(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単位セルにおける各サブセルの面積比と前記突状部材の形状は、所定の方位角から見た所定のサブセルの光について、突状部材による遮光の量が少なくなるように、形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の表示支援媒体。
前記単位セルにおける各サブセルの面積比と前記突状部材の形状は、所定の方向以外の方向または所定のサブセル以外のサブセルからの光の量が少なくなるように、形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の表示支援媒体。
請求項2に記載の表示支援媒体が貼付される表示面に前記所定数のコンテンツを表示するための、各サブセルに対応する前記表示面の各位置の色値を算出する処理装置であって、
前記所定数の方位角に対応する各コンテンツの各単位セルの色値を記憶する記憶装置と、
前記所定の仰角かつ方位角から、前記表示支援媒体が貼付された表示面を観察した際に所定の単位セルにおいて観察可能な色値と、前記所定の方位角に対応するコンテンツの、前記単位セルに対応する位置の色値との差異が最小になるように、前記単位セルの各サブセルに対応する前記表示面の各位置に付与する色値を算出する色値算出部
を備えることを特徴とする処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0019】
(表示媒体)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る表示媒体1を説明する。本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、所定の仰角かつ方位角から、所定数の方位角に対応する所定数のコンテンツを表示可能に形成される。表示媒体1は、所定の仰角から所定の方位角で観察することでコンテンツを表示することが可能で、また方位角を変更することにより、異なるコンテンツを表示することが可能である。表示媒体1は、所定の方位角毎に、複数のコンテンツを表示することが可能である。また観察者がコンテンツを観察する際の仰角は、コンテンツ毎に異なっていても良い。本発明の実施の形態においてコンテンツは、静止画である。
【0020】
図1(a)に示すように表示媒体1は、平面部材2の平面に着色部4が設けられる。平面部材2は、光を反射する平面を有する。平面部材2は、鏡面反射したり、光を拡散したりすることが可能であれば良い。また平面部材2は、視認性の向上の観点から、鏡面成分が高い金属により形成されることが好ましい。着色部4は、インクで着色される部分である。
【0021】
図1(a)に示すように、平面部材2の平面を、複数の単位セルCに区分する。さらに、
図1(b)に示すように、複数の単位セルCそれぞれを、所定数の方位角に対応する所定数のサブセルBに区分する。
【0022】
ここで、単位セルCおよびサブセルBは、仮想的な区分であっても良い。例えば、隣り合う2つのサブセルBに同じ色値が与えられる場合、または、突状部材3の配置によっては、サブセルBまたは単位セルCの境界が可視化されない可能性がある。
【0023】
なお、
図1に示す例において平面部材2は、直方体である場合を説明するが、平面を有し、この平面に着色部4が設けられれば良い。また単位セルCおよびサブセルBはそれぞれ矩形である場合を説明するが、単位セルCおよびサブセルBの形状は問わない。
【0024】
一つの単位セルCにおけるサブセルBの数は、表示媒体1で表示可能なコンテンツの数に対応する。例えば、
図1に示す例では、1つの単位セルCが3つのサブセルBに区分されるので、少なくとも3つのコンテンツを表示することが可能である。なお、後述の第3の変形例に示すように、3つのコンテンツの内容によっては、4つ以上のコンテンツを表示することも可能である。着色部4の、所定の方位角に対応する各サブセルBには、この所定の方位角に対応するコンテンツを構成する、各サブセルBの位置に対応する各部分の色が与えられる。
【0025】
図1(b)に示すように、各サブセルBには、板状の突状部材3が、平面部材2に垂直に配置される。
図1(b)に示す例では、各サブセルBに2つの突状部材3が設けられる場合を説明しているが、各サブセルBに1つの突状部材3を設けても良いし、複数の突状部材3を設けても良い。
【0026】
突状部材3は、所定数の方位角のそれぞれに対して、平面部材2上で平行な、光を遮蔽する面を有する。突状部材3は、光を遮蔽する不透明な部材で形成されるのが良いが、観察者の視認性に影響を及ぼさない範囲で一部の光が透過するように形成されても良い。所定の方位角に対応する各サブセルBに、この所定の方位角に平行する面を有する突状部材3が形成される。
