気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の幅を算出するために用いられる。一実施態様において、前記分類モジュール322はCPUであるが、これに限らない。
【0031】
前記出力モジュール323は、前記気道の幅を出力し、超音波画像を表示するために用いられる。前記超音波画像は前記関心領域と、前記気腔領域と、非気腔領域を有する。一実施態様において、前記出力モジュール323は前記演算装置320の信号出力端末であり、有線または無線でストレージデバイスまたは出力インターフェイスに接続される。例えば、前記出力モジュール323はタッチスクリーンであるが、これに限らない。
【0032】
図4に、被験者における気道閉塞を診断する方法のフローチャートを示す。前記方法は次の工程を含む。まず、工程S3020に示すように、被験者の通常の呼吸中における気道の一部位の複数の横断面超音波画像が提供される。前記各超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する工程と、工程S3030に示すように、前記各超音波画像内で関心領域が選択され、前記関心領域内の画素のカラースケール値の各第1統計値が算出される。工程S3040に示すように、前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記各関心領域内の前記画素が識別され、各気腔領域(airspace region)が定義される。工程S3050に示すように、前記各気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の各幅が算出される。工程S3060に示すように、前記気道の幅の第2統計値が算出される。最後に、工程S3070に示すように、前記第2統計値に従って、被験者における気道閉塞に関する状態が分類される。
【0033】
さらに、気道閉塞を診断する前記方法は次の工程を含む。特定の方法で呼吸するように求められた被験者に前記工程S3020からS3060までを繰り返し、第3統計値が取得される。被験者が気道閉塞を有するか否かは、前記第2統計値と前記第3統計値を比較することによって判定される。
【0034】
図5に示すように、一実施態様において、前記被験者は通常通り呼吸するように求められる。気道の舌後部(retro−glossal region)または口蓋後部(retro−palatal region)が超音波センサー装置によりスキャンされ、複数の各断面角度からの前記気道の部位の横断面画像である超音波画像が取得される。さらに、各画素がグレースケールを有する。その後、前記超音波画像において関心領域510がそれぞれ選択される。前記画素のグレースケールが算出され、前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域510内の画素を識別することにより、各気腔領域(airspace region)が定義される。その後、前記各気腔領域内の任意の2画素の最も離れた距離として気道の幅520が定義される。前記気道の幅の第2統計値(最大値、最小値、及びパーセンタイル値の尺度)が算出される。
【0035】
同様に、
図6に示すように、被験者は特定の方法で呼吸するように求められる。気道の舌後部(retro−glossal region)または口蓋後部(retro−palatal region)が超音波装置によりスキャンされ、複数の各断面角度からの前記気道の部位の横断面画像である超音波画像が取得される。前記超音波画像から関心領域610が選択される。その後、同様に、前記各気腔領域内の任意の2画素の最も離れた距離として気道の幅620が定義される。一実施態様において、前記特定の方法は、タイダル呼吸法(tidal breathing method)、強制吸気、またはミューラー法(Muller maneuver)である。
【0036】
一実施態様において、通常通り呼吸するように求められた被験者より取得された前記統計値が、特定の方法で呼吸するように求められた被験者より取得された統計値と比較され、被験者に気道閉塞があるか否かが判定される。具体的な一実施態様において、気道の幅を測定することにより第2統計値と第3統計値が取得される。その後、それら2つの値の比較(例:それら2つの値の減算または除算)により比較値が取得され、被験者に気道閉塞があるか確定される。
【0037】
一実施態様において、前記超音波画像は超音波イメージング装置により取得され、前記各第1統計値はMLと、定数にMDを乗じた数の和である。一実施態様において、前記MLは前記関心領域内の前記カラースケール値の算術平均値であり、前記定数aは1に等しい。つまり、前記各第1統計値は次の条件を満たす。
ML+1*MD
【0038】
図7を参照する。一実施態様において、重度閉塞性睡眠時無呼吸(S−OSA)患者、中度閉塞性睡眠時無呼吸(M−OSA)患者、非閉塞性睡眠時無呼吸(N−OSA)患者に通常通りおよび特定の方法で呼吸するように求めることで、比較値が取得される。
図7に示すように、それら3つの気道の幅からの変動の分布の観点からは、OSA患者の発現レベルが一般人のそれより低い。特に、統計値が低くなるほど、患者の気道閉塞がより重度になる。従って、
図7に示すグラフは、被験者が気道閉塞を有するか否かを判定する基準とすることができる。
