特許第6374630号(P6374630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6374630
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】導線と接続端子との接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20180806BHJP
   H01R 4/20 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01R43/048 Z
   H01R4/20
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-109240(P2018-109240)
(22)【出願日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390013181
【氏名又は名称】ひさご電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸行
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−152094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0102787(US,A1)
【文献】 特開2015−227650(JP,A)
【文献】 特開2000−021543(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0018863(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
H01R 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本のエナメル被覆導線を束ねた導線束の先端部を、少なくとも先端部側が円筒形とされた接続端子内に挿入する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、第1成形型によって、前記接続端子の周方向の一部に、該接続端子の軸線方向に延びる共に該接続端子の先端に開口された溝部を加圧成形する第2ステップと、
前記第2ステップ後に、第2成形型によって前記接続端子を加圧と加熱して、前記エナメル被覆導線の被覆を溶融させて該接続端子の外部に排出させる第3ステップと、
を備え、
前記第3ステップでは、前記第2成形型による加圧によって、前記溝部を前記接続端子の周方向において潰すように変形させて、該接続端子のうち少なくとも先端部側を縮径された円筒形とする成形が行われる、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3ステップでは、前記第2成形型による加圧と共に該第2成形型を介して前記接続端子に加熱用電流を流すヒュージングが行われる、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1ステップにおいて使用される前記接続端子が、その軸線方向全長に渡って同一外径とされた円筒形とされ、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が前記接続端子の軸線方向全長に渡って延びるように形成され、
前記第3ステップの後の状態において、前記接続端子の外周形状が、該接続端子の軸線方向全長に渡って同一外径の円筒形とされる、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第1ステップにおいて使用される前記接続端子が、少なくともその一端部の内径が開口端面に向けて徐々に拡径されたものとされ、
前記第1ステップでは、前記導線束が、前記接続端子のうち内径が拡径された前記一端部側から行われる、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、その断面に沿った形状が円弧状となるように形成される、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が1つのみ形成される、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、前記接続端子の周方向略等間隔に複数形成される、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、1つのみまたは前記接続端子の周方向略180度間隔で2つ形成され、
前記第3ステップにおいて、前記接続端子が、前記溝部のへこみ方向と略直交する方向から加圧される、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、
前記第3ステップの後に、前記接続端子の外周に、別の接続部品の嵌合部を嵌合させる第4ステップと、
前記第4ステップの後に、前記嵌合部を、かしめによって前記接続端子に固定する第5ステップと、
をさらに有している、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項10】
請求項1において、
