(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流の電流が供給され磁界を発生する送信コイル(12)と、前記磁界中を被検査品(1)が移動する際に前記磁界の変動を検出する受信コイル(13)と、を備え、前記受信コイルの出力信号に基づいて前記被検査品に含まれる金属を検出する金属検出機(10)であって、
前記受信コイルの出力信号の位相を示す受信信号位相を検出する受信信号位相検出手段(37a)と、
前記送信コイルが発生する磁界を検出する磁界検出手段(2、41)と、
前記磁界検出手段が検出した磁界の位相(θn)と予め求められた基準位相(θa)との位相差(θd)を算出する位相差算出手段(48)と、
前記位相差算出手段が算出した位相差に基づいて前記受信信号位相を補正する受信信号位相補正手段(37)と、
前記受信信号位相補正手段が前記受信信号位相を補正した信号に基づいて前記被検査品に金属が含まれているか否かを判定する判定手段(17a)と、
を備えたことを特徴とする金属検出機。
前記磁界検出手段は、前記送信コイルを含む電流経路(5)から所定の距離をおいて前記電流経路に生じる磁界を検出する磁界検出素子(65)であることを特徴とする請求項1に記載の金属検出機。
前記直流成分重畳手段は、前記電流経路の一部に代えて、前記送信コイルに直列接続されたインピーダンス素子に流れる電流に前記直流成分を重畳するものであることを特徴とする請求項3に記載の金属検出機。
前記電流検出手段は、前記送信コイルを含む電流経路(3)と前記検知インピーダンス素子との間に変圧器(71)をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の金属検出機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、製品のライフサイクルの短縮化、消費者の嗜好の多様化などの理由により多品種少量生産化が進み、食品や衣類等の製造ラインでは段取り替えが頻繁に行われている。これに加え、特に食品の製造ラインでは、厳格な衛生管理や品質管理が必要とされるので、定期的に長時間にわたって製造装置の清掃が行われている。そのため、このような製造ラインに設置された従来の金属検出機では、段取り替えや清掃を行う時間中は稼働が停止され、稼働停止期間の前後で周囲温度が大きく変動してしまう。
【0007】
しかしながら、従来の金属検出機は、前述のように、過去5回分のワーク位相の移動平均の変化量に基づいて位相変化量を求め、ワーク位相を補正する構成となっているので、稼働を再開する度に基準ワーク位相を求める作業を実施しなければならず、作業が煩雑になるという課題があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品の位相を容易に補正することができる金属検出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る金属検出機は、交流の電流が供給され磁界を発生する送信コイル(12)と、前記磁界中を被検査品(1)が移動する際に前記磁界の変動を検出する受信コイル(13)と、を備え、前記受信コイルの出力信号に基づいて前記被検査品に含まれる金属を検出する金属検出機(10)であって、前記受信コイルの出力信号の位相を示す受信信号位相を検出する受信信号位相検出手段(37a)と、前記送信コイルが発生する磁界を検出する磁界検出手段(2、41)と、前記磁界検出手段が検出した磁界の位相(θn)と予め求められた基準位相(θa)との位相差(θd)を算出する位相差算出手段(48)と、前記位相差算出手段が算出した位相差に基づいて前記受信信号位相を補正する受信信号位相補正手段(37)と、前記受信信号位相補正手段が前記受信信号位相を補正した信号に基づいて前記被検査品に金属が含まれているか否かを判定する判定手段(17a)と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係る金属検出機は、送信コイルが発生する磁界の位相と予め求められた基準位相との位相差を算出し、算出した位相差に基づいて受信信号位相を補正するので、位相変化の支配的な要因である送信コイルの磁界の位相変化に基づいて受信信号位相を補正することができる。
【0011】
