(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の方向に延在するビードは、前記車両高さ方向における下端が上端より、鉄道車両構体が載置される台車の空気ばねの支点に近いように形成されていることを特徴とする、請求項1、請求項2、及び請求項3のいずれか一項に記載の鉄道車両構体用外板。
前記ビードが延在する方向は、鉄道車両構体用外板に働く圧縮応力の方向と平行になるように決定されることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項4のいずれか一項に記載の鉄道車両構体用外板。
前記ビードが延在する方向は、鉄道車両構体用外板に働く引張応力の方向に垂直になるように決定されることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、及び請求項5のいずれか一項に記載の鉄道車両構体用外板。
【背景技術】
【0002】
図16に、従来の鉄道車両構体の一例として側構体の一部を内部から見た様子を示す。側構体BScは、外板PEcに骨組みが溶接されてなる骨皮構造を有している。骨組みには、車両高さ方向Dvに延在する縦骨FVと、車両長手方向Dlに延在する横骨FLと、補強骨FRとが含まれる。縦骨FVと横骨FLとは、互いに接続されて側構体BScを形作ると共に、構造強度を担う主骨格を成す主骨である。なお、縦骨FVと横骨FLとの間には、外板PEcの歪みを抑えるべく補強骨FRが多数配置されている。補強骨FRは、側構体BScの形成や構造強度の保持を目的としておらず、外板PEcに接合されておれば良く、縦骨FVや横骨FLに接合される必要はない。
【0003】
図17及び
図18に、
図16における主骨(縦骨FV及び横骨FL)と補強骨FRとをそれぞれ別に表示する。
図17に、縦骨FVと横骨FLとが互いに接続されて外板PEcに接合されている様子が示されている。
図18に、補強骨FRが外板PEcに接合されている様子が示されている。
【0004】
図19には、外板PEcに接合されるハット材である補強骨FRの縦断面を示す。本例においては、フランジ長Lfは30ミリメートル、頭頂高さHtは30ミリメートル、頭頂幅Wtは50ミリメートルである。
【0005】
図16及び
図18に示す様に、外板PEcの歪み防止(側構体BScの構造強度に直接寄与しない)のために多数の補強骨FRが用いられているために、側構体BScを構成する部品点数及び重量の大幅な増大を招く。多数の補強骨FRを、縦骨FVと横骨FLとの間で、一つずつ外板PEcに溶接するため、自動化が難しく、工数の増大と共に熟練を要する。さらに、外板PEcの内面での補強骨FRの溶接は、その痕が外板PEcの表面に顕著に出現することがあり、側構体BScの外観を大幅に損なうことがある。溶接痕を消す或いは目立たなくするためには、さらなる熟練や工数を要して溶接を行う、或いは外板PEcの表面処理を行う必要がある。
【0006】
このように、側構体BScの構造強度のためでは無く、外板PEcの美観(表面歪み低減)確保のために用いられる補強骨FRが、側構体BScの重量及び作成(含む表面処理)工数の増大の要因となっている。側構体BScの軽量化、作成工数の低減、及び外観確保のためには、補強骨FRの廃止或いは使用を大幅に限定することが望ましい。なお、補強骨FRに起因する問題は、側構体BScに限られるものでなく、外板と骨組みからなる骨皮構造を有する構体に共通して存在する。
【0007】
鉄道車両構体において、上述の補強骨FRに起因する問題の発生と共に外板PEcの表面歪み防止を図る様々な工夫がなされている(特許文献1、2、及び3参照)。特許文献1及び特許文献2に記載の鉄道車両構体は、従来の互いに接合される縦骨FV及び横骨FLで構成される主骨格と、補強パネルとで構成されている。言い換えれば、上述の多数の補強骨FRが補強パネルに交換されている。補強パネルには、プレス加工により凹凸(特許文献1)或いは一つずつプレス成形されたビード(特許文献2)が設けられている。つまり、補強パネルが従来の互いに接合された縦骨FV及び横骨FLに相当し、凹凸或いはビードが従来の補強骨FRに相当している。よって、本来補強骨FRには含まれない、少なくとも形成された多数の凹凸やビード間を繋ぐ(多数の凹凸やビードが形成される)基盤部が追加されている。
【0008】
特許文献3に記載の鉄道車両構体においては、従来の外板PEcと補強骨FRとが一体的に形成されている。つまり、外板PEcをプレスして、従来の補強骨FRに相当するビードを成形している。これにより、鉄道車両構体の外板が、動的荷重によって自重により変形することの防止が図られている。
【0009】