前記第1ステップでは、使用される前記接続端子が、先端部側が円筒形の円筒部とされると共にその基端部がラッパ状に広がるラッパ部とされた形状とされて、前記導線束が該接続端子の基端部側から挿入され、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が前記円筒部に形成され、
前記第3ステップでは、前記円筒部に対して加圧が行われて、該第3ステップの後の状態において、該円筒部が縮径された円筒形とされる、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、
前記第1ステップにおいて使用される接続端子が、その周方向に切れ目を有しないで周方向全長に渡って連続した形状とされている、ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、
前記第1成形型が、第1下型と上下方向に往復駆動される第1上型とからなり、
前記第1下型に、断面に沿った形状が半円弧状の凹部とされて前記接続端子を受ける受け面が形成され、
前記第1上型に、前記溝部に対応した形状の凸部が形成されている、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項請求項12のいずれか1項において、
前記第2成形型が、第2下型と上下方向に往復駆動される第2上型とからなり、
前記第2下型と前記第2上型とにそれぞれ、断面に沿った形状が半円弧状の凹部とされた成形面が形成されている、
ことを特徴とする導線と接続端子との接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線と接続端子との接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数本のエナメル被覆導線を束ねた導線束に対して、接続端子を接続することが行われている。この場合、多数本のエナメル被覆導線が挿入された接続端子を加圧しつつ通電加熱するヒュージングを行うことにより、エナメル被覆を溶解させて接続端子の外部に排出させて、多数本の導線を互いに電気的に接続すると共に接続端子にも電気的に接続することが行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4921425号公報
【特許文献2】特許第5385687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒュージングを行う際に、多数本のエナメル被覆導線が挿入される接続端子としては円筒形のものが用いられるのが一般的である。そして、接続端子を加圧する場合、そのまま円筒形を保持させて縮径させることが難しいことから、ヒュージング後の接続端子の断面形状は、特許文献1の図6に示すような偏平形状や、特許文献2の図6図7に示すように縮径させる際の余肉部分を径方向外方側に突出させた異形状とされる。
【0005】
上述した接続端子を偏平形状あるいは異形状に加圧成形する手法では、多数本のエナメル被覆導線を均一に加圧するという点において改善の余地がある。また、接続端子が扁平形状や異形状であることは、接続端子を他の機器類に接続する際の汎用性という点でも好ましくないものである。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、エナメル被覆を溶融・排出するために接続端子によって多数本のエナメル被覆導線をより均一に加圧できるようにし、しかも最終的に接続端子の形状を汎用性の高い円筒形にすることのできるようにした導線と接続端子との接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
多数本のエナメル被覆導線を束ねた導線束の先端部を、少なくとも先端部側が円筒形とされた接続端子内に挿入する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、第1成形型によって、前記接続端子の周方向の一部に、該接続端子の軸線方向に延びる共に該接続端子の先端に開口された溝部を加圧成形する第2ステップと、
前記第2ステップ後に、第2成形型によって前記接続端子を加圧と加熱して、前記エナメル被覆導線の被覆を溶融させて該接続端子の外部に排出させる第3ステップと、
を備え、
前記第3ステップでは、前記第2成形型による加圧によって、前記溝部を前記接続端子の周方向において潰すように変形させて、該接続端子のうち少なくとも先端部側を縮径された円筒形とする成形が行われる、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、第3ステップでは、接続端子がその周方向全長に渡って径方向中心側に向かうように押圧されて、多数本のエナメル被覆導線をほぼ均一に加圧されて、エナメル被覆をほぼ等しく除去することができる。また、接続完了後の接続端子は、少なくともその先端部側の部位が円筒形とされているので、他の機器類や別の接続部品を接続するに際して汎用性の高いものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記第3ステップでは、前記第2成形型による加圧と共に該第2成形型を介して前記接続端子に加熱用電流を流すヒュージングが行われる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、一般的に行われているヒュージングによって、エナメル被覆を接続端子の外部へ排出することができる。