【0027】
1つのサブセルBに複数の突状部材3を設ける場合、各突状部材3は互いに平行に配設される。突状部材3は、その突状部材3が設けられるサブセルB毎に異なる方向に配設され、異なるサブセルBに配設される各突状部材3は、互いに平行にならないように配設される。
【0028】
本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、所定の仰角において観察される。
図1(b)に示すように、平面部材2の平面上に、板状の突状部材3を垂直に設けるので、所定の仰角から表示媒体1を観察した際に、突状部材3によって遮蔽されない着色部4が確認される。
【0029】
なお、単位セルCにおける各サブセルBの面積比と突状部材3の形状は、(1)所定の方位角から見た所定のサブセルBの光について、突状部材3による遮光の量と、(2)所定の方向以外の方向または所定のサブセルB以外のサブセルBからの光の量と、(3)各サブセルBの反射輝度の標準偏差について、(1)ないし(3)の少なくとも1つ以上が少なくなるように、形成される。各サブセルBおよび突状部材3の形状を特定する方法は、後に詳述する。
【0030】
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る表示媒体1を観察する仰角および方位各について説明する。
図2(a)は、表示媒体1に、コンテンツI0、I1およびI2を表示する場合を説明する。
【0031】
表示媒体1上の座標xを、所定の仰角ω0かつ方位角φ0で観察した場合、表示媒体1上の座標xに対応するコンテンツI0の座標の色値を確認できる。同様に、表示媒体1上の座標xを、所定の仰角ω1かつ方位角φ1で観察した場合、表示媒体1上の座標xに対応するコンテンツI1の座標の色値を確認できる。さらに、表示媒体1上の座標xを、所定の仰角ω2かつ方位角φ2で観察した場合、表示媒体1上の座標xに対応するコンテンツI2の座標の色値を確認できる。
【0032】
図2(a)に示す表示媒体1の単位セルCは、
図2(b)のように形成される。単位セルCは、サブセルB0、サブセルB1およびサブセルB2を備える。サブセルB0に、方位角φ0の方向に平行な、3つの突状部材L0が配置される。サブセルB1に、方位角φ1の方向に平行な、2つの突状部材L1が配置される。サブセルB2に、方位角φ2の方向に平行な、3つの突状部材L2が配置される。
【0033】
突状部材3は、所定の高さを有するので、ある仰角から表示媒体1を観察した際に、突状部材3によって遮蔽される部分と遮蔽されない部分が生じる。観察者は、ある仰角から表示媒体1を観察した際に、突状部材3によって遮蔽されない部分を認識することになる。
【0034】
図3を参照して、突状部材3が遮光する範囲を説明する。
図3において、観察者は、仰角ωかつ方位角ψで観察しているとする。また突状部材3の高さはhで表す。
【0035】
まず、入射光が突状部材3により遮蔽される場合を説明する。
図3に示すように、所定の仰角ωで入射した光のうち、突状部材3の上面と、光の入射方向の光源に対向する面とが形成する辺S1より高い位置に入射した光D1およびD2が、平面部材2の平面に当たり、反射光を形成する。一方、辺S1より低い位置に入射した光は、突状部材3により遮光される。この結果、突状部材3から、光の入射方向の光源に対向する範囲R1の色は、突状部材3により遮蔽される。範囲R1は、平面部材2の平面上において、突状部材3の設置位置から、光の入射方向の光源と対向する方向に、方位角ψの角度でh/tan(ω)の長さの範囲である。
【0036】
次に、入射光が、平面部材2の平面に反射した反射光が突状部材3により遮蔽される場合を説明する。
図3に示すように、所定の仰角ωで反射した光のうち、突状部材3の上面と、光の入射方向の光源の面とが形成する辺S2より高い位置に入射した光D3およびD4が、観察者により観察される。一方、辺S2より低い位置に反射した光は、突状部材3により遮光される。この結果、突状部材3から、光の入射方向の光源方向の範囲R2の色は、突状部材3により遮蔽される。範囲R2は、平面部材2の平面上において、突状部材3の設置位置から、光の入射方向の光源方向に、方位角ψの角度でh/tan(ω)の長さの範囲である。
【0037】
ここで
図4に示すように、サブセルB0およびB1を所定の仰角かつ方位角で観察した場合を説明する。
図4(a)および
図4(b)は、同じ構成を有するサブセルを、それぞれ異なる方位角(視点)から観察した図である。
【0038】
