(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374788
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】空気ばね
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20180806BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20180806BHJP
F16F 9/05 20060101ALI20180806BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
F16F9/58 B
F16F9/32 V
F16F9/05
F16F7/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-264856(P2014-264856)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125541(P2016-125541A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】前村 博之
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−040489(JP,A)
【文献】
特開2008−302902(JP,A)
【文献】
特開2010−169178(JP,A)
【文献】
特公昭47−016942(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G1/00−99/00
B61F1/00−99/00
F16B5/00−5/12
F16F7/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ゴム膜と、これの軸心方向の一端部に気密接合される大径板状部材と、前記筒状ゴム膜の軸心方向の他端部に気密接合されるピストンとを有し、前記筒状ゴム膜の弾性変形に伴って前記他端部側が折り返されて成る裏返し筒部分を転動案内可能な周面が前記ピストンに形成されている空気ばねであって、
前記ピストンと前記大径板状部材とのいずれか一方に弾性体を、かつ、いずれか他方に滑りシートをそれぞれ設け、前記ピストンと前記大径板状部材との前記軸心方向の間隔が所定量縮まるに伴って前記弾性体と前記滑りシートとが当接する状態に構成し、
前記滑りシートは、これと前記弾性体との摩擦力が前記大径板状部材と前記弾性体との摩擦力よりも小となる材料により形成されている空気ばね。
【請求項2】
前記大径板状部材には、これをばね上側部材に固定するためのボルト及び前記筒状ゴム膜の内部に連通するための筒状部材が、前記軸心に関して振り分け配備されて前記大径板状部材を貫通する状態で設けられるとともに、
前記弾性体は、前記軸心に対して、前記ボルト及び前記筒状部材の振り分け方向と交差する方向に偏らせて配置されている請求項1に記載の空気ばね。
【請求項3】
前記弾性体は、ベース板とこのベース板に一体化される弾性部とを有してなり、前記ベース板は、前記軸心に対して前記交差する方向に張り出す状態で前記いずれか一方に固定される支持部に取付けられている請求項2に記載の空気ばね。
【請求項4】
前記滑りシートはフッ素樹脂材により形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の空気ばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス、トラック自動車や鉄道車両等に用いられる空気ばねに係り、詳しくは、筒状ゴム膜と、これの軸心方向の一端部に気密接合される大径板状部材と、筒状ゴム膜の軸心方向の他端部に気密接合されるピストンとを有し、筒状ゴム膜の弾性変形に伴って他端部側が折り返されて成る裏返し筒部分を転動案内可能な周面がピストンに形成されている空気ばねに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の空気ばねとしては、特許文献1(
