(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374677
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム耐性コーティング及びアルミノケイ酸カルシウムマグネシウム耐性コーティングの形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
C23C26/00 C
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-48288(P2014-48288)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-177702(P2014-177702A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】13/801,547
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コンラッド・シェイファー
(72)【発明者】
【氏名】スリンダー・シン・パブラ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スティーブン・ディマシオ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナムルティー・アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・リー・マーゴリーズ
(72)【発明者】
【氏名】パッドマジャ・パラカラ
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−182631(JP,A)
【文献】
特表2013−540887(JP,A)
【文献】
特表平10−502133(JP,A)
【文献】
特表平10−502310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00,28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層の形成方法であって、
遮熱コーティング組成物の少なくとも1つの層を含む遮熱コーティングを基材上に用意して、コーティング基材系を形成するステップと、
前記遮熱コーティングを、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム及びガスタービンの作動条件の下でアルミノケイ酸カルシウムマグネシウムに曝露するステップと
を含み、
前記曝露によって、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層が形成され、
前記遮熱コーティング組成物は、7YSZの熱伝導率より少なくとも約30%低い熱伝導率を有し、
前記コーティング基材系の前記遮熱コーティング組成物のすべては、重量で、前記遮熱組成物に組み込まれたドーパントの約50%〜約85%を含む、方法。
【請求項2】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層の形成方法であって、
遮熱コーティング組成物の少なくとも1つの層を含む遮熱コーティングを基材上に用意して、コーティング基材系を形成するステップと、
前記遮熱コーティングを、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム及びガスタービンの作動条件の下でアルミノケイ酸カルシウムマグネシウムに曝露するステップと
を含み、
前記曝露によって、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層が形成され、
前記遮熱コーティング組成物は、7YSZの熱伝導率より少なくとも約30%低い熱伝導率を含み、
前記コーティング基材系の前記遮熱コーティング組成物のすべては、重量で、前記遮熱組成物に組み込まれたドーパントの約30%〜約85%を含み、前記ドーパントは、Yb、La、Sm、Ti、Al、InFeZnO4、Yb2O3、La2O3、Sm2O3、TiO2、Al2O3、ミッシュメタル酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【請求項3】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層の形成方法であって、
遮熱コーティング組成物の少なくとも1つの層を含む遮熱コーティングを基材上に用意して、コーティング基材系を形成するステップと、
前記遮熱コーティングを、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム及びガスタービンの作動条件の下でアルミノケイ酸カルシウムマグネシウムに曝露するステップと
を含み、
前記曝露によって、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層が形成され、
前記遮熱コーティング組成物は、7YSZの熱伝導率より少なくとも約30%低い熱伝導率を含み、
前記コーティング基材系の前記遮熱コーティング組成物のすべては、重量で、前記遮熱組成物に組み込まれたドーパントの約50%〜約85%を含み、前記ドーパントは、Yb、La、Sm、Ti、Al、InFeZnO4、Yb2O3、La2O3、Sm2O3、TiO2、Al2O3、ミッシュメタル酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【請求項4】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層と共に高密度シーラント反応層を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層と共に遮熱コーティングの外面を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ドーパントが、約0.5W/mk〜約1W/mkの熱伝導率を有する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング基材系の前記遮熱コーティング組成物のすべては、重量で、前記遮熱組成物に組み込まれた前記ドーパントの約50%〜約85%を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層が、結晶化アパタイトを含む、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層と共に不透過性バリア層をさらに含む、請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
