(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁の間に、前記所定スパンを互いに等しい梁間隔の分割スパンに分割する追加梁が配置され、前記分割スパンを跨いで床パネル体が配置された遮音床の施工方法において、
前記梁間隔を利用して、前記床パネル体に含まれたパネル本体部の固有振動数を算出する工程と、
前記固有振動数が下限固有振動数以上である場合に、前記パネル本体部と協働して前記床パネル体の断面性能を規定する補剛部を前記パネル本体部の上面及び/又は下面に設ける工程と、を有する、遮音床構造の施工方法。
前記補剛部を前記パネル本体部の上面及び/又は下面に設ける工程では、前記固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満である場合に、補剛部を前記パネル本体部の上面及び/又は下面に設ける、請求項1に記載の遮音床構造の施工方法。
所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁の間に、前記所定スパンを互いに等しい梁間隔の分割スパンに分割する追加梁が配置され、前記分割スパンを跨いで床パネル体が配置された遮音床の施工方法において、
前記梁間隔を利用して、前記床パネル体に含まれたパネル本体部の固有振動数を算出する工程と、
前記固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満である場合には、前記パネル本体部と協働して前記床パネル体の断面性能を規定する補剛部を前記パネル本体部の上面及び/又は下面に設け、前記固有振動数が目標固有振動数以上である場合には、前記床パネル体の断面性能が前記パネル本体部により規定されるように前記パネル本体部の上面及び/又は下面に非補剛部を設ける工程と、を有する、遮音床構造の施工方法。
【背景技術】
【0002】
床構造の技術分野において重量衝撃音の遮断性能に注目した技術として、特許文献1〜6及び非特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、床用遮音複合パネルが記載されている。この床用遮音複合パネルは、鉄骨建築物や木造建築物の床を構成する軽量気泡コンクリートパネル(以下、「ALCパネル」ともいう)とその両面に接着された合板パネルとからなる。ALCパネルの厚さは9mm以上75mm未満である。ALCパネルの一方の面に貼着される合板パネルの厚さは6mm〜15mmであり、他方の面に貼着される合板パネルの厚さは2mm〜12mmである。
【0004】
特許文献2には、所定の面外剛性を有する軽量の床版が記載されている。この床板は、金属板サンドイッチ床版であり、コア部と、コア部の上下面に取り付けられた金属板部とを有する。コア部には、軽量気泡コンクリート、軽量コンクリート、発泡樹脂が用いられる。また、コア部の幅方向端部に切り欠が形成され、この切り欠に対してコア部の幅方向端部において切り欠かれていない突起部が挿入される。この接合方法を用いれば、遮音性を向上させることができる。
【0005】
特許文献3には、優れた床衝撃音遮断性能を確保しながらスラブ厚さを薄くできる床スラブが記載されている。梁の間に掛け渡された床スラブは、プレキャストコンクリート製の床板に取り付けられた垂壁を備えている。垂壁は、床板の下面よりも下方に突出すると共に、梁から離れて設けられている。垂壁を設けたことによって揺れにくい床スラブとなり、従来の垂壁を有しない床スラブと比べて、スラブの厚さを薄くできて、床衝撃音遮断性能が向上する。
【0006】
特許文献4には、重量床衝撃音を効果的に低減する遮音床構造が記載されている。この床構造は、床パネルが配置される床梁の間隔が400mm〜600mmに設定されている。この設定によれば、床梁の配置が通常よりも密であり、床パネルに発生した低域周波数の振動が分散されて壁構造体へ伝達される。従って、低域周波数の振動を壁の広い範囲で受けることになる。そして、振動は、内壁面から分散された状態で下階へ放射されるので重量衝撃音が低減する。
【0007】
特許文献5には、下階への床衝撃音遮断性能を向上できる床スラブが記載されている。この床スラブは、平板部と平板部の上面又は下面に突出する凸部を備えている。床スラブでは、階下への所望の床衝撃音遮断性能が得られる固有振動数となるように、スラブ厚さが設計されている。
【0008】
特許文献6には、遮音性を向上させるのに好適なパネル床構造が記載されている。このパネル床構造体は、上面材と下面材とを連結して空間を形成する鋼製芯材を有している。そして、上下面材の長さ、幅、厚さ、間隔、芯材の長さ等の少なくとも1個以上を調整し、全体振動系の1次固有振動数を15Hz〜45Hzに設定する。更に、上下面材及び芯材のそれぞれにおける部分振動系の1次固有振動数を707Hz〜20000Hzに設定する。
【0009】
また、非特許文献1には、重量衝撃音の遮断性能の改善を目的とした技術が記載されている。この技術では、ALC床パネルの補強構造や、梁間隔をパラメータとして選択し、重量衝撃音の遮断性能を好適に改善しえる床構造について言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、重量衝撃音の遮断性能は、床構造の固有振動数と関係があり(特許文献6)、重量衝撃音の遮断性能を高めるためには、床構造の固有振動数を高める必要がある。
床構造の固有振動数には、床パネルを支持する梁間隔が大きな影響を与え、梁間隔が短くなるほど床構造の固有振動数は高まる傾向にある。
【0013】
