(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エポキシ樹脂と(B)液状エポキシ樹脂との質量比((A)エポキシ樹脂の質量/(B)液状エポキシ樹脂の質量)が、0.5/99.5〜80/20である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される骨格を有し、かつ、臭素を含まない(A)エポキシ樹脂と、25℃で液状である(B)エポキシ樹脂と、(C)硬化剤と、を含む。
【0012】
【化2】
(式(1)中、R
1は2価の芳香族基を表し、R
2は、置換基を有していてもよい2価の官能基を表す。)
【0013】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上記のように構成されているため、フィラーの種類によらず接着力を保持でき、かつ、高温にさらされた後でも接着力を保持できる。
【0014】
[(A)エポキシ樹脂]
(A)エポキシ樹脂は下記一般式(1)で表される骨格を有するエポキシ樹脂であって、その構造には臭素原子を含まない。なお、(A)エポキシ樹脂が臭素を含まないことは、後述の実施例に記載の要領(蛍光X線測定)で確認することができる。
【0015】
一般式(1)の構造を持つことで、有機基材や金属との接着力の向上が見られ、特に高温下にさらした時の接着力低下が向上する。臭素原子を含まない構造とすることにより、臭素結合の解離に起因する接着力の低下を防止することができる。
【0016】
一般式(1)中のR
1は、以下に限定されないが、ビフェニル類、ビスフェノールA類、ビスフェノールF類、ビスフェノールAF類、ビスフェノールAC類、ビスフェノールS類、フェノールノボラック類及びクレゾールノボラック類からなる群より選択される1種以上の骨格を含んでいてもよく、これらの骨格は置換基を有していてもよい。
【0017】
一般式(1)中のR
2は、2価の官能基としては、以下に限定されないが、例えば、単結合、置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基等が挙げられる。「アルキレン基」とは、「アルキル基」から任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味し、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、トリメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。R
2で示される置換されていてもよいアリーレン基の「アリーレン基」は、「アリール基」から、任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味する。R
2で示される置換されていてもよいアルキレン基、アリーレン基は、置換可能な位置において、1又は2以上の置換基で置換されたものを挙げることができる。かかる置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。本実施形態において、上記R
2は、イソホロン、ベンゼン、トルエン、ジフェニルメタン及びナフタレンのいずれか1つに由来する2価の官能基、ヘキサメチレン基並びに−(CH
2−C
6H
4)
n−(ポリメチレンポリフェニレンポリフェニル骨格を有する基)からなる群より選択されることが好ましい。これらの基をもつことで、熱に対する安定性がより向上する傾向にある。
【0018】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、180〜2400であることが好ましく、190〜1700がより好ましく、200〜1000が更に好ましい。エポキシ当量が上記範囲にある場合、ハンドリンク性が向上する傾向にあり、その結果、硬化時の内部応力が小さくなり接着力がより向上する傾向にある。
【0019】
(A)エポキシ樹脂の数平均分子量としては、360〜4800であることが好ましく、420〜3900がより好ましく、480〜3000が更に好ましい。上記数平均分子量が上記範囲にある場合、溶剤可溶性の向上や他のエポキシ樹脂との相溶性の向上の観点から好ましい。
【0020】
[(B)エポキシ樹脂]
(B)エポキシ樹脂は25℃で液状であれば特に限定されず、各種公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0021】
(B)エポキシ樹脂における「25℃で液状」とは、120℃以上で2時間加熱した後、25℃まで冷却し、25℃になってから2時間以内にE型粘度計で測定したときの粘度(25℃での粘度)が300000mPa・s以下であることを示す。
【0022】
(B)エポキシ樹脂は、初期接着力の観点から、下記式(2)で表される樹脂を含むことが好ましい。
G
1−(OR
3)
m−O−R
4−O−(R
3O)
n−G
2 (2)
(式(2)中、m及びnは、それぞれ独立に、1〜11の整数であり、かつ、3≦(m+n)≦12を満たし、(m+n)個のR
3は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、R
4は、炭素原子数6〜30の2価の芳香族基を表し、G
1は、グリシジル基を表し、G
2は、水素原子又はグリシジル基を表す。)
【0023】
式(2)中、R
3は、炭素数1〜10のアルキレン基であれば、特に限定されない。すなわち、R
3は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。さらには、R
3は、不飽和結合基を含んでいてもよい。R
3の炭素数は、可撓性と耐熱性のバランスの観点から、好ましくは1〜6であり、製造容易性の観点から、より好ましくは1〜3である。R
3の好ましい具体例としては、以下に限定されないが、例えば、−C
2H
4−、−C
3H
6−等が挙げられる。
【0024】
式(2)中、R
4は、炭素数6〜30の2価の芳香族基であれば、特に限定されない。R
4は、粘度の観点から、炭素数6〜20の2価の芳香族基であることが好ましく、製造容易性の観点から、炭素数6〜15の2価の芳香族基であることがより好ましい。
