(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自車両の進路前方の道路上に人物、動物、物体等が飛び出したことを検知したような場合には、緊急事態が生じていることを表す警報が即座に自車両の運転者に伝わるように表示器を制御することが望ましい。特許文献1に開示されている表示器を用いることにより、運転者が視線を前方に向けた状態のままでも、異常の発生を即座に運転者に伝えることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の表示器を用いる場合には、ダッシュボード上に配置する発光素子の数を増やさない限り、警報を表示する位置は10種類のみに限定される。したがって、警報を表示する位置が重要な意味を持つような状況においては、表示する位置の誤差が大きくなり、十分な表示能力が得られない可能性がある。発光素子の数を増やす場合には、部品数が増えてコストが増大してしまう。しかも、多数の発光素子を配置する空間を車両上に確保するのが困難であったり、部品の取り付けに要する工数が増えるという課題がある。
【0007】
一方、一般的なHUD装置の場合には、様々な情報を表示することができ、表示する位置を高精度で調整することもできる。しかし、HUD装置の場合はある程度面積が大きい領域の全体に表示光を投射する必要があるので、高出力の光源を用いない限り、表示の輝度を十分に確保することができない。高出力の光源を用いる場合には、消費電力や発熱が増大するという課題がある。表示の輝度が低い場合には、運転者が警報の表示を見逃す可能性が高まる。また、HUD装置が表示する領域の面積が小さい場合には、様々な場所に警報を表示することができず、表示位置制御の自由度が小さくなる。
【0008】
例えば、自車両の進路前方の道路上に人物、動物、物体等が飛び出したことを検知した場合には、運転者が対象物の位置に素早く視線を移動して注目できるように、警報を表示する位置を精密に制御できることが望まれる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、注意喚起のために必要な表示輝度を得ることが容易であり、表示位置の調整が可能であり、しかも装置コストや取り付け工数を低減可能な、車両用発光表示装置及び車両用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用発光表示装置は、下記(1)〜(
9)を特徴としている。
(1) オンオフ制御が可能な少なくとも1つの光源と、
車両の運転者の前方に配置された光反射部材と、
を備え、
前記光反射部材に向けて、前記車両のインストルメントパネルの下方から前記光源の光を出射し、前記運転者が視認可能な虚像表示を形成する車両用発光表示装置であって、
前記光源を含む発光部を前記車両の進行方向の前後方向に対して移動自在に支持し、前記発光部を前記前後方向に移動することで、前記光源の光を前記発光部から前記光反射部材に向けて出射する位置を前記前後方向に対して移動させる前後方向可動機構
をさらに備え
、
前記前後方向可動機構は、前記発光部を支持し、前記インストルメントパネルに形成される開口部から前記発光部を露出し且つ前記開口部を常時閉塞するよう変形しつつ前記発光部と一体に前記前後方向に移動自在な帯状支持部材、
を備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(
2) 上記(
1)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記帯状支持部材は、帯状の長手方向に沿って交互に配置された2種類の材料を連結して構成され、前記2種類の材料の少なくとも一方は可撓性を有
し、
前記帯状支持部材の前記長手方向の中央部には、開口が形成された中央部材が配置され、前記開口を塞ぐように前記発光部が前記中央部材に取り付けられている、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(
3) 上記(
1)または(
2)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記帯状支持部材の長手方向の両端部を支持し、前記帯状支持部材を所定の移動経路に沿って案内するガイド溝を有するガイド部材、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(
4) 上記(1)から(
3)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
注意喚起すべき対象物が前記虚像表示の位置の近傍で検知された場合、前記光源を点灯又は点滅状態に制御する注意喚起表示制御部、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(
5) 上記(
4)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記注意喚起表示制御部は、前記虚像表示を形成する場合、前記前後方向可動機構を駆動して、前記虚像表示の位置を前記対象物の位置に近づく方向に移動するように制御する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(
6) 上記(
1)から(
3)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源から出射された光を反射して前記光反射部材側に光を導く反射光学部材、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(
7) 上記(
6)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源の外径よりも大きい環状に形成され、前記光源から出射された光を透過、反射、又は拡散して前記反射光学部材側に導く、少なくとも1つの環状光学部材を有する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(
8) 上記(
7)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、互いに大きさが異なる複数の前記環状光学部材を有し、前記光源の位置から前記反射光学部材の位置に向かって大きさが順番に大きくなるように、前記環状光学部材が配置された、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(
