(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2圧着工程では、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板のうち、少なくとも何れかの前記駆動基板に予め配設された前記アース部を介して前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板同士を接続することを特徴とする請求項2記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した実装面に駆動基板を圧着する工程において、アクチュエータプレートが圧電効果により誘電分極することで、アクチュエータプレートに電圧が発生し、駆動基板が帯電する。駆動基板が帯電した状態で周辺部材または駆動基板同士等に接触すると、駆動基板に実装された電子部品と周辺部材との間に過電圧が印加され、電子部品が破損する等のおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、歩留まりの向上や失敗コスト(Fコスト)の低下を図ることができる液体噴射ヘッドの製造装置、液体噴射ヘッドの製造方法、及び液体噴射ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造装置は、圧電材料からなるアクチュエータプレートを有するヘッドチップと、前記ヘッドチップを駆動する駆動基板と、を接続する液体噴射ヘッドの製造装置であって、前記ヘッドチップがセットされるホルダ部と、前記ヘッドチップに対して前記駆動基板を圧着する圧着機構と、前記駆動基板に接続されるとともに、前記駆動基板に帯電する電荷を放電するアース部と、を備え
、前記圧着機構は、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップの積層体に対して第1駆動基板及び第2駆動基板を各別に圧着し、前記アース部は、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板同士を接続することを特徴とする。
また、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、圧電材料からなるアクチュエータプレートを有するヘッドチップと、前記ヘッドチップを駆動する駆動基板と、を接続する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記駆動基板と前記ヘッドチップとを圧着する圧着工程を有し、前記圧着工程では、前記駆動基板をアース部に接続し、前記駆動基板に帯電する電荷を放電しながら行
い、前記圧着工程は、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップの積層体のうち、前記第1ヘッドチップに第1駆動基板を圧着する第1圧着工程と、前記積層体のうち前記第2ヘッドチップに第2駆動基板を圧着する第2圧着工程と、を有し、前記第2圧着工程では、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板間に前記アース部を接続した状態で圧着を行うことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、駆動基板をアース部に接続した状態で、ヘッドチップと駆動基板とを圧着することで、圧着時に駆動基板に帯電する電荷を放電することができる。そのため、後工程において、駆動基板が周辺部材に接触する等によって駆動基板と周辺部材との間に過電圧が印加され、駆動基板に実装された電子部品が破損するのを抑制できる。そのため、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造装置において、前記圧着機構は、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップの積層体に対して第1駆動基板及び第2駆動基板を各別に圧着し、前記アース部は、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板同士を接続してもよい。
この構成によれば、圧着時に各駆動基板に帯電する電荷をアース部に放電することができるため、後工程において、各駆動基板同士が直接接触する等によって各駆動基板間に過電圧が印加され、駆動基板に実装された電子部品が破損するのを抑制できる。その結果、複数のヘッドチップが積層された複数列タイプの液体噴射ヘッドにおいても、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記圧着工程は、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップの積層体のうち、前記第1ヘッドチップに第1駆動基板を圧着する第1圧着工程と、前記積層体のうち前記第2ヘッドチップに第2駆動基板を圧着する第2圧着工程と、を有し、前記第2圧着工程では、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板間に前記アース部を接続した状態で圧着を行ってもよい。