【0010】
前記第1ステップにおいて使用される前記接続端子が、その軸線方向全長に渡って同一外径とされた円筒形とされ、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が前記接続端子の軸線方向全長に渡って延びるように形成され、
前記第3ステップの後の状態において、前記接続端子の外周形状が、該接続端子の軸線方向全長に渡って同一外径の円筒形とされる、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、接続端子として、もっとも単純で汎用性の高い円筒形のものを用いつつ、接続完了後に得られる接続端子もその全長に渡って縮径された円筒形とすることができる。
【0011】
前記第1ステップにおいて使用される前記接続端子が、少なくともその一端部の内径が開口端面に向けて徐々に拡径されたものとされ、
前記第1ステップでは、前記導線束が、前記接続端子のうち内径が拡径された前記一端部側から行われる、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、導線束をスムーズに接続端子内に挿入させることができる。また、接続完了後において、導線束の屈曲耐性を向上させることができる。
【0012】
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、その断面に沿った形状が円弧状となるように形成される、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、第3ステップでの加圧の際に、接続端子に対して局所的に大きな押圧力が作用しないようにしつつ、接続端子の周方向全長からほぼ均一に導線束をその中心に向けて押圧する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記第2ステップにおいて、前記溝部が1つのみ形成される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、溝部の形成を極力簡単に行う上で好ましいものとなる。
【0014】
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、前記接続端子の周方向略等間隔に複数形成される、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、より十分に縮径させる上で好ましいものとなる。
【0015】
前記第2ステップにおいて、前記溝部が、1つのみまたは前記接続端子の周方向略180度間隔で2つ形成され、
前記第3ステップにおいて、前記接続端子が、前記溝部のへこみ方向と略直交する方向から加圧される、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、第1成形型による加圧方向を、溝部が潰れやすい方向として、第1成形型として簡単なものを用いつつ溝部を容易かつ確実に所望方向に潰し変形させる上で好ましいものとなる。
【0016】
前記第3ステップの後に、前記接続端子の外周に、別の接続部品の嵌合部を嵌合させる第4ステップと、
前記第4ステップの後に、前記嵌合部を、かしめによって前記接続端子に固定する第5ステップと、
をさらに有している、
ようにしてある(請求項9対応)。この場合、別の接続部品を利用して、他の機器類への接続を容易に行う上で好ましいものとなる。また、接続端子に対する別の接続部品の接続を、かしめによって簡単に行うことができる。
【0017】
前記第1ステップでは、使用される前記接続端子が、先端部側が円筒形の円筒部とされると共にその基端部がラッパ状に広がるラッパ部とされた形状とされて、前記導線束が該接続端子の基端部側から挿入され、
前記第2ステップにおいて、前記溝部が前記円筒部に形成され、
前記第3ステップでは、前記円筒部に対して加圧が行われて、該第3ステップの後の状態において、該円筒部が縮径された円筒形とされる、
ようにしてある(請求項10対応)。この場合、導線束を接続端子内に極めてスムーズに挿入することができる。また、接続完了後は、接続端子の先端部側が円筒形とされているので、汎用性も確保される。さらに、接続完了後において、導線束の屈曲耐性を向上させることができる。
【0018】
前記第1ステップにおいて使用される接続端子が、その周方向に切れ目を有しないで周方向全長に渡って連続した形状とされている、ようにしてある(請求項11対応)。この場合、接続端子が周方向に切れ目を有する場合に比して、第2成形型による加圧の際に、加圧力を導線束をその中心に向けてほぼ均一に押圧する力として有効に利用することができる。また、縮径成形後の品質のばらつきが少なく、縮径後の拡径方向への戻りを小さくすることができ、さらに切れ目から導線の一部がはみ出す等のことも防止できる。
【0019】
前記第1成形型が、第1下型と上下方向に往復駆動される第1上型とからなり、
前記第1下型に、断面に沿った形状が半円弧状の凹部とされて前記接続端子を受ける受け面が形成され、
前記第1上型に、前記溝部に対応した形状の凸部が形成されている、
ようにしてある(請求項12対応)。この場合、上下動される簡素なプレス機を用いて、溝部を形成することができる。
【0020】
前記第2成形型が、第2下型と上下方向に往復駆動される第2上型とからなり、
