(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ゴム層の厚みが赤道面上において最大となっており、上記ゴム層の形状が、この厚みが最大の部分から軸方向外側に向けて先細りである請求項1に記載の二輪自動車用タイヤ。
軸方向において、赤道面から上記ゴム層の外側端までの幅がWiとされ、赤道面から上記第二層の外側端までの幅がWbとされたとき、幅Wiの幅Wbに対する比(Wi/Wb)が0.8以上1.0以下である請求項1又は2に記載の二輪自動車用タイヤ。
上記ゴム層の複素弾性率がEiとされ、上記トッピングゴムの複素弾性率がEcとされたとき、複素弾性率Eiの複素弾性率Ecに対する比(Ei/Ec)が0.9以上1.1以下である請求項1から3のいずれかに記載の二輪自動車用タイヤ。
赤道面上における上記ゴム層の厚みがTiとされ、上記トッピングゴムの厚みがTcとされたとき、厚みTiの厚みTcに対する比(Ti/Tc)が1.0以上2.0以下である請求項1から4のいずれかに記載の二輪自動車用タイヤ。
【背景技術】
【0002】
二輪自動車が直進走行する際には、二輪自動車はほぼ直立しているため、タイヤのクラウン部が主に接地している。二輪自動車が高速で直進走行するときには、タイヤのクラウン部に対し遠心力に起因する大きな負荷がかかる。クラウン部には、この負荷に耐えうる剛性が必要となる。クラウン部の剛性の不足は、直進安定性の低下を招来する。
【0003】
二輪自動車が旋回する時には、十分なキャンバースラストを得るために、ライダーは二輪自動車を内側へ傾斜させる。このため、旋回時には、タイヤのショルダー部が主に接地している。サーキット走行で車体を大きく傾斜させて走行すると、タイヤのショルダー部には、強い横力が負荷される。ショルダー部には、この強い横力に耐えうる剛性が必要となる。ショルダー部の剛性の不足は、旋回安定性の低下を招来する。
【0004】
タイヤの剛性を大きくするために、カーカスを三枚のプライで構成する方法が採られることがある。しかし、この方法では、クラウン部の剛性が過大となることが起こりうる。クラウン部の過大な剛性は、直進時にタイヤに加わる外乱の吸収性を悪化させる。これは、逆に直進安定性を損ねる要因となりうる。さらにこのタイヤでは、ショルダー部の剛性も過大になることが起こりうる。ショルダー部の過大な剛性は、旋回時のタイヤの滑りを招来する。これは、旋回安定性を損ねる要因となりうる。
【0005】
走行安定性を改善した二輪自動車用のタイヤが、特開平10−147108に開示されている。このタイヤは、カーカスを補強するために、二層からなるブレーカ(ベルト)を備えるとともに、クラウン部には、トレッドの幅よりも狭い幅をもつプライを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直進時及び旋回時の走行安定性をさらに改善した二輪自動車用のタイヤが求められている。特開平10−147108公報のタイヤでは、クラウン部に設けられたプライのために、クラウン部の剛性が過剰になることが起こりうる。このタイヤは、直進時の走行安定性に劣る。
【0008】
本発明の目的は、直進時及び旋回時の高い走行安定性を実現した二輪自動車用タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る二輪自動車用タイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトと、このトレッドの半径方向内側に位置するゴム層とを備えている。上記ベルトは第一層とこの第一層の半径方向外側に位置する第二層とを備えている。上記第一層及び上記第二層のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとを備えている。上記ゴム層は上記第一層と上記第二層との間に位置している。赤道面上での上記ゴム層の厚みは、上記ゴム層の軸方向外側端での上記ゴム層の厚みよりも厚くされている。
【0010】
好ましくは、上記ゴム層の厚みは赤道面上において最大となっており、上記ゴム層の形状は、この厚みが最大の部分から軸方向外側に向けて先細りである。
【0011】
好ましくは、軸方向において、赤道面から上記ゴム層の外側端までの幅がWiとされ、赤道面から上記第二層の外側端までの幅がWbとされたとき、幅Wiの幅Wbに対する比(Wi/Wb)は0.8以上1.0以下である。
【0012】
好ましくは、上記ゴム層の複素弾性率がEiとされ、上記トッピングゴムの複素弾性率がEcとされたとき、複素弾性率Eiの複素弾性率Ecに対する比(Ei/Ec)は0.9以上1.1以下である。
【0013】
好ましくは、赤道面上における上記ゴム層の厚みがTiとされ、上記トッピングゴムの厚みがTcとされたとき、厚みTiの厚みTcに対する比(Ti/Tc)は1.0以上2.0以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る二輪自動車用タイヤは、ベルトの第一層と第二層との間にゴム層を有している。赤道面上での上記ゴム層の厚みは、上記ゴム層の軸方向外側端での上記ゴム層の厚みよりも厚くされている。赤道面の近辺では、第一層と第二層との間が離れているので、第一層と第二層との間の拘束力が弱くなる。これは、クラウン部の面内剛性を抑制する。このゴム層は、クラウン部の面内剛性が過大になるのを抑制する。このクラウン部は、外乱吸収性に優れる。一方、クラウン部に半径方向外側に凸に変形するように曲げ力が加わった場合、第二層には引っ張り方向の力がかかり、第一層には圧縮方向の力がかかる。このタイヤでは、第一層と第二層との距離が離れているため、この距離が離れていないタイヤに比べて、第二層の変形には、より大きな引っ張り力が必要となる。即ち、この構造は、クラウン部の面外曲げ剛性を向上させる。このクラウン部を有するタイヤは、直進時の走行安定性に優れる。
