(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)複数のバスと関連するフェーザ値と、前記複数のバスのうちの1つと対応する基準位相角との関数として、電源システムにおいて前記複数のバスと対応する電圧安定性指数(VSI)を計算するステップであって、前記フェーザ値はそれぞれが、
それぞれのバスと対応する電圧の大きさ(Vm)、および前記それぞれのバスと対応する位相角(δm)、または
それぞれのバスと対応する前記電圧の大きさの変化もしくは変化率(ΔVm)、および前記それぞれのバスと対応する前記位相角の変化もしくは変化率(Δδm)
の一方を含む、計算するステップと、
(ii)前記計算されたVSIに基づいて、前記電源システムにおける前記複数のバスから、1つまたは複数の弱いバスを識別するステップと、
を含み、
前記基準位相角が、前記複数のバスと関連する前記位相角(δm)から決定される最大位相角(δmax)または最小位相角(δmin)の一方を含む、方法。
複数のバスと関連するフェーザ値と、前記複数のバスのうちの1つと対応する基準位相角との関数として、電源システムにおいて前記複数のバスと対応する電圧安定性指数(VSI)を計算するように構成された計算モジュールであって、前記フェーザ値はそれぞれが、
それぞれのバスと対応する電圧の大きさ(Vm)、および前記それぞれのバスと対応する位相角(δm)、または
それぞれのバスと対応する前記電圧の大きさの変化もしくは変化率(ΔVm)、および前記それぞれのバスと対応する前記位相角の変化もしくは変化率(Δδm)
の一方を含む、計算モジュールと、
前記計算されたVSIに基づいて、前記電源システムにおける前記複数のバスから、1つまたは複数の弱いバスを識別するように構成された位置識別モジュールと、
を含み、
前記基準位相角が、前記複数のバスと関連する前記位相角(δm)から決定される最大位相角(δmax)または最小位相角(δmin)の一方を含む、
むシステム。
前記計算モジュールが、前記複数のバスをモニタする1つまたは複数のフェーザ測定ユニット(PMU)、エネルギー管理システム(EMS)、電力会社オペレータからの手動入力、前記フェーザ値の履歴データ、または前記フェーザ値を計算するツールのうちの少なくとも1つを用いて、前記フェーザ値または前記基準位相角の少なくとも一方を取得するようにさらに構成された、請求項8に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
格別の定義がなされない場合には、本明細書において用いられている技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において用いられる『第1』や『第2』などの用語は、どのような順序、数量、または重要性も表しておらず、ある要素を他の要素から区別するために用いられる。また、『a(1つの)』および『an(1つの)』という用語は、数量的限定を表すものではなく、参照されている項目が少なくとも1つ存在することを示す。『or(または、もしくは)』という用語は、非排他的であって、リスト化されている項目のうちの1つ、複数個、または全部を意味することが意図されている。『including(含む)』、『comprising(含む、備える)』、または『having(有する)』などの用語が本明細書において用いられている場合には、追加的な項目に加えて、これらの用語の後にリスト化されている項目とそれらの均等物とに及ぶことが意図されている。『モジュール』、『プロセッサ』、『ストレージユニット』、『ネットワークインターフェース』、および『入力/出力(I/O)インターフェース』という用語は、単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネントのいずれかを含むことがあり、これらのコンポーネントは能動的もしくは受動的であるかまたはその両方であって、相互に接続されているまたはそれ以外の態様で結合されていて、説明されている機能を提供する。さらに、説明の目的で、本発明の様々な実施形態に関する完全な理解を提供するために、特定の数、コンポーネント、および構成が記載されている。
【0010】
本発明の様々な実施形態は、電源システムにおいて、リアルタイムで、単一のもっと弱いバスまたは複数の弱いバスを含む1つまたは複数の弱いバス(以下では、弱いバスと称する)などの弱い位置を決定するためのシステムおよび方法に向けられている。本明細書において開示されているシステムおよび方法の実施形態によると、弱いバスの決定を用いることにより、電圧不安定性の検出の遅延に起因して生じるどのような損害でも減少させるまたは除去するための適切な対応措置を実装することが可能であることが、保証されうる。
【0011】
図1は、送電または配電リンク(以下では、『リンク』と称する)112、114、116、および118それぞれを経由して1つまたは複数のバス104、106、108、および110に接続されたバス102を含む電源システム100(以下では、『システム』と称する)である。システム100は、いくつかの実施形態によると、同期式の交流(AC)システムでありうる。システム100は、別のリンク122を経由してバス102に接続された電気的負荷120をさらに含みうる。システム100は、システム100の残りの部分のために電力を生成することができる1つまたは複数の発電機124などの電源をさらに含みうる。しかし、
