【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
工程(i):メカニカルミリング処理
MgS(アルドリッチ社製純度99%)及びMgBr
2(アルドリッチ社製純度99%)を50:50のモル比で遊星型ボールミルに投入した。投入後、メカニカルミリング処理することで、50MgS−50MgBr
2を得た。メカニカルミリング処理時間を5時間、10時間及び20時間とした3試料を用意した。加えて、MgS及びMgBr
2を乳鉢にて混合し、メカニカルミリング処理に付さない試料を用意した。
【0024】
また、MgBr
2のみを50MgS−50MgBr
2と同じ条件で20時間のメカニカルミリング処理に付した試料を用意した。MgBr
2のみについても、メカニカルミリング処理に付さない試料を用意した。
遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P−7を使用し、ポット及びボールはZrO
2製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。メカニカルミリング処理は、510rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で行った。
【0025】
なお、上記メカニカルミリング処理は、Akitoshi Hayashi et al., Journal of Non−Crystalline Solids 356 (2010) 2670−2673のExperimentalの記載に準じている。
上記6種の試料をプレス(圧力370MPa/cm
2)することで直径10mm、厚さ約1mmのペレットとした。
【0026】
50MgS−50MgBr
2の4種の試料のXRDパターンを
図1に、MgBr
2のみの2種の試料のXRDパターンを
図2に示す。
図1及び2中、MM0h、MM5h、MM10h及びMM20hは、それぞれ、メカニカルミリング処理に、付さない、5時間、10時間及び20時間付したことを意味する。
図1の下部にMgS及びMgBr
2のXRDパターン、
図2の下部にMgBr
2のXRDパターンを記載している。
図1及び2中、○はMgSに対応するピークを、▲はMgBr
2に対応するピークを、◇は対応不明なピークを意味する。
【0027】
図1から、メカニカルミリング処理付さない場合のXRDパターンは、MgS及びMgBr
2の単なる合計であるが、メカニカルミリング処理付すことでMgBr
2に対応するピークがブロード化していることが分かる。このブロード化は、MgBr
2のXRDパターンを示す
図2からも分かる。
メカニカルミリング処理に20時間付した試料のラマンスペクトルを
図3に示す。
図3では、下部に示されているMgS及びMgBr
2単独のスペクトルに由来するピークが観測されている。
【0028】
工程(ii):熱処理
上記6種の試料から、メカニカルミリング処理を20時間行った50MgS−50MgBr
2及びMgBr
2のみの2試料について、室温(25℃)から400℃に向かって加熱し、更に、400℃に達してから、室温に向かって冷却した。
図4に50MgS−50MgBr
2の試料についての熱処理前後のXRDパターンを示す。
図4の下部にMgO、MgS及びMgBr
2のXRDパターンを記載している。
図4中、●MgOに対応するピークを、○はMgSに対応するピークを、▲はMgBr
2に対応するピークを、◇は対応不明なピークを意味する。
【0029】
図4から、熱処理によりMgBr
2に帰属するピークの強度が強くなったことが分かる。これは、メカニカルミリング処理により一部非晶質化した試料中のMgBr
2成分が、熱処理によって再び結晶化したためであると推測される。なお、14°付近、28°付近及び48°付近のピークの半値幅は、0.50°、0.92°及び0.44°であり、28°付近のピークの強度Aと48°付近のピークの強度Bとの比A/Bは、0.95であった。
【0030】
熱処理後の2試料において、
図5(a)に50MgS−50MgBr
2の325℃時の、
図5(b)にMgBr
2の360℃時の加熱時の交流インピーダンスプロットを示す。交流インピーダンスの測定は、試料をステンレス鋼板に挟み込んだセルに対して行い、測定条件は、印加電圧50mV、周波数は0.01Hz〜1MHzとした。これら図には、いずれも低周波側にイオンブロッキング挙動由来のスパイクが見られている。従って、両試料ともイオン伝導体であると推察される。
【0031】
更に、上記2試料について、室温から400℃に向かって加熱し、更に、400℃に達してから、室温に向かって冷却する加熱及び冷却サイクル中、約15℃毎に、試料の導電率を測定した。測定結果を
図6(a)及び(b)に示す。図中、●は加熱時、○は冷却時のプロットである。
【0032】
図6(a)から、50MgS−50MgBr
2は冷却時の導電率が、加熱時とは異なる挙動を示している。この挙動の相違は、例えば、200℃における導電率は、加熱時には7.3×10
-7Scm
-1であり、冷却時には9.0×10
-6Scm
-1であり、異なっていることがからも分かる。一方、
図6(b)から、MgBr
2は、冷却時と加熱時の導電率がほぼ同じ挙動を示している。この結果から、50MgS−50MgBr
2の試料については、加熱により導電率を向上させ得る構造の不可逆な変化が生じていると推察される。なお、2試料について、再度加熱及び冷却サイクルに付したところ、50MgS−50MgBr
2の試料は、加熱時と冷却時共、
