(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方のプレキャスト部材の端部に埋設された鉄筋継手と、他方の部材の端部に埋設された鉄筋継手とにより連結されるプレキャスト部材の連結方法であって、一方の鉄筋継手内に短手剛部材をプレキャスト部材端面から突出することなく挿入させ、鉄筋継手の開口を突出防止治具で塞いで鉄筋継手内から短手剛部材が突出するのを防止しておき、両プレキャスト部材の鉄筋を一直線に整列させた後、突出防止治具を取り外して短手剛部材を他方の継手側に移動させて連結する両プレキャスト部材に跨る位置に停止させ、注入グラウト材を継手内に注入固結させることを特徴とするプレキャスト部材の連結方法。
短手剛部材がセットされた鉄筋継手が設置されたプレキャスト部材が他方のプレキャスト部材の上方に位置させてあり、短手剛部材が突出防止治具で鉄筋継手から落下するのを防止された状態で接合状態に設置された突出防止治具を取り外して短手剛部材を下側に位置する他方のプレキャスト部材の鉄筋継手内に自由落下させることを特徴とする請求項1記載のプレキャスト部材の連結方法。
短手剛部材が一方のプレキャスト部材の鉄筋継手内に弾発部材の弾発力によって鉄筋継手から突出する方向の力を受ける状態で鉄筋継手内に設置してあり、突出防止治具を取り外して短手剛部材を他方のプレキャスト部材の鉄筋継手内に突出させることを特徴とする請求項1記載のプレキャスト部材の連結方法。
プレキャスト部材が上下に分割されたボックスカルバート、柱、若しくは水平方向に分割された梁のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のプレキャスト部材の連結方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態についてその実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(a)は、土木構造物となる大型の構造物を示し、上下に分割されたプレキャスト部材1、2を連結してボックスカルバートとしたもので、先に設置した下プレキャスト部材1と、その上に設置固定するプレキャスト部材2とを連結部において連結している。
【0017】
予め構築した基礎や設置版等の基盤3上へクレーン等により分割プレキャスト部材となる下プレキャスト部材1を設置し、その上に上プレキャスト部材2を同様にして設置し、相互の連結部を強固に連結することによりボックスカルバートを完成することができる。
【0018】
該下プレキャスト部材1は、予め工場等で製造された部材で、矩形状の底版4と該底版4の両端部から立ち上がった左右の下側壁5、6とで形成された断面U字型の部材である。所定の施工場所に運搬し、クレーン等で吊るし、予め完成させた基盤3上に該底版4を設置固定することで、上方部が開口した半構造物が造られ、その後、上プレキャスト部材2を設置固定することになる。
【0019】
図1(b)は、該下プレキャスト部材1の左下側壁5及び右下側壁6の上端部を示す断面図で、下プレキャスト部材1の左右下側壁5、6の内部には、その幅方向に主鉄筋7、8がダブルで配筋され、その主鉄筋端部9、10は第1、第2鉄筋継手11、12の空間S1内に挿入配設されている。
【0020】
該第1、第2鉄筋継手11、12は、下プレキャスト部材1の左右下側壁5、6の上端部に、その一方側継手端部13、14が、該左右下側壁5、6の端部面とほぼ面一となるように露出した状態で予め埋設固定され、該第1、第2鉄筋継手11、12の他方側継手端部15、16側は左右下側壁5、6内に埋設固定され、該他方側継手端部15、16から上記した主鉄筋7、8の先端部を空間S1内に挿入配筋している。
【0021】
上記下プレキャスト部材1の設置後、その上部に上プレキャスト部材2を設置固定することになる。従来のプレキャスト部材であれば、上プレキャスト部材の端部から突出した主鉄筋を該第1、第2鉄筋継手11、12の空間内に挿入配設しながら、或いは下プレキャスト部材の端部から突出した主鉄筋を後述する上プレキャスト部材の第3、第4鉄筋継手の空間内に挿入しながら該上プレキャスト部材を据え付けることになるが、そのためには該上プレキャスト部材は、ほぼ垂直を保持した状態で上方から下方へ降下させて設置することになる。