図1,6など)において開示されたものが知られている。即ち、空気ばねAは、気体室である第1内部空間S1の壁部を構成する縦形円筒状のダイヤフラム(筒状ゴム膜の一例)1と、その縦向きの軸心Pを有するダイヤフラム1の上端に形成される大径ビード部(一端部の一例)1Aにかしめ固定される円板状のアッパープレート(大径板状部材の一例)2と、ダイヤフラム1の下端に形成される小径ビード部(他端部の一例)1Bに密嵌されるピストン3とを備えて構成されている。
【0003】
また、特許文献2においても開示されるように、過剰な圧縮動によるピストン5と上面板(大径板状部材の一例)4との当接を回避し、かつ、弾性支持させるために、ピストン5の頂部にストッパ(弾性体)17が設けられている。これにより、満員のバスのクッション時や走行路面の大きな段差通過などによる過大クッションにより空気ばねが底付きしても、ストッパの弾性作用によって過大なショックが緩和される利点が得られる。
【0004】
ところが、特許文献2の
図2右側に描かれるように、低床バスなどに採用される空気ばねは、ローリング軸心25から上方及び横側方の双方に離れた箇所に配置されるため、クッションに伴いピストン5と上面板4とは上下方向だけでなく、左右方向(横方向)にも明確に相対移動するようになる。従って、ストッパ17が上面板4に当接する際は、ストッパ17が上下に圧縮されながら左右にずれ移動する状況となる。
【0005】
従って、ストッパが上面板に当接するときは、これら両者が擦れながらストッパが圧縮されることになるので、場合によっては異音や騒音が生じることが予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−190883号公報
【特許文献2】特開2006−105253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した過剰なクッション時に当接して緩衝作用を発揮する弾性体を設けた空気ばねにおいて、さらなる工夫により、弾性体が大径板状部材に当接して擦れながら圧縮されることに起因した異音や騒音が生じないようにして、より改善される空気ばねを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、筒状ゴム膜1と、これの軸心P方向の一端部に気密接合される大径板状部材2と、前記筒状ゴム膜1の軸心P方向の他端部に気密接合されるピストン3とを有し、前記筒状ゴム膜1の弾性変形に伴って前記他端部側が折り返されて成る裏返し筒部分1Cを転動案内可能な周面3cが前記ピストン3に形成されている空気ばねにおいて、
前記ピストン3と前記大径板状部材2とのいずれか一方に弾性体14を、かつ、いずれか他方に滑りシート20をそれぞれ設け、前記ピストン3と前記大径板状部材2との前記軸心P方向の間隔が所定量縮まるに伴って前記弾性体14と前記滑りシート20とが当接する状態に構成し、
前記滑りシート20は、これと前記弾性体14との摩擦力が前記大径板状部材2と前記弾性体14との摩擦力よりも小となる材料により形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空気ばねにおいて、
前記大径板状部材2には、これをばね上側部材に固定するためのボルト4及び前記筒状ゴム膜1の内部に連通するための筒状部材19が、前記軸心Pに関して振り分け配備されて前記大径板状部材2を貫通する状態で設けられるとともに、
前記弾性体14は、前記軸心Pに対して、前記ボルト4及び前記筒状部材19の振り分け方向Qと交差する方向Rに偏らせて配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の空気ばねにおいて、
前記弾性体14は、ベース板16とこのベース板16に一体化される弾性部17とを有してなり、前記ベース板16は、前記軸心Pに対して前記交差する方向Rに張り出す状態で前記いずれか一方に固定される支持部9に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の空気ばねにおいて、
前記滑りシート20はフッ素樹脂材により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、デフレート時において筒状ゴム膜の空気による懸架作用に代わって大径板状部材を弾性支持する弾性体が設けられており、その弾性体と当接する滑りシートは、これと弾性体との摩擦力が大径板状部材と弾性体との摩擦力よりも小となる材料により形成されている。