図4(a)に示すように、観察者は、視点方向と正反射の関係(方位角が180度異なり仰角が同じ)にある光源からの光であって、サブセルB0に入射する光M1は、突状部材に遮られることなくサブセルB0の平面に届き、サブセルB0の平面で反射して反射光M1’が生成される。反射光M1’は、サブセルB0上で、サブセルB0の突状部材と平行である。換言すると、反射光M11’をサブセルB0に投影した線と、サブセルB0の突状部材は、互いに平行である。従って、サブセルB0の突状部材によって遮蔽されず、観察者は、反射光M1’を確認することができる。この反射光M1’は、サブセルB0に着色された色を有する。
【0039】
サブセルB1の突状部材は、サブセルB0の突状部材と平行にならないように、形成される。従って、サブセルB1に入射する光M2は、サブセルB1の突状部材に遮られ、光M2は、サブセルB1の平面に届かないので、観察者は、光M2の反射光を確認できない。光M3は、突状部材に遮られることなくサブセルB1の平面に届き反射光M3’が生成されるが、反射光M3’は、サブセルB1の突状部材に遮られ、観察者は、反射光M3’を確認できない。
【0040】
図4(b)に示すように、観察者は、視点方向と正反射の関係(方位角が180度異なり仰角が同じ)にある光源からの光であって、サブセルB0に入射する光M4は、サブセルB1の突状部材に遮られ、光M2は、サブセルB0の平面に届かないので、観察者は、光M4の反射光を確認できない。光M5は、突状部材に遮られることなくサブセルB0の平面に届き反射光M5’が生成されるが、反射光M5’は、サブセルB0の突状部材に遮られ、観察者は、反射光M5’を確認できない。
【0041】
一方サブセルB1に入射する光M6は、突状部材に遮られることなくサブセルB1の平面に届き、サブセルB1の平面で反射して、反射光M6’が生成される。反射光M1’は、サブセルB1上で、サブセルB1の突状部材と平行である。換言すると、反射光M11’をサブセルB1に投影した線と、サブセルB1の突状部材は、互いに平行である。従って、サブセルB1の突状部材によって遮蔽されず、観察者は、反射光M6’を確認することができる。この反射光M6’は、サブセルB1に着色された色を有する。
【0042】
図4(a)および(b)に示すサブセルB0およびB1を有する表示媒体1を観察すると、
図4(a)に示した仰角かつ方位角からは、サブセルB0の色を有する反射光M1’が観察される。また
図4(b)に示した仰角かつ方位角からは、サブセルB1の色を有する反射光M6’が観察される。このように、表示媒体1を、それぞれ異なる方位角から観察した場合、特定のサブセルの色のみを観察者に認識させることが可能になる。また他の単位セルも同様に、各単位セルCにおいて、各サブセルBに対応する方位角に平面部材2上で平行な面を有するように、突状部材3を構成する。
【0043】
これにより、観察者は、表示媒体1を所定の方位角から観察した場合、例えば、各単位セルCのサブセルB0の色を観察することができるので、各単位セルCのサブセルB0により構成されるコンテンツを観察することができる。また異なる方位角から観察した場合、例えば、各単位セルCのサブセルB1の色を観察することができるので、各単位セルCのサブセルB1により構成されるコンテンツを観察することができる。このように、表示媒体1は、観察者が表示媒体1を観察する方位角に応じて複数のコンテンツを表示することが可能である。
【0044】
図5を参照して、4つ以上のコンテンツを表示可能な単位セルCを説明する。
図5(a)に示す単位セルCは、第1のサブセルB1、第2のサブセルB2、第3のサブセルB3および第4のサブセルB4を備える。各サブセルには、単位セルに対応する各コンテンツの位置の色が着色される。
【0045】
第1のサブセルB1において、第1の方位角φ1に平行な2つの第1の突状部材L1が、互いに平行に設けられる。同様に、第2のサブセルB2において、第2の方位角φ2に平行な2つの第2の突状部材L2が、互いに平行に設けられ、第3のサブセルB3において、第3の方位角φ3に平行な2つの第3の突状部材L3が、互いに平行に設けられ、第4のサブセルB4において、第4の方位角φ4に平行な2つの第4の突状部材L4が、互いに平行に設けられる。第1の突状部材L1、第2の突状部材L2、第3の突状部材L3および第4の突状部材L4は、互いに平行にならないように配設される。
【0046】
