特許第6374750号(P6374750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374750シクロオレフィンコポリマーを含有するポリアミド成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374750
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】シクロオレフィンコポリマーを含有するポリアミド成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20180806BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20180806BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180806BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08L45/00
   C08K3/00
   C08K5/00
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-203404(P2014-203404)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-71760(P2015-71760A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】13187259.0
(32)【優先日】2013年10月3日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14177536.1
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505343930
【氏名又は名称】エムス−パテント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】ボート・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ジュッターリン
(72)【発明者】
【氏名】ゼップ・バス
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−100542(JP,A)
【文献】 特開2008−088303(JP,A)
【文献】 特開平07−216149(JP,A)
【文献】 特開2012−092283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマーを含有するポリアミド成形材料であって、該ポリアミド成形材料が
(A)55ないし99重量%の少なくとも1つの非晶質ポリアミド;
(B)1ないし30重量%の少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー、該少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)において、シクロオレフィン割合が40モル%を超えている;および
(C)0ないし15重量%の、安定剤、潤滑剤、染料、マーキングサブスタンス、相溶化剤、無機顔料、有機顔料、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、剥離剤、離型剤、蛍光増白剤、ホトクロミック添加剤、ハロゲンフリー難燃剤、金属顔料、金属フレーク、金属コート粒子、フィラー、ナノスケールフィラーおよびそれらの混合物からなるグループから選択される、少なくとも1つの添加剤
を含有することを特徴とし、
成分(A)ないし(C)の合計がポリアミド成形材料の100重量%であり;
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定された光透過率として少なくとも80%を有し、そして
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定されたヘーズとして30%以下を有する、該ポリアミド成形材料。
【請求項2】
成分(A)および(B)が、
(A)60ないし97重量%および(B)3ないし25重量
割合で存在することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)が、少なくとも1つの脂環式ジアミンを含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
少なくとも1つの脂環式ジアミンが、ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよびそのアルキル誘導体からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項3に記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
少なくとも1つの脂環式ジアミンが、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタンおよびビス(3,5−ジメチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタンからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)において、ヘキサメチレンジアミンが、モノマーとして除外されていることを特徴とする、請求項1〜請求項5いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項7】