【0015】
本発明に係る二輪自動車用タイヤでは、ショルダー部においては第一層と第二層とは近接している。第一層と第二層とが近接しているので、第一層と第二層との間の拘束力は強い。これは、面内剛性の向上に寄与する。このショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤでは、旋回時に高いコーナリングパワー(CP)及びセルフアライニングトルク(SAT)が維持されている。また、第一層と第二層とが近接しているため、ショルダー部においては、面外曲げ剛性が抑制されている。このタイヤでは、ショルダー部の面外曲げ剛性が過大になることが抑制されている。このショルダー部を有するタイヤは、旋回時の走行安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1に示された空気入りタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、インナーライナー12、ベルト14及びゴム層16を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、二輪自動車に装着される。
図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ2は、
図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0019】
トレッド4は、架橋ゴムからなる。トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、トレッド面18を備えている。このトレッド面18は、路面と接地する。図示されないが、このトレッド面18には溝が刻まれている。この溝により、トレッドパターンが形成されている。なお、このトレッド面18に溝が刻まれなくてもよい。
【0020】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
【0021】
ビード8は、サイドウォール6よりも軸方向略内側に位置している。ビード8は、コア20と、このコア20から半径方向外向きに延びるエイペックス22とを備えている。コア20は、リング状である。コア20は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア20にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス22は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス22は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0022】
カーカス10は、第一プライ10a及び第二プライ10bからなる。第一プライ10a及び第二プライ10bは、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一プライ10aは、コア20の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ10aには、主部24と折り返し部26とが形成されている。第二プライ10bは、コア20の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ10bには、主部28と折り返し部30とが形成されている。第一プライ10aの折り返し部26の端は、半径方向において、第二プライ10bの折り返し部30の端よりも外側に位置している。
【0023】
第一プライ10a又は第二プライ10bのいずれか一方がコア20の周りで折り返されていなくてもよい。換言すれば、第一プライ10a又は第二プライ10bのいずれか一方が折り返し部を有しなくてもよい。
【0024】
図示されないが、第一プライ10a及び第二プライ10bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、65°以上から90°以下である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、3枚以上のプライから形成されてもよい。
【0025】
インナーライナー12は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー12は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー12は、架橋ゴムからなる。インナーライナー12には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー12の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー12は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0026】
