特許第6374761号(P6374761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6374761-再剥離性粘着シート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374761
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】再剥離性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20180806BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20180806BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20180806BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C09J7/20
   C09J7/21
   C09J7/38
   C09J133/02
   C09J133/06
   C09J11/06
   C09J163/00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-221531(P2014-221531)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-88962(P2016-88962A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】戸田 航介
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−073920(JP,A)
【文献】 特開2012−177036(JP,A)
【文献】 特開2007−138057(JP,A)
【文献】 特開2002−235061(JP,A)
【文献】 特開2006−199851(JP,A)
【文献】 特開平05−320611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層を有する再剥離性粘着シートであって、
前記粘着剤層が、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性であり、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)とカルボキシル基含有不飽和モノマーに由来する構成単位(a2)とを含むアクリル系共重合体(A1)のエマルション(A)、
アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性である、アクリル系共重合体(B1)のエマルション(B)、
架橋剤(C)、及び
pKaが10.0以上の架橋促進剤(D)
を含有する水分散型粘着剤組成物から形成される層である、再剥離性粘着シート。
【請求項2】
アクリル系共重合体(B1)が、親水基含有不飽和モノマーに由来する構成単位(b0)を含む、請求項1に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項3】
成分(D)の含有量が、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、0.30〜10質量部である、請求項1又は2に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項4】
成分(C)の含有量が、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項5】
成分(C)が、エポキシ系架橋剤及びカルボジイミド系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項6】
成分(D)が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、及び1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]ノネン−5から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
【請求項7】
前記基材が紙基材である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着ラベル、マスキングテープ又はシート、表面保護フィルム等の粘着剤層を有する粘着シートは、被着体に貼り付け、一定時間経過後に、当該被着体から剥す必要が生じる場合が少なくない。被着体から粘着シートを剥がす際に、粘着剤層の一部が被着体に残存することがある。また、粘着シートの基材や被着体が紙の場合、粘着シートを被着体から剥がす際に、粘着シートの基材又は被着体が破れてしまうことが多い。
上記のような問題が生じることなく、粘着シートを被着体から容易に剥離できるように、粘着剤層を形成する粘着剤として、架橋剤を添加し、凝集力を高くして粘着力を低下させた再剥離型粘着剤が多く提案されている。特に、再剥離型粘着剤においても、近年の環境衛生上の観点から、溶剤を用いない水分散型粘着剤組成物を用いた粘着シートへの志向が強く、種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の単位を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体のエマルション、カルボキシル基含有不飽和単量体単位を含むアルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性(メタ)アクリル酸共重合体のエマルション、及び架橋剤を含有する水分散型粘着剤組成物から形成され、所定のゲル分率を有する粘着剤層を、表面基材に形成してなる再剥離性粘着シートが開示されている。
特許文献1には、当該再剥離性粘着シートが、常温での保存での経時による粘着力の上昇を抑え、再剥離性に優れるとの効果を有する旨の開示がされている。
【0004】
また、印刷ラベル等の粘着シートを高速ラベリングマシンを用いて被着体に貼付される場合もある。このような高速ラベリングマシンを用いて貼付する粘着シートには、機械的強度が求められるが、水分散型粘着剤組成物を用いた粘着シートは、この機械的強度が劣る傾向にある。
例えば、特許文献2には、所定の不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合する前もしくは乳化重合中に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも一方を配合して得られたアクリル系エマルション型共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物を用いて形成されてなる粘着剤層を有する粘着シートが開示されている。
特許文献2には、当該粘着シートが有する粘着剤層の機械的強度が優れる旨の開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−73920号公報
【特許文献2】特開2010−254961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に、粘着シートは、作製後に、当該粘着シートが有する粘着剤層内の重合性成分の架橋を進行させ、設計通りの粘着力、機械的強度、及び再剥離性を有する粘着特性を発現させるためには、エージング(熟成)期間を設ける必要がある。一般的に、作製後の粘着シートは、エージング期間の確保のため、倉庫等に一定期間保管する場合が多い。
