特許第6374627号(P6374627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374627タイヤ加硫金型、タイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型、およびタイヤ加硫金型の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374627
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型、タイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型、およびタイヤ加硫金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20180806BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20180806BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-40419(P2018-40419)
(22)【出願日】2018年3月7日
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-157440(P2017-157440)
(32)【優先日】2017年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 信行
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−030397(JP,A)
【文献】 特開2004−243389(JP,A)
【文献】 特開2005−280316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
B29C35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド成形面と、
前記トレッド成形面上を延びるサイプブレードと、
前記サイプブレードの端部から前記トレッド成形面上を延びる鋳出し突起部とを備え、
前記鋳出し突起部の幅は、前記サイプブレードの幅より大きく、
前記サイプブレードが第1面を有し、
前記第1面における前記端部周辺の領域が前記鋳出し突起部に覆われている、
タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記サイプブレードが第2面を有し、
前記第2面における前記端部周辺の領域が前記鋳出し突起部に覆われている、
請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
タイヤ加硫金型のトレッド成形面を成形するトレッド鋳型面と、
前記トレッド鋳型面から突き出た埋没予定部、および前記トレッド鋳型面に埋まった表出予定部を備えるサイプブレードとを備え、
前記表出予定部の端部から延びる溝が前記トレッド鋳型面に設けられており、
前記溝によって、前記表出予定部の前記端部が露出しており、
前記溝の幅は、前記表出予定部の幅より大きく、
前記サイプブレードが第1面を有し、
前記第1面における前記端部周辺の領域が前記溝によって露出している、
タイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型。
【請求項4】
前記サイプブレードが第2面を有し、
前記第2面における前記端部周辺の領域が前記溝によって露出している、
請求項3に記載のタイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型。
【請求項5】
請求項3または4に記載の鋳型を用いてタイヤ加硫金型を鋳造する工程を含む、タイヤ加硫金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型、タイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型、およびタイヤ加硫金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには、サイプが形成されることがある。サイプは、一般的に2mm以下の溝幅を有する。サイプは、濡れた路面や氷雪路面におけるタイヤの走行性能を向上させるために形成される。
【0003】
