【文献】
メルクマニュアル18版 日本語版,2005年11月,[online],[平成28年11月2日検索],Retrieved from the internet:,URL,http://merckmanual.jp/mmpej/sec21/ch315/ch315h.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの抽出溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソプロパノール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の組成物および方法が湿疹、乾癬、および痒みなどの皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有用であるという予想外の発見に関する。1つの態様において、痒みは疼痛に関連する。もう1つの態様において、痒みは疼痛に関連しない。
【0021】
定義
本明細書において用いられるように、以下の用語の各々は、この章におけるそれに関連する意味を有する。
【0022】
特に定義されなければ、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は一般的に、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に、本明細書において用いられる命名法、ならびに細胞培養、分子遺伝子学、有機化学、およびペプチド化学における実験技法は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる。
【0023】
冠詞「1つの」および「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために用いられる。例として、「1つの要素」は1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0024】
本明細書において用いられる「約」という用語は、当業者によって理解され、それが用いられる文脈において何らかの程度変化するであろう。量、期間およびその他などの測定可能な値を参照する場合に本明細書において用いられる「約」という用語は、そのような変動が開示の方法を行うために適切であることから、明記された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、およびなおより好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味する。
【0025】
本明細書において用いられる「または」という用語は、代替物のみを指すことを明白に示している場合または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するが、本開示は代替物のみを指す定義と「および/または」を指す定義を支持する。
【0026】
本明細書において用いられる「阻害する」、「低減する」、または「予防する」、「減損する」という用語およびこれらの用語の変化形には、完全なまたは実質的に完全な阻害が含まれる任意の測定可能な減少が含まれる。
【0027】
本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる「有効な」という用語は、所望の、予想される、または意図される結果を成就するために適切であることを意味する。
【0028】
本明細書において用いられる「抽出溶媒」という句は、揮発性麻酔薬と化学的に反応することなく揮発性麻酔薬の揮発性を低減するために、および/または関心対象組織への揮発性麻酔薬の透過性を増強するために、溶液中で揮発性麻酔薬と相互作用してもよい、意図される薬理学的転帰の達成または増強にとって都合がよい溶媒を指す。抽出溶媒はまた、透過性または浸透性などの、しかしこれらに限定されない特性に影響を及ぼしうるビヒクルおよび機能的成分が含まれる、必ずしも抽出しない化合物を含む。
【0029】
本明細書において用いられる「増強された透過性」という用語は、以下の増加を指す:(a)関心対象組織に送達される揮発性麻酔薬の量、および/または(b)関心対象組織への送達速度(すなわち、急速な送達)、および/または(c)関心対象組織における揮発性麻酔薬の滞留時間。滞留時間の増加は、関心対象組織からの揮発性麻酔薬の消失の遅れを指す。
【0030】
本明細書において用いられるように、「含む」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むの任意の形)、「有する」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有するの任意の形)、「含まれる」(ならびに「含まれる(includes)」および「含まれる(include)」などの含まれるの任意の形)、または「含有する」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有するの任意の形)は、包括的であるか、または制限がなく、追加の列挙されていない要素または方法段階を除外しない。
【0031】
本明細書において用いられる、「皮膚科障害または皮膚科疾患」という用語は、皮膚に関連する病態を意味する。これらの障害または疾患の例には、湿疹、皮膚炎、乾癬、痒み、蕁麻疹、ドライスキン、日焼け、局所細菌感染症(膿痂疹、毛包炎、フルンケル症、カルブンケル症、膿瘡、丹毒、蜂巣炎、および壊死性筋膜炎などであるが、これらに限定されない)、局所真菌感染症(汗疱状白癬、足指真菌、体部白癬、股部白癬、顔面白癬、手白癬、足白癬、任意の他の形状の白癬、および爪真菌症などであるが、これらに限定されない)、汗腺膿瘍、痂皮癒合、瘢痕増殖、母斑の発生または出現、面皰、内方発育毛、点状掌蹠角皮症、およびふけが含まれるがこれらに限定されるわけではない。痒みは、これらの皮膚科障害または皮膚科疾患、ならびに異痛症、リンパ腫およびホジキン病などの悪性腫瘍または内部癌、黄疸、胆汁うっ滞、赤血球増加症、甲状腺疾患、副甲状腺機能亢進、尿毒症、糖尿病、鉄欠乏性貧血、閉経または加齢に関連するホルモンバランスの変化、モルヒネおよび他のオピエートの使用、クロロキンの使用、ならびに妊娠に関連する病態(妊娠性肝臓内胆汁うっ滞、妊娠性そう痒性丘疹(PUPPP)および妊娠性類天疱瘡)の1つまたは複数に関連しうる。
【0032】
本明細書において用いられる「異痛症」という用語は、通常疼痛を誘発しない刺激による疼痛の型を意味する。異痛症はその起源が熱または機械的のいずれかでありうるが、しばしば部位に対する損傷後に起こる。異痛症は、通常痛みを伴う刺激に対する極端な反応である痛覚過敏とは異なる。異なる種類またはタイプの異痛症が存在する:静的機械的異痛症(光線/触れる/圧に反応した疼痛)および動的機械的異痛症(ブラッシングに反応した疼痛)を含む機械的異痛症(触覚異痛症としても知られる)、ならびに熱(高温または低温)異痛症(罹患領域における通常軽微な皮膚温度による疼痛)。
【0033】
本明細書において用いられる「局所」という用語は、皮膚およびその下の組織への本発明の組成物の投与、ならびに粘膜およびその下の組織への投与を意味する。
【0034】
本明細書において用いられる「処置する」または「処置」という用語は、徴候/症状または徴候/症状源の軽減(すなわち、「縮小」)および/または消失を意味する。いくつかの非制限的な例によって、皮膚科障害または皮膚科疾患は、皮膚科障害または皮膚科疾患の徴候/症状を軽減または消失させることによって処置されうる。さらなる例として、皮膚科障害または皮膚科疾患は、皮膚科障害または皮膚科疾患の治癒プロセスを助ける(たとえば、加速する)ことによって処置されうる。
【0035】
本明細書において用いられる「追加の成分」には、以下の1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されるわけではない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味料;香料;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理的に分解する組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;緩衝剤;塩;濃化剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料。本発明の実践において用いられる薬学的組成物に含まれてもよい他の「追加の成分」は、当技術分野において公知であり、たとえば参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences(Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載される。
【0036】
説明
本発明は、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で水溶液中に溶解した、計量した量の揮発性麻酔薬を含む、薬学的に許容される組成物であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を減少させるために有効な量で少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、組成物を含む。
【0037】
本発明はさらに、計量した量の揮発性麻酔薬乳剤を含む、薬学的に許容される組成物を含む。
【0038】
本発明はまた、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で溶液中に溶解した、計量した量の揮発性麻酔薬を含む、薬学的に許容される組成物であって、溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を減少させるために有効な量で少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、組成物を含む。
【0039】
本発明はさらに、リン脂質の安定化層によって取り囲まれている揮発性麻酔薬の球体を含む、計量した量の微小液滴懸濁液を含む、薬学的に許容される組成物であって、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、組成物を含む。
【0040】
本発明はまた、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で水溶液中に溶解した、計量した量の揮発性麻酔薬を含む、薬学的に許容される組成物であって、溶液が乳剤の成分であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、組成物を含む。
【0041】
1つの態様において、少なくとも1つの抽出溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、PEG-400、PEG-300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソプロパノール、およびその混合物からなる群より選択される。好ましくは、少なくとも1つの抽出溶媒は、溶液の約0.1%から約75%を構成する。
【0042】
1つの態様において、溶液は滅菌的である。これは、全ての開始材料が滅菌的であることを確実にする段階および投与前に滅菌的条件下でそれらを維持する段階によって達成される。これはまた、様々なタイプの注入に関して行われているように、抗菌フィルターを組み入れることによっても達成されうる(たとえば、米国特許第5,695,490号を参照されたい)。
【0043】
1つの態様において、組成物は、局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される経路による投与用に製剤化される。
【0044】
1つの態様において、揮発性麻酔薬は、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノン、およびその混合物からなる群より選択される。もう1つの態様において、揮発性麻酔薬はイソフルランである。これらの物質の多くはラセミ混合物である。いくつかの態様において、ラセミ混合物が用いられる。他の態様において、物質のd-異性体またはl-異性体のみが用いられる(たとえば、米国特許第5,114,715号;第5,114,714号、および第5,283,372号を参照されたい)。なおもう1つの態様において、溶液は、溶液中で約1%から約99%v/v、約5%から約70%v/v、または約50%または約25%v/v、または約10%v/vの揮発性麻酔薬を含みうる。
【0045】
1つの態様において、乳剤は脂質を含む。もう1つの態様において、脂質は、大豆油、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、コーン油、およびゴマ油からなる群より選択される物質を含む。乳剤はさらに乳化剤を含みうる。
【0046】
1つの態様において、揮発性麻酔薬は、懸濁液、クリーム、パスタ、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、またはナノ乳剤の形状である。
【0047】
1つの態様において、組成物は抗生物質をさらに含む。
【0048】
1つの態様において、溶液は水および食塩水溶液からなる群より選択される少なくとも1つの構成成分を含む。
【0049】