この構成によれば、圧着時に各駆動基板に帯電する電荷をアース部に放電することができるため、後工程において、各駆動基板同士が直接接触する等によって各駆動基板間に過電圧が印加され、駆動基板に実装された電子部品が破損するのを抑制できる。その結果、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップが積層された複数列タイプの液体噴射ヘッドにおいても、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記第2圧着工程では、前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板のうち、少なくとも何れかの前記駆動基板に予め配設された前記アース部を介して前記第1駆動基板及び前記第2駆動基板同士を接続してもよい。
この構成によれば、駆動基板に予め配設されたアース部を介して各駆動基板同士を接続することで、第2圧着工程において両駆動基板同士を確実にアース部に接続できる。また、各駆動基板同士がアース部に接続された状態で、後工程に搬送されるので、各駆動基板に帯電した電荷を確実に放電することができる。
【0012】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法により製造されたことを特徴とする。
この構成によれば、上記本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法により製造されているため、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図った上で、信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、プリンタ1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構(移動機構)2,3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射するインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)にインクジェットヘッド4を走査させる走査手段6と、を備えている。なお、以下の説明においては、上述した主走査方向をX方向、副走査方向をY方向、そしてX方向、及びY方向に直交する方向をZ方向として説明する。
【0017】
一対の搬送機構2,3は、それぞれY方向に延びるグリッドローラ2a,3aと、グリッドローラ2a,3aとそれぞれに平行に延びるピンチローラ2b,3bと、グリッドローラ2a,3aをその軸回りに回転動作させるモータ等の図示しない駆動機構と、を備えている。
【0018】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10とインクジェットヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。
インクタンク10は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の4種類のインクが各別に収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10Bを備えている。なお、インクは、4種類に限られるものではなく、さらに多色であってもよく、単色であってもよい。
インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。
【0019】
走査手段6は、Y方向に延び、かつX方向に間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール14,15と、一対のガイドレール14,15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、キャリッジ16をY方向に移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール14,15の間に配置され、Y方向に間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、一対のプーリ18間に巻回されてY方向に走行する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0020】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴ってY方向に移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4がY方向に並んだ状態で搭載されている。図示の例では、4種類のインク各色をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド4(すなわち、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4B)が、キャリッジ16に搭載されている。なお、上述した搬送機構2,3及び走査手段6により、インクジェットヘッド4と被記録媒体Sとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0021】