タイヤのサイプを、サイプブレードと、サイプブレードの端部からトレッド成形面上を延びる鋳出し突起部とで形成することがある。一般的には、サイプブレードはステンレス鋼からなり、鋳出し突起部はアルミニウム合金からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−280316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイプブレードと鋳出し突起部とを備える金型を繰り返し使用することで、鋳出し突起部に応力が繰り返し作用するため、耐久性の低下が懸念される。鋳出し突起部に応力が作用するのは、ステンレス鋼とアルミニウム合金との両者における熱膨張率の差と、ステンレス鋼がアルミニウム合金より硬いこととによる。
【0006】
本発明の目的は、繰り返しの使用に対する耐久性に優れたタイヤ加硫金型を提供することである。本発明のほかの目的は、このようなタイヤ加硫金型を鋳造できる鋳型を提供することである。本発明のほかの目的は、このようなタイヤ加硫金型の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイヤ加硫金型は、トレッド成形面と、前記トレッド成形面上を延びるサイプブレードと、前記サイプブレードの端部から前記トレッド成形面上を延びる鋳出し突起部とを備え、前記鋳出し突起部の幅は、前記サイプブレードの幅より大きい。本発明のタイヤ加硫金型では、鋳出し突起部の幅が、サイプブレードの幅以下である場合にくらべて、繰り返しの使用に対する耐久性に優れる。
【0008】
前記サイプブレードが第1面を有し、前記第1面における前記端部周辺の領域が前記鋳出し突起部に覆われていることが好ましい。これにより、耐久性をさらに向上できる。
【0009】
前記サイプブレードが第2面を有し、前記第2面における前記端部周辺の領域が前記鋳出し突起部に覆われていることが好ましい。これにより、耐久性をさらに向上できる。
【0010】
本発明は、タイヤ加硫金型を鋳造するための鋳型にも関する。本発明の鋳型は、タイヤ加硫金型のトレッド成形面を成形するトレッド鋳型面と、前記トレッド鋳型面から突き出た埋没予定部、および前記トレッド鋳型面に埋まった表出予定部を備えるサイプブレードとを備え、前記表出予定部の端部から延びる溝が前記トレッド鋳型面に設けられており、前記溝によって、前記表出予定部の前記端部が露出しており、前記溝の幅は、前記表出予定部の幅より大きい。本発明の鋳型は、繰り返しの使用に対する耐久性に優れたタイヤ加硫金型を鋳造できる。
【0011】
本発明の鋳型に関して、前記サイプブレードが第1面を有し、前記第1面における前記端部周辺の領域が前記溝によって露出していることが好ましい。これにより、耐久性がさらに優れたタイヤ加硫金型を鋳造できる。さらに、サイプブレードの第1面と鋳型本体との間に溶融金属が浸入しにくく、鋳肌が良好なタイヤ加硫金型を製造できる。
【0012】
本発明の鋳型に関して、前記サイプブレードが第2面を有し、前記第2面における前記端部周辺の領域が前記溝によって露出していることが好ましい。これにより、耐久性がさらに優れたタイヤ加硫金型を鋳造できる。さらに、サイプブレードの両面と鋳型本体との間に溶融金属が浸入しにくく、鋳肌が良好なタイヤ加硫金型を製造できる。
【0013】
本発明は、タイヤ加硫金型の製造方法にも関する。本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法は、前記鋳型を用いてタイヤ加硫金型を鋳造する工程を含む。本発明に係るタイヤ加硫金型の製造方法は、繰り返しの使用に対する耐久性に優れたタイヤ加硫金型を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1のタイヤ加硫金型を概略的に示す縦断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図2の矢印Xが示す方向で、金型の一部を描いた図である。
図4】変形例1を示す図である。
図5】変形例2を示す図である。
図6】変形例3を示す図である。
図7】変形例4を示す図である。
図8】実施形態1の鋳型を概略的に示す縦断面図である。
図9図8の部分拡大図である。
図10図9の矢印Yが示す方向で、鋳型の一部を描いた図である。
図11】変形例V1を示す図である。
図12】変形例V4を示す図である。
図13】サイプブレードが波板状をなす場合の例を示す図である。
図14】サイプブレードが波板状をなす場合の、ほかの例(変形例)を示す図である。