不透過性バリア層が、SiOxNy(酸窒化ケイ素)、Ta2O5、HfO2、TiO2及びそれらの組合せからなる群から選択される酸化物を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
不透過性バリア層が、炭化物、窒化物、ケイ化物及びそれらの組合せからなる群から選択される非酸化物を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アルミノケイ酸カルシウムマグネシウムの浸透に対し耐性を有する層と共に水洗性犠牲層を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水洗性犠牲層が、マグネシア、クロミア、カルシア、又はその組合せを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
水洗性犠牲層から灰の堆積物を形成するステップをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
水洗ステップを用いて灰の堆積物を除去するステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
水洗性犠牲層中のMgOからディオプサイドを形成するステップをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
ディオプサイドが、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム溶融物の結晶化を容易にする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
遮熱コーティング組成物の前記少なくとも1つの層は、複数の層を含む、請求項1乃至17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記複数の層のそれぞれが、異なるドーパントを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ガスタービン作動条件が、温度約1600℃、約24000時間を含む、請求項1乃至19のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱コーティング及び遮熱コーティングの形成方法に関する。より具体的には、本発明は、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム(CMAS)耐性遮熱コーティング及びCMAS耐性遮熱コーティングの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、効率及び性能向上のため増大する作動温度に継続的に暴露される。増大する温度に耐えることができるように、ガスタービン部品は、遮熱コーティング(TBC)で被覆される。TBCは、低い熱伝導率のコーティング及び極めて低い熱伝導率のコーティングを、ガスタービン部品にもたらす。
【0003】
TBCは、ガスタービンの作動中に損傷及び/又は劣化する場合がある。TBCが損傷及び/又は劣化すると、ガスタービン部品が、その部品に損傷を与える温度に暴露されるおそれがある。しばしば、TBCの損傷及び/又は劣化は、ガスタービンの大気条件及び作動条件に起因して生じる。
【0004】
例えば、ガスタービンの作動温度が高いと、大気中の砂/灰粒子などの環境に取り込まれた汚染物質が、高温のTBC表面上で溶融し、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム(CMAS)ガラス堆積物を形成する。CMASガラスは、TBCに浸透し、耐歪み性の喪失及びTBCの不具合をもたらす。
【0005】
上記の欠点がない遮熱コーティング及び遮熱コーティングの形成方法が、当技術分野では望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
例示的な一実施形態では、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム浸透耐性コーティングの形成方法は、ドーパントを有する遮熱コーティングを用意するステップと、遮熱コーティングを、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム及びガスタービンの作動条件に暴露するステップとを含む。この暴露によって、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム浸透耐性層が形成される。
【0007】
別の例示的な実施形態では、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム浸透耐性遮熱コーティングは、ドーパントを含む遮熱コーティング組成物を含む。ドーパントは、希土類元素、非希土類元素の溶質及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0008】
別の例示的な実施形態では、アルミノケイ酸カルシウムマグネシウム浸透耐性遮熱コーティングは、遮熱コーティングと、遮熱コーティングの外表面上に位置する不透過性バリア層又は水洗性犠牲層とを含む。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から、例えば本発明の原則を例示する添付の図を併せて参照することにより、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に従って遮熱コーティングの形成方法の概略図である。