(インクジェットヘッド)
次に、上述したインクジェットヘッド4について詳述する。
図2はインクジェットヘッド4の分解斜視図であり、
図3は
図2のIII−III線に相当する断面図である。なお、上述した各インクジェットヘッド4は、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、一のインクジェットヘッド4について説明する。
図2、
図3に示すように、インクジェットヘッド4は、インク滴を吐出する吐出部21と、吐出部21にインクを供給する流路部材22と、吐出部21の後述する各ヘッドチップ31A,31B(
図4参照)にそれぞれ電気的に接続された第1駆動基板23a及び第2駆動基板23bと、これら各構成品を支持するヘッドベース24と、を備えている。
【0022】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の吐出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6によりY方向に移動することで、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができる。また、上述した走査を搬送機構2,3により被記録媒体SをX方向に搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0023】
図4は吐出部21の斜視図であり、
図5は吐出部21の分解斜視図である。
図4、
図5に示すように、吐出部21は、複数のノズル孔(第1ノズル孔48a及び第2ノズル孔49a)からなるノズル列48,49が二列に亘って形成された二列タイプの吐出部21である。具体的に、吐出部21は、Y方向に積層された第1ヘッドチップ31A及び第2ヘッドチップ31Bと、各ヘッドチップ31A,31Bをまとめて支持するノズルキャップ32と、各ヘッドチップ31A,31Bに固定されたノズルプレート33と、を備えている。なお、各ヘッドチップ31A,31Bは、後述する吐出チャネル43aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。したがって、本実施形態の吐出部21は、Z方向が上下方向に一致した状態で設置される。以下、Z方向に沿うノズルプレート33側を下側、ノズルプレート33側とは反対側を上側という場合がある。また、以下の説明では、主に第1ヘッドチップ31Aについて説明し、第2ヘッドチップ31Bにおける第1ヘッドチップ31Aと対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
第1ヘッドチップ31Aは、Y方向に積層されたアクチュエータプレート41及びカバープレート42を主に備えている。
アクチュエータプレート41は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成され、その分極方向が厚さ方向(Y方向)に沿って一方向に設定されている。
【0025】
アクチュエータプレート41のY方向における一方の主面41a側(カバープレート42側に位置する面側)には、X方向に間隔をあけて複数のチャネル43が並設されている。これら複数のチャネル43は、一方の主面41a側に開口した状態でZ方向に沿って直線状に延設されるとともに、アクチュエータプレート41の下端面で開口している。アクチュエータプレート41のうち、各チャネル43間に位置する部分は、各チャネル43を画成する駆動壁44を構成している。
【0026】
各チャネル43は、インクが充填される吐出チャネル43aと、インクが充填されないダミーチャネル43bと、を有している。そして、これら吐出チャネル43a及びダミーチャネル43bは、X方向に交互に並んで配置されている。各チャネル43内面(駆動壁44)には、図示しない駆動電極が形成されている。駆動電極は、アクチュエータプレート41の上端部のうち、カバープレート42よりも上方に位置する部分(以下、単に尾部という)において、一方の主面41a上に引き出され、一方の主面41a上で第1駆動基板23aに接続されている。そして、駆動電極は、第1駆動基板23aを介して駆動電圧が印加されることにより、圧電滑り効果により駆動壁44を変形させ、吐出チャネル43a内の容積を変化させる。
【0027】
カバープレート42は、一方の主面42aがアクチュエータプレート41の一方の主面41a上に接合された板状とされ、各チャネル43を閉塞している。図示の例において、カバープレート42は、Z方向における長さがアクチュエータプレート41よりも短くなっており、下端面がアクチュエータプレート41と面一とされた状態で、アクチュエータプレート41に接合されている。そして、カバープレート42の上方において、上述したアクチュエータプレート41の尾部が露出している。カバープレート42は、他方の主面42bに形成された凹状の共通インク室46と、共通インク室46及び吐出チャネル43aをそれぞれ連通させる複数のスリット47と、を有している。
【0028】