しかし、梁間隔は、床構造の固有振動数とは別の要因で設定されることがあり、梁間隔の設計自由度は小さい。したがって、設定しえる梁間隔の値の基で床構造の固有振動数を目標値以上に設定しようとすると、床構造を構成する追加梁といった部材の数が増加し、施工性が悪くなることがある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、床構造の施工性の劣化を抑制しつつ、床構造の重量衝撃音の遮断性能を向上させることが可能な遮音床構造の施工方法、遮音床構造、床パネル体及び遮音床構造建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面は、所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁の間に、所定スパンを互いに等しい梁間隔の分割スパンに分割する追加梁が配置され、分割スパンを跨いで床パネル体が配置された遮音床の施工方法である。この施工方法は、梁間隔を利用して、床パネル体に含まれたパネル本体部の固有振動数を算出する工程と、固有振動数が下限固有振動数以上である場合に、パネル本体部と協働して床パネル体の断面性能を規定する補剛部をパネル本体部の上面及び/又は下面に設ける工程と、を有する。
【0016】
この施工方法では、パネル本体部の固有振動数を算出し、当該固有振動数が下限固有振動数以上であるときに補剛部をパネル本体部の上面及び/又は下面に設ける。これらの工程によれば、パネル本体部の固有振動数が下限固有振動数以上であれば、更なる追加梁を設けることなく目標固有振動数を満たすことができる。従って、追加梁の追加による床構造の施工性の劣化が抑制される。そして、パネル本体部に補剛部を設けることにより、パネル本体部と補剛部とにより形成される床パネル体の固有振動数が目標固有振動数以上に高まるので、重量衝撃音の遮断性能を向上させることができる。
【0017】
また、補剛部をパネル本体部の上面及び/又は下面に設ける工程では、固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満である場合に、補剛部をパネル本体部の上面及び/又は下面に設けてもよい。この施工方法によれば、固有振動数が目標固有振動数未満である場合であっても、補剛部を設けることにより目標固有振動数を満たすことが可能になる。従って、遮音床の施工において、所望の遮音性能を満たすために要求される目標固有振動数を簡易な施工により満たすことができる。
【0018】
また、本発明の別の側面は、所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁の間に、所定スパンを互いに等しい梁間隔の分割スパンに分割する追加梁が配置され、分割スパンを跨いで床パネル体が配置された遮音床の施工方法である。この施工方法は、梁間隔を利用して、床パネル体に含まれたパネル本体部の固有振動数を算出する工程と、固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満である場合には、パネル本体部と協働して床パネル体の断面性能を規定する補剛部をパネル本体部の上面及び/又は下面に設け、固有振動数が目標固有振動数以上である場合には、床パネル体の断面性能がパネル本体部により規定されるようにパネル本体部の上面及び/又は下面に非補剛部を設ける工程と、を有する。
【0019】
この施工方法によれば、固有振動数が目標固有振動数未満である場合であっても、補剛部を設けることにより目標固有振動数を満たすことが可能になる。従って、遮音床の施工において、所望の遮音性能を満たすために要求される目標固有振動数を簡易な施工により満たすことができる。さらに、固有振動数が目標固有振動数以上である場合には、パネル本体部に非補剛部が設けられるので、所望の遮音性能を満たすために要求される目標固有振動数を満たしつつ、床パネル体に対して床パネル体の高剛性化とは別の機能を付与することができる。
【0020】
本発明の別の側面に係る遮音床構造は、所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁と、主梁の間に配置され、所定スパンを互いに等しい梁間隔の分割スパンに分割する追加梁と、分割スパンを跨いで配置され、梁間隔により規定される第1の固有振動数が目標固有振動数以上である床パネル体と、を備え、床パネル体は、梁間隔により規定される第2の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満であるパネル本体部と、パネル本体部の表面に設けられ、パネル本体部と協働して床パネル体の断面性能を規定する補剛部と、を有する。
【0021】
この遮音床構造では、床パネル体がパネル本体部とパネル本体部と協働して床パネル体の断面性能を規定する補剛部を有している。そして、パネル本体部は、梁間隔により規定される第2の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満であるものの、補剛部が設けられることにより、床パネル体の第1の固有振動数が目標固有振動数以上になっている。このような構造によれば、パネル本体部の固有振動数が目標固有振動数未満であっても下限固有振動数以上であれば、所定スパンを短くするために更に追加梁を設ける必要がなくなる。従って、追加梁の追加による床構造の施工性の劣化が抑制される。そして、パネル本体部に補剛部を設けることにより、パネル本体部と補剛部とにより形成される床パネル体の固有振動数が目標固有振動数以上に高まるので、重量衝撃音の遮断性能を向上させることができる。
【0022】
また、床パネル体は、パネル本体部と補剛部との境界位置が床パネル体の厚さ方向における中立軸位置の近傍である。この構造によれば、床パネル体に外力が作用したとき、パネル本体部と補剛部との接合面においてせん断力の発生が抑制されて、境界部に生じる伸縮変形が低減される。従って、パネル本体部と補剛部との境界部の損傷を抑制できる。
【0023】
また、目標固有振動数は、100Hzであり、下限固有振動数は、40Hzである。これら固有振動数によれば、重量衝撃音が有する所定の振動数から遮音床構造体の固有振動数を異ならせることが可能になる。従って、共振による遮音床構造体の遮音性能の低下を抑制できる。
【0024】
また、目標固有振動数は、120Hzであり、下限固有振動数は、40Hzである。これら固有振動数によれば、重量衝撃音が有する所定の振動数から遮音床構造体の固有振動数を一層異ならせることが可能になる。従って、共振による遮音床構造体の遮音性能の低下を抑制できる。
【0025】