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス10と積層されている。ベルト14は、カーカス10を補強する。ベルト14は、第一層14a及び第二層14bからなる。第二層14bは、第一層14aの半径方向外側に位置する。
【0027】
図2は、第一層14a又は第二層14bの一部が示された拡大断面図である。第一層14a及び第二層14bのそれぞれは、並列された多数のコード32とトッピングゴム34とからなる。この図において、第一層14a又は第二層14bは、それぞれのコードの延在方向と垂直な面で切断されている。各コード32は、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、15°以上30°以下である。第一層14aのコード32の赤道面に対する傾斜方向は、第二層14bのコード32の赤道面に対する傾斜方向とは逆である。このタイヤ2では、コード32の材質は有機繊維である。好ましい有機繊維はアラミド繊維である。コード32が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維及びポリエチレンナフタレート繊維からなってもよい。また、コード32の材質がスチールでもよい。
【0028】
ゴム層16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ゴム層16は、第一層14aと第二層14bとの間に位置している。ゴム層16は、第一層14aと第二層14bとに挟まれている。赤道面上でのゴム層16の厚みは、上記ゴム層16の軸方向外側端における上記ゴム層16の厚みよりも厚い。好ましくは
図1に示されるとおり、ゴム層16の厚みは赤道面上において最大となっている。
図1のタイヤ2では、赤道面近辺においては、ゴム層16の厚さはほぼ一定である。ゴム層16の形状は、この厚さが一定の部分から軸方向外側端に向けて先細りである。ゴム層16は三日月状を呈している。ゴム層16の形状が、厚さが一定の部分がなく、赤道面上の点から軸方向外側端に向けて、先細りであってもよい。
【0029】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0030】
直進時及び旋回時の走行安定性をさらに改善した二輪自動車用のタイヤが求められている。二輪自動車が高速で直進するときには、クラウン部には遠心力に起因する大きな力が負荷される。この負荷に対して直進時の高い走行安定性を実現するためには、クラウン部は十分な面外曲げ剛性を有することが必要である。クラウン部の十分な面外曲げ剛性は、直進から旋回に移行するときのキャンバースラストの向上にも寄与する。さらに、直進時の走行安定性の向上のためには、クラウン部には高い外乱吸収性が求められる。すなわち、路面の凹凸等の状態が、過度に操舵に影響を及ぼさないことが必要となる。これは、クラウン部の面内剛性を過大にしないことで実現できる。高い直進時の走行安定性を実現するには、クラウン部の面外曲げ剛性を大きくし、面内剛性を過大にしないことが重要となる。
【0031】
旋回時の走行安定性のためには、ライダーの操舵入力に対して二輪自動車が即座に反応をすることが求められる。旋回時にはタイヤは、高いコーナリングパワー(CP)とセルフアライニングトルク(SAT)とを有することが必要となる。これは、タイヤのショルダー部の面内剛性を大きくすることで実現できる。一方、ショルダー部の過大な面外曲げ剛性は、旋回時のタイヤの滑りを招来しうる。ショルダー部の過大な面外曲げ剛性は、旋回時の走行安定性を損ねる要因となりうる。旋回時の高い走行安定性の実現には、ショルダー部の面内剛性を大きくし、面外曲げ剛性を過大にしないことが重要となる。
【0032】
本発明に係る二輪自動車用タイヤ2は、ベルト14の第一層14aと第二層14bとの間にゴム層16を有している。赤道面上でのゴム層16の厚みは、ゴム層16の軸方向外側端におけるゴム層16の厚みよりも厚くされている。赤道面の近辺では、第一層14aと第二層14bとの間が離れているので、第一層14aと第二層14bとの間の拘束力が弱くなる。これは、クラウン部の面内剛性を抑制する。このゴム層16は、クラウン部の面内剛性が過大になるのを抑制する。このクラウン部は、外乱吸収性に優れる。一方、クラウン部に半径方向外側の凸に変形するように曲げ力が加わった場合、第二層14bには引っ張り方向の力がかかり、第一層14aには圧縮方向の力がかかる。このタイヤ2では、第一層14aと第二層14bとの距離が離れているため、この距離が離れていないタイヤ2に比べて、第二層14bが変形するには、より大きな引っ張り力が必要となる。即ち、この構造は、クラウン部の面外曲げ剛性を向上させる。このクラウン部を有するタイヤ2は、直進時の走行安定性に優れる。
【0033】
本発明に係る二輪自動車用タイヤ2では、ショルダー部においては第一層14aと第二層14bとは近接している。第一層14aと第二層14bとが近接しているので、第一層14aと第二層14bとの間の拘束力は強い。これは、面内剛性の向上に寄与する。このショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤ2では、旋回時に高いCP及びSATが維持されている。また、第一層14aと第二層14bとが近接しているため、面外曲げ剛性が抑制されている。このタイヤ2では、ショルダー部の面外曲げ剛性が過大になることが抑制されている。このショルダー部を有するタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。