共通インク室46は、カバープレート42の上端部に位置し、アクチュエータプレート41側に向けて窪む溝であり、X方向に沿って延設されている。
スリット47は、共通インク室46のうち、X方向で吐出チャネル43aに対応する位置に形成され、共通インク室46内と吐出チャネル43a内とを連通している。
【0029】
第2ヘッドチップ31Bは、上述した第1ヘッドチップ31Aと同様にアクチュエータプレート41及びカバープレート42がY方向に積層されて構成されている。そして、各ヘッドチップ31A,31Bは、アクチュエータプレート41の他方の主面41b同士が接合されることで、一体的に構成されている。
【0030】
第2ヘッドチップ31Bの吐出チャネル43a及びダミーチャネル43bは、第1ヘッドチップ31Aの吐出チャネル43a及びダミーチャネル43bの配列ピッチに対して半ピッチずれて配列され、各ヘッドチップ31A,31Bの吐出チャネル43a同士、及びダミーチャネル43b同士が互い違い(千鳥状)に配列されている。
また、第2ヘッドチップ31Bにおいて、アクチュエータプレート41の尾部には、第2駆動基板23b(
図1,2参照)が接続されている。
【0031】
ノズルキャップ32は、Z方向から見た平面視外形が長方形状を呈している。ノズルキャップ32には、Z方向に貫通する嵌合孔32aが形成され、上述した各ヘッドチップ31A,31Bがまとめて嵌合されている。図示の例において、各ヘッドチップ31A,31Bは、その下端面がノズルキャップ32の下端面と面一となるように組み合わされている。
【0032】
ノズルプレート33は、ポリイミド等のフィルム材からなり、ノズルキャップ32及び各ヘッドチップ31A,31Bの下端面に接着等により固定されている。ノズルプレート33には、X方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔48a及び第2ノズル孔49a)からなるノズル列(第1ノズル列48および第2ノズル列49)が2列配設されている。
【0033】
第1ノズル列48は、ノズルプレート33をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔48aがX方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。第1ノズル孔48aは、上述した第1ヘッドチップ31Aの吐出チャネル43a内に各別に連通している。
第2ノズル列49は、ノズルプレート33をZ方向に貫通するとともに、X方向に間隔をあけて並んだ複数の第2ノズル孔49aを有し、上述した第1ノズル列48と平行に配設されている。各第2ノズル孔49aは、上述した第2ヘッドチップ31Bの吐出チャネル43a内に連通している。したがって、各ダミーチャネル43bは、ノズル孔48a,49aには連通しておらず、ノズルプレート33により下方から覆われている。
【0034】
図2、
図3に示すように、流路部材22は、第1ヘッドチップ31Aにインクを供給する第1流路ブロック51と、第2ヘッドチップ31Bにインクを供給する第2流路ブロック52と、各流路ブロック51,52を接続する接続ブロック53と、を有している。
【0035】
第1流路ブロック51は、X方向に沿って延びる板状を呈している。第1流路ブロック51は、第1ヘッドチップ31Aのカバープレート42における他方の主面42b上に固定されるとともに、第1ヘッドチップ31A側の共通インク室46を閉塞している。第1流路ブロック51には、共通インク室46内に連通する第1インク供給路54が形成されている。
第2流路ブロック52は、X方向に沿って延びる板状を呈し、吐出部21を挟んで第1流路ブロック51とY方向で対向している。具体的に、第2流路ブロック52は、第2ヘッドチップ31Bのカバープレート42における他方の主面42b上に固定されるとともに、第2ヘッドチップ31B側の共通インク室46を閉塞している。第2流路ブロック52には、共通インク室46内に連通する第2インク供給路55が形成されている。
【0036】
接続ブロック53は、吐出部21におけるX方向の一端面上において、各流路ブロック51,52間を跨ぐように固定されている。接続ブロック53には、上述した各流路ブロック51,52の各インク供給路54,55内に連通する図示しない接続流路が形成されている。また、接続ブロック53には、上述したインク配管11が接続される供給ポート57が上方に向けて立設されている。この供給ポート57は、接続流路内に連通しており、インクタンク10(
図1参照)から供給されるインクを、接続流路を通して各インク供給路54,55内に向けて流通させる。
【0037】
各駆動基板23a,23bは、各ヘッドチップ31A,31Bに各別に接続される第1FPC61a及び第2FPC61bと、これら各FPC61a,61bを各別に支持する第1支持プレート62a及び第2支持プレート62bと、を備えている。