図1には3つの発電機が図解されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の数の発電機をシステム100において用いることが可能である。同様に、本発明のいくつかの実施形態によると、システム100では、任意の数の電気的負荷、バス、またはリンクを実装することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、システム100は、複数のバス(mをバスの数量として、「m本」のバス)と関連するフェーザ値を決定するように構成することができる1つまたは複数のモニタリングモジュール126(以下では、『モニタリングモジュール126』と称する)をさらに含みうる。
図1に示されているように、いくつかの実施形態では、複数のバス(または、「m本」のバス)は、バス102と、バス104、106、108、および110とのうちのいくつかまたは全部を含みうる。ある例示的な実施形態では、モニタリングモジュール126は、フェーザ測定ユニット(PMU)であるか、または、PMUの機能が組み込まれた中継器でありうる。別の例示的な実施形態では、フェーザ値は、その一部または全部を、これらには限定されないが、エネルギー管理システム(EMS)、電力会社のオペレータによる手動入力、フェーザ値の履歴データ、フェーザ値を計算するためのツール、またはそれらの任意の組み合わせから、取得することができる。いくつかの実施形態では、フェーザ値は、リアルタイムでの決定または取得が可能である。ある実施形態では、リアルタイムとは、例えばミリ秒またはマイクロ秒というオーダーでの、事象の瞬間的な発生を意味しうる。別の実施形態では、リアルタイムとは、瞬間的なリアルタイムに対して所定の公差(例えば、2〜5%)を有する近似的なリアルタイムでありうる。データが近似的なリアルタイムで受け取られる例示的な実施形態では、データを見ている電力会社のオペレータまたは保安担当技術者が、データの表示の間、どのような遅延も知覚しないことがありうる。
【0013】
ある例示的な実施形態では、フェーザ値が、「m番目」のバスで決定された電圧の大きさ(V
m)と同じ「m番目」のバスで決定された位相角(δ
m)とを含むことがある。本明細書における「m番目」のバスでの「電圧の大きさ(V
m)」という用語は、単位あたり(pu)で表現された「m番目」のバスにおける電圧値を意味する。特に断らない限りは、VSIの計算のために本明細書において説明される様々な電気的なパラメータは、puで表現される。位相角は、本明細書では、度数またはラジアンで表現される。ある実施形態では、位相角がモニタリングモジュール126によって測定されるときには、位相角は、全地球測位システム(GPS)時計などの全地球的な時間基準に基づいて測定されうる。例えば、(「m本」のバスの1つである)バス「B1」において決定された電圧の大きさと位相角とは、相互交換可能に、以下ではそれぞれをV
1およびδ
1と称する。いくつかの実施形態では、モニタリングモジュール126は、同じ時刻において複数のバスですべてのフェーザ値を測定するように構成することができる。なお、この時刻は絶対時間または相対時間でありうる。というのは、例えばシステム100における無効電力サポートの追加または削除などのシステムトポロジの変さらに起因して、これらの値は、異なる時刻に測定されるときには異なる可能性があるためである。別の実施形態では、フェーザ値の一部または全部は、EMSなどの制御センタシステムの状態予測装置から予測可能である。
【0014】
別の実施形態では、フェーザ値は、ある時間期間の間に計算された、それぞれの「m番目」のバスに対応する電圧の大きさの変化(ΔV
m)と、同じ「m番目」のバスに対応する位相角の変化(Δδ
m)とを含みうる。ただし、ここで、変化は、同じバスで異なる時刻にフェーザ値を測定し、このようにして測定されたフェーザ値の間の差を計算することによって、決定される。ある例示的な実施形態では、モニタリングモジュール126は、「m番目」のバスで時刻「T1」に電圧の大きさ(「V
mT1」)と位相角(「δ
mT1」)とを測定するように構成することができ、また、同じ「m番目」のバスで異なる時刻「T2」に電圧の大きさ(「V
mT2」)と位相角(「δ
mT2」)とをさらに測定するように構成することができる。「m番目」のバスにおけるこれらの測定されたパラメータの変化(Δδ
mおよびΔV
m)は、同じ「m番目」のバスで、異なる時刻である「T1」および「T2」において測定された電圧の大きさの差(「V
mT1」−「V
mT2」)または位相角の差(「δ
mT1」−「δ
mT2」)として計算することができる。いくつかの例示的な実施形態では、Δδ
mは、次の数式によって決定されうる。
【0015】
Δδ
m=δ
mT1−δ
mT2 (式1)
さらに別の実施形態では、フェーザ値は、それぞれの「m番目」のバスに対応する電圧の大きさの変化率と、同じ「m番目」のバスに対応する位相角の変化率とを含みうる。
【0016】
図2は、ある実施形態により(システム100などの)電源システムにおいて弱いバスと電圧不安定性とを判断するモニタリングモジュール126と通信する制御センタシステム200(以下では、システム200と称する)を示している。ある例示的な実施形態では、システム200は、フェーザデータコンセントレータ(PDC)か、または、モニタリングモジュール126を制御およびモニタするように構成されておりモニタリングモジュール126によって決定されたフェーザ値にアクセスすることができる監視制御およびデータ取得/エネルギー管理システム(SCADA/EMS)でありうる。このような実施形態では、システム200がPDCであるときには、システム200は、SCADA/EMS(
図2には示されていない)などの広域モニタリングシステムとさらに接続することができる。
【0017】