そのため、本発明の請求項1に係る金属検出機は、稼働停止期間の前後で周囲温度が大きく変動したとしても、従来のもののように、稼働を再開する度に基準ワーク位相を求める作業を実施する必要がない。したがって、本発明の請求項1に係る金属検出機は、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品の位相を容易に補正することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る金属検出機は、前記磁界検出手段は、前記送信コイルを含む電流経路(5)から所定の距離をおいて前記電流経路に生じる磁界を検出する磁界検出素子(65)である構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項2に係る金属検出機は、電流経路と磁界検出手段との間を絶縁し、外来電磁波による同相雑音の影響を低減することができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る金属検出機は、前記送信コイルに電流を供給する電流経路の一部に直流成分を重畳する直流成分重畳手段(80)と、前記直流成分の温度変化を検出する温度変化検出手段(83)と、前記温度変化検出手段が検出した温度変化に基づいて前記受信信号位相を補正する受信信号位相補正手段(63)と、をさらに備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項3に係る金属検出機は、周囲温度が大きく変動したとしても、その影響を軽減することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る金属検出機は、前記直流成分重畳手段は、前記電流経路の一部に代えて、前記送信コイルに直列接続されたインピーダンス素子に流れる電流に前記直流成分を重畳するものである構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項4に係る金属検出機は、周囲温度が大きく変動したとしても、その影響を軽減することができる。
【0018】
本発明の請求項5に係る金属検出機は、前記磁界検出手段は、前記磁界が前記送信コイルに流れる電流に比例することを利用して前記磁界を検出する電流検出手段であり、前記位相差算出手段は、前記電流検出手段が検出した電流の位相と前記基準位相との位相差を算出するものである構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項5に係る金属検出機は、送信コイルに流れる電流を検出し、検出した電流の位相と基準位相との位相差に基づいて、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品の位相を容易に補正することができる。
【0020】
本発明の請求項6に係る金属検出機は、前記電流検出手段は、前記送信コイルに流れる電流を検知する検知インピーダンス素子(2)を含み、前記位相差算出手段は、前記検知インピーダンス素子の両端の電圧に基づいて前記送信コイルに流れる電流の位相と前記基準位相との位相差を算出するものである構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の請求項6に係る金属検出機は、検知インピーダンス素子の両端の電圧に基づいて、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品の位相を容易に補正することができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る金属検出機は、前記電流検出手段は、前記送信コイルを含む電流経路(3)と前記検知インピーダンス素子との間に変圧器(71)をさらに備えた構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項7に係る金属検出機は、電流経路と磁界検出手段との間を絶縁し、外来電磁波による同相雑音の影響を低減することができる。
【0024】
本発明の請求項8に係る金属検出機は、前記検知インピーダンス素子の温度を計測する温度計測手段(61)と、前記温度計測手段が検出した温度に基づいて前記受信信号位相を補正する受信信号位相補正手段(63)と、をさらに備えた構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明の請求項8に係る金属検出機は、検知インピーダンス素子自体の温度変化による検出誤差の影響を軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品の位相を容易に補正することができるという効果を有する金属検出機を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明に係る金属検出機の一実施形態における構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態における金属検出機10は、発振器11、検知インピーダンス素子2、送信コイル12、受信コイル13、可変抵抗14、位置検出器15及び16、制御部17、操作部18、表示部19、位相補正装置20を備えている。この金属検出機10は、例えば食品や衣類等の被検査品1が金属を含んでいるか否かを検査するものである。