第1FPC61aには、第1ヘッドチップ31Aを駆動するための駆動信号を生成するドライバIC63や、図示しないコンデンサ等の各種電子部品が実装されている。これら電子部品は、図示しない配線パターンを介して接続されている。また、ドライバIC63は、図示しない配線パターンを介して第1ヘッドチップ31Aの駆動電極に電気的に接続されている。具体的に、第1FPC61aの下端部は、第1ヘッドチップ31A(アクチュエータプレート41)における尾部の一方の主面41a上に、図示しない異方性導電膜を介して圧着されている。これにより、第1ヘッドチップ31A及び第1FPC61a同士が機械的に接続されるとともに、第1ヘッドチップ31Aの駆動電極及び第1FPC61aの配線パターン同士が異方性導電膜中に分散された導電粒子を介して電気的に接続されている。
【0038】
第1支持プレート62aは、例えば金属材料からなる板状とされ、第1FPC61aのうち、各電子部品が実装された実装面とは反対側に位置する面上にそれぞれ固定されている。図示の例において、第1支持プレート62aは、第1FPC61aの上下端部を突出させた状態で、第1FPC61aにY方向で重なり合っている。
【0039】
第1支持プレート62aには、X方向の両側に向けて突出する一対の取付片65が形成されている。これら取付片65は、第1駆動基板23aをヘッドベース24に取り付けるためのものであって、第1支持プレート62aをY方向に貫通する取付孔66をそれぞれ有している。なお、図示の例において、各取付片65は、Z方向で異なる位置に形成されている。
【0040】
第2FPC61bは、上述した第1FPC61aと同様の構成とされ、第2ヘッドチップ31Bを駆動するための駆動信号を生成するドライバIC64や、コンデンサ等の各種電子部品が実装されている。また、第2ヘッドチップ31B及び第2FPC61b同士は、異方性導電膜を介して機械的に接続されるとともに、第2ヘッドチップ31Bの駆動電極及び第2FPC61bの配線パターン同士が異方性導電膜中に分散された導電粒子を介して電気的に接続されている。
また、本実施形態において、各FPC61a,61bは、各電子部品の位置を面内方向(YZ平面)でずらした状態で、電子部品の実装面同士が対向している。
【0041】
第2支持プレート62bは、上述した第1支持プレート62aと同様の構成とされ、第2FPC61bにおける実装面とは反対側に位置する面上にそれぞれ固定されている。
第2支持プレート62bには、X方向の両側に向けて突出する一対の取付片68が形成されている。これら取付片68は、第2駆動基板23bをヘッドベース24に取り付けるためのものであって、第2支持プレート62bをY方向に貫通する取付孔69をそれぞれ有している。なお、図示の例において、第2支持プレート62bの取付片68は、Z方向で異なる位置に形成されるとともに、第1支持プレート62aの取付片65とY方向で重ならない位置に形成されている。
【0042】
ヘッドベース24は、吐出部21、流路部材22及び各駆動基板23a,23bをY方向で挟持するように配設されている。具体的に、ヘッドベース24は、Y方向における第1ヘッドチップ31A側に配置された本体ベース71と、第2ヘッドチップ31B側に配置された蓋体72と、を有している。
本体ベース71は、Z方向から見た上面視でX方向の第1ヘッドチップ31A側に向けて開口するC字状とされ、吐出部21や流路部材22、第1駆動基板23aを第1ヘッドチップ31A側から覆っている。
図2に示すように、本体ベース71には、上述した各支持プレート62a,62bの取付片65,68が取り付けられる台座部73が形成されている。各台座部73には、対応する取付片65,68がY方向で当接している。取付片65,68のうち、第1支持プレート62aの取付片65はビス75によって台座部73に固定されている。
【0043】
蓋体72は、本体ベース71をY方向の第2ヘッドチップ31B側から閉塞する板状とされ、第2流路ブロック52の上端部、及び第2駆動基板23bを第2ヘッドチップ31B側から覆っている。蓋体72は、第2支持プレート62bの取付片68とともに、本体ベース71の台座部73にビス76によって共締めされている。
【0044】
[インクジェットヘッドの製造方法]
次に、上述したインクジェットヘッド4の製造方法について説明する。
まず、吐出部21を形成する(吐出部形成工程)。具体的には、まず各ヘッドチップ31A,31Bとなるアクチュエータプレート41及びカバープレート42をそれぞれ貼り合わせ、その後各ヘッドチップ31A,31Bのアクチュエータプレート41同士を貼り合わせる。続いて、各ヘッドチップ31A,31Bをノズルキャップ32の嵌合孔32a内に嵌合した後、ノズルキャップ32及び各ヘッドチップ31A,31Bの下端面にノズルプレート33を固定する。
【0045】
次に、上述した吐出部21に各駆動基板23a,23bを接続する(接続工程)。本実施形態では、以下に説明する圧着治具100を用いて接続工程を行う。
図6は圧着治具100の概略平面図であり、
図7は
図6のVII−VII線に相当する断面図である。
図6、
図7に示すように、圧着治具100は、吐出部21を保持するホルダ部101と、ホルダ部101に対して駆動基板23a,23bを圧着する図示しない圧着機構と、駆動基板23a,23bに帯電する電荷を放電するアース部102と、を備えている。
【0046】