図2に図解されているように、システム200は、ストレージユニット204と、プロセッサ206と、I/Oインターフェース208と、ネットワークインターフェース210とを含みうる。I/Oインターフェース208は人間との間でのI/Oデバイスを1つまたは複数含む場合があり、ある実施形態では、このI/Oデバイスにより、電力会社のオペレータまたは保安担当技術者が通信ネットワーク212を経由してモニタリングモジュール126またはそれ以外の通信デバイスと通信することが可能になる。別の実施形態では、電力会社のオペレータまたは保安担当技術者は、通信ネットワーク212を経由して、ローカルまたはリモートのワークステーション214から、モニタリングモジュール126またはそれ以外の通信デバイスと通信することができる。通信ネットワーク212は、例えば、公知の有線または無線のネットワークであり、このネットワークを用いて、システム200は、モニタリングモジュール126を制御しモニタすることができる。
【0018】
ある実施形態では、プロセッサ206は、受け取られ、処理され、および送信されたデータを、ストレージユニット204に記憶する、または、ストレージユニット204から読み出すことができる。なお、ここで、ストレージユニット204は、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)ドライブ、デジタルバーサタイルディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、またはソリッドステートストレージデバイスなど、である。プロセッサ206は、例えば、システム200の1つまたは複数のコンポーネントと通信する1つまたは複数の特定用途向けプロセッサ、グラフィカルプロセシングユニット、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはそれ以外の適切なデバイスを含みうる。
【0019】
プロセッサ206は、システム200のI/Oインターフェース208またはネットワークインターフェース210において受信される、または、システム200のI/Oインターフェース208またはネットワークインターフェース210から送信されるデータを解析する計算モジュール216を含みうる。いくつかの実施形態では、計算モジュール216を、「m本」のバスの電圧安定性指数(VSI)を計算するように構成することができる。
図1と同様に、
図2に示されているように、いくつかの実施形態では、これら「m本」のバスには、バス102と、バス104、106、108、および110との一部または全部が含まれうる。
【0020】
電源システムでの計算では、あるバスでの位相角は、電源システムにおける別の位相角(例えば、別のバスの位相角)を基準にしていなければならない。上述したように位相角(δ
m)は電源システムの構成要素ではないGPSクロックなどの全地球的な時間基準を基準にして測定しなければならないから、電源システムにおけるあるバスの位相角などの基準となる角度(以下では、「基準位相角」と称される)が用いられうる。いくつかの実施形態では、VSIは、この基準位相角を共通の基準として、すべての「m本」のバスに対して計算されうる。他のいくつかの実施形態では、いくつかの「m本」のバスに対するVSIがこの基準位相角を共通の基準として計算され、残りのバスに対するVSIは別の基準位相角を用いて計算されうる。
【0021】
基準位相角の決定と、複数のバスでのVSIの計算とが、本明細書では
図3との関係で説明される。
図3は、発電機「G」と(負荷インピーダンス「Z
Load」を有する)負荷Lとを含む2バス式の電気システムと、この2バス式電気システムの等価フェーザ図とを示している。いくつかの実施形態では、計算モジュール216は、バス「B1」における電圧の大きさ(『V
1』)と、バス「B1」における位相角「δ
1」と(100などの)システムにおける基準バス「Br」における基準位相角「δ
r」との間の差との関数として、バス「B1」におけるVSI(VSI
1)を計算するように構成されうる。
図3を参照すると、基準バスBrにおける電圧の大きさ(「V
r」)とV
m(例えば、
図3で示されているV
1)との間の位相角は、「δ」によって表される。ここで、δ=δ
r−δ
1である。例えば
図2に示されているように単一の制御センタシステムが実装されている実施形態では、モニタリングモジュール126のうちの任意の1つが、基準バス「Br」として「m本」のバスのうちの1つを選択することができる。そのような実施形態では、その「m番目」のバスにおいて決定される位相角を、基準位相角として定義することができる。ある実施形態では、「m本」のバスと関連する位相角(δ
m)から選択される最大値を、基準位相角として定義することができる。この最大値を、以下では、最大位相角(δ
max)と称する。別の実施形態では、「m本」のバスと関連する位相角(δ
m)から選択される最小値を、基準位相角として定義することができる。この最小値を、以下では、最小位相角(δ
min)と称する。
【0022】
ある例示的な実施形態では、次の方程式を用いて、(100などの)システムにおける任意の「m番目」のバス(例えば、バス「B1」、バス「B2」など)におけるVSIを決定することができる。
【0023】
VSI
m=V
m*cos(δ
m−δ
r) (式2)
なお、この方程式では、
VSI
mは「m番目」のバスで計算されたVSI値であり、
V
mは「m番目」のバスで計算された電圧の大きさであり、
δ
mは「m番目」のバスで計算された位相角である。
【0024】
いくつかの実施形態では、計算モジュール216を、