9) 上記(
1)から(
3)、(
6)から(
8)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源から出射された光の進行方向の軸の周りを周回する方向に対して、前記発光部から前記光反射部材に向けて出射される光の向きを調整する回動機構を有する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
【0011】
上記(1)の構成の車両用発光表示装置によれば、前後方向可動機構における前後方向の移動により、運転者が視認する前記光反射部材からの反射光の位置は車両の上下方向に移動する。すなわち、光源の発光により注意喚起の警報を表示する際には、表示する位置を上下方向に自由に変更することができる。したがって、多数の光源を用意しなくても、表示位置の制御が可能になる。
更に、上記(
1)の構成の車両用発光表示装置によれば、前後方向可動機構を動かして表示する位置を変更する場合であっても、インストルメントパネルに形成される開口部を常時閉塞することができる。したがって、インストルメントパネルの内部への異物の侵入を防止したり、異物等の挟み込みを防止することが可能になる。また、変形可能な帯状の支持部材を用いることにより、開口部の閉塞状態を維持したまま、その長手方向への移動を許容することが容易になる。
上記(
2)の構成の車両用発光表示装置によれば、帯状支持部材に柔軟性を持たせることが容易になる。したがって、移動経路の方向が曲線的に変化するような場合であっても帯状支持部材を配置することができ、比較的狭い空間に装置を収容することが可能になる。
上記(
3)の構成の車両用発光表示装置によれば、事前に定めた移動経路に沿って移動するように、帯状支持部材を案内することができる。
上記(
4)の構成の車両用発光表示装置によれば、運転者の注目すべき対象物が、虚像表示の位置の近傍に存在することを、この虚像表示により運転者に知らせることができる。
上記(
5)の構成の車両用発光表示装置によれば、運転者の注目すべき前記対象物が存在する場合に、これを報知するための前記虚像表示の位置を、対象物に近づけることができる。したがって、運転者は視認した虚像表示の近傍に存在する対象物を、瞬時に発見することが可能になる。
上記(
6)の構成の車両用発光表示装置によれば、反射光学部材の働きにより、虚像表示が結像する位置を、運転者から見てより遠い位置に移動することが可能になる。これにより、運転者は自身の視覚の焦点を大きく調整しなくても、虚像表示と車外の風景との両方を同時に視認することが可能になる。
上記(
7)の構成の車両用発光表示装置によれば、運転者が視認する虚像表示の中に、環状の発光領域を加えることができる。また、環状の発光領域は、その中央部よりも運転者に近い位置に結像されるので、表示内容に遠近感を持たせ立体的に表示することができる。
上記(
8)の構成の車両用発光表示装置によれば、運転者が視認する虚像表示の中に、複数の環状の発光領域を立体的に表示することができる。したがって、運転者は虚像表示により遠近感を認識することができる。
上記(
9)の構成の車両用発光表示装置によれば、発光部の設置位置を左右方向に移動できない場合であっても、実際の運転者の視点の位置と一致するように、出射する光の向かう方向や虚像表示の結像位置を調整することが可能になる。
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示システムは、下記(
10)〜(
12)を特徴としている。
(
10) 上記(1)から(
9)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置と、
HUDユニットと
を備える車両用表示システムであって、
前記HUDユニットの側方に前記車両用発光表示装置が配置された、
ことを特徴とする車両用表示システム。
(
11) 上記(
10)に記載の車両用表示システムであって、
前記車両用発光表示装置の表示位置を、前記HUDユニットにおける表示位置の調整に連動して制御する連動表示制御部、
をさらに備えることを特徴とする車両用表示システム。
(
12) 上記(
10)に記載の車両用表示システムであって、
注意喚起すべき対象物が検知された場合、検知された前記対象物の左右方向の位置に応じて、前記車両用発光表示装置及び前記HUDユニットのいずれか一方に選択的に表示するよう制御する連動表示制御部、
をさらに備えることを特徴とする車両用表示システム。
【0013】
上記(
10)の構成の車両用表示システムによれば、運転者は車両用発光表示装置の虚像表示と、HUDユニットの虚像表示との両方を視認することが可能になる。したがって、運転者は運転に必要な様々な情報をHUDユニットから取得することもでき、また、緊急時には車両用発光表示装置により注意喚起の表示を視認することもできる。
上記(
11)の構成の車両用表示システムによれば、車両用発光表示装置の動作とHUDユニットの動作とが連携するように制御することができ、一方の表示位置の変化に連動して他方の表示位置も変化するように自動的に調整可能になる。したがって、例えば運転者の視点の位置が変化したような場合に、実際の視点に合わせて一方の表示位置を修正操作するだけで他方の表示位置も修正することが可能になる。
上記(
12)の構成の車両用表示システムによれば、注意喚起の表示を形成する際に、対象物の左右方向の位置に応じて、車両用発光表示装置の表示と、HUDユニットの表示とを自動的に使い分けることが可能になる。これにより左右方向の様々な位置に、注意喚起の表示を形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用発光表示装置及び車両用表示システムによれば、注意喚起のために必要な表示輝度を得ることが容易であり、表示位置の調整が可能であり、しかも装置コストや取り付け工数を低減可能になる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両用発光表示装置及び車両用表示システムに関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
<装置の配置状態及び構成の概要>
車両用発光表示装置10A、10Bを搭載した車両の車室内で運転席前方の箇所を斜め上方から見た状態を
図1に示す。また、これらの車両用発光表示装置10A、10Bを搭載した車両を側方から見た断面における各部のレイアウトを