図20を参照して特許文献1に記載の鉄道車両構体についてより詳しく説明する。外板(以降、「アウターパネル」)2には、補強材となる複数枚のインナーパネル4が接合されている。アウターパネル2は高張力鋼からなる複数の板で構成され、インナーパネル4は深絞り鋼をプレス加工により凹凸を設けて一体成形されている。インナーパネル4の側端はアウターパネル2の車両内側に溶接される。補強骨FRが凹凸が設けられたインナーパネル4に置き換わる構造により、従来の補強骨FRや骨部材を外板PEcに接合する骨皮構造に比べて部品点数が削減されると共に、平面精度が向上するため歪取り等の工数が削減される。
【0010】
しかしながら、補強骨FR自体は廃止されているが、補強骨FRに相当する数だけ凹凸が必要である。よって、凹凸の総重量が従来の補強骨FRの総重量と同じであったとしても、インナーパネル4の凹凸が設けられていない部分(基盤部)の重量が追加されることは不可避であり、車両構体としての軽量化は阻害される。また、
図20より、凹凸は大きさ及び重量共に、補強骨FRに比べて大きいことが見てとれ、構体の重量が大きくなると判断される。なお、補強骨FRに相当する凹凸に起因する溶接痕がアウターパネル2に顕在化する虞を有しないが、個々の補強骨FRに比べて遙かに重いインナーパネル4をアウターパネル2へ接合する作業に起因する痕がアウターパネル2の表面に顕在化する虞がある。
【0011】
図21及び
図22を参照して特許文献2に記載の外板について説明する。
図21に示すように、外板の車内側面には、従来の補強骨FRに相当するビード12、13が成形された補強パネル9、10、11が取り付けられている。
図22に、ビード13が所定の間隔を空けて設けられた補強パネル11の縦断面を示す。一般的に各鉄道会社の仕様に基づき製造される鉄道車両においては、一体プレスで補強パネルにビードを成形するためには、補強パネル毎のプレス型が必要となる。本例においては、2つのプレス型を組み合わせて所望の長さのビードを補強パネルに一つずつ成形することにより、補強パネルのサイズや形状が変わってもビードの本数や配置を自由に設定できる。
【0012】
しかしながら、補強パネル11に一つずつビードを成形するため、一体プレス成形に比べて生産性は劣ると共に、ビードによる重量化は解消できない。また特許文献1におけるインナーパネル4と同様に、補強骨FR自体は廃止されているが、補強骨FRに相当する数だけビード12、13が必要である。よって、ビード12、13の総重量が従来の補強骨FRの総重量と同じであったとしても、ビード12、13が設けられていない部分の重量が追加されることは不可避であり、車両構体としての軽量化は阻害される。また、
図22より、ビード12、13は大きさ及び重量共に、補強骨FRに比べて大きいことが見てとれ、構体の重量が大きくなると判断される。なお、補強骨FRに相当する凹凸に起因する溶接痕が外板(不図示)に顕在化する虞を有しないが、個々の補強骨FRに比べて遙かに重い補強パネル11を外板へ接合する作業に起因する痕が外板の表面に顕在化する虞がある。
【0013】
図23及び
図24を参照して、特許文献3に記載の外板について説明する。
図23に示す外板は、妻構体に取り付けられる外板(以降、「妻外板」)である。妻外板Pegは、妻構体(不図示)にスポット溶接Wsにて取り付けられている。妻外板Pegは、外板Peに車両長手方向Dlに突出する複数(本例では、28本)のビードBが所定の間隔で車両幅方向Dwに延在して設けられている。
【0014】
図24に、妻外板Pegの縦断面を示す。同図に示すように、妻外板Pegでは、板厚T(本例では、1.5mm)の外板Peに、数本(本例では、28本)のビードBが車両幅方向Dwに平行にプレス出しされて延在している。ビードBの横断面形状は、外板Peに対してエッジCeを成して、所定の曲率半径Rbで規定される曲面で車両長手方向Dl/車両高さ方向Dvに盛り上がり、車両長手方向Dlでのピーク高さHb(以降、「ビード高Hb」)に達する。つまり、ビードBは幅広(本例では、ビード幅Wb=35mm)で、低い(本例では、ビード高Hb=6mm)アーチ状断面を有している。ビードBにおいては、その凸面Sp側で、ビードBの輪郭に沿ったエッジCeが生成される、つまりビードBの凸面Sp側の断面形状はエッジCeで急激/不連続的に変化する。一方、凹面Sr側の断面形状は滑らかに連続的に変化する。
【0015】
ビードBは、妻構体(不図示)の構造強度を担う役目は負っておらず、美観上の目的(外板Pe上で僅かな歪みの発生防止及び、発生した歪みを目立たなくする)で設けられている。妻外板Pegに構造強度の一部を担わせる必要が無くなった現状に基づき、ビードBは簡易ビードである。
【0016】
上述のように、特許文献3に記載のビードBは、従来のビードに比べると簡易版であり、ビードプレス金型に対する品質要求を下げることにより金型に起因するコストの低減を図っている。