【0030】
発振器11は、送信コイル12に直列接続された検知インピーダンス素子2を介し、所定周波数の交流電流を送信コイル12に供給するようになっている。周波数は、例えば数10kHz〜10MHz程度であり、被検査品1の特性や、検出対象の磁性金属、非磁性金属の検出に最適な周波数に設定される。
【0031】
送信コイル12は、発振器11から供給された交流電流による磁界を、被検査品1が搬送される搬送路(図示省略)内に発生するようになっている。その結果、被検査品1の搬送路内に交番磁界が形成される。
【0032】
受信コイル13は、送信コイル12の対向位置に設けられ、差動接続された受信コイル13a及び13bを有し、送信コイル12が発生した磁界中を被検査品1が移動する際に磁界の変動を検出するようになっている。
【0033】
受信コイル13a及び13bの各一端は互いに接続され、各他端は可変抵抗14に接続されている。この可変抵抗14の可変端子から受信コイル13の出力信号が取り出されるようになっていて、受信コイル13の出力信号が同期検波器32及び33に対して適切なレベルになるように可変抵抗14の可変端子の摺動位置が調整されている。なお、送信コイル12が発生した磁界中に被検査品1がないときの受信コイル13の出力信号が0になるように調整しておくとよい。
【0034】
位置検出器15及び16は、送信コイル12及び受信コイル13の両端近傍位置に配置され、搬送路上を搬送される被検査品1を検出するようになっている。具体的には、位置検出器15は、搬送路の入口側に配置され、被検査品1が送信コイル12及び受信コイル13に接近したことを示す信号を制御部17に出力するようになっている。また、位置検出器16は、搬送路の出口側に配置され、被検査品1が送信コイル12及び受信コイル13から離れたことを示す信号を制御部17に出力するようになっている。
【0035】
制御部17は、金属検出機10の全体の動作を制御するCPU及びこのCPUを機能させるためのプログラムを記憶するROM、RAM等で構成された制御回路を備えている。
【0036】
また、制御部17は、判定部17aを備えている。判定部17aは、位相補正装置20の出力信号を入力し、予め定められた合否判定の閾値に基づいて、被検査品1に金属片が含まれているか否かを判定するようになっている。そして、制御部17は、判定部17aの判定結果を表示部19に表示する表示制御を行うようになっている。
【0037】
操作部18は、キーボードやダイヤルのような入力デバイス、試験条件等を表示するディスプレイ、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成され、各試験条件の入力や、表示部19の表示内容を設定するため、試験者が操作するものである。試験条件としては、例えば、発振器11の周波数の設定、制御部17に対して金属片の有無を判定するための閾値の設定等がある。
【0038】
表示部19は、例えば液晶ディスプレイで構成され、被検査品1に金属片が含まれているか否かの判定結果や、受信信号のレベル等を表示するようになっている。
【0039】
位相補正装置20は、受信側に設けられた受信側位相補正部30と、送信側に設けられた送信側位相補正部40と、を備えている。
【0040】
まず、受信側位相補正部30の構成について説明する。受信側位相補正部30は、同期検波器32及び33、π/2移相器34、BPF(バンドパスフィルタ)35及び36、位相補正部37を備えている。なお、同期検波器32及び33の前段に、アナログ信号からデジタル信号に変換する回路を設けてもよい。
【0041】
同期検波器32及び33は、例えば、ミキサやLPF(ローパスフィルタ)等をそれぞれ備え、可変抵抗14の可変端子の出力信号を同期検波し、互いに直交するX軸方向のX成分と、Y軸方向のY成分とに分離するようになっている。
【0042】
具体的には、同期検波器32は、発振器11と、可変抵抗14の可変端子とに接続され、発振器11の出力信号に同期させて可変抵抗14の出力信号(すなわち受信コイル13の出力信号)を同期検波するようになっている。そして、同期検波器32は、X軸方向のX成分である信号成分RxをBPF35に出力するようになっている。
【0043】