図2及び
図3に示す。
【0019】
図1に示すように、この例ではメータフード23の前方のインストルメントパネル21上に一部分が露出する形態で、2組の車両用発光表示装置10A及び10Bが設置してある。一方の車両用発光表示装置10Aはメータフード23の中央部よりも左側に配置してあり、他方の車両用発光表示装置10Bはメータフード23の中央部よりも右側に配置してある。また、2組の車両用発光表示装置10A及び10Bは、互いに左右に離間した状態で配置してある。
【0020】
実際には、車両用発光表示装置10A及び10Bの本体は、インストルメントパネル21の内側に配置してあり、インストルメントパネル21に形成された開口部から車両用発光表示装置10Aの一部分及び車両用発光表示装置10Bの一部分がそれぞれ露出している。但し、インストルメントパネル21の開口部は、車両用発光表示装置10A及び10Bにより常時閉塞された状態になっている。
【0021】
2組の車両用発光表示装置10A及び10Bは、それぞれ表示用の光をインストルメントパネル21の開口部から上方に向けて出射する。
図2に示すように、車両用発光表示装置10Aから出射された光は、フロントウインドシールド(窓ガラス)22に照射され、フロントウインドシールド22で反射した光が運転者の視点EPの位置に向かう。車両用発光表示装置10Bについても同様である。
【0022】
注意喚起の表示を行うために車両用発光表示装置10Aの内部の光源が発光している場合には、運転者は視点EPの位置で、光源の発光に相当する点状の注意喚起表示16を視認することができる。この注意喚起表示16は、
図2に示すようにフロントウインドシールド22上の反射点22aよりも前方に虚像として結像される。
【0023】
したがって、運転者は運転しながらフロントウインドシールド22を介してボンネット24の前方の車両外の風景を視認しながら、注意喚起表示16を風景と重ねた状態で視認することができる。なお、本実施形態では車両用発光表示装置10A、10Bが出射した光をフロントウインドシールド22で反射する場合を例示しているが、コンバイナと呼ばれる特別な反射板をフロントウインドシールド22の代わりに利用しても良い。
【0024】
車両用発光表示装置10A、10Bは、
図2に示すように可動構造の帯状支持部材12を介して支持された注意喚起表示器11を備えている。そして、注意喚起表示器11は、
図3に示すように前後方向に位置を変えて移動することができる。注意喚起表示器11の位置が移動すると、
図3に示すように注意喚起表示器11の光を出射する位置が変化し、これに伴って光路も変化する。
【0025】
例えば、注意喚起表示器11が比較的前側の位置にある場合には、注意喚起表示器11から出射された光が
図3に示すフロントウインドシールド22の反射点22aで反射して運転者の視点EPに向かうので、注意喚起表示16の虚像は、上下方向の比較的低い位置に結像する。また、注意喚起表示器11が比較的後ろ側に移動すると、注意喚起表示器11から出射された光が
図3に示すフロントウインドシールド22の反射点22bで反射して運転者の視点EPに向かうので、注意喚起表示16の虚像は、上下方向の比較的高い位置に結像する。つまり、運転者が視認する注意喚起表示16の表示位置を上下方向に切り替えることができる。また、注意喚起表示器11の前後方向の位置は自在に変更できるので、注意喚起表示16の表示位置も上下方向の様々な位置に移動できる。
【0026】
<装置の支持構造の説明>
注意喚起表示器11A及び11Bを支持する帯状支持部材12の外観を
図4に示す。
図4に示すように、帯状支持部材12は、矩形の薄板状の硬質性材料部14と、柔軟性材料部15とを交互に並べ、長手方向に互いに隣接する複数の硬質性材料部14を柔軟性材料部15を介して連結することにより帯状に形成してある。また、帯状支持部材12の中央部には注意喚起表示器11を取り付けるための中央部材13が配置されている。中央部材13には開口部が形成されており、この箇所に注意喚起表示器11が環状のベゼル11dで固定されている。注意喚起表示器11の表面に露出する箇所には開口部を閉塞するために透明カバーが配置されている。
【0027】
インストルメントパネル21を側方から見た縦断面における帯状支持部材12の取り付け状態を
図5に示す。インストルメントパネル21には、取り付けた車両用発光表示装置10A、10Bの各々が出射する光を、所定の移動範囲内の全域に渡って遮らないように比較的大きなインパネ開口部27を形成してある。また、このインパネ開口部27の周辺部には、帯状支持部材12を装着するために、
図5に示すようなベゼル25及び26が配置してある。ベゼル25及び26には、所定の移動経路に沿って帯状支持部材12を移動可能な状態で案内するためにガイド溝25a及び26aがそれぞれ形成されている。
【0028】
すなわち、帯状支持部材12はその長手方向の両端部がベゼル25のガイド溝25a及びベゼル26のガイド溝26aと係合し、ガイド溝25a及び26aの形状に沿って長手方向(前後方向)に移動可能な状態で支持されている。また、
図5に示す構成例においては、比較的狭い空間内で帯状支持部材12を長い距離に渡って移動できるように、ベゼル26のガイド溝26aが曲線的な移動経路を形成している。
【0029】
帯状支持部材12は、複数の硬質性材料部14を柔軟性材料部15を介して連結してあるので全体としても柔軟性を有しており、特に厚み方向に対しては容易に変形することができる。したがって、帯状支持部材12は、曲線的に形成されたガイド溝26aに沿って
図5のように変形しながら移動することができる。
【0030】
帯状支持部材12は帯状であるので、帯状支持部材12が注意喚起表示器11と共に長手方向に向かって移動している途中であっても、インパネ開口部27を常時閉塞した状態に維持することができる。これにより、インパネ開口部27への異物の侵入や挟み込みなどの発生を防止できる。
【0031】
なお、
図5の例では帯状支持部材12を移動可能な状態でインストルメントパネル21上で支持するためにベゼル25及び26を利用しているが、帯状支持部材12を支持し案内するためのガイド溝をインストルメントパネル21側に形成しておけば、ベゼル25及び26を省略することもできる。
【0032】
<注意喚起表示16の具体的な表示例>
車両用発光表示装置10A、10Bを搭載した車両の車室内から車両前方の風景を見た状態を
図6及び
