特許第6374701号(P6374701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374701
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20180806BHJP
   F16F 9/36 20060101ALI20180806BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16F9/58 A
   F16F9/36
   F16F9/32 Q
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-103011(P2014-103011)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-218817(P2015-218817A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀謙
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−036259(JP,A)
【文献】 特開2005−016721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作用室が形成されるシリンダと、
上記シリンダの一方側開口部に固定される環状のロッドガイドと、
上記ロッドガイドの上記作用室側に固定される環状のシートと、
上記ロッドガイドと上記シートの内側に軸方向に移動可能に挿通されるロッドと、
上記ロッドガイドの内周に保持されて上記ロッドの外周面に摺接する環状のオイルシールと、
上記シリンダ内に挿入される上記ロッドの外周に取り付けられて最伸長時に上記シートに突き当たるリバウンドクッションと、
上記シートの外周部に形成された切欠によって形成される縦通路を有するとともに上記作用室の圧力を上記オイルシールに伝える連通路とを備えており、
上記縦通路の上記作用室側の開口、上記シートにおいて上記リバウンドクッションが突き当たる部分よりも外周側に配置されることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
上記ロッドガイドの外周には、上記シート側端に向けて徐々に縮径されて上記切欠に対向する傾斜面が形成されるとともに、上記ロッドガイドの上記シート側には、直径方向に沿う底溝が形成されており、
上記連通路は、上記傾斜面と上記シリンダとの間に形成される環状通路と、上記底溝と上記シートとの間に形成される横通路とを有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
上記シートの上記ロッドガイド側には、上記切欠から中心側に径方向に沿って延びる横溝が形成されており、上記連通路は、上記横溝と上記ロッドガイドとの間に形成される横通路を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
上記シートは、上記ロッドガイドに当接していることを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、車両、機器、構造物等において、振動を減衰するために利用されている。例えば、特許文献1に開示の緩衝器は、内部に作用室が形成されるシリンダと、このシリンダの上側側開口部に固定される環状のロッドガイドと、このロッドガイドの作用室側に設けられる環状のシートと、上記ロッドガイドと上記シートの内側に軸方向に移動可能に挿通されるロッドと、上記ロッドガイドの内周に保持されて上記ロッドの外周をシールする環状のオイルシールと、上記ロッドガイドと上記シートとの間に介装されてオイルシールの外周に設けられる環状のシールホルダとを備えている。
【0003】