1つの態様において、微小液滴の直径は約200オングストロームから約10,000オングストロームの範囲である。もう1つの態様において、微小液滴は、超音波処理、ホモジナイゼーション、マイクロフルイダイゼーション、または高剪断を伴う他のプロセスによって産生され、揮発性麻酔薬の体積対リン脂質層の重量の比率は少なくとも1.0 ml/gであり、組成物は、少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含む。
【0050】
本発明はさらに、方法が、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を対象に投与する段階を含み、溶液が、揮発性麻酔薬の揮発性を減少させるために有効な量で少なくとも1つの抽出溶媒をさらに含み、溶液が、乳剤の成分であり、投与経路が、局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される、それを必要とする対象における皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防する方法を含む。
【0051】
本発明はまた、方法が、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を、対象の創傷に投与する段階を含み、溶液がさらに、揮発性麻酔薬の揮発性を減少させるために有効な量で少なくとも1つの抽出溶媒を含み、組成物が可溶化剤をさらに含み、投与経路が局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される、それを必要とする対象における皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防する方法を含む。
【0052】
本発明はさらに、方法が、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を対象に投与する段階を含み、溶液が、乳剤の成分であり、投与経路が、局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される、それを必要とする対象における皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防する方法を含む。
【0053】
本発明はまた、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量で揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液を対象に投与する段階を含み、投与経路が、局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される、それを必要とする対象における皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防する方法を含む。
【0054】
本発明はさらに、投与経路が、局所、経皮、粘膜、直腸、および膣からなる群より選択される、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために有効な量でリン脂質の安定化層によって取り囲まれた揮発性麻酔薬の球体を含む微小液滴懸濁液を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防する方法を含む。
【0055】
1つの態様において、皮膚科障害または皮膚科疾患は、湿疹、皮膚炎、乾癬、痒み、蕁麻疹、異痛症、ドライスキン、日焼け、局所細菌感染症(膿痂疹、毛包炎、フルンケル症、カルブンケル症、膿瘡、丹毒、蜂巣炎、および壊死性筋膜炎などであるが、これらに限定されない)、局所真菌感染症(汗疱状白癬、顔面白癬、他の任意の形状の白癬、および爪真菌症などであるが、これらに限定されない)、汗腺膿瘍、痂皮癒合、瘢痕増殖、母斑の発生または出現、面皰、内方発育毛、点状掌蹠角皮症、およびふけからなる群より選択される。もう1つの態様において、痒みは、湿疹、皮膚炎、乾癬、痒み、蕁麻疹、異痛症、ドライスキン、日焼け、局所細菌感染症、局所真菌感染症(汗疱状白癬、顔面白癬、他の任意の形状の白癬、および爪真菌症などであるが、これらに限定されない)、汗腺膿瘍、痂皮癒合、瘢痕増殖、母斑の発生または出現、面皰、内方発育毛、点状掌蹠角皮症、ふけ、リンパ腫およびホジキン病などの悪性腫瘍または内部癌、黄疸、胆汁うっ滞、赤血球増加症、甲状腺疾患、副甲状腺機能亢進、尿毒症、糖尿病、鉄欠乏性貧血、閉経または加齢に関連するホルモンバランスの変化、モルヒネおよび他のオピエートの使用、クロロキンの使用、ならびに妊娠に関連する病態(妊娠性肝臓内胆汁うっ滞、妊娠性そう痒性丘疹(PUPPP)および妊娠性類天疱瘡)からなる群より選択される病態に関連しうる。
【0056】
非限定的な局面において、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物に抽出溶媒が存在すると、物理的特徴、薬理学的特性、および/または組成物の使用しやすさの改善が含まれる、実質的な利点を提供しうる。抽出溶媒は、非共沸様式で揮発性麻酔薬(非制限的な例において、イソフルラン)と相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減させうる。揮発性を低減させるこの効果は、揮発性減弱効果(VAE)と呼ばれることがある。このようにして、揮発性麻酔薬組成物の貯蔵寿命、耐久性、および/または使用の容易さが改善されうる。
【0057】
非限定的な局面において、揮発性麻酔薬の薬物動態は抽出溶媒の存在によって変更されうる。たとえば、いかなる理論にもしばられたくはないが、抽出溶媒は、ある態様において、貯留される揮発性麻酔薬の量および/または貯留期間が、製剤化されていない純粋な揮発性麻酔薬を適用する場合と比較して増強されるように、揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能しうる。よって、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬をより効果的に特定の作用部位に送達させる。同様に、揮発性麻酔薬組成物が抽出溶媒を含有する1つの態様において、抽出溶媒は、揮発性麻酔薬の作用部位への吸収を速度および/または程度に関して促進しうる。加えて、抽出溶媒の存在は、ビヒクルによって与えられる揮発性減弱効果(VAE)に対して相加的または相乗的関与を有しうる。この局面において、製剤は揮発性麻酔薬の貯留を促進しうるが、そうでなければ、室温であってもその高い揮発性の性質により作用部位から急速に漏出する傾向があるであろう。
【0058】
非限定的な局面において、製剤が乳剤またはリポソームの成分である場合、乳剤またはリポソームは、特定の領域に揮発性麻酔薬をより効率的に貯留するために揮発性麻酔薬のための貯蔵所として機能しうる、および/または作用部位に揮発性麻酔薬を送達するために役立ちうる。なおもう1つの非限定的な局面において、揮発性麻酔薬の送達は、徐放性として調整されてもよい。これにより、繰り返し投与の必要性がなくなるかまたは低減されうる、および/または所望の定常状態薬物レベルが達成されうる。組成物中の揮発性麻酔薬の揮発性が低減されると、揮発性麻酔薬組成物の取り扱いの容易さもまた改善するであろう。これによって、本発明の組成物の製造および包装が容易となりうる。揮発性の低減はまた、患者、医療職員または包装施設職員が揮発性麻酔薬を吸入する可能性を回避するであろう。さらに、抽出溶媒の存在による溶液中の揮発性麻酔薬の気化の低減はまた、医療施設での火災および/または曝露のリスクの可能性に関するいかなる懸念も低減させうる。
【0059】
非限定的な態様において、罹患部分に局所投与する場合、いくつかの場合において、しかし必ずしも全ての場合ではないが、たとえば製剤中に活性物質約5 mcg/mlから約2,000,000 mcg/mlの範囲であってもよい臨床有効量を達成することが望ましい。もう1つの非限定的な態様において、局所投与の場合、いくつかの場合において、しかし必ずしも全ての場合ではないが、適用部分1平方センチメートルあたり溶液約2マイクロリットルから約50マイクロリットルの範囲であってもよい臨床有効量を達成することが望ましい。
【0060】
本発明は、本発明の揮発性麻酔薬溶液を含む密封容器をさらに含む。容器の内部は滅菌的であってもよい。容器は、たとえばシリンジ、プラスチックバッグ、折り畳み可能なプラスチックバッグ、ガラスボトル、ガラスアンプル、またはプラスチックボトルであってもよい。容器はそれ自身が、皮膚包帯であるかまたは皮膚包帯の一部であってもよい。本発明のもう1つの局面において、たとえば適用しやすさ、単位用量形状、および優れた容器閉鎖適合性プロフィールなどの多くの利点を提供する容器が企図される。この容器は、揮発性麻酔薬溶液が破砕可能な密封アンプルに含有される容器であってもよい。アンプルは保護カバーの中に入っており、そこに圧をかけてアンプルを破砕して、保護カバー中でアンプルにキャップをする火打ち石型のチップを通して、揮発性麻酔薬溶液をパーコレーションによって放出する。そのような包装形状を使用する場合、揮発性麻酔薬が漏出して貯蔵寿命期間内での溶液組成の変化を引き起こさないように、アンプルの上部空き高を可能な限り少なくする、または理想的にはなくすように注意を払う。
【0061】
抽出溶媒
本発明の揮発性麻酔薬組成物は、揮発性麻酔薬と共に抽出溶媒などの溶媒を含有してもよい。本明細書において用いられるように、「抽出溶媒」という句は、本発明の組成物において揮発性麻酔薬と相互作用して、麻酔薬と化学的に反応することなく揮発性麻酔薬の揮発性を低減しうる溶媒を指す。この句にはまた、透過性または浸透性などの、しかしこれらに限定されない特性に影響を及ぼしうるビヒクルおよび機能的成分が含まれる、必ずしも抽出しない化合物が含まれる。
【0062】
ある抽出溶媒は、揮発性麻酔薬と非共沸様式で相互作用する。それにもかかわらず、本明細書において用いられる「抽出溶媒」という用語には、溶液からの揮発性麻酔薬の蒸気圧または蒸発が低減される限り、揮発性麻酔薬と相互作用して共沸または偽共沸溶液を形成する何らかの化合物、またはその混合物が含まれてもよい。抽出溶媒はまた、類似の条件下で純粋な揮発性麻酔薬を適用した場合と比較して、所定の温度で所定の表面から麻酔薬の所定の量が漏出するために要する時間が増加して、それによって吸収されない部分が完全に蒸発する前に適用部位に揮発性麻酔薬が接触する時間が認識可能に増加するように、揮発性麻酔薬の揮発性を減弱させると予想される。もう1つの態様において、本発明の製剤は、この抽出溶媒が関心対象組織への揮発性麻酔薬の透過性を増強して、このように意図される薬理学的転帰の達成または増強にとって好都合であるように、抽出溶媒を含有してもよい。例として、しかしこれらに限定されないが、上記の関心対象組織は、意図される薬理学的転帰に直接または間接的に関係するまたは関係すると考えられる皮膚または他の任意の組織であってもよい。本発明に適用される場合の透過性の増強は、(a)関心対象組織に送達される揮発性麻酔薬の量、および/または(b)関心対象組織への送達速度(すなわち、急速な送達)、および/または(c)関心対象組織における揮発性麻酔薬の滞留時間、の増加を指す。滞留時間の増加は、関心対象組織からの揮発性麻酔薬の消失の遅れを指す。
【0063】
以下に記述されるように、化学的クラスのみならず個々の例として、様々な抽出溶媒が本発明と共に用いるために想像される。本発明において企図される化学的クラスは、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪アミン、脂肪酸エステル、ポリオール、テルペン、エステル、エーテル、アルコキシル化アミド、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリプロピレングリコールエーテルを含む。本発明において企図される個々の成分の選択される例は、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、Labrasol、オレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M 1944)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M2125)、ラウロイルマクロゴールグリセリド(Labrafil M 2130)、ジカプリロカプリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol 90、Capryol PGMC)、モノラウリン酸ポリプロピレングリコール(Lauroglycol 90、Lauroglycol FCC)、ポリグリセリル-3-ジオレエート、Peceol、イソステアリン酸イソステアリル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ポリグリセリル-3-ジオレエート、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸オクチルドデシル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸、オレイルアルコール、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、オリーブ油、落花生油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、硬化ダイズ油、硬化植物油、中鎖トリグリセリドヤシ油、パーム油、液体ラノリン、DMSO、NMP等を含む。
【0064】