少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)が、少なくとも1つの非晶質コポリアミド(A)であることを特徴とする、請求項1〜請求項6いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項8】
少なくとも1つの非晶質コポリアミド(A)が、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタンおよびイソフタル酸を含有するコポリアミドであることを特徴とする、請求項7に記載のポリアミド成形材料。
【請求項9】
少なくとも1つの非晶質コポリアミド(A)が、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、イソフタル酸およびラウロラクタムより構成されているコポリアミドであることを特徴とする、請求項8に記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
少なくとも1つの非晶質コポリアミド(A)が、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、イソフタル酸、テレフタル酸およびラウロラクタムより構成されているコポリアミドであることを特徴とする、請求項8に記載のポリアミド成形材料。
【請求項11】
非晶質コポリアミド(A)が、ラウロラクタムを含有し、全モノマーの合計モル数に基づいて、10ないし45モル%であるラウロラクタム含有量を有することを特徴とする、請求項7〜請求項10いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項12】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)が、43ないし75モル%のシクロオレフィン割合を有することを特徴とする、請求項1〜請求項11いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項13】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)が、100℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1〜請求項12いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項14】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)が、ノルボルネンおよび/またはノルボルネン誘導体およびエテンからなることを特徴とする、請求項1ないし請求項13いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項15】
少なくとも1つの添加剤(C)の割合が、0.1ないし6重量%であることを特徴とする、請求項1ないし請求項14いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項16】
少なくとも1つの添加剤(C)が、安定剤を含有することを特徴とする、請求項に記載のポリアミド成形材料。
【請求項17】
4重量%未満の、ISO標準規格62によりプレートで(on)測定された吸水率を有することを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のポリアミド成形材料。
【請求項18】
ASTM D 1003標準規格により測定された光透過率として、少なくとも85%を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項17いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項19】
ASTM D 1003標準規格により測定されたヘーズとして、25%以下を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項18いずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19いずれかに記載のポリアミド成形材料の、物体のコーティングまたは造形体の製造への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンコポリマーを含有する透明なポリアミド成形材料およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオレフィンコポリマーを含有するポリアミド成形材料は、DD203060A(東独国特許出願公開第203060号)特許明細書から知られている。そこには、2つのポリマーのほぼ等しい量比を有するノルボルネン/エチレンコポリマーおよびポリアミドに基づいた熱可塑性コンビネーションが記載されている。好適なポリアミドとして、脂肪族ポリアミド、脂環式鎖構成単位を有するポリアミド、脂肪族−芳香族ポリアミドおよび/または芳香族ポリアミドが、通常、実施例として特定の化合物と共に挙げられている。透明性は、記載されているポリアミドに対する要求事項の1つではない。それらのポリアミド成形材料の光学特性は開示されていない。
【0003】
JP2011-057864A(日本特開第2011-057864号公報)は、主成分としてシクロオレフィンコポリマーに基づき、そしてそれに関連して少量の添加された脂肪族ポリアミドを含有する成形材料を開示している。そこで請求されているシクロオレフィンコポリマーは、50℃から、最大100℃までのガラス転移温度を有している。ラクタミック酸(lactamic acid)単位またはアミノカルボン酸単位を少なくとも50モル%の割合で有する脂肪族ポリアミドが使用されている。これらの組成物の透明性は、目視の透明性が付与されているにすぎないので、非常に低い。