前記第2下型と前記第2上型とにそれぞれ、断面に沿った形状が半円弧状の凹部とされた成形面が形成されている、
ようにしてある(請求項13対応)。この場合、上下動される簡素なプレス機を用いて、接続端子を縮径された円筒形に成形することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エナメル被覆を溶融・排出するために接続端子によって多数本のエナメル被覆導線をより均一に加圧でき、しかも最終的に接続端子の形状を汎用性の高い円筒形にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】リッツ線の先端部において、多数本のエナメル被覆導線からなる導線束を露出させる過程を示す側面図。
図2】導線束を接続端子に挿入する過程を示す側面図。
図3】接続端子の詳細を示す側面断面図。
図4】溝部の形状例を示す図。
図5図4に示す溝部を形成する第1成形型の例を示す図。
図6】加圧と通電加熱を行う第2成形型に接続端子を配設する状況を示す図。
図7図6の状態から、接続端子を通電加熱しつつ加圧している状態を示す図。
図8】加圧成形後の接続端子の形状を示す図。
図9】接続端子の外径の変化状況を示す側面図。
図10】本発明の第2の実施形態を示すもので、図4に対応した図。
図11図10に示す溝部を形成する第1成形型の例を示す図。
図12】本発明の第3の実施形態を示すもので、図6に対応した図。
図13】本発明の第4の実施形態を示すもので、図4に対応した図。
図14図13に示す溝部を形成する第1成形型の例を示す図。
図15】本発明の第5の実施形態を示すもので、図3対応した側面断面図。
図16】本発明の第6の実施形態を示すもので、接続端子に対して別の接続部品を接続する過程を示す図。
図17】別の接続部品における嵌合部の断面形状が円環状の場合において、接続端子との接続後の状態を示す図。
図18】別の接続部品における嵌合部の断面形状が正方形の環状の場合において、接続端子との接続後の状態を示す図。
図19】別の接続部品における嵌合部の断面形状が正六角形の環状の場合において、接続端子との接続後の状態を示す図。
図20】本発明の第7の実施形態を示すもので、図2に対応した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において、1は、配線としてのリッツ線である。図中(a)は、内部の導線束が端部まで外部被覆層2によって被覆された状態が示され。(b)に外部被覆層2の端部(先端部)が除去されて、内部の導線束3の先端部が露出された状態が示される。そして、この露出された導線束3の先端部に、後述する接続端子が接続される。導線束3は、多数本(例えば数十本〜数千本)のエナメル被覆導線を撚り合わせて1本に束ねたものとなっている。なお、エナメルや導線の材質は適宜選択でき、特に限定されないものである。
【0024】
図2は、露出された導線束3と接続端子10とを示す。接続端子10は、図3に示すように、内径および外径がその全長に渡って同一とされた円筒形とされている。図中、(a)は、導線束3が接続端子10内に挿入される前の状態が示され、(b)は、露出された導線束3が接続端子10内に挿入された状態が示される。
【0025】
接続端子10は、導電性の良好な金属パイプ(実施形態では銅パイプ)とされている。なお、接続端子10は、その周方向全長に渡って連続しており、途中に切れ目を有しないものである。なお、接続端子10を構成する材質は、銅に限らず、伝導性の良好な金属の中から適宜選択できる。
【0026】
接続端子10の内径は、露出された導線束3の外径よりも大きくされていて、導線束3が接続端子10内にスムーズに挿入される。このため、接続端子10の外径は、外部被覆層2の外径よりも大きくなっている。なお、外部に露出された導線束3は、それを構成する多数本のエナメル被覆導線が毛羽立つ等によって、若干径方向外方側へ広がる傾向がある。したがって、接続端子10の内径は、上記導線束3の広がりを考慮して設定される。
【0027】
導線束3が挿入された接続端子10には、図4に示すように、溝部11が形成される。溝部11は、接続端子10の周方向1箇所に形成されている。また、溝部11は、接続端子10の軸方向全長に渡って延びている(溝部11は、接続端子10の一端側と他端側との両方に開口されている)。溝部11の断面形状は、その内面に沿う形状が円弧状(円弧または略円弧)とされている。溝部11は、接続端子10の中心に向けて凹となるように形成されている。なお、図4において、個々のエナメル被覆導線を符号3aで示してある。
【0028】
溝部11の成形は、例えば図5に示すように、第1成形型としての上下一対の成形型21、22を用いて行うことができる。すなわち、成形型21、22は、接続端子10の外径に対応して設定された曲率半径を有する成形面21a、22aを有している。すなわち、成形面21a、22aは、その断面に沿う形状が半円弧状とされた凹部として形成されている。そして、上方の成形型21の成形面21aには、溝部11に対応した形状の凸部21bがさらに形成されている。受け面としての成形型22の成形面22aに接続端子10を載置して、成形型21を下降させることにより、接続端子10に溝部11が形成される。
【0029】
下型としての成形型22は固定とされて、上型としての成形型21が上下方向に往復駆動される。これにより、上下駆動されるシンプルなプレス機を用いて、溝部11を形成することができる。
