(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分が、イソブチレン由来の構成単位(a1)とイソプレン由来の構成単位(a2)とを有するイソブチレン−イソプレン共重合体(A1)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
イソブチレン−イソプレン共重合体(A1)において、構成単位(a2)の含有量が、(A1)成分の全構成単位に対して、0.1〜30モル%である、請求項6に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「質量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて、測定した値である。
また、「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値である。
【0014】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、質量平均分子量が2万以上のポリイソブチレン系樹脂(A)、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−block−(エチレン−co−ブチレン)−block−スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、及びスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれる1種以上のスチレン系共重合体(B)、及び軟化点が135℃以下の粘着付与剤(C)を含有する。
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤や、(A)〜(C)成分以外のその他の樹脂を含有してもよい。以下、本発明の粘着剤組成物に含まれる、各成分について詳述する。
【0015】
<ポリイソブチレン系樹脂(A)>
本発明の粘着剤組成物中に含まれるポリイソブチレン系樹脂(A)は、質量平均分子量が2万以上のポリイソブチレン系樹脂である。
(A)成分の質量平均分子量が2万未満であると、粘着剤組成物の凝集力が十分に得られず、粘着性を十分に向上させることができない。また、粘着剤組成物を用いた粘着シートを封止用途に用いた際、粘着シートの粘着力が不十分であり、また、粘着シートの水分浸入の抑制効果も不十分である。さらに、被着体を汚染してしまう場合もある。
なお、基本的には、(A)成分の質量平均分子量が高いほど、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を向上させ、当該粘着シートを封止用途に用いた際の水分浸入の抑制効果も向上する傾向にある。
(A)成分の質量平均分子量は、2万以上であるが、上記観点、及び被着体に対する濡れ性や溶媒に対する溶解性の観点から、好ましくは3万〜100万、より好ましくは5万〜80万、更に好ましくは7万〜60万、より更に好ましくは14万〜45万である。
【0016】
本発明において、ポリイソブチレン系樹脂(A)の構造は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であり、具体的には、下記構成単位(a)を有する樹脂である。
【0018】
ポリイソブチレン系樹脂としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンの共重合体、イソブチレンとn−ブテンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体、及びこれら共重合体を臭素化又は塩素化等したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。
これらのポリイソブチレン系樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
なお、上記ポリイソブチレン系樹脂が共重合体である場合、イソブチレン由来の構成単位が、当該ポリイソブチレン系樹脂を構成する全構成単位の中で一番多く含まれているものとする。
イソブチレン由来の構成単位の含有量は、(A)成分の全構成単位に対して、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは95モル%以上である。
また、(A)成分として含まれる上記ポリイソブチレン系樹脂が共重合体である場合、当該共重合体は、スチレン由来の構成単位を含まないものであり、(B)成分とは区別される。
【0020】
ポリイソブチレン系樹脂の合成方法としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、イソブチレン等のモノマー成分を重合する方法が挙げられる。
また、(A)成分としては、Vistanex(Exxon Chemical Co.製)、Hycar(Goodrich社製)、Oppanol(BASF社製)、等の市販品も使用することができる。
【0021】
本発明の粘着剤組成物の全量に対する(A)成分の含有量は、粘着力を向上させる共に、水分浸入の抑制効果を良好とする観点から、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは25〜85質量%、更に好ましくは30〜80質量%、より更に好ましくは35〜75質量%である。
【0022】
(A)成分としては、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を低く抑制し、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、イソブチレン由来の構成単位(a1)とイソプレン由来の構成単位(a2)とを有するイソブチレン−イソプレン共重合体(A1)を含むことが好ましい。
(A)成分中のイソブチレン−イソプレン共重合体(A1)の含有量は、上記観点から、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0023】
イソブチレン−イソプレン共重合体(A1)において、イソプレン由来の構成単位(a2)の含有量は、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を低く抑制し、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、(A1)成分の全構成単位に対して、好ましくは0.1〜30.0モル%、より好ましくは0.5〜20.0モル%、更に好ましくは0.8〜15.0モル%、より更に好ましくは1.3〜10.0モル%である。