ここで、本発明者らの検討によれば、特許文献1及び2に開示された粘着シートは、エージングを行う環境が、例えば0〜10℃程度の低温環境下である場合、エージング期間を十分に確保しても、得られる粘着シートの粘着剤層の架橋が十分に進行せず、上述の粘着特性が向上しない場合があることが分かった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであって、エージングを低温環境下で行っても、粘着剤層の架橋が十分に進行し、良好な粘着力を具えると共に、優れた機械的強度及び再剥離性を有する再剥離性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のアクリル系共重合体のエマルション及び架橋剤と共に、pKa(酸解離定数)が所定値以上の硬化促進剤を含む水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する再剥離性粘着シートが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔7〕を提供するものである。
〔1〕基材上に粘着剤層を有する再剥離性粘着シートであって、
前記粘着剤層が、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性であり、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)とカルボキシル基含有不飽和モノマーに由来する構成単位(a2)とを含むアクリル系共重合体(A1)のエマルション(A)、
アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性である、アクリル系共重合体(B1)のエマルション(B)、
架橋剤(C)、及び
pKaが10.0以上の架橋促進剤(D)
を含有する水分散型粘着剤組成物から形成される層である、再剥離性粘着シート。
〔2〕アクリル系共重合体(B1)が、親水基含有不飽和モノマーに由来する構成単位(b0)を含む、上記〔1〕に記載の再剥離性粘着シート。
〔3〕成分(D)の含有量が、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、0.30〜10質量部である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の再剥離性粘着シート。
〔4〕成分(C)の含有量が、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
〔5〕成分(C)が、エポキシ系架橋剤及びカルボジイミド系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
〔6〕成分(D)が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7及び1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]ノネン−5から選ばれる1種以上を含む、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
〔7〕前記基材が紙基材である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の再剥離性粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再剥離性粘着シートは、エージングを5℃前後の低温環境下で行っても、粘着剤層の架橋が十分に進行し、良好な粘着力を具えると共に、優れた機械的強度及び再剥離性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一態様の再剥離性粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、例えば「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、本明細書において、「低温環境下」とは、5℃前後(具体的には0〜10℃)の環境下のことを意味し、「常温環境下」とは、25℃前後(具体的には15〜35℃)の環境下のことを意味する。
【0013】
〔再剥離性粘着シートの構成〕
本発明の再剥離型粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう)は、基材上に粘着剤層を有するものであれば、その構成は特に限定されない。
例えば、図1は、本発明の一態様の再剥離性粘着シートの断面図である。
本発明の一態様の粘着シートは、図1(a)に示すような、基材12の一方の表面上に粘着剤層11が設けられた基材付き粘着シート1aや、図1(b)に示すような、粘着剤層11上に、さらに剥離シート13を設けた粘着シート1b等が挙げられる。
また、本発明の一態様の粘着シートは、図1(c)に示すような、基材12の両方の表面上にそれぞれ粘着剤層11a、11b及び剥離シート13a、13bを積層した両面粘着シート1cであってもよい。
【0014】
(基材)
本発明の一態様の粘着シートが有する基材としては、当該粘着シートの用途に応じて適宜選択され、樹脂フィルム、紙基材、ラミネート紙、金属蒸着体等が挙げられる。
当該樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルフィド、ポリ(4−メチルペンテン−1)ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等からなるフィルムや、ポリオレフィン系樹脂等により製造される合成紙等が挙げられる。
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、これら樹脂フィルムの積層体や発泡体を用いてもよい。
紙基材としては、例えば、上質紙、コート紙、グラシン紙等が挙げられる。
ラミネート紙としては、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたものが挙げられる。
【0015】
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、紙基材を用いたとしても、本発明の粘着シートは優れた再剥離性を有するため、当該粘着シートを被着体から剥離する際に、当該紙基材の破断が生じ難い。
本発明の一態様の粘着シートが有する基材の厚さは、用いる基材の種類によって適宜選択されるが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜120μmである。
【0016】
(剥離シート)
本発明の一態様の粘着シートで用いる剥離シートとしては、剥離シート用基材の片面又は両面に剥離剤を塗布して得られるシートが挙げられる。
当該剥離シート用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0017】
剥離シートの厚さは、特に制限は無いが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μmである。なお、剥離シート用基材としてポリエチレンテレフタレート系フィルムを用いる場合は、好ましくは10〜100μmである。
【0018】
(粘着剤層)