【0034】
図1において、両矢印Wbは、赤道面から第二層14bの軸方向外側端までの軸方向の幅である。両矢印Wiは、赤道面からゴム層16の軸方向外側端までの軸方向の幅である。比(Wi/Wb)は、0.8以上が好ましい。比(Wi/Wb)が0.8以上のゴム層16を有するタイヤ2では、クラウン部の面内剛性が適正に保たれうる。このクラウン部の面内剛性は過剰となることはない。このクラウン部は外乱吸収性に優れる。さらにこのクラウン部は十分な面外曲げ剛性を有する。このタイヤ2は直性時の走行安定性に優れる。この観点から比(Wi/Wb)は0.9以上がより好ましい。比(Wi/Wb)の最大値は1.0である。
【0035】
ゴム層16の複素弾性率がEiとされ、上記トッピングゴム34の複素弾性率がEcとされたとき、複素弾性率Eiの複素弾性率Ecに対する比(Ei/Ec)は1.1以下が好ましい。比(Ei/Ec)が1.1以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部の面外曲げ剛性は過剰とならない。このタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。
【0036】
比(Ei/Ec)は0.9以上が好ましい。比(Ei/Ec)が0.9以上のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部が十分な面内剛性を有する。このタイヤ2は、高いCP及びSATが維持されている。このショルダー部を有するタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。さらにこのゴム層16は、良好なクラウン部の面外曲げ剛性の実現に寄与する。このタイヤ2は直進時の走行安定性に優れる。この観点から比(Ei/Ec)は1.0以上がより好ましい。
【0037】
複素弾性率Eiは2.2MPa以下が好ましい。複素弾性率Eiが2.2MPa以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部の面外曲げ剛性は過剰とならない。このタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。この観点から複素弾性率Eiは2.1MPa以下がより好ましい。
【0038】
複素弾性率Eiは1.8MPa以上が好ましい。複素弾性率Eiが1.8MPa以上のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部が十分な面内剛性を有する。このタイヤ2は、高いCP及びSATが維持されている。このショルダー部を有するタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。さらにこのゴム層16は、良好なクラウン部の面外曲げ剛性の実現に寄与する。このタイヤ2は直進時の走行安定性に優れる。この観点から複素弾性率Eiは1.9MPa以上がより好ましい。
【0039】
本発明では、ゴム層16の複素弾性率Ei及びトッピングゴム34の複素弾性率Ecは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、下記に示される条件で計測される。
初期歪み:10%
振幅:±2.5%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:100℃
【0040】
図1おいて両矢印Tiは、赤道面上におけるゴム層16の厚みである。詳細には、厚みTiは、赤道面上におけるゴム層16の内面と外面との半径方向の距離である。
図2において、両矢印Tcは、第一層14a又は第二層14bのトッピングゴム34の厚みである。厚みTiの厚みTcに対する比(Ti/Tc)は1.0以上が好ましい。比(Ti/Tc)が1.0以上のゴム層16を有するタイヤ2では、クラウン部の面内剛性が適正に保たれうる。このクラウン部の面内剛性は過剰となることはない。このクラウン部は外乱吸収性に優れる。さらにこのゴム層16は、クラウン部の面外曲げ剛性の向上に寄与する。このタイヤ2は直性時の走行安定性に優れる。この観点から比(Ti/Tc)は1.2以上がより好ましい。
【0041】
比(Ti/Tc)は2.0以下が好ましい。比(Ti/Tc)が2.0以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部において第一層14aと第二層14bとが近接している。このタイヤ2のショルダー部は、面外曲げ剛性が抑制されている。さらにこのタイヤ2のショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤ2は、良好な旋回時の走行安定性を維持している。この観点から比(Ti/Tc)は1.8以下がより好ましい。
【0042】
厚みTiは1.10mm以上が好ましい。厚みTiが1.10mm以上のゴム層16を有するタイヤ2では、クラウン部の面内剛性が適正に保たれうる。このクラウン部の面内剛性は過剰となることはない。このクラウン部は外乱吸収性に優れる。さらにこのゴム層16は、クラウン部の面外曲げ剛性の向上に寄与する。このタイヤ2は直性時の走行安定性に優れる。この観点から厚みTiは1.20mm以上がより好ましい。
【0043】