図7にそれぞれ示す。また、注意対象物と注意喚起表示との位置関係の例を
図8に示す。
【0033】
例えば、
図6に示すような車両外風景28を車載カメラで撮影している場合には、前方の道路上に飛び出した人物等の注意対象物28aを自動的に検出することが可能である。また、装置が注意対象物28aを検出した場合には、運転者に注意を促すために、
図6に示すように前方の視野内に注意喚起表示16を表示することが望ましい。これにより、運転者の注意力が散漫な時であっても、運転者が注意対象物28aを素早く発見できるようになる。
【0034】
注意喚起表示16を表示する時には、注意喚起表示器11が
図2に示すように上方に向かって光を出射する。この光がフロントウインドシールド22で反射して運転者の視点EPに向かうので、運転者は注意喚起表示16を光源に対応する点状の発光として視認することができる。
【0035】
また、注意喚起表示器11を前後方向に移動することにより、注意喚起表示16の表示位置が
図3に示すように上下方向に変化するので、注意喚起表示16の上下方向の位置を制御することもできる。したがって、注意喚起表示16の位置を
図6に示す状態から
図7に示す状態のように移動することができる。つまり、注意喚起表示16を注意対象物28aの位置に近づけることができる。注意喚起表示16を注意対象物28aに近づけることにより、運転者は注意喚起表示16を視認し、その近傍に存在する注意対象物28aにより早く気づくことができる。
【0036】
図8に示すように、点状の注意喚起表示16を実際の注意対象物28aと重なる位置に表示しても良い。但し、注意喚起表示16の発光輝度が高すぎると、逆に運転者から注意対象物28aが視認しにくい状態になるので、適度に輝度を調整する必要がある。また、
図1に示した構成においては、左右に2つ配置した車両用発光表示装置10A及び10Bが備わっているので、これらを利用して
図8のように2つの注意喚起表示16を同時に表示することもできる。
【0037】
<電気回路の構成>
車両用発光表示装置10Aの電気回路の構成例を
図9に示す。なお、車両用発光表示装置10Bについても
図9と同様の構成であるが、2組の車両用発光表示装置10A、10Bの構成を部分的に共用することも考えられる。
【0038】
図9に示すように、車両用発光表示装置10Aは車載カメラ41、制御部42、ランプドライバ43、モータドライバ44、光源45、及び電気モータ46を備えている。
【0039】
車載カメラ41は、車両に搭載され、例えば
図6に示した車両外風景28のような映像を常時撮影することができる。車載カメラ41が撮影した映像を画像処理して例えばパターン認識などの手法を用いることにより、人物などの特徴的な形状の注意対象物28aを自動的に認識することができ、注意対象物28aの位置も特定できる。勿論、車載カメラ41以外の装置を用いて注意対象物28aを検出することも可能である。
【0040】
制御部42は、マイクロコンピュータにより構成されており、内蔵されているプログラムを実行することにより、車両用発光表示装置10Aに必要とされる様々な制御を実施する。例えば、制御部42は車載カメラ41が撮影した映像を解析して注意対象物28aの有無や位置を識別する。また、制御部42は注意喚起表示16の表示のオンオフを切り替えたり、注意喚起表示16を表示する位置を制御する。
【0041】
光源45は、例えば発光ダイオードのようにオンオフ制御が可能なランプで構成されている。光源45は、
図2に示した注意喚起表示器11に内蔵されており、光源45の発光により得られる光は、注意喚起表示器11の上面から上方のフロントウインドシールド22に向けて出射される。
【0042】
電気モータ46は帯状支持部材12と連結されており、電気モータ46を駆動することにより帯状支持部材12を長手方向(前後方向)に移動することができる。電気モータ46として例えばステッピングモータを用いることにより、注意喚起表示器11の位置や移動量を比較的簡単に制御できる。
【0043】
ランプドライバ43は、制御部42の出力する制御信号に従って、光源45の通電のオンオフを制御することができる。モータドライバ44は、制御部42の出力する制御信号に従って、電気モータ46を駆動し、注意喚起表示器11及び帯状支持部材12の位置を前後方向に移動する。
【0044】
<車両用発光表示装置の制御動作>
車両用発光表示装置10Aの主要な動作を
図10に示す。すなわち、車両用発光表示装置10Aの制御部42が
図10の制御を実行する。車両用発光表示装置10Bの動作についても
図10と同様である。
【0045】
車両用発光表示装置10Aの電源がオンになると、制御部42は最初にステップS10で所定の初期化を実行する。例えば、初期状態にするために、ランプドライバ43を介して光源45を非通電に制御し、光源45を消灯する。また、モータドライバ44を介して電気モータ46を駆動し、注意喚起表示器11及び帯状支持部材12の前後方向の位置を事前に定めた初期状態の位置に位置決めする。
【0046】
次のステップS11では、制御部42は、車載カメラ41の撮影により得られた映像の情報を処理してパターン認識を実施することにより、例えば
図6における注意対象物28aのような自車両前方の障害物(物体)を検出する。障害物を検出した場合はステップS12からS13に進む。
【0047】
ステップS13では、制御部42は、S11で検出した障害物の位置を、事前に定めた「注意喚起領域」の位置と比較する。この「注意喚起領域」は、注意喚起表示16を表示可能な領域の近傍に割り当てられる。例えば、
図6に示す状態では注意対象物28aの左右方向の位置が注意喚起表示16の位置に近いため、注意喚起表示16を用いて運転者の視線を注意対象物28aに誘導することができる。
図6のような状態か否かを識別するために、「注意喚起領域」を事前に割り当てる。「注意喚起領域」の範囲内で障害物が検出された場合には次のS14に進む。
【0048】
ステップS14では、制御部42は、ランプドライバ43を介して光源45を通電状態に制御し、光源45を発光状態に切り替える。これにより、光源45から出射された光が、注意喚起表示器11から出射され、フロントウインドシールド22の表面で反射して運転者の視点EPに入射する。つまり、運転者によって注意喚起表示16が視認される状態になる。
【0049】