【0017】
特許文献3においては、鉄道車両の前後の端部に配置される妻構体に働く動的荷重に起因する、妻構体の外板の自重による変形を抑えるべくビード成形が開示されている。外板を変形させて従来の補強骨FRに相当するビードをプレス成形することにより、実質的に、補強骨FRの重量に対応する分の軽量化に加えて、溶接に起因する諸問題も解消している。また、特許文献1のインナーパネル4や、特許文献2の補強パネル11のように、補強骨FRの代替手段が形成されたパネルが追加されないので、パネル追加に起因する重量増加や溶接痕の虞はない。
【0018】
なお、妻構体の外板には、基本的に車両重量や積載重量による車両の変形による応力が外力として働き難いため、この外力に抗するビード成形については具体的な提案はされていない。しかしながら、鉄道車両の構体において、車両の長手方向に延在する側構体等では外力の影響は大きい。外力により外板に働く応力に対して、如何にビードを成形するかについては具体的に提案がされていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る鉄道車両用の外板を側構体に用いた場合、外板に形成されるビードの配置パターンの一例を示す外板の外観図である。
【
図2】
図1の側構体を、車内から車両幅方向に見た、外板の内面におけるビードと主骨との関係を示す図である。
【
図3】
図2から、主骨を取り除くと共に、外板に於けるビードの配置パターンを領域に分けて示す図である。
【
図4】ビードが形成される前の外板に荷重が掛かった時の変形状態を模式的に示す図である。
【
図5】
図4における、窓出入口間領域における引張及び圧縮応力分布をFEM解析した結果を示す図である。
【
図6】
図5における引張応力分布のみを抜き出した図である。
【
図7】
図5における圧縮応力分布のみを抜き出した図である。
【
図8】
図5に示した窓出入口間領域とは別の窓出入口間領域における引張及び圧縮応力分布をFEM解析した結果を示す図である。
【
図9】
図8における引張応力分布のみを抜き出した図である。
【
図10】
図8における圧縮応力分布のみを抜き出した図である。
【
図11】
図6における引張応力の優勢部分の方向と、ビード配置方向を示す図である。
【
図12】
図7における圧縮応力の優勢部分の方向と、ビード配置方向を示す図である。
【
図13】
図9における引張応力の優勢部分の方向と、ビード配置方向を示す図である。
【
図14】
図10における圧縮応力の優勢部分の方向と、ビード配置方向を示す図である。
【
図15】本発明の実施の形態2に係る鉄道車両用の外板を側構体に用いた場合、外板に形成されるビードの配置パターンの一例を示す、側構体を車内から見た図である。
【
図16】従来の鉄道車両構体の側構体の一部を内部から見た図である。
【
図17】
図16の側構体において、補強骨を除いた状態を示す図である。
【
図18】
図16の側構体において、主骨格を除いた状態を示す図である。
【
図19】外板に接合されている補強骨の端面形状を示す図である。
【
図20】補強部材を有する従来の鉄道車両構体の側構体の縦断面である。
【
図21】ビードが形成された内板を有する従来の鉄道車両構体の正面図である。
【
図23】外板にビードが成形されている従来の妻外板の正面図である。
【
図24】
図23において、直線II−IIで切断した妻外板の横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
以下に
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態1に係る鉄道車両構体用外板の一例として側構体の外板(以降、「側外板」)について説明する。同図において、Dv方向は車両の高さ方向(以降、「車両高さ方向Dv」)を、Dl方向は車両の長手方向(以降、「車両長手方向Dl」)を、Dw方向は車両の幅方向(以降、「車両幅方向Dw」)を、それぞれ表す。
図1においては、紙面の都合上、本実施の形態に係る側外板PE1を備える側構体BS1の半車両分(以降、「半側構体BSh1」)を車外から車両幅方向Dw方向に見た様子を示す。半側構体BSh1は、側構体BS1を車両長手方向Dl方向における中央部で切ったものである。同図に示されていない、側構体BS1の残りの半車両分を半側構体BSh1’と呼ぶ。なお、側外板PE1で、半側構体BSh1及び半側構体BSh1’を構成する部分をそれぞれ半側外板PEh1及び半側外板PEh1’と呼ぶ。半側構体BSh1(含む半側外板PEh1)と半側構体BSh1’(含む半側外板PEh1’)とは、基本構造は対称である。以降の説明は、図示されている半側構体BSh1(半側外板PEh1)に関するが、特記無き限り、図示されていない半側構体BSh1’(半側外板PEh1’)にも、構造が対称であることを前提に適用される。