【0030】
溝部11が形成された接続端子10は、図6図7に示すように、第2成形型としての上下一対の成形型31、32によって、加圧成形と通電加熱とが行われる。このため、図6に示すように、接続端子10が、溝部11が横向きとなる姿勢状態で、成形型31と32との間に配設される。この後、上下一対の成形型31、32が徐々に閉じられると共に、成形型31と32との間で加熱用の通電が行われる。電極としても機能される成形型31、32に対して、接続端子10がくっつきを生じるときは、例えば接続端子10の外面にくっつき防止のためのコーティング(例えば錫メッキ)を施しておくことができる。
【0031】
通電加熱によって、導線束3を構成する多数本のエナメル被覆導線のエナメル被覆が溶解される。そして、成形型31、32による加圧によって、図6に示すように、溝部11が徐々に潰れ変形されていく。この潰れ変形は、溝部11のうち、接続端子10の周方向に隣り合う内壁面同士が近接するように行われる。そして、最終的に、接続端子10は、全体的に、その外周径が縮径された円筒形に成形される(図8参照)。なお、図6において、各成形型31、32の成形面(円弧状の内面)が31a、32aとして示される。
【0032】
各成形型31、32の成形面31a、32aは、その断面に沿う形状が半円弧状となる凹部として形成されている。そして、下型としての成形型32に対して、上型としての成形型31が上下方向に往復駆動される。これにより、上下駆動されるシンプルなプレス機を用いて、接続端子10の成形(縮径成形)を行うことができる。
【0033】
成形型31、32による加圧によって、溶解されたエナメル被覆が接続端子10の外部へ排出される。エナメル被覆が外部へ排出されることにより、多数本の導線は、互いに電気的に接続された状態となり、かつ接続端子10にも電気的に接続された状態となる。
【0034】
溝部11は、その断面が円弧状となるように形成されていくことから、導線束3は、その周方向において局部的に大きな力を受けることがなく、その外周からほぼ均等に内方に向かう押圧力を受けることになる。つまり、多数本のエナメル被覆導線においては、そのエナメル被覆が略均等に溶解されることになる。
【0035】
成形型31、32によって成形が完了された後の状態接続端子10が、図8に示される。図9の(a)には、溝部11が形成される前(つまり縮径前)の接続端子10が示される。また、図9の(b)には、図8のように縮径された後の接続端子10が示される。接続端子10の縮径度合をその周方向での短縮長さで示した場合、短縮長さは、溝部11の断面においてその内面に沿う長さ分にほぼ等しい長さとされる。
【0036】
図10図11は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してその重複した説明は省略する(このことは、以下のさらに別の実施形態についても同じ)。本実施形態では、溝部12(溝部11に対応)の断面形状を、略方形としてある。すなわち、溝部12は、それぞれ直線状とされた底壁面12aと一対の側壁面12bとを有するものとなっている。
【0037】
図11には、溝部12を成形するための成形型21、22が示される。上方の成形型21の内面21aに形成された凸部21cが、溝部12の形状に対応した形状とされる。本実施形態では、溝部12の断面おいて、その内面に沿う長さ(底壁面12aと一対の側壁面12bとの合計長さ)を十分長く確保することができ、その分、接続端子10を十分に縮径させる上で好ましいものとなる。
【0038】
図12は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態では、接続端子10に、周方向180度間隔で、2個の溝部11を形成してある。溝部11の形状は、図4に示す場合と同じである。そして、2つの溝部11を結ぶ方向と直交する方向から、成形型31、32による加圧が行われるようにしてある。本実施形態では、接続端子10をより十分に縮径させつつ、導線束3を周方向から極力均一に押圧する上で好ましいものとなる。
【0039】
図13図14は、本発明の第4の実施形態を示すものである。本実施形態では、図13に示すように、溝部12Bの形状を略くさび状に形成してある。この溝部12Bを形成する第1成形型21、22が図14に示され、溝部12Bを形成するための凸部が符号21dで示される。
【0040】
図15は、本発明の第5の実施形態を示すものである。本実施形態では、図3に示す接続端子10の端部を加工して、より好ましい接続端子10Bとしたものを示す。すなわち、接続端子10Bは、その各端部の内径が、開口端面に向けて徐々に拡径された拡径部10aとして形成されている。
【0041】
接続端子10Bが、拡径部10aを有することから、導線束3を接続端子10B内にスムーズに挿入することが可能となり、また挿入に際して、導線束3の側面が接続端子によって傷つけられることが防止される。拡径部10aが、接続端子10Bの両端部に形成されていることから、接続端子10B内に導線束3を挿入する際に、接続端子10Bの向きを考慮する必要がなく、作業性のよいものとなる。
【0042】