【0025】
R
4の具体例としては、以下に限定されないが、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ビフェニル、テトラメチルビフェニル、テトラブロモビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ジフェニルジスルフィド、ナフタレン、アントラセン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ジブチルヒドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン及びカテコールからなる群より選ばれる1種に由来にする2価の芳香族基等が挙げられる。
【0026】
R
4は、耐熱性の観点から、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基及び下記式(3)で表される構造を有する2価の芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
【0027】
【化3】
(R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、カルボキシル基又は炭素数1〜12のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO
2−又は−S−S−を表す。)
【0028】
R
5及びR
6は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、カルボキシル基又は炭素数1〜12のアルキル基であればよいが、それらの中でも、安定的な原料供給の観点から、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基であることが好ましい。
【0029】
式(3)で表される構造を有する2価の芳香族基としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン及びジフェニルジスルフィドからなる群より選ばれる1種に由来にする2価の芳香族基が挙げられる。
【0030】
式(2)のm及びnは、それぞれ独立に、1〜11の整数であり、かつ、3≦(m+n)≦12の関係を満たす。式(2)においては、十分な可撓性を確保する観点から(m+n)を3以上とし、また、粘度上昇によるハンドリング性の低下を効果的に防止する観点から(m+n)を12以下としている。
【0031】
(B)エポキシ樹脂中において、式(2)の3≦(m+n)≦12を満たす成分(以下、「a成分」という場合がある)の割合は、好ましくは30モル%以上70モル%以下であり、より好ましくは40モル%以上60モル%以下である。a成分の割合が30モル%以上であれば、十分な可撓性が得られる傾向にある。また、a成分の割合が70モル%以下であれば、低粘度となり、ハンドリング性が向上する傾向にある。
【0032】
式(2)中の(R
3O)
nで表される構造を有することで、(B)エポキシ樹脂の硬化物は、金属との接着性がより一層向上する傾向にある。
【0033】
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂を組み合わせて使用することが、本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物の特徴である。(A)と(B)のエポキシ樹脂を併用することで、有機基材同士や金属同士及び有機基材と金属間の接着力が向上する。
【0034】
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂の質量比率は、(A)エポキシ樹脂の質量/(B)エポキシ樹脂の質量で0.5/99.5〜80/20(wt比)であることが好ましい。上記質量比は、5.0/95.0〜70/30であることがより好ましく、更に好ましくは10/90〜60/40である。(A)エポキシ樹脂が0.5wt%以上である場合、フィラーを入れたときの接着力低下をより効果的に防止できる傾向にあり、80wt%以下である場合は初期の接着力をより高く保持できる傾向にある。
【0035】
[(C)硬化剤]
(C)硬化剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物に使用できるもの、すなわち、エポキシ樹脂を硬化し得るものであれば、特に構造等は限定されない。(C)硬化剤の具体例としては、以下に限定されないが、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤等が挙げられる。
【0036】
アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。脂肪族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0037】
フェノール系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アリルアクリルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0038】
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0039】
潜在性硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、イミダゾール系潜在性硬化剤やアミンアダクトをカプセル化したもの等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えば、「PN23」、「PN40」、「PN−H」といったアミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)や「HX−3088」、「HX−3941」、「HX−3742」といったノバキュアシリーズ(旭化成イーマテリアルズ社製)が挙げられる。
【0040】