本発明の一態様の粘着シートの粘着剤層の厚さは、当該粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜60μm、更に好ましくは15〜40μmである。
粘着剤層の厚さが5μm以上であれば、十分な粘着性能が得られ、100μm以下であれば、粘着剤層のはみ出しを防止できる。
【0019】
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物から形成される層である。
以下、当該水分散型粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0020】
〔水分散型粘着剤組成物〕
本発明の水分散型粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性である、アクリル系共重合体(A1)のエマルション(A)(以下、「成分(A)」又は「エマルション(A)」ともいう)、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性である、アクリル系共重合体(B1)のエマルション(B)(以下、「成分(B)」又は「エマルション(B)」ともいう)、架橋剤(C)(以下、「成分(C)」ともいう)、及びpKaが10.0以上の架橋促進剤(D)(以下、「成分(D)」又は「架橋促進剤(D)」ともいう)を含有する。
また、本発明の一態様の水分散型粘着剤組成物は、必要に応じて、上記成分(A)〜(D)以外のその他の添加剤を含有してもよい。
【0021】
<エマルション(A)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、成分(A)として、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性である、アクリル系共重合体(A1)のエマルション(A)を含有する。
エマルション(A)は、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性である点で、エマルション(B)と区別される。
【0022】
本発明の一態様において、エマルション(A)の平均粒子径は、好ましくは100〜900nm、より好ましくは400〜800nm、更に好ましくは500〜700nmである。
【0023】
本発明の一態様において、エマルション(A)の含有量は、粘着剤組成物中の固形分の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、更に好ましくは90〜99.0質量%である。
【0024】
エマルション(A)を構成するアクリル系共重合体(A1)は、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)と、カルボキシル基含有不飽和モノマー(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)とを含む。
また、本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、モノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
このような他のモノマーに由来する構成単位としては、モノマー(a1’)及び(a2’)には該当しない多官能性モノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)や、モノマー(a1)及び(a2)には該当しない不飽和モノマー(a4’)に由来する構成単位(a4)等が挙げられる。
【0025】
本発明の一態様において、構成単位(a1)及び(a2)の合計含有量は、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0026】
[構成単位(a1)]
本発明の一態様において、構成単位(a1)を構成するモノマー(a1’)の炭素数は、粘着剤組成物の粘着性向上の観点から、4以上であって、好ましくは4〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜10、更に好ましくは6〜9である。
モノマー(a1’)のアルキル基の炭素数が4未満であると、アクリル系共重合体(A1)のタックが乏しくなり、粘着剤組成物の粘着性が低下する。
【0027】
モノマー(a1’)としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘着シートの初期粘着力の向上の観点から、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0028】
本発明の一態様において、構成単位(a1)の含有量は、粘着シートの初期粘着力の向上の観点から、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位の中で、最も多いことが好ましい。
具体的な構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは65〜99.6質量%、更に好ましくは75〜99.3質量%、より更に好ましくは85〜99.0質量%である。
構成単位(a1)の含有量が50質量%以上であれば、粘着シートの初期粘着力を良好とすることができる。
一方、構成単位(a1)の含有量が99.9質量%以下であれば、モノマー(a2’)に由来する構成単位(a2)の含有量を確保することができ、凝集力を向上させ、良好な粘着力を得ることができる。
【0029】
[構成単位(a2)]
構成単位(a2)が有するカルボキシル基は、粘着剤層を形成後、エージングの際に、架橋剤(C)と架橋して、粘着剤層内で網目構造を形成し、凝集力を向上させることができる。その結果、良好な粘着力を有すると共に、機械的特性及び再剥離性を向上させた粘着シートとすることができる。
【0030】
モノマー(a2’)としては、1分子中にカルボキシル基を1以上有し、且つ炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーであればよい。
具体的なモノマー(a2’)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、汎用性の観点から、エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、カルボキシル基が架橋点としての役割を担うことも考慮した場合、当該架橋点となるカルボキシル基がエマルション粒子表層に配向しやすいとの観点から、アクリル酸が更に好ましい。
【0031】
構成単位(a2)の含有量は、粘着シートの粘着力、機械的特性、及び再剥離性等の粘着特性をバランス良く向上させる観点、並びに、得られる粘着剤組成物の塗布性を良好とする観点から、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.2〜2.5質量%、更に好ましくは0.3〜2.0質量%、より更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
構成単位(a2)の含有量が0.1質量%以上であれば、架橋剤(C)と十分に架橋させることができる。また、粘着シートの粘着力、機械的特性、及び再剥離性等の粘着特性をバランス良く向上させることができる。
一方、構成単位(a2)の含有量が3.0質量%以下であれば、粘着シートの粘着力、機械的特性及び再剥離性等の粘着特性をバランス良く向上させることができると共に、粘着剤組成物の粘度を適度にし、塗布性を良好にすることができる。