また、イソブチレン由来の構成単位(a1)の含有量は、(A1)成分の全構成単位に対して、好ましくは70.0〜99.9モル%、より好ましくは80.0〜99.5、更に好ましくは85.0〜99.2、より更に好ましくは90.0〜98.7である。
【0024】
(A1)成分の質量平均分子量(Mw)は、2万以上であるが、好ましくは3万〜100万、より好ましくは5万〜80万、より好ましくは7万〜60万、更に好ましくは14万〜45万、より更に好ましくは18万〜35万である。
【0025】
また、(A)成分としては、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力、耐久性、耐候性、濡れ性を向上させる観点から、質量平均分子量が高いポリイソブチレン系樹脂と、質量平均分子量が低いポリイソブチレン系樹脂とを併用することが好ましく、質量平均分子量が27万〜60万のポリイソブチレン系樹脂(α)(以下、「樹脂(α)」ともいう)と、質量平均分子量が5万〜25万のポリイソブチレン系樹脂(β)(以下、「樹脂(β)」ともいう)とを含むことが好ましい。
質量平均分子量の高い樹脂(α)を含むことで、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の耐久性、耐候性、及び粘着力の向上に寄与し、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを封止用途に用いた際に、水分浸入の抑制効果の向上に寄与する。
また、質量平均分子量の低い樹脂(β)を含むことで、樹脂(α)と良好に相溶して、適度に樹脂(α)を可塑化させることができ、それにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性等を向上させることができる。
【0026】
樹脂(α)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは27万〜60万、より好ましくは29万〜48万、更に好ましくは31万〜45万、より更に好ましくは32万〜40万である。
樹脂(α)のMwが27万以上であれば、得られる粘着剤組成物の凝集力を十分向上させることができ、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力、及び水分浸入の抑制効果を向上させることができる。また、被着体への汚染の懸念も解消し得る。
一方、樹脂(α)のMwが60万以下であれば、得られる粘着剤組成物の凝集力が高くなりすぎることにより柔軟性や流動性の低下という弊害を避けることができ、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層の被着体との濡れを良好にすることができる。また、粘着剤組成物を溶液の形態とする際、溶媒に対する溶解性を良好とすることができる。
【0027】
樹脂(β)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万〜25万、より好ましくは8万〜23万、更に好ましくは14万〜22万、より更に好ましくは18万〜21万である。
樹脂(β)のMwが5万以上であれば、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層において、樹脂(β)が低分子成分として分離して粘着剤層の表面に析出し、被着体が汚染される弊害を防ぐことができる。また、高温下で発生するアウトガス発生量が増加する等の物性に及ぼす影響も回避することができる。
一方、樹脂(β)のMwが25万以下であれば、樹脂(A1)を十分に可塑化させることができ、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の被着体との濡れを良好にすることができる。
【0028】
なお、上記の樹脂(α)及び(β)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(α)100質量部に対する、樹脂(β)の含有割合は、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは6〜40質量部、更に好ましくは7〜30質量部、より更に好ましくは8〜20質量部である。
樹脂(β)の含有割合が5質量部以上であれば、樹脂(α)を十分に可塑化させることができ、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の被着体との濡れを良好とすることができると共に、粘着力を向上させることができる。
一方、樹脂(β)の含有割合が55質量部以下であれば、得られる粘着剤組成物の凝集力を十分に向上させることができるため、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートに対して、優れた粘着力、及び耐久性を付与することができる。
【0029】
<スチレン系共重合体(B)>
本発明の粘着剤組成物は、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−block−(エチレン−co−ブチレン)−block−スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、及びスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれる1種以上のスチレン系共重合体(B)を含有する。
粘着剤組成物中に、(B)成分として、上記の群より選ばれる1種以上のスチレン系共重合体を含有することで、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの水分浸入の抑制効果を良好とすると共に、当該粘着シートの粘着力を向上させることができる。
(B)成分の中でも、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を向上させる観点から、SBS及びSEBSから選ばれる1種以上が好ましい。また、当該粘着シートの水分浸入の抑制効果を向上させる観点から、SIB及びSIBSから選ばれる1種以上が好ましい。
【0030】
(B)成分の質量平均分子量(Mw)は、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの水分浸入の抑制効果を良好とすると共に、当該粘着シートの粘着力を向上させる観点から、好ましくは1万〜40万、より好ましくは2万〜30万、更に好ましくは2.5万〜20万、より更に好ましくは3万〜9万である。