上記シールホルダは、ゴム等の弾性体からなり、オイルシールのリップ部外周を弾性支持してオイルシールのシール性(シールする性能)を高めるとともに、シリンダの内周面に密着し、シリンダの内周をシールしている。また、シートには、当該シートを軸方向に貫通する連通路が形成されており、この連通路を介して作用室の圧力がシールホルダを介してオイルシールに伝わることでも、当該オイルシールのシール性を高めることができる。詳しくは、シールホルダが連通路を介して作用室の圧力を受け、ロッドガイドに押し付けられて圧縮されると、シールホルダによるオイルシールのリップ部を締め付ける力が強くなり、上記リップ部をロッドの外周面に強く押し付けることができるので、オイルシールのシール性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3837445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記従来の緩衝器のシールホルダを、例えば、特開2007−64379号公報に開示のように、緩衝器の最伸長時の衝撃を緩和するリバウンドクッションとして利用する場合、シールホルダのシール性の低下が懸念される。このため、特開2005−16721号公報の段落(0028)に記載されるように、シリンダ内に挿入されるロッドの外周に、ゴム等の弾性体からなるリバウンドクッションを取り付け、緩衝器の最伸長時に、当該リバウンドクッションをシートに突き当てて弾性変形させることで、最伸長時の衝撃を緩和することが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記従来の緩衝器のように、連通路がシートを軸方向に貫通する孔によって形成される場合であって、孔のエッジにリバウンドクッションが当接すると、上記孔のエッジでリバウンドクッションが切れてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、連通路がシートを通るとともに、ロッドの外周に取り付けられるリバウンドクッションをシートに突き当てる場合であっても、リバウンドクッションの耐久性を高めることが可能な緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、内部に作用室が形成されるシリンダと、上記シリンダの一方側開口部に固定される環状のロッドガイドと、上記ロッドガイドの上記作用室側に固定される環状のシートと、上記ロッドガイドと上記シートの内側に軸方向に移動可能に挿通されるロッドと、上記ロッドガイドの内周に保持されて上記ロッドの外周面に摺接する環状のオイルシールと、上記シリンダ内に挿入される上記ロッドの外周に取り付けられて最伸長時に上記シートに突き当たるリバウンドクッションと、上記シートの外周部に形成された切欠によって形成される縦通路を有するとともに上記作用室の圧力を上記オイルシールに伝える連通路とを備えており、上記縦通路の上記作用室側の開口、上記シートにおいて上記リバウンドクッションが突き当たる部分よりも外周側に配置されることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連通路がシートを通るとともに、ロッドの外周に取り付けられるリバウンドクッションをシートに突き当てる場合であっても、リバウンドクッションの耐久性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る緩衝器を部分的に切欠いて示した正面図である。
図2図1の主要部を拡大して示した図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のロッドガイドを縦に切断し、拡大して示した斜視図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のシートを縦に切断し、拡大して示した斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る緩衝器の変更例を示し、この変更部分を拡大して示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施の形態に係る緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0012】
図1,2に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Aは、内部に作用室Lが形成されるシリンダ1と、このシリンダ1の一方側開口部に固定される環状のロッドガイド2と、このロッドガイド2の上記作用室L側に固定される環状のシート30と、上記ロッドガイド2と上記シート30の内側に軸方向に移動可能に挿通されるロッド4と、上記ロッドガイド2の内周に保持されて上記ロッド4の外周面に摺接する環状のオイルシール10と、上記シリンダ1内に挿入される上記ロッド4の外周に取り付けられて最伸長時に上記シート30に突き当たるリバウンドクッション31と、上記作用室Lの圧力を上記オイルシール10に伝える連通路Pとを備えている。そして、上記連通路Pの上記作用室L側の開口は、上記シート30において上記リバウンドクッション31が突き当たる部分よりも外周側に配置される。