【0022】
しかし、設置場所によっては、該上プレキャスト部材を上方側から降下させることができず、水平方向或いは斜め上方向から移動せざるを得ない場合が生じる。この場合は、該上・下のプレキャスト部材の端部から上・下方に向けて突出した鉄筋が邪魔となり、上プレキャスト部材が設置できない事態が生じることになる。
【0023】
本発明は、下プレキャスト部材1及び上プレキャスト部材2のいずれからも主鉄筋が突出しない形状或いは端部に凹凸部が形成されていない形状としているので、該上プレキャスト部材2を水平方向或いは斜め上方向からでも設置固定できることを可能としている。
【0024】
図1(a)に示すように、上プレキャスト部材2は、予め工場等で製造された矩形状の上版17と該上版17の両端部から下方へ垂下した左右の上側壁18、19とで形成された部材で、断面逆U字型の部材である。左右上側壁18、19の厚さ及びその間の寸法は、下プレキャスト部材1の左右下側壁5、6の厚さ及びその間の寸法と同一としている。
【0025】
図1(c)は、上プレキャスト部材2の左上側壁18及び右上側壁19の下端部を示す断面図で、下プレキャスト部材1と同様、該左右上側壁18、19の内部には、その幅方向に主鉄筋20、21がダブルで配筋され、その端部22、23は第3、第4鉄筋継手24、25の空間S2内に挿入配設されている。
【0026】
該第3、第4鉄筋継手24、25は、上プレキャスト部材2の左右上側壁18、19の下端部に、その一方側継手端部26、27が、該左右上側壁18、19の端部面と面一となるように露出した状態で予め埋設固定され、該第3、第4鉄筋継手24、25の他方側継手端部28、29側は左右上側壁18、19内に埋設固定され、該他方側継手端部28、29から上記した主鉄筋20、21の先端部を空間S2内に挿入配筋している。
【0027】
該第3、第4鉄筋継手24、25の空間S2内には、
図1(c)に示すように、該空間S2内を移動自在とした短手剛部材30、31を、該第3、第4鉄筋継手24、25より脱落しないように突出防止冶具32、33によりその露出側端部を押える仮置きした状態で挿入している。上プレキャスト部材2の製造、移動及び設置時に至るまで該第3、第4鉄筋継手24、25より突出或いは脱落しないように仮止め状態で該第3、第4鉄筋継手24、25内に挿入配置している。
【0028】
該短手剛部材30、31は、該主鉄筋20、21と同様又はそれより太くし、該第3、第4鉄筋継手24、25の空間S2内に納まる長さと太さを持つ強度の有る鉄筋で形成し、その両端部は必要に応じて膨張部30a、31aを形成している。該膨張部30a、31aにより設置後において該空間S2内に充填されるグラウト材との定着力を増加させることが可能となる。
【0029】
図2(a)、(b)、(c)、(d)は、上記第1乃至第4鉄筋継手11、12、24、25の連結部の詳細図で、該連結部の連結工程を順次示している。
該突出防止冶具32、33は、
図2(a)に示すように、フランジ32a、33aとウェッブ32b、33bよりなるL字型形状とし、そのフランジ32a、33aを上プレキャスト部材2の左右上側壁18、19隅部へボルト等により取着することにより、当該箇所に固定し、他方のウェッブ32b、33b側を該短手剛部材30、31の突出防止手段としている。
【0030】
ボルト等を該上プレキャスト部材2の側壁18、19隅部に設けた凹部等へ螺合又は嵌合させることにより強固に取着された突出防止冶具32、33は、プレキャスト部材2の露出側端部へ該ウェッブ32b、33bが当接することにより該短手剛部材30、31を該第3、第4鉄筋継手24、25から脱落しないようにしている。
【0031】
該上プレキャスト部材2の左右上側壁18、19の両端部は、その設置時に該突出防止冶具32、33が邪魔とならないように必要に応じてウェッブ32b、33bの厚み寸法分を切除し、該突出防止冶具32、33の取着部とすることができる。
【0032】
また、該上プレキャスト部材2の所定位置への設置後、該突出防止冶具32、33の取り外しを簡単とするために該突出防止冶具32、33に予め取り除き用把持手段32c、33cを外方へ突出した状態で形成しておくことができる。
【0033】
