(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。また、実施形態の説明では、本発明が四輪車両の後輪を転舵させる車両用転舵装置に適用された例を挙げる。
【0014】
四輪車両は、FF(Front-Engine Front-drive)ベースの四輪駆動車である。
図1に示すように、四輪車両の後輪400は、ダブルウイッシュボーン式で構成される懸架装置200に支持されている。
懸架装置200は、後輪400を回転自在に支持するナックル211と、ナックル211を上下動可能に車体に連結するアッパーアーム221およびロアアーム231と、後輪400の上下動を緩衝する懸架ばね付きダンパー241と、ナックル211を回動させて後輪400の転舵角を変化させる伸縮アクチュエータ1と、伸縮アクチュエータ1を制御する制御部52と、を備えている。
なお、伸縮アクチュエータ1と制御部52とを組み合わせてなるものが、車両用転舵装置に相当する。
【0015】
ナックル211の上部は、ボールジョイント213を介してアッパーアーム221の先端部に回動自在に連結されている。ナックル211の下部は、ボールジョイント214を介してロアアーム231の先端部に回動自在に連結されている。そして、ナックル211がボールジョイント213、214を中心に回動することで、後輪400の転舵角が変化するようになっている。
【0016】
アッパーアーム221の基部は、2つのブッシュ222、222を介して車体に回動自在に取り付けられている。ロアアーム231の基部は、2つのブッシュ232(
図1においては1つのみ図示)を介して車体に回動自在に取り付けられている。そして、アッパーアーム221及びロアアーム231が基部側を中心回動することで、後輪400が上下動するようになっている。
【0017】
ダンパー241は、ばね付きの油圧ダンパー(油圧緩衝器)である。ダンパー241の上部は、車体251に固定されている。ダンパー241の下部は、ブッシュ242を介してナックル211に連結されている。
【0018】
伸縮アクチュエータ1の車幅方向内側の端部は、ブッシュ2を介して車体に連結している。一方で、伸縮アクチュエータ1の車幅方向外側の端部は、ブッシュ3を介してナックル211に連結している。このため、伸縮アクチュエータ1は、車体とナックル211との間に介在している。
【0019】
図2に示すように、伸縮アクチュエータ1は、回転軸(不図示)を有するモータ10と、モータ10の回転軸に連結するウォーム軸11と、ウォーム軸11の外周面に形成されたウォームギヤ12と、ウォームギヤ12に歯合するウォームホイール13と、ウォームホイール13に内嵌されるナット14と、ナット14の車幅方向内端に内嵌された環状のブッシュ(支持部材)15と、ナット14及びブッシュ15により車幅方向に進退自在に支持されたロッド20と、ストロークセンサ30と、前記した部品を収容するハウジング40と、を備えている。
【0020】
ハウジング40は、車幅方向内側の端部にブッシュ2が内嵌される環状の環状部41aが形成された第1ハウジング41と、第1ハウジング41の車幅方向外側に固定された第2ハウジング42と、第2ハウジング42の後側に固定された第3ハウジング43(
図1参照)と、を備えている。
【0021】
第1ハウジング41と第2ハウジング42との間には、車幅方向の延びる略円柱状のスペースSが形成されている。このスペースSは、ロッド20とストロークセンサ30とを車幅方向に並べて配置した状態でも収容可能な大きさに形成されている。なお、第3ハウジング43にも、スペースSに連続する内部空間が形成されている。
【0022】
第2ハウジング42の車幅方向外側の壁部42aが開口し、スペースSに収容されるロッド20の車幅方向外側の端部がハウジング40から突出している。第3ハウジング43は、モータ10を収容するための部材であり、モータ10の回転軸が前方を指すように収容している。
なお、説明の都合上、ロッド20の両端部において、ハウジング40内に収容されている方を「一端部」と称し、ハウジング40から突出している方を「他端部」と称する。
【0023】
ウォーム軸11は、図示しない軸受により前後軸回りに回動自在に支持されている。
ウォームギヤ12とウォームホイール13とは、ウォーム軸11の前後軸回りの回転運動を左右軸回りの回転運動に変換するためのものである。
また、ウォームホイール13の内周面には、ナット14が固定されており、モータ10の回転軸(不図示)の回転運動が、ウォームギヤ12とウォームホイール13とを介してナット14(後述するボールねじ)に伝達されるようになっている。
【0024】
ナット14は、ウォームホイール13とともに左右軸回りに回転する部材である。