抽出溶媒の正確な濃度は、経験的に決定されてもよく、用いられる特異的揮発性麻酔薬に従って変化しうる。ある態様において、抽出溶媒は、組成物における揮発性麻酔薬の揮発性を低減させるために有効な量で組成物に存在する。投与した場合にほとんどまたは全く毒性が起こらない抽出溶媒の濃度を選択するように、特に注意を払うべきである。ある抽出溶媒は、様々な分離技法(たとえば、抽出蒸留)において用いられる特性を示しうるが、本発明の態様に従う抽出溶媒は、特に揮発性麻酔薬を「抽出する」のではなくて揮発性を低減させるために、好ましくは揮発性麻酔薬を含む薬理学的混合物または溶液に含められると理解されるであろう。
【0065】
麻酔薬組成物に抽出溶媒を含めることは、投与前に溶液を混合する容易さを増加させうる。たとえば、ある態様において、最終製剤が自己乳化型薬物送達系(SEDDS)であるように選択される場合、投与前に混合することが望ましいであろう。ある態様において、抽出溶媒を揮発性麻酔薬組成物に含める場合には、投与前の麻酔薬溶液の超音波処理は不要である。この長所は、手術室のように、超音波処理器の存在が騒々しいまたはそのために集中できない状況(たとえば、慢性投与)、および超音波処理器の騒音を除去することが、疼痛を軽減するために慢性的または間欠的に揮発性麻酔薬組成物を投与される意識のある患者にとって、改善された環境を作りうる状況でも、特に有用でありうる。超音波処理器または他の類似のデバイスが必要でなくなることはまた、本発明に従う揮発性麻酔薬組成物の投与に関連する費用を低減するために特に有用でありうる。超音波処理器の存在に関連するかさを低減させることは、患者の可動性を有利に改善しうる。たとえば、患者が鎮痛のためにポンプを介して麻酔薬組成物の繰り返し投与を受けうる状況では、装置の量を低減することにより、患者がさらに超音波処理器を動かす必要がないため、可動性を改善しうる。ある態様において、抽出溶媒を揮発性麻酔薬組成物に含める場合には、投与前の麻酔薬溶液の超音波処理が必要である。
【0066】
抽出溶媒は当技術分野において公知であり、主成分の蒸気圧を遅らせて、それによってそのような溶媒が存在しない場合には全く起こらないであろう効率的分離を可能にすることにより、類似の沸点を有する化合物を分離するための抽出蒸留において典型的に用いられる。たとえば、米国特許第5,230,778号は、ジメチルホルムアミドなどの抽出溶媒を用いての抽出蒸留によるイソフルランの精製を記載している。米国特許第5,336,429号は、電子部品の洗浄用、ならびにイソフルランおよび低級アルコールまたはエステルを含む金属の脱脂用の溶媒を記載しているが、これらの組成物は、実質的に一定の沸点を有する共沸混合物として記載されている。これに対して、本発明は、例えば皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するための薬学的調製物を提供する。
【0067】
米国特許第5,230,778号に記載のアセトンなどの、当技術分野において公知の特定の抽出溶媒は、非常に毒性が高く、より高濃度で薬学的調製物に含めることが制限されうる。
【0068】
ある態様において、抽出溶媒は、麻酔薬との共沸混合物として相互作用して、麻酔薬の揮発性を低減させうる。たとえば、エタノールは、米国特許第5,230,778号において記載されるように、揮発性麻酔薬と共沸様式で相互作用しうる。
【0069】
抽出溶媒の様々な濃度を本発明と共に用いてもよい。たとえば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は、約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜 65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1 %、1 %、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはそこから導き出せる任意の範囲の抽出溶媒を含んでもよい。
【0070】
ある態様において、抽出溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)またはポリエチレングリコール300(PEG 300)である。他の態様において、ビヒクルは、オリーブ油、または落花生油、または液体ラノリン、またはジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0071】
ある態様において、抽出溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。他の態様において、機能的成分は、オレイン酸エチル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリルアルコール、イソステアリン酸、またはオレイルアルコールである。
【0072】
ある態様において、抽出溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。他の態様において、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルイソソルビドなどの抽出溶媒を用いてもよい。アセトンを用いる場合、起こりうるいかなる毒性も最小限にするために適切な用量を選ぶように注意すべきである。
【0073】
他の抽出溶媒には、PEG-400、PEG-300、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルが含まれる。
【0074】
様々な態様において、エタノール、プロパノール、またはイソプロパノールなどの医学的に許容されるアルコールを用いてもよいと想像される。これらの態様において、用いられるアルコールの濃度は、神経近傍への溶液の注射が原因で刺激または神経細胞死がほとんどまたは全く起こらないように、溶液中で十分に希薄である。
【0075】
1つの抽出溶媒または多数の抽出溶媒が、本発明の麻酔薬組成物に存在してもよい。たとえば、ある態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に単一の抽出溶媒(たとえば、DMSO、NMP、またはPEG 400)だけが存在する。他の態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの抽出溶媒が存在してもよい。ある態様において、本発明の麻酔薬組成物中に単一の揮発性麻酔薬(たとえば、イソフルラン)だけが存在し;他の態様において、本発明の麻酔薬組成物中に2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの揮発性麻酔薬が存在してもよい。ある態様において、本発明の麻酔薬組成物中に単一の抽出溶媒(たとえば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)だけが存在する。他の態様において、本発明の揮発性麻酔薬中に2つ、3つ、4つ、またはそれより多くの抽出溶媒が存在してもよい。
【0076】
N-メチルピロリドン:
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、本発明に従う揮発性麻酔薬組成物に含まれてもよい溶媒である。NMPは、5員ラクタム構造を有する化学化合物である。これは、水ならびに酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン、および低級アルコールまたはケトンが含まれる溶媒と混和性の澄明からわずかに黄色の液体である。NMPはまた、化学名である1-メチル-2-ピロリドンまたはN-メチル-2-ピロリドンおよびm-ピロールと呼ばれる。NMPは、双極性非プロトン性溶媒のクラスに属し、これには、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシドが含まれる。その良好な溶解性特性のために、NMPは、特にポリマーの分野で、広範な化学物質を溶解するために用いられてきた。NMPはまた、織物、樹脂、および金属コーティングされたプラスチックの表面処理用の溶媒として、または塗装剥離剤としても用いられる。
【0077】
NMPは、ある薬学的製剤において難溶性薬剤の溶解性を改善するために医療産業において用いられている。たとえば、NMPは、獣医学において様々な薬物と共に用いられている。NMPを用いることによる薬物の溶解度の改善のみならず、ヒト用の局所および経皮薬学的製品におけるその適用性を主張するいくつかの特許が発行されている。
【0078】
NMPの相対的非毒性特性により、NMPは、本発明と共に溶媒として用いるために特に適している。NMPは、都合のよい毒性プロフィールを有し、それにより様々な局所、経皮、および非経口投与剤形において用いるための適した候補物質となっている。NMPは、International Specialty Products(ISP; New Jersey, USA)が販売する商標Pharmasolve のN-メチル-2-ピロリドンとしてGMP等級で入手可能である。
【0079】
ジメチルスルホキシド(DMSO):
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、本発明のある態様において溶媒として用いられる。DMSOは、式(CH
3)
2SOを有する。DMSOは、極性および非極性化合物の両方を溶解し、広範な有機溶媒のみならず水と混和性である、極性非プロトン性溶媒である
【0080】
DMSOは、相対的に非毒性の化合物であり、このため本発明における溶媒として用いるために特に適している。DMSOの毒性が相対的にないことは十分に確立されており、DMSOを医学目的で用いる可能性は、University of Oregon Medical SchoolチームのStanley Jacob氏によって確立され、彼はDMSOが、皮膚および他の膜を損傷することなく透過して、他の化合物を生体系へ運びうることを発見した。DMSOはまた、凍結保護剤として、および抗炎症剤としても用いられている。ジメチルスルホキシドは、炭水化物、ポリマー、ペプチドが含まれる様々な有機物質のみならず、多くの無機塩およびガスを溶解する。
【0081】
様々な態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中の、たとえば約0.1%から約10%という低濃度のDMSOは、投与前に組成物の超音波処理の必要をなくすために十分でありうると想像される。揮発性麻酔薬を含む組成物中のたとえば約10%から約75%またはそれより高いより高濃度のDMSOは、送達される揮発性麻酔薬の速度および/または程度の増加を可能にするような様式で、揮発性麻酔薬の薬物動態を変更するのに十分でありうる。
【0082】
揮発性麻酔薬
一般的に、記載の組成物および方法と共に用いるために適したハロゲン化エーテル麻酔薬または揮発性麻酔薬には、大抵は室温で液体であるが、容易にガス状になることができるか、または室温ですでにガス状であり、有意な副作用を起こすことなく皮膚科障害または皮膚科疾患を処置しうる物質が含まれる。たとえば、体による代謝が最小限であるか、そうでなくても不活性である揮発性麻酔薬を選択することが望ましいであろう。このようにして、肝および腎毒性が最小限となりうる。同様に、揮発性麻酔薬は、短い半減期を有するか、または滴定性を促進するために迅速に作用することが望ましいであろう(すなわち、対象は自身が経験する皮膚科障害または皮膚科疾患のために送達量を容易に調節してもよい)。耐性(オピオイドまたは局所揮発性麻酔薬とは異なり)または依存性(オピオイドのように)を生じない活性物質ガスも同様に望ましいであろう。
【0083】
本発明の組成物および方法において有用な揮発性麻酔薬には、ハロゲン化エーテル化合物、イソフルラン、セボフルラン、ハロタン、エンフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、およびジエチルエーテルが含まれる。ある態様において、キセノンも同様に本発明と共に用いてもよい。1つの物質または物質の混合物は、本明細書において記載される方法と共に用いるために特に適しているであろう。
【0084】
様々な態様において、ガス状揮発性麻酔薬を本発明と共に用いてもよい。たとえば、ガス状揮発性麻酔薬を、本発明に従う溶液に溶解して、経皮、局所、粘膜、直腸、経口、または膣などの、限局的または局所技法で投与してもよい。重要なことは、ガス状揮発性麻酔薬は、吸入によって投与されない。ハロゲン化麻酔薬以外のガス状揮発性麻酔薬が企図され、例には、キセノン、酸化窒素、シクロプロパンおよびエーテルが含まれ、その全てを様々な態様において、ラセミ混合物型でまたはd-異性体もしくはl-異性体型で用いてもよい。様々な態様において、他の生物活性ガス(たとえば、酸化窒素)を本発明に従って対象に溶液中で送達してもよい。
【0085】
複数の揮発性麻酔薬を一度に投与してもよく、および異なる揮発性麻酔薬を1回の処置サイクルを通して様々な時点で投与してもよい。たとえば、2、3、4、またはそれより多くの揮発性麻酔薬を、対象に同時にまたは繰り返し投与してもよい。化合物を対象に繰り返し投与する場合、化合物の投与期間は、約1〜60秒、1〜60分、1〜24時間、1〜7日、1〜6週間もしくはそれより長く、またはその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。いくつかの例において、その物理的および生理学的特性に応じて、揮発性麻酔薬の送達を行うことが望ましいであろう。ある臨床でのシナリオにおいて、急性皮膚科障害または皮膚科疾患を処置するためには作用持続がより短い物質が望ましい場合があるが、作用持続がより長い物質は、慢性皮膚科障害または皮膚科疾患にとってより適している場合がある。