落下防止冶具32、33のボルト等の螺合又は嵌合を解除し、該取り除き用把持手段32c、33cを外方へ引くことで該突出防止冶具32、33を取り外すことができ、それにより該短手剛部材30、31の約半分が該下プレキャスト部材1の第1、第2鉄筋継手11、12内に自然落下で所定位置に移動することになる。
【0034】
該上下プレキャスト部材1、2のいずれかの端部には、必要に応じてパッキン34を配設しておくことにより、該上下プレキャスト部材1、2間の間隔を所定の値に、かつ均等に保持することができる。
【0035】
以下、
図2(a)乃至(d)により上下プレキャスト部材1、2相互の連結について詳細に説明する。
該上プレキャスト部材2を、先の工程で設置した下プレキャスト部材1上へ第3、第4鉄筋継手24、25を埋設固定した端部側を下にしてクレーン等の適宜吊り下げ移動手段によりその上方、斜め上方或いは側方より移動させる。
【0036】
図2(a)に示すように、先に設置した下プレキャスト部材1の第1、第2鉄筋継手11、12と上プレキャスト部材2の第3、第4鉄筋継手24、25の継手端部13、14、26、27相互が対向一致する位置で該上プレキャスト部材2の移動を停止し、先に設置した下プレキャスト部材1上に設置し、仮固定する。
【0037】
その後、
図2(b)に示すように、突出防止冶具32、33を固定していたボルト等を側壁面より解除し、取り除き用把持手段32c、33cを外側へ引くことにより該突出防止冶具32、33を該上プレキャスト部材2より取り外すことができる。それにより第3、第4鉄筋継手24、25内に仮置きしていた短手剛部材30、31は、
図2(c)に示すように、該第3、第4鉄筋継手24、25の各々開口した継手端部26、27よりその自重により空間S2より落下することになる。落下した短手剛部材30、31は、予めその移動長により部材長を決めてあった本体の約半分の長さとなる部分が対向する第1、第2鉄筋継手11、12の空間S1内に移動することになる。
【0038】
空間S1内に移動した該短手剛部材30、31は、該第1、第2鉄筋継手11、12或いは第3、第4鉄筋継手24、25の内側に形成した本体の約半分が移動できる位置に予め設定した凸部や適宜係止部等の係止手段により所定位置でその移動が停止することになる。
【0039】
該短手剛部材30、31の長手方向中央部に、長手方向の所定寸法幅を有してその周囲に該短手剛部材30、31の色とは異なる色の塗布やテープ手段等によりセンターマーキング35、36を形成しておくことで該短手剛部材30、31が適切な位置まで移動したかどうかを仮固定した上下プレキャスト部材1、2の間隙37より目視することで確認することが可能となる。
【0040】
その後、
図2(d)に示すように、該間隙37を封塞し、該第1、第2鉄筋継手11、12内及び第3、第4鉄筋継手24、25内の主鉄筋7、8、20、21の周囲及び短手剛部材30、31の周囲に残されている空間S1、S2内に外方よりグラウト材38を注入する。
【0041】
グラウト材38の注入排出は、該第1、第2鉄筋継手11、12の主鉄筋7、8が挿入される側の継手端部15、16側に形成したグラウト材注入口39、40に注入用ホース41、42を各々取着し、他方、第3、第4鉄筋継手24、25の主鉄筋20、21が挿入される側の継手端部28、29側に形成したグラウト材排出口43、44に排出用ホース45、46を各々取着することにより、グラウト材の注入及び排出手段としている。
【0042】
該注入用ホース41、42よりグラウト材38を注入することにより上記空間S1、S2全体を下方側より上方側に向けて充填し、該グラウト材排出口43、44より排出用ホース45、46を通じてグラウト材38が外部へ排出されることで空間S1、S2内全体にグラウト材38が充填されたことを確認することができる。
【0043】
上記グラウト材38の注入排出は、第1、第3鉄筋継手11、24及び第2、第4鉄筋継手12、25或いは隣接する位置の他の鉄筋継手相互に対し個別に行ってもよいし、上記注入用ホース41、42及び排出用ホース45、46の複数を予め連結しておくことにより一気にまとめて注入排出を行うことも可能である。
【0044】
上記実施例1では、
図1(a)に示した矩形状のボックスカルバートとなるプレキャスト部材に沿って説明したが、本発明は、ボックスカルバートに限定されるものではない。