図1との関係で上述したようにフェーザ値が決定されるのと同じ方法で、基準位相角を決定するように構成することができる。ある例示的な実施形態では、基準位相角は、モニタリングモジュール126から得られる位相角のうちの1つでありうる。別の例示的な実施形態では、モニタリングモジュール126が基準位相角を取得できないときには、基準位相角を、これらには限定されないが、EMS、電力会社のオペレータによる手動入力、フェーザ値の履歴データ、フェーザ値を計算するためのツール、またはそれらの任意の組み合わせから、取得することができる。いくつかの実施形態では、システム100におけるあるバスの基準位相角は例えば負荷の変化やネットワークトポロジの変化により時間経過と共に変化しうるので、基準位相角をリアルタイムで決定または取得することが可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、システム100のそれぞれのバスに対して複数のフェーザ値が得られることがあり、これらのフェーザ値は、「m本」のバスにおけるVSIの計算の前に、プロセッサ206によって処理されうる。ある例示的な実施形態では、システム100のそれぞれのバスに対して、毎秒、(電圧の大きさおよび位相角、または、それらの変化もしくは変化率など)フェーザ値の60個のサンプルが測定または取得されうる。そのような実施形態では、あるバスに対して(例えば2〜10個のサンプル)わずかなサンプルだけが、同じバスに対する他のサンプルと著しく異なりうるフェーザ値を有しうる。わずかなサンプルにだけ著しい差が存在するのは、システム100における電力量の変化に起因するか、または、測定値における幾分かの誤差に起因しうる。いくつかの実施形態では、VSIの計算におけるあらゆる不正確さを除去するために、システム100のそれぞれのバスに対してある時間期間(例えば、1秒)の間に測定または取得されたフェーザ値のサンプルの平均を計算することができる。この平均は、次に、システム100の「m本」のバスにおけるVSIを計算するのに用いることができる。いくつかの別の実施形態では、結果的にシステムにおける弱いバスの識別に不正確さを生じさせ、また、システム100における電圧不安定性に関して誤った警告を生じさせる可能性があるVSIの計算における不正確さを補償するために、任意の他の技術を用いることができる。ある例では、システム100のそれぞれのバスに対して(例えば、毎秒などの)ある時間期間の間に測定または取得されたサンプルの積分を、VSIの計算に用いることがありうる。別の例では、既存のフィルタリングデバイスを用いて、ある時間期間の間に同じバスに対して測定または予測される他のサンプルと著しく異なる(例えば、全体で60個のサンプルから2〜10個のサンプルなど)わずかなサンプルを除去することができる。
【0026】
図2を参照すると、いったんフェーザ値が測定または予測され、基準位相角が決定されて、「m本」のバスでのVSIが計算されると、プロセッサの位置識別モジュール218を、計算モジュール216によって計算されたVSIを解析するように構成することができる。ある例示的な実施形態では、位置識別モジュール218を、計算されたVSIに基づいて「m本」のバスから弱いバスを識別するように構成することができる。ある実施形態では、位置識別モジュール218を、計算されたVSIから最小値を決定し、この最小値を有するバスを最も弱いバスとして定義することによって、システム100において最も弱いバスを識別するようにさらに構成することができる。この最小値を、以下では、最小のVSI(VSI
min)と称する。別の実施形態では、(位置識別モジュール218の代わりに)計算モジュール216を、このVSI
minを決定するように構成することができる。以後、そのような実施形態では、位置識別モジュール218を、このVSI
minを有するバスを最も弱いバスとして定義するように構成することができる。
【0027】
VSI
minがシステム100における最も弱いバスを常に意味するとは限らない。その理由は、システム100の他のバスとの関係ではより弱い可能性がある場合でも、VSI
minが、VSI
minを有するバスがやはりシステム100においてより強いバスであることを示すような、より大きな値を有することがあるからである。そのようなシナリオを扱うために、いくつかの実施形態では、位置識別モジュール218を、計算されたVSIを1つまたは複数の弱いバスのしきい値(以下では、「弱いバスしきい値」)と比較することにより、システム100において弱いバスを識別するように構成することができる。そのような実施形態では、この比較の結果として計算されたVSIのどれもがまたは一部が弱いバスしきい値よりも小さいか、または弱いバスしきい値と等しくなる場合には、位置識別モジュール218を、そのようなVSIを有するバスをシステム100における弱いバスとして定義するように、構成することができる。いくつかの他の実施形態では、位置識別モジュール218を、(計算されたVSIからの)VSI
minだけを弱いバスしきい値と比較してシステム100で最も弱いバスを識別するように、構成することができる。そのような実施形態では、この比較の結果として、VSI
minが弱いバスしきい値以下という結論になる場合には、位置識別モジュール218を、VSI