ホルダ部101は、例えばステンレスやアルミニウム等の金属材料により構成され、その表面には絶縁処理が施されている。ホルダ部101には、吐出部21を収容するヘッド用凹部103が形成されている。このヘッド用凹部103は、下方に向けて窪むとともに、吐出部21のうち圧着を行わない方のヘッドチップ31A,31B側を内部に収容する。なお、ホルダ部101は、寸法安定性を確保できれば例えば樹脂材料等により形成しても構わない。
【0047】
また、ホルダ部101には、ヘッド用凹部103に対して間隔をあけて基板用凹部104が形成されている。この基板用凹部104は、平面視外形が各駆動基板23a,23bのうち、後述する第1圧着工程で圧着される駆動基板(本実施形態では第1駆動基板23a)に倣った形状とされ、第1圧着工程で圧着される駆動基板を収容する。
【0048】
ホルダ部101において、ヘッド用凹部103及び基板用凹部104間に位置する部分は、圧着台座105を構成している。圧着台座105は、ヘッドチップ31A,31Bの尾部が載置されるとともに、圧着機構との間で尾部と駆動基板23a,23bを挟持する。
【0049】
図8は、アース部102の断面図である。
図6、
図8に示すように、アース部102は、ホルダ部101のうち、後述する第2圧着工程で圧着される駆動基板(本実施形態では第2駆動基板23b)の各取付片68と平面視で重なる部分にそれぞれ埋め込み固定されている。具体的に、アース部102は、樹脂材料等からなるブロック状の基部110を備えている。基部110は、側面視L字状を呈し、基板用凹部104の開口縁(ホルダ部101の上面)から基板用凹部104の底面に跨って延設されている。
【0050】
基部110のうち、基板用凹部104の底面上に位置する部分には、第2圧着工程において第1駆動基板23aの第1支持プレート62aに接触可能なコンタクトピン111が配設されている。また、基部110のうち、基板用凹部104の開口縁上に位置する部分には、第2圧着工程において第2駆動基板23bの第2支持プレート62bの取付片68に接触可能な接点部112が配設されている。
【0051】
また、基部110内には、コンタクトピン111及び接点部112間を接続する接続配線113が埋設されている。この接続配線113上には、抵抗体114が接続されている。抵抗体114は、電気抵抗値が数百kΩ〜数MΩ程度とされた比較的高抵抗な抵抗体である。
【0052】
図9は
図7に相当する断面図であって、第1圧着工程を説明するための説明図である。
上述した圧着治具100を用いて接続工程を行うには、
図9に示すように、まず第1ヘッドチップ31Aと第1駆動基板23aとを接続する。具体的には、まず第1ヘッドチップ31Aを上方に向けるとともに、第2ヘッドチップ31Bの尾部が圧着台座105上に配置されるように吐出部21をホルダ部101にセットする(セット工程)。続いて、第1ヘッドチップ31Aの尾部において、アクチュエータプレート41の一方の主面41a上に異方性導電膜を貼り付けた後、尾部と、第1駆動基板23aにおける第1FPC61aの接続端部と、を重ね合わせる。この状態で、第1ヘッドチップ31Aの尾部と、第1FPC61aの接続端部と、の重ね合わせ部分を圧着機構により熱をかけながら加圧する(第1圧着工程)。これにより、第1ヘッドチップ31Aと第1駆動基板23aとが圧着される。なお、第1圧着工程において、第1駆動基板23aは第1支持プレート62aの取付片65がホルダ部101の上面(例えば、アース部102の上面)に当接することで、基板用凹部104内への進入が規制されている。
【0053】
次に、
図6、
図7に示すように、第2ヘッドチップ31Bと第2駆動基板23bとを接続する。具体的には、まず吐出部21を表裏反転させ、第2ヘッドチップ31Bを上方に向けるとともに、第1ヘッドチップ31Aの尾部が圧着台座105上に配置されるように吐出部21をホルダ部101にセットする(セット工程)。このとき、第1ヘッドチップ31Aに接続された第1駆動基板23aは、自重によって下方に向けて撓んでおり、基板用凹部104内に収容されるとともに、第1支持プレート62aが基板用凹部104内でコンタクトピン111に接触する。
【0054】
続いて、第2ヘッドチップ31Bの尾部において、アクチュエータプレート41の一方の主面41a上に異方性導電膜を貼り付けた後、尾部と、第2駆動基板23bにおける第2FPC61bの接続端部と、を重ね合わせる。このとき、第2駆動基板23b(第2支持プレート62b)は、取付片68がホルダ部101の上面において、アース部102の接点部112に当接することで、基板用凹部104内への進入が規制される。したがって、第2駆動基板23bは、第1駆動基板23aに対して離間した状態でホルダ部101に保持される。
【0055】
ここで、第2支持プレート62bの取付片68がアース部102の接点部112に接触することで、第1駆動基板23a及び第2駆動基板23b同士がアース部102を介して電気的に接続される。この状態で、第2ヘッドチップ31Bの尾部と、第2FPC61bの接続端部と、の重ね合わせ部分を圧着機構により熱をかけながら加圧する(第2圧着工程)。これにより、第2ヘッドチップ31Bと第2駆動基板23bとが圧着される。すなわち、第2圧着工程では、第1駆動基板23a及び第2駆動基板23bがアース部102に接続された状態で圧着が行われる。
【0056】