【0013】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る緩衝器Aは、自動車等の車両に利用されており、シリンダ1が車輪側に連結されるとともに、シリンダ1から突出するロッド4の突端部が車体側に連結されて、正立型に設定されている。このため、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、シリンダ1にロッド4が出入りして緩衝器Aが伸縮作動する。なお、緩衝器Aは、自動車以外の車両や、機器、構造物等に利用されるとしてもよく、シリンダ1が車体側に連結されるとともに、ロッド4が車輪側に連結されて倒立型に設定されるとしてもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Aは、有底筒状に形成されるシリンダ1と、このシリンダ1の上側開口部に固定される環状のロッドガイド2と、このロッドガイド2を貫通してシリンダ1に出入りするロッド4と、このロッド4の下端部に保持されてシリンダ1の内周面に摺接するピストン5と、上記シリンダ1の反ロッド側の内周面に摺接するフリーピストン6と、緩衝器Aの最伸長時の衝撃を緩和するリバウンド部材3とを備えている。そして、シリンダ1内には、作動油が充填される作用室Lと、この作用室Lとフリーピストン6で区画され、気体が封入される気室Gとが形成されている。
【0015】
気室Gは、フリーピストン6の軸方向(上下)の移動により膨縮し、緩衝器Aの伸縮作動に伴うロッド出没体積分のシリンダ内容積変化や、温度変化による作動油の体積変化を補償できる。詳しくは、シリンダ1からロッド4が退出する緩衝器Aの伸長作動時には、フリーピストン6が上側に移動して気室Gが拡大するので、ロッド退出体積分のシリンダ内容積の増加を気室Gで補償でき、反対に、シリンダ1にロッド4が進入する緩衝器Aの圧縮作動時には、フリーピストン6が下側に移動して気室Gが縮小されるので、ロッド進入体積分のシリンダ内容積の減少を気室Gで補償できる。また、温度上昇により作動油の体積が膨張する場合には、フリーピストン6が下側に移動して気室Gが縮小され、温度低下により作動油の体積が縮小される場合には、フリーピストン6が上側に移動して気室Gが拡大する。
【0016】
なお、本実施の形態に係る緩衝器Aは、上記気室Gを備えて単筒型に設定されているが、気室Gに替えて、シリンダ1の外側にリザーバを設けて作動油と気体を封入し、上記リザーバでシリンダ内容積変化や作動油の体積変化を補償するとしてもよい。この場合には、シリンダ1の外周に外筒を設けて緩衝器Aを複筒型に設定し、シリンダ1と外筒との間にリザーバを形成してもよい。また、作用室Lに充填する液体は、作動油以外であるとしてもよく、減衰力を発生可能な限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0017】
作用室Lは、ピストン5でロッド4側の伸側室L1と、ピストン5側の圧側室L2とに区画されている。ピストン5には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側通路5aと圧側通路5bとが形成されるとともに、ピストン5の下側に伸側通路5aを開閉するリーフバルブ50が積層され、ピストン5の上側に圧側通路5bを開閉するリーフバルブ51が積層されている。そして、下側のリーフバルブ50は、緩衝器Aの伸長作動時にのみ伸側通路5aを開き、この伸側通路5aを通過する作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰弁として機能する。他方、上側のリーフバルブ51は、緩衝器Aの圧縮作動時にのみ圧側通路5bを開き、この圧側通路5bを通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰弁として機能する。
【0018】
上記構成によれば、緩衝器Aの伸長作動時に、縮小される伸側室L1の作動油が下側のリーフバルブ50を開き、伸側通路5aを通過して拡大する圧側室L2に移動するので、緩衝器Aは、作動油が伸側通路5aを通過する際のリーフバルブ50の抵抗に起因する伸側減衰力を発生する。反対に、緩衝器Aの圧縮作動時には、縮小される圧側室L2の作動油が上側のリーフバルブ51を開き、圧側通路5bを通過して拡大する伸側室L1に移動するので、緩衝器Aは、作動油が圧側通路5bを通過する際のリーフバルブ51の抵抗に起因する圧側減衰力を発生する。