湾曲形状のプレキャスト部材であってもよい。該湾曲形状のプレキャスト部材の場合は、連結部も湾曲形状となるが、本実施例の連結構造で対応できるものである。その際、短手剛部材も該湾曲形状に対応できるものとする。
【0045】
また、上記実施例1では、上下プレキャスト部材1、2を2分割した実施態様を説明したが、これに限定されることなく、3分割、4分割、5分割…でも同様の連結構造を採用することができ、また、それにより更に大型の構造物を構築することが可能となる。
【0046】
なお、上記実施例では、上下プレキャスト部材1、2の各々に主鉄筋7、8、20、21がダブルで配筋した例を示したが、部材厚や強度等の必要性に応じて適宜本数とすることができる。また、その各部材の鉄筋継手を設ける長手方向における間隔も必要性に応じて適宜選択することができる。
【実施例2】
【0047】
図3(a)、(b)は、実施例1と同様、土木構造物となるボックスカルバートのような大規模な構造物を構築するための上下プレキャスト部材50、51の他の実施例の連結構造を示すもので、該ボックスカルバートは、プレキャスト部材を上下に分割したもので、先に設置する下プレキャスト部材50とその上に設置する上プレキャスト部材51とより構成している。
【0048】
該下プレキャスト部材50を基礎や設置版等の基盤52上へ設置する。
図3(a)は、
図1(a)と同様のボックスカルバートを構成する下プレキャスト部材50の底版の両端から立ち上がった左下側壁53及び右下側壁54の上端部を示す断面図で、下プレキャスト部材50の左右下側壁53、54の内部には、その幅方向に主鉄筋55、56がダブルで配筋され、その主鉄筋端部57、58は第5、第6鉄筋継手59、60の空間S3内に挿入配筋している。
【0049】
該第5、第6鉄筋継手59、60は、下プレキャスト部材50の左右下側壁53、54の上端部に、その一方側継手端部61、62が該左右下側壁53、54の端部面と面一となるように露出した状態で予め埋設固定され、該第5、第6鉄筋継手59、60の他方側継手端部63、64側は左右下側壁53、54内に埋設固定され、該他方側継手端部63、64から上記した主鉄筋55、56の先端部を空間S3内に挿入配筋している。
【0050】
また、該下プレキャスト部材50の該第5、第6鉄筋継手59、60の空間S3中には、該空間S3内を移動自在とした短手剛部材65、66を仮置きした状態で挿入している。下プレキャスト部材50の製造、移動及び設置時に至るまで、該短手剛部材65、66が該第5、第6鉄筋継手59、60より突出或いは落下しないように仮止め状態で該第5、第6鉄筋継手59、60内に挿入配置している。
【0051】
第5、第6鉄筋継手59、60の主鉄筋55、56と短手剛部材65、66との間には螺旋状のバネ体や高反発力のある弾性体等の弾発体67、68を圧縮した状態で挿入配置し、該弾発体67、68は、それが伸張したときに該短手剛部材65、66の長さの約半分を上方へ押し上げる弾発力を有しているものを採用する。
【0052】
上プレキャスト部材51の端部に埋設固定した第7、第8鉄筋継手69、70の空間S4内に該短手剛部材65、66が移動したとき、本体の約半分の移動でその先端部が係止することのできる凸部や係止部等の適宜係止手段を予め形成しておくことにより所定位置で停止させることが可能となる。
【0053】
該弾発体67、68をその弾発力に抗して圧縮させた状態で該短手剛部材65、66の露出側に該短手剛部材65、66の突出移動防止冶具71、72を取着する。該突出移動防止冶具71、72の形状は、実施例1の突出防止治具32、33と同一のものである。また、その取着方法及び脱着方法も同様である。突出防止のために側壁面側に凹部を設け、その凹部にボルト先端側を螺合や嵌合させることにより強固に固定できるようにしておく。
【0054】
該短手剛部材65、66にはその中央部にセンターマーキング73、74を付与しておく構成或いはパッキン等の構成は、実施例1と同様である。
【0055】
以下、
図4(a)乃至(d)により上下プレキャスト部材50、51相互の連結について詳細に説明する。
該上プレキャスト部材51を、先の工程で設置した下プレキャスト部材50上へ第7、第8鉄筋継手69、70側を下にしてクレーン等の適宜吊り下げ移動手段によりその上方、斜め上方或いは側方より移動させる。
