特許第6374639号(P6374639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374639
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/02 20060101AFI20180806BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20180806BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C12G3/02
   C12C5/02
   C12C11/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-277797(P2012-277797)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-165707(P2013-165707A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年2月10日
【審判番号】不服2017-1415(P2017-1415/J1)
【審判請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-9400(P2012-9400)
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 大介
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−37758(JP,A)
【文献】 特開昭62−253368(JP,A)
【文献】 特開2010−136658(JP,A)
【文献】 特開2001−157(JP,A)
【文献】 “発泡酒新商品「サッポロ 鮮烈発泡<生>」来年2月に新発売〜「口の中で弾ける,鮮烈な刺激感あるうまさ」,高炭酸ガス圧で刺激的な発泡酒〜”,[online],2002年12月11日,サッポロビール株式会社,[2018年1月17日検索],インターネット <URL:http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000000351/index.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G3/02
C12C5/02,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス濃度が0.65〜0.71w/w%であり、ビールである、麦芽発酵飲料(但し、野菜ジュースを含有する麦芽発酵飲料を除く)。
【請求項2】
炭酸感と爽快感が向上した、ビールである麦芽発酵飲料の製造方法であって、ビールである麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.65〜0.71w/w%に調節することを特徴とする方法(但し、当該飲料が野菜ジュースを含有する場合を除く)。
【請求項3】
ビールである麦芽発酵飲料の炭酸感と爽快感を向上させる方法であって、ビールである麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.65〜0.71w/w%に調節することを特徴とする方法(但し、当該飲料が野菜ジュースを含有する場合を除く)。
【請求項4】
ビールである麦芽発酵飲料の泡を安定化させる方法であって、ビールである麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.65〜0.71w/w%に調節することを特徴とする方法(但し、当該飲料が野菜ジュースを含有する場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来にない爽快感を有する高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料に関する。詳しくは、麦芽発酵飲料に、炭酸ガス濃度が0.60w/w%以上となるように炭酸ガスを溶解させることにより、麦芽由来の飲みごたえに加え、爽快な喉越し感と、すっきりとした後味、すなわち「キレ」を増強させた麦芽発酵飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酒類において新しい香味を創造する試みがしばしば行われてきている。例えば、ビールや発泡酒等の麦芽発酵飲料においては、最近の消費者の多様化した好みに応じて、様々な香味のものが検討され、提供されてきている。そのなかでも、ビールや発泡酒におけるキリッとした味わいの喉越し、いわゆる「キレ」の良さ、「爽快感」は消費者に好まれるものである。
【0003】
この点、原料の麦芽の使用比率を低減することで、ある程度キレのある麦芽発酵飲料を製造できることが知られている。しかしながら、当該方法では、麦芽の使用比率が高い麦芽発酵飲料に比較して、飲み応えや喉越しの爽快感が失われる傾向にある。この問題を解決する手段として、例えば、ビール等の発酵麦芽アルコール飲料全量に対してトレハロースを0.1〜2.0w/v%含有させることにより、「キレ」を増強させた飲料を製造する方法が知られている(特許文献1)。また、アルコール含有の蒸留物を添加することにより、麦芽由来の飲みごたえに加え、爽快な喉ごし感と、すっきりとした後味、すなわち「キレ」を増強させた麦芽飲料が得られることが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、麦芽発酵飲料中のエキス分を増加させることによって味の「厚み」を増加させる試みがなされているが、場合によってはホップの苦味が強調されるため、ホップの使用量を減らすか苦味の少ないホップを使用することが知られている(特許文献3)。この文献においては、ホップの減量により爽快感が失われるという問題に対応するため、炭酸ガス含有量を通常のビールより若干多くしている。しかしながら、その目的は、失われた爽快感を通常程度まで補うことにあり、飲料に新たな爽快感を付与するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−299322号公報