また、補剛部は、パネル本体部の下面に設けられている。パネル本体部の下面は、施工後に見えなくなる場所である。従って、補剛部が見えない位置に配置されることになるため、意匠性を高めることができる。
【0026】
また、パネル本体部の下面は、主梁及び追加梁が取り付けられる梁固定領域と、補剛部が固定される補剛部設置領域と、を有し、補剛部設置領域は、梁固定領域に対して重複していない。この構造によれば、パネル本体部と主梁、及びパネル本体部と追加梁とが直接に接触した状態で固定されるので、パネル本体部に対して主梁及び追加梁を好適に接合することができる。また、同様に、パネル本体部に補剛部を設ける場合に、主梁及び追加梁が干渉することなく、パネル本体部に対して補剛部が直接に接触した状態で固定されるので、パネル本体部に補剛部を好適に接合することができる。
【0027】
パネル本体部の下面は、耐火被覆が取り付けられる耐火被覆取付領域を更に有し、補剛部設置領域は、耐火被覆取付領域に対して重複していない。この構造によれば、パネル本体部に補剛部を設ける場合に、耐火被覆が干渉することなく、パネル本体部に対して補剛部が直接に接触した状態で固定されるので、パネル本体部に補剛部を好適に接合することができる。
【0028】
また、補剛部は、パネル本体部に対して接着及び機械的固定手段により留め付けられている。接着よれば、床パネル体の断面性能に寄与し得るように、補剛部をパネル本体部に対して好適に留め付けることができる。また、機械的固定手段によれば、パネル本体部から補剛部が脱落することを防止できる。
【0029】
本発明の別の側面に係る遮音床構造は、所定スパンをもって互いに平行に配置された主梁と、主梁の間に配置され、所定スパンを互いに等しい梁間隔を有する分割スパンに分割する追加梁と、分割スパンを跨いで配置され、梁間隔により規定される第1の固有振動数が目標固有振動数以上である床パネル体と、を備え、床パネル体は、梁間隔により規定される第2の固有振動数が目標固有振動数以上であり、床パネル体の断面性能を規定するパネル本体部を有する。
【0030】
この遮音床構造では、梁間隔により規定されるパネル本体部の第2の固有振動数が目標固有振動数以上である。このような構造によれば、パネル本体部の固有振動数が目標固有振動数以上であるので、更に追加梁を設ける必要がなくなる。従って、追加梁の追加による床構造の施工性の劣化が抑制される。
【0031】
また、目標固有振動数は、100Hzである。この固有振動数によれば、重量衝撃音が有する振動数に対して遮音床構造体の固有振動数を異ならせることが可能になる。従って、共振による遮音床構造体の遮音性能の低下を抑制できる。
【0032】
また、目標固有振動数は、120Hzである。この固有振動数によれば、重量衝撃音が有する振動数に対して遮音床構造体の固有振動数を異ならせることが可能になる。従って、共振による遮音床構造体の遮音性能の低下を抑制できる。
【0033】
また、パネル本体部は、ALCパネルである。ALCパネルによれば、遮音床構造の耐火性能を高めることができる。また、パネル本体部を軽量化することが可能になり、ひいては、床パネル体の固有振動数の低下を抑制できる。
【0034】
分割スパンは、パネル本体部の厚さの6倍以上10倍以下であってもよい。
【0035】
また、パネル本体部の下面は、主梁及び追加梁が取り付けられる梁固定領域を有し、梁固定領域は、パネル本体部の厚さ方向に陥没した凹部である。この構造によれば、床パネル体において固有振動数に影響しない部分の板厚が薄くなる。従って、主梁と追加梁上の床パネル体の厚さが薄くなるため、遮音床構造全体の高さが小さくなり、床仕上げ高さを抑制できる。ひいては、上階の天井高さを確保しやすくなる。
【0036】
パネル本体部は、ヤング率が2500N/mm
2以上の高剛性ALCパネルである。高剛性ALCパネルによれば、床パネル体の第1の固有振動数を一層高めることができる。
【0037】
また、本発明の別の側面は、上記遮音床構造に用いられる床パネル体である。上記床パネル体は、目標固有振動数以上の第1の固有振動数を有しているため、重量衝撃音の遮断性能を高めることができる。
【0038】
また、本発明の別の側面は、上記遮音床構造を有する遮音床構造建築物である。上記遮音床構造では、床パネル体が目標固有振動数以上の第1の固有振動数を有している。従って、上記遮音構造を有する建築物において、重量衝撃音の遮断性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、床構造の施工性の劣化を抑制しつつ、床構造の重量衝撃音の遮断性能を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第1実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0042】
遮音床構造は、重量衝撃音の遮断性能が要求されるS造の遮音床構造建築物に適用されるものである。
図1に示されるように、第1実施形態に係る遮音床構造1は、所定スパンS1をもって互いに平行に配置された主梁2A,2Bを有している。この主梁2A,2Bの間には、主梁2A,2Bに対して平行になるように追加梁3が配置されている。これら主梁2A,2B及び追加梁3は、H型鋼といった型鋼である。主梁2A,2B同士の間における所定スパンS1は、例えば2.0mである。なお、所定スパンS1は任意の長さを選択可能であり、例えば1.8mとしてもよい。そして、追加梁3は、分割スパンS2が所定スパンS1の1/2や1/3といった整数分の一になるように配置される。本実施形態では、分割スパンS2が所定スパンS1の1/2になるように、追加梁3が主梁2A,2B同士の間における中間位置に配置されている。従って、主梁2A,2B同士の間には、主梁2Aと追加梁3との間の梁間隔が1.0mである分割スパンS2と、追加梁3と主梁2Bとの間の梁間隔が1.0mである分割スパンS2とが形成されている。
【0043】
主梁2A,2Bと追加梁3との間では、分割スパンS2を跨ぐように床パネル体4がそれぞれ配置されている。床パネル体4は、その長手方向D1が主梁2A,2Bの延在方向D2と直交する、換言すると床パネル体4の短手方向D3が主梁2A,2Bの延在方向D2と平行になるように配置されている。