本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、所定の仰角かつ複数の方位角から、各方位角に対応したコンテンツを観察できるように形成される。具体的には、第1の方位角φ1から表示媒体1を観察した際、第1のサブセルB1の着色を確認することが可能で、他のサブセルの着色の多くは、第2の突状部材L2、第3の突状部材L3および第4の突状部材L4により遮蔽される。同様に、第2の方位角φ2から表示媒体1を観察した際、第2のサブセルB2の着色を確認することが可能で、第3の方位角φ3から表示媒体1を観察した際、第3のサブセルB3の着色を確認することが可能で、第4の方位角φ4から表示媒体1を観察した際、第4のサブセルB4の着色を確認することが可能である。
【0047】
図5(b)に示すように、
図5(a)で説明した観察方向の方位角は、第1の方位角φ1を0度とした場合、第2の方位角φ2、第3の方位角φ3および第4の方位角φ4は、それぞれ、反時計周りに、90度、45度および135度になるように形成されている。
図5(a)に示すサブセルBの構成の場合、所定の仰角かつ、0度、45度、90度および135度の各方位角から表示媒体1を観察すると、4種類のコンテンツを確認することが可能である。
【0048】
具体的には、
図6に示すように、各方位角について、4つのコンテンツを観察できる。方位角0度の場合、各単位セルCの第1のサブセルB1の着色が観察され、
図6(a)に示す画像(ヨハネス・フェルメールによる「真珠の耳飾りの少女」)が確認できる。方位角90度の場合、各単位セルCの第2のサブセルB2の着色が観察され、
図6(b)に示す画像(レオナルド・ダ・ ヴィンチによる「モナ・リザ」)が確認できる。方位角45度の場合、各単位セルCの第3のサブセルB3の着色が観察され、
図6(c)に示す画像(エドヴァルド・ムンクによる「叫び」)が確認できる。方位角135度の場合、各単位セルCの第4のサブセルB4の着色が観察され、
図6(d)に示す画像(ヨハネス・フェルメールによる「取り持ち女」)が確認できる。なお
図6に示す例では、仰角が30度の際に最適にコンテンツを確認できるように、突状部材3の高さ、間隔等が最適化されている。
【0049】
このように、表示媒体1を複数の単位セルCに区分し、単位セルCを複数のサブセルBに区分した上で、各サブセルBに互いに平行ではない突状部材3を形成する。これにより本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、所定の仰角かつ方位角から、所定数の方位角に対応する所定数のコンテンツを表示することができる。
【0050】
本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、任意の大きさに適用することが可能である。例えば、表示媒体1がA4サイズや数センチ四方等であって、比較的小さい場合、表示媒体1は、平面部材2に、着色部4の着色と突状部材3をプリントすることで形成することができる。例えばUV(紫外線:ultraviolet)プリンタを用いることにより、着色部4に着色するとともに、UV樹脂を硬化して、突状部材3の微細な凹凸形状を形成することができる。一方、表示媒体1が看板等であって、比較的大きい場合、表示媒体1は、着色された平面部材2と、平面部材2上に突状部材3となる板等を設けることで、形成されても良い。
【0051】
また、表示媒体1が表示可能なコンテンツの数、単位セルCおよびサブセルBの大きさ、突状部材3の形状、1つのサブセルBに設けられる突状部材の数等は、表示媒体1の大きさや求められる解像度等によって適宜調整される。例えば、表示媒体1の大きさがA4サイズ程度の場合、単位セルCの大きさは、1mm程度であり、1つのサブセルBには、3〜5個程度の突状部材3が形成される。
【0052】
(処理装置)
図7を参照して、本発明の実施の形態に係る表示媒体1を形成するために用いられる処理装置100を説明する。処理装置100は、記憶装置110、処理制御装置120および入出力インタフェース130を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが所定の処理を実行するための処理プログラムを実行することにより、処理装置100は、
図7に示す機能を実現する。
【0053】
記憶装置110は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク等であって、処理制御装置120が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶する。処理制御装置120は、CPU(Central Processing Unit)であって、記憶装置110に記憶されたデータを読み書きしたり、入出力インタフェース130とデータを入出力したりして、処理装置100における処理を実行する。入出力インタフェース130は、処理制御装置120と外部装置(図示せず)とを接続するインタフェースである。本発明の実施の形態において入出力インタフェース130は、表示媒体1を製造する装置、または表示媒体1を製造する装置が読み取るメモリ等である。