図15】変形例5を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、実施形態1のタイヤ加硫金型10は、タイヤのトレッド面を成形する金型11を備える。タイヤ加硫金型10は、サイドウォール部の表面を成形する金型12、13をさらに備える。タイヤ加硫金型10には、未加硫タイヤが、タイヤ軸方向を縦に配置される。
【0016】
図2に示すように、金型11は、トレッド成形面21を有する本体22を備える。本体22は金属材料からなる。具体的には、本体22はアルミニウム合金からなることができる。アルミニウム合金として、たとえばAC4系、AC7系などを挙げることができる。
【0017】
トレッド成形面21上を延びる突起25a、25b、25c、25d(以下、これらをまとめて「突起25」ということがある。)を金型11が備える(図1参照)。タイヤの両接地端を、第1接地端と第2接地端とで定義したとき、突起25aは、突起25のなかで、もっとも第1接地端よりに位置する。突起25dは、突起25のなかで、もっとも第2接地端よりに位置する。突起25は、タイヤ周方向91に沿って延びる(図3参照)。「突起25がタイヤ周方向91に沿って延びる」とは、タイヤ周方向91に対して傾斜なしで突起25が延びることと、タイヤ周方向91に対して傾斜をもって突起25が延びることとの両者を含む。突起25を構成する金属材料は、本体22を構成する金属材料と同じである。すなわち、突起25はアルミニウム合金からなることができる。突起25は、本体22とともに鋳造される。突起25は、タイヤに主溝を形成する役割を持つ。
【0018】
図3に示すように、トレッド成形面21上を延びる突起26a、26b、・・・・(以下、これらをまとめて「突起26」ということがある。)を金型11が備える。突起26はタイヤ幅方向92に沿って延びる。「突起26がタイヤ幅方向92に沿って延びる」とは、タイヤ幅方向92に対して傾斜なしで突起26が延びることと、タイヤ幅方向92に対して傾斜をもって突起26が延びることとの両者を含む。突起26を構成する金属材料は、本体22を構成する金属材料と同じである。すなわち、突起26はアルミニウム合金からなることができる。突起26は、本体22とともに鋳造される。突起26は、タイヤに横溝を形成する役割を持つ。
【0019】
金型11は、突き出るようにトレッド成形面21上を延びるサイプブレード32を備える。サイプブレード32はタイヤ幅方向92に沿って延びる。「サイプブレード32がタイヤ幅方向92に沿って延びる」とは、タイヤ幅方向92に対して傾斜なしでサイプブレード32が延びることと、タイヤ幅方向92に対して傾斜をもってサイプブレード32が延びることとの両者を含む。サイプブレード32の端部322は、鋳出し突起部31と接する。サイプブレード32の両面は、第1面327および第2面328で定義できる。サイプブレード32は平板状をなすものの、これに限られない。たとえば、サイプブレード32が波板状をなしてもよい。サイプブレード32の幅tは、たとえば2.0mm以下であることができ、1.6mm以下であることができる。tの下限は、たとえば0.3mm、0.6mmなどである。サイプブレード32の幅は通常、一定である。サイプブレード32の幅が一定でない場合、tは、鋳出し突起部31の第1端部311と接する位置で測定される。サイプブレード32の最大高さは、鋳出し突起部31の最大高さ以上であることが好ましい。サイプブレード32における金属材料の線膨張係数は、鋳出し突起部31における金属材料の線膨張係数より小さい。金属材料について、サイプブレード32はステンレス鋼からなることができる。ステンレス鋼として、たとえばSUS303、SUS304などを挙げることができる。サイプブレード32は、金型11に鋳包みで設けられる(図9参照)。
【0020】
金型11は、サイプブレード32の端部322からトレッド成形面21上を延びる鋳出し突起部31を備える。鋳出し突起部31は、サイプブレード32より第1接地端近くに位置する。鋳出し突起部31は、サイプブレード32の端部322と接する。鋳出し突起部31は、タイヤ幅方向92に沿って延びる。「鋳出し突起部31がタイヤ幅方向92に沿って延びる」とは、タイヤ幅方向92に対して傾斜なしで鋳出し突起部31が延びることと、タイヤ幅方向92に対して傾斜をもって鋳出し突起部31が延びることとの両者を含む。鋳出し突起部31は平板状をなすものの、これに限られない。鋳出し突起部31の幅tは、たとえば4.0mm以下である。tは、サイプブレード32の端部322と接する位置で測定される。鋳出し突起部31の長さLの、サイプブレード32の長さLに対する比(すなわち、L/L)は、たとえば0.3〜0.8、好ましくは0.3〜0.5である。鋳出し突起部31を構成する金属材料は、本体22を構成する金属材料と同じである。すなわち、鋳出し突起部31はアルミニウム合金からなることができる。鋳出し突起部31は、本体22とともに鋳造される。