【0019】
なお、本実施の形態において、緩衝器Aは、リーフバルブ50,51の抵抗に起因する伸側と圧側の減衰力を発生するように設定されているが、伸側室L1と圧側室L2との間を移動する作動油の流れに抵抗を与えるための構成は、適宜変更することが可能である。例えば、ポペット弁やオリフィス等をリーフバルブ50,51の代用とするとしてもよい。また、伸側の減衰力を発生させるリーフバルブ50と、圧側の減衰力を発生させるリーフバルブ51とを分けているので、伸側と圧側の減衰力を個別に設定できるが、一つのバルブで伸側と圧側の両方の減衰力を発生できるようにしてもよい。
【0020】
上記ピストン5に連結されるロッド4は、ピストン5を外周に保持する小径な取付部4aと、この取付部4aから上側に延びて伸側室L1を貫通し、シリンダ1外に突出する軸部4bとを備えている。シリンダ1内に配置される軸部4bの外周には、周方向に沿う環状の溝4cが形成されており、この溝4cに嵌合する環状のストッパ32で、後述のシート30とともにリバウンド部材3を構成する環状のリバウンドクッション31が支えられている。このリバウンドクッション31は、ゴム等の弾性体からなり、緩衝器Aの最伸長時にシート30に突き当たって弾性変形し、最伸長時の衝撃を緩和する。
【0021】
ロッド4の軸部4bは、シリンダ1の上側開口部に固定される環状のロッドガイド2を貫通している。このロッドガイド2は、図2,3に示すように、環状の本体部2aと、この本体部2aの下側に連なる環状のケース部2bと、このケース部2bの下端部内周から中心側に張り出す円弧状の爪2cとを備えている。本体部2aの上部の形状は、略円錐台状とされており、外周が上端に向けて徐々に縮径されるように傾斜して、傾斜面2dとされている。また、ケース部の2b下部の形状は、逆円錐台状とされており、外周が下端に向けて徐々に縮径されるように傾斜して、上記傾斜面2dとは逆向きの傾斜面2eとされている。さらに、ケース部2bの下部には、外周端から内周端にかけて径方向に沿う底溝2fが形成されており、この底溝2fは、隣り合う爪2cの隙間に開口するようになっている。
【0022】
図2に示すように、ロッドガイド2における本体部2aの上側には、ロッド4の外周とシリンダ1の内周をシールするシール部材11が積層され、本体部2aの内周に、ロッド4を軸方向に移動自在に軸支する環状の軸受12が嵌合されている。他方、ケース部2bの内周には、ロッド4の外周をシールするオイルシール10と、シールホルダ13が保持されており、ケース部2bの下側(作用室L側)に環状のシート30が積層されている。ロッドガイド2、軸受12、オイルシール10及びシールホルダ13は、分離されないように予め組み立てることができ、これらでロッドガイドアッセンブリBを構成する。シリンダ1の内周には、周方向に沿う溝1aが形成されていて、当該溝1aに止め輪14が嵌合されている。そして、シリンダ1の内周面から突出する止め輪14の上側に、シート30、ロッドガイドアッセンブリB、シール部材11をこの順に積層し、シリンダ1の上端部1bを内側に加締めることで、シート30、ロッドガイドアッセンブリB及びシール部材11を積層状態にしてシリンダ1の上側開口部に固定している。
【0023】
なお、シート30、ロッドガイドアッセンブリB及びシール部材11のシリンダ1への取付方法は、適宜変更することが可能である。例えば、上記溝1aに対応する部分をロール加締めで内周側に突出させ、当該突出部にシート30を引っ掛けるようにしてもよい。
【0024】
本体部2aの上側に積層されるシール部材11は、環板状のインサートメタル11aと、このインサートメタル11aを被覆するゴム部(符示せず)とで構成されており、このゴム部で、インサートメタル11aの内周部から上側に向けて傾斜しながら延びる環状のダストシール11bと、インサートメタル11aの外周部から下側に向けて延びる環状の外周シール11cとが構成される。ダストシール11bは、ロッド4の軸部4b外周面に摺接し、ロッド4の外周をシールしてシリンダ1内に外気側からの異物が混入することを防いでいる。他方、外周シール11cは、ロッドガイド2の傾斜面2dとシリンダ1の内周面に密着し、シリンダ1内の作動油が外気側に漏れることを防いでいる。
【0025】