(B)成分のMwが1万以上であれば、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を向上させることができる。一方、(B)成分のMwが40万以下であれば、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を良好に保ちつつ、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を小さくすることができ、粘着シートの水分浸入の抑制効果を向上させることができる。
【0031】
(B)成分の軟化点は、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを有機EL素子等の封止用途に用いた場合、当該粘着シートの水分浸入の抑制効果を向上させる観点、並びに当該粘着シートの粘着力を向上させる観点から、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜160℃、更に好ましくは100〜140℃、より更に好ましくは105〜135℃である。
【0032】
(B)成分のスチレン系共重合体に含まれるスチレン比率は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。
【0033】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは6〜140質量部、より好ましくは7〜120質量部、更に好ましくは8〜95質量部、より更に好ましくは9〜88質量部である。
(B)成分の含有量が5質量部以上であれば、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートを有機EL素子等の封止用途に用いた場合、水分浸入を効果的に抑制し、有機EL素子の特性劣化を抑制することができる。また、当該粘着シートの粘着力を向上させることもできる。
一方、(B)成分の含有量が200質量部以下であれば、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を十分に向上させることができ、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を小さくし、粘着シートの水分浸入の抑制効果を良好とすることができる。
【0034】
(A)成分と(B)成分との含有量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは40/60〜95/5、より好ましくは45/55〜92/8、より好ましくは50/50〜90/10、更に好ましくは55/45〜88/12、更に好ましくは60/40〜85/15、より更に好ましくは65/35〜82/15である。
当該含有量比が上記の範囲内であれば、得られる粘着剤組成物を用いた粘着シートの粘着力を向上させつつ、及び当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を小さくし、粘着シートの水分浸入の抑制効果を良好とすることができる。
【0035】
本発明の粘着剤組成物の全量に対する(B)成分の含有量は、相溶性、及び水分浸入の抑制効果を向上させる観点から、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは4〜55質量%、更に好ましくは6〜50質量%、より更に好ましくは8〜47質量%である。
【0036】
<粘着付与剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、軟化点が135℃以下の粘着付与剤(C)を含有する。
本発明において、粘着付与剤とは、上記(A)及び(B)成分やその他の樹脂成分と混合することが可能であり、これらの樹脂成分の粘着性能を向上させる機能を持つ、オリゴマー領域の分子量を有する化合物を意味する。
粘着付与剤の数平均分子量としては、通常100〜18000、好ましくは100〜10000である。
【0037】
本発明において、粘着付与剤(C)の軟化点は135℃以下である。
粘着付与剤(C)の軟化点が135℃を超えると、成分(A)及び(B)を含む粘着剤組成物の粘着性が著しく低下するため好ましくない。また、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートの剥離時にジッピングが発生する恐れがある。
粘着付与剤(C)の軟化点は、135℃以下であるが、上記観点から、好ましくは132℃以下、より好ましくは128℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは105℃以下である。
一方、得られる粘着剤組成物の凝集力を向上させ、優れた粘着性を発現する粘着剤組成物を得る観点から、粘着付与剤(C)の軟化点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、より更に好ましくは90℃以上である。
本発明において、軟化点の異なる粘着付与剤(C)を2種以上組み合わせてもよい。複数の粘着付与剤を用いる場合、これらの粘着付与剤の軟化点の加重平均が上記範囲に属していればよい。そのため、本発明において、複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が135℃以下であれば(上記範囲に属していれば)、軟化点が135℃を超える粘着付与剤を粘着剤組成物中に含有してもよい。
軟化点が135℃を超える粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物中に含まれる粘着付与剤(C)の全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0038】
粘着付与剤(C)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;等の生体由来の樹脂や、C5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;C9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂の水素化石油樹脂;等の石油由来の樹脂等のうち、軟化点が135℃以下のものが挙げられる。