minを有するバスをシステム100における弱いバスとして定義するように構成することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、弱いバスしきい値は、電力会社のオペレータ(もしくは保安担当技術者)によって定義もしくは修正されるか、または、動的に定義され、制御されうる。ある実施形態では、それぞれの弱いバスしきい値は、電力会社のオペレータまたは保安担当技術者にインジケータを提供することが意図されている。ある例示的な実施形態では、ある弱いバスしきい値(例えば、0.8から0.9puの間)は、電力会社のオペレータに、このしきい値よりも小さなVSI(またはVSI
min)を有する1つまたは複数のバスが(その値またはそれよりも低い値であると、システム100が崩壊する)電圧安定性マージンに近づいている、という警告または警報を提供することが意図されている。別の例示的な実施形態では、別の弱いバスしきい値(例えば、0.51から0.79puの間)は、電力会社のオペレータに、このしきい値よりも小さなVSI(またはVSI
min)を有する1つまたは複数のバスが電圧安定性マージンに近づいている、という緊急事態インジケータを提供することが意図されているので、それによって、電力会社のオペレータは、VSIがこのマージンよりも上に維持されることが保証されるように、制御動作を生成することができる。制御動作には、これらに限定されることはないが、無効電力サポートの強化、負荷ローディング、またはシステムの再構築が含まれうる。
【0029】
さらに、いくつかの実施形態では、位置識別モジュール218を、弱いバスの1つまたは複数のカテゴリを電力会社のオペレータに示す告知メッセージを生成するように、構成することができる。本明細書で用いられる「弱いバスのカテゴリ」は、弱いバスしきい値のタイプに基づいて、定義される。例えば、バス「B1」は、警告または警報を提供することを意図している弱いバスしきい値よりも小さなVSI値を有しうるが、しきい値よりも大きな値である場合には、緊急事態インジケータを提供することが意図されている。このバスは、弱いバスのカテゴリ「A」に分類することができる。他方で、別の例では、バス「B2」は、緊急事態インジケータを提供することが意図されている弱いバスしきい値よりも小さなVSI値を有しうる。このバスは、弱いバスのカテゴリ「B」に分類することができる。ある例示的な実施形態では、告知メッセージは、電力会社のオペレータへの、システム100が電圧安定性マージンに近づいているという音声によるまたは視覚的なインジケータでありうる。
【0030】
いくつかの実施形態では、ローカルまたはリモートのワークステーション214は、
図2に示されているように、位置識別モジュール218と、通信ネットワーク212を経由しての通信であるか、または直接の通信であるか、いずれかの方法で、通信するように構成することができる。そのような実施形態では、位置識別モジュール218を、例えば弱いバスに対応する位置識別子(ID)である弱いバスの位置情報を生成することによって、(100などの)システムにおける弱いバスの位置を識別するように構成することができる。位置識別モジュール218は、(100などの)システムにおける弱いバスの位置を電力会社のオペレータまたは保安担当技術者に告知するために、この位置情報をローカルまたはリモートのワークステーション214に送信するようにも、さらに構成することができる。ある例示的な実施形態では、電力会社のオペレータまたは保安担当技術者は、例えば、これらの位置を、ローカルまたはリモートのワークステーション214に設けられているディスプレイ(図示せず)上で見ることができる。いくつかの実施形態では、ローカルまたはリモートのワークステーション214は、システム200において、または、通信アーキテクチャ400もしくは500の任意の場所(例えば、通信アーキテクチャ400における集中制御センタ412の内部)において、実装することが可能である。
【0031】
さらに、いくつかの実施形態では、いったんシステム100において弱いバスが決定されると、システム100の電圧安定性マージンを決定することができる。プロセッサ206は、この電圧安定性マージン(以下では、「バス安定性しきい値」と称する)に基づいてシステム100における電圧不安定性を判断するように構成することができる電圧安定性判断モジュール236を、含みうる。いくつかの実施形態では、このしきい値は、弱いバスしきい値と同じであるか、または異なる場合もある。ある例示的な実施形態では、電圧安定性判断モジュール236を、決定された最小のVSI(VSI
min)とバス安定性しきい値とを比較するように、構成することができる。そのような実施形態では、電圧安定性判断モジュール236は、最小のVSI(VSI
min)がバス安定性しきい値よりも小さいか、またはバス安定性しきい値と等しい場合に、システム100における電圧不安定性を判断するように構成することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、バス安定性しきい値は、基準バス「Br」における電圧の大きさ(『V
r』)に基づいて、決定することができる。ある例示的な実施形態においては、補償が不十分な電源システムの場合に、「m番目」のバスと基準バス「Br」とを含む電源システムを介しての最大の電力伝達を考察すると、「V
m*cos(δ)」の値は、「V
r/2」よりも小さいか、または「V
r/2」と等しくなりうる。方程式2を用いて「V
m*cos(δ)」をVSI
mで置き換えると、計算されたVSI
Sのいずれかが「V
r/2」よりも小さいか、または「V
r/2」と等しい場合に、システム100が不安定であると判断できる。
【0033】
あるいは、別の例示的な実施形態では、バス安定性しきい値は、任意の他の技術を用いて決定することができる。ある例では、電気オペレータが、補償が過剰な電源システムのために、このしきい値を定義することができる。別の例では、しきい値は、例えば、無効電力などの電源システムの数量から、動的に導くことが可能である。