【0028】
側構体BS1には、同図において左から順番に、半側構体BSh1に窓W1、出入口D1、窓W2、出入口D2、及び窓W3(
図1において、左半分のみ表示)が開口されている。表示されていないが、半側構体BSh1’に、窓W3の右半分、出入口D3、窓W4、出入口D4、及び窓W5がそれぞれ、出入口D2、窓W2、出入口D1、及び窓W1に対称に開口されている。
【0029】
出入口D1の下部に示す白三角(△)は、側構体BS1に対する台車の空気バネの支点を示す。なお、図示されていない出入口D4の下部にも台車の空気バネ支点が設定されていることは言うまでも無い。本実施の形態1に係る側構体BS1及び側外板PE1は基本的に、ビードの配置パターンも含めて、車両長手方向Dl中央部で車両高さ方向Dvに関して、構造時に線対称に構成されている。以降、
図1に示されている半側構体BSh1及び半側外板PEh1に関して成される説明をもって、半側構体BSh1’及び半側外板PEh1’についての説明に代える。
【0030】
側外板PE1は、互いに平行に対向する第1の主面と第2の主面とで規定される平板に、長さやサイズが様々な複数のビードBのそれぞれが、特許文献3に開示されている方法によって設けられて構成されている。複数のビードBは、プレス出しによって、車両外側へ向かって(第1の主面から第2の主面側に)突出するように設けられている。ビードBの輪郭は角丸長方形状(対向する直線と円弧から成る形状)及び角丸三角形状(三角形の角が円弧である形状)の二種類に大別できる。これら2種類のビードBを、必要に応じて、それぞれ角丸長方形ビードBr及び角丸三角形ビードBtと呼んで識別する。ビードBはそれぞれ、所定の方向Db(以降、「ビード延在方向Db」)に延在している。
【0031】
角丸三角形ビードBtは、特許文献3に具体的には述べられていないが、具体的に開示されている角丸長方形ビードBrに準じて作成できる。なお、本実施の形態においては、角丸三角形ビードBtは、直角三角形状に形成されており、その斜辺方向をビード延在方向Dbとする。
【0032】
ビードB(より詳しくは、角丸長方形ビードBr)のビード延在方向Dbは大きく分けて、縦、横、及び斜めの三種類である。縦とは車両高さ方向Dvに平行な方向であり、横とは車両長手方向Dlに平行な方向である。斜めとは車両高さ方向Dvに対して所定の角度θ(以降、「傾斜角θ」)を成す、或いは車両長手方向Dlに対して所定の角度(90°−θ)を成す方向である。なお、傾斜角θは0°より大きく90°より小さい。後程、
図11〜
図14を参照して、側外板PEに働く応力とビード延在方向Dbの具体例について述べる。縦方向に延在する角丸長方形ビードBrを縦ビードBrv、横方向に延在する角丸長方形ビードBrを横ビードBrl、斜め方向に延在する角丸長方形ビードBrを斜めビードBroと識別する。
【0033】
なお、角丸長方形ビードBrは、その延在方向に平行な方向に働く力に抗する能力は高い。つまり、角丸長方形ビードBrは延在方向に掛かる圧縮力或いは引張力に対して、容易には変形しない。しかしながら、角丸長方形ビードBrは延在方向に対して平行でない方向に働く力に抗する能力は、平行力に抗する能力に比べて低い。この場合、引張力に対するよりも圧縮力に対して抗する能力が劣る。とくに、圧縮力或いは引張力が角丸長方形ビードBrに対して剪断力として働く場合が、角丸長方形ビードBrの対変形能力は最も低い。
【0034】
この観点より、本発明では、側外板PE1に主に圧縮力が働く部分では、角丸長方形ビードBrをその延在方向が圧縮力の働く方向と平行になるように、つまり角丸長方形ビードBrの長さが圧縮されるような姿勢で配する。側外板PE1に主に引張力が働く部分では、角丸長方形ビードBrをその延在方向が引張力の働く方向に垂直に、つまり角丸長方形ビードBrの幅が伸ばされるような姿勢で配する。そして、圧縮力及び引張力が共に働く部分では、圧縮力の働く方向にできるだけ平行に近くなるように、所定の傾斜角θを成すような姿勢で配することにより、圧縮力による剪断抵抗を確保しつつ対引張力の確保を図っている。縦ビードBrv、横ビードBrl、及び斜めビードBroのそれぞれの配置位置と傾斜角θは、側構体BS1(特に側外板PE1)に働く応力に応じて適宜決定されるが、これについては後程、
図2〜
図14を参照して詳述する。
【0035】
図2に、
図1に示した半側構体BSh1を車内から車両幅方向Dw方向に見た様子を示す。なお、半側構体BSh1’は、
図2において、半側構体BSh1の左側に位置する。半側構体BSh1においては、
図16及び
図17に例示した従来の側構体BScにおけるのと同様に、複数の横骨FLと複数の縦骨FVとが互いに接続されて形成される主骨格に、