【特許文献2】特許第4367790号公報
【特許文献3】特開平9−37758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、すっきりとした後味、すなわち「キレ」を増強させた麦芽発酵飲料において、さらに爽快な喉越し感を付与する新たな手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明者らは種々検討した結果、麦芽発酵飲料中の炭酸ガス濃度を0.60w/w%以上に設定することで向上された炭酸感と爽快感の増加が両立できることを見出した。また、そのような炭酸ガス濃度は、当該飲料の泡を安定化させることも見出した。
【0008】
従って、本発明は、以下のものに関する。
1.炭酸ガス濃度が0.60w/w%以上である、麦芽発酵飲料。
2.炭酸ガス濃度が0.60〜0.71w/w%である、1に記載の麦芽発酵飲料。
2−1.高甘味度甘味料及び縮合リン酸塩を含まない、1又は2に記載の麦芽発酵飲料。
3.炭酸感と爽快感が向上した麦芽発酵飲料の製造方法であって、麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.60w/w%以上に調節することを特徴とする方法。
4.麦芽発酵飲料の炭酸感と爽快感を向上させる方法であって、麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.60w/w%以上に調節することを特徴とする方法。
5.麦芽発酵飲料の泡を安定化させる方法であって、麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度を0.60w/w%以上に調節することを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ビールテイストとして飲み応えやキリッとした味わいがあり、かつ、喉越しの爽快感が付与された、最近の消費者の多様化した好みに応じた、麦芽発酵飲料が提供される。本発明は、さらに、泡が安定化された麦芽発酵飲料も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、麦芽発酵飲料を口に含んだときに感じる炭酸感について評価した結果を示す。
図2図2は、麦芽発酵飲料の喉越しの爽快感について評価した結果を示す。
図3図3は、麦芽発酵飲料の消費者に好まれる度合い、すなわち嗜好度について評価した結果を示す。
図4図4は、麦芽発酵飲料を口に含んだときに感じる炭酸感について評価した結果を示す。
図5図5は、麦芽発酵飲料の喉越しの爽快感について評価した結果を示す。
図6図6は、麦芽発酵飲料の消費者に好まれる度合い、すなわち嗜好度について評価した結果を示す。
図7図7は、炭酸濃度とT−SHVとの関係を示す。T−SHVが高いほど泡の安定性が高いと判断できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(麦芽発酵飲料)
本明細書における麦芽発酵飲料とは、麦芽を原料の一部として使用し、発酵させた飲料をいう。具体的には、ビール、発泡酒、雑酒、低アルコール麦芽発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の麦芽発酵飲料)等をあげることができ、日本における酒税法上の酒類の分類上、ビール、発泡酒、リキュール類、スピリッツ類等に分類され得る。
【0012】
この場合において、本発明が提供する麦芽発酵飲料のアルコール分は、特に限定されないが、1〜15%(v/v)であることが望ましい。特に、ビールや発泡酒といった麦芽発酵飲料として消費者に好んで飲用されるアルコール濃度、すなわち、3〜8%(v/v)の範囲であることが望ましい。
【0013】
本発明の飲料のアルコール濃度は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール濃度が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0014】
(高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料)
本発明の麦芽発酵飲料は高炭酸ガス濃度の麦芽発酵飲料である。本発明において「高炭酸ガス濃度」というときは、特別な場合を除き、炭酸ガス濃度が0.60w/w%以上であるものをいう。
【0015】
(麦芽)
本明細書において、麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいう。麦芽の産地も特に限定されるものではない。また、本発明においては麦芽として、通常の麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。
【0016】