【0004】
COC製造社、TOPAS Advanced Polymer, 2007年5月版のパンフレット「TOPAS Cycloolefin Copolymer (COC)」には、シクロオレフィンコポリマーが2環式オレフィンノルボルネンとエチレンの共重合体生成物としてより的確に記載されている。ブレンドを製造するに良好なCOCとポリオレフィンとの相溶性に言及されており、異質で透明でもある熱可塑性プラスチックスをCOCに添加すると、極度に不透明になるということが明確に指摘されている。
【0005】
他の熱可塑性プラスチックスと比較すると、ポリアミドは、種類によっては、環境湿気から、ある量の水分を吸収することができ、その結果、成形部品あるいはそれらから作製されたコーティングの体積または寸法または成形部品あるいはそれらから作製されたコーティングの何らかの機械的特性が変化しうるという特別の特徴を有している。このことは透明なポリアミドにも当てはまる。
【0006】
良好な寸法的安定性およびより一定した機械的特性を達成するためには、ポリアミド成形材料の吸水率を低く維持することが望ましい。この目的を達成するために、例えば、ポリアミドを、他の成分と混合してもよい。しかしながら、透明なポリアミドの場合、これらの成分は、通常、光学的特性、すなわち得られるポリアミド成形材料の光透過率およびヘーズ(不透明性)にマイナスの作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】東独国特許出願公開第203060号公報
【特許文献2】特開第2011-057864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、未変性ポリアミドと比べて低減された吸水率を示し、そして、他の成形材料成分にもかかわらず、それでいて良好な光学特性、すなわち高い光透過率および低いヘーズを有しているポリアミドに基づいて透明なポリアミド成形材料を提供することが本発明の目的であった。
【0009】
本目的は、本発明に従い、クレーム1の特性を有するポリアミド成形材料により解決される。
【0010】
本発明による透明なポリアミド成形材料は、主成分としてポリアミドを含有し、そして、TOPASパンフレットに反し、すなわち当業者にとっては全く驚くべきことに、少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマーを含有している。
【0011】
用語「ポリアミド」は、ホモポリアミド、コポリアミドおよびそれらの混合物を含む一般的用語ということをこの時点で指摘しておく。ポリマーおよびそれらのモノマーに対する表記および省略形は、ISO標準規格1874-1:1992(E)に規定されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマーを含有する本発明による透明なポリアミド成形材料は、
(A)55ないし99重量%の少なくとも1つの非晶質ポリアミド;
(B)1ないし30重量%の少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー、該少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)において、シクロオレフィン割合が40モル%を超えている;および
(C)0ないし15重量%の少なくとも1つの添加剤
を含有し、
成分(A)ないし(C)の合計がポリアミド成形材料の100重量%であり;
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定された光透過率として少なくとも80%を有し、そして
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定されたヘーズとして30%以下を有する、
混合物を含有する。
【0013】
ポリアミド成形材料が、請求範囲に入るためには、上記2つの光学特性は、満足されなければならない。ポリアミド成形材料が、添加剤(C)を全く含有しない場合、成分(A)および(B)合わせて、100重量%をもたらす。添加剤(C)が存在する場合、(A)と(B)の合計は、成分(C)の割合に応じて、100重量%より小さくなる。
【0014】
本発明による透明なポリアミド成形材料の好ましい態様は、従属請求項から得られる。加えて、本ポリアミド成形材料の使用が請求されている。
【0015】
ISO 11357に従い、20K/分の加熱速度での示差走査熱量測定DSCにおいて、非晶質ポリアミドは、5J/g、好ましくは最高3J/g、特に好ましくは0ないし1 J/gの最大融解熱を示す。
【0016】
本発明によるポリアミド成形材料においては、成分(A)および(B)は、
(A)60ないし97重量%および(B)3ないし25重量%の割合で、
特に好ましくは、(A)62ないし96重量%および(B)4ないし23重量%の割合で、
とりわけ特に好ましくは、(A)72ないし96重量%および(B)4ないし13重量%の割合で
好ましく存在する。
【0017】
特に好ましくは、少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)は、少なくとも1つの脂環式ジアミンを含有し、それは、ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよびそのアルキル誘導体からなるグループから特に好ましく選択される。後者は、アルキル置換基を有するビス(アミノシクロヘキシル)メタンであると解釈される。
【0018】
とりわけ特に好ましくは、少なくとも1つの脂環式ジアミンは、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタンおよびビス(3,5−ジメチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタンからなるグループから選択される。