図1に示す側外板PE1が接合されている。側外板PE1には、補強骨FR(
図18)が接合される代わりに、ビードBが直接形成されている。
【0036】
窓W1、W2、及びW3、出入口D1及びD2の開口部を除いて、車両長手方向Dl及び車両高さ方向Dvにそれぞれ延在する横骨FL及び縦骨FVが側外板PE1に接合されている。ビードBは、上述のように、車両外側へ向かって突出するように形成されているので、主骨格を成す縦骨FV或いは横骨FLと重なることがあっても、縦骨FV或いは横骨FLと側外板PE1とが当接することを妨げず、主骨格と側外板PE1との接合の支障となることはない。なお、主骨格がビードB間の平坦部に配置される等の場合は、ビードBは車両内側ヘ向かって突出するように形成されても良い。
【0037】
説明の便宜上、窓W1、窓W2、及び窓W3に隣接する横骨FLをそれぞれ横骨FLw1、FLw2、及びFLw3と識別する。窓W1、窓W2、及び窓W3、出入口D1及びD2の開口端部に隣接する縦骨FVをそれぞれ縦骨FVw1、FVw2、及びFVw3、FVd1、及びFVd2と識別する。
【0038】
さらに、窓W1の上端部及び下端部に位置する横骨FLw1をそれぞれ上横骨FLw1U及び下横骨FLw1Dと識別し、窓W1の左端部及び右端部に位置する縦骨FVw1をそれぞれ左縦骨FVw1L及び右縦骨FVw1Rと識別する。同様に、窓W2の上端部及び下端部に位置する横骨FLw2をそれぞれ上横骨FLw2U及び下横骨FLw2Dと識別し、窓W2の左端部及び右端部に位置する縦骨FVw2をそれぞれ左縦骨FVw2L及び右縦骨FVw2Rと識別する。窓W3の上端部及び下端部に位置する横骨FLw3をそれぞれ上横骨FLw3U及び下横骨FLw3Dと識別し、窓W3の左端部及び右端部に位置する縦骨FVw3をそれぞれ左縦骨FVw3L(不図示)及び右縦骨FVw3Rと識別する。
【0039】
また、出入口D1の左端部及び右端部に位置する縦骨FVd1をそれぞれ左縦骨FVd1L及び右縦骨FVd1Rと識別する。出入口D2の左端部及び右端部に位置する縦骨FVd2をそれぞれ左縦骨FVd2L及び右縦骨FVd2Rと識別する。
【0040】
図3を参照して、半側外板PEh1(側外板PE1)に設けられるビードBの配置(以降、「ビードパターン」)について説明する。
図3は
図2から主骨格を削除すると共に、設けられているビードBの配置パターンに応じて、側外板PE1を複数の領域(以降、「ビードパターン領域」)に分類して表示している。具体的には、窓W1の周囲は、窓上部領域AW1U、窓下部領域AW1D、及び窓出入口間領域AW1D1に分けられる。
【0041】
窓上部領域AW1Uは、上横骨FLw1U(
図2)と屋根構体(不図示)との間の幕板部を含む。窓下部領域AW1Dは、下横骨FLw1D(
図2)と台枠構体(不図示)との間の腰板部を含む。窓出入口間領域AW1D1は、窓W1と出入口D1との間の吹寄部を含む。
【0042】
同様に、窓W2の周囲は、窓上部領域AW2U、窓下部領域AW2D、窓出入口間領域AW2D1、及び窓出入口間領域AW2D2に分類される。窓W3の周囲は、窓上部領域AW3U、窓下部領域AW3D、及び窓出入口間領域AW3D2に分類される。そして、出入口D1及びD2のそれぞれの上端部と屋根構体との間の出入口上部領域AD1U及び出入口上部領域AD2Uに分類される。
【0043】
図4に、側構体BS1に相当する側構体BSを備える鉄道車両において、側外板PE1に相当する側外板PEに満車状態での応力が働いている状態を、上述のビードパターン領域を重ね合わせて表示している。同図では、半側外板PEhのみ示す。後程、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10を参照して、半側外板PEhに働く応力分布をFEM(Finite Element Method)解析した結果について述べる。
【0044】
側構体BSの垂直満車荷重は、出入口D1及び出入口D4(不図示)の下部に位置する台車の空気バネの支点△に掛かる。なお、半側外板PEhにはビードBは形成されていない状態で解析した。この計算では、垂直満車荷重は、構体(屋根構体、側構体、妻構体及び台枠)、車内設備、屋根や床下に搭載される機器、及び乗員の最大重量(例えば定員の3倍)の和に設定されている。
【0045】
垂直満車荷重は、設計的に想定される鉄道車両構体に対して、車両高さ方向Dvに掛かる最大静荷重である。垂直満車荷重の内で乗員の重量は、停車駅毎に変動するが、他の重量は原則的に変動しない。なお、鉄道車両の実走行時には、走路の地形的要因や加減速要因により、垂直満車荷重は車両高さ方向Dvと別の方向にも分力として働くが、側外板PEを歪ませようとする力としては、垂直満車荷重より遙かに小さい。よって、本実施の形態においては、垂直満車荷重が台車の空気バネの支点△を介して側外板PEに働く応力のFEM解析結果に基づいて、設けられるビードBの形状及びビード延在方向Dbが決定されている。