(炭酸ガス濃度の測定)
ガス濃度は当業者に良く知られている標準的な手法で測定することが出来る。測定には、従来技術の自動測定装置を用いても良い。例えば、ガスボリューム測定装置 GVA−500A(京都電子工業株式会社)を用いることができる。麦芽発酵飲料中のガス含有量は、通常、重量%(w/w%またはg/kg)で表すほか、20℃におけるガス圧(kgf/cmまたはMPa)で表すことができる。炭酸ガスの濃度とガス圧は適宜換算可能である。本明細書中では特に断らない限り、炭酸ガス含有量を濃度(w/w%)で示す。
【0017】
本発明の飲料の炭酸ガス濃度は、0.60w/w%以上であることが好ましい。炭酸ガス濃度に特に上限はないが、炭酸ガス濃度が高くなるにつれて刺激が強くなるため、炭酸ガス濃度が0.60〜0.80w/w%であることが望ましく、さらには0.60〜0.71w/w%であることが望ましく、さらには0.61〜0.70、0.62〜0.69、0.63〜0.68、0.64〜0.67w/w%であることが好ましい。0.65w/w%であることが最も好ましい。
【0018】
(高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料の製造)
本発明が提供する高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料にあっては、ビールテイストとして飲み応えやキリッとした味わいがあり、かつ、喉越しの爽快感を付与するために、高ガス濃度の状態で容器に充填することが望ましい。
【0019】
この麦芽発酵飲料は、当業者に知られる通常の方法で製造することが出来る。すなわち、麦芽のほか、必要に応じて他の穀物、デンプン、糖類、苦味料、または着色料などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行わせ、ろ過し、必要に応じてホップなどを加えて煮沸し、清澄にて凝固タンパクなどの固形分を取り除く。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。次いで、酵母を添加して発酵を行わせるが、発酵段階で高炭酸ガス濃度にする場合は発酵タンク内で所定の炭酸ガス濃度になるまで発酵させることができる。あるいは発酵終了後に所定の炭酸ガス濃度になるまで炭酸ガスを導入して発酵液に溶解させても良い。発酵タンクは密閉式であることが望ましく、加圧式であることが好ましい。
【0020】
または、発酵後に濾過材により酵母などの不溶性物質を除去して得られる麦芽発酵飲料を容器に充填する際に、当業者によく知られた充填装置により炭酸ガスとともに充填することで所定の炭酸ガス濃度を有する容器詰め高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料を得ることが出来る。
【0021】
本発明の飲料の製造には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、通常の麦芽発酵飲料において良く用いられる原料、例えば、甘味料、酸味料、香料、酵母エキス、カラメル色素などの着色料、大豆サポニンやキラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーンや大豆などの植物タンパク質およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、食物繊維やアミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤、各種酸味料を用いてもよい。ただ、アスパルテームの様な高甘味度甘味料、縮合リン酸塩等は、他の種類の炭酸飲料、例えば甘味を有する炭酸飲料において良く用いられるものである。そのようなものと全く異なる技術分野に属する麦芽発酵飲料は、通常はそのような成分を含まない。
【0022】
(容器詰め飲料)
本発明の高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料は容器詰めとすることが好ましい。容器の形態は何ら制限されず、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して容器入り飲料とすることが出来る。高炭酸ガス濃度を維持するため、ペットボトルを使用する場合はガスバリア製の高いものを使用することが望ましい。また、加熱殺菌を必要とする場合は温度上昇に伴い容器内の内圧が高くなるため、高ガス圧対応の容器を使用することが望ましい。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げ本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
麦芽30kgをロールミルにて粉砕し65℃の温水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過し穀皮を取り除いた後、ホップ約100gを投入し100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し1週間程度の発酵と2週間程度の熟成ののち、濾過を行った。原麦汁エキスを12重量%に調整し、麦芽醗酵飲料を得た。通常ガス圧にて350mLの缶に充填して密封したものを対照品とした。炭酸ガス濃度を測定したところ0.55w/w%であった。上記麦芽発酵飲料を缶に充填する際に、通常より多い炭酸ガスとともに350mLの缶に充填し、密封したものを本願発明のサンプルとした。なお炭酸ガス濃度が0.60、0.65、0.71、0.81w/w%になるように炭酸ガス量を調整した。ガス濃度の測定には、ガスボリューム測定装置 GVA−500A(京都電子工業株式会社)を用いた。20℃で測定を行うため、予めサンプルを含む缶を20℃にした。