【0044】
床パネル体4は、パネル本体部6と、補剛部7a,7bを有している。パネル本体部6は、床パネル体4の基部である。また、補剛部7a,7bは、パネル本体部6と協働して床パネル体4の断面性能に寄与するものである。
【0045】
パネル本体部6には、パネル本体部6よりも高い剛性(ヤング率)有する定型又は不定形の材料を利用可能である。例えば、不定形の材料としては、モルタルやセルフレべリング材がある。また、定型の材料としては、ボード状の形状を有する無機質系の材料が好ましく、更にはセメント系、ケイカル(珪酸カルシウム)系、又は金属系の材料であることが更に好ましい。一例として、本実施形態におけるパネル本体部6としての高剛性ALCパネルは、例えば縦(長手方向)2000mm、横(短手方向)500mm、厚さ100mmといった板状の部材であり、ヤング率が2500N/mm
2以上である。高剛性ALCパネルは、一般的なALCパネルと比較して1.5倍〜10倍程度、より好ましくは2倍〜5倍程度のヤング率を有するものである。
【0046】
なお、パネル本体部6には、高剛性ALCパネルの他に、一般的なALCパネル、コンクリート板、押出成形セメント板、木材、木質系パネル、エンジニアードウッド製パネル、金属製パネル等を利用可能である。
【0047】
ここでパネル本体部6の厚さに対して、分割スパンS2の長さである梁間隔は6倍以上且つ10倍以下となるようにそれぞれの値が設定されることが好ましい。一般に、床用のALCパネルの板厚は100mm〜150mmである。従って、梁間隔は、600mm〜1500mm以下に設定されることになる。
【0048】
パネル本体部6の下面6aには、長手方向D1における両端部に形成された梁固定領域Z2と、梁固定領域Z2の間に形成された補剛部設置領域Z1とが設定されている。梁固定領域Z2は、パネル本体部6に対して主梁2A,2B又は追加梁3と直接に接触した状態で固定される領域である。この梁固定領域Z2は、パネル本体部6の厚さ方向に陥没した凹部6cである。換言すると、パネル本体部6は、主梁2A,2B及び追加梁3に載る部分の下面6aが断面欠損されている。従って、梁固定領域Z2は、補剛部設置領域Z1よりも板厚が薄くなっている。補剛部設置領域Z1は、パネル本体部に対して補剛部7bが直接に接触した状態で固定される領域である。この補剛部設置領域Z1は、梁固定領域Z2に対して互いに重複しないように設定されている。
【0049】
主梁2A,2B及び追加梁3の外周面には、耐火被覆8が形成されている。そしてこの耐火被覆8の端部は、パネル本体部6の下面6aにまで達している。このため、パネル本体部6の下面6aには、耐火被覆8の端部が固定される耐火被覆取付領域Z3が設定されている。耐火被覆取付領域Z3は、梁固定領域Z2に隣接すると共に、補剛部設置領域Z1とは重複しない位置に設定されている。
【0050】
上述したように、補剛部7a,7bは、パネル本体部6と協働して床パネル体4の断面性能に寄与するものであるため、パネル本体部6に対して補剛部7a,7bは一体化されている。ここで、一体化とは、接着、付着などによって固定され、補剛部7a,7bが床パネル体4の断面性能に寄与し得る状態をいい、基本的に補剛部7a,7bと床パネル体4の当接面全体が互いに固定されている状態をいう。
【0051】
本実施形態において、補剛部7aは、パネル本体部6の下面6aに接着されたCチャンネルである。また、補剛部7bは、パネル本体部6の上面6bに付着されたモルタルである。
【0052】
なお、補剛部7a,7bには、例えば、モルタル、セルフレべリング材といった不定形材や、ボード状の定型材を利用可能である。定型材には、無機系材料が好ましく、更にはセメント系、ケイカル系及び金属系材料が更に好ましい。また、定型材には、断面形状が四角形、L型、T型、I型、C型、波型、角波型といった型鋼を利用可能である。この場合、中実であってもよく、筒状の中空であってもよい。また、定型材は、木材やLVL(単板積層材)を利用することも可能である。
【0053】
更に、補剛部7a,7bの一方は、パネル本体部6との境界位置が床パネル体4の厚さ方向における中立軸位置の近傍になるように、床パネル体4に対して設けられている。より詳細には、中立軸位置の近傍において、曲げが生じたときに圧縮領域となる位置にあることがより好ましい。
【0054】
なお、必要に応じてパネル本体部6の上面6bにボード材(不図示)を留め付けてもよい。ボード材には、合板、パーチクルボード、MDF(中質繊維板)、OSB(構造用パネル),ハードボードといった木質系ボードや、セメント系、ケイカル系、火山ガラス系、ガラス板といった無機質系ボードなどがある。ケイカル系ボードには、高剛性ALCパネルを含む。
【0055】
続いて、遮音床構造における遮音性能について説明する。遮音性能は、床構造において生じた重量衝撃音を減衰させる度合であり、減衰が大きいほど遮音性能が高い。床構造を1自由度の振動系と仮定した場合、床構造が有する固有振動数をピークとする伝達曲線が規定される。そして、床構造に重量衝撃音が発生した場合には、重量衝撃音の周波数に応じた伝達倍率が乗算されて、階下に伝達される。ここで、重量衝撃音の周波数と、床構造の固有振動数が近い場合には、共振作用により重量衝撃音を減衰させることができない。重量衝撃音を減衰させるためには、重量衝撃音の周波数と床構造の固有振動数をできるだけ離すことが求められる。重量衝撃音の周波数と床構造の固有振動数が離れるほどに、共振による遮音性能の低下が回避される。
【0056】
図2に示されるように、一般に重量衝撃音遮断性能の決定周波数は、63Hzであることが多い。従って、床構造の固有振動数は63Hzよりも大きいことが望まれる。目標固有振動数とは、この所定の遮音性能を確保するために床構造が有すべき固有振動数であり、要求される遮音性能に対応して設定される設計値である。例えば、目標固有振動数は、100Hz〜120Hzの範囲において、100Hz又は120Hzに設定される。本実施形態において第1の固有振動数とは、主梁2A,2Bと追加梁3との間に配置された床パネル体4の第1次固有振動数をいい、本実施形態の床パネル体4は、目標固有振動数(100Hz)以上の固有振動数を有している。この固有振動数は、主梁2A,2Bと追加梁3との梁間隔、床パネル体4の断面性能などにより決定されるものである。固有振動数の算出については後述する。