【0046】
図4に強調されているように、側外板PEhは主に、両側の台車の空気バネの支点△の間が曲がって垂れ下がるように変形し、支点△から車両長手方向Dl方向における端部までの部分は概ね直線的に跳ね上がる。なお、特に台車の空気バネの支点△により近い、窓W2の周辺部での変形や主応力は、窓W3の周辺部にくらべて大きいと言える。
【0047】
窓W1の周囲の領域について述べれば、窓上部領域AW1U、窓出入口間領域AW1D1、及び窓下部領域AW1Dにおいては、どの方向にも引張主応力は小さく、圧縮主応力は車両長手方向Dlが優勢方向であった。よって、それぞれの領域で、複数の横ビードBrl(角丸長方形ビードBr)が所定の間隔で形成されている。
【0048】
図3に戻って、具体的には、窓下部領域AW1Dには、車両高さ方向Dvに左縦骨FVw1L(
図2)の左右に、横ビードBrlが三本ずつ(合計六本)、それぞれ車両高さ方向Dvに所定の間隔で上段、中段、及び下段の位置に設けられている。なお、左側の3本の横ビードBrlの上段及び下段に位置する2本は左縦骨FVw1Lより窓W1側(
図3において右側)にはみ出し、中段の1本は左縦骨FVw1Lより出入口D1側(
図3において左側)に離間している。右側の3本の横ビードBrlの上段及び下段の2本は左縦骨FVw1Lより右縦骨FVw1R側(
図3において右側)に窓W1の下部域に留まり、中段の1本は左縦骨FVw1Lより出入口D1側にはみ出している。
【0049】
上段、中段、及び下段の左右の横ビードBrlは、それぞれ互いの対向端部が所定の間隔で離間している。このように、左右3本ずつの横ビードBrlはそれぞれ対向端部が車両高さ方向Dvに一列に並ばない様に形成されている。本実施の形態において、この配置を互の目状の配置と呼ぶ。但し、上段、中段、及び下段の何れにおいても、1本の横ビードBrlが左縦骨FVw1Lと交差している。結果、窓下部領域AW1Dで、車両高さ方向Dvに大きな圧縮応力が働くことがあるが、左縦骨FVw1Lで半側外板PEh1は保持される。さらに、圧縮応力は、互の目状に配置された左右3本ずつの横ビードBrl間のジグザグ状空間によって減衰される。そして、半側外板PEh1の歪の発生及び歪の顕現、さらに横ビードBrlの座屈や剪断が抑制される。
【0050】
窓上部領域AW1Uにおいては、左右1本合計2本の横ビードBrlが、窓W1の上端部上で対向するように、形成されている。これにより、窓下部領域AW1Dに於けるのと同様に、車両高さ方向Dvに圧縮応力が働いても、ビードBrlの端部間の空間により減衰される。よって、横ビードBrlの座屈や剪断が抑制されることにより、半側外板PEh1の歪の発生及び歪の顕現が抑制される。
【0051】
窓出入口間領域AW1D1においては、5本の横ビードBrlが車両高さ方向Dvに、所定の間隔で形成されている。窓出入口間領域AW1D1は、窓上部領域AW1U及び窓下部領域AW1Dに比べて、車両長手方向Dlにおける長さが小さいと共に、左右が出入口D1及び窓W1のフレームで補強されている。また、5本の横ビードBrlの座屈や剪断が抑制されることによって、十分な強度をもって半側外板PEh1の歪の発生及び歪の顕現が抑制される。つまり、半側外板PEh(
図4)において発生する歪は、上述のように配置されたビードによって抑制される。
【0052】
次に、窓W3の周囲の領域に関して述べる。同領域では、上述のように、台車の空気バネの支点△から遠いので、窓W2の周囲の領域に比べて車両高さ方向Dvに働く変形応力が小さい。つまり、窓W1の周囲と同様に、どの方向にも引張主応力は小さく、圧縮主応力については車両長手方向Dlが優勢方向であった。よって、窓上部領域AW3U、窓出入口間領域AW3D2、及び窓下部領域AW3Dでは、右縦骨FVw3Rが左縦骨FVw1Lにとって代わると共に、窓上部領域AW1U、窓出入口間領域AW1D1、及び窓下部領域AW1Dに対して概ね対称に構成されている点を除いては、同様に角丸長方形ビードBr(横ビードBrl)が形成されている。
【0053】
次に、出入口D1の上部である、出入口上部領域AD1Uについて述べる。同領域は、半側外板PEh1の最も狭隘部であると共に、略直下に台車の空気バネの支点△が位置する。よって、台車の空気バネの支点△を介して車両高さ方向Dvに働く応力を、出入口上部領域AD1Uという狭隘部で受けるために、出入口上部領域AD1Uには車両高さ方向Dvに働く圧縮力が優勢になる。よって、複数の縦ビードBrvが所定の間隔で形成されている。なお、出入口上部領域AD2Uにおいても、同様に複数の縦ビードBrvが所定の間隔で形成されている。