【0032】
[構成単位(a3)]
本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、モノマー(a1’)及び(a2’)には該当しない多官能性モノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
多官能性モノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)は、内部架橋剤としての機能を有し、得られる粘着剤組成物の凝集力を向上させることができる。
多官能性モノマー(a3’)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの多官能モノマー(a3’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜3.0質量%、より好ましくは0〜2.0質量%、更に好ましくは0〜1.5質量%である。
構成単位(a3)の含有量が3.0質量%以下であれば、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の基材との密着性の低下を抑えると共に、再剥離性が低下する現象も防止することができる。
【0034】
[構成単位(a4)]
本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、モノマー(a1’)及び(a2’)には該当しない不飽和モノマー(a4’)に由来する構成単位(a4)を有していてもよい。
モノマー(a1’)以外の不飽和モノマー(a4’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
モノマー(a2’)以外の不飽和モノマー(a4’)としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー;酢酸ビニル、スチレン等のビニル基含有モノマー;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジ−n−オクチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジ−n−オクチル等のマレイン酸又はフマル酸エステル等が挙げられる。
これらの不飽和モノマー(a3’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
構成単位(a4)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
構成単位(a4)の含有量が30質量%以下であれば、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の基材との密着性の低下を抑えることができる共に、再剥離性が低下する現象も防止することができる。
【0037】
エマルション(A)は、上述のとおり、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性である。
そのため、アルカリ非可溶性及びアルカリ非膨潤性のエマルション(A)を形成する観点から、親水基含有不飽和モノマー由来する構成単位の含有量としては、アクリル系共重合体(A1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
なお、親水基含有不飽和モノマーが有する親水基としては、後述のモノマー(b0’)が有する親水基と同じものが挙げられる。
【0038】
[エマルション(A)の製造方法]
エマルション(A)の製造方法としては、特に制限は無く、例えば、上述のモノマーを含む単量体混合物に、乳化剤及び重合開始剤を添加し、乳化重合することで製造することができる。
なお、乳化重合において、重合安定性の観点から、単量体混合物は、乳化剤(又は乳化剤の一部)を、単量体混合物に溶解しておくか、又は、予めO/W型の乳化液の状態としておくことが好ましい。
乳化重合を行う際の手順としては、例えば、以下の(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)単量体混合物、乳化剤、水等の全量を仕込み、昇温し、水に溶かした重合開始剤を全量滴下又は分割添加して、重合する。
(2)反応容器内に水、乳化剤、単量体混合物の一部を仕込み、昇温した後、水に溶かした重合開始剤を滴下又は分割添加して重合反応を進行させた後、残りの単量体混合物を全量滴下又は分割添加して重合を継続する。
(3)反応容器内に水に溶かした重合開始剤を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物、乳化剤、及び水からなる乳化液を全量滴下又は分割添加して重合する。
【0039】
乳化剤としては、特に制限は無いが、エマルションの安定性を向上させ、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の機械安定性を良好にする観点から、アニオン系乳化剤又はノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤がより好ましい。
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
また、プロペニル基、アクリロイル基等を導入したラジカル重合性の反応性乳化剤も使用することができる。
これらの乳化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
乳化剤の添加量としては、乳化重合反応の安定性の観点、及び、未反応の乳化剤が残存することによる基材密着性や耐水白化性、及び再剥離性の低下といった弊害を防ぐ観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜12質量部、より好ましくは0.8〜8質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。
なお、乳化剤は、単量体混合物に水を加えた溶液に直接添加してもよく、予め重合容器に添加しておいてもよく、又はそれらを併用してもよい。
【0041】
重合開始剤としては、特に限定されずに、水溶性、油溶性のいずれであってもよく、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物等が挙げられ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。
これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、重合安定性に優れているという観点から、過硫酸塩又はレドックス開始剤が好ましい。
【0042】
重合開始剤の添加量としては、重合速度を速める観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.03〜4質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。
なお、重合開始剤は、予め反応容器内に加えておいてもよく、重合開始直前に加えてもよく、重合開始後に複数回に分けて加えてもよく、単量体混合物中に予め加えておいてもよく、該単量体混合物からなる乳化液を調整後、当該乳化液に加えてもよい。
【0043】
また、乳化重合時に、さらに連鎖移動剤やpH緩衝剤を添加してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等が挙げられる。