【0057】
床パネル体4は、上述したようにパネル本体部6と補剛部7a,7bとを有している。ここで、本実施形態において第2の固有振動数とは、パネル本体部6のみを主梁2A,2Bと追加梁3との間に配置したと仮定した場合のパネル本体部6の固有振動数をいう。ここで、本実施形態の第2の固有振動数は、目標固有振動数未満であると共に、下限固有振動数以上である。すなわち、パネル本体部6のみの第2の固有振動数は、目標固有振動数より小さいため、パネル本体部6のみでは十分な遮音性能を確保できない場合がある。そこで、パネル本体部6に補剛部7a,7bを設けて床パネル体4全体の剛性を高めることにより、床パネル体4の目標固有振動数以上にするものである。従って、下限固有振動数は、補剛部7a,7bの追加により床パネル体4の固有振動数を目標固有振動数以上にし得る下限の値である。この下限固有振動数は、床パネル体4の断面性能、梁間隔、使用する補剛部7a,7bの剛性、寸法等により決定される。一例として、下限固有振動数は40Hzである。
【0058】
次に、遮音床の施工方法について説明する。まず、第1の工程として、パネル本体部6の第2の固有振動数を算出する。第2の固有振動数の算出には、下記式(1)を利用して算出する。
【数1】
上記式(1)において、f
1は共振周波数(Hz)であり、ω
1は角振動数(rad/sec)である。また、αは断面性能であり、kは定数(k=1、第1次固有振動数)であり、Lは梁間隔である。また、断面性能において、Eはヤング率(N/mm
2)であり、Iは断面二次モーメント(mm
4)であり、ρはパネル本体部6の密度であり、Aはパネル本体部6の長手方向端部の断面積である。なお、ヤング率Eと断面二次モーメントIの積(E×I)は、いわゆる曲げ剛性(N・mm
2)である。
【0059】
なお、第2の固有振動数の算出方法は、上記式(1)に限定されることはなく、公知の算出方法を利用可能である。
【0060】
続いて、第2の工程において、この第2の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満であるか否かを判定する。第2の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満である場合には、パネル本体部6に補剛部7aを設ける第3の工程を実施する。
【0061】
第3の工程では、まず、パネル本体部6の下面6aにおける補剛部設置領域Z1に補剛部7aとしてのCチャンネルを接着する。この工程により、パネル本体部6と補剛部7aとが一体化される。
【0062】
続いて、第4の工程において、主梁2A,2B及び追加梁3を有する構造躯体を施工し、これら主梁2A,2B及び追加梁3の間に補剛部7aを設けたパネル本体部6を配置する。そして、主梁2A,2B及び追加梁3の外周面に耐火被覆8を吹き付け等により形成する。また、パネル本体部6の上面6b及びパネル本体部6同士の隙間に未硬化モルタルを塗布した後に、所定時間放置して硬化させる。硬化したモルタルは補剛部7bをなす。以上の工程により、遮音床構造1が施工される。
【0063】
すなわち、本実施形態の施工方法では、工場等で予め補剛部7aを装着する。本実施形態の施工方法をまとめると、第1の工程で第2の固有振動数を算出し、第1の工程の後に第2の工程を実施して目標振動数及び下限振動数と第2の固有振動数とを比較し、第2の工程の後に第3の工程を実施して補剛部7aを装着し、第3の工程の後に第4の工程を実施して構造躯体を施工する。
【0064】
なお、補剛部7aは、工場等で予め装着されることなく、現場で装着されてもよい。すなわち、第3の工程と第4の工程とは、第4の工程を第3の工程よりも前に実施してもよい。換言すると、第2の工程の後に第4の工程を実施し、第4の工程の後に第3の工程を実施してもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る遮音床構造及び遮音床構造の施工方法の作用効果について説明する。
【0066】
この遮音床構造1の床パネル体4は、パネル本体部6と、パネル本体部6と協働して床パネル体4の断面性能を規定する補剛部7a,7bを有している。そして、パネル本体部6は、梁間隔により規定される第2の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満であるものの、補剛部7a,7bが設けられることにより、床パネル体4の第1の固有振動数が目標固有振動数以上になっている。このような構造によれば、パネル本体部6の固有振動数が目標固有振動数未満であっても下限固有振動数以上であれば、所定スパンS1を更に短くするために追加梁3を設ける必要がなくなる。従って、追加梁3の追加による遮音床構造1の施工性の劣化が抑制される。そして、パネル本体部6に補剛部7a,7bを設けることにより、パネル本体部6と補剛部7a,7bとにより形成される床パネル体4の固有振動数が目標固有振動数以上に高まるので、重量衝撃音の遮断性能を向上させることができる。
【0067】
また、床パネル体4は、パネル本体部6と補剛部7a,7bの一方との境界位置が床パネル体4の厚さ方向における中立軸位置である。この構造によれば、床パネル体4に外力が作用したとき、パネル本体部6と補剛部7a,7bの一方との接合面にせん断力の発生が抑制されて、境界部に生じる伸縮変形が低減される。従って、パネル本体部6と補剛部7a,7bの一方との境界部の損傷を抑制できる。
【0068】
また、補剛部7a,7bは、パネル本体部6に対して接着及びビス等といった機械的固定手段により留め付けられている。接着によれば、床パネル体4の断面性能に寄与し得るように、補剛部7a,7bをパネル本体部6に対して好適に留め付けることができる。また、機械的固定手段によれば、パネル本体部6から補剛部7a,7bが脱落することを防止できる。
【0069】