拡径部10a側から導線束3を挿入することにより、接続端子10Bが縮径された後の接続完了状態で、導線束3の屈曲耐性が向上される。すなわち、導線束3が接続端子10B付近で屈曲されたときに、接続端子10Bの開口端部内端で導線束3が強く押圧されてしまう事態が防止される。なお、拡径部10aを、接続端子10Bの一端部側にのみ形成したものとすることもできる(この場合、導線束3は、拡径部10a側から接続端子10B内に挿入される)。
【0043】
縮径された接続端子10(10Bについても同じ)は、そのまま他の機器類へ接続することができる。特に、円筒形とされていることから、接続の汎用性が高いものとなる。
【0044】
図16は、本発明の第6の実施形態を示すものである。本実施形態では、接続端子10(10Bについても同じ)を、別の接続部品40を介して、他の機器類に接続する場合に対応するものとなっている。別の接続部品40は、接続端子10の外周に嵌合される嵌合部41と、嵌合部41と一体成形されて、他の機器類との接続に適した形状(構造)とされた接続部42と、を有する。
【0045】
別の接続部品40は、その嵌合部41を接続端子10の外周に嵌合させた状態で、かしめによって接続端子10に対して電気的かつ機械的に結合される。図17図19には、嵌合部41をかしめた後の状態が示される。図17は、嵌合部41の断面が円環状の場合を示す。図18は、嵌合部41の断面が、正方形の環状とされた場合が示される。図19は、嵌合部41の断面が、正六角形の環状とされた場合が示される。接続端子10の外周形状が円形とされていることから、嵌合部41の種々の断面形状に対応するのが容易である(接続の汎用性が高い)。
【0046】
図20は、本発明の第7の実施形態を示すものである。本実施形態では、接続端子10C(接続端子10、10B対応)として、ラッパ部を有するものを用いてある。すなわち、図20(a)に示すように、接続端子10Cは、円筒形の円筒部13と、円筒部13の一端部側にラッパ状に拡径して広がるラッパ部14と、を有するものとしてある。ラッパ部14側から導線束3を挿入することにより、接続端子10C内に導線束3を挿入する作業が極めて容易となり、また導線束3の屈曲耐性を向上させることができる。図20(b)に、導線束3を接続端子10C内に挿入した直後の状態が示される。後の加工においては、円筒部13についてのみ、溝部11(12)の形成と縮径(ヒュージング)とが行われる。
【0047】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。溝部(溝部11等)は、例えばV字形状にする等、その形状を適宜選択でき、また接続端子の周方向略等間隔に3個以上形成することもできる。本発明における円筒形には、略円筒形を含むものであり、より具体的には断面の外周形状が円に近い楕円形あるいは正多角形(例えば正20角形)の場合を含むものである。リッツ線1は、外部被覆層2を有しないもの(導線束3が外部被覆層2によって被覆されていないもの)であってもよい。エナメル被覆の溶融は、第2成形型31、32を介して接続端子10を通電加熱するヒュージングに代えて、第2成形型31、32そのものを例えばヒータによって加熱することによって行うこともできる。この場合、加圧成形を行う前に、あらかじめ第2成形型31、32をエナメル被覆の溶融温度以上の温度まで加熱しておくのが好ましい。溝部(溝部11等)を複数形成する場合、第1成形型における下型22の成形面22a(受け面)にも、溝部形成用の凸部を形成することもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、多数本のエナメル被覆導線からなる導線束を接続端子に対して安定して接続することができ、また接続端子として汎用性の高い円筒形とすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1:リッツ線(配線)
2:外部被覆層
3:導線束
10:接続端子
10a:拡径部(図15
11:溝部
10B:接続端子(図15
12:溝部(図10
12B:溝部(図13
13:円筒部(図20
14:ラッパ部(図20
21:成形型(第1成形型で、第1上型)
21b:凸部(溝部11対応)
21c:凸部(溝部12対応)
21d:凸部(溝部12B対応)
22:成形型(第1成形型で、第1下型)
22a:成形面(受け面)
31:成形型(第2成形型で、第2上型)
31a:成形面
32:成形型(第2成形型で、第2下型)
32a:成形面
40:別の接続部品(図16図19
41:嵌合部(図16図19
42:接続部(図16
【要約】
【課題】エナメル被覆の溶融・排出のために接続端子によってエナメル被覆導線をより均一に加圧できるようにし、しかも接続完了後における接続端子の形状を汎用性の高い円筒形にする。
【解決手段】多数本のエナメル被覆導線を束ねた導線束3の先端部が、少なくとも先端部側が円筒形とされた接続端子10内に挿入される。第1成形型21、22によって、接続端子10の周方向の一部に、接続端子10の軸線方向に延びる共に該接続端子の先端に開口された溝部11が成形される。第2成形型31、32によって、接続端子10を加圧しつつ加熱して、エナメル被覆を溶融させて接続端子10の外部に排出させる。また、第2成形型31、32による加圧によって、溝部10が接続端子10の周方向において潰れ変形されて、接続端子10のうち少なくとも先端部側が縮径された円筒形に成形される。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20