【
図2】組成物を迅速結晶化組成物に結晶化する困難を、本開示の一実施形態に従ってシフトすることを示す図である。
【
図3】本開示に従って遮熱コーティングの形成方法の概略図である。
【0011】
可能な限り、図を通して、同じ部分を表すのに同じ参照番号を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的なアルミノケイ酸カルシウムマグネシウム(CMAS)耐性コーティング、及びアルミノケイ酸カルシウムマグネシウム(CMAS)耐性コーティングの形成方法を提供する。本開示の実施形態は、本明細書に開示の1以上の特徴を利用しない方法に比して、熱伝導率の低減、CMAS耐性の増大、結晶化速度及び/又は結晶化温度のシフト、水洗可能なCMAS浸透耐性犠牲層を形成し、ジプサイド形成の増大、融点の上昇、表面の湿れ性の低減、CMAS粘度の増大又はこれらの組合せが達成される。
【0013】
図1は、CMAS浸透耐性層201の形成方法101を示す図である。一実施形態では、CMAS浸透耐性層201は、CMASに加えて環境汚染物質にも耐性がある。環境汚染物質には、限定されるものではないが、砂、埃、灰セメント、粉塵、酸化生成物、燃料源由来の不純物、空気源由来の不純物、又はその組合せが挙げられる。一実施形態では、遮熱コーティング(TBC)110は、基材111上に形成され、ドーパント112及び任意の適切なTBC組成物108を含む。
【0014】
適切なTBC組成物108には、限定されるものではないが、ドーパント112が包含されることによって生じるもの又は生じないものとして、低熱伝導率(低いK)を有する組成物、極めて低い熱伝導率(極めて低いK)を有する組成物、及び低いKと極めて低いKとの間の熱伝導率を有する組成物が挙げられる。本明細書で使用される場合、「低いK」は、熱伝導率が7YSZの約70%であることを指す。本明細書で使用される場合、「極めて低いK」は、熱伝導率が7YSZの約50%であることを指す。熱伝導率が30%低下すると、複合サイクルの効率が0.1%増大し、熱伝導率が50%低下すると、複合サイクルの効率が0.2%増大する。一実施形態では、TBC組成物108は、例えば、約10.5×10
-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有するYSZを含む。一実施形態では、TBC組成物108は、例えば、約7×10
-6/℃のCTEを有するAl
2O
3を含む。一実施形態では、TBC組成物108は、例えば、約12.8×10
-6/℃のCTEを有するMgOを含む。一実施形態では、TBC組成物108は、例えば、YSZのCTEに近いCTEを有するMgO及びAl
2O
3を含む。TBC110の熱伝導率が低下すると、システム効率が増大し、基材111の予想寿命が延長する。
【0015】
方法101によれば、ドープされたTBC110は、CMAS114に暴露され(ステップ103)、例えば発電システム又はタービンエンジンなどのタービンシステム(示さず)の作動温度又は他の条件に暴露される。適切な作動温度及び/又は材料の表面温度は、限定されるものではないが、約1100℃以上、約1200℃以上、約1300℃以上、約1400℃以上、約1600℃以上、約1100℃〜約1600℃、約1200℃〜約1600℃、約1300℃〜約1400℃、約1400℃〜約1600℃、約1100℃〜約1400℃、約1200℃〜約1400℃、又はその任意の適切な組合せ、部分的組合せ、範囲もしくは部分範囲を含む。適切な作動期間は、限定されるものではないが、約1000時間、約5000時間、約10000時間、約15000時間、約20000時間、約25000時間、又はその任意の適切な組合せ、部分的組合せ、範囲もしくは部分範囲を含む。
【0016】
ドープされたTBC110中のドーパント112は、CMAS114及び作動温度に暴露されると、CMAS浸透耐性層201を形成する(ステップ105)。一実施形態では、CMAS浸透耐性層201は、CMAS溶融物214と遮熱コーティング110との間に形成される不透過性バリア層などの高密度シーラント反応層である。不透過性バリア層は、CMAS114がTBC110に移入するのを抑止する。一実施形態では、不透過性バリア層は、限定されるものではないが、SiO
xN
y(1420℃を超える融点を有する)、HfO
2、Ta
2O
5、TiO
2及びそれらの組合せなどの酸化物を含む。一実施形態では、不透過性バリア層は、限定されるものではないが、炭化物、窒化物、ケイ化物及びそれらの組合せなどの非酸化物を含む。
【0017】
図2によって表される通り、一実施形態では、ドーパント112は、組成物202(プソイドウォラストナイトガラス組成物など)を迅速結晶化組成物204(アパタイトなど)に結晶化する困難をシフトすることによって(ステップ203)、CMAS浸透耐性層201を形成する。本明細書で使用される場合、用語「シフト」及びその文法的変異は、特定相の所定の結晶化をもたらす相互作用を指す。例えば、本開示によるシフト(ステップ203)は、CMAS114が、ウォラストナイト、プソイドウォラストナイト、メリライト、ピロキセン、フォルステライト、トリジマイト、クリストバライト、ペリクレース、ランキナイト、石灰、スピネル、アノーサイト、コーディエライト、ムライト、メルウィナイト、又はその組合せとして結晶化する可能性を増減させることができる。さらに又は或いは、本開示によるシフト(ステップ203)は、CMAS114の液相温度を、例えば約1100℃以上、約1200℃以上、約1300℃以上、約1400℃以上、約1100℃〜約1400℃、約1200℃〜約1400℃、約1300℃〜約1400℃、及び/又は作動温度を超えるまでもしくは作動温度未満まで増大又は低下することができる。一実施形態では、MgOにより、ジプサイド[Ca(Mg,Al)(Si,Al)
2O
6]が形成されることによってシフト203が容易になる。一実施形態では、Mg濃度を増大すると、MgAl