また、目標固有振動数は、100Hzであり、下限固有振動数は、40Hzである。これら固有振動数によれば、重量衝撃音が有する振動数から遮音床構造1の固有振動数を異ならせることが可能になる。従って、共振による遮音床構造1の遮音性能の低下を抑制できる。
【0070】
また、補剛部7aは、パネル本体部6の下面6aに設けられている。パネル本体部6の下面6aは、施工後に見えなくなる場所である。従って、補剛部7aが見えない位置に配置されることになるため、意匠性を高めることができる。
【0071】
また、パネル本体部6は、ALCパネルである。ALCパネルによれば、遮音床構造1の耐火性能を高めることができる。また、ALCパネルは比較的軽量であるため、床パネル体4の固有振動数の低下を抑制できる。また、パネル本体部6は、ヤング率が2500N/mm
2以上の高剛性ALCパネルである。高剛性ALCパネルによれば、床パネル体4の第1の固有振動数を一層高めることができる。
【0072】
また、パネル本体部6の下面6aは、主梁2A,2B及び追加梁3が取り付けられる梁固定領域Z2を有し、梁固定領域Z2は、パネル本体部6の厚さ方向に陥没した凹部6cである。この構造によれば、床パネル体4において固有振動数に影響しない部分の板厚が薄くなる。従って、主梁2A,2Bと追加梁3上の床パネル体4の厚さが薄くなるため、遮音床構造1全体の高さを小さくすることができる。
【0073】
この施工方法では、パネル本体部6の固有振動数を算出し、当該固有振動数が下限固有振動数であるときに補剛部7a,7bをパネル本体部6の下面6a及び上面6bに設ける。これらの工程によれば、パネル本体部6の固有振動数が目標固有振動数未満であっても、所定スパンS1を短くするために更に追加梁3を設けることなく、パネル本体部6と補剛部7a,7bとにより形成される床パネル体4の固有振動数が目標固有振動数以上に高まる。換言すると、パネル本体部6の固有振動数が下限固有振動数以上且つ目標固有振動数未満であって補剛部を設けない場合は、目標固有振動数を満たすために更なる追加梁3を設けるなどの工程が必要となる。一方、この施工方法では、追加梁3を設ける必要はなく、より簡易に施工可能な補剛部7a,7bの装着により目標固有振動数を満たすことが可能になる。従って、追加梁3の追加による遮音床構造1の施工性の劣化が抑制される。そして、パネル本体部6に補剛部7a,7bを設けることにより、パネル本体部6と補剛部7a,7bとにより形成される床パネル体4の固有振動数が目標固有振動数以上に高まるので、遮音床構造1の重量衝撃音の遮断性能を向上させることができる。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る遮音床構造について説明する。第2実施形態に係る遮音床構造は、床パネル体4が補剛部7a,7bに代えて非補剛部を有する点で第1実施形態に係る遮音床構造と相違する。
【0075】
図6の(a)部に示されるように、床パネル体4Bは、パネル本体部6Bとパネル本体部6Bの上面6bに取り付けられたボード10を有している。ボード10は、床パネル体4Bの高剛性化とは異なる機能をパネル本体部6Bに与えるものである。このボード10は、パネル本体部6Bに対してビス9といった機械的な固定手段によって部分的に留め付けられている。なお、ビス9の他に、アンカー類を用いてもよい。このビス止めされたボード10は、パネル本体部6Bに取り付けられているが、断面性能には寄与し得ない。
【0076】
パネル本体部6Bは、梁間隔により規定される第2の固有振動数が目標固有値(例えば100Hz)以上である。従って、床パネル体4Bにおける第1の固有振動数は、パネル本体部6Bにおける第2の固有振動数と同じであり、パネル本体部6Bの断面性能が床パネル体4Bの断面性能となる。
【0077】
次に、第2実施形態に係る遮音床構造1の施工方法について説明する。第2実施形態に係る施工方法は、第2の工程において、第2の固有振動数が目標固有振動数以上である点で、第1実施形態に係る施工方法と相違する。この場合には、パネル本体部6Bのみで目標固有値を満たすため、パネル本体部6Bに補剛部7a,7bを設けるか否かは任意に選択可能である。より高い遮音性能を望む場合には、第3の工程における作業と同作業を実施し、パネル本体部6Bと一体化された補剛部7a,7bを設けてもよい。また、ボード10のように、断面性能に寄与し得ない非補剛部を設けてもよい。
【0078】
遮音床構造1の施工方法は、固有振動数が目標固有振動数以上であるとき、床パネル体4Bの断面性能がパネル本体部6Bにより規定されるようにパネル本体部6Bの上面6bに非補剛部としてのボード10を設ける工程を更に有する。この工程によれば、非補剛部が設けられるので、床パネル体4Bに対して床パネル体4Bの高剛性化とは別の機能を付与することができる。
【0079】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0080】
図3の(a)部に示されるように、床パネル体4Cは、補剛部7Cがパネル本体部6の上面6bのみに形成されていてもよい。また、この補剛部7Cは、モルタルやセルフレベリング材といった不定形材料12をパネル本体部6の上面6bに付着して、パネル本体部6と一体化したものである。
【0081】
また、
図3の(b)部に示されるように、床パネル体4Dの補剛部7Dは、ケイカル板やフレキ板などのボード13を、パネル本体部6の上面6bに接着してパネル本体部6と一体化したものであってもよい。また、この補剛部7Dは、パネル本体部6の上面6b全体に接着されていることが好ましい。この接着剤は、弾性を有するものであることが望ましい。接着による固定に加え、更に、ビスや貫通ボルトといった機械的な固定手段(不図示)を併せて用いてもよい。
【0082】
また、
図3の(c)部に示されるように、床パネル体4Eの補剛部7Eは、ケイカル板やフレキ板などのボード14を、パネル本体部6の下面6aに接着してパネル本体部6と一体化したものであってもよい。
【0083】
また、
図4の(a)部及び(b)部に示されるように、床パネル体4Fの補剛部7Fは、Cチャンネル16をパネル本体部6の下面6aに接着することにより、パネル本体部6と一体化したものであってもよい。更に、接着による固定に加え、更に、ビス(不図示)や貫通ボルトといった機械的な固定手段を併せて用いてもよい。