【0056】
図4(a)に示すように、先に設置した下プレキャスト部材50の第5、第6鉄筋継手59、60と上プレキャスト部材51の第7、第8鉄筋継手69、70の端部相互が対向一致する位置で該上プレキャスト部材51の移動を停止し、先に設置した下プレキャスト部材50上に設置し、仮固定する。また、必要に応じて該下プレキャスト部材50又は上プレキャスト部材51の端部に、間隔を所定の値にかつ均等に保持するためのパッキンを配設しておくことができる。
【0057】
その後、
図4(b)に示すように、突出移動防止冶具71、72を固定していたボルト等を側壁面より解除し、取り除き用把持手段71a、72aを外側へ引くことにより該突出移動防止冶具71、72を該下プレキャスト部材50より取り外すことができる。それにより第5、第6鉄筋継手59、60内に仮置きしていた短手剛部材65、66は、
図4(c)に示すように、該第5、第6鉄筋継手59、60の空間S3内の弾発体67、68の弾発力により各々の開口した継手端部61、62より上方側へ突出することになる。突出した短手剛部材65、66は、適宜係止手段により停止し、予め設定した本体の約半分の長さが対向する第7、第8鉄筋継手69、70の空間S4内に移動することになる。
【0058】
移動した該短手剛部材65、66は、一端部側は弾発体67、68により上方側へ押され、他端部側は該第7、第8鉄筋継手69、70或いは第5、第6鉄筋継手59、60の内側に形成した凸部や係止部等の適宜係止手段により係止し、弾発体67、68に強く押された状態で安定的に所定位置に停止することになる。
【0059】
該短手剛部材65、66の長手方向中央部に、長手方向の所定寸法幅を有してその周囲に該短手剛部材65、66の色とは異なる色の塗布やテープ手段等によりセンターマーキング73、74を形成しておくことで該短手剛部材65、66が正規な位置まで移動したかどうかを仮固定した上下プレキャスト部材50、51の間隙75より目視することで確認することが可能となる。
【0060】
その後、
図4(d)に示すように、該間隙75を封塞し、該第5、第6鉄筋継手59、60内及び第7、第8鉄筋継手69、70内の主鉄筋55、56の周囲及び短手剛部材65、66の周囲に残されている空間S3、S4に外方よりグラウト材76を注入する。
【0061】
グラウト材76の注入排出は、上記実施例1と同様、該第5、第6鉄筋継手59、60の主鉄筋55、56が挿入される側の端部側に形成したグラウト材注入口77、78に注入用ホース79、80を取着し、他方、第7、第8鉄筋継手69、70の主鉄筋が挿入される側の端部側に形成したグラウト材排出口81、82に排出用ホース83、84を各々取着することにより、その注入及び排出手段としている。
【0062】
該注入用ホース79、80よりグラウト材76を注入することにより上記空間S3、S4全体を下方側より上方側ヘ向けて充填し、該グラウト材排出口81、82より排出用ホース83、84を通じてグラウト材76が外部へ排出されることで空間S3、S4内全体にグラウト材76が充填されたことを確認することができる。
【0063】
上記グラウト材76の注入排出は、第5、第7鉄筋継手59、69及び第6、第8鉄筋継手60、70或いは隣接する位置の他の鉄筋継手相互に対し個別に行ってもよいし、上記注入用ホース79、80及び排出用ホース83、84の複数を予め連結しておくことにより一気にまとめて注入排出を行うことも可能である。
【0064】
なお、第5、第6鉄筋継手59、60内に挿入配置した弾発体67、68は伸張した状態で当該箇所に留まり、それらはグラウト材76の注入により空間S3中に埋設固定されることになる。特に、螺旋状のバネ体或いは板バネ等の場合は、バネ体周囲にグラウト材76が回り込み、空間内の強固な固定手段として有効な連結構造となる。
【0065】
上記実施例2も、実施例1と同様、
図1(a)に示した矩形状のボックスカルバートとなるプレキャスト部材に沿って説明したが、本発明は、ボックスカルバートに限定されるものではない。湾曲形状のプレキャスト部材であってもよい。湾曲形状のプレキャスト部材の場合は、連結部も湾曲形状となるが、本実施例の連結構造で対応できるものである。その際、短手剛部材も該湾曲形状に対応できるものとする。