従って、大きくクッションした場合には、弾性体は滑りシートに当接又は引き摺り当接するから、弾性体がアッパープレートに当接又は引き摺り当接する場合に比べて、弾性体と滑りシートとの摩擦力(摩擦係数)は低いものになり、異音や騒音の発生するおそれを解消又は回避することができる。また、滑りシートとの当接によって、当接時の滑り易さが確保されるので、弾性体の破損も抑制又は解消させることが可能である。
その結果、過剰なクッション時に当接して緩衝作用を発揮する弾性体を設けた空気ばねにおいて、弾性体が大径板状部材に当接して擦れながら圧縮されることに起因した異音や騒音が生じないようにして、より改善される空気ばねを提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、弾性体は、軸心に関して振り分け配備されるボルトと筒状部材の振り分け方向と交差する方向に偏らせて配置されているから、ローリング軸心から横及び上下に離れて配置されるなど、クッションに伴って弾性体が上下方向及び横方向の双方に明確に動く挙動を示す空気ばねに好適なものとなる。
即ち、横に移動する分、予めその方向に偏らして配置できるから、クッションに伴って弾性体が上ビード部に当たるといった不都合が生じることなく、良好にクッション作用することができる。
【0014】
この場合、請求項3の発明のように、弾性部を載せるベース板を、軸心に対して交差する方向に張り出す状態で支持部に取付けられている構成の弾性体とすることが好都合である。また請求項4のように、フッ素樹脂により摩擦係数の低い滑りシートを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(a)弾性体の配置構造を示す要部の平面図、(b)弾性体の支持構造を示す要部の平面図
【
図3】アッパープレートを示し、(a)は断面図、(b)は底面図
【
図4】ローリングに伴う空気ばねの状態変化を示す作用図
【
図6】空気ばねが低床バスに採用された例を示す要部の模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による空気ばねの実施の形態を、バスやトラック自動車に適したものとして、特に低床バスに好適なものについて図面を参照しながら説明する。
【0017】
実施形態1による空気ばねAは、
図1に示されるように、縦向きの軸心Pを有するダイヤフラム(筒状ゴム膜の一例)1と、これの上端(軸心P方向の一端部の一例)に気密接合される軸心Yを有する例えば板金製のアッパープレート(大径板状部材の一例)2と、ダイヤフラム1の下端(軸心P方向の他端部の一例)に気密接合されるピストン3とを有し、ダイヤフラム1の弾性変形に伴って下端部側が折り返されて成る裏返し筒部分1Cを転動案内可能な周面3cがピストン3に形成されている。ピストン3は、空気ばねAを構成する下部構造体aに含まれる部品である。
【0018】
上記空気ばねAは、例えば
図6に示すように、低床バス(鉄道車両、トラック等でも良い)において用いられる。即ち、車体10におけるタイヤハウス部分11の下面11aにフレーム(ばね上側部材の一例)Fを介してアッパープレート2が取付けられている。一つ又は複数の固定ボルト4などを有するアッパープレート2には、ダイヤフラム1の上ビード部1A(
図1参照)が支持されており、前記固定ボルト4によってフレームFに取付けられている。
【0019】
アクスル12上の脚部材13に取付けられるピストン3は、
図1に示すように、比較的肉厚の薄い本体筒部3Aと、比較的肉厚の厚い台座部3Bとの二つの部材の一体化により構成されている。本体筒部3Aは、ダイヤフラム1の下ビード部1Bが載せ付けられるリング状の窪み上壁3aと、その外周から一端上に上がるように続く頂環部3b、頂環部3bから続く若干下拡がり状の周面(周壁)3c、周面3cから続いて大きく下拡がりしているテーパ周壁3dとを有する状態に形成されている。
台座部3Bは、大径のフランジ部3e、周側壁3f、底壁3gとを有する深皿状の部材に形成されている。
【0020】
本体筒部3Aと台座部3Bとは、窪み上壁3aに周側壁3fが内嵌される状態での溶接などにより一体化され、それによって下ビード部1Bが嵌り込んで嵌合する箇所(符記省略)を有するピストン3が構成されている。
底壁3gの下面側には、円筒状の下パイプ材5を介して軸心Pを中心とする抜き孔6a付きの底板6が溶接などにより一体化されている。底板6は、複数のボルト7が固定されており、それらボルト7により、例えば、