pH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0044】
乳化重合に際し、用いる水としては、イオン交換水が好ましい。
水の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは30〜400質量部、より好ましくは35〜200質量部、更に好ましくは40〜150質量部である。
【0045】
乳化重合により得られたエマルション(A)の溶液に対して、さらに、アンモニア水、各種水溶性アミン、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加して、pH5〜9(好ましくはpH6〜8.5)に調整することが好ましい。
本発明の一態様において、乳化重合により得られたエマルション(A)の溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは25〜70質量%、更に好ましくは45〜65質量%である。
本発明の一態様において、乳化重合により得られたエマルション(A)の溶液の25℃における粘度は、好ましくは20〜400mPa・s、より好ましくは30〜300mPa・s、更に好ましくは40〜200mPa・sである。
なお、本発明において、エマルション(A)の溶液の固形分濃度及び25℃における粘度は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0046】
<エマルション(B)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、成分(B)として、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性である、アクリル系共重合体(B1)のエマルション(B)を含有する。
エマルション(B)は、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性である点で、エマルション(A)と区別される。
【0047】
本発明の一態様において、エマルション(B)の含有量は、粘着剤組成物中のエマルション(A)の固形分100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.00質量部、より好ましくは0.10〜3.00質量部、更に好ましくは0.20〜2.00質量部、より更に好ましくは0.25〜1.00質量部である。
エマルション(B)の含有量を上記範囲とすることで、再剥離性を良好とすることができる。
【0048】
エマルション(B)を構成するアクリル系共重合体(B1)は、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性であるエマルション(B)を形成する観点から、親水基含有不飽和モノマー(以下、「モノマー(b0’)」ともいう)に由来する構成単位(b0)を含むことが好ましく、構成単位(b0)と共に、アルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(b1’)」ともいう)に由来する構成単位(b1)を含むことがより好ましい。
また、本発明の一態様において、アクリル系共重合体(B1)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、モノマー(b0’)及び(b1’)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
【0049】
本発明の一態様において、構成単位(b0)及び(b1)の合計含有量は、アクリル系共重合体(B1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0050】
本発明の一態様で用いるモノマー(b0’)としては、1分子中に親水基を1以上有し、且つ炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーであればよい。
モノマー(b0’)が有する親水基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、シアノ基、ピロリドン基、イソシアネート基、イミダゾール基、リン酸基、N−置換されていてもよいアミド基、N−置換されていてもよいアミノ基、スルホンアミド基等が挙げられる。
なお、モノマー(b0’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
構成単位(b0’)の含有量は、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性であるエマルション(B)を形成する観点から、アクリル系共重合体(B1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは20〜80質量%、より更に好ましくは30〜70質量%である。
【0052】
モノマー(b1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8、より更に好ましくは1〜3である。
モノマー(b1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、及び上述のモノマー(a1’)と同じものが挙げられる。
なお、モノマー(b1’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
構成単位(b1’)の含有量は、アクリル系共重合体(B1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。
【0054】
モノマー(b0’)及び(b1’)以外のモノマーとしては、例えば、モノマー(b0’)及び(b1’)には該当しない多官能性モノマー(b2’)が挙げられる。
当該多官能性モノマーとしては、上述の多官能性モノマー(a3’)と同じものが挙げられる。
なお、多官能性モノマー(b2’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
多官能性モノマー(b2’)に由来する構成単位(b2’)の含有量は、アクリル系共重合体(B1)を構成する全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0056】
エマルション(B)の製造方法としては、特に制限は無く、例えば、上述のモノマーを含む単量体混合物に、乳化剤及び重合開始剤を添加し、乳化重合することで製造することができる。
乳化重合の具体的な方法については、上述のエマルション(A)の製造方法と同じである。
なお、本発明の一態様において、エマルション(B)に該当する市販品を用いてもよい。
エマルション(B)に該当する市販品としては、例えば、東亜合成(株)製「アロンB−300K」、同「アロンA−7075」、ローム・アンド・ハース(株)製「プライマルTT−615」等が挙げられる。
【0057】
<架橋剤(C)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、架橋剤(C)を含有する。
架橋剤(C)としては、例えば、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属錯体系架橋剤、アミン系架橋剤、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明の一態様において、架橋剤(C)は、エポキシ系架橋剤及びカルボジイミド系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