ステップS15では、制御部42は、S14で表示した注意喚起表示16の位置が、検出された注意対象物28aの位置に近づくように表示位置を移動する。具体的には、電気モータ46を駆動して注意喚起表示器11の位置を前後方向に移動し、注意喚起表示16の位置を上下方向に移動する。そして、上下方向について、注意対象物28aの位置と注意喚起表示16の位置との距離が小さくなるように制御する。これにより、例えば
図6の状態から
図7の状態のように注意喚起表示16の表示位置を変更できる。
【0050】
ステップS16では、制御部42は、S11で検出した障害物の位置の変化を監視して、最新の障害物の位置が、「注意喚起領域」の外側に移動したか否かを識別する。障害物の位置が「注意喚起領域」の内側にある場合はS15に戻って最新の障害物の位置に追従するように注意喚起表示16の表示位置を制御する。
【0051】
障害物の位置が「注意喚起領域」の外側に移動した場合は、S16からS17に進む。そして、制御部42は注意喚起表示16を消灯する。つまり、ランプドライバ43を介して光源45を非通電に制御する。
【0052】
以上、第1実施形態の車両用発光表示装置によれば、光源の発光により注意喚起の警報を表示する際には、表示する位置を上下方向に自由に変更することができる。したがって、多数の光源を用意しなくても、表示位置の制御が可能になる。
【0053】
<第2実施形態>
<機構部の構成>
車両用発光表示装置に含まれる注意喚起表示器11Aの構成例を
図11に示す。この注意喚起表示器11Aは、例えば
図2及び
図4に示した注意喚起表示器11の代わりに、帯状支持部材12に装着して使用することができる。
【0054】
図11に示すように、注意喚起表示器11Aは、センターライト11a、複数のライトリング11b、拡大ミラー11c、ベゼル11d、透明カバー11e、及びヒートシンク11fを備えている。
【0055】
センターライト11aは、
図9に示した光源45に相当し、注意喚起表示16を表示するために必要な光を出射する。高い注意喚起効果を得るために高出力の光源をセンターライト11aに用いてあり、比較的大きな発熱が生じる。この発熱による温度上昇を抑制するために、センターライト11aの近傍にヒートシンク11fを配置してある。
【0056】
複数のライトリング11bの各々は、センターライト11aの外径よりも大きいサイズの円環形状に形成してあり、センターライト11aから拡大ミラー11cに向かう光の光路の周りを囲むように、これらの間に配置してある。これらのライトリング11bは、光の透過、反射、拡散のいずれか1つ又はこれらの組み合わせによる光学機能を有する部材である。つまり、センターライト11aから出射された光の一部分が、ライトリング11bを経由して拡大ミラー11cに向かい、センターライト11aの主要な光路とは別の新たな光路を形成する。
【0057】
複数のライトリング11bは、互いに外径が異なる円環形状に形成してある。そして、
図11に示すように、センターライト11aから拡大ミラー11cに向かう方向に対して、徐々に外径が大きくなる状態で、且つ互いに間隔を空けて並べて配置してある。なお、ライトリング11bの形状については、円環形状に限らず、例えば矩形や多角形の外形形状を有する環状に形成しても良い。また、環状ではなく、1辺(直線、曲線(括弧形状)など)でも良い。
【0058】
拡大ミラー11cは、凹面鏡、又は非球面ミラーとして構成されており、注意喚起表示16の虚像の結像位置を視点EPに対して遠距離の位置に移動するための機能を有している。センターライト11aから出射された光は、拡大ミラー11cの表面で反射し、矢印A3で示す方向に出射され、フロントウインドシールド22に向かう。
【0059】
図示しないが、拡大ミラー11cには所定の回動機構が連結されている。この回動機構は、センターライト11aから拡大ミラー11cに入射する光の軸の周りを周回する方向(矢印A2の方向)に、拡大ミラー11cを回動させることができ、更に電気モータなどの駆動部を有している。拡大ミラー11cが回動すると、拡大ミラー11cから出射される光の向かう方向(矢印S3の方向)も変化する。この回動機構を利用することにより、注意喚起表示16の表示位置を左右方向に移動したり、運転者の視点EPの位置の変化に対応して結像位置を調整することが可能になる。
【0060】
なお、上記の回動機構については、拡大ミラー11cを回動させる代わりに、同じ方向に注意喚起表示器11Aの全体を回動する機構であっても良い。つまり、注意喚起表示器11Aが出射する光の向き(A3)をA2の方向に回動する機能を有することが重要である。
【0061】
ベゼル11dは、拡大ミラー11cの外径よりも少し大きい大きさで円環形状に形成され、中央部が開口している。ベゼル11dは、注意喚起表示器11Aを帯状支持部材12に固定するために利用される。また、ベゼル11dの一部分は、拡大ミラー11c側から入射する光を反射し、A3の方向に出射する。
【0062】
透明カバー11eは、ベゼル11dの内側の開口部の箇所を閉塞するように装着されている。拡大ミラー11cで反射した光は、透明カバー11eを透過して注意喚起表示器11Aから矢印A3の方向に出射される。
【0063】
<注意喚起表示の具体例>
図11に示した注意喚起表示器11Aが出射する光により運転者の視点EPの位置で視認される注意喚起表示30の具体例を
図12に示す。また、注意喚起表示30のための光の光路と形成される各虚像の位置を
図13及び
図14に示す。
【0064】
図12に示す注意喚起表示30においては、その中央部に点状の中央発光部位31が形成され、その周囲に4つの中間環状表示部位32、33、34、及び35が同心円状に形成され、最も外側に環状の外周表示部位36が形成されている。
【0065】
図12に示した注意喚起表示30の中央発光部位31は、センターライト11aの発光により直接得られる最も輝度の高い領域に相当し、
図13に示す虚像16aの位置に結像される。
【0066】
また、4つの中間環状表示部位32、33、34、及び35は、センターライト11aから出射された後、それぞれ4つのライトリング11bのいずれかを経由し、拡大ミラー11cで反射してフロントウインドシールド22に向かった光に相当する。つまり、運転者はライトリング11bのそれぞれが発光しているかような状態を、中間環状表示部位32、33、34、及び35として視認する。また、4つのライトリング11bがセンターライト11aと拡大ミラー11cの間の中間の互いに異なる位置に配置してあるので、中間環状表示部位32、33、34、及び35は、それぞれ
図14に示す各虚像16b、16c、16d、及び16eの位置に結像される。
【0067】