図6に示すように、脚部材13に螺着により固定される。
【0021】
底壁3gの上面側には、下パイプ材5と同じ材料による上パイプ材8が立設状態で溶接などにより一体化されており、その上端には厚肉の支持板(支持部の一例)9が溶接などにより一体化されている。支持板9には、その上に載せ付けられる厚肉の偏芯板18を介して弾性体14が取付けられている。このように、弾性体14は、底板6やピストン3や上パイプ材8などからなる下部構造体aに載置支持されている。
【0022】
なお、下部構造体aは、図示は省略するが、底壁3gを中心の大孔を有する環状のものとし、上パイプ材8と下パイプ材5とに相当する1個のパイプ材を底壁3gの前記大孔を通して配置する構造のものとすることは可能である。この場合、
図1に示す構造の下部構造体aのように、ピストン3の内外が密封されているのと同じにするには、大孔付き底壁と1個のパイプ材とを全周溶接などによって密閉すればよい。
【0023】
弾性体14は、
図1,2に示されるように、偏芯板18を介して支持板9に単一の取付ボルト15により取付けられる板金製のベース板16と、このベース板16上に一体化される例えばゴム製の弾性部17とを有して構成されている。弾性体14は、軸心Pに対して横方向に所定の間隔dだけ寄せられた軸心Xを持つ偏芯状態で下部構造体aに装備されている。
弾性部17は軸心X(P)方向視で円形ドーナツ状であり、かつ、偏り方向である左右方向Rに関して軸心P側となる端面がカットされたD形状を呈するものに形成されている。弾性部17は、これと同様のD形状に形成されているベース板16に加硫接着などにより一体化されている。
【0024】
弾性部17の中心空所17Aに配置される軸心P方向に向く取付ボルト15は、ベース板16の中心1箇所に形成されている孔(符記省略)、及び偏芯板18の孔(符記省略)を通して支持板9の雌ねじ部9aに、平ワッシャやばねワッシャを伴って(又は伴うことなく)螺着されている。この、軸心Pから左右方向に離れた軸心Xを中心とする1箇所のボルト止め構造により、弾性体14はピストン3に(下部構造体aに)支持されている。
支持板9は、
図2(a),(b)に示されるように、軸心P方向視で前記間隔dを有する長円(角丸長方形)に形成されており、軸心X方向視でベース板16と同じD形の偏芯板18が溶接などにより一体化されている。偏芯板18に、取付ボルト15に対する雌ねじ部を設けてもよい。
【0025】
アッパープレート2には、前述の固定ボルト4と、ダイヤフラム1の内部へのエア流通用の筒状部材19とが、軸芯P(Y)に対して径方向に離れる状態に振り分けて配備されている。
上方突出する固定ボルト4は、その頭部4aがアッパープレート2の下側に位置する状態で貫通配備され、同じく上方突出するとともに外周に雄ねじ19aを有する筒状部材19は、その下端大径部19bがアッパープレート2の下側に位置する状態で貫通配備されている。アッパープレート2は、これら2個のボルトとして機能する固定ボルト4及び筒状部材19を用いてフレームFに固定される(
図6参照)。
【0026】
図2、
図3に示すように、アッパープレート2の下面2aには、平面視で略ひょうたん型を呈する滑りシート20が装備されている。滑りシート20は、PTFEなどのフッ素樹脂製で厚さの比較的薄いシート材で形成されており、接着や貼着などにより下面2aに一体化されている。つまり、滑りシート20は、これと弾性体14との摩擦力がアッパープレート2と弾性体14との摩擦力よりも小となる材料により形成されており、固定ボルト4の頭部4a及び筒状部材19の下端大径部19bに対する円弧状の逃がし部20a,20bが形成されている。
【0027】
図2に示すように、弾性体14は、軸心P(Y)に対して、固定ボルト4及び筒状部材19の振り分け方向である前後方向Qと直交する左右方向(交差する方向の一例)Rに偏らせて配置されている。従って、
図2(a)に示すように、軸心P(y)方向視において、弾性体14は滑りシート20に対して左右方向Rに偏って配置される構成の空気ばねAとされている。これは次に述べる理由による。
【0028】
弾性体14は、主として、ダイヤフラム1がデフレート状態(空気抜き時やパンクなど)になったときにダイヤフラム1の空気による懸架作用(エアサス)に代わってアッパープレート2を弾性支持するものである。また、沈み方向に過剰にクッションされたときに、下部構造体aがアッパープレート2をダイレクトに突き上げて、空気ばねAを損壊するおそれが起きないようにする保護部材としても機能する。