エポキシ系架橋剤及びカルボジイミド系架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、エージングを行う環境が低温環境下であっても、架橋が十分に進行する。そのため、当該粘着剤層を有する粘着シートは再剥離性及び機械的強度に優れたものとなり得る。
上記観点から、エポキシ系架橋剤及びカルボジイミド系架橋剤の合計含有量は、粘着剤組成物中に含まれる成分(C)の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
【0059】
また、本発明の一態様において、架橋剤(C)は、エポキシ系架橋剤を含むことがより好ましい。
エポキシ系架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、低温環境下での架橋の進行がより促進される傾向にある。そのため、当該粘着剤層を有する粘着シートは、機械的強度が更に優れたものとなり得る。
上記観点から、エポキシ系架橋剤の含有量は、上記観点から、粘着剤組成物中に含まれる成分(C)の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
【0060】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有する化合物であることが好ましい。
このようなエポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(市販品としては、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−321」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−211」等)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−212」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−850」、「デナコールEX−851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」等)、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0061】
カルボジイミド系架橋剤としては、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する化合物であることが好ましい。
このようなカルボジイミド系架橋剤としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」(いずれも商品名、日清紡社製)等が挙げられる。
【0062】
架橋剤(C)の含有量は、架橋剤の種類により適宜調整されるが、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜7質量部、更に好ましくは0.10〜5質量部、より更に好ましくは0.50〜4質量部である。
【0063】
<架橋促進剤(D)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、pKa(酸解離定数)が10.0以上の架橋促進剤(D)を含有する。
粘着剤組成物に、上記成分(A)〜(C)と共に、このような強塩基の架橋促進剤(D)を配合することで、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層について、エージングを行う環境が低温環境下であっても、一般的な架橋促進剤を配合した場合に比べて、架橋の進行が著しく促進される。
なお、架橋促進剤(D)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
架橋促進剤(D)のpKaは、10.0以上であり、好ましくは10.5〜16.0、より好ましくは11.0〜15.0、更に好ましくは11.5〜14.0である。
pKaが10.0未満の架橋促進剤を用いた粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、エージングを行う環境が低温環境下である場合に、架橋の進行が不十分となる。その結果、当該粘着剤層を有する粘着シートは、特に機械的強度が不十分となる傾向にある。また、再剥離性も劣る場合がある。
なお、本発明において、架橋促進剤のKa(酸解離定数)は、対象となる架橋促進剤を無限希釈水溶液に溶解して得られた水溶液のKaのことであり、当該水溶液を調製して25℃にて測定した実測値、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)等の文献に記載された値、又はAdvancedChemistryDevelopment(ACD/Labs)SoftwareV8.14forSolaris(1994−2007ACD/Labs)等の市販のソフトウェアパッケージを用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により算出した値である。
【0065】
架橋促進剤(D)としては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
前記一般式(1)中、Aは、環形成原子数3〜12の環構造を示す。
環構造を形成する上記環形成原子数には、当該環構造の一部である前記一般式(1)中のN(窒素原子)及びC(炭素原子)の2つの原子も含まれる。
Aで表される環構造の環形成原子数としては、エージングを行う環境が低温環境下であっても、形成される粘着剤層の架橋の進行が著しく促進され、再剥離性及び機械的強度に優れた粘着シートとする観点から、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜8、更に好ましくは5〜7である。
【0068】
また、前記一般式(1)中の水素原子と結合している炭素原子は、当該水素原子に代えて、任意の置換基により置換されていてもよい。
当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0069】
本発明の一態様において、エージングを行う環境が低温環境下であっても、形成される粘着剤層の架橋の進行が著しく促進され、再剥離性及び機械的強度に優れた粘着シートとする観点から、架橋促進剤(D)が、下記式(2)で表される1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下、「DBU」ともいう)及び下記式(3)で表される及び1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]ノネン−5(以下、「DBN」ともいう)から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、DBUを含むことがより好ましい。
【0070】
【化2】
【0071】
上記観点から、DBU及びDBNの合計含有量は、粘着剤組成物中に含まれる硬化促進剤(D)の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0072】