【0021】
鋳出し突起部31の幅tが、サイプブレード32の幅tより大きい。このため、tがt以下である場合にくらべて、繰り返しの使用に対する耐久性に優れる。tは、tに対して、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。tは、tに対して、たとえば2倍以下であることができ、1.5倍以下であることができる。
【0022】
図4に示すように、変形例1では、鋳出し突起部31は、第1端部311から第2端部312に向かって幅が増す部分を含むことができる。鋳出し突起部31の幅が、第1端部311から第2端部312に向かって部分的に増してもよく、鋳出し突起部31の全体において増してもよい。変形例1では、図3に示す例で得られるタイヤにくらべて、排水性に優れたタイヤを製造することができる。
【0023】
図5に示すように、変形例2では、第1面327における端部322周辺の領域327aが鋳出し突起部31に覆われている。鋳出し突起部31の面318と、サイプブレード32の第2面328との両者は接している。すなわち、面318と第2面328とはひとつの面を構成する。変形例2の耐久性は、第1領域327aが鋳出し突起部31に覆われているため、図3に示す例のそれにくらべて優れる。
【0024】
図6に示すように、変形例3では、第1面327における端部322周辺の領域327aが鋳出し突起部31に覆われている。鋳出し突起部31の面318と、サイプブレード32の第2面328との両者は接していない。変形例3の耐久性は、第1領域327aが鋳出し突起部31に覆われているため、図3に示す例のそれにくらべて優れる。
【0025】
図7に示すように、変形例4では、サイプブレード32における第1面327の第1領域327aと、サイプブレード32における第2面328の第1領域328aとが鋳出し突起部31に覆われている。変形例4の耐久性は、図3に示す例のそれにくらべて優れる。
【0026】
図15に示すように、変形例5では、鋳出し突起部31の第2端部312からサイプブレード33が延びている。サイプブレード33とサイプブレード32との間に鋳出し突起部31が位置している。このように、変形例5では、サイプブレード33とサイプブレード32とを鋳出し突起部31が接続している。サイプブレード33は、サイプブレード33の端部331で鋳出し突起部31と接している。鋳出し突起部31の幅tが、サイプブレード33の幅tより大きくても小さくてもよいものの、大きいことが好ましい。tがtより大きいと、繰り返しの使用に対する耐久性に優れる。tは、tに対して、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。tは、tに対して、たとえば2倍以下であることができ、1.5倍以下であることができる。サイプブレード33の両面は、第1面337および第2面338で定義できる。第1面337における端部331周辺の第1領域337aと、第2面338における端部331周辺の第1領域338aとが鋳出し突起部31に覆われている。このように第1領域337aと第1領域338aとが鋳出し突起部31に覆われていることが、耐久性で好ましいものの、両者が覆われていなくともよい。
【0027】
変形例1〜5は適宜組み合わせることができる。たとえば、変形例4(図7参照)に変形例1(図4)を組み合わせることができる。
【0028】
変形例1〜5以外の変形例も実施形態1は採用できる。たとえば、実施形態1では、タイヤ加硫金型10が、金型11、12、13を備えるものの、タイヤにおけるトレッド部の中央で二分割された一対の金型を備えるものでもよい。このような変形例も、上述の変形例1〜5に適宜に組み合わせることができることはもちろんである。
【0029】
すでに説明したように、サイプブレード32が波板状をなしてもよい。これを、念のため図13に示す。図13では、サイプブレード32における第1面327の第1領域327aと、サイプブレード32における第2面328の第1領域328aとが鋳出し突起部31に覆われている。このように第1領域327aと第1領域328aとが鋳出し突起部31に覆われていることが、耐久性で好ましいものの、両者が覆われていなくともよいことは、すでに説明したとおりである。
【0030】