また、注意喚起表示30の外周表示部位36は、センターライト11aから出射された後、拡大ミラー11cで反射され、更にベゼル11dの箇所で反射してフロントウインドシールド22に向かった光に相当する。つまり、運転者はベゼル11dが発光しているかような状態を、外周表示部位36として視認する。また、ベゼル11dはライトリング11bよりもフロントウインドシールド22に近い位置に存在するので、外周表示部位36は、フロントウインドシールド22に近い虚像16fの位置に結像される。
【0068】
図11に示した注意喚起表示器11Aは、前後方向(A1方向)に動いたり回動方向(A2方向)に光の出射方向を変えることができる。このような変化に伴って、
図14に示すように光路が変化する。そして、各虚像16a、16b、16c、16d、16e、及び16fの結像位置も変化する。したがって、注意喚起表示30の表示される位置を上下及び左右の方向に移動することが可能であるし、運転者の視点EPの位置の変化に合わせて光の出射方向を調整することもできる。
【0069】
<第3実施形態>
<機構部の構成及び外観>
前述の車両用発光表示装置を含む車両用表示システム100の外観の具体例を
図15に示す。また、この車両用表示システム100を搭載した車両のインストルメントパネル近傍の構成例を
図16に示す。
【0070】
図15に示す車両用表示システム100は、中央部に配置したHUDユニット51と、その左右側方にそれぞれ配置した注意喚起表示器11L及び11Rとを備えている。HUDユニット51は、一般的な車両用のヘッドアップディスプレイ(HUD)装置と同様に、車両の運転に役立つ様々な文字情報や記号などの像をフロントウインドシールド22などの投影し運転者の視野の前方に虚像として表示する機能を有している。つまり、単なる表示の点灯/消灯だけでなく様々な可視情報をある領域内に必要に応じて表示できる点が車両用発光表示装置10A、10Bとは異なっている。
図15に示した注意喚起表示器11L及び11Rのそれぞれは、前述の注意喚起表示器11Aと同等の機能を有する構成要素である。
【0071】
図16に示すように、メータフード23の前方のインストルメントパネル21の内部にHUDユニット51が収容されている。インストルメントパネル21に矩形の開口部が形成されており、その箇所に外形形状が矩形のHUDベゼル59が装着されている。HUDユニット51は、HUDベゼル59を介してインストルメントパネル21に固定されている。
【0072】
HUDユニット51は、インストルメントパネル21の開口部、つまりHUDベゼル59の内側の領域から上方のフロントウインドシールド22に向けて、表示すべき可視情報の表示光を出射することができる。すなわち、
図15に示す光の出射方向54に、HUDユニット51が光を出射する。HUDベゼル59の内側の光を出射する領域は、透明なカバーで覆われている。また、HUDベゼル59の一部分には、HUDユニット51が制御可能な特別な光源59aが装着されている。光源59aを発光させることにより、HUDユニット51が表示する領域の中央付近においても、注意喚起のための表示を行うことができる。
【0073】
図16に示すように、注意喚起表示器11LはHUDユニット51の左側方に配置され、インストルメントパネル21の内側に収容されている。また、注意喚起表示器11RはHUDユニット51の右側方に配置され、インストルメントパネル21の内側に収容されている。注意喚起表示器11L及び11Rの支持構造については、前述の第1実施形態の場合と同様である。
【0074】
<注意喚起表示16の表示例>
車両用表示システム100を搭載した車両の車室内から車両前方の風景を見た状態の具体例を
図17に示す。
【0075】
図15及び
図16に示した車両用表示システム100を搭載した車両においては、HUDユニット51を用いて中央部に注意喚起表示16Cを表示することが可能である。すなわち、
図16に示した光源59aの点灯により、出射された光がフロントウインドシールド22で反射して運転者の視点EPに向かうので、光源59aの虚像としてHUDベゼル59の一部分が明るく表示される。
【0076】
また、注意喚起表示器11Lの光源を点灯することにより、注意喚起表示16Cの左側の領域に点状のもしくは同心円状パターンの注意喚起表示16Aを表示することができる。更に、注意喚起表示器11Rの光源を点灯することにより、注意喚起表示16Cの右側の領域に点状のもしくは同心円状の注意喚起表示16Bを表示することができる。
【0077】
したがって、3つの注意喚起表示16A、16B、及び16Cを使い分けることも可能であり、左右方向の比較的広い範囲の全域に渡って注意喚起表示を形成することも可能になる。
【0078】
<電気回路の構成例>
図15〜
図17に示された車両用表示システム100の電気回路の構成例を
図18に示す。
【0079】
図18に示すように、この車両用表示システム100は、前述の注意喚起表示器11Lを制御する注意喚起制御部111を含む左側の注意喚起表示装置110と、HUDユニット51と、注意喚起表示器11Rを制御する注意喚起制御部121を含む右側の注意喚起表示装置120とを備えている。HUDユニット51の内部には、前述の光源59aを制御可能なHUD制御部101が備わっている。
【0080】
また、注意喚起制御部111、HUD制御部101、及び注意喚起制御部121は、車両上通信網130を介して互いに通信可能な状態で接続されている。したがって、この車両用表示システム100においては、注意喚起表示装置110、HUDユニット51、注意喚起表示装置120が互いに連携するように制御を実施することが可能である。
【0081】
なお、注意喚起表示装置110、120、及びHUDユニット51を組み合わせて車両用表示システム100を構成するような場合には、様々な構成の変形が考えられる。例えば、注意喚起制御部111、121、及びHUD制御部101の代わりに、単一の制御装置を用いて注意喚起表示装置110、120、及びHUDユニット51の全てを集中的に制御しても良い。
【0082】
<主要な動作の説明>
<視点位置に対応した投影方向の調整>
車両用表示システム100の動作例を
図19に示す。すなわち、
図18に示した注意喚起制御部111又は注意喚起制御部121が
図19の制御を実施することにより、視点位置に対応した投影方向の調整に関し、HUDユニット51と連携した動作を実現することができる。
【0083】