2O
4スピネルが形成されることによってシフト203が容易になる。一実施形態では、α−Al
2O
3を溶解させると、アノーサイトプレートレット(CaAl
2Si
2O
8)が形成されることによってシフト203が容易になる。
【0018】
ドーパント112は、シフト(ステップ203)を可能にする任意の適切な希土類材料であり、例えばTBC110中のドーパント112は、限定されるものではないが、Ti、Al、La、Yb、Sm、及びその適切な組合せなどの希土類元素からなる群から選択される。適切な一実施形態では、ドーパント112は、約1W/mk、約0.1W/mk〜約1W/mk、約0.5W/mk〜約1W/mk、約0.5W/mk〜約0.75W/mk、約0.75W/mk〜約1W/mk、又はその任意の適切な組合せ、部分的組合せ、範囲もしくは部分範囲の熱伝導率を有する。一実施形態では、TBC110中のドーパント112は、限定されるものではないが、InFeZnO
4、ミッシュメタル酸化物、酸化物(Yb
2O
3、La
2O
3、Sm
2O
3、TiO
2及びAl
2O
3など)でドープされたジルコニア(ZrO
2)、及びその適切な組合せなどの、TBC110の形成に組み込むのに適した任意の溶質である。
【0019】
ドーパント112の濃度により、CMAS浸透耐性層201を形成する(ステップ105)速度が制御される。例えば、一実施形態では、ドーパント112の濃度は、重量で約30%〜約60%、約50%〜約80%、約60%〜約85%、約45%〜約65%、約50%〜約60%、約45%〜約55%、約55%〜約65%、又はその任意の適切な組合せもしくは部分的組合せである。ドーパント112の濃度を増大すると、ドーパント112の組成に関わらず、CMAS浸透耐性層201の形成が促進される。
【0020】
一実施形態では、TBC110は、複数層を含む。複数層の1以上は、ドーパント112を含む。一実施形態では、ドーパント112は、複数層の少なくとも2つと同じ組成及び/又は濃度を有する。一実施形態では、ドーパント112は、複数層の少なくとも2つとは異なる組成及び/又は濃度を有する。
【0021】
一実施形態では、方法101中に、基材111から最も遠位にある層の外面116は、CMAS114に暴露される(ステップ103)。CMAS浸透耐性層201の形成(ステップ105)は、外面116上で実施される。CMAS浸透耐性層201の形成(ステップ105)は、外面116と基材111の間の1以上の層が、CMAS114に暴露されるのを防止する。
【0022】
図1に示す通り、一実施形態では、CMAS114は、CMAS浸透耐性層201上にわたってCMAS溶融物214を形成する。CMAS溶融物214は、CMAS浸透耐性層201に浸透することができず、したがって、CMAS浸透耐性層201は、CMAS114がTBC110に移入するのを防止する。
【0023】
一実施形態では、
図3を参照すると、材料を犠牲にする(ステップ305)。例えば、一実施形態では、外面116及びCMAS浸透耐性層201を除去して、下層301をCMAS114に暴露する。下層301のドーパント112は、CMAS浸透耐性犠牲層303の次の層として働く追加の層を形成する。さらに又は或いは、一実施形態では、TBC110がドーパント112を含むか含まないかに関わらず、水洗性犠牲層(示さず)を、TBC110の外面116に施工する。水洗性犠牲層は、適切な材料が外面116中に浸潤することによって形成される。一実施形態では、適切な材料は、限定されるものではないが、MgO、マグネシア、クロミア、カルシア及びそれらの組合せを含む。MgSO
4が形成されると、水洗ステップ中に外面116から灰堆積物を除去することができる。例えば、一実施形態では、MgSO
4は以下の反応によって形成される。
【0024】
V
2O
5+3MgO→Mg
3(VO
4)
2
Mg
3(VO
4)
2+SO
3→Mg
2V
2O
7+MgSO
4
当業者に理解される通り、一般に、方法101は、CMAS114の組成に依存して変わる。一実施形態では、CMAS114の組成は、制御され、予測され、モニタされ、又はそれらが組み合わされる。方法101で使用されるCMAS114、TBC110、ドーパント112又は他の材料の組成に応じて、CMAS114の融点を増減させることができ、CMAS114の結晶化速度を増減させることができ(例えば、結晶化温度を増減させることによって)、CMAS114の水和性を増減させることができ、又はそれらが組み合わされる。
【0025】
CMAS114に適した組成物には、限定されるものではないが、Ca、Mg、Al、Si、Fe、Ni、Ti、Cr及びそれらの組合せなどの、酸化物を含む環境汚染物質組成物が挙げられる。特定の実施形態では、CMAS114の組成物は、以下の表1に示すもの、並びに以下に示したものに基づく組合せ、部分的組合せ、範囲及び部分範囲から選択される。
【0026】
【表1】
好ましい一実施形態を参照して本発明を記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができ、本発明の要素を均等物で置き換え得ることが、当業者には理解されよう。さらに、本発明の必須の範囲から逸脱することなく多くの改変形態を加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させることができる。したがって、本発明は、本発明の実施を企図した最良の様態として開示されている特定の実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれるあらゆる実施形態を含むものとする。
【符号の説明】
【0027】
101 層201の形成方法
103 暴露ステップ
105 層201を形成するステップ
108 TBC組成物
110 遮熱コーティング(TBC)
111 基材
112 ドーパント
114 CMAS
116 外面
201 CMAS浸透耐性層
202 組成物
203 シフトステップ
204 迅速結晶化組成物
214 CMAS溶融物
301 下層
303 犠牲層
305 犠牲層を形成するステップ