【0054】
記憶装置110は、条件データ111、形状データ112、入力色値データ113および出力色値データ114を記憶する。
【0055】
条件データ111は、処理制御装置120の処理に必要な条件のデータである。条件データ111は、具体的には、表示媒体1に表示させたいコンテンツの数、仰角および方位角を含む。条件データ111に、突状部材3の色が含まれても良い。
【0056】
形状データ112は、表示媒体1に形成される単位セルC、サブセルBおよび突状部材3の形状に関するデータである。形状データ112は、例えば、表示媒体1の単位セルCにおける各サブセルBの面積比、突状部材3の高さ、間隔および位置等である。形状データ112は、形状特定部121によって生成される。
【0057】
入力色値データ113は、表示媒体1に表示させるコンテンツの色値のデータである。入力色値データ113は、所定数の方位角に対応する各コンテンツの各単位セルCの色値を記憶する。入力色値データ113は、表示させるコンテンツと、そのコンテンツを観察可能な方位角とを対応づけて保持する。入力色値データ113は、さらに、表示媒体1上のサブセルの位置と、そのサブセルに与える色値を対応づけて保持する。
【0058】
出力色値データ114は、表示媒体1上の位置と、その位置に着色する色値とを対応づけるデータである。出力色値データ114は、色値算出部123によって生成される。
【0059】
入力色値データ113および出力色値データ114の色値は、表示媒体1に与える色を特定可能な形式を有する。色値は、例えば、カラーコードで表現されても良いし、RGBの各値で表現されても良い。
【0060】
処理制御装置120は、形状特定部121、形状出力部122、色値算出部123および色値出力部124を備える。
【0061】
形状特定部121は、条件データ111に規定される条件に基づいて、表示媒体1の形状を特定し、形状データ112を生成する。形状特定部121は、所定の方位角から見た所定のサブセルBの光について、突状部材3による遮光の量と、所定の方向以外の方向または所定のサブセルB以外のサブセルBからの光の量と、各サブセルBの反射輝度の標準偏差が、少なくなるように、単位セルCにおける各サブセルBの面積比と突状部材3の形状を特定する。突状部材3の形状は、具体的には、突状部材3の高さ、間隔および位置等である。
【0062】
形状出力部122は、形状特定部121が生成した形状データ112を、入出力インタフェース130を介して出力する。
【0063】
色値算出部123は、形状特定部121が出力した形状データ112と入力色値データ113から、出力色値データ114を生成する。色値算出部123は、所定の仰角かつ方位角から、表示媒体1を観察した際に所定の単位セルC(サブセルB)において観察可能な色値と、入力色値データ113が記憶する、単位セルCに対応する位置の色値との差異が最小になるように、単位セルCの各サブセルBに付与する色値を算出する。
【0064】
例えばUVプリンタで表示媒体1を形成する場合、処理装置100は、形状データ112および出力色値データ114を、このUVプリンタに出力する。
【0065】
なお、表示媒体1を生成する手順は適宜設定される。例えばUVプリンタでインクを吹き付けて形成する場合、噴射部の走行方向に従って、インクまたはUV樹脂を噴射する。具体的には、平面部材2のサブセルBの位置に、出力色値データ114で定義される色のインクを噴射し、突状部材3の位置に、UV樹脂を噴射する。或いは、平面部材2のサブセルの位置に、出力色値データ114で定義される色のインクを噴射した後、突状部材3を形成する。
【0066】
(形状特定部の処理)
次に、形状特定部121が、形状データ112を生成する処理を説明する。本発明の実施の形態において、平面部材2は、鏡面成分が高い金属により形成されるなどにより、非常に強い鏡面反射を引き起こす。従って、視点方向と光源方向は正反射の関係とすることができる。そのため、入射方向と出射方向の関係は、一意に求めることができる。
【0067】
ここで、ある方向ω0に対する所望の反射関数fは、式(1)の目的関数で定義される。
【0069】
ここで、色値は、RGBを表す値で、8ビットの場合、256階調の値である。より具体的には、RGBの個々の値は、[0,1]で、1/255刻みの値が設定される。
【0070】
次に、表示媒体1でN個のコンテンツを表示する場合、N個のコンテンツのうちのk番目のコンテンツを確認するための出射方向と、位置xの色値を、式(2)で定義する。