つづいて、ロッドガイド2におけるケース部2bの内周には、環状の段差面2gが形成されており、この段差面2gよりも上側の内径が下側の内径よりも小さく設定されている。そして、ケース部2bにおける段差面2gよりも上側に、環状のオイルシール10が挿入され、ケース部2bにおける段差面2gよりも下側に、環状のシールホルダ13が圧入されている。オイルシール10は、フッ素ゴム(FKM)からなり、環状の基部10aと、この基部10aの内周から下側に向けて傾斜しながら延びる環状のリップ部10bとを備えており、このリップ部10bをロッド4の軸部4b外周面に摺接させ、ロッド4の外周をシールしてシリンダ1内の作動油が外気側に漏れることを防いでいる。他方、シールホルダ13は、ニトリルゴム(NBR)からなり、環状の圧入部13aと、この圧入部13aの下部内周から中心側に延びる環状の支持部13bとを備えており、圧入部13aでオイルシール10の基部10aを押さえて抜け止めし、支持部13bでリップ部10bの外周を弾性支持している。
【0026】
なお、オイルシール10やシールホルダ13の材料や形状は、適宜変更することが可能である。また、本実施の形態において、オイルシール10は、ダストシール11bと分離され、軸受12よりも作用室L側に配置されている。このため、例え異物がダストシール11bを通過したとしても、当該異物の作用室L側への移動を軸受12でも抑制できるため、異物がオイルシール10まで到達し難く、異物によるオイルシール10の傷付きを抑制し、オイルシール10の耐久性を向上させることができる。また、オイルシール10は、ロッド4においてピストン5と軸受12とで挟まれる部分の外周面に摺接している。当該部分は、外力がロッド4に対して横向きに作用したとしても撓み難い部分であるので、オイルシール10のリップ部10bがロッド4の外周面から離れ難く、オイルシール10のシール性を良好にできる。さらには、オイルシール10とダストシール11bとを分離させて別体としているので、これらを形成するに当たり、それぞれに最適な材料を選択し易い。
【0027】
つづいて、ロッドガイド2における円弧状の爪2cは、同一円周上に三つ並べて配置されており、これらの爪2cの内周端を結ぶ円の直径が、ケース部2bにおける段差面2gよりも下側の内径よりも小さく形成され、段差面2gよりも上側の内径よりも大きく形成されている。このため、オイルシール10をケース部2bに挿入する際、オイルシール10が爪2cに引っ掛かることがない。また、オイルシール10に続けてシールホルダ13を弾性変形させながら爪2cの上側に嵌め込むと、シールホルダ13が爪2cで抜け止めされる。
【0028】
上記したように、オイルシール10の基部10aは、シールホルダ13の圧入部13aで押さえられており、オイルシール10は、シールホルダ13が抜けない限り、ケース部2bから抜けないようになっている。このため、上記爪2cでオイルシール10とシールホルダ13両方の抜け止めをすることができる。また、爪2cの下面は、中心側に向けて上側に傾斜するテーパとなっているので、当該テーパで案内されながらシールホルダ13が弾性変形する。このため、爪2cの上側にシールホルダ13を嵌め込みやすい。
【0029】
なお、爪2cの形状や数、配置は適宜変更することが可能である。例えば、爪2cが環状に形成されて、底溝2fが爪2cの内周端まで延びるとしてもよい。
【0030】
ロッドガイド2の下側に積層される環状のシート30は、内側に上記ロッド4の軸部4bが挿通され、上記したように、リバウンドクッション31とともにリバウンド部材3を構成する。図2,4に示すように、当該シート30は、リバウンドクッション31が突き当たる環板状の突当部30aと、この突当部30aの外周側に設けられる環板状の座部30bとを備えている。
【0031】
本実施の形態において、突当部30aの内周部分30cは、やや上側に隆起しており、シールホルダ13における支持部13bの内周部下面に当接している。なお、突当部30aの内周部分30cにおける隆起は、なだらかであるので、突当部30aにリバウンドクッション31が衝突しても、突当部30aの段差でリバウンドクッション31が傷付かないように配慮されている。また、突当部30aは、座部30bからやや隆起しており、突当部30aの外周部分30dが爪2cのテーパに沿うように傾斜している。
【0032】