【0054】
次に、窓W2の周辺の領域に関して詳述する。上述のように、窓W2の周辺部は、半側外板PEh(
図4)において変形応力を最も大きな部分で受ける。但し、半側外板PEh(側構体BS)の下端部は台枠の上面が当接しているために、他の領域に比べて大きな部材である窓下部領域AW2Dにおける変形及び応力は小さく、台枠から遠く且つ窓下部領域AW2Dに比べて狭小な部材である左右の窓出入口間領域AW2D1及びAW2D2と窓上部領域AW2Uにおける変形及び応力は大きい。
【0055】
よって、窓下部領域AW2Dには、左縦骨FVw2L及び右縦骨FVw2R(
図2)のそれぞれの左右に、横ビードBrlが三本ずつ(合計9本)が、上述の窓下部領域AW1D及びAW3Dにおけるのと同様に形成されている。
【0056】
窓上部領域AW2Uと窓出入口間領域AW2D1及びAW2D2とにおいては、斜め方向に延在するビードB(斜めビードBro及び角丸三角形ビードBt)が形成されている。斜めビードBroと角丸三角形ビードBtとはそれぞれ、車両高さ方向Dvにおける下端が上端よりも、台車の空気バネの支点△に近いように配置されている。斜めビードBro及び角丸三角形ビードBtの配置については、後程詳述する。
【0057】
上述の通り、ビードB(斜めビードBro及び横ビードBrl)は所定の間隔を空けて配置されている。一例として、本実施の形態1においては、斜めビードBro間の距離(以降、「斜めビード間距離PBro」及び横ビードBrl間の距離(以降、「横ビード間距離PBrl」)はそれぞれ150ミリメートルに設定されている。なお、角丸長方形ビードBrの幅(以降、「角丸長方形ビード幅WBr」は50ミリメートルに設定されている。
【0058】
次に、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9及び
図10を参照して、満車状態に、ビードBが形成されていない半側外板PEh(
図4)に働く応力分布をFEM解析した結果について述べる。
図5に、
図4に於ける窓出入口間領域AW2D1を拡大して示す。
図6及び
図7に、
図5における引張力分布及び圧縮力分布をそれぞれ抜き出して示す。
図8に、
図4に於ける窓出入口間領域AW2D2を拡大して示す。
図9及び
図10に、
図8に於ける引張力分布及び圧縮力分布をそれぞれ抜き出して示す。
【0059】
図11及び
図12に、窓出入口間領域AW2D1に働く引張応力の優勢方向(以降、「引張応力優勢方向Dt」)、圧縮応力の優勢方向(以降、「圧縮応力優勢方向Dc」)及びビード延在方向Dbを示す。窓出入口間領域AW2D1において、引張応力優勢方向Dt(
図11)は右肩上がりに車両高さ方向Dvに対して約45°の角度を成し、圧縮応力優勢方向Dc(
図12)は右肩下がりに車両高さ方向Dvに対して約45°の角度を成している。なお、
図11及び
図12には、図示されていないが、窓上部領域AW2Uにおいても、引張応力優勢方向Dt及び圧縮応力優勢方向Dcは窓出入口間領域AW2D1におけるのと同様である。
【0060】
図13及び
図14に、窓出入口間領域AW2D2に於ける引張応力優勢方向Dt、圧縮応力優勢方向Dc及びビード延在方向Dbを示す。同図に示すように、窓出入口間領域AW2D2においても、窓出入口間領域AW2D1におけるのと同様に、引張応力優勢方向Dt(
図13)は右肩上がりに車両高さ方向Dvに対して約45°の角度を成し、圧縮応力優勢方向Dc(
図14)は右肩下がりに車両高さ方向Dvに対して約45°の角度を成している。
【0061】
図11〜
図14に示すように、窓出入口間領域AW2D1及びAW2D2と窓上部領域AW2Uにおいては、引張応力優勢方向Dtは車両高さ方向Dvに対して、出入口D1及び窓W2方向に約45°の傾斜角を有している。圧縮応力優勢方向Dcは車両高さ方向Dvに対して、窓W2及び出入口D2方向に約45°の傾斜角を有している。よって、ビード延在方向Dbが、引張応力優勢方向Dtに対して直交すると共に、圧縮応力優勢方向Dcに対して平行になるように、ビードBが設けられている。つまり、窓出入口間領域AW2D1及びAW2D2と窓上部領域AW2Uにおいては、複数のビードBが、車両高さ方向Dvに対して、窓W2及び出入口D2方向に45°傾斜して設けられる。これによって、圧縮応力をビードBの長手方向(ビード延在方向Db)で受け止めることにより、ビードBの対剪断性または対座屈性を確保している。
【0062】
図11を参照してより詳しく述べれば、側外板PE1に主に引張力が働く部分では、斜めビードBro及び角丸三角形ビードBtをその延在方向が引張力の働く方向に垂直に、つまり斜めビードBro及び角丸三角形ビードBtの幅が伸ばされるような姿勢で配する。同様に、