架橋促進剤(D)の含有量は、エージングを行う環境が低温環境下であっても、形成される粘着剤層の架橋の進行が著しく促進され、再剥離性及び機械的強度に優れた粘着シートとする観点から、成分(A)及び成分(B)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.30〜10質量部、より好ましくは0.40〜8質量部、更に好ましくは0.50〜7.5質量部、より更に好ましくは0.70〜5質量部である。
【0073】
架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤を含む場合、架橋促進剤(D)とエポキシ系架橋剤との固形分の含有割合〔成分(D)/エポキシ系架橋剤〕は、上記観点から、好ましくは0.15/1〜8/1、より好ましくは0.20/1〜6/1、更に好ましくは0.25/1〜4/1、より更に好ましくは0.40/1〜3/1である。
【0074】
架橋剤(C)がカルボジイミド系架橋剤を含む場合、架橋促進剤(D)とカルボジイミドエポキシ系架橋剤との固形分の含有割合〔成分(D)/カルボジイミド系架橋剤〕は、上記観点から、好ましくは0.01/1〜3/1、より好ましくは0.05/1〜2.5/1、更に好ましくは0.10/1〜2.0/1、より更に好ましくは0.15/1〜1.5/1である。
【0075】
<その他の添加剤>
本発明で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、例えば、(重合)ロジン系樹脂、(重合)ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等の粘着付与樹脂、アジピン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、セバシン酸ジエステル類等の可塑剤、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤等の濡れ剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、老化防止剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0076】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物中の成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の合計含有量は、当該粘着剤組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0077】
〔再剥離型粘着シートの製造方法〕
本発明の一態様の再剥離性粘着シートの製造方法は、特に限定されないが、上述の成分(A)〜(D)を含む水分散型粘着剤組成物を調製し、当該水分散型粘着剤組成物を、基材又は剥離シート上に塗布して製造する方法が好ましい。
例えば、図1(a)に示された粘着シート1aの製造方法としては、基材12上に、上記水分散型粘着剤組成物を塗布して、粘着剤層11を形成して製造する方法や、剥離シート上に上記水分散型粘着剤組成物を塗布して粘着剤層11を形成した後、形成した当該粘着剤層11と基材12とを貼り合わせ、剥離シートを除去して製造する方法等が挙げられる。
【0078】
図1(b)に示された粘着シート1bの製造方法としては、基材12上に水分散型粘着剤組成物を塗布して粘着剤層11を形成し、更に形成した粘着剤層11上に剥離シート13を積層して製造する方法や、剥離シート13上に水分散型粘着剤組成物を塗布して粘着剤層11を形成した後、当該粘着剤層11と基材12とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【0079】
図1(c)に示された両面粘着シート1cの製造方法としては、2枚の剥離シート13a、13b上に、それぞれ水分散型粘着剤組成物を塗布して粘着剤層11a、11bを形成し、基材12の両面に、形成した当該粘着剤層11a、11bに貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【0080】
基材又は剥離シート上に、水分散型粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に制限は無く、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、リップコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0081】
基材又は剥離シート上に形成した塗布膜の乾燥し粘着剤層を形成する際の乾燥条件としては、用いる装置の乾燥能力によるが、80℃〜150℃程度の温度で、3秒〜1分間程度加熱し乾燥させることが好ましい。
【0082】
〔再剥離性粘着シートの特性〕
本発明の再剥離性粘着シートは、エージングを低温環境下で行っても、粘着剤層の架橋が十分に進行し、良好な粘着力を具えると共に、優れた機械的強度及び再剥離性を有する。
本発明の一態様の再剥離性粘着シートの初期粘着力としては、好ましくは1.0N/25mm以上である。
【0083】
また、本発明の一態様の再剥離性粘着シートについて、経時粘着力は、好ましくは2.0N/25mm以上である。
【0084】
なお、上記の初期粘着力は、被着体であるステンレンス鋼(SUS)板に貼付してから30分後に、JIS Z−0237に準拠して測定した値であり、上記の経時粘着力は、被着体であるステンレンス鋼(SUS)板に貼付してから24時間後に、JIS Z−0237に準拠して測定した値であり、いずれも、具体的には実施例に記載の方法で測定した値を意味する。
【0085】
本発明の一態様の再剥離性粘着シートを0〜10℃の低温環境下でエージングした場合の当該再剥離性粘着シートが有する粘着剤層の破断時の引張応力としては、好ましくは0.10MPa以上、より好ましくは0.13MPa以上、更に好ましくは0.15MPa以上、より更に好ましくは0.20MPa以上である。
また、本発明の一態様の再剥離性粘着シートを15〜35℃の常温環境下でエージングした場合の当該再剥離性粘着シートが有する粘着剤層の破断時の引張応力としては、好ましくは0.10MPa以上、より好ましくは0.13MPa以上、更に好ましくは0.20MPa以上、より更に好ましくは0.24MPa以上である。
本発明の一態様の再剥離性粘着シートは、エージングを低温環境下及び常温環境下のいずれの環境下で行っても、粘着剤層の破断時の引張応力が0.10MPa以上となり、機械的強度に優れる。
なお、上記の粘着剤層の破断時の引張応力は、実施例に記載の方法で測定した値を意味する。
【実施例】
【0086】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
合成例1(アクリル系共重合体のエマルション(A−1)の合成)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)99質量部(固形分比)及びアクリル酸(AA)1質量部(固形分比)からなる単量体混合物の合計100質量部(固形分比)に対して、アニオン系乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩(花王株式会社製、商品名「ラテムルE−118B」)を4質量部(固形分比)、及びイオン交換水を56質量部加えて、混合し、乳化させて、乳化液を調製した。