【0086】
抗生物質
本発明の組成物および方法において有用な抗生物質には、公知の抗生物質のみならず、現在まだ開発されていない抗生物質が含まれる。非制限的な例には、アミカシン、アミノグリコシド、アモキシシリン、アンピシリン、アジスロマイシン、バカンピシリン、カンジシジン、カルベニシリン、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロスポリン、セファピリン、セフラジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、クロトリマゾール、クロキサシリン、クリスチシリン、クプリミキシン、ペンチド(Pentids)、ペルマペン(Permapen)、ファイゼルペン(Pfizerpen)、ファイゼルペン-AS、ワイシリン(Wycillin)、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エノキサシン、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、フルオロキノロン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲンタマイシン、ハロプロジン、ヨードクロロヒドロキシキン、カナマイシン、ケトライド、レボフロキサシン、リポペプチド、ロメフロキサシン、マクロライド、メトロニダゾール、メズロシリン、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ナフシリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ノルフロキサシン、ナイスタチン、オフロキサシン、オキサシリン、オキシテトラサイクリン、パロモマイシン、ペニシリンG、ペニシリンV、ペニシリン、ピペラシリン、ピバンピシリン、ピブメシリナム、ロキシスロマイシン、スパルフロキサシン、ストレプトマイシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルホンアミド、テリスロマイシン、テトラサイクリン、チカルシリン、トブラマイシン、トルナフテート、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、トロバフロキサシン、およびバンコマイシンが含まれる。
【0087】
乳剤
当業者に理解されるように、乳剤は、2つまたはそれより多くの不混和性の液体(すなわち、多数の相を含有する)の混合物からなり、乳剤は、1つまたは本質的に1つのみの相を含有する溶液とは異なる。液体(分散相)の1つは、他の相(連続相)に分散される。乳剤の1つの型において、連続液体相が水の液滴を取り囲む(たとえば、油中水型乳剤)。乳剤のもう1つの型において、油は連続水相内に分散している(たとえば、水中油型乳剤)。同様に、乳化は、乳剤を調製する工程である。
【0088】
ある態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない油中水型または水中油型乳剤などの乳剤の成分である。たとえば、抽出溶媒を含む溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む揮発性麻酔薬組成物はまた、脂質乳剤または水中油型乳剤も含んでもよい。様々な態様において、本発明の乳剤は、抽出溶媒をさらに含んでもよい溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む水溶液を含有してもよい。たとえば脂質乳剤などの油中水型または水中油型乳剤を揮発性麻酔薬組成物に含めることを用いて、たとえば揮発性麻酔薬組成物の安定性に都合のよい影響を及ぼしてもよく、および/または麻酔薬の薬物動態を変更してもよい。たとえば、脂質組成物、脂質乳剤、油中水型乳剤、および/または水中油型乳剤は、本発明の揮発性麻酔薬組成物の経皮、局所、粘膜、直腸、または膣送達にとって有用でありうる。イソフルランのある乳剤は、以前に静脈内(da Silva Telles et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5):2004)、または硬膜外投与(Chai et al., 2008, British J Anesthesia 100:109-115; Chai et al., 2006, Anesthesiology 105:A743)のために、いずれも麻酔の導入用に調製されている。
【0089】
ある態様において、本発明の乳剤は、揮発性麻酔薬と水とを含み、乳化剤をさらに含んでもよい。本発明の乳剤にはまた、乳剤のサイズより小さい平均液滴サイズを有する乳剤であるナノ乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ナノ乳剤は時にマイクロ乳剤およびサブマイクロ乳剤と呼ばれる。しばしば、ナノ乳剤の物理的外観は、乳剤のしばしば乳状の外観ではなく、平均液滴サイズが小さいためにむしろ透明である。本発明の乳剤にはまた、たとえば米国特許出願第20070149624号および第20050238677号、米国特許第5,183,585号および国際特許出願WO 05108383において開示される乳剤などの液晶乳剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0090】
ある態様において、本発明の乳剤は、脂質成分を有してもよい。様々な態様において、脂質成分は、乳剤の約1%から99%、約5%から約75%、約10%から約60%、約20%から約50%、または約30%から約40%v/vの範囲の量を構成してもよい。様々な態様において、乳剤の脂質成分は、ダイズ油、長鎖トリグリセリド、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、硬化ダイズ油、硬化植物油、中鎖トリグリセリドヤシ油、パーム核油および誘導体、中鎖(C8/C10)モノおよびジグリセリド、d-αトコフェロール、ダイズ脂肪酸、またはその組み合わせであってもよい。ある態様において、乳剤の脂質成分はダイズ油である。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる市販の脂質組成物には、Intralipid(登録商標)、Liposyn(登録商標)、およびNutrilipid(登録商標)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0091】
他の態様において、乳剤は乳化剤をさらに含む。乳化剤は、乳剤を安定化させる物質である。乳化剤はまたエマルジェント(emulgent)として知られることがある。乳化剤はまた、界面活性剤であってもよい。様々な態様において、乳化剤は、卵リン脂質、精製卵リン脂質、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリオキシル60硬化ヒマシ油(Cremophor RH 60)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、コハク酸d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000、Solutol HS-15、プロピレングリコール、またはその組み合わせであってもよい。様々な濃度の乳化剤を本発明と共に用いてもよい。たとえば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は、約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1%、1%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、またはその中で導き出せる任意の範囲の乳化剤を含んでもよい。
【0092】
他の態様において、本発明の乳剤は、パーフルオロカーボン成分を有する。様々な態様において、パーフルオロカーボン成分は、乳剤の約0.1%から99%、約5%から約75%、約10%から約60%、約20%から約50%、または約30%から約40%v/vの範囲の量を構成してもよい。様々な態様において、パーフルオロカーボンは、限られた毒性および大量のガス捕捉能により、さらなる利点を提供しうる。1つの態様において、本発明の乳剤は、揮発性麻酔薬、パーフルオロカーボン、水、および乳化剤を含む。パーフルオロカーボン、具体的にパーフルオロ-n-オクタンは、網膜剥離の症例において房水の代わりに眼にそれを点眼することによって臨床で用いられてきた(Chang, 1992, S. Intl. Ophthalmol. Clinic 32:153-163を参照されたい)。
【0093】
リポソームおよび微小液滴
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、リポソーム懸濁液の成分であってもよい。リポソーム(たとえば、マルチラメラ、ユニラメラ、および/または多小胞リポソーム)は、壁が、リン脂質と、哺乳動物の細胞膜を構成する分子と物理的および/または化学的特性が類似の分子との1つまたは複数の層を含む、顕微鏡的球形の液体充填構造である。非制限的な例によって、リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの、様々な天然の膜成分から(例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,120,561号および第6,007,838号を参照されたい)、またはDOPE(ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン)のような純粋な界面活性剤成分から形成されてもよい。リポソームは、水性または脂質分画または双方のいずれかにおいて、ペイロードとして広範な材料を組み入れるように製剤化されてもよい。一般的に、親油性の活性物質を二重層に溶解すると、両親媒性の物質はリン脂質膜に会合するようになり、および親水性物質は水性の封入体積中で溶液で存在する(Artmann et al., 1990, Drug Res. 40 (II) 12:1363-1365;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0094】
リポソームは、薬物担体として、または局所投与用に有用である(Gehring et al., 1990, Drug Res. 40 (II)12:1368-1371;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。リポソームは、アジドチミジン(AZT)の抗腫瘍および抗ウイルス誘導体のような親油性薬物の担体として用いられている(Kamps, et al., 1996, Biochim. Biophys. Acta. 1278:183-190)。インスリンもまた、リポソームを介して送達されている(Muramatsu et al., 1999, Drug Dev. Ind. Pharm. 25:1099-1105)。薬物担体として医学的に用いる場合、リポソームを注射してもよく、それらを脂質によって修飾すると、その表面はより親水性になり、よってそれらの存続能が増加しうる。ポリエチレングリコール修飾リポソームは、ドキソルビシンのような親水性(水溶性)抗癌剤のための担体として用いられている。ミトキサントロンおよびその他のリポソーム誘導体は、外来侵入者としてそれらを認識する貪食細胞に蓄積する傾向があることから、免疫系の貪食細胞に影響を及ぼす疾患を処置するために特に有効である(Rentsch et al., 1997, Br. J. Cancer 75:986-992)。リポソームはまた、欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患を処置するために、細胞に正常遺伝子を運ぶためにも用いられている(Guo et al., 2000, Biosci. Rep. 20:419-432)。組成を変えることができるためにリポソームの用途が広いことにより、ワクチン、タンパク質、ヌクレオチド、プラスミド、薬物、化粧品、または本発明の揮発性麻酔薬を体に送達するためにリポソームを用いることができる。
【0095】
本発明のリポソーム組成物は、本明細書において記載される方法および詳細な説明に従って、任意の範囲のリポソームおよび揮発性麻酔薬成分を含んでもよい。非制限的な例として、本発明の組成物のリポソーム成分には、0.1%から99.9%リポソーム成分、またはより好ましくは0.1%から50%リポソーム成分、およびさらにより好ましくは0.1%から30%リポソーム成分が含まれてもよい。様々な態様において、本発明のリポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその組み合わせを含む。
【0096】
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬はまた、微小液滴の成分であってもよい。本発明の微小液滴は、適した脂質の単層で覆われた、直径約200オングストロームから約10,000オングストロームの範囲である有機液相薬物の球体からなる。好ましい脂質はリン脂質であり、これは生体膜の天然の構成成分であり、そのため生物学的に適合性である。微小液滴を調製するために有用な化合物には、ホスファチジルコリン(レシチン)、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルグリセロールが含まれる。