【0019】
本発明による透明なポリアミド成形材料のさらに好ましい態様においては、少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)において、ヘキサメチレンジアミンは、モノマーとして除外されており、および/または少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)において、シクロオレフィン割合が、好ましくは40モル%を超えている。
【0020】
好ましい態様において、少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマーを含有する本発明による透明なポリアミド成形材料は、
(A)55ないし99重量%の少なくとも1つの非晶質ポリアミド、各場合において、ヘキサメチレンジアミンはモノマーとして除外される;
(B)1ないし30重量%の少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー、各シクロオレフィンコポリマーは、40モル%を超えるシクロオレフィン割合を有している;および
(C)0ないし15重量%の少なくとも1つの添加剤
の混合物を含有し、
成分(A)ないし(C)の合計がポリアミド成形材料の100重量%であり;
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定された光透過率として少なくとも80%を有し、そして
該ポリアミド成形材料が、ASTM D 1003標準規格により測定されたヘーズとして30%以下を有する。
【0021】
本発明によるポリアミド成形材料の少なくとも一つの非晶質ポリアミド(A)の相対粘度(RV)は、0.5gポリアミドのm−クレゾール100ml溶液を使用して20℃で測定して、好ましくは1.40ないし2.15、特に好ましくは1.45ないし1.85、とりわけ特に好ましくは、1.50ないし1.75である。
【0022】
本発明によるポリアミド成形材料の少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)は、好ましくは少なくとも1つの非晶質コポリアミド(A)である。
【0023】
非晶質コポリアミド(A)は、好ましくはモノマーとしてラウロラクタムを含有し、全モノマーの合計モル数に基づいて、10ないし45モル%、特に好ましくは15ないし40モル%、とりわけ特に好ましくは20ないし40モル%であるラウロラクタム含有量を有する。
【0024】
好ましくは、非晶質コポリアミド(A)は、モノマーとして脂環式ジアミンビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン(MACM)を含有する。特に好ましくは、非晶質コポリアミド(A)は、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン(MACM)およびイソフタル酸(I)より構成されているMACMI繰り返し単位を含有している。
【0025】
好ましい態様において、非晶質コポリアミド(A)は、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン(MACM)モノマー、イソフタル酸(I)モノマーおよびラウロラクタム(12)モノマーより構成されているPA MACMI/12を含有している。特に好ましくは、PA MACMI/12は、モル比65/35を有する。
【0026】
さらに好ましい態様においては、非晶質コポリアミド(A)は、ビス(3−メチル−4−アミノ−シクロヘキシル)メタン(MACM)モノマー、イソフタル酸(I)モノマー、テレフタル酸(T)モノマーおよびラウロラクタム(12)モノマーより構成されているPA MACMI/MACMT/12を含有している。
【0027】
PA MACMI/MACMT/12の中では、テレフタル酸に対するイソフタル酸の等モル比を有するものが好ましい。特に好ましくは、PA MACMI/MACMT/12は、モル比38/38/24を有する。
【0028】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、少なくとも1つの環状オレフィンおよび少なくとも1つの直鎖または分岐オレフィンより構成されており、各場合におけるシクロオレフィンの割合は、40モル%より多い、好ましくは45ないし75モル%、特に好ましくは47ないし70モル%であり、とりわけ特に好ましくは52ないし68モル%である。好ましい環状オレフィンは、ノルボルネン、置換ノルボルネン、ノルボルネン誘導体またはテトラシクロドデセンである。置換基はアルキル基またはアリール基を含み得る。直鎖または分岐オレフィンの中では、直鎖オレフィン、特にエテンおよびプロペンが好ましい。1つ、2つ以上のシクロオレフィンコポリマーを使用することができる。シクロオレフィンコポリマーが同じモノマーからなるがシクロオレフィン割合が量的に異なる場合、1つよりも多くのシクロオレフィンコポリマーが同様に存在する。
【0029】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、好ましくは100℃より高いガラス転移温度(Tg)を有する。特に好ましくは少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)のガラス転移温度は、110℃ないし220℃の範囲、とりわけ特に好ましくは120℃ないし210℃の範囲にある。