次に、温度計、撹拌機、滴下装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応装置内に、イオン交換水を28質量部加え、窒素を封入して反応装置内の温度を80℃まで昇温させて80℃に保ちながら、重合開始剤として、濃度10質量%の過硫酸アンモニウム水溶液2質量部(固形分比:0.2質量部)を添加した後、直ちに、上記の乳化液を連続的に4時間かけて滴下して乳化重合した。また、並行して濃度5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液4質量部(固形分比:0.2質量部)を滴下した。
滴下終了後、80℃で4時間熟成し、その後、室温(25℃)まで冷却し、アンモニア水を添加して中和した後、イオン交換水を更に加えて、アクリル系共重合体(2EHA/AA=99/1(質量%))のエマルション(A−1)の溶液を得た。
当該エマルション(A−1)の溶液は、固形分濃度が50質量%、粘度が50mPa・s、pHが8.0であった。なお、固形分濃度及び粘度は、以下に示す方法で測定した。
【0088】
[固形分濃度]
JIS K−6833に準じて、エマルションの溶液を107℃、3時間乾燥させた後、残渣を秤量し、下記式より算出した。
・固形分濃度(質量%)=(残渣の質量)/(乾燥前のエマルションの質量)×100
[粘度]
JIS K−6833に準じて、25℃の環境下で、BM型粘度計(東京計器社製)を用い、No.2ローターを用いて、60回転/分の条件にて測定した。
【0089】
実施例1〜6、比較例1〜4
表1に示す成分を、表1に示す配合量(固形分比)にて秤量し、撹拌して、水分散型粘着剤組成物を調製した。
そして、調製した水分散型粘着剤組成物を、剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−8Kアオ」、シリコーン樹脂で剥離処理したグラシン紙、厚さ:66μm)の剥離処理面上に、ロールナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
次いで、形成した当該粘着剤層の表面上に、上質紙(日本製紙、商品名「ニューNPi上質」、64g/m、厚さ:73μm)を貼り合わせて紙基材付き粘着シートを作製した。
また、同じように形成した粘着剤層を複数貼り合わせて、厚さ400μmの粘着剤層を形成して、当該粘着剤層と上記の剥離シートの剥離処理面とを貼り合わせて、基材無し粘着シートも作製した。
【0090】
表1に示す成分の詳細は以下のとおりである。
(成分(A))
・「エマルション(A−1)」:上述の合成例1で得たアクリル系共重合体(2EHA/AA=99/1(質量%))のエマルション(A−1)、当該エマルション(A−1)は、アルカリ非可溶性であり、且つアルカリ非膨潤性である。
(成分(B))
・「アロンB−300K」:商品名、東亞合成(株)製、アルカリ膨潤性のアクリル系共重合体のエマルション、固形分濃度:44質量%
(成分(C))
・「エポキシ系架橋剤(EX−313)」:ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX−313」、エポキシ系架橋剤、固形分濃度:100質量%。
・「カルボジイミド系架橋剤(SV−02)」:日清紡社製、商品名「カルボジライトSV−02」、カルボジイミド系架橋剤、固形分濃度:40質量%。
(成分(D))
・「DBU」:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、pKa=12.5。
・「DBN」:1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]ノネン−5、pKa=12.7。
(架橋促進剤)
・「TEA」:トリエタノールアミン、pKa=7.76。
・「DEA」:ジエタノールアミン、pKa=8.90。
【0091】
作製した粘着シートについて、下記の低温環境下又は常温環境下にて、7日間エージングした後、粘着力、破断時の引張応力、及び再剥離性の測定又は評価を、以下の方法に基づいて行った。これらの結果を表1に示す。
(エージング条件)
・低温環境下:5℃の環境下に7日間静置。
・常温環境下:25℃の環境下に7日間静置。
【0092】
<粘着力(初期粘着力、経時粘着力)>
JIS Z−0237の180°引き剥がし粘着力測定に準じて測定した。
具体的には、上記の低温環境下又は常温環境下でエージング後の紙基材付き粘着シートを幅25mmに切断し、ステンレス鋼(SUS)板に貼り付け、2kgのローラーで1往復圧着した。
そして、SUS貼付30分後に、引き剥がし速度300mm/分にて、当該紙基材付き粘着シートをSUS板から引き剥がして、初期粘着力を測定した。
また、SUS貼付後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置した後、引き剥がし速度300mm/分にて、当該紙基材付き粘着シートをSUS板から引き剥がして、経時粘着力を測定した。
【0093】
<破断時の引張応力>
上記の低温環境下又は常温環境下でエージング後の、基材無し粘着シートの粘着剤層を丸めて、直径2mm、長さ10mmの円筒状としたものを試験用サンプルとして用いた。
当該試験用サンプルを「万能材料試験機5581」(商品名、インストロン ジャパン カンパニィ リミテッド社製)を用いて、円筒の長さ方向について引張り速度50mm/分で引張試験を行い、試験サンプルの破断時の引張応力(単位:MPa)を測定した。
【0094】
<再剥離性>
上記の経時粘着力の測定において、SUS板から剥離した際の剥離状態を目視にて、以下の基準により評価した。
A:SUS板への糊残りや、粘着シートの紙基材の破れ無く、きれいに剥離できる。
F:SUS板への糊残りや、粘着シートの紙基材の破れが見られる。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1〜6で作製した粘着シートは、低温環境下(5℃)及び常温環境下(25℃)のいずれの環境下でエージングを行っても、良好な粘着力を具えると共に、再剥離性にも優れる。また、実施例1〜6で作製した粘着シートが有する粘着剤層は、低温環境下及び常温環境下のいずれの環境下でエージングを行っても、架橋反応が十分に進行していると考えられ、エージングの環境に依らず、破断時の引張応力が高く、機械的強度が優れるといえる。
一方、比較例1、2、4で作製した粘着シートは、低温環境下で静置した際に、粘着剤層の架橋反応の進行が不十分であるため、再剥離性が劣る結果となった。
また、比較例3で作製した粘着シートは、再剥離性は良好な結果が出ているものの、低温環境下で静置した際に、当該粘着シートが有する粘着剤層の破断時の引張応力の値が低く、粘着剤層の凝集力不足が懸念され、機械的強度が低く、粘着シートとして使用上問題がある結果となった。それは、低温環境下で静置した際の粘着剤層の架橋反応の進行が不十分であることに原因があると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の再剥離性粘着シートは、低温環境下及び常温環境下のいずれの環境下でエージングを行っても、当該粘着シートが有する粘着剤層の架橋が十分に進行するため、良好な粘着力を具えると共に、優れた機械的強度及び再剥離性を有する。
そのため、本発明の一態様の再剥離性粘着シートは、低温環境下で保存され、再剥離性が要求される、粘着ラベル、マスキングテープ又はシート、表面保護フィルム等の用途に好適である。
【符号の説明】
【0098】
1a、1b、1c (再剥離性)粘着シート
11、11a、11b 粘着剤層
12 基材
13、13a、13b 剥離シート
図1