【0072】
所定方向に対する反射関数は、所定方向に対する各コンテンツの反射の関数の総和で表現でき、式(3)で定義する。
【0074】
所定方向に対する反射関数は、方向に対する反射強度を示す関数と、色を示す関数に分解することができるので、式(4)で定義する。方向に対する反射強度を示す関数は、突状部材3による光の制限によって導かれる関数である。色を示す関数は、色の調合によって導かれる関数である。また、どちらも値域は[0,1]である。
【0076】
図4等に示すように、所定の方位角から観察した際に、所定のサブセルの色のみが観察され、それ以外のサブセルの色が観察されない場合が理想的であるが、難しい場合がある。そこで、方向に対する反射強度を示す関数は、なるべく多くの光を反射し、かつ、指定方向の色を優先的に見せるようにし、さらにどの方向からでも同じような輝度に見せることができるように算出されるのが好ましい。そこで、式(5)の評価関数を定義する。
【0078】
指定方向に対応するサブセルの遮光の量は、式(6)で定義される。指定方向に対応するサブセルの遮光の量が低い場合、指定方向に対するサブセルの光の量が多い、具体的には指定方向の色が優先的に見えていることを示す。
【0080】
指定方向に対応するサブセル以外のサブセルの光の量は、式(7)で定義される。指定方向に対応するサブセル以外のサブセルの光の量が少ない場合、指定方向に対するサブセルの光の量を邪魔する光の量が少ないことを示す。
【0082】
例えば
図8(a)に示すように、第1のサブセルB1と第2のサブセルB2において、第1の突状部材L1および第2の突状部材L2がそれぞれ形成されるとする。このとき、
図8(b)に示すように所定の方位角ωから観察した場合、第1のサブセルB1で反射した色を観察できる。しかしながら、第1のサブセルB1の第1の突状部材L1等により、光が遮蔽される場合がある。また、第2のサブセルB2において、第2の突状部材L2により光が遮蔽される遮蔽部B2aと、遮蔽されない露出部B2bが形成される。そこで、所望のサブセルの光が観察されやすいように、形状特定部121は、形状データ112を生成する必要がある。
【0083】
観察者が、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の光を観察しやすいようにするために、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の光の量が多くなり、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の遮光の量が少なくなるのが良い。同様に、第2のサブセルB2の指定方向からの第1のサブセルB1の光の量が多くなり、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の遮光の量が少なくなるのが良い。
【0084】
そこで、式(6)は、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の遮光の量と、第2のサブセルB2の指定方向からの第2のサブセルB2の遮光の量の合計を算出する。
【0085】
また観察者が、第1のサブセルB1の指定方向からの第1のサブセルB1の光を観察しやすいようにするために、第1のサブセルB1の指定方向から見たときに、第1のサブセル以外のサブセルである第2のサブセルB2の光の量が少なくなるのが良い。同様に、第2のサブセルB2の指定方向から見たときに、第1のサブセルB1の光の量が少なくなるのが良い。
【0086】
そこで、式(7)は、第1のサブセルB1の指定方向から見たときの第2のサブセルB2からの光の量と、第2のサブセルB2の指定方向から見たときの第1のサブセルB1からの光の量の合計を算出する。
【0087】
また、全てのサブセルの反射輝度の標準偏差は、式(8)で定義される。式(8)は、全てのサブセルの反射輝度の標準偏差が低い場合、表示媒体1全体として、同様の輝度で表示されることにより見やすくなることを示す。
【0089】
式(5)は、式(6)ないし式(8)で特定される各要素に、所定の重みをかけた値の合計が最小になるように、ベクトルGを計算する。所定の重みは、予めユーザ等によって与えられても良い。ベクトルGは、サブセルの1単位セル内の面積の割合、平行する突状部材の高さ、間隔、突状部材の位置を変数としたベクトルである。換言すると、式(5)は、所望の方向かつ所望のサブセルの光の遮光を抑え、所望の方向以外の方向または所望のサブセル以外のサブセルの光の量を抑え、かつ全てのサブセルの反射輝度の差が少なくなる、最適なサブセルBの面積比と、突状部材3の形状を算出する。
【0090】