【0084】
また、
図4の(c)部に示されるように、床パネル体4Gの補剛部7Gは、パネル本体部6の補剛部設置領域Z1の板厚tが厚くされるように膨出部17が形成されたものであってもよい。断面性能を規定する断面二次モーメントIは、パネル本体部6の補剛部設置領域Z1における板厚tの3乗に比例する。従って、板厚tを増加させることにより、断面二次モーメントIが増加し、ひいては、上記式(1)に示されるように固有振動数を高めることが可能になる。
【0085】
また、
図5の(a)部及び(b)部に示されるように、床パネル体4Hの補剛部7Hは、ケイカル板やフレキ板などのボード19を、ビス9とシャーコネクタ21とを用いてパネル本体部6と一体化したものであってもよい。シャーコネクタ21は、ボード19とパネル本体部6との間に配置される。このシャーコネクタ21は、パネル本体部6の厚さ方向に延びる複数の突起を有し、これら突起がボード19及びパネル本体部6に刺さることにより、せん断方向に作用する外力に対抗するものである。
【0086】
また、
図6の(b)部及び(c)部に示されるように、床パネル体4Kの非補剛部22は、Cチャンネルといった線状の形鋼23をパネル本体部6の下面6aにビス9により留め付けたものであってもよい。
【0087】
また、上記実施形態において床パネル体4は、主梁2A及び追加梁3、又は主梁2B及び追加梁3により支持される2点支持の形態であったが、この支持形態に限定されず、多点において支持される形態や、連続状に支持される形態であってもよい。
【0088】
次に、実施例1〜実施例7の床パネル体を準備し、それぞれの床パネル体の固有振動数を確認した。なお、以下の実施例では、床パネル体の長手方向の長さを固有振動数の算出における梁間隔であるとする。また、実施例1〜実施例7の結果を
図7にまとめて示す。
【0089】
<実施例1>
実施例1に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。このALCパネルの上面及び下面には補剛部は設けていない。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は22Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は88Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は27Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は109Hzであった。従って、実施例1に係る床パネル体では、長手方向の長さを0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。
【0090】
<実施例2>
実施例2に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。このALCパネルの上面には厚さ12mmの硬化モルタルによる補剛部を設けた。また、ALCパネルの下面には補剛部は設けていない。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は34Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は134Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は41Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は166Hzであった。従って、実施例2に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0091】
<実施例3>
実施例3に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。このALCパネルの上面には厚さ12mmの硬化モルタルによる補剛部を設けた。また、ALCパネルの下面には厚さ6mmのケイカル板による補剛部を設けた。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は39zであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は156Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は48Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は193Hzであった。従って、実施例3に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0092】
<実施例4>
実施例4に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。このALCパネルの上面には補剛部を設けていない。また、ALCパネルの下面には厚さ6mmのケイカル板による補剛部を設けた。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は26Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は103Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は32Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は127Hzであった。従って、実施例3に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0093】
<実施例5>