一方、同期検波器33は、π/2移相器34と、可変抵抗14の可変端子とに接続され、π/2移相器34の出力に同期させて可変抵抗14の出力信号(すなわち受信コイル13の出力信号)を同期検波するようになっている。そして、同期検波器33は、Y軸方向のY成分である信号成分RyをBPF36に出力するようになっている。
【0044】
π/2移相器34は、発振器11に接続され、発振器11の出力信号の位相をπ/2ラジアン移相して同期検波器33に出力するようになっている。
【0045】
BPF35及び36は、それぞれ、同期検波器32及び33が出力する信号成分Rx及びRyから不要成分を除去した信号成分を取り出し、信号成分Dx及びDyとして位相補正部37に出力するようになっている。
【0046】
位相補正部37は、位相を検出する受信信号位相検出手段としての位相検出部37aを備えている。位相検出部37aは、BPF35及び36が出力する信号成分Dx及びDyに基づいて、受信コイル13の出力信号の位相を検出するようになっている。そして、位相補正部37は、位相検出部37aが検出した位相を補正するようになっている。すなわち、位相補正部37は、受信信号位相補正手段を構成する。
【0047】
次に、送信側位相補正部40の構成について説明する。送信側位相補正部40は、電流検出部41、同期検波器43及び44、π/2移相器45、位相算出部46、位相記憶部47、位相差算出部48を備えている。なお、同期検波器43及び44の前段に、電流検出部41の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する回路を設けてもよい。
【0048】
電流検出部41は、例えば
図2に示すように、検知インピーダンス素子2に接続された電圧出力調整部41aを備えている。電圧出力調整部41aは、図示のように、抵抗と増幅器が組み合わされて構成され、検知インピーダンス素子2の両端の電圧を所望の電圧値に調整して同期検波器43及び44(
図1参照)に出力するようになっている。
【0049】
ここで、検知インピーダンス素子2は、送信コイル12に流れる電流を電圧に変換するものである。すなわち、検知インピーダンス素子2及び電流検出部41は、電流検出手段を構成している。また、検知インピーダンス素子2及び電流検出部41は、送信コイル12に流れる電流に比例することを利用して磁界を検出することができるので、磁界検出手段を構成するものでもある。
【0050】
同期検波器43及び44は、例えば、ミキサやLPF(ローパスフィルタ)等をそれぞれ備え、電流検出部41の出力信号を同期検波し、互いに直交するX軸方向のX成分と、Y軸方向のY成分とに分離するようになっている。
【0051】
具体的には、同期検波器43は、発振器11と、電流検出部41の出力端子とに接続され、発振器11の出力信号に同期させて電流検出部41の出力信号(すなわち送信コイル12に流れる電流)を同期検波するようになっている。そして、同期検波器43は、X軸方向のX成分である信号成分Mxを位相算出部46に出力するようになっている。
【0052】
一方、同期検波器44は、π/2移相器45と、電流検出部41の出力端子とに接続され、π/2移相器45の出力に同期させて電流検出部41の出力信号(すなわち送信コイル12に流れる電流)を同期検波するようになっている。そして、同期検波器44は、Y軸方向のY成分である信号成分Myを位相算出部46に出力するようになっている。
【0053】
π/2移相器45は、発振器11に接続され、発振器11の出力信号の位相をπ/2ラジアン移相して同期検波器44に出力するようになっている。
【0054】
位相算出部46は、同期検波器43及び44がそれぞれ出力する信号成分Mx及びMyに基づいて、送信コイル12に流れる電流の位相θnを算出するようになっている。
【0055】
位相記憶部47は、位相を補正するための基準位相を決めた際の送信コイル12の電流位相を基準電流位相θaとして記憶するようになっている。
【0056】
位相差算出部48は、位相算出部46が算出した電流の位相θnと、位相記憶部47から読み出した基準電流位相θaとから補正位相θdを算出し、補正位相θdのデータを位相補正部37に出力するようになっている。すなわち、位相差算出部48は、位相差算出手段を構成する。
【0057】
次に、位相補正部37、位相算出部46及び位相差算出部48の機能について、
図3〜
図6に基づき具体的に説明する。
【0058】
図3は、位相補正部37がBPF35及び36から入力する信号成分Dx及びDyに基づいて描かれる被検査品1のリサージュ波形51を示している。リサージュ波形51は長軸52を有し、長軸52とX軸とのなす角度が被検査品1の位相θとして表されている。
【0059】