なお上記計算式からわかるように、単位セルCにおける各サブセルBの大きさは、均一ではなく、適宜調節される。また本発明の実施の形態では、式(6)ないし式(8)によって、ベクトルGを算出する場合を説明したが、式(6)ないし式(8)のいずれかのみでも良いし、他の算出式を用いても良い。
【0091】
本発明の実施の形態において、(1)所定の方位角から見た所定のサブセルの光について、突状部材による遮光の量、(2)所定の方向以外の方向または所定のサブセル以外のサブセルからの光の量、および(3)各サブセルの反射輝度の標準偏差の(1)ないし(3)の各要素について、それぞれ所定の重みをかけた合計値が少なくなるように、ベクトルGを算出したが、これに限られない。例えば、上記(1)、(2)および(3)のうちのいずれか一つまたは二つの要素を含む評価関数に基づいて、その評価関数の値が少なくなるようにベクトルGを算出しても良い。また評価関数において、各要素について所定の重みをかけた評価関数に基づいて、その評価関数の値が少なくなるようにベクトルGを算出しても良い。
【0092】
(色値算出部の処理)
次に、色値算出部123が、各サブセルの色を特定する処理を説明する。色値算出部123は、所定数のコンテンツのうちの一つのコンテンツを単位セルの位置に対応して区分したサブセルBを構成する色になるように、平面部材2上の所定の方位角に対応する各サブセルBの色を決定する。ここでサブセルBの色は、所定の方位角から認識可能な周辺のサブセルの色も考慮して補正される。
【0093】
具体的には、各サブセルの色は、式(2)により求められる。ここで、突状部材3は、黒色であるとする。式(2)は、式(9)のように展開することができる。式(9)は、所定の方位角から、観察可能なサブセルであって、この方位角に対応しないサブセルの色も考慮して、各サブセルの色を決定している。これにより、観察者が、高品質なコンテンツを観察できることが可能になる。
【0095】
表示媒体1を観察した際に、所望の輝度が出ない可能性もあるため、入力画像の色値に係数αをかけ、調整することが好ましい。係数αを用いることで、式(9)は、式(10)のように展開され、式(10)により各サブセルの色が特定される。
【0097】
本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、方位角によって異なるコンテンツを示したい場合に好適である。表示媒体1は、例えば、表示媒体1を異なる方向から観察する複数の観察者に対して、各観察者の位置に応じた情報を表示することが可能である。
【0098】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態は、平面部材2上に着色部4と突状部材3を設けて表示媒体1を形成する場合を説明したが、本発明の実施の形態で説明した本願発明の原理を、他の態様で実現することが可能である。
【0099】
第1の変形例は、
図9に示すように、シート形状を有し、光を透過するシート状部材に、本発明の実施の形態で説明した突状部材3を形成した表示支援媒体11を、光を反射する一般的な表示装置12の表示面13に、貼付する。表示装置12は、表示支援媒体11で形成される単位セルC、サブセルBおよび突状部材3の形状にあわせて、各サブセルの色を決定した画像を表示する。換言すると表示装置12は、本発明の実施の形態に係る着色部4を電気的に実現する。
【0100】
これにより、本発明の実施の形態と同様に、各方位角からそれぞれ異なるコンテンツを観察することができる。表示支援媒体11に用いられるシート状部材は、光を透過する透明な部材で形成されるのが良いが、観察者の視認性に影響を及ぼさない範囲で一部の光が透過するように形成されても良い。ここで表示装置12は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等であって、明るいバックライトを用いたり、明るい発光素子を用いたりするディスプレイであることが好ましい。
【0101】
表示装置12は、任意の画像を表示することが可能であるので、任意の条件に応じて適宜画像を表示することが可能になる。また表示装置12が連続的に画像を変更することにより、各方位角からそれぞれ異なる動画コンテンツを観察することができる。
【0102】
また表示装置12が表示する画像は、表示支援媒体11に形成されるサブセルに対応するので、表示支援媒体11が表示面13に適切に貼付されるように、適切に位置合わせがなされる。
【0103】
第1の変形例において、表示支援媒体11を適切に生成し、表示装置12に適切な画像を表示するために、
図10に示す処理装置100aが用いられる。第1の変形例に係る処理装置100aは、