【0097】
微小液滴は、プローブまたはバス超音波処理が含まれる超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高強度機械的撹拌によって調製されてもよい。本発明の微小液滴の好ましい調製法は、プローブ超音波処理器による超音波処理である。または、微小液滴を、バス超音波処理器によって調製してもよい。小規模調製物の場合、直径1.0 cmの試験管を、水を満たしたバス超音波処理器において試験管クランプを用いて吊す。微小液滴の成分を最初に振とう、ボルテックス混合、ポリトロンまたは他の方法によっておおよそ混合する。次に、懸濁液をバス超音波処理器に導入して、1〜2時間超音波処理する。調製を大規模で行う場合、試験管を省略して、微小液滴の成分をバス超音波処理器に直接導入することが可能である。微小液滴はまた、高強度機械的撹拌によって産生してもよい。有用な方法には、ワーリングブレンダー、ポリトロン、および市販の塗料振とう機などの高振動数シェーカーが含まれる。微小液滴の調製において有用な他の材料および方法は当技術分野において公知であり、米国特許第4,622,219号、第4,725,442号、および第5,091,188号、Haynes et al.(1989, J. Contr. Rel. 9:1-12)、ならびにHaynes et al.(1985, Anesthesiology 63:490-499)において記載され、そのすべては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
投薬
投与される揮発性麻酔薬の量は、所望の特定の適応に依存する。たとえば、投与は、処置が意図される皮膚科障害または皮膚科疾患のタイプに依存するであろう。例として、急性皮膚科障害または皮膚科疾患に対して慢性皮膚科障害または皮膚科疾患を低減するために揮発性麻酔薬の送達を意図する場合、用量は異なりうる。対象の身体的特徴もまた、適当な用量を決定する上で重要でありうる。体重、年齢等などの特徴は重要な要因でありうる。たとえば、揮発性麻酔薬は、揮発性麻酔薬イソフルランの場合に証明されているように、年齢と共に効力が増加しうる。
【0099】
多くの揮発性麻酔薬の溶解度が、揮発性麻酔薬および/または溶液の温度によって影響を受けうることから、揮発性麻酔薬の温度もまた、適当な用量を選択する場合の要因であると考えられるであろう。たとえば、温度の上昇は、溶解度を増加させ、このように揮発性麻酔薬組成物の効力を増加させうる。この特性は、ある揮発性麻酔薬について証明されている。特定の用量はまた、選んだ投与計画にも依存しうる。たとえば、揮発性麻酔薬組成物を持続的または周期的に送達してもよい。逆に、揮発性麻酔薬組成物を、1回事象として1回投与として投与してもよい。
【0100】
揮発性麻酔薬(たとえば、ハロゲン化揮発性麻酔薬化合物)は、選択される揮発性麻酔薬および所望の効果に応じて、約250から約50,000ナノグラム/cm
2標的作用部位の範囲の濃度に至る量で適用されてもよい。ある態様において、ハロゲン化揮発性麻酔薬または揮発性麻酔薬は、約5から約5,000,000ナノグラム/cm
2標的作用部位の濃度を達成するように投与されてもよい。用量範囲は、選択される化合物および患者の多様性に応じて変化するが、約0.01から約10,000ナノグラム/cm
2標的作用部位などの低用量は、中等度の皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために適しているが、重度の皮膚科障害または皮膚科疾患を処置するためには、約10,000ナノグラム/cm
2標的作用部位から約500,000ナノグラム/cm
2標的作用部位またはそれより多い量などの高用量が適していることは一般的に真実である。当然、用量は1回(たとえば、軽度の皮膚科障害または皮膚科疾患が1回発生したために)、繰り返し(たとえば、中等度または慢性皮膚科障害または皮膚科疾患のため)、または連続的に(たとえば、重度の皮膚科障害または皮膚科疾患のために)与えられてもよい。これらの投与計画の組み合わせも同様に用いてもよい。たとえば、重度の皮膚科障害または皮膚科疾患に罹っている対象は、周期的に追加の投与を行いながらの持続的投与を必要としうる。
【0101】
揮発性麻酔薬(たとえば、揮発性麻酔薬、イソルフラン等)を、水、食塩水、または人工CSF溶液などの溶液中で混合する態様において、揮発性麻酔薬の濃度は変化してもよい。たとえば、溶液は、約1から約99%、約10から約75%、約10から約50%、約20から約50%、30から約50%、約1から約45%、約1から約40%、約1から約35%、約1から約30%、約1から約25%、約1から約20%、約1から約15%、約1から約10%、約1から約5%、約0.5から約5%、約0.1から約5%、約0.1から約2.5%、約0.5から約2.5%、またはその中で導きだせる任意の範囲の体積比で揮発性麻酔薬を含有してもよい。これらの態様において、揮発性麻酔薬は、揮発性麻酔薬、たとえばイソフルランであってもよく、溶液は、水、食塩水、人工脳脊髄液(ACSF)、または他の液体であってもよい。
【0102】
本発明の組成物の投与および送達様式を、たとえば量、濃度、投与回数、および投与のタイミングを変動させることによって、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するように調節してもよい。
【0103】
揮発性麻酔薬溶液はまた、界面活性剤、PVP、ポリマー、抗菌剤、保存剤等などの1つまたは複数の添加剤を含有してもよい。ある態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物は、約0.1〜90%のイソフルラン、メトキシフルラン、またはセボフルランなどの揮発性麻酔薬、0.1〜99%のNMPまたはDMSOなどの抽出溶媒、0.1〜99%の食塩水、および0〜50%の他の添加剤(たとえば、グリセロール、界面活性剤、PVP等)を含んでもよい。いくつかの態様において、投与前に最終希釈に供されてもよい濃縮製剤を産生することが望ましいであろう。
【0104】
様々な態様において、イソフルランなどの約10%揮発性麻酔薬溶液を用いてもよく、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために、この溶液を一度に、持続的に、および/または繰り返し投与してもよい。皮膚科障害または皮膚科疾患を処置するための本発明の組成物および方法のさらなる局面は、揮発性麻酔薬の鎮痛活性である。このように、揮発性麻酔薬の10%v/v溶液を用いて皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防してもよい。より高濃度および/またはより長い投与期間の揮発性麻酔薬を、様々な態様において必要に応じて用いてもよい。
【0105】
活性物質の送達法
本発明の揮発性麻酔薬は、局所送達されてもよい。いくつかの態様において、局所送達のために用いてもよい揮発性麻酔薬の特異的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約250,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約100,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約50,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約25,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、または約100から約10,000ナノグラム/cm
2標的作用部位が含まれる。用いられる揮発性麻酔薬の特異的濃度は、所望の効果に応じて変動してもよく、様々な態様において、揮発性麻酔薬組成物は効果に関して滴定され;このように、用いられるまたは組織において達成される揮発性麻酔薬の濃度は、特異的な所望の結果および/または揮発性麻酔薬に対する感受性などの患者の特定の特徴に依存して変動しうる。
【0106】
いくつかの態様において、皮膚科障害または皮膚科疾患を処置、改善、または予防するために用いられてもよい揮発性麻酔薬の特異的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約250,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約100,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約50,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、約100から約25,000ナノグラム/cm
2標的作用部位、または約100から約10,000ナノグラム/cm
2標的作用部位が含まれる。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、アプリケータの助けを借りて、処置を受ける対象に投薬されてもよい。用いられるアプリケータは、処置される特異的医学的状態、薬学的組成物の量および物理的状態、ならびに当業者の選択に依存しうる。
【0108】
本発明の薬学的組成物は、説明材料と共に、対象に、または対象に組成物を投薬する担当の医療職員に提供されてもよい。説明材料には、キットの中の本発明の実践において用いられる組成物および/または化合物の有用性を伝達するために用いられてもよい刊行物、記録、ダイアグラム、または他の任意の表現媒体が含まれる。キットの説明材料は、たとえば本発明の実践において用いられる化合物および/または組成物を含有する容器に貼付されてもよく、または化合物および/または組成物を含有する容器と共に運送されてもよい。または、レシピエントが説明材料と化合物とを連携して用いることを意図して、説明材料を容器とは別に運送してもよい。説明材料の配達は、たとえばキットの有用性を伝達する刊行物もしくは他の表現媒体の物理的配達であってもよく、または電子伝達によって、たとえば電子メールなどのコンピューターによって、もしくはウェブサイトからのダウンロードによって達成されてもよい。
【0109】
罹患領域への企図される他の投与経路には:経皮、粘膜、直腸、および膣、または局所(たとえば、担体ビヒクルにおいて、局所制御放出パッチ、創傷包帯において、ハイドロコロイド、フォーム、ハイドロゲル、クリーム、α−ゲル、ローション、軟膏、液晶乳剤(LCE)、および/または微小乳剤)が含まれる。適切な生物学的担体または薬学的に許容される賦形剤を用いてもよい。投与される化合物は、様々な態様において、ラセミ体であってもよく、異性体として精製されてもよく、または異性体として純粋であってもよい。
【0110】
経粘膜投与
経粘膜投与は、粘膜組織に適用するために適した任意のタイプの製剤または用量単位を用いて行われる。たとえば、選択された活性物質を、口腔用貼付剤またはパッチで口腔粘膜に投与してもよく、固体投与剤形を舌下に置くことによって舌下投与してもよく、液滴もしくは点鼻スプレー、非エアロゾル液体製剤、もしくはドライパウダーとして鼻腔に投与してもよく、直腸内もしくはその近傍に置いてもよく(「経直腸」製剤)、または坐剤、軟膏等として尿道に投与してもよい。
【0111】
経直腸投与
経直腸投与剤形には、直腸坐剤、クリーム、軟膏、および液体製剤(浣腸)が含まれてもよい。経直腸送達のための坐剤、クリーム、軟膏、または液体製剤は、選択された活性物質の治療的有効量と、経直腸薬物投与にとって適した1つまたは複数の慣用の非毒性担体とを含む。本発明の経直腸投与剤形は、慣用のプロセスを用いて製造されてもよい。経直腸投与単位は、急速に、または数時間かけて崩壊するように加工されてもよい。完全に崩壊するまでの時間は、約10分から約6時間の範囲であってもよく、たとえば約3時間未満であってもよい。
【0112】
膣または膣周囲投与
膣または膣周囲投与剤形には、膣坐剤、クリーム、軟膏、液剤、ペッサリー、タンポン、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーが含まれてもよい。膣または膣周囲送達のための坐剤、クリーム、軟膏、液剤、ペッサリー、タンポン、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーは、選択された活性物質の治療的有効量と、膣または膣周囲薬物投与にとって適した1つまたは複数の慣用の非毒性担体とを含む。本発明の膣または膣周囲剤形は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、前記において開示される慣用のプロセスを用いて製造されてもよい(同様に、米国特許第6,515,198号、第6,500,822号、第6,417,186号、第6,416,779号、第6,376,500号、第6,355,641号、第6,258,819号、第6,172,062号、および第6,086,909号において改作された薬物製剤も参照されたい)。膣または膣周囲投与単位は、急速にまたは数時間かけて崩壊するように加工されてもよい。完全に崩壊するまでの時間は、約10分から約6時間の範囲であってもよく、たとえば約3時間未満であってもよい。
【0113】
局所製剤
局所製剤は、体表面への適用にとって適した任意の剤形であってもよく、たとえば軟膏、クリーム、ゲル、ローション、溶液、ペースト等を含んでもよく、および/またはリポソーム、ミセル、および/またはミクロスフェアを含有するように調製されてもよい。ある態様において、本明細書における局所製剤は、軟膏、クリーム、およびゲルである。