ナット14の車幅方向外側寄りには、第2ハウジング42に内嵌されたボールベアリング16が外嵌されている。また、ナット14の車幅方向内側寄りに、第1ハウジング41に内嵌されたローラベアリング17が外嵌されている。このため、ナット14による左右軸回りの回転が安定するようになっている。
また、ナット14の内周面には、螺旋溝14aが形成されている。
【0025】
ロッド20は、車幅方向に延びる略円柱体の部材であり、ナット14内を貫通するように配置されている。
ロッド20の外周面には、螺旋溝20aが形成されている。
また、ナット14とロッド20との間には、ナット14の螺旋溝14aとロッド20の螺旋溝20aとの両方に収容される複数のボール18が設けられており、ナット14とロッド20と複数のボール18とでボールねじを構成している。
つまり、本実施形態の伸縮アクチュエータ1は、ボールねじを備え、モータ10の回転軸(不図示)の回転運動が、ボールねじにより、ロッド20の軸方向(左右方向)への直線運動に変換されるようになっている。
そして、ナット14の回転によりロッド20が車幅方向外側へ移動(前進)すると、ハウジング40から突出するロッド20の突出量が増加し、伸縮アクチュエータ1の車幅方向の長さが長くなる。一方で、ナット14の回転によりロッド20が車幅方向内側へ移動(後退)すると、ハウジング40から突出するロッド20の突出量が減少し、伸縮アクチュエータ1の車幅方向の長さが短くなる。
【0026】
ロッド20の他端部には、ブッシュ3が内嵌される環状の環状部21が形成され、ロッド20の他端部がブッシュ3を介してナックル211に連結している。このため、ロッド20が前後動すると、ナックル211が回動して後輪400の転舵角が変化するようになっている。
【0027】
一方で、ロッド20は、車幅方向内側(一端側)に向って開口する有底筒状の有底筒部22を有している。この有底筒部22の底面23の中央部には、
図3に示すように、ねじ穴23aが形成されている。そのほかの有底筒部22の構成については後述する。
【0028】
制御部52は、後輪400の転舵角を制御するための装置であり、ハウジング40内ではなく、車体に固定されている。
また、制御部52は、例えば車速センサやストロークセンサ30など、各センサに接続している。なお、本実施形態の制御部52は、
図2に示すように、配線によりストロークセンサ30やモータ10に接続している。そして、制御部52は、各センサから送られてきた情報から車両の走行状態を判断してモータ10に制御信号を送信し、後輪400の転舵角を走行状態に応じた角度に調整している。
【0029】
ストロークセンサ30は、ロッド20の一端部側に配置されてロッド20のストローク量を測定する磁気型のセンサである。
ストロークセンサ30は、棒状の被検出部31と、内部に被検出部31が進入可能で、被検出部31が内部に進入した長さを検出する検出部32と、を備えている。
【0030】
被検出部31は、アルミニウムやステンレスなどの非磁性体から形成されている。また、
図3に示すように、被検出部31の基部側には、ロッド20のねじ穴23aに螺合するための螺旋溝31bが形成され、被検出部31の先端部側には、円筒状の永久磁石31aが埋設されている。
【0031】
図2に示すように、検出部32は、カプラー51と一体に形成されて内部に被検出部31が進入可能な円筒状の円筒部33と、円筒部33を構成する壁部内に車幅方向に配列された複数のコイル34、34・・・と、を備えている。
また、検出部32は、被検出部31に対して車幅方向内側に配置されており、被検出部31の進入により永久磁石31aがコイル34内を通過した場合、コイル34内の磁界の方向(磁束の向き)が変わるようになっている。
【0032】
なお、ストロークセンサ30のコイル34は、制御部52に接続しており、コイル34、34、・・・からの信号が制御部52に入力される。そして、制御部52は、車幅方向に配列された複数のコイル34、34・・・のうち、内部を通過する磁界の方向が変わったコイル34を特定し、検出部32内に進入した被検出部31の長さを測定している。
【0033】
つぎに、有底筒部22、被検出部31、検出部32、ブッシュ15の関係について、
図3を用いて説明する。
【0034】
図3に示すように、被検出部31の螺旋溝31bが有底筒部22のねじ穴23aに螺合し、被検出部31は、有底筒部22の底面23から車幅方向内側へ延びた状態でロッド20に固定されている。このため、被検出部31の一部が有底筒部22内に収容された状態になっている。
【0035】
有底筒部22の内径は、検出部32の外径よりも大きく、有底筒部22内に検出部32が収容可能になっている。
一方で、検出部32は、ロッド20の一端部側(車幅方向内側)に配置され、有底筒部22の底面23に対向している。