実施例5に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。このALCパネルの上面には補剛部を設けていない。また、ALCパネルの下面には巾89mmせい140mmのLVLによる補剛部を設けた。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は65Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は262Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は81Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は323Hzであった。従って、実施例3に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0094】
<実施例6>
実施例6に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが125mmのALCパネルである。このALCパネルの上面には厚さ12mmの硬化モルタルによる補剛部を設けた。また、ALCパネルの下面には補剛部を設けていない。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は40Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は162Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は50Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は200Hzであった。従って、実施例3に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0095】
<実施例7>
実施例7に係る床パネル体は、短手方向の長さが500mmであり、厚さが100mmのALCパネルである。なお、このALCパネルは、実施例1〜実施例5におけるALCパネルの2倍の剛性を有する高剛性ALCパネルである。また、このALCパネルの上面には厚さ12mmの硬化モルタルによる補剛部を設けた。また、ALCパネルの下面には補剛部を設けていない。
この床パネル体において、長手方向の長さを2.0mとした場合には固有振動数は39Hzであり、長手方向の長さを1/2である1.0mとした場合には固有振動数は156Hzであった。また、この床パネル体において、長手方向の長さを1.8mとした場合には固有振動数は48Hzであり、長手方向の長さを1/2である0.9mとした場合には固有振動数は192Hzであった。従って、実施例3に係る床パネル体では、長手方向の長さを1.0m及び0.9mとした場合に、目標固有振動数(100Hz)を上回ることが確認できた。更に、より遮音性能を高めることが可能な目標固有振動数(120Hz)をも上回ることが確認され、高い遮音性能を達成できることがわかった。
【0096】
<実施例8>
実施例8では、梁間隔と固有振動数との関係について確認した。ALCパネルであるパネル本体部において、厚さを100mmとし、短手方向の長さを500mmとした。そして、梁間隔(ここではALCパネルの長手方向の長さ)を500mm、600mm、700mm、800mm、900mm、1000mm、1100mm、1200mm、1500mm、2000mmとし、それぞれの長さに対応する固有振動数を算出した。
【0097】
更に、算出におけるパラメータとして、ALCパネルの内部に配置される鉄筋の構成を選択した。第1条件では、ALCパネルの長手方向に沿って直径7mmである鉄筋を圧縮側に7本、引張側に7本配置した。第2条件では、ALCパネルの長手方向に沿って直径7mmである鉄筋を圧縮側に2本、引張側に7本配置した。第3条件では、ALCパネルの長手方向に沿って直径5mmである鉄筋を圧縮側に2本、引張側に7本配置した。すなわち、第1条件がALCパネルの剛性が最も高い条件であり、第3条件がALCパネルの剛性が最も低い条件である。
【0098】
図8に示されるように、梁間隔を短くするほど固有振動数が高くなることが確認できた。特に、梁間隔が900mmより小さい場合には、第1〜第3条件の全てにおいて目標固有振動数(100Hz)以上にし得ることが確認できた。また、ALCパネルの剛性が高いほど、パネル本体部の固有振動数が高くなることが確認できた。
【0099】
<実施例9>
実施例9では、補剛部を設けないALCパネルや、各種補剛部を設けたALCパネルを作成し、それらを用いて試験を実施することにより、応答振動を確認した。この実施例9では、梁間隔を2m又は1mに設定し、ALCパネルに打撃を加えて衝撃を印加し、ALCパネルに発生する63Hz帯域の加速度を測定した。
【0100】
図9に示されるように、プロットP1〜P6は梁間隔を2mとした場合の結果である。プロットP1は、実施例1の条件に対応し、補剛部を設けないALCパネルの結果である。プロットP2〜P6は各種補剛部を設けたALCパネルの結果である。また、プロットP5の条件は、実施例5の条件に対応している。補剛部を設けないALCパネルに対して、補剛部を設けることにより固有振動数がALCパネルの固有振動数が入力衝撃の振動数(63Hz)に近づくにつれ、共振作用により加速度が大きくなった。そして、ALCパネルの固有振動数が入力衝撃の振動数(63Hz)よりも大きくなるに従って、発生する加速度は小さくなった。
【0101】
プロットP7〜P11は、梁間隔を1mとした場合の結果である。また、プロットP7は、実施例1の条件に対応し、補剛部を設けないALCパネルの結果である。プロットP7は補剛部を設けないALCパネルの結果であり、プロットP8〜P11は各種補剛部を設けたALCパネルの結果である。また、プロットP8の条件は、実施例2の条件に対応し、プロットP11の条件は、実施例3の条件に対応している。梁間隔を短くした場合には、ALCパネルの固有振動数が全体的に高まる傾向が確認できた。また、ALCパネルの固有振動数が入力衝撃の振動数(63Hz)よりも大きくなるに従って、発生する加速度は小さくなった。更に、固有振動数がおよそ100Hz以上の時の加速度(プロットP8〜P11)は、梁間隔が2mであり補剛部を設けないALCパネルに発生する加速度(プロットP1〜P6)よりも小さくなることが確認できた。