厚みTiは2.20mm以下が好ましい。厚みTiが2.20mm以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部において第一層14aと第二層14bとが近接されうる。このタイヤ2のショルダー部は、面外曲げ剛性が抑制されている。さらにこのタイヤ2のショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤ2は、良好な旋回時の走行安定性を維持している。この観点から厚みTiは2.10mm以下がより好ましい。
【0044】
図示されないが、ゴム層16の軸方向外側端におけるこのゴム層16の厚みがTeとされたとき、厚みTeの厚みTiに対する比(Te/Ti)は0.3以下が好ましい。比(Te/Ti)が0.3以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部において第一層14aと第二層14bとが近接している。このタイヤ2のショルダー部は、面外曲げ剛性が抑制されている。さらにこのタイヤ2のショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤ2は、良好な旋回時の走行安定性を維持している。この観点から比(Te/Ti)は0.2以下がより好ましい。
【0045】
厚みTeは0.3mm以下が好ましい。厚みTeが0.3mm以下のゴム層16を有するタイヤ2では、ショルダー部において第一層14aと第二層14bとが近接している。このタイヤ2のショルダー部は、面外曲げ剛性が抑制されている。さらにこのタイヤ2のショルダー部は、十分な面内剛性を有する。このショルダー部を有するタイヤ2は、良好な旋回時の走行安定性を維持している。この観点から厚みTeは0.2mm以下がより好ましい。
【0046】
本発明では、タイヤ2及びタイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0048】
[実施例1]
図1に示された構造を備えた、実施例1の二輪自動車用タイヤを得た。タイヤのサイズは、120/70R17とされた。下記表1にこのタイヤの諸元が示されている。複素弾性率Eiは2.0MPaであり、複素弾性率Ecは1.8MPaである。従って比(Ei/Ec)は1.1である。厚みTiは1.65mmであり、厚みTcは1.1mmである。従って比(Ti/Tc)は1.5である。このゴム層の形状は、軸方向外側端に向けて先細りである。即ち、ゴム層は三日月状を呈している。このゴム層の形状は、表の「ゴム層の形状」の欄に「三日月状」と表されている。厚みTeは0.2mm以下である。
【0049】
カーカスの第一プライ及び第二プライのコードの材質はレーヨン繊維である。このコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は70°である。このコードの構造は、1840detx/2である。ベルトの内側層及び外側層のコードの材質はアラミド繊維である。このコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は22°である。このコードの構造は、1670detx/2である。
【0050】
[比較例1]
ゴム層を有しない他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。これは、従来のタイヤである。
【0051】
[比較例2]
ゴム層が赤道面上から軸方向外側端まで一定の厚みを有する形状を呈している他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。このゴム層の形状は、表の「ゴム層の形状」の欄に「板状」と表されている。
【0052】
[実施例2−4]
幅Wiを変更し、比(Wi/Wb)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−4のタイヤを得た。
【0053】
[実施例5−7]
複素弾性率Eiを変更し、比(Ei/Ec)を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5−7のタイヤを得た。
【0054】
[実施例8−13]
厚みTiを変更し、比(Ti/Tc)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−13のタイヤを得た。
【0055】
[直進走行安定性、旋回走行安定性]
試作タイヤを標準リム(サイズ=MT3.50)に組み込み、排気量が600ccである二輪自動車の前輪に装着した。このタイヤの内圧は250kPaとされた。後輪には、市販のタイヤ(サイズ:180/55R17)を装着し、その内圧が200kPaとなるように空気を充填した。この二輪自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させて、ライダーによる官能評価を行った。評価項目は、直進走行安定性と旋回走行安定性である。この結果が、下記表1から表3に示されている。値が大きいほど好ましい。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1から表3に示されるように、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて旋回走行性の劣化を抑えつつ、優れた直進走行安定性を実現している。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。