【0030】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、全モノマーの合計モルに基づいて、40モル%より高いシクロオレフィン割合を有する。好ましくは、シクロオレフィンコポリマーのシクロオレフィン割合は、43ないし75モル%、特に好ましくは47ないし70モル%、とりわけ特に好ましくは52ないし68モル%である。
【0031】
少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、少なくとも1つの非晶質ポリアミド(A)との相溶性を高める官能基を含有してもよい。好適な官能基は、例えば、アクリル酸、コハク酸無水物、グリシジルメタクリレートおよび/またはマレイン酸無水物である。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、ノルボルネンおよび/またはノルボルネン誘導体およびエテンからなる。
【0033】
特に好ましくは、少なくとも1つのシクロオレフィンコポリマー(B)は、ノルボルネンおよびエテンからなり、それ故、ノルボルネン/エテンコポリマーである。
【0034】
好ましい具体例においては、透明なポリアミド成形材料は、少なくとも1つの添加剤(C)を含有する。少なくとも1つの添加剤(C)の割合は、好ましくは0.1ないし6重量%、特に好ましくは0.1ないし4重量%である。好ましくは、個々の添加剤の量は3重量%以下である。
【0035】
好ましくは、少なくとも1つの添加剤(C)は、安定剤、潤滑剤、染料、マーキングサブスタンス、相溶化剤、無機顔料、有機顔料、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、剥離剤、離型剤、蛍光増白剤、ホトクロミック添加剤、ハロゲンフリー難燃剤、金属顔料、金属フレーク、金属コート粒子、フィラー、ナノスケールフィラーおよびそれらの混合物からなるグループから選択される。
【0036】
フィラーおよびナノスケールフィラーの両者は、表面処理されていてもよいし、されていなくてもよい。ナノスケールフィラーは好ましくは、最大粒径100nmを有するミネラルまたは天然あるいは合成フィロケイ酸塩またはそれらの混合物を含有する。本発明によるポリアミド成形材料においては、例えば、カオリン、蛇紋石、タルク、マイカ、バーミキュライト、白雲母、イライト、スメクタイト、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物、またはそれらの混合物を使用できる。
【0037】
安定剤は、好ましくは、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、日焼け防止剤、UV安定剤、UV吸収剤およびUVブロッカーからなるグループから選択される有機または無機安定剤を含む。好ましい態様においては、本発明による透明なポリアミド成形材料は、添加剤(C)として、少なくとも1つの安定剤を含有する。
【0038】
本発明によるポリアミド成形材料は、ASTM D 1003標準規格により測定された光透過率として、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも88%、とりわけ特に好ましくは少なくとも90%を有する。本発明によるポリアミド成形材料は、さらに、ASTM D 1003標準規格により測定されたヘーズとして、30%以下、好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下、とりわけ特に好ましくは15%以下を有する。
【0039】
少なくとも1つのコポリアミド(A)がPA MACMI/12であり、シクロオレフィンコポリマーを含有する本発明による透明なポリアミド成形材料は、4重量%未満の、ISO標準規格62によりプレートで(on)測定された吸水率を示す。一方、未変性のPA MACMI/12の場合、吸水率は4%である。
【0040】
好ましくは粒状形態で存在する本発明によるポリアミド成形材料は、物体のコーティングまたは、特に押出しまたは射出成形による、造形体の製造に使用できる。
【0041】
コーティングまたは造形体は、電気電子、テレコミュニケーション、光学、光起電および自動車インテリアの分野における使用に主に適している。造形体は、好ましくは、レンズ、メガネフレーム、メガネリム、メガネ部品、視界窓、バイザー、フィルターカップ(filer cups)、流動計、クロージャ(closures)、カバー、計器カバー、ボタン、ハウジングあるいはハウジング部品、特に、ポータブル電気または電子機器用のものを含む。コーティングは、好ましくは、例えばディスプレー用の保護層、光学フィルタ、乗り物インテリアにおける機能部品または装飾部品、または太陽電池モジュールの表面を含む。好ましくは、本発明によるポリアミド成形材料は射出成形により造形体を製造するのに使用される。
【0042】
本発明によるポリアミド成形材料の製造
典型的な製造の以下の記述は例示のために使用され、本発明の範囲を制限することを意図しているものではない。
【0043】
ポリアミド成形材料を製造するために、例えば、一軸あるいは二軸エクストルーダあるいはスクリューニーダ等の通常の配合機でポリマーメルトにおいて成分を混合(配合)する。成分を個々に計量し入口に供給するか、ドライブレンドの形態で添加する。添加剤を使用する場合は、これらを直接あるいはマスターバッチの形態で導入することができる。マスターバッチのキャリア材料は、好ましくは、ポリオレフィンまたはポリアミドを含有する。ポリアミドの中では、PA6、PA11、PA12、PA6/12またはPA MACMI/12が、特に好適である。
【0044】
ドライブレンドを製造するために、乾燥グラニュールおよび所望により他の添加剤を混合する。この混合物を、タンブルミキサー、ドラムフープミキサー(drum hoop mixer)またはタンブルドライヤーの手段で10−40分均質化する。湿気の吸収を避けるため、左記操作を乾燥保護ガス下で行ってもよい。