ところで、上述した各圧着工程において、アクチュエータプレート41が圧電効果により誘電分極することで、アクチュエータプレート41に電圧が発生し、駆動基板23a,23b(支持プレート62a,62b)が帯電する。具体的には、各支持プレート62a,62bには異なる電荷が帯電し、各支持プレート62a,62b間に電位差が生じる。
【0057】
このとき、上述したように支持プレート62a,62bは、アース部102によって電気的に接続されているため、支持プレート62a,62b間にアース部102の抵抗体114を介して電流が流れる。すなわち、支持プレート62a,62bに帯電した電荷がアース部102に放電され、電荷の持っていた電気エネルギーが抵抗体114で熱エネルギーに変換される。なお、電荷は、支持プレート62a,62bの静電容量と、抵抗体114の電気抵抗値と、の積で算出される時定数に従って放電される。したがって、電気抵抗値を適宜調整することで、放電時間を調整することができる。この場合、例えば抵抗体114の電気抵抗値を大きくすることで、放電時間を長くすることができる。
【0058】
その後、吐出部21及び駆動基板23aを圧着治具100から取り外し、流路部材22やヘッドベース24等を組み付けることで、上述したインクジェットヘッド4が完成する。
【0059】
この構成によれば、圧着工程において、各駆動基板23a,23bをアース部102に接続した状態で、第2ヘッドチップ31Bと第2駆動基板23bとを圧着することで、圧着時に各駆動基板23a,23bに帯電する電荷を放電することができる。そのため、後工程において、各駆動基板23a,23b同士が直接接触する等によって各駆動基板23a,23b間に過電圧が印加され、FPC61a,61bに実装された電子部品が破損するのを抑制できる。そのため、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【0060】
そして、本実施形態では、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図った上で、信頼性の高いインクジェットヘッド4を提供できる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、コンタクトピン111や接点部112を介して各駆動基板23a,23b間を接続する構成について説明したが、これに限られない。例えば、
図10に示すように、アース部200として導電性シートを用いても構わない。導電性シートとしては、スポンジ状のものであって、厚さが例えば5mm程度とされている。なお、
図10では、吐出部21や各駆動基板23a,23bを支持するホルダ部の図示を省略する。
【0062】
このような構成において、第2圧着工程では、各駆動基板23a,23b(FPC61a,61b)間に上述したアース部200を挟持した状態で第2ヘッドチップ31Bに第2駆動基板23bを圧着する。すると、各駆動基板23a,23b間にアース部200を介して電流が流れる。これにより、各駆動基板23a,23bに帯電した電荷が放出され、歩留まりの向上や失敗コストの低下を図ることができる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、上述した実施形態では、圧着治具100側にアース部102を配設した構成について説明したが、これに限られない。例えば、各駆動基板23a,23bにアース部300を予め配設し、第2圧着工程においてこれらアース部300同士を接続した状態で、第2ヘッドチップ31Bと第2駆動基板23bとを圧着しても構わない。
この構成によれば、駆動基板23a,23bに予め配設されたアース部300を介して各駆動基板23a,23b同士を接続することで、圧着工程において両駆動基板23a,23b同士を確実にアース部300に接続できる。また、各駆動基板23a,23b同士がアース部300に接続された状態で、後工程に搬送されるので、各駆動基板23a,23bに帯電した電荷を確実に放電することができる。この場合、FPC61a,61b上に、アース部300に接続される抵抗体(不図示)を別途配設してもよい。
【0065】
また、各アース部300同士の連結は、適宜設計変更が可能であり、例えば対向面同士を突き合わせてもよく、対向面同士を凹凸係合させても構わない。
さらに、アース部300は、各駆動基板23a,23b同士を接続する構成であれば、各駆動基板23a,23bの双方に配設する必要はなく、少なくとも何れかの駆動基板23a,23bに配設されていれば構わない。
【0066】
また、上述した実施形態では、複数のヘッドチップ31A,31Bが積層された構成について説明したが、これに限らず、単層のヘッドチップと駆動基板とを圧着する場合についても、本発明を適用することができる。
さらに、上述した実施形態では、各駆動基板23a,23bの実装面同士が対向する構成について説明したが、これに限られない。
また、上述した実施形態では、異方性導電膜を介してヘッドチップ31A,31Bと駆動基板23a,23bとを接続する構成について説明したが、これに限らず、圧着方法は適宜設計変更が可能である。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。