【0114】
経皮投与
当業者に公知である経皮的化合物投与は、化合物の経皮的通過を介しての患者の全身循環への薬学的化合物の送達を伴う。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオントフォレーシス装置などの経皮投与を用いることを伴ってもよい。他の成分も同様に経皮パッチに組み入れられてもよい。たとえば、組成物および/または経皮パッチは、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウム等が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の保存剤または静菌剤と共に製剤化されてもよい。化合物および組成物の局所投与のための投与剤形には、クリーム、スプレー、ローション、ゲル、軟膏、点眼液、点鼻液、点耳液等が含まれてもよい。そのような投与剤形において、白色のなめらかで均一で不透明なクリームまたはローションを形成するために、本発明の組成物を、たとえば保存剤としての1%または2%(wt/wt)ベンジルアルコール、乳化ロウ、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、乳酸、精製水、およびソルビトール溶液と混合してもよい。加えて、組成物は、ポリエチレングリコール400を含有してもよい。それらを、たとえば保存剤として2%ベンジルアルコール(wt/wt)、白色ワセリン、乳化ロウ、およびtenox II(ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコール)と混合して軟膏を形成してもよい。包帯材料の織物のパッドまたはロール、たとえばガーゼに、溶液、ローション、クリーム、軟膏、または他のそのような剤形の組成物を浸透させてもよく、それらもまた局所投与のために用いられてもよい。組成物はまた、組成物を浸透させて、不透過性の裏打ち剤に積層した樹脂様クロスリンク剤を有するアクリル酸に基づくポリマー接着剤の1つなどの経皮システムを用いて局所投与されてもよい。
【0115】
適した皮膚接触接着材料の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、薬物含有貯蔵所および皮膚接触接着剤は、接着剤が貯蔵所の下にある異なる別個の層であり、この場合、貯蔵所は、先に記載したポリマーマトリクスであってもよく、液体もしくはハイドロゲル貯蔵所であってもよく、または他の何らかの形状であってもよい。
【0116】
さらなる投与剤形
本発明のさらなる投与剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載される投与剤形が含まれる。本発明のさらなる投与剤形にはまた、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820号において記載される投与剤形が含まれる。本発明のさらなる投与剤形にはまた、PCT出願番号WO 03/35041、WO 03/35040、WO 03/35029、WO 03/35177、WO 03/35039、WO 02/96404、WO 02/32416、WO 01/97783、WO 01/56544、WO 01/32217、WO 98/55107、WO 98/11879、WO 97/47285、WO 93/18755、およびWO 90/11757に記載される投与剤形が含まれる。
【0117】
溶液
ハロゲン化エーテル揮発性麻酔薬を選択した後、これを溶液に溶解してもよい。溶液は、水、食塩水等などの水性溶液であってもよい。いくつかの変化形において、他の液体および溶液も適切でありうる。
【0118】
食塩水の様々な製剤が当技術分野において公知であり、本発明と共に用いられてもよい。たとえば、食塩水は、乳酸加リンゲル液、酢酸加リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(D-PBS)、トリス緩衝生理食塩液(TBS)、ハンクス緩衝塩類溶液(HBSS)、または標準クエン酸生理食塩液(SSC)であってもよい。
【0119】
本発明の食塩水は、ある態様において、「生理食塩液」(すなわち、約0.9%w/v NaClの溶液)である。生理食塩液は血液と比較して浸透圧がわずかに高い。しかし、様々な態様において、食塩水は、ヒト患者などの対象の体において等張でありうる。ある態様において、「半生理食塩液」(すなわち、約0.45% NaCl)、または「4分の1生理食塩液」(すなわち、約0.22%NaCl)を本発明と共に用いてもよい。任意で、約5%デキストロースまたは約4.5 g/dLグルコースを食塩水に含めてもよい。様々な態様において、1つまたは複数の塩、緩衝液、アミノ酸、および/または抗菌剤を食塩水に含めてもよい。
【0120】
様々な態様において、保存剤または安定化剤を組成物または溶液に含めてもよい。たとえば、微生物の作用の防止は、パラベン(たとえば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、EDTA、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、チメロサール、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらされてもよい。用いるために適した含まれてもよい物質には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(その全体が具体的に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,466,468号)。全ての場合において、組成物は好ましくは滅菌的であり、容易な注射可能性を促進するために流体でなければならない。溶液は好ましくは、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保護されなければならない。含まれてもよい安定化剤の例には、緩衝剤、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等などの炭水化物が含まれる。適当な安定化剤または保存剤を、所望の投与経路に従って選択してもよい。粒子フィルターまたは微生物フィルターを用いてもよく、それらは所望の投与経路に従って必要でありうる。
【0121】
溶液中の化合物の重量範囲は変動してもよい。たとえば、様々な態様において、組成物は、約1〜5重量%揮発性麻酔薬、約1〜5重量%保存剤/安定化剤、約1〜5重量%NaCl、および約85%〜97%水を含んでもよい。揮発性麻酔薬対水の比率は、皮膚科障害または皮膚科疾患の所望の処置を達成するために必要であれば変動させてもよい。
【0122】
溶液および/または組成物を、投与前に滅菌してもよい。滅菌法は当技術分野において周知であり、これには、加熱、煮沸、加圧、濾過、消毒化学物質への曝露(たとえば、塩素処理後に脱塩素または溶液から塩素の除去)、通気、オートクレーヴ処理等が含まれる。
【0123】
活性物質ガスを、任意の方法で溶液に製剤化してもよい。たとえば、これを溶液中にたとえば気化器を用いて通気してもよく、または撹拌もしくは超音波処理によって溶解してもよい。ある態様において、ハロゲン化エーテルなどの揮発性麻酔薬または揮発性麻酔薬を液体型で測定して、溶液に直接混合してもよい。当然、揮発性麻酔薬を溶液に溶解する他の適した方法も同様に用いてもよい。ハロゲン化エーテル揮発性麻酔薬を溶解した後、これを皮膚科障害または皮膚科疾患の処置を必要とする対象に投与してもよい。ある態様において、揮発性麻酔薬を、密封真空容器中で溶液と混合して、合わせた溶液を次に3〜5分間機械的に撹拌して、使用するまで熱的中性超音波処理器内で保持する。
【0124】
ある態様において、本発明の溶液は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤が含まれる、油中水型または水中油型乳剤などの乳剤の成分であってもよい。イソフルランのある乳剤が、これまでに静脈内(da Silva Telles, et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5):2004)、または硬膜外投与(Chai et al. 2008, British J Anesthesia 100:109-115)のために調製されている。
【0125】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散された、1つもしくは複数の揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスの有効量または追加の物質を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、たとえばヒトなどの動物に適切に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。溶液中の少なくとも1つの揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスまたは追加の活性成分を含有する薬学的組成物の調製は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy," 20th Edition (2000)によって例証されるように、本開示に照らして当業者に公知であろう。その上、動物(たとえば、ヒト)での投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsが要件とする滅菌性、発熱性、一般的安全性、および純度標準を満たすべきであると理解されるであろう。
【0126】
様々な態様において、本発明の組成物はさらにシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、一連のオリゴ糖環を形成するように連結されたグルコース単位で構成される一般的なクラスの分子である(Challa et al., 2005, AAPS PharmSciTech 6:E329-E357を参照されたい)。天然において、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)によるデンプンの酵素的消化は、環構造中に6、7、および8個のアンヒドログルコース単位を含むシクロデキストリン(それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン)の混合物を生じる。商業的に、シクロデキストリンは同じくデンプンから産生されるが、異なるより特異的な酵素が用いられる。シクロデキストリンは、シサプリド、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、デキストロメトラファン、ジフェンヒドラミン、ヒドロコルチゾン、イトラコナゾール、およびニトログリセリンの送達を促進するために製剤において使用されている(Welliver and McDonough, 2007, Sci World J, 7:364-371)。様々な態様において、本発明のシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、α-デキストリン、またはその組み合わせである。ある態様において、シクロデキストリンは可溶化剤として用いられてもよい。
【0127】
様々な他の態様において、本発明の組成物は、血漿から精製されたヒト血清アルブミン、または組み換え型ヒト血清アルブミンを含んでもよい。ある態様において、ヒト血清アルブミンは可溶化剤として用いられてもよい。他の態様において、本発明の組成物は、プロピレングリコールを含んでもよい。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロオクチルブロミドを含んでもよい。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロカーボンを含んでもよい。ある態様において、パーフルオロカーボンは、可溶化剤として用いられてもよい。
【0128】
様々な態様において、保存剤または安定化剤を組成物または溶液に含めてもよい。たとえば、微生物の作用の予防は、パラベン(たとえば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、EDTA、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、チメロサール、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらされてもよい。用いるために適した含めてもよい物質には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(その全体が具体的に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,466,468号)。全ての場合において、組成物は、好ましくは無菌的であり、容易な注入可能性を促進するために流体でなければならない。溶液は好ましくは、製造および貯蔵条件で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保護されなければならない。含めてもよい安定化剤の例には、緩衝液、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等などの炭水化物が含まれる。所望の投与経路に従って、適切な安定化剤または保存剤を選択してもよい。粒子フィルターまたは微生物フィルターを用いてもよく、それらは所望の投与経路に従って必要であってもよい。