【0066】
また、上記実施例2では、上下プレキャスト部材50、51を2分割した実施態様を説明したが、これに限定されることなく、3分割、4分割、5分割…でも同様の連結構造を採用することができ、また、それにより更に大型の構造物を構築することが可能となる。
【0067】
なお、上記実施例1と同様、主鉄筋や鉄筋継手等の数やその間隔等は、プレキャスト部材の部材厚や強度等の必要性に応じて適宜選択することができる。そのことは、その部材の長手方向においても同様である。
【実施例3】
【0068】
図5は、建築構造物又は土木構造物等の構造物を構成する構造部材の連結構造を示す実施例で、該構造部材はプレキャスト部材相互或いはプレキャスト部材と通常のコンクリート構造部材とを連結することで水平部材を構築している。
以下、水平部材の一例として梁について説明する。
【0069】
プレキャスト部材等を連結して強度のある梁を得るためには、当該連結部における主鉄筋を一体的なものとなるように連結する必要があり、従来は、連結部となる梁の端部に切欠部を設け或いはプレキャスト部材等から鉄筋を突出させ、それら切欠部や突出鉄筋を利用して一体となる連続した梁を構築していた。従って、鉄筋相互の連結後において、該切欠部や鉄筋周囲をコンクリート等により埋め込む必要があった。
【0070】
また、連結しようとする梁部材端部から鉄筋が突出している場合は、既に構築された梁部材側に鉄筋の突出に相当する大きな切欠部がないと所定の寸法となる間隙にプレキャスト部材よりなる梁の構成部材を挿入配設することはできなかった。先に構築された梁端部から鉄筋が突出している場合は、連結しようとするプレキャスト梁端部に該鉄筋の突出に相当する切欠部を予め設けておく必要があった。
【0071】
本実施例3にあっては、上記実施例1、2と同様、一方の第1梁構成部材90と他方の第2梁構成部材91間にプレキャスト部材からなる第3梁構成部材92を、それらの端部に切欠部を設けることなく間挿連結できる実施例である。
【0072】
第1梁構成部材90の主鉄筋93の主鉄筋端部94は、該第1梁構成部材90の端部に埋設された第9鉄筋継手95の端部側から空間S5内に挿入配筋されている。第2梁構成部材91側においても同様の構成である。
【0073】
他方、左右の第1、第2梁構成部材90、91間に間挿される第3梁構成部材92の部材中に配筋された主鉄筋96の主鉄筋端部97は、第10鉄筋継手98の端部側から空間S6内に挿入配筋されている。
【0074】
該第9、第10鉄筋継手95、98のいずれかの空間S5、S6内には、上記実施例に示した、該空間S5、S6内を移動自在とした短手鉄筋99を該第9、第10鉄筋継手95、98より脱落しないように突出防止治具100によりその露出側端部を押える仮置きした状態で挿入している。例えば、第3梁構成部材92に短手鉄筋99を配設した場合は、プレキャスト部材の製造、移動及び設置時に至るまで該第10鉄筋継手98より突出或いは脱落しないように仮止め状態で該第10鉄筋継手98の空間S6内に挿入配置している。
【0075】
該短手鉄筋99は、上記実施例と同様、該主鉄筋93、96と同様或いはそれより太くし、該第9、第10鉄筋継手95、98の空間S5、S6内に納まる長さと太さを持つ強度の有る鋼棒や鉄筋で形成し、その両端部は必要に応じて膨張部を形成している。該膨張部により設置後において該空間S5、S6内に充填されるグラウト材との定着力を増加させることが可能となる。
【0076】
該落下防止冶具100は、フランジとウェッブよりなるL字型形状とし、そのフランジを第3梁構成部材92の側壁へボルト等により取着し、他方のウェッブを第3梁構成部材92の露出側端部へ当接させ、該短手鉄筋99の落下防止手段としている。
【0077】
プレキャスト部材からなる第3梁構成部材92を、クレーン等の吊り下げ移動手段によりその上方、斜め上方或いは側方や下方より移動させ、先の工程で完成している第1梁構成部材90、第2梁構成部材91間に間挿し、第9鉄筋継手95と第10鉄筋継手98の外端部開口部が一致するようにその相互が対向する位置に移動させ、仮固定する。
【0078】
その後、突出防止治具100を固定していたボルト等を側壁面より外す。第3梁構成部材92は水平部材なので、短手鉄筋99は、該第10鉄筋継手98の空間S6内に留まることになる。