図1の空気ばねAは、裏返し筒部分1Cが周面3cに位置している状態を示しており、アッパープレート2の軸心Yとピストン3の軸心(下部構造体aの軸心)Pとが一直線上にあって一致している状態を示している。
【0029】
さて、
図6に示す低床バスへの装着例において、床壁10Aの直下にあるローリング軸心Kを中心に車体10がローリングした場合についての変化挙動の要部のみを
図4に示してある。
図4は、
図1に示す空気ばねAの要部を描いて検討されたものであり、車体10のセンターラインZ上に設定されるローリング軸心Kに関するローリングに伴う空気ばねAの変化を、位置固定されたアッパープレート2に対するピストン3の動きとして描いてある。
ダイヤフラム1及びピストン3として仮想線で描かれているのが標準状態(自由状態)であり、その上側の実線で描かれているのがクッション状態(車体が沈み込む状態)をそれぞれ示している。
【0030】
空気ばねAは、標準状態においてはアッパープレート2の軸心Yとピストン3の軸心Pとが同一線上にある(
図1参照)が、ピストン3がアッパープレート2に対して上がるクッション状態では、互いの軸心どうしY,Pが左右方向(横方向)に離れ、かつ、捩れた関係になる。クッション状態においては、
図4に示すように、弾性体14の上部が滑りシート20に当接して若干圧縮されている状態を示しており、アッパープレート2と弾性体14とは側面視で平行ではなく、相対角度差が付くとともに水平方向に位置ずれする。
【0031】
つまり、大きくクッションして弾性体14が滑りシート20に当接する状態では、
図4において、弾性部17の上端左側部分から滑りシート20に当接し、かつ、弾性体14は上ビード部1Aに近接するように左右方向に移動する。従って、この場合には、
図1、
図4に示すように、左右移動による上ビード部1Aとの当接おそれを回避しながら、上下方向の弾性作用を得るべく、弾性部17の左側部分をカットした形状の弾性体14が有効である。
【0032】
このように、アッパープレート2の下面2aには滑りシート20が装備されていて、大荷重時などの空気ばねAが大きくクッションした場合には、弾性体14は滑りシート20に擦れながら圧縮、即ち引き摺り当接する。従って、弾性体14がアッパープレート2に擦れながら圧縮、即ち引き摺り当接する場合に比べて、弾性部17と滑りシート20との摩擦力(摩擦係数)は極低いものになり、異音や騒音の発生するおそれを解消又は回避することができる。
また、滑りシート20との当接によって、当接時の滑り易さが確保されるので、弾性部17の破損も抑制又は解消させることが可能である。
【0033】
さらに、
図2、
図5に示すように、ベース板16に一体形成される平面視で円形の突起16Aと、支持板9に一体化されている偏芯板18に形成される平面視で円形の孔(穴や凹部でも良い)18Aとの嵌合により、取付ボルト15に起因する支持板9とベース板16との(ピストン3と弾性体14との)軸心Xに関する相対回動移動を阻止する回り止め機構rが構成されている。ここで、「取付ボルト15に起因する…相対回動移動」とは、締付け方向への回し操作による締付けトルクに伴う連れ回り現象や、走行振動による軸心X回りの相対回動移動又はそのおそれ、或いは取付ボルト15の緩みに伴う相対回動移動などが考えられる。
【0034】
空気ばねAにおいては、
図1,2に示すように、弾性体14は、そのピストン3に対する軸心P周り(軸心X周り)の向きを定めて支持板9に取付ボルト15で取付ける必要がある。回り止め機構rが設けられているので、前述の回動移動の不都合が生じない作用効果が得られるだけでなく、位置決め機能も発揮できる利点も備えた優れものである。
【0035】
〔別実施形態〕
滑りシート20は、ナイロン、PP(ポリプロピレン)など、フッ素樹脂以外の合成樹脂材や、ステンレス材など、要はアッパープレート2より摩擦係数が低い材料であれば良い。また、滑りシート20を、その外周部に作用するボルトや、シートの厚み範囲内に収まる皿ビスでアッパープレート2に固定させる手段も考えられる。
【符号の説明】
【0036】
1 筒状ゴム膜
1C 裏返し筒部分
2 大径板状部材
3 ピストン
3c 周面
4 ボルト
9 支持部
14 弾性体
16 ベース板
17 弾性部
19 筒状部材
20 滑りシート
P 軸心
Q 振り分け方向
R 交差する方向