図4は、位相算出部46が同期検波器43及び44から入力する、送信コイル12に流れる電流の同期検波後の波形(以下「電流検波後波形」という)53を示している。位相算出部46は、電流検波後波形53の信号成分Mx及びMyに基づき、[数1]により電流検波後波形53の位相θnを算出するようになっている。位相θnは、電流検波後波形53とX軸とのなす角度である。
【0061】
図5は、位相差算出部48が、位相算出部46から入力する電流検波後波形53の位相θnのデータと、位相記憶部47から入力する基準電流位相θaのデータとを示している。基準電流位相θaは、予め基準として定められた基準被検査品を搬送路で搬送した場合に、送信コイル12に流れる電流の波形54とX軸とのなす角度である。位相差算出部48は、[数2]により補正位相θdを算出するようになっている。この補正位相θdは、例えば温度上昇により、基準電流位相θaから位相θnに変化した場合の変化量を示し、後述するように、位相補正部37での位相補正に用いられる。
【0063】
図6は、被検査品1のリサージュ波形51と、基準電流位相θaのデータを取得したときの被検査品1のリサージュ波形55とを、I相軸及びQ相軸で示している。リサージュ波形55は、長軸56を有し、長軸56とI相軸とのなす角度が被検査品1の位相θ1として表されている。
【0064】
本発明の発明者は、時間の経過とともに発生する位相のズレの改善検討を重ねた結果、位相のズレは送信側の電流の位相変化によるものが支配的であり、受信側の影響は無視できることを見出した。したがって、リサージュ波形51の位相θと、リサージュ波形55の位相θ1との位相差を、位相差算出部48が算出した位相θdとみなすことができる。
【0065】
そこで、位相補正部37は、位相差算出部48から位相θdのデータを取得して、例えば回転行列により、信号成分Dx及びDyで定まるリサージュ波形51の位相θを補正するようになっている。例えば、位相補正部37は、[数3]によりI相成分及びQ相成分の各位相を補正するようになっている。ここで、右辺第1項は回転行列を示す。位相が補正されたI相成分及びQ相成分の各データは、制御部17に出力される。
【0067】
[数3]を書き換えると[数4]が得られる。
【0069】
次に、本実施形態における金属検出機10の動作について説明する。
【0070】
まず、被検査品1の検査を行う前に、発振器11からの電流を送信コイル12に供給した状態で、基準位相を決めた際の送信コイル12の電流位相を位相記憶部47に記憶する。以降、被検査品1を搬送路で搬送する。
【0071】
次に、受信側位相補正部30における動作を説明する。
【0072】
受信コイル13の各コイル13a、13bは、送信コイル12によって生成された磁界を検出して誘起電圧を生成する。ここで、各コイル13a、13bは差動接続されているので、誘起電圧は互いに相殺され、出力信号の信号レベルは0である。
【0073】
したがって、搬送路上を搬送される被検査品1に金属片が含まれない状態においては、受信コイル13の出力信号は小さい。しかしながら、被検査品1に金属片が含まれると、一方の受信コイル13aの誘起電圧に金属片の大きさに対応した変化分+ΔEが生じる。巻き方向が異なる他方の受信コイル13bの誘起電圧にも金属片の大きさに対応した変化分−ΔEが生じる。その結果、受信コイル13の出力信号には(+2ΔE)の信号レベルが現れる。
【0074】
同期検波器32は、発振器11の出力信号に同期させて受信コイル13の出力信号を同期検波し、同期検波して得た信号成分RxをBPF35に出力する。
【0075】
同期検波器33は、π/2移相器34の出力に同期させて受信コイル13の出力信号を同期検波し、同期検波して得た信号成分RyをBPF36に出力する。
【0076】
BPF35及び36は、それぞれ、同期検波器32及び33が出力する信号成分Rx及びRyから不要成分を除去した信号を取り出し、信号成分Dx及びDyとして位相補正部37に出力する。
【0077】
位相補正部37の位相検出部37aは、BPF35及び36が出力する信号成分Dx及びDyに基づいて、受信コイル13の出力信号の位相を検出する。なお、位相補正部37による位相補正の動作は後述する。
【0078】
次に、送信側位相補正部40における動作を説明する。
【0079】
電流検出部41は、送信コイル12に流れる電流を検出し、同期検波器43及び44に出力する。
【0080】
同期検波器43は、発振器11の出力信号に同期させて電流検出部41の出力信号を同期検波し、同期検波して得た信号成分Mxを位相算出部46に出力する。
【0081】