【0079】
第9鉄筋継手95の空間S5内には、該短手鉄筋99の本体の約半分が移動できる位置には予め凸部や適宜係止部等の係止手段を設けてある。
【0080】
また、該短手鉄筋99の長手方向中央部に、長手方向の所定寸法幅を有してその周囲に該短手鉄筋99の色とは異なる色の塗布やテープ手段等によりセンターマーキングを形成しておくことで該短手鉄筋99が適切な位置まで移動したかどうかを第1、第2梁構成部材90、91と第3梁構成部材92との間隙より目視することで確認することが可能となる。
【0081】
該第10鉄筋継手98の空間S6内の短手鉄筋99は、該第3梁構成部材92に加振機により振動を与えることにより第1、第2梁構成部材90、91の第9鉄筋継手95、95の空間S5内へ所定長だけ移動させることができる。
【0082】
また、後述するように、グラウト材を該第10鉄筋継手98の内側端部側から注入することにより、該グラウト材に押され、該短手鉄筋99は第9鉄筋継手95の空間S5内へ挿入配設することができる。その際、該短手鉄筋99の膨出部は、該グラウト材が流動接触する面を大きくすることができ、移動のための有効手段とすることができる。
【0083】
この場合は、第1、第2梁構成部材90、91と第3梁構成部材92の間隙を封塞し、該第9、第10鉄筋継手95、98内の主鉄筋端部94、97の周囲及び短手鉄筋99の周囲に形成されている残余空間S5、S6に外方よりグラウト材を注入することになる。
【0084】
グラウト材の注入排出は、上記実施例1、2と同様、該第10鉄筋継手98の主鉄筋96が挿入される側となる継手端部側に形成したグラウト材注入口に注入用ホースを取着し、他方、第9鉄筋継手95の主鉄筋93が挿入される側となる内側の継手端部側に形成したグラウト材排出口に排出用ホースを取着することのできる構成となっている。
【0085】
該注入用ホースよりグラウト材を注入することにより上記空間S5、S6全体を充填し、該グラウト材排出口より排出用ホースを通じてグラウト材が外部へ排出されることで空間S5、S6の全体にグラウト材が充填されたことを確認することができる。
【0086】
上記短手剛部材は、上記した注入用ホース又は排出用ホースを利用し、それらより圧縮空気を吹き込むことで生じるより圧縮空気の圧力で、他方側の鉄筋継手の空間内の所定位置へ移動させることもできる。
【0087】
上記グラウト材の注入排出は、第9、第10鉄筋継手95、98或いは隣接する位置の他の鉄筋継手相互に対し個別に行ってもよいし、上記注入用ホース及び排出用ホースの複数を予め連結しておくことにより一気にまとめて注入排出を行うことも可能である。
【0088】
なお、上記実施例では、第1、第2梁構成部材90、91及び第3梁構成部材92の各々に主鉄筋93、96がダブルで配筋した例を示したが、部材厚や強度等の必要性に応じて適宜本数とすることができる。
【実施例4】
【0089】
図6は、実施例3と同様、建築構造物又は土木構造物等の構造物を構成する構造部材の連結構造を示す実施例で、該構造部材はプレキャスト部材相互或いはプレキャスト部材と通常のコンクリート構造部材とを連結することで鉛直部材を構築している。以下、鉛直部材の一例として柱について説明する。
【0090】
第1柱構成部材101の主鉄筋102の主鉄筋端部103は、該第1柱構成部材101の端部に埋設された第11鉄筋継手104の端部側から空間S7内に挿入配設されている。
【0091】
他方、該第1柱構成部材101と連結される第2柱構成部材105は、その部材中に配筋された主鉄筋106の主鉄筋端部107は、第12鉄筋継手108の端部側から空間S8内に挿入配設されている。
【0092】
該第12鉄筋継手108の空間S8内には、該空間S8内を移動自在とした短手剛部材109を、該第12鉄筋継手108より脱落しないように突出防止治具によりその露出側端部を押える仮置きした状態で挿入している。該第2柱構成部材105の製造、移動及び設置時に至るまで該第12鉄筋継手108より突出或いは脱落しないように仮止め状態で該第12鉄筋継手108の空間S8内に挿入配置している。
【0093】