いっぽう、図14では、サイプブレード32が波板状をなすとともに、鋳出し突起部31の第2端部312から延びるサイプブレード33も波板状をなす。ただし、サイプブレード33は平板状をなしていてもよい。サイプブレード33における第1面337の第1領域337aと、第2面338の第1領域338aとが鋳出し突起部31に覆われている。このように第1領域337aと第1領域338aとが鋳出し突起部31に覆われていることが、耐久性で好ましいものの、両者が覆われていなくともよい。ここで説明した変形例は、上述の変形例に適宜組み合わせることができる。
【0031】
図8に示すように、タイヤ加硫金型10を鋳造するための鋳型40は、トレッド鋳型面41を有する鋳型本体42を備える。トレッド鋳型面41は、タイヤ加硫金型10のトレッド成形面21を成形する役割を持つ。鋳型本体42は、通常、石膏製である。
【0032】
図9に示すように、鋳型40はサイプブレード32を備える。サイプブレード32は、トレッド鋳型面41から突き出た埋没予定部51を備える。埋没予定部51は、板状をなすことができる。サイプブレード32は、トレッド鋳型面41に埋まった板状の表出予定部52をさらに備える。サイプブレード32における表出予定部52の端部322は、溝60によって露出している。
【0033】
サイプブレード32における表出予定部52の端部322から延びる溝60がトレッド鋳型面41に設けられている。溝60によって、表出予定部52の端部322が露出している。溝60は、タイヤ加硫金型10における鋳出し突起部31を成形する役割を持つ。
【0034】
図10に示すように、溝60の幅Tは、表出予定部52の幅Tより大きい。Tは、Tに対して、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。Tは、Tに対して、たとえば2倍以下であることができ、1.5倍以下であることができる。Tは、サイプブレード32における表出予定部52の端部322がある位置で測定される。Tは、たとえば2.0mm以下であり、1.6mm以下であってもよい。Tの下限は、たとえば0.3mm、0.6mmなどである。表出予定部52の幅は通常、一定である。表出予定部52の幅が一定でない場合、Tは、溝60の第1端部611がある位置で測定される。
【0035】
トレッド鋳型面41には、タイヤ加硫金型10の突起25を成形するための溝45(溝45aなど)がさらに設けられている。トレッド鋳型面41には、タイヤ加硫金型10の突起26を成形するための溝46(溝46a、46bなど)がさらに設けられている。
【0036】
鋳型40は、タイヤ加硫金型10の上述の変形例(変形例1〜5など)と、これらの任意の組み合わせとに対応する変形例を採用することができる。以下に、変形例1に対応する変形例V1と、変形例4に対応する変形例V4とを取り上げる。
【0037】
図11に示すように、たとえば、変形例V1では、溝60が、第1端部611から第2端部612に向かって幅が増す部分を含むことができる。溝60の幅が、第1端部611から第2端部612に向かって部分的に増してもよく、溝60の全体において増してもよい。
【0038】
図12に示すように、変形例V4では、第1面327における端部322周辺の領域327aと、第2面328における端部322周辺の領域328aとが溝60によって露出している。変形例V4の鋳型40は、図10に示す例に比べて、繰り返しの使用に対する耐久性にさらに優れたタイヤ加硫金型を鋳造できる。
【0039】
変形例V4では、図10に示す例にくらべて、サイプブレード32と鋳型本体42との間に溶融金属が浸入しにくい。これは、サイプブレード32の第1面327と溝60を構成する溝壁とが異なる面に存在し、サイプブレード32の第2面328と溝60を構成する溝壁とが異なる面に存在するからである。溶融金属の浸入は、意図しない金属薄膜が発生する原因となり、鋳肌を悪化させる。変形例V4は、溶融金属の浸入に対して強く、鋳肌が良好なタイヤ加硫金型10を製造できる。
【0040】
実施形態1におけるタイヤ加硫金型10の製造方法は、鋳型40を用いてタイヤ加硫金型10を鋳造する工程を含む。タイヤ加硫金型10の製造方法は、鋳型40を使用すること以外は、従来の工程と同様にしておこなうことができる。
【要約】
【課題】繰り返しの使用に対する耐久性に優れたタイヤ加硫金型を提供する。
【解決手段】タイヤ加硫金型10が、トレッド成形面21と、トレッド成形面21上を延びるサイプブレード32と、サイプブレード32の端部322からトレッド成形面21上を延びる鋳出し突起部31とを備え、鋳出し突起部31の幅は、サイプブレード32の幅より大きい。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15