【0025】
本発明に係る高炭酸ガス濃度麦芽発酵飲料の官能を評価するため、4℃に保冷した上記対照とサンプルを使用し、訓練された7名のパネリストにより官能評価試験を行った。炭酸感、爽快感については評価は10段階とし、感じ方の最も弱いものを1点、感じ方の最も強いものを10点とし、平均点により評価した。嗜好度については7段階での官能評価を行った(1.全くおいしくない〜4.どちらでもない〜7.とてもおいしい)。
【0026】
<炭酸感>
口に含んだときに感じる炭酸感について評価した結果を図1に示す。
図1から明らかなように、炭酸ガス濃度が高いほど炭酸感は強く感じられることが示された。
【0027】
<爽快感>
各サンプルの炭酸ガス濃度と喉越しの爽快感について評価した結果を図2に示す。
図2に示すとおり、爽快感は炭酸ガス濃度が高いほど良いというわけではなく、0.65w/w%の場合に最高値を示し、意外なことにそれより高い炭酸ガス濃度では逆に爽快感が徐々に失われることが明らかとなった。
【0028】
<嗜好度>
上記結果から、炭酸ガス濃度が0.65w/w%を超えると爽快感が低下することが明らかとなったため、消費者に好まれる度合い、すなわち嗜好度について評価した。
結果を図3に示すが、0.65w/w%のサンプルが最も高い値(4.66)であった。
【0029】
実施例2
まず、麦芽49%および糖液51%の原料組成となる中間体麦芽飲料を製造した。糖液は、市販の糖液を用いた。糖化させた麦芽に糖液を加え、エキス分12%の麦汁を得た。これに市販のビール酵母(Weihenstephan−34)を添加して常法により発酵させ、アルコール分5.5%の中間体麦芽飲料を得た。
この中間体麦芽飲料1500Lに、小麦スピリッツ9.7Lを添加し、混合し、次いで酵母除去のために濾過工程を実施して、麦芽発酵飲料(リキュール類)を製造した。小麦スピリッツは、小麦と水を原料とし、糖化、発酵、蒸留(連続蒸留機を使用)して得たアルコール分44%のスピリッツを、常法にしたがって調整したものである。
当該麦芽発酵飲料(リキュール類)を通常ガス圧にて350mLの缶に充填して密封したものを対照品とした。炭酸ガス濃度を測定したところ0.55w/w%であった。また、得られた麦芽発酵飲料(リキュール類)を缶に充填する際に、通常より多い炭酸ガスとともに350mL缶に充填し、密封したものを本願発明のサンプルとした。この際には、炭酸ガス濃度が0.60、0.65、0.71、0.81w/w%になるように炭酸ガス量を調整した。
【0030】
得られた対照品と本願発明のサンプルについて、実施例1と同様の感応評価試験を行った。具体的な方法及び評価基準は、実施例1の記載を参照されたい。
【0031】
<結果>
炭酸感の評価結果を図4に、喉越しの爽快感の評価結果を図5に、嗜好度の評価結果を図6に示す。いずれについても実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0032】
実施例3
実施例1の方法に準じて、炭酸濃度が0.64、0.62、0.59、0.56w/w%の麦芽発酵飲料を製造した。得られた飲料について、以下の方法により泡の安定性を評価した。
この方法は、所定量の発泡性飲料(サンプル)を所定の時間で所定のメスシリンダーに注ぎ込み、一定時間後にメスシリンダーの壁に付着して残っている泡の量(泡付着面積)を計測することで泡の安定性を定量的に評価する方法である。サンプルおよびサンプルと接触する器具(メスシリンダーやサンプル注入時に使用する漏斗)は予め20℃にしておき、測定は20℃恒温室内で実施した。メスシリンダー(2L)に漏斗を載せ、ロートの壁面を伝わらせながら均一の条件でサンプル全量(大瓶1本分、約633mL)を平均して注ぎこんだ(要する時間は約20秒間になるように)。注ぎ終わったらロートを外して静置した。サンプルを注ぎ始めてから29分後、フラッシュバルブをメスシリンダー内にセットし(液面と泡との境界から200mL程度上の位置)、続いて感光紙を泡の付着している面を覆うようにメスシリンダーの外壁に巻きつけ、サンプル注入開始から正確に30分後の写真を撮った。感光紙を現像したものの液面と泡との境界線に線をひき、写し出された泡残存部分を縁取りした。大きな泡の塊はそのまま縁取りした。小さな塊の中で長径が1cmに満たないものは無視した。縁取りした泡付着面積を面積測定器により計測し、泡付量(T−SHV値)として算出した。なお、泡付着の写真撮影および泡部分の面積測定には、CCDカメラ撮影および画像解析処理を用いてもよい。計測した泡付着面積が大きいほど泡安定性がよいと判断できる。これまでのビール類での知見から、T−SHV値が100cm未満では泡安定性は明らかに不十分であり、150cm以上あれば良好であり、230cm以上であれば、より良好であると言える。
結果を以下の表1及び図7に示す。表1及び図7のデータから明らかな通り、炭酸濃度が0.6w/w%を上回ると飲料の泡の安定性が著しく高まることが明らかとなった。
【表1】
尚、泡の安定化は、他の方法により泡付、泡持ち等を測定することによっても評価できる。泡付とは、容器に注がれた後に生成した泡が容器に付着する能力を意味する。本明細書においては、泡付の改善も、泡の安定化に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7