同期検波器44は、π/2移相器45の出力に同期させて電流検出部41の出力信号を同期検波し、同期検波して得た信号成分Myを位相算出部46に出力する。
【0082】
位相算出部46は、同期検波器43及び44がそれぞれ出力する信号成分Mx及びMyに基づいて、送信コイル12に流れる電流の位相θnを[数1]により算出する。
【0083】
位相差算出部48は、位相算出部46から入力する電流検波後波形53の位相θnのデータと、位相記憶部47から入力する基準電流位相θaのデータとから、[数2]により補正位相θdを算出する。
【0084】
位相補正部37は、位相差算出部48から入力する位相θdのデータに基づいて、位相検出部37aが検出した受信コイル13の出力信号の位相に対し、[数4]により位相補正を行って、位相が補正されたI相成分及びQ相成分の各データを制御部17に出力する。
【0085】
制御部17の判定部17aは、位相補正部37から位相補正後のI相成分及びQ相成分の各データを入力し、合否判定の閾値に基づいて被検査品1に金属片が含まれているか否かを判定する。そして、制御部17は、判定部17aの判定結果を表示部19に表示制御する。なお、制御部17は、位置検出器15及び16の出力信号に同期させることにより、被検査品1に含まれる金属片の位置を表示部19に表示させることもできる。
【0086】
以上のように、本実施形態における金属検出機10は、送信コイル12が発生する磁界の位相θnと予め求められた基準位相θaとの位相差θdを算出し、算出した位相差θdに基づいて受信信号位相を補正するので、位相変化の支配的な要因である送信コイル12の磁界の位相変化に基づいて受信信号位相を補正することができる。
【0087】
そのため、本実施形態における金属検出機10は、稼働停止期間の前後で周囲温度が大きく変動したとしても、従来のもののように、稼働を再開する度に基準ワーク位相を求める作業を実施する必要がない。
【0088】
したがって、本実施形態における金属検出機10は、稼働が停止された場合でも稼働の再開時に被検査品1の位相を容易に補正することができる。
【0089】
なお、前述の実施形態では、電流検出手段としての検知インピーダンス素子2及び電流検出部41が、送信コイル12に流れる電流を直接検出する例を挙げて説明した。以下、電流検出手段の変形例を説明する。
【0090】
(第1の変形例)
電流検出手段の第1の変形例を
図7に示す。なお、この変形例では、発振器11と送信コイル12との接続方法は
図1とは異なる。すなわち、発振器11は、変圧器57を介して送信コイル12に接続されている。変圧器57は、1次側コイル57a及び2次側コイル57bを有する。1次側コイル57aは、発振器11に直列接続されている。2次側コイル57bは、送信コイル12に直列接続されている。
【0091】
図7に示した電流検出手段は、変圧器71、検知インピーダンス素子2、電流検出部41を備えている。変圧器71は、送信コイル12を含む電流経路3と検知インピーダンス素子2との間に設けられている。
【0092】
変圧器71は、1次側コイル71a及び2次側コイル71bを有する。1次側コイル71aと2次側コイル71bの巻数比は1:n(任意の数)である。1次側コイル71aは、送信コイル12に直列接続され、電流経路3に含まれている。2次側コイル71bは、検知インピーダンス素子2の両端に接続されている。なお、電流経路3は、変圧器57の2次側コイル57b、送信コイル12、変圧器71の1次側コイル71aを含む。
【0093】
この構成により、第1の変形例の電流検出手段は、電流経路3との間を絶縁し、外来電磁波による同相雑音の影響を低減することができ、より正確な位相の算出に資することができる。
【0094】
また、この構成により、位相差算出部48(
図1参照)は、変圧器71を介し、電圧出力調整部41aが出力する出力電圧に基づいて、検知インピーダンス素子2に流れる電流の位相と基準位相との位相差を算出することができる。
【0095】
なお、変圧器71に代えて、変圧器71と機能的に等価な変流器を備える構成としても同様な効果が得られる。
【0096】
(第2の変形例)
電流検出手段の第2の変形例を
図8に示す。なお、第1の変形例と同様な構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図8に示した第2の変形例の電流検出手段は、検知インピーダンス素子2、電流検出部41、サーミスタ61、サーミスタインタフェース(IF)62、位相温度補正部63を備えている。
【0098】
検知インピーダンス素子2は、電流経路4に含まれている。すなわち、電流経路4は、変圧器57の2次側コイル57b、送信コイル12、検知インピーダンス素子2を含む。
【0099】