図6(a)の冷却時と同じ挙動を示し、MgBr
2の試料は、加熱時と冷却時共、
図6(b)と同じ挙動を示した。この結果からも、50MgS−50MgBr
2の試料については、加熱により導電率を向上させ得る構造の不可逆な変化が生じていると推察される。
【0033】
熱処理後の2試料において、
図7(a)に熱処理後の50MgS−50MgBr
2の330℃加熱時の、
図7(b)に熱処理後のMgBr
2の365℃加熱時の直流分極時の電流値のプロットを示す。電流値の測定条件は、一対のステンレス極に2試料をそれぞれ挟み、印加電圧を0.1Vとし、印加時間を50MgS−50MgBr
2について3600秒、MgBr
2について3000秒とした。両試料共、電圧印加初期に急激な分極が生じた。
図7(a)から入手した50MgS−50MgBr
2の定常電流値(2.7×10
-6A)と、交流インピーダンス法とから、トータルの電気伝導度が2.9×10
-5Scm
-1、電子伝導度が2.5×10
-6Scm
-1と算出され、その結果イオン伝導度が2.5×10
-5Scm
-1であった。50MgS−50MgBr
2の全伝導度(電気伝導度)に占めるイオン伝導度の割合は約90%となり、固体電解質として有用であることが分かる。
図7(a)と同様に、
図7(b)から入手したMgBr
2の定常電流値(9.0×10
-6A)と、交流インピーダンス法とから、全伝導度に占めるイオン伝導度の割合を算出したところ約40%であり、電子伝導度の割合が大きいことが分かる。
【0034】
実施例2
工程(i):メカニカルミリング処理
MgS及びMgBr
2を60:40、40:60及び30:70のモル比とすること以外は実施例1と同様に20時間のメカニカルミリング処理に付して3種のMgS−MgBr
2の試料(ペレット)を得た。
【0035】
3種の試料のXRDパターンを
図8に示す。
図8には、
図1の50MgS−50MgBr
2のメカニカルミリング処理10時間と20時間のXRDパターン及びMgBr
2のみのメカニカルミリング処理20時間のXRDパターンも記載する。
図8中、xはMgBr
2のモル比を意味し、MM10hは、メカニカルミリング処理に10時間付したことを意味する。
図8の下部にMgS及びMgBr
2のXRDパターンを記載している。
図8中、○はMgSに対応するピークを、▲はMgBr
2に対応するピークを、◇は対応不明なピークを意味する。
【0036】
図8から、メカニカルミリング処理に付すことでどのモル比でもMgBr
2に対応するピークがブロード化していることが分かる。また、モル比が50:50〜30:70の範囲で、下部に示されているMgS及びMgBr
2単独のスペクトルに帰属しないピークが見られる。
3種の試料のラマンスペクトルを
図9に示す。
図9には、
図3の50MgS−50MgBr
2のラマンスペクトルも記載する。
図9では、下部に示されているMgS及びMgBr
2単独のスペクトルに由来するピークが観測されている。
【0037】
工程(ii):熱処理
上記3種の試料を実施例1と同様にして熱処理に付した。熱処理後の試料のXRDパターンを
図10に示す。
図10には、
図4の50MgS−50MgBr
2のXRDパターンも記載する。
図10の下部にMgS及びMgBr
2のXRDパターンを記載している。
図10中、●MgOに対応するピークを、○はMgSに対応するピークを、▲はMgBr
2に対応するピークを、◇は対応不明なピークを意味する。
【0038】
図10から、熱処理によりMgBr
2に帰属するピークの強度が強くなったことが分かる。これは、メカニカルミリング処理により一部非晶質化した試料中のMgBr
2成分が、熱処理によって再び結晶化したためであると推測される。なお、モル比60:40について、14°付近、28°付近及び48°付近のピークの半値幅は、0.36°、1.28°及び0.44°であり、28°付近のピークの強度Aと48°付近のピークの強度Bとの比A/Bは、1.06であった。モル比40:60について、14°付近、28°付近及び48°付近のピークの半値幅は0.36°、0.55°及び0.36°であり、28°付近のピークの強度Aと48°付近のピークの強度Bとの比A/Bは、1.03であった。モル比30:70について、14°付近、28°付近及び48°付近のピークの半値幅は、0.30°、0.55°及び0.30°であり、28°付近のピークの強度Aと48°付近のピークの強度Bとの比A/Bは、1.04であった。また熱処理により、対応不明な◇のピークの強度が強くなったことが分かる。この◇のピークは、立方晶構造を有するMgS(○)のピークの低角側に位置しており、MgSのSの一部がBrで置換された、MgSよりも格子定数の大きな立方晶によるものと推測される。
【0039】
上記3種の試料及び50MgS−50MgBr
2のラマンスペクトルを
図11に示す。
図11の下部にMgS及びMgBr
2のラマンスペクトルを記載している。熱処理前に存在していた220cm
-1付近のピークが消失していることが確認される。MgS及びMgBr
2に由来するピーク以外のピークは特に観察されていない。
【0040】
上記3種の試料についても、実施例1と同様に、インピーダンスプロットと加熱及び冷却サイクル中の試料の導電率の変化とを確認したところ、
図5(a)及び
図6(a)の50MgS−50MgBr
2と同様の傾向を示すことを確認した。
図12にモル比と導電率との関係を示す。図中、●は加熱時、○は冷却時のプロットである。
図12から、MgBr
2が50モル%付近で導電率が極大を示すことが分かる。