例えば、運転者の視点EPの位置が変化すると、HUDユニット51が投射する表示像の虚像を運転者が視認できなくなる可能性がある。したがって、投射する方向を運転者の視点EPに合わせて調整する機能をHUDユニット51に搭載する場合がある。例えば、運転者の顔の位置を撮影可能な車載カメラを設置した場合には、撮影した画像から運転者の目の位置を検出できるので、HUDユニット51が想定している視点の位置を修正し、HUDユニット51の投影方向を自動的に調整することが可能である。また、運転者等がスイッチ等を手動操作することにより、投影方向を調整することも可能である。
【0084】
また、HUDユニット51が投射方向(
図15中の54の方向)の調整を実施する環境においては、同時に注意喚起表示装置110及び120においても注意喚起表示16に関する光の出射方向(52、53)を調整する必要が生じる。しかし、HUDユニット51、注意喚起表示装置110及び120が投影方向を個別に調整する場合には、操作用のスイッチの数が増えたり、運転者の操作が煩雑になる。
図19の制御を実施することにより、各部が互いに連携するため、個別に調整操作を行う必要がなくなる。
【0085】
図19のステップS21においては、注意喚起制御部111が車両上通信網130を介してHUD制御部101及び注意喚起制御部121との間で通信を行い、様々な情報のやり取りを実施する。
【0086】
ステップS22では、注意喚起制御部111は、S21でHUD制御部101から取得した情報に基づき、HUDユニット51に対して視点(EP)の位置に合わせた投射方向の調整指示が発生したか否かを識別する。調整指示の発生を認識した場合は次のS23に進む。
【0087】
ステップS23では、HUDユニット51における視点位置に合わせた投射方向の調整量を注意喚起制御部111がHUD制御部101から取得し、この調整量に基づいて、注意喚起制御部111が注意喚起表示器11Lの回動機構を駆動する。これにより、注意喚起表示器11Lからの光の出射方向52が変更され、最新の運転者の視点EPの位置に適した方向に修正される。
【0088】
<注意喚起領域の区分に応じた制御>
車両用表示システム100の動作例を
図20に示す。すなわち、注意喚起表示16を表示する際に、注意喚起制御部111又は注意喚起制御部121が
図20に示す制御を実施することにより、各部が連携し、注意喚起領域の区分に応じた動作を実施することができる。
【0089】
つまり、注意喚起表示器11Lが表示する注意喚起表示16Aと、HUDユニット51が表示する注意喚起表示16Cと、注意喚起表示器11Rが表示する注意喚起表示16Bと(
図17参照)を使い分けるための制御を実施する。
【0090】
例えば、
図17のように検出された注意対象物28aの左右方向の位置が注意喚起表示器11Lが表示する注意喚起表示16Aの移動可能範囲内にあり、且つ他の注意喚起表示16C、16Bよりも距離が近い場合には、注意喚起表示16Aを選択的に使用するように制御する。同様に、検出された注意対象物28aの左右方向の位置が注意喚起表示器11Rが表示する注意喚起表示16Bの移動可能範囲内にあり、且つ他の注意喚起表示16C、16Aよりも距離が近い場合には、注意喚起表示16Bを選択的に使用する。また、検出された注意対象物28aの左右方向の位置が注意喚起表示16Cの近傍である場合には、注意喚起表示16Cを選択的に使用する。
【0091】
以下の説明においては、注意喚起表示装置110の注意喚起制御部111が
図20の制御を実施する場合を想定して説明する。
【0092】
注意喚起表示装置110の電源がオンになると、注意喚起制御部111はステップS31で初期化を実行する。これにより、例えば注意喚起制御部111、注意喚起制御部121、HUD制御部101の間で車両上通信網130を経由して相互に通信ができるように通信系を初期化する。また、注意喚起表示装置110自身の表示する注意喚起表示16Aを消灯し、更に他の注意喚起表示16C、16Bが消灯するように注意喚起制御部121及びHUD制御部101に対して指示を与える。また、注意喚起表示器11Lの前後方向の位置、及び回動方向の位置を事前に定めた初期状態の位置に移動する。
【0093】
ステップS32では、注意喚起制御部111は、車載カメラ41の撮影により得られた映像の情報を処理してパターン認識を実施することにより、例えば
図17における注意対象物28aのような自車両前方の障害物(物体)を検出する。障害物を検出した場合はステップS33からS34に進む。
【0094】
ステップS34では、注意喚起制御部111は、S32で検出した障害物の位置を、事前に定めた3種類の注意喚起領域AL、AC、ARの位置とそれぞれ比較する。
【0095】
図17に示した例では、注意喚起領域ACは、注意喚起表示16Cが表示される左右方向の範囲内に割り当ててある。また、注意喚起領域ALは、注意喚起領域ACよりも左側で、且つ注意喚起表示16Aを表示可能な左右方向の範囲内に割り当ててある。また、注意喚起領域ARは、注意喚起領域ACよりも右側で、且つ注意喚起表示16Bを表示可能な左右方向の範囲内に割り当ててある。
【0096】
検出した障害物の位置が左側の注意喚起領域AL内にある場合はS35からS36に進む。また、検出した障害物の位置が中央の注意喚起領域AC内にある場合はS37からS38に進む。また、検出した障害物の位置が右側の注意喚起領域AR内にある場合はS39からS41に進む。
【0097】
ステップS36では、注意喚起制御部111は、注意喚起表示器11L内部の光源45を通電状態に制御し、光源45を発光状態に切り替える。これにより、光源45から出射された光が、注意喚起表示器11Lから出射され、フロントウインドシールド22の表面で反射して運転者の視点EPに入射する。つまり、運転者によって注意喚起表示16Aが視認される状態になる。
【0098】
ステップS38では、注意喚起制御部111は、中央の注意喚起表示16Cを表示状態に切り替えるように、HUD制御部101に対して指示を与える。この場合、注意喚起表示器11Lが表示する注意喚起表示16A、及び注意喚起表示器11Rが表示する注意喚起表示16Bは消灯状態を維持する。
【0099】
ステップS41では、注意喚起制御部111は、右側の注意喚起表示16Rを表示状態に切り替えるように、注意喚起制御部121に対して指示を与える。この場合、注意喚起表示器11Lが表示する注意喚起表示16A、及び注意喚起表示器11Rが表示する注意喚起表示16Bは消灯状態を維持する。
【0100】