【0036】
そして、
図3(a)に示すように、ロッド20が車幅方向の最も外側に位置している場合(伸縮アクチュエータ1の最伸長時)において、検出部32の一部(車幅方向外側の端部)が有底筒部22内に収容されるようになっている。
なお、
図3(a)に示すように、ロッド20が車幅方向外側(他端部側)への移動量が最も大きい場合(伸縮アクチュエータ1の最伸長時)であっても、ブッシュ15は、有底筒部22の外周面25に当接してロッド20を支持している。
【0037】
また、
図3(b)に示すように、ロッド20が車幅方向の最も内側(一端部側)に位置している場合(伸縮アクチュエータ1の最収縮時)において、有底筒部22の底面23に接触することなく、検出部32の大部分が有底筒部22内に収容されるようになっている。そのほか、検出部32の外周面32aは、有底筒部22の内周面24に離間し、走行中におけるロッド20の振動が検出部32に伝達し難くなっている。
【0038】
つぎに、伸縮アクチュエータ1の効果について、比較例を図示した
図4を参照しながら説明する。なお、
図4(b)、(d)に図示される比較例は、従来の伸縮アクチュエータ101である。また、従来の伸縮アクチュエータ101は、ロッド120がブッシュ115に進退自在に支持され、ロッド120の一端面に被検出部131が固定され、ロッド120の一端面に検出部132が対向して配置されている。
【0039】
実施形態の伸縮アクチュエータ1は、上記したように被検出部31が有底筒部22内に収容されている。
このことから、ロッド20と被検出部31とを併せた車幅方向の長さに関し、
図4(a)、(b)に示すように、実施形態の伸縮アクチュエータ1は、従来の伸縮アクチュエータ101よりも、有底筒部22の深さL1分だけ短くなる。このため、有底筒部22が形成されたロッド20を用いると、ロッド20と被検出部31とが占有する空間が車幅方向に減少する。
【0040】
また、実施形態の伸縮アクチュエータ1は、上記したように検出部32が有底筒部22内に収容される。
このことから、検出部32が配置される位置に関し、
図4(c)、(d)に示すように、実施形態の伸縮アクチュエータ1では、従来の伸縮アクチュエータ101よりも、長さL2分だけロッド20側に近接する。このため、有底筒部22が形成されたロッド20を用いると、ロッド20と検出部32とが占有する空間が車幅方向に減少する。
【0041】
以上から、実施形態の伸縮アクチュエータ1によれば、ロッド20と被検出部31とが占有する空間、及びロッド20と検出部32とが占有する空間が車幅方向に減少する。
つまり、ロッド20とストロークセンサ30とが占有する空間がロッド20の軸方方向に短縮し、第1ハウジング41と第2ハウジング42によって形成されるスペースSを縮小させることができ、伸縮アクチュエータ1の小型化を図ることができる。
また、実施形態のロッド20には有底筒部22が形成されるものの、有底筒部22の外周面25がブッシュ(支持部材)15に支持されているため、ロッド20の進退動の安定化が確保されている。
【0042】
以上、実施形態について説明したが、本発明は実施形態の例に限定されない。
例えば、実施形態では、検出部32の一部が常時有底筒部22内に収容されるように構成されているが(
図3(a)、(b)参照)、本発明は、伸縮アクチュエータ1の最収縮時に、検出部32の少なくても一部が有底筒部22内に収容されればよい。
このような構成であっても、検出部32は、従来例よりもロッド20側に近接して配置されることとなり、伸縮アクチュエータ1の小型化に寄与することができる。
【0043】
また、実施形態では、有底筒部22に支持するブッシュ15は、ナット14に内嵌されているが、第1ハウジング41に内嵌されていてもよく、特に限定されない。
【0044】
また、本実施形態では、有底筒部22を支持する支持部材がブッシュ15であったが、そのほかに、ロッド20の外周面に形成された螺旋溝20aに収容された複数のボール18を転動させてロッド20を進退させるナット14が支持部材であってもよい。
具体的には、
図5に示すように、ナット14がボール18を介して有底筒部22のねじ溝20aに間接的に螺合し、有底筒部22の外周面25を支持しても良い。
または、特に図示しないが、送りねじ機構のように、ナットが有底筒部の螺旋溝に直接螺合し、有底筒部の外周面を支持するように構成してもよい。
【0045】
また、ストロークセンサ30に関して、被検出部31に永久磁石31aを設けた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。ストロークセンサ30は、差動トランスを利用したセンサであってもよく、その他の公知のセンサであってもよい。