座部30bは、ロッドガイド2におけるケース部2bの下端面に当接する。また、座部30bの外周部には、複数の切欠30eが周方向に並んで形成されるとともに、下部に止め輪14に引っ掛かる引掛溝30fが形成されている。そして、図2に示すように、切欠30eは、ケース部2bの下部外周に形成される傾斜面2eに対向するようになっている。そして、切欠30eとシリンダ1との間に形成される縦通路33と、傾斜面2eとシリンダ1との間に形成される環状通路20と、底溝2fとシート30の座部30bとの間に形成される横通路21と、爪2cと爪2cの間に形成される隙間(符示せず)とで連通路Pを構成し、当該連通路Pは、本実施の形態において、作用室Lと、シールホルダ13とシート30の突当部30aとの間にできる隙間Sとを連通し、作用室Lの圧力をオイルシール10に伝えるようになっている。
【0033】
詳しくは、上記した連通路Pによりシールホルダ13とシート30との間にできる隙間Sと作用室Lとが連通されるので、気室G内に気体を圧縮しながら封入して作用室Lを加圧すると、上記隙間Sも加圧され、この圧力でシールホルダ13が圧縮される。そして、当該圧縮により、シールホルダ13の支持部13bが縮径されて、オイルシール10のリップ部10bを締め付ける力が強くなる。つまり、作用室Lの圧力を、連通路P、隙間S及びシールホルダ13を介してオイルシール10に作用させることで、当該オイルシール10のリップ部10bをロッド4の外周面に押し当てる力を強めて、オイルシール10のシール性を高めることができる。
【0034】
また、本実施の形態において、底溝2fと、爪2cと爪2cの間にできる隙間が同一直線上に配置され、これらが周方向に等間隔で配置されているので、シールホルダ13に対して均一に圧力をかけることができるが、連通路Pの構成は、適宜変更することが可能である。
【0035】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作動について説明する。
【0036】
リバウンドクッション31は、ロッド4の外周に保持されており、緩衝器Aの伸縮に伴いシリンダ1側に固定されるシート30と相対移動する。そして、リバウンドクッション31は、緩衝器Aの伸長作動に伴いシート30に接近し、最伸長時にシート30とストッパ32との間に挟まれて弾性変形して最伸長時の衝撃を緩和する。
【0037】
この緩衝器Aの最伸長時において、リバウンドクッション31は、シート30における突当部30aに衝突し、連通路Pの作用室L側開口となる切欠30eに重ならないようになっている。このため、当該切欠30eのエッジでリバウンドクッション31を傷付けることがなく、連通路Pがシート30を通る場合であっても、リバウンドクッション31の耐久性を高めることができる。また、本実施の形態において、連通路Pが環状通路20を備えて構成されているので、底溝2fと切欠30eの位置合わせをする必要が無く、緩衝器Aの組立性を良好にすることが可能である。
【0038】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作用効果について説明する。
【0039】
本実施の形態において、ダストシール11bは、外周シール11cと一体化されている。
【0040】
図5に示すように、ロッドガイド2の外周に周方向に沿う環状の溝2hを形成して、この溝2hに嵌合する環状のOリング15を設け、このOリング15が本実施の形態に係る外周シール11cに替わってシリンダ1内の作動油の漏れを防ぐとしてもよいが、この場合、ロッドガイド2に溝2hを形成する必要があるので、加工費が嵩む。さらには、ダストシール11bと、外周シールとして機能するOリング15とを個別に組み付ける必要があり、組立作業が煩雑になる。しかし、上記したように、ダストシール11bと外周シール11cとを一体化することで、ロッドガイド2の加工費を削減し、組立作業を容易にできる。
【0041】
また、本実施の形態において、ロッドガイド2は、爪2cでオイルシール10とシールホルダ13の抜け止めをしている。
【0042】
上記構成によれば、ロッド4の摺動によりオイルシール10がずれることを防止できるとともに、ロッドガイド2、オイルシール10及びシールホルダ13をロッドガイドアッセンブリBとして一体化できるので、組立作業を容易にできる。なお、図5に示すように、爪2cを廃し、ケース部2bの外周から下側に延びる環状の延設部2iを設け、ケース部2bの内側に、オイルシール10とシールホルダ13を挿入してから、延設部2iの内側にシート30を挿入し、延設部2iの下端を内側に加締めることで、ロッドガイド2、オイルシール10、シールホルダ13及びシート30を一体化するようにしてもよい。この場合、本実施の形態のようにロッドガイド2を止め輪14に引っ掛けてもよく、図5に示すように、ロッドガイド2の外周に溝2jを形成し、ロール加締めでシリンダ1を溝2jに嵌めるようにしてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、シート30は、ロッドガイド2に当接している。