【0039】
例えば、S−OSA患者の比較値は第1閾値710より大きい。M−OSA患者の比較値は前記第1閾値710と第2閾値720の間である。さらに、N−OSA患者の比較値は第2閾値720より小さい。
【0040】
図8に被験者における気道閉塞診断システムを示す。前記システムは、超音波イメージング装置410と、第1演算装置420と、第2演算装置430と、識別装置440を含む。前記超音波イメージング装置410は、気道の部位の超音波画像を取得するために用いられる。前記超音波画像が複数の画素を備え、各画素がカラースケール値を有する。一実施態様において、前記超音波イメージング装置410は2D超音波プローブまたは3D超音波プローブであるが、これに限らない。好ましくは、前記超音波イメージング装置410が2D超音波プローブであり、前記超音波画像が平行スキャン、扇形スキャン、または自由表面スキャンによって取得される。
【0041】
前記第1演算装置420は前記超音波イメージング装置410に接続される。さらに、前記超音波イメージング装置410は、入力モジュール421と、分類モジュール422と、出力モジュール423を含む。一実施態様において、前記第1演算装置420はコンピューター、またはハンドヘルド端末であるが、これに限らない。好ましくは、前記第1演算装置420がメモリと中央処理装置(CPU)を備えたコンピューターである。前記コンピューターを利用した方法をCPUで運用するために適切なプログラムがメモリにインストールされる。
【0042】
前記第1演算装置420の入力モジュール421は前記超音波画像の受け取りに用いられる。使用者はコマンドを入力して関心領域を選択することができる。さらに、前記入力モジュール421は、前記画素の前記カラースケール値の各第1統計値を算出するために用いられる。一実施態様において、前記入力モジュール421は前記第1演算装置420の信号入力端末である。前記入力モジュール421は有線または無線で前記超音波イメージング装置410に接続される。例えば、前記入力モジュール421は、タッチスクリーン、またはマウスであるが、これに限らない。
【0043】
前記分類モジュール422は、前記各第1統計値より大きい、またはそれに等しいカラースケール値を有する前記関心領域内の画素を識別し、各気腔領域(airspace region)を定義するために用いられる。さらに前記分類モジュール422は、前記各気腔領域内の画素の分布に基づいて前記気道の各幅を算出する。一実施態様において、前記分類モジュール422はCPUであるが、これに限らない。
【0044】
前記出力モジュール423は、前記気道の各幅を出力し、超音波画像を表示するために用いられる。前記超音波画像は前記関心領域と、前記各気腔領域と、非気腔領域を有する。一実施態様において、前記出力モジュール423は前記第1演算装置420の信号出力端末であり、有線または無線でストレージデバイスまたは出力インターフェイスに接続される。例えば、前記出力モジュール423はタッチスクリーンであるが、これに限らない。
【0045】
前記第2演算装置430が前記第1演算装置420に接続され、前記気道の幅の第2統計値を算出する。前記識別装置440は前記第2演算装置430に接続される。さらに、前記識別装置440は被験者における気道閉塞の状態を分類するように構成される。
【0046】
一実施態様において、前記システムはさらに判定装置(図示しない)を含む。前記判定装置は前記識別装置440に接続される。気道の幅を測定することにより前記第2統計値と第3統計値が算出かつ取得されたとき、前記判定装置は、前記第2演算装置により算出される前記第2統計値と前記第3統計値を比較することにより、被験者が気道閉塞を有するか否かを判定するように構成される。例えば、前記第2統計値と前記第3統計値の比較(例:それら2つの値の減算または除算)により比較値が取得され、被験者に気道閉塞があるか確定される。
【0047】
先行技術においては、気道閉塞を診断する正確な方法がない。従って、本発明はコンピューターを利用して気道の幅を判定する方法とそのシステムを提供する。気道の幅は超音波画像の定量分析に基づいて判定されるため、手動のミスを減少することができる。さらに、本発明は気道の幅に基づき、かつ異なる統計値を比較して被験者が気道閉塞を有するか否かを判定する、気道閉塞診断方法を提供する。
【0048】
本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、さらなる例示の必要なく、前述の説明に基づいて本発明を最大の範囲で利用することが可能であろう。したがって、本発明の説明および請求項は、本発明の範囲を限定するためではなく、例示を目的としたものである。
【符号の説明】
【0049】
210 関心領域
310 超音波イメージング装置
320 演算装置
321 入力モジュール
322 分類モジュール
323 出力モジュール
410 超音波イメージング装置
420 第1演算装置
430 第2演算装置
440 識別装置
421 入力モジュール
422 分類モジュール
423 出力モジュール
510 関心領域
520 気道の幅
610 関心領域
620 気道の幅
710 第1閾値
720 第2閾値
S1010、S1020、S1030、S1040 工程
S3020、S3030、S3040、S3050、S3060、S3070 工程