ステップS42では、注意喚起制御部111は、S32で検出した障害物の位置の変化を監視して、最新の障害物の位置が、3つの注意喚起領域AL、AC、ARの外側に移動したか否かを識別する。障害物の位置が「注意喚起領域」の内側にある場合はS34に戻って最新の障害物の位置に追従するように注意喚起表示16の表示位置を制御する。
【0101】
障害物の位置が注意喚起領域AL、AC、ARの外側に移動した場合には、注意喚起制御部111は、次のS43で、注意喚起表示16A、16C、16Bを全て消灯するように制御する。
【0102】
以上、第1〜3実施形態の車両用発光表示装置によれば、光源の発光により注意喚起の警報を表示する際には、表示する位置を上下方向に自由に変更することができる。したがって、多数の光源を用意しなくても、表示位置の制御が可能になる。
【0103】
ここで、上述した本発明に係る車両用発光表示装置及び車両用表示システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(13)に簡潔に纏めて列記する。
(1) オンオフ制御が可能な少なくとも1つの光源45と、
車両の運転者の前方に配置された光反射部材(フロントウインドシールド22)と、
を備え、
前記光反射部材に向けて、前記車両のインストルメントパネル21の下方から前記光源の光を出射し、前記運転者が視認可能な虚像表示(注意喚起表示16)を形成する車両用発光表示装置10A、10Bであって、
前記光源の光を前記光反射部材に向けて出射する位置を、前記車両の進行方向の前後方向に対して移動自在な前後方向可動機構(帯状支持部材12)
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(2) 上記(1)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記前後方向可動機構は、前記光源を含む発光部(注意喚起表示器11)と連結され、前記インストルメントパネルに形成される開口部(インパネ開口部27)を閉塞するよう変形しつつ移動自在な帯状支持部材12、
を備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(3) 上記(2)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記帯状支持部材は、帯状の長手方向に沿って交互に配置された2種類の材料(硬質性材料部14、柔軟性材料部15)を連結して構成され、前記2種類の材料の少なくとも一方は可撓性を有する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(4) 上記(2)または(3)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記帯状支持部材の長手方向の両端部を支持し、前記帯状支持部材を所定の移動経路に沿って案内するガイド溝25a、26aを有するガイド部材(ベゼル25、26)、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
注意喚起すべき対象物(注意対象物28a)が前記虚像表示の位置の近傍で検知された場合、前記光源を点灯又は点滅状態に制御する注意喚起表示制御部(制御部42)、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(6) 上記(5)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記注意喚起表示制御部は、前記虚像表示を形成する場合、前記前後方向可動機構を駆動して、前記虚像表示の位置を前記対象物の位置に近づく方向に移動するように制御する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(7) 上記(2)から(4)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源から出射された光を反射して前記光反射部材側に光を導く反射光学部材(拡大ミラー11c)、
をさらに備えることを特徴とする車両用発光表示装置。
(8) 上記(7)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源の外径よりも大きい環状に形成され、前記光源から出射された光を透過、反射、又は拡散して前記反射光学部材側に導く、少なくとも1つの環状光学部材(ライトリング11b)を有する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(9) 上記(8)の構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、互いに大きさが異なる複数の前記環状光学部材を有し、前記光源の位置から前記反射光学部材の位置に向かって大きさが順番に大きくなるように、前記環状光学部材が配置された、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(10) 上記(2)から(4)、(7)から(9)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置であって、
前記発光部は、前記光源から出射された光の進行方向の軸の周りを周回する方向A2に対して、前記発光部から前記光反射部材に向けて出射される光の向きA3を調整する回動機構を有する、
ことを特徴とする車両用発光表示装置。
(11) 上記(1)から(10)のいずれか1つの構成の車両用発光表示装置(注意喚起表示器(11L、11R)と、
HUDユニット51と
を備える車両用表示システム100であって、
前記HUDユニットの側方に前記車両用発光表示装置が配置された、
ことを特徴とする車両用表示システム。
(12) 上記(11)に記載の車両用表示システムであって、
前記車両用発光表示装置の表示位置を、前記HUDユニットにおける表示位置の調整に連動して制御する連動表示制御部(注意喚起制御部111)、
をさらに備えることを特徴とする車両用表示システム。
(13) 上記(11)に記載の車両用表示システムであって、
注意喚起すべき対象物が検知された場合、検知された前記対象物の左右方向の位置に応じて、前記車両用発光表示装置及び前記HUDユニットのいずれか一方に選択的に表示するよう制御する連動表示制御部(注意喚起制御部111)、
をさらに備えることを特徴とする車両用表示システム。