【0129】
薬学的組成物および治療
処置法における本発明の組成物の投与は、当技術分野において公知の方法を用いて、多数の異なる方法で達成されてもよい。そのような方法には、溶液、懸濁剤、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、およびナノ乳剤を局所投与する段階が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0130】
本発明の治療的および予防的方法は、このように、本発明の薬学的組成物を用いることを包含する。本明細書において記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野において公知のまたはその後開発される任意の方法によって調製されてもよい。一般的に、そのような調製法には、活性成分を担体または1つもしくは複数の他の付属成分と会合させる段階、およびその後必要であればまたは望ましければ、産物を所望の1回用量単位または多数回用量単位に成形または包装する段階が含まれる。たとえば、単位用量容器は、揮発性麻酔薬溶液が、粉砕可能な密封アンプルに含有されて保護カバーに封入され、これに圧をかけてアンプルを粉砕すると、保護カバーにおいてアンプルにキャップをしている火打ち石型のチップを通して、揮発性麻酔薬溶液をパーコレーションによって放出する容器であってもよい。そのような包装形状を使用する場合、揮発性麻酔薬が漏出しないように、および貯蔵寿命のあいだ溶液の組成に変化を引き起こさないように、アンプルの上部空き高が可能な限り少ないように、または理想的にはないように注意すべきである。
【0131】
本明細書において提供される薬学的組成物の記載は原則的に、ヒトに倫理的に投与するために適した薬学的組成物に向けられているが、そのような組成物は全般的に、哺乳動物が含まれる全ての種の動物への投与にとって適していることは当業者によって理解されるであろう。ヒトに投与するために適した薬学的組成物を、様々な動物への投与に適するように改変することは十分に理解されており、当業者の獣医薬理学者は、そのような改変を、たとえあったとしても単なる通常の実験によって設計および行うであろう。本発明の薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌなどの商業的に重要な哺乳動物が含まれる哺乳動物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0132】
本発明の方法において有用である薬学的組成物は、眼、膣、局所、鼻腔内、口腔、または他の投与経路にとって適した製剤で調製、包装、または販売されてもよい。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、1回単位用量でまたは複数の1回単位用量としてバルクで調製、包装、または販売されてもよい。単位用量は、活性成分の既定量を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は一般的に、対象に投与されるであろう活性成分の用量、またはたとえばそのような用量の2分の1もしくは3分の1などのそのような用量の簡便な分画に等しい。
【0134】
本発明の薬学的組成物における活性成分、薬学的に許容される担体、および任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の同一性、体格、および状態に依存して、ならびにさらに組成物が投与される経路に依存して変動するであろう。例として、組成物は、0.1%から100%(w/w)活性成分を含んでもよい。
【0135】
活性成分のほかに、本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の追加の薬学的活性成分をさらに含んでもよい。そのような追加の薬学的活性物質の1つの非制限的な例は、抗生物質などの抗菌剤である。
【0136】
本発明の薬学的組成物の制御放出または徐放性製剤は、慣用の技術を用いて作製されてもよい。
【0137】
局所投与にとって適した薬学的組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と共に活性成分を含む。製剤は、粉砕可能なもしくはそれ以外のアンプルなどの単位用量剤形、または保存剤を含有する多用量容器で調製、包装、または販売されてもよい。局所投与のための製剤には、懸濁剤、溶液、油性もしくは水性のビヒクル中の乳剤、溶液、懸濁液、クリーム、ペースト、オイル、ローション、ゲル、フォーム、ハイドロゲル、軟膏、リポソーム、乳剤、液晶乳剤、ナノ乳剤、埋め込み可能な徐放性または生体分解性製剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。そのような製剤はさらに、懸濁剤、安定化剤、または分散剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の追加の成分を含んでもよい。
【0138】
薬学的組成物は、滅菌の水溶性または油性の懸濁液または溶液の剤形で調製、包装、または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は、公知の技術分野に従って製剤化されてもよく、活性成分のほかに、本明細書において記載される分散剤、湿潤剤、または懸濁剤などの追加の成分を含んでもよい。そのような滅菌製剤は、たとえば水または1,3-ブタンジオールなどの非毒性の許容性の希釈剤または溶媒を用いて調製されてもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノもしくはジグリセリドなどの固定油が含まれるがこれらに限定されるわけではない。有用である他の製剤には、リポソーム調製物においてまたは生体分解性のポリマー系の成分として、活性成分を含む製剤が含まれる。徐放性または埋め込みのための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性の塩などの薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。
【0139】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、患者に対する送達経路によらず、粉砕可能なアンプルに含有されてもよい。
【0140】
本開示を通して、本発明の様々な局面が範囲の形式で表されることがある。範囲形式での記載は、単に便宜および簡略のためになされていると理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されてはならない。したがって、範囲の記載は、可能性がある全ての下位範囲のみならず、その範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。たとえば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等などの下位範囲のみならず、その範囲内の個々のおよび部分的な数値、たとえば1、2、3、4、5、5.5および6を具体的に開示していると考えるべきである。このことは範囲の広さによらず適用される。
【0141】
本明細書を通して考察されるいかなる態様も本発明の任意の方法または組成物に関して実行されてもよく、およびその逆も当てはまると企図される。さらに、本発明の方法を達成するために、本発明の組成物を用いてもよい。
【0142】
当業者は、単なるルーチンの実験を用いて、本明細書において記述される特異的技法、態様、特許請求の範囲、および実施例に対する多数の同等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような同等物は、本発明の範囲内であると見なされ、本発明において添付される特許請求の範囲に含まれる。たとえば、溶媒、触媒、圧力、大気条件、たとえば窒素雰囲気および還元/酸化剤などの、反応時間、反応規模/体積、および実験試薬を含むがこれらに限定されるわけではない反応条件を、当技術分野において認識される代替物によって、および単なるルーチンの実験を用いることによって改変することは、本出願の範囲内であることを理解すべきである。
【0143】
値および範囲が本明細書において提供されている場合は常に、これらの値および範囲によって包含される全ての値および範囲が、本発明の範囲内に包含されることを意味すると理解される。その上、これらの範囲内に入る全ての値、ならびに値の範囲の上限または下限は、同様に本出願によって企図される。
【0144】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに説明する。しかし、それらは、決して、本明細書において記述される本発明の教示または開示の制限ではない。
【実施例】
【0145】
実験実施例
本発明を、以下の実施例を参照してここで説明する。これらの実施例は例示目的で提供されるに過ぎず、本発明は、これらの実施例に制限されてはおらず、むしろ本明細書において提供される教示の結果として明らかになる全ての変化形を包含する。
【0146】
実施例1:食塩水に溶解したイソフルランの調製
イソフルランを以下の方法(「通気」法とも呼ばれる)を用いて食塩水に溶解した。500 ml改変アーレンマイヤーフラスコ(2つの入口および液相に1つのカテーテル)を用いて模擬気化装置を作成した。フラスコに0.9%生理食塩液を部分的に充填し、ストッパーをつけたガラスピペットをイソフルランを注入するために液相の底に挿入した。第二の出口ピペットは閉鎖容器からのガスを排出させた。酸素中の2%イソフルラン溶液を2 L/分でピペットを通して注入して、約10分間の通気後0.9%食塩水を飽和させた。
【0147】
実施例2:人工脳脊髄液に溶解したイソフルラン
ACSFに溶解したイソフルランを以下の方法によって調製した。イソフルランを閉鎖真空容器において、以下の組成(単位 mM)を有する脳脊髄液(pH 7.4)に近似する緩衝塩溶液と10〜50%の体積比で混合した:NaCl、120;KCl、3;NaHCO
3、25;CaCl
2、2.5;MgCl
2、0.5;グルコース、12。合わせた溶液を機械的に3〜5分間撹拌して、使用するまで熱的中性超音波処理器において保持した。
【0148】
実施例3:抽出溶媒を含む麻酔薬組成物の調製
以下の溶液を調製した。イソフルランを得た。NMPをSigma-Aldrich Chemical companyから得た。イソフルラン40 mlをNMP 60 mlに添加することによって、40%(v/v)イソフルラン-NMP溶液を作製した。イソフルラン40 mlをエタノール60 mlに添加することによって、40%(v/v)イソフルラン-エタノール溶液を作製した。
【0149】
イソフルランおよびNMPの様々な濃度を有する食塩水組成物を、上記のNMP-イソフルラン溶液を以下のように食塩水と混合することによって作製した。
【0150】
イソフルラン-エタノールの様々な濃度を有する対照組成物を、上記のイソフルラン-エタノール組成物を以下のように食塩水と混合することによって作製した。
【0151】
組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行ってもよい。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。さらに、イソフルラン-NMP組成物を対照組成物と比較してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で混和可能なままであろうと予想される。
【0152】
実施例4:乳剤を含む麻酔薬組成物の調製
テフロンストッパーを備えた気密性のガラスボトルにおいて、液体イソフルランを30%Intralipid(登録商標)(Sigma-Aldrich)に添加することによって、乳化イソフルラン溶液を室温(20℃)で調製する。次にバイブレーターにおいて、ボトルに50 Hzの振動を30分間与える(たとえば、Zhou et al, 2006, Anesth Analg 102:129- 34; Taheri et al., 1991, Anesth Analg 1991;72:627-34を参照されたい)。
【0153】
【0154】
組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行う。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否か、または脂質相が水相から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で分離しないと予想される。
【0155】
当業者は、イソフルランの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipid(登録商標)または20%(w/v)Intralipid(登録商標)などの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いて作製してもよいことを認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0156】
当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0157】
実施例5:抽出溶媒および乳剤を含む麻酔薬組成物の調製