【0044】
上記構成によれば、リバウンドクッション31がシート30に突き当てられたときの荷重(以下、リバウンド荷重という)を、強度部材であるロッドガイド2で受けることができるので、シート30の厚みを薄くできる。なお、シート30とロッドガイド2とを離間させ、シート30単体でリバウンド荷重を受けるようにしてもよいが、この場合には、大きな荷重に耐え得るようにシート30を高強度に設定しなければならない。さらに、シート30とロッドガイド2を個別にシリンダ1に固定しなければならず、構造が複雑化する。
【0045】
また、本実施の形態において、ロッドガイド2の外周には、シート30側端(下端)に向けて徐々に縮径されて切欠30eに対向する傾斜面2eが形成されるとともに、ロッドガイド2のシート30側(下部)には、直径方向に沿う底溝2fが形成されている。そして、連通路Pは、上記傾斜面2eとシリンダ1との間に形成される環状通路20と、底溝2fとシート30との間に形成される横通路21とを備えて構成されている。
【0046】
上記構成によれば、切欠30eと底溝2fとの位置合わせをしなくても、環状通路20を介して切欠30eによって形成される縦通路33と、底溝2fとシート30との間に形成される横通路21とを連通させることができ、緩衝器Aの組立性を良好にできる。なお、切欠30eと底溝2fとを位置合わせして、縦通路33と横通路21を常に連通させることができるようになっていれば、環状通路20を廃することも可能である。また、上記傾斜面2e及び底溝2fに替えて、図5に示すように、シート30のロッドガイド2側(上部)に、切欠30eから中心側に径方向に沿って延びる横溝30gを形成し、この横溝30gとロッドガイド2との間に形成される横通路34と、切欠30eによって形成される縦通路33とを備えて連通路Pが構成されるとしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態において、シート30の外周部には、切欠30eが形成されており、連通路Pは、上記切欠30eによって形成される縦通路33を備えて構成されている。
【0048】
上記構成によれば、連通路Pにおける作用室L側開口を、なるべく外周側に寄せることができるので、リバウンドクッション31の設計自由度を向上させることができる。なお、連通路Pの構成や、シート30の形状は、上記の限りではなく、連通路Pの作用室L側開口にリバウンドクッション31が重ならないように設定される限りにおいて、適宜変更することが可能である。
【0049】
また、本実施の形態において、緩衝器Aは、内部に作用室Lが形成されるシリンダ1と、このシリンダ1の上側(一方側)開口部に固定される環状のロッドガイド2と、このロッドガイド2の上記作用室L側に固定される環状のシート30と、上記ロッドガイド2と上記シート30の内側に軸方向に移動可能に挿通されるロッド4と、上記ロッドガイド2の内周に保持されて上記ロッド4の外周面に摺接する環状のオイルシール10と、上記シリンダ内に挿入される上記ロッド4の外周に取り付けられて最伸長時に上記シート30に突き当たるリバウンドクッション31と、上記作用室Lの圧力を上記オイルシール10に伝える連通路Pとを備えている。そして、上記連通路の上記作用室L側の開口(切欠30e)は、上記シート30において上記リバウンドクッション31が突き当たる部分(突当部30a)よりも外周側に配置される。
【0050】
上記構成によれば、連通路Pがシート30を通るとともに、ロッド4の外周に取り付けられるリバウンドクッション31をシート30に突き当てる場合であっても、シート30におけるリバウンドクッション31を受ける面をなるべく平滑にすることができるので、リバウンドクッション31の傷付きを抑制し、リバウンドクッション31の耐久性を高めることが可能となる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0052】
A 緩衝器
L 作用室
P 連通路
1 シリンダ
2 ロッドガイド
2e 傾斜面
2f 底溝
4 ロッド
10 オイルシール
20 環状通路
21,34 横通路
30 シート
30a 突当部(シートにおいてリバウンドクッションが突き当たる部分)
30e 切欠(連通路の作用室側開口)
30f 横溝
31 リバウンドクッション
33 縦通路
図1
図2
図3
図4
図5