【0034】
複数の発電機が用いられる別の例では、それらの発電機に対応する電圧の大きさの加重平均を、バス安定性しきい値の決定に用いることができる。
【0035】
ある実施形態では、最小のVSI(VSI
min)は、システム100におけるいくつかのバスに対して同一な場合がある。そのような実施形態では、いくつかのバスが同じ最小のVSI(VSI
min)を有するときには、任意の既存のアプローチを用いて、システム100における電圧不安定性を判断することができる。ある例示的な実施形態では、複数のバスが同じ最小のVSI(VSI
min)を有するときには、無効電力サポートまたは有効電力サポートを用いて、システム100における電圧不安定性を判断できる。
【0036】
上述したように、いくつかの実施形態では、フェーザ値は、V
mおよびδ
mの代わりに、ΔV
m(または、V
mの変化率)とΔδ
m(または、δ
mの変化率)とでありうる。そのような例示的な実施形態では、任意の「m番目」のバスにおけるVSIを決定するために、(方程式2の代わりに)次の方程式を用いることができる。
【0037】
VSI
m=ΔV
m*(Δδ
m−Δδ
r) (方程式3)
ただし、この方程式において、Δδ
rは、基準バス「Br」における基準位相角の変化であり、基準バス「Br」において時刻「T1」で決定された位相角(「δ
rT1」)と同じ基準バス「Br」において時刻「T2」で決定された位相角(「δ
rT2」)との間の差として計算される。
また、ΔV
mは、「m番目」のバスにおける電圧の大きさの変化であり、「m番目」のバスにおいて時刻「T1」で決定された電圧の大きさ(「V
mT1」)と「m番目」のバスにおいて時刻「T2」で決定された電圧の大きさ(「V
mT2」)との間の差として計算される。
【0038】
別の実施形態では、VSIは、V
mとΔδ
m(または、δ
mの変化率)との関数として計算することができる。さらに別の実施形態として、VSIは、ΔV
m(または、V
mの変化率)とδ
mとの関数として計算することができる。V
mは、例えば無効電力サポートの切り換えによって変化しうるので、VSIの計算のために単独で用いられる場合には、希望するVSIを提供できない可能性がある。他方で、δ
mは、負荷またはシステムの変化によって変化しうる。方程式3において与えられているように、VSIは、ΔV
mとΔδとの積として計算することができて、現実のおよび無効な負荷およびシステムにおける変化を示す。なお、ここで、Δδは、フェーザ角(δ)の変化を示しており、「m番目」のバスにおいて時刻「T1」で決定されたフェーザ角と「m番目」のバスにおいて時刻「T2」で決定されたフェーザ角との間の差として計算される。さらに、別の実施形態において、補償が過剰な場合には、電圧の大きさ(V
m)は1に近いから、ΔδだけをVSIの計算に用いることができる。そのような実施形態では、システム100が安定性に近づくにつれて、Δδは増加しうる。
【0039】
上述した
図2では、単一の制御センタシステム200がモニタリングモジュール126と直接にデータを交換する実施形態が、考察されている。しかし、いくつかの他の実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、複数の制御センタシステムを用いることができる。例えば、
図4および5には、モニタリングモジュールと通信する制御センタシステムを2つ含む、2つの異なるタイプの通信アーキテクチャが示されている。
図4には、ある実施形態による、集中制御センタ412と通信することができる2つの(システム200と類似の)制御センタシステム402および404を含む通信アーキテクチャ400が示されている。ある実施形態では、制御センタシステム402および404は、通信ネットワーク212と類似の通信ネットワーク(図示せず)を経由して、集中制御センタ412と接続されうる。
図4に示されているように、これら2つの制御センタシステム402および404は、それぞれ(モニタリングモジュール126と類似の)モニタリングモジュール406および408とも通信することができる。いくつかの実施形態では、通信アーキテクチャ400は、(通信ネットワーク212と類似の)通信ネットワーク414を経由して集中制御センタ412と通信することができる(やはりモニタリングモジュール126と類似の)2つのモニタリングモジュール410をさらに含むことができ、それによると、2つの制御センタシステム402および404がバイパスされる。ある実施形態では、集中制御センタ412は、2つの制御センタシステム402および404と2つのモニタリングモジュール410とを制御しモニタするように構成することができるスーパーPDCまたはEMSでありうる。
【0040】
いくつかの実施形態では、集中制御センタ412は、プロセッサ206に類似するプロセッサ416を含みうる。そのような実施形態では、集中制御センタ412におけるプロセッサ416を、制御センタシステム402または404におけるプロセッサ206の機能の一部または全部を実行するように構成することができる。ある例示的な実施形態では、VSIは、プロセッサ416において計算することができる。別の実施形態では、弱いバスの識別は、プロセッサ416において実行されうる。さらに別の実施形態では、プロセッサ206のこれらの機能の一部は、モニタリングモジュール406、408、または410において実装することができる。
【0041】