以下の溶液および乳剤を調製する。イソフルランを得る。NMPをSigma-Aldrich Chemical companyから得る。イソフルラン40 mlをNMP 60 mlに添加することによって40%(v/v)イソフルラン-NMP溶液を作製する(実施例4と同様に)。
【0158】
上記のNMP-イソフルラン溶液を、以下のようにテフロンストッパーを備えた気密性ボトルにおいて、室温(20℃)で30%Intralipid(Sigma-Aldrich)と共に混合することによって、イソフルランおよびNMPの様々な濃度を有する乳剤組成物を調製する。
【0159】
混合後、バイブレーターにおいてボトルに50 Hzの振動を30分間与える。組成物の安定性を決定するために、以下の実験を行う。各試料を、試料5 mlを含有する2つの容器に分割する。試料の1つにキャップをする。他の試料にはキャップをしない。経時的に(1時間、6時間、24時間等)試料を検査して、イソフルランが溶液から分離したか否か、または脂質相が水相から分離したか否かを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を各時点で決定してもよい。キャップをしていない試料を、キャップをした試料と比較して、溶液の安定性を決定してもよい。麻酔薬組成物は全ての濃度で分離しないであろうと予想される。
【0160】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipid(登録商標)または20%(w/v)Intralipid(登録商標)などの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いて、イソフルランの乳剤を作製してもよいことを認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0161】
当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0162】
実施例6:イソフルラン製剤の安定性
以下の実施例において、記載の組成物におけるイソフルランの安定性を2つの方法で決定した。第一に、組成物を、肉眼レベルで相分離の有無に関して調べた。第二に組成物のイソフルラン含有量を、キャップをせずに放置した場合に組成物に残っているイソフルランの重量を経時的に測定することによって決定した。簡単に説明すると、ガラスバイアルに組成物ビヒクル5〜10 mlを満たして重量を測定した。それらの1つにビヒクルのみ(すなわち、イソフルランなし)を入れて、対照とした。他のバイアルには、様々な量のイソフルランを入れた。それらをフードの中でキャップをせずに放置した。経時的にバイアルの重量を測定して、イソフルランが組成物に留まっているかまたは蒸発してしまったか否かを調べた。ビヒクル対照において経時的に蒸発した量を、イソフルラン含有組成物において蒸発した量から差し引いた。
【0163】
イソフルランの純粋型は、揮発性麻酔薬である。イソフルランの揮発性を評価するために、2つのバイアルに純粋型イソフルランの表記の量を入れた。バイアルを化学物質換気フードの中に入れてキャップをせずに放置した。バイアルの重量を表記の時間に測定して、蒸発したイソフルランの量を決定した。以下の表に示されるように、イソフルラン0.7893 gが3時間以内に蒸発したが、イソフルラン3.4825 gが完全に蒸発するにはおよそ8時間を要した。イソフルランのこれらの量は、以下の実施例においてイソフルラン組成物を調製するために用いられたイソフルランの量と類似である。
【0164】
実施例7:NMPによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を、表記の濃度でNMP(Sigma-Aldrich)と混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-NMP溶液を調製した。溶液中のNMPの量を低減させるために、食塩水(0.9%NaCl)を混合物に添加した。
【0165】
上記の表から示されるように。10%および40%のイソフルランをNMPと混合すると、得られた溶液は澄明であるように見えた。その上、NMPを添加すると、実施例6と比較してイソフルランの揮発性は低減された。
【0166】
実施例8:Intralipidにおける乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を、20%または30%Intralipid(Baxter)と表記の濃度で混合する。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理して、均一なイソフルラン-Intralipid乳剤を調製した。
【0167】
表記の量のイソフルランを有するIntralipid乳剤は、均一で均質であるように見えた。その上、Intralipidは、実施例6と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0168】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipidなどの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いてイソフルランの乳剤を作製してもよいと認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0169】
実施例9:IntralipidおよびNMPにおける乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をNMP(Sigma-Aldrich)と表記の濃度で混合する。NMP-イソフルラン溶液を20%または30%Intralipid(Baxter)に添加した。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理して、均一なイソフルラン-NMP-Intralipid乳剤を調製した。
【0170】
NMPの存在下で表記の量のイソフルランを有するIntralipid乳剤は、均一で一様であるように見えた。NMPの存在下では、Intralipidは、実施例6と比較してNMPが存在しない場合より多くのイソフルランを保持することが可能であった。加えて、IntralipidとNMPの組み合わせは、実施例6と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0171】
当業者は、本明細書において記載される方法の変化形を用いて、10%(w/v)Intralipidなどの他の乳剤調製物が含まれる他の脂質を用いてイソフルランの乳剤を作製してもよいと認識するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の産生にとって有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。当業者はまた、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルラン、およびハロタンの乳剤を、本明細書において記載される方法の変化形を用いて産生してもよいことを認識するであろう。
【0172】
実施例10:ポリソルベート80(Tween 80)に基づく乳化イソフルランの調製
イソフルランを全量10 mlでTween 80(3%v/v)に添加した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、30分間超音波処理して、均一なイソフルラン乳剤を調製した。いくつかの場合において、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)を製剤に含めた。第一にDMPC(0.3%または0.6%)をTween 80(3%v/v)に溶解した後、イソフルランをTween-DMPC混合物に添加して、その後30分間超音波処理を行った。
【0173】
Tween 80に基づく乳剤は均一であるように思われた。DMPCを添加すると、同じ量のTween 80が、DMPCなしの場合より多くのイソフルランを保持することができた。その上、イソフルランをTween 80またはTween 80 DMPCと組み合わせると、実施例6と比較して、イソフルランの揮発性が低減した。
【0174】
実施例11:プロピレングリコールによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をプロピレングリコール(Sigma-Aldrich)と共に表記の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-プロピレングリコール溶液を調製した。
【0175】
8%、10%、および30%イソフルランをプロピレングリコールと混合すると、得られた溶液は澄明であるように思われた。その上、プロピレングリコールは、実施例6と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0176】
実施例12:Cremophor ELに基づく乳化イソフルランの調製
イソフルランをCremophor EL(10%v/v)の水溶液に全量10 mlとなるように加えた。混合物を激しくボルテックス撹拌して30分間超音波処理し、均一なイソフルラン乳剤を調製した。
【0177】
イソフルランの表記の量を有するCremophor ELに基づく乳剤は、乳状に見えた。その上、Cremophor ELに基づく乳剤は、実施例6と比較してイソフルランの揮発性を低減させた。
【0178】
実施例13:ジメチルスルホキシド(DMSO)によるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液を表記の濃度でDMSO(BDH)と混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-DMSO溶液を調製した。DMSOを含有するイソフルラン溶液は澄明に見えた。
【0179】
実施例14:パーフルオロオクチルブロミドにおけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋なイソフルランUSP(Forane)液をパーフルオロオクチルブロミド(Acros Organics)と表記の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス撹拌して、均一なイソフルラン-パーフルオロオクチルブロミド溶液を調製した。パーフルオロオクチルブロミドを含有するイソフルラン溶液は澄明に見えた。
【0180】
実施例15:PEG 400におけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてPEG-400(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性を、Exetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0181】
実施例16:PEG 300におけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてPEG-300(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性をExetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0182】
実施例17:ジエチレングリコールモノエチルエーテルにおけるイソフルラン溶液(v/v)の調製
イソフルラン(2 ml)をバイアルにおいてジエチレングリコールモノエチルエーテル(2 ml)と混合して、内容物を振とうして澄明な溶液を得た。得られた溶液の揮発性を、Exetech Heavy Duty Differential Pressure Manometer Model 407910を用いて純粋なイソフルランの揮発性と比較した。約39℃まで加熱すると、蒸気圧の少なくとも3倍低減が観察された。
【0183】
本明細書において引用された各々およびあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0184】
本明細書において開示および請求される組成物および方法は全て、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製および実行されうる。本発明の組成物および方法を、好ましい態様に関して説明してきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法、ならびに方法の段階または一連の段階に変更を加えてもよいことは、当業者に明らかであろう。より具体的に、化学的および生理的の両方で関連するある物質を本明細書において記載される物質の代わりに用いてもよく、それでも同じまたは類似の結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかであるそのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲、および概念に含まれると思われる。
【0185】
本発明は、特異的態様を参照して開示してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変化形を考案しうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価の変化形を全て含めると解釈されると意図される。