上述した(C)硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、一部を「硬化剤」とし、残部を「硬化促進剤」と呼ぶ場合もある。ここでいう硬化剤とは、熱や光によりエポキシ樹脂と反応し、架橋していく機能を有するものをいい、硬化促進剤とは、主には、それ自身はエポキシ樹脂と反応しないが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を起こりやすくする機能を有するものをいう。
【0041】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の(C)硬化剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは2〜40質量%であり、より好ましくは3〜30質量%であり、更に好ましくは4〜20質量%である。(C)硬化剤の含有量を上記範囲内とする場合、エポキシ樹脂組成物の反応性、機械的特性、耐熱性等がより向上する傾向にある。
【0042】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述した構成要件の他に、(D)充填剤、(E)その他エポキシ樹脂成分、添加剤等を含んでいてもよい。
【0043】
(D)充填剤としては特に限定されないが、平均粒径が0.05μm〜100μmであることが好ましい。平均粒径が0.05μm以上である場合、(D)充填剤を組成物中に適量配合しやすくなる傾向にあり、より良好な耐熱性が得られる傾向にある。また、平均粒径が100μm以下である場合、連続した硬化架橋物が得やすく、より良好な接着力が得られる傾向にある。さらに、平均粒径が30μm以下である場合は、狭ギャップへの適用の観点から好ましい。上述した観点から、平均粒径は、より好ましくは0.1μm〜30μmであり、更に好ましくは0.1μm〜20μmであり、より更に好ましくは0.1μm〜10μmである。なお、(D)充填剤の平均粒径が上記範囲内であると、(A)エポキシ樹脂と(D)充填剤との併用により、液状封止用エポキシ樹脂組成物の硬化時の内部応力を抑制することができ、封止対象である金属製部品との接着性がより向上するものと考えられる。(D)充填剤の平均粒径は、乾式の粒度分布計によって測定される平均粒径d50の値である。
【0044】
(D)充填剤は、無機充填剤であることが好ましい。無機充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;亜硫酸カルシウム等亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度等を向上できる観点から、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。これらを用いることで、熱線膨張係数をより効果的に抑制できるため、冷熱サイクル試験結果の改善等が見込まれる。これらの(D)充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の(D)無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは60〜85質量%である。(D)無機充填剤の含有量を40質量%以上とする場合、より優れた低線膨張が実現できる傾向にある。(D)無機充填剤の含有量を90質量%以下とする場合、弾性率の上昇をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0046】
(D)無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤をエポキシ樹脂組成物中に添加することでも、その性能は発揮されるが、前処理としてシランカップリング剤で(D)無機充填剤の表面処理を行うことで、エポキシ樹脂組成物の一層の低粘度化を実現できる傾向にある。
【0047】
シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、接着強度の観点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0048】
(E)その他エポキシ樹脂成分としては、本実施形態における(A)エポキシ樹脂及び(B)エポキシ樹脂とは区別されるものである。すなわち、25℃でE型粘度計で測定される粘度が300000mPa・sより高いものが(E)その他エポキシ樹脂成分に該当する。具体例としては、以下に限定されないが、骨格として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂等が挙げられ、これらの性状は半固形から固形となる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0049】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、液状応力剤、シランカップリング剤、希釈剤、レベリング剤、顔料等の他の添加剤を更に含有してもよい。これらは、本実施形態の効果が得られる範囲であれば、適宜好適なものを選択することができる。
【0050】
難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。臭素系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、テトラブロモフェノール等が挙げられる。リン系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファナントレン−10−オキサイド及びそのエポキシ誘導体、トリフェニルホスフィンやその誘導体、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、グアニジン系難燃剤、トリアジン構造含有フェノール、ポリリン酸メラミン、イソシアヌル酸等が挙げられる。無機系難燃化合物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が挙げられ、耐熱性の観点から、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0051】