図7を参照して説明した処理装置100と同様であるが、各データの出力先が異なる。形状出力部122は、入出力インタフェース130を介して、形状データ112を、表示支援媒体11を製造する装置、または表示支援媒体11を製造する装置が読み取るメモリ等に出力する。また色値出力部124は、出力色値データ114を、表示支援媒体11が貼付される表示装置12、または表示装置12が読み取り可能なメモリ等に出力する。
【0104】
第1の変形例に係る表示支援媒体11は、方位角によって任意の異なる画像を表示したい場合に好適である。表示支援媒体11は、例えば、表示装置12に貼付された表示支援媒体11を異なる方向から観察する複数の観察者に対して、各観察者の位置とその他の条件に応じた情報を表示することが可能である。
【0105】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態において、突状部材3は、
図11(a)に示すように、板状部材である場合を説明したが、これに限られない。例えば
図11(b)に示すように、板状部材を連結したU字形状で形成される。このとき板状部材を連結する部分は、単位セルCまたはサブセルBの境界に配設される。
【0106】
(第3の変形例)
本発明の実施の形態において、所定の仰角かつ方位角から所定のコンテンツを観察可能である場合を説明したが、第3の変形例では、所定の仰角とは異なる仰角で観察することで、所定の仰角で観察可能な所定数のコンテンツとは別のコンテンツを表示する場合を説明する。
【0107】
図12(a)および(b)は、所定の仰角かつ方位角から見える各コンテンツの一例である。所定の仰角かつ方位角から、
図12(a)の画像I11と、
図12(b)の画像I12をそれぞれ観察できる場合、仰角を90度にして(表示媒体1を真上から)観察した場合、
図12(c)の画像I13を確認することができる。
【0108】
このように、所定の仰角とは異なる仰角で観察することにより、新たなコンテンツを表示できるように、各サブセルに着色することも可能である。
【0109】
(第4の変形例)
本発明の実施の形態で説明した式(1)ないし(10)において、突状部材3の色は、光を遮蔽しやすい黒を想定しているが、突状部材3の色を任意に設定することも可能である。
【0110】
例えば、
図3において、突状部材3が黒以外で、一部の波長の光を遮蔽し一部の波長の光を透過する場合、突状部材3を透過する光が入射する範囲R1およびR2で反射する光は、平面部材2の着色部4の色と、突状部材3の色を混ぜた色となる。例えば、観察者は、範囲R1およびR2の部分について、突状部材3の色のフィルタを通した色として、表示媒体1が表示するコンテンツを認識する。
【0111】
このように突状部材3の色を、黒以外の任意の色に設定すると、一部の光が遮蔽されるとともに一部の光が透過し、突状部材3の色が反射する色に影響を与える。このような場合、式(11)により各サブセルの色が特定される。なお、突状部材3を透過した先の色は1回の透過または屈折だけではなく、平面部材2に反射した先の色も含んで定義する。また突状部材3は、突状部材3が設置されるサブセルごとに色を変更しても良い。
【0113】
また上記計算式では、所定の方位角に対応したサブセルで反射する光の量のみならず、周辺のサブセルで反射し観察可能な光の量も考慮して、各サブセルの色が設定される。
【0114】
このように各単位セルで見せたいコンテンツの色にあわせて、突状部材3の色を設定することにより、より鮮明な画像を表示することが可能になる。
【0115】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態と第1ないし第4の変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0116】
例えば、
図7および
図10に記載の処理装置は、複数のハードウエア装置により構成されても良いし、他の処理を行うコンピュータで実装されても良い。
【0117】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【解決手段】表示媒体1は、所定の仰角かつ方位角から、所定数の方位角に対応する所定数のコンテンツを表示可能に形成される。表示媒体1は、光を反射する平面部材2と、所定数の方位角のそれぞれに平面部材2上において平行な、光を遮蔽する面を有し、平面部材2に垂直に配置される複数の突状部材3を備える。平面部材2を複数の単位セルに区分し、複数の単位セルCそれぞれを、所定数の方位角に対応する所定数のサブセルBに区分する。所定の方位角に対応する各サブセルBに、所定の方位角に平行する面を有する突状部材3が形成される。