ある実施形態では、モニタリングモジュール406、408、および410を、それぞれの領域の内部で決定される最大または最小の位相角を交換するために、相互に(例えば、通信ネットワーク212を用いて、または、任意の他の通信手段を経由して)通信するように、構成することができる。いくつかの実施形態では、モニタリングモジュール406は、第1の領域418の内部にあるそれぞれのバスに対応する位相角を相互に交換することができ、これらのモニタリングモジュール406を、これらの交換される位相角から最大値または最小値を決定するように、構成することができる。この最大値または最小値は、以下では、「第1の最大位相角(δ
1max)または第1の最小位相角(δ
1min)」と称する。同様に、モニタリングモジュール408の1つが第2の領域420の内部にあるそれぞれのバスに対応する位相角からも、最大値または最小値を決定することができ、モニタリングモジュール410の1つが第3の領域422または第4の領域424のそれぞれのバスに対応する位相角からも、最大値または最小値を決定することができる。第2の領域420における最大値または最小値は、以下では、「第2の最大位相角(δ
2max)または第2の最小位相角(δ
2min)」と称する。第3および第4の領域422および424における最大値または最小値は、以下では、それぞれが、「第3の最大位相角(δ
3max)または第3の最小位相角(δ
3min)」および「第4の最大位相角(δ
4max)または第4の最小位相角(δ
4min)」と称する。
【0042】
したがって、モニタリングモジュール(406、408、および410)は、そのモニタリング領域の内部で、それぞれの最大位相角または最小位相角を決定することができる。これらの位相角は、モニタリングモジュールのそれぞれのモニタリング領域の内部にあるバスだけに関して、システム100における弱いバスに関する情報を提供することができる。システムの全体で弱いバスと臨界点への隣接性(すなわち、電圧不安定性条件)とを識別するために、共通すなわち一意的な基準位相角を、システム100の全体に対して決定することができる。この共通の基準位相角は、それぞれがモニタリングモジュールのそれぞれの組において決定される最大位相角または最小位相角を比較することによって得られる最大値または最小値でありうる。
【0043】
ある実施形態では、(プロセッサ206もしくはプロセッサ416のいずれかにおける、または、モニタリングモジュール406、408、および410のうちの1つにおけるプロセッサ(図示せず)における)計算モジュールを、位相角のこれらの最大値または最小値を相互に交換し、次に、これらの値を比較してこれらの交換された値から一意的な最大値または最小値を基準位相角として決定するように、構成することができる。この最大値または最小値は、次に、システム100におけるすべてのバスに対してVSIを計算し、さらに、システム100において弱いバスを決定するための共通の「基準位相角」として用いることができる。いくつかの実施形態では、共通の「基準位相角」が決定される基準バス「Br」における電圧の大きさ(『V
r』)を、バス安定性のしきい値を決定するために用いることができる。上述したように、このしきい値は、システム100における電圧不安定性を判断するのに用いることができる。
【0044】
基準位相角を決定するための上述した実施形態は、2つの制御センタシステム402および404に関するものであった。しかし、これらの実施形態は、制御センタシステムが2つよりも多い場合にも同様に適用が可能である。
【0045】
上述した
図4では、集中制御センタ412が存在する場合を考察している。しかし、
図4に示されている制御センタシステム402および404は、他に、集中制御センタ412を必要とすることなく、直接に相互に接続することができる。
図5には、ある実施形態により、直接に、すなわち、どのような集中制御センタも存在することなく、相互に通信することができる2つの制御センタシステム402および404を含む通信アーキテクチャ500が示されている。ある実施形態では、2つの制御センタシステム402および404を、(通信ネットワーク212と類似する)通信ネットワーク502または任意の他の通信手段を経由して、相互に接続することが可能である。通信アーキテクチャ400の様々な実施形態が通信アーキテクチャ500に等しく適用可能である。ただし、集中制御センタ412によって実行される機能が一方または両方の制御センタシステム402および404によって実行される点は除かれる。また、
図5に示されているように、通信アーキテクチャ500における2つのモニタリングユニット410を、他のモニタリングユニット406および408と同様に、通信ネットワーク212を経由してそれぞれの制御センタシステム402および404と通信するように構成することができる。ある例示的な実施形態では、基準位相角は、2つの制御センタシステム402および404の間で(それぞれが、それぞれの制御センタシステム402および404において決定された)位相角の最大値または最小値を直接に交換し、これらの2つの角度から最大値または最小値を決定することにより、2つの制御センタシステム402および404の一方におけるプロセッサ206が決定することができる。最大値または最小値は、次に、システム100のすべてのバスに対してVSIを計算してシステム100における弱いバスを決定するために、共通の基準位相角として、用いることができる。いくつかの実施形態では、共通の「基準位相角」が決定される基準バス「Br」での電圧の大きさ(『V
r』)は、次に、システム100において電圧不安定性を判断するためのバス安定性しきい値を決定するのに、用いることができる。
【0046】
ある実施形態では、弱いバスを識別するための方法が提案される。