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物の総量に対して、5〜200質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。
【0052】
液状低応力剤としては、以下に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコール類やそのアミン変性体、ポリブタジエン、アクリロニトリル等の有機ゴム、ジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。液状低応力剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0053】
シランカップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、接着強度の観点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0054】
希釈剤としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル基を含有した多官能アクリレート化合物や一官能のグリシジル基を含有したグリシジル型反応性希釈剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。希釈剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対して、1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0055】
レベリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等が挙げられる。
【0056】
本実施形態の硬化物は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる。すなわち、本実施形態の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を、従来公知の方法等により熱硬化させること等で得られる。より詳細には、例えば、本実施形態におけるエポキシ樹脂やエポキシ樹脂組成物に、硬化剤、更に必要に応じて硬化促進剤、無機充填剤、配合剤等を、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して前駆体としてのエポキシ樹脂組成物を得ることができる。その後、得られたエポキシ樹脂組成物を注型あるいはトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、80〜200℃程度で2〜10時間程度の条件で更に加熱することにより、硬化物を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得ることができる。得られたプリプレグを熱プレス成形すること等により、硬化物を得ることもできる。本実施形態のエポキシ樹脂組成物及び硬化物は、従来、エポキシ樹脂が材料として用いられている種々の用途に使用できる。例えば、電子部材(例えば、封止材、接着剤、プリント基板材、塗料、複合材料等)の用途として特に有用である。それらの中でも、アンダーフィルや、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム(例えば、層間絶縁材等)、異方性導電性フィルム(ACF)等の導電性接着剤に好適に用いられる。これらに用いられることで、接着力や熱履歴後の接着力保持率といった本実施形態の特徴を活かすことができる。上記の他にも、本実施形態のエポキシ樹脂組成物及び硬化物は、コーティング材、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用シール材等としても好適に用いられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0059】
以下の試薬については、市販品を特に精製することなく使用した。なお、平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置 「HELOS&RODOS」(Sympatec社製)を用いて、分散圧2.0barで測定を行って求めた。
【0060】
(A)成分
一般式(1)骨格を含み、臭素を含まないエポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、「AER4152」)
【0061】
(B)成分
液状エポキシ樹脂A(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、「AER260」)
液状エポキシ樹脂B(ADEKA製、「EP−4088」)
【0062】
(C)成分
硬化剤A(ジアミノジフェニルメタン、和光純薬製試薬)
硬化剤B(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸無水物)、「リカシッドMHT」)
硬化剤C(アリル基含有フェノール(液状フェノール樹脂)、「MEH8000H」)
【0063】
(D)成分
シリカA(龍森社製、「AC−5V」、平均粒径5μm)
シリカB(龍森社製、「MSS−6」、平均粒径24μm)
アルミナ(日本軽金属社製、「BF013」、平均粒径1.2μm)
窒化ホウ素(電気化学工業社製、「デンカホロン GP」、平均粒径8.0μm)
【0064】
(E)成分
その他エポキシ樹脂E(エポキシクレゾールノボラック樹脂、旭化成イーマテリアルズ社製、「AERECN1299」)
【0065】
その他成分
一般式(1)骨格を含み、臭素を含むエポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、「AER4100」)
硬化促進剤(2メチルイミダゾール、「2MZ」)
【0066】
次に、各々の測定方法、評価方法及び試験方法について説明する。
【0067】