サーミスタ61は、検知インピーダンス素子2の温度(表面温度)を検出し、サーミスタIF62に出力するようになっている。なお、サーミスタ61に代えて、例えば、白金抵抗、温度センサIC等を用いてもよい。
【0100】
サーミスタIF62は、サーミスタ61が検出した温度を電圧値に変換し、位相温度補正部63に出力するようになっている。
【0101】
位相温度補正部63は、検知インピーダンス素子2の温度変化と位相変化との関係が予め求められたテーブルを有している。そして、位相温度補正部63は、サーミスタ61が検出した温度に基づいて、位相検出部37aが検出した受信コイル13の出力信号の位相を補正するための補正値を求め、そのデータを位相補正部37に出力するようになっている。この位相温度補正部63は、受信信号位相補正手段を構成する。
【0102】
この構成により、第2の変形例の電流検出手段は、検知インピーダンス素子2自体の温度変化による電流検出値の変動の影響を軽減することができ、より正確な位相の算出に資することができる。
【0103】
(第3の変形例)
電流検出手段の第3の変形例を
図9に示す。なお、第1の変形例と同様な構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図9に示した第3の変形例の電流検出手段は、磁界検出素子65、電圧変換回路66、電流検出部41を備えている。
【0105】
図9において、電流経路5は、変圧器57の2次側コイル57b、送信コイル12を含む。
【0106】
磁界検出素子65は、送信コイル12と変圧器57の2次側コイル57bとの間の電流経路5を構成する接続線から所定の距離をおいて配置(接続線の近傍に配置)され、その接続線が発生する磁界(磁気)を検出するようになっている。この磁界検出素子65は、例えば、磁気抵抗素子やホール素子で構成される。なお、接続線の近傍ではなく、送信コイル12の近傍に磁界検出素子65を配置し、送信コイル12が発生する磁界(磁気)を検出するよう構成してもよい。
【0107】
電圧変換回路66は、磁界検出素子65の出力信号を電圧に変換し、電圧出力調整部41aに出力するようになっている。
【0108】
この構成により、第3の変形例の電流検出手段は、電流経路5との間を絶縁し、外来電磁波による同相雑音の影響を低減することができ、より正確な位相の算出に資することができる。
【0109】
(第4の変形例)
電流検出手段の第4の変形例を
図10に示す。なお、第1の変形例と同様な構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0110】
図10に示した第4の変形例の電流検出手段は、直流電流重畳回路80、電流経路6の一部で構成されたインピーダンス82、電流検出部41、温度変化検出部83、位相温度補正部63を備えている。インピーダンス82の両端が電圧出力調整部41aに接続されている。
【0111】
電流経路6は、変圧器57の2次側コイル57b、送信コイル12、直流電流重畳回路80のコンデンサ、インピーダンス82を含む。
【0112】
直流電流重畳回路80は、直流電流源81、インダクタンス、コンデンサを含み、インピーダンス82に流入する交流電流に直流成分の電流を重畳するようになっている。この直流電流重畳回路80は、直流成分重畳手段を構成する。
【0113】
インピーダンス82は、インダクタンス及び抵抗を含む。なお、インピーダンス82に代えて、電流経路6内にインピーダンス素子を設け、そのインピーダンス素子の両端を電圧出力調整部41aの入力部に接続する構成としてもよい。
【0114】
この構成において、電圧出力調整部41aは、直流成分によるオフセット電圧でオフセットされた交流電圧を出力することとなる。周囲温度が変化すると、周囲温度に従ってインピーダンス82に流れる直流成分が変動するので、電圧出力調整部41aの出力のオフセット電圧が変動する。
【0115】
温度変化検出部83は、電圧出力調整部41aのオフセット電圧の変動を検出することにより、周囲温度の変化を検出するようになっている。この温度変化検出部83は、温度変化検出手段を構成する。
【0116】
位相温度補正部63は、電圧出力調整部41aのオフセット電圧の変化と位相変化との関係が予め求められたテーブルを有している。そして、位相温度補正部63は、そのテーブルに基づいて、位相検出部37aが検出した受信コイル13の出力信号の位相を補正するための補正値を求め、そのデータを位相補正部37に出力するようになっている。
【0117】
この構成により、第4の変形例の電流検出手段は、周囲温度の変動の影響を軽減することができ、より正確な位相の算出に資することができる。