図6は、ある実施形態により、複数のバスから弱いバスを識別して(100などの)電源システムにおける電圧不安定性を判断するための方法600を示す流れ図である。ステップ602では、複数のバスと関連するフェーザ値が決定されうる。ある例示的な実施形態では、フェーザ測定ユニット(PMU)またはPMUの機能が組み込まれた中継器を、これらのフェーザ値を決定するのに用いることができる。別の例示的な実施形態では、フェーザ値は、これらには限定されないが、エネルギー管理システム(EMS)、電力会社のオペレータによる手動入力、フェーザ値の履歴データ、フェーザ値を計算するためのツール、またはそれらの任意の組み合わせから、取得することができる。
【0047】
ステップ604では、複数のバスのうちの1つに対応する基準位相角が決定されうる。ある実施形態では、基準位相角は、ステップ602で決定されたフェーザ値における位相角の1つでありうる。基準位相角の決定に関して上述した様々な実施形態は、方法600に等しく適用可能である。
【0048】
ステップ606では、「m本」のバスに対応するVSIを、「m本」のバスにおけるフェーザ値と、基準位相角との関数として、電源システムにおいて計算することができる。ある実施形態では、フェーザ値は、共にそれぞれの「m番目」のバスに対応する電圧の大きさ(V
m)と位相角(δ
m)とを含みうる。別の実施形態では、フェーザ値は、共にそれぞれの「m番目」のバスに対応する電圧の大きさの変化(または変化率)(ΔV
m)と位相角の変化(または変化率)(Δδ
m)とを含みうる。
図1〜5との関係で上述した様々な実施形態は、VSIを計算するための方法600に等しく適用されうる。
【0049】
さらに、ステップ608では、弱いバスが、計算されたVSIに基づき、電源システムにおける複数のバスから識別されうる。ある実施形態では、弱いバスは、計算されたVSIから最小のVSI(VSI
min)を決定し、次に、その最小のVSI(VSI
min)を有するバスを最も弱いバスとして定義することによって、識別することができる。いくつかの実施形態では、システムにおける弱いバスは、計算されたVSIを弱いバスのしきい値と比較することによって、識別することができる。そのような実施形態では、この比較の結果として、計算されたVSIのどれか1つまたは一部が弱いバスのしきい値以下である場合には、そのようなVSIを有するバスを、システムにおける弱いバスとして定義することができる。いくつかの他の実施形態では、(計算されたVSIからの)VSI
minだけを、システム100における最も弱いバスを識別するために、弱いバスのしきい値と比較することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、最も弱いバスが(100などの)電源システムにおいていったん決定されると、方法600は、さらに、バス安定性しきい値に基づいて、システムにおける電圧不安定性を決定することができる。ある例示的な実施形態では、VSI
minを、このしきい値と比較することができる。そのような実施形態では、VSI
minがこのしきい値以下である場合に、電圧不安定性が判断される。
【0051】
図1〜5との関係で上述した様々な実施形態は、弱いバスを識別し、(100などの)電源システムにおける電圧不安定性を判断するための方法600に等しく適用されうる。
【0052】
本発明の実施形態によるシステムおよび方法は、(100などの)電源システムにおいて、複数の弱いバスまたは1つの最も弱いバスをリアルタイムで決定することができる。本明細書において開示されているシステムおよび方法の実施形態により、より弱いバスまたは最も弱いバスの決定を用いて適切な対応措置を実装し、どのような損害も減少させるまたは排除して、電圧不安定性の検出の遅延に起因して生じる段階的な効果を防止することができる。本明細書に開示されている様々な実施形態は、最小のVSI(VSI
min)とバス不安定性しきい値との比較がシステムにおける電圧不安定性を示しているときには、対応措置を実装することができる。様々な実施形態では、フェーザ値と基準位相角とを組み合わせて用いてVSIを計算し、また、これらの計算されたVSIに基づいてシステムにおける最も弱いバスまたは電圧不安定性を決定することにより、電圧不安定性の検出の遅延が回避される。フェーザ値と基準位相角とだけを用いることにより、様々な実施形態は、VSIの計算とシステムにおける弱いバスまたは電圧不安定性の決定のために電流の大きさ、接続性、ネットワークパラメータ、ローディング条件、制御における変更、停電などの、どのような追加的な情報に対する必要性もさらに除去される。
【0053】
様々な実施形態は、全体がハードウェアである実施形態、全体がソフトウェアである実施形態、またはハードウェアとソフトウェアとの両方を含む実施形態という形式をとりうる。ある実施形態によると、本発明は、ファームウェアを含むがファームウェアには限定されないソフトウェア、常駐するソフトウェア、またはマイクロコードで実装することが可能である。
【0054】
当業者であれば、異なる実施形態からの様々な特徴が相互に変更可能であることを認識するであろう。同様に、様々な方法のステップと説明された特徴とは、それぞれのそのような方法と特徴とに対する他の公知の均等物と共に、当業者によって混合され組み合わされて、本発明の原理による追加的なアセンブリと技術とを構築することが可能である。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に属するすべてのそのような改変および変更を含むことが意図されていることを理解されたい。