図12に示すように、側外板PE1に主に圧縮力が働く部分では、斜めビードBro及び角丸三角形ビードBtをその延在方向が圧縮力の働く方向と平行になるように、つまり斜めビードBro及び角丸三角形ビードBtの長さが圧縮されるような姿勢で配する。
【0063】
図3に戻って、窓出入口間領域AW2D1には、斜めビードBroと角丸三角形のビードBtとが組み合わせされて形成されている。角丸三角形のビードBtは主に、狭隘な角部に設けられている。角丸三角形ビードBtの長辺は、斜めビードBro(角丸長方形ビードBr)と同じ方向に傾いている。本実施の形態においては、窓出入口間領域AW2D1における側外板PE1は、上横骨FLw2U近傍の上部と、下横骨FLw2D近傍の下部と、両者の間の中央部とに分割されている。
【0064】
そのために、上部では2つの角丸三角形ビードBtが両角に設けられ、中央部に短い角丸長方形ビードBr(斜めビードBro)が設けられている。中央部では2つの角丸三角形ビードBtが左下及び右上の角に設けられ、その間に3本の角丸長方形ビードBr(斜めビードBro)が設けられている。下部では上部におけるのと同様に2つの角丸三角形ビードBtと短い角丸長方形ビードBr(斜めビードBro)が設けられている。このように、十分な長さの角丸長方形ビードBr(斜めビードBro)を形成することができない狭隘な部分では、角丸三角形ビードBtと短い角丸長方形ビードBr(斜めビードBro)とを組み合わせることによって、単位面積あたりのビードBの割合を高めて、対歪み効果を高めている。
【0065】
(実施の形態2)
以下に、
図15を参照して、本発明の実施の形態2に係る鉄道車両構体用外板(以降、「側外板」)について説明する。同図においては、
図2と同様に、紙面の都合上、本実施の形態に係る側外板PE2を備える側構体BS2の半車両分(以降、「半側構体BSh2」)を車内から車両幅方向Dwに見た様子を示す。同図に示されていない、側構体BS2の残りの半車両分を半側構体BSh2’と呼ぶ。半側構体BSh2(含む半側外板PEh2)と半側構体BSh2’(含む半側外板PEh2’)とは、基本構造は対称である。実施の形態1と同様に、特記無き限り、図示されていない半側構体BSh2’(半側外板PEh2’)にも、構造が対称であることを前提に適用される。以降、実施の形態1に共通の部材の説明は、特に必要ない限り省略する。
【0066】
窓下部領域AW2Dにおいて、窓W2の右端下部に示す黒三角は、側構体BSh2に対する台車のジャッキ支持点を示す。本実施の形態2に係る側構体BS2及び側外板PE2は基本的に、ビードの配置パターンも含めて、車両長手方向Dl中央部で車両高さ方向Dvに関して、構造時に線対称に構成されている。したがって、図示されていない出入口の下部にもジャッキ支持点(黒三角)が設定されていることは言うまでも無い。
【0067】
簡単に言うと、本実施の形態に係る側構体BS2は、垂直満車荷重に抗するべく構成されている実施の形態1に係る側構体BS1に、さらにジャッキアップに抗するべく考案されている。垂直満車荷重が側構体BSに常に働く常時荷重であるのに対して、ジャッキアップ力は例えば車両構体を台車に搭載する時にのみ側構体BSに一時的に働く臨時荷重である。さらに、垂直満車荷重が構体(屋根構体、側構体、妻構体及び台枠)、車内設備、屋根や床下に搭載される機器、及び乗員の最大重量(例えば定員の3倍)の和であるのに対して、ジャッキアップ荷重は最大でも車内設備、搭載機器及び乗員重量を含まない軽量である。
【0068】
本実施の形態に係る側構体BSh2においては、この軽量の臨時荷重が抗するパターンのビードBが設けられている。つまり、実施の形態1と同様に、本実施の形態における側外板PEh2には、垂直満車荷重及びジャッキアップ力に対して歪の発生及び歪の顕現を防止するためにビードBが配置されている。実施の形態1と比較して、本実施形態においては、窓W2の下部つまり窓下部領域AW2Dにおけるビードパターンのみ異なる。よって、窓下部領域AW2D以外の領域におけるビードパターンの説明は、特に必要のない限り省略する。なお、本実施の形態2におけるビードB(縦ビードBrv)間の距離(以降、「縦ビード間距離PBrv」)は200ミリメートルに設定されている。
【0069】
窓下部領域AW2Dには、左縦骨FVw2L(
図2)の左右に横ビードBrlが三本ずつ設けられている。実施の形態1と異なり、ジャッキ支持点(黒三角)の略直上に位置する右縦骨FVw2Rの左右にはそれぞれ2本及び3本の縦ビードBrvが設けられている。これにより、ジャッキ支持点(黒三角)で側構体BS2或いは鉄道車両がジャッキアップされる時に、側外板PE2に対して車両高さ方向Dvに主に剪断力として働く応力を、角丸長方形ビードBr(縦ビードBrv)の長手(延在)方向の対圧縮抗力で受け止めることを意図している。