(1)せん断接着性
標準試験片C1100P(日本テストパネル社製)の表面に厚さ100μmのフッ素樹脂製耐熱テープを張り付け、標準試験片の表面に25mm×5mmの隙間が形成するようマスキングした。その隙間(25mm×5mm)にエポキシ樹脂組成物を塗布し、もう1枚の標準試験片C1100Pで挟み込んだ。それを、180℃で2時間の条件で加熱することで、エポキシ樹脂組成物を熱硬化させてサンプルを得た。得られたサンプルについて23℃、50%RHの恒温恒湿室にて、引張試験器AGS−X 5kNを用いて、引張せん断測定を行った。
【0068】
(2)赤外線吸収スペクトル(IR)
日本分光株式会社 FT/IR−6100を使用して、600〜4000cm
-1の範囲で測定を行った。
【0069】
(3)蛍光X線
SPECTRO社 PHOENIXを使用して、臭素元素位置にピークが出るか測定を行った。
【0070】
[製造例1]
反応器内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:AER260、旭化成イーマテリアルズ(株)製、エポキシ当量188g/eq)100質量部、及び、テトラブチルアンモニウムブロマイド(商品名:臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、和光純薬工業(株)製)0.04質量部を投入し、撹拌加熱し、内温を175℃にした。さらに、原料イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(商品名:コロネートT80(商標)、日本ポリウレタン(株)製)20.0質量部を90分かけて反応器内に投入した。投入終了後、反応温度を175℃に保ち、8時間撹拌し、変性エポキシ樹脂Iを得た。得られた樹脂をIR測定したところ、1750cm
-1と910cm
-1にピークが観測され、オキサゾリドン環とエポキシ基を含むことを確認した。また蛍光X線を測定したところ、臭素元素のピークはなかった。
【0071】
[製造例2]
反応器内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:AER260、旭化成イーマテリアルズ(株)製、エポキシ当量188g/eq)100質量部、及び、テトラブチルアンモニウムブロマイド(商品名:臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、和光純薬工業(株)製)0.04質量部を投入し、撹拌加熱し、内温を175℃にした。さらに、原料イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(商品名:コロネートT100(商標)、日本ポリウレタン(株)製)12.6質量部を90分かけて反応器内に投入した。投入終了後、反応温度を175℃に保ち、8時間撹拌し、変性エポキシ樹脂IIを得た。得られた樹脂をIR測定したところ、1750cm
-1と910cm
-1にピークが観測され、オキサゾリドン環とエポキシ基を含むことを確認した。また蛍光X線を測定したところ、臭素元素のピークはなかった。
【0072】
[製造例3]
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、1モルのビスフェノールAに対して5モルのプロピレンオキサイドが付加反応して得られたジアルコール270g(水酸基1当量)、エピクロロヒドリン463g(5.00モル)、及び50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(10g)を混合し、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。そして、50質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。その後、さらに2時間反応させた後、混合物を冷却し、水洗を繰り返して副生した塩化ナトリウムを除去した。そして、過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、粗樹脂を得た。 得られた粗樹脂100gをメチルイソブチルケトン200gに溶解させ、0.22gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間反応させ、水洗によりメチルイソブチルケトンを留去して、式(2)で表されるエポキシ樹脂IIIを得た(R
3=−CH
2−CH(CH
3)−O−、R
4=ビスフェノールA、G
2=グリシジル基)。得られたエポキシ樹脂Aは、エポキシ当量371g/eq、25℃での粘度は952m・Pasであった。式(2)中の(m+n)は5であった。
【0073】
[
参考例1]
表中の配合に従って配合し、下記4種類のせん断接着力を測定し、それぞれの変化率を出した。
接着力1:表中(D)成分を除くエポキシ樹脂組成物を80℃で均一に加熱混合したもので、せん断接着力を測定した。
接着力2:表中(D)成分を含む全ての成分を80℃で加熱混合したもので、せん断接着力を測定した。
接着力3:表中(D)成分を含む全ての成分を80℃で加熱混合したもので、試験片を作成し、その試験片を加熱炉TCE−N300で150℃で5分加熱し、試験片が150℃になってからせん断接着力を測定した。
接着力4;表中(D)成分を含む全ての成分を加熱混合したもので、試験片を作成し、その試験片を260℃の炉に2分投入した。その投入後のサンプルでせん断接着力を測定した。
変化率A=(接着力1−接着力2)/接着力1×100(%)
変化率B=(接着力2−接着力3)/接着力2×100(%)
変化率C=(接着力2−接着力4)/接着力2×100(%)
【0074】
[実施例2〜
4,6〜7、
参考例5及び比較例1〜4]
表1に記載の配合で、
参考例1と同様の方法により各種評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1より明らかなように、実施例
2〜4,6〜7
及び参考例1,5のエポキシ樹脂組成物は、フィラーの種類によらず接着力を保持でき、かつ高温にさらされた後でも接着力を保持できる結果となっている。