【0045】
配合は、230℃ないし295℃の調整シリンダー温度で行われる。真空装置を適用してもよいし、ノズルの上流で大気の脱ガスを行ってもよい。溶融物をストランド形態で除去し、10ないし80℃のウォーターバス中で冷却し、そして粒状化する。粒状物質を、含水量が0.1重量%より低くなるまで、窒素下80ないし120℃で12ないし24時間乾燥させるか、真空乾燥する。好ましくは、粒状化に、水中グラニュレーションまたはホットカットを使用する。
【0046】
本発明によるポリアミド成形材料からの試験片の製造
試験片を、Arburg, Model Allrounder 420 C 1000-250射出成形機で製造した。ここでは、230℃から295℃へシリンダー温度を上げた。成形温度は80℃であった。高度に研磨した成形物を、光透過率およびヘーズの測定用プレートに使用した。
【0047】
試験片は乾燥状態で使用した。この目的を達成するために、射出成型後、試験片を、乾燥環境中、すなわちシリカゲル上、室温で少なくとも48時間保管した。
【0048】
以下の標準規格に従い、以下の試験片について測定を行った。

相対粘度(RV)
ISO 307
粒状物質
0.5gを100ml m−クレゾールに溶解
測定温度 20℃
標準規格のセクション11に基づいて、RV=t/tに従い相対粘度(RV)を計算
【0049】
フローインデックスMVR(溶融体積速度(Melt Volume Rate))
ISO 1133
粒状物質
測定温度 260℃
処理量 2.16 Kg
表示 ml/10分またはcm3/10分
【0050】
ガラス転移温度(Tg)および融解熱
ISO標準規格11357
粒状物質
示差走査熱量測定(DSC)を20K/分の加熱速度で行った。ガラス転移温度(Tg)として与えられるガラス転移範囲の中点(midpoint)は、ハーフハイト(half height)法により決定された。
【0051】
吸水率
ISO 62
プレート、厚さ1mm(100×100mm)
測定温度 23℃
3−5個のプレートを2880時間蒸留水中に貯蔵し、重量増加を算出した。得られた値は、測定重量増加の算術平均(wt%)である。
【0052】
光透過率およびヘーズ
ASTM D 1003
プレート、厚さ2mm(60×60mm)
測定温度 23℃
測定装置 「Haze Gard plus」、Byk Gardner社、CIEライトタイプC。光透過率およびヘーズ値は、光照射量の%で与えられる。
【0053】
実験:
実験用に、種々のポリアミド成形材料を、下記表1にリストされている材料から配合した。リストされている材料のすべてが、非晶質構造の結果として、透明である(RV=相対粘度)。
【0054】
【表1-1】
【0055】
【表1-2】
【0056】
実施例および比較例のポリアミド成形材料の組成および試験片の測定結果を下記表2、3および4に示した。成分の量的割合は、重量%(wt%)で示した。使用された成分の和は、各ケースにおいて100wt%であり、ポリアミド成形材料の総重量に対応する。
【0057】
【表2】
【0058】
コポリアミドPA MACMI/12は、表2において本発明による実施例1ないし5に対する成分(A)として使用した。異なるノルボルネン割合を有するノルボルネン/エテンコポリマー(Topasタイプ、表1も参照されたし)は、成分(B)(シクロオレフィンコポリマー)として使用した。実施例1〜5は、光透過率およびヘーズの両方に対して非常に良好な光学特性を示しており、さらに未変性PA MACMI/12、その吸水率は4.0重量%であるが、と比べて低減した吸水率を示している。
【0059】
本発明による実施例6は、異なる非晶質ポリアミド(A)、その未変性の吸水率は4重量%であり、および別の好適なシクロオレフィンコポリマー(B)を含有しており、それもまた非常に良好な光学特性を示している。
【0060】
すべてのシクロオレフィンコポリマーが、本発明に好適であるというわけではない、ということが表2からまた理解できる。Topas8007(約36モル%ノルボルネン、表1参照)をノルボルネン/エテンコポリマーとしている比較例7は、55%のヘーズを有しており、低すぎるシクロオレフィン割合の結果として高すぎる不透明性を示している。
【0061】
【表3】
【0062】
PA 6I/6T/MACMI/MACMT/PACMI/PACMT/12(ヘキサメチレンジアミンを含有する)を使用した、比較例8〜15における光透過率は、わずか約40%と50%の間の値にあるに過ぎず、そして、100%のヘーズを有しており、これらの混合物は完全に不透明である。このようなポリアミド成形材料は、光透過率やヘーズといった光学特性が重要な用途には不適当である。
【0063】
表2および3における実験は、本発明に従い良好な光学特性を達成するために、両成分(A)および(B)が、好適なものでなければならないということをみごとに示している。未変性PA 6I/6T/MACMI/MACMT/PACMI/PACMT/12の吸水率は、8.8重量%である。この省略形PACMは、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタンを表している。
【0064】
【表4】
【0065】
ポリアミドPA MACM12を使用した表4からの比較例16〜19は、たかだか70%と75%の間の低い光透過率および50ないし80%の高いヘーズを示している。このようなポリアミド成形材料は、光透過率やヘーズといった光学特性が重要な用途には不適当である。未変性PA MACM12の吸水率は、3.0重量%である。
【0066】
行われた実験の実施例および比較例は、請求項1の特性と境界に対する良い実例および裏付けである。本発明を使用して、良好な光学特性および減少した吸水率の要求を同時に満たすポリアミド−COC混合物を提供することができる。