該短手剛部材109は、該主鉄筋106と同様或いはそれより太くし、該第12鉄筋継手108の空間S8内に納まる長さと太さを持つ強度の有る鉄筋で形成し、その両端部は必要に応じて膨張部を形成している。該膨張部により設置後において該空間S7、S8内に充填されるグラウト材との定着力を増加させることが可能となる。
【0094】
該突出防止治具は、フランジとウェッブよりなるL字型形状とし、そのフランジを第2柱構成部材105の側壁へボルト等により取着し、他方のウェッブを該第2柱構成部材105の下端部に当接し、該短手剛部材109の落下防止手段としている。
【0095】
プレキャスト部材からなる第2柱構成部材105をクレーン等の吊り下げ移動手段によりその上方、斜め上方或いは側方より移動させ、先の工程で完成している第1柱構成部材101上へ第11鉄筋継手104と第12鉄筋継手108の外端部開口部が一致するようにその相互を対向する位置に移動させ、仮固定する。
【0096】
その後、落下防止冶具を固定していたボルト等を側壁面より外すと、第12鉄筋継手108の空間S8内に仮置きしていた短手剛部材109は、該第12鉄筋継手108の各々の開口した継手端部よりその自重により第11鉄筋継手104の空間S7内へ落下することになる。落下した短手剛部材109は、本体の約半分の長さとなる部分が対向する第11鉄筋継手104の空間S7内に移動することになり、連結する第1柱構成部材101と第2柱構成部材105に跨る状態で停止する。
【0097】
空間S7内に移動した該短手剛部材109は、該第11鉄筋継手104或いは第12鉄筋継手108の内側に形成した本体の約半分が移動できる位置に予め設定した凸部や適宜係止部等の係止手段により所定位置でその移動が停止することになる。
【0098】
該短手剛部材109の長手方向中央部に、長手方向の所定寸法幅を有してその周囲に該短手剛部材109の色とは異なる色の塗布やテープ手段等によりセンターマーキングを形成しておくことで該短手剛部材109が適切な位置まで移動したかどうかを仮固定した第1、第2柱構成部材101、105の間隙より目視することで確認することが可能となる。
【0099】
その後、該間隙を封塞し、該第11鉄筋継手104内及び第12鉄筋継手108内の主鉄筋103、107の周囲及び短手剛部材109の周囲に形成されている残余空間S7、S8に外方よりグラウト材を注入する。
【0100】
グラウト材の注入は、該第11鉄筋継手104の主鉄筋102が挿入される側の継手端部側に形成したグラウト材注入口に注入用ホースを取着し、他方、排出は、第12鉄筋継手108の主鉄筋106が挿入される側の継手端部側に形成したグラウト材排出口に排出用ホースを取着することで行うことができる。
【0101】
該注入用ホースよりグラウト材を注入することにより上記空間S7、S8全体を充填し、該グラウト材排出口より排出用ホースを通じてグラウト材が外部へ排出されることで全体に充填されたことを確認することができる。
【0102】
上記グラウト材の注入排出は、第11鉄筋継手104及び第12鉄筋継手108或いは隣接する位置の他の鉄筋継手相互に対し個別に行ってもよいし、上記注入用ホース及び排出用ホースの複数を予め連結しておくことにより一気にまとめて注入排出を行うことも可能である。
【0103】
なお、上記実施例4では、第1、第2柱構成部材101、105の各々に主鉄筋102、106が4本配筋した例を示したが、柱の太さや強度等の必要性に応じて適宜本数とすることができる。また、その各部材の長手方向における連結分の間隔も必要性に応じて適宜選択することができる。
【実施例5】
【0104】
上記した実施例3、4の梁構成部材及び柱構成部材の鉄筋継手に、実施例2で示した一方の鉄筋継手内に弾発体と短手剛部材を設け、該弾発体の弾発力によって該短手剛部材の半分を他方の鉄筋継手内に移動させる連結構造を採用することもできる。また、その他の各種構成は実施例3、4と同様である。
【0105】
また、上記実施例3、4、5は、梁構成部材及び柱構成部材として水平部材及び鉛直部材のプレキャスト部材に沿って説明したが、本発明は、水平部材及び鉛直部材に限定されるものではない。湾曲の形状の梁や柱の構成部材であってもよい。湾曲形状の梁や柱のプレキャスト部材の場合は、連結部も湾曲形状となるが、本実施例の連結構造で対応できるものである。その際短手剛部材も該湾曲形状に対応できるものとする。