上記粘着付与剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、上記の「C5留分」とは、石油ナフサの熱分解で生成する、ペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等の炭素数5の不飽和炭化水素を意味し、「C5系石油樹脂」とは、このC5留分を共重合して得られ、C5留分を主成分(少なくとも20質量%以上含む)とする樹脂を意味する。
また、上記の「C9留分」とは、石油ナフサの熱分解で生成する、インデン、ビニルトルエン、α又はβ−メチルスチレン等の炭素数9の不飽和炭化水素を意味し、「C9系石油樹脂」とは、このC9留分を共重合して得られ、C9留分を主成分(少なくとも20質量%以上含む)とする樹脂を意味する。
なお、上記の「水素化した樹脂」は、完全に水素化した完全水素化樹脂だけでなく、一部が水素化された部分水素化樹脂も含まれる。
【0039】
これらの粘着付与剤の中でも、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値が小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、脂肪族系炭化水素樹脂が好ましい。
なお、本発明において、「脂肪族系炭化水素樹脂」は、石油由来の樹脂であって、芳香族環及び脂環構造を有さない石油由来の樹脂である。つまり、「脂肪族系炭化水素樹脂」は芳香族環を有する「芳香族系炭化水素樹脂」や、ジシクロペンタジエン系樹脂等の「脂環族系炭化水素樹脂」とは明確に区別されるものである。
【0040】
脂肪族系炭化水素樹脂は、数平均分子量100〜18000(好ましくは100〜10000)のオリゴマー領域の化合物であって、炭素数4又は5のオレフィン及びジエンから選択される一種以上の脂肪族炭化水素の重合体であることが好ましい。
上記オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等が挙げられる。
また、上記ジエンとしては、例えば、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。
また、当該脂肪族炭化水素樹脂は、完全に水素化した完全水素化樹脂であってもよく、一部が水素化された部分水素化樹脂であってもよい。
上記の脂肪族系炭化水素樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記の脂肪族系炭化水素樹脂の中でも、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値が小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、C5留分を主原料(少なくとも20質量%以上含む)に製造された脂肪族炭化水素樹脂が好ましく、C5留分のジエンを主原料に製造された脂肪族炭化水素樹脂がより好ましく、1,3−ペンタジエンを主原料に製造された脂肪族炭化水素樹脂が更に好ましい。
【0042】
脂肪族炭化水素樹脂の含有量は、本発明の粘着剤組成物中に含まれる粘着付与剤(C)の全量に対して、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0043】
なお、本発明の粘着剤組成物において、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の水蒸気透過率の値を小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、芳香族系炭化水素樹脂又は脂環族系炭化水素樹脂を含有しないことが好ましい。
芳香族系炭化水素樹脂及び脂環族系炭化水素樹脂の含有量は、上記観点から、本発明の粘着剤組成物中に含まれる粘着付与剤(C)の全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0044】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは5〜60質量部、より好ましくは8〜50質量部、更に好ましくは10〜45質量部、より更に好ましくは15〜42質量部である。
(C)成分の含有量が5質量部以上であれば、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層について、被着体との濡れが十分に得られ、粘着力を向上させることができると共に、当該粘着剤層の水蒸気透過率の値が小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得ることができる。
一方、(C)成分の含有量が60質量部以下であれば、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層について、被着体によらず優れた粘着力を発現させることができ、ジッピングの発生を抑制することができる。また、当該粘着剤層の水蒸気透過率の値が小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得ることができる。
【0045】
本発明の粘着剤組成物の全量に対する(C)成分の含有量は、上記観点から、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは8〜35質量%、より更に好ましくは12〜30質量%である。
【0046】
<その他の添加剤>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらにその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、例えば、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのその他の成分のそれぞれの含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。
【0047】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の光安定剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリックアシッドアミド化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
樹脂安定剤としては、例えば、イミダゾール系樹脂安定剤、ジチオカルバミン酸塩系樹脂安定剤、リン系樹脂安定剤、硫黄エステル系樹脂安定剤等が挙げられる。
【0048】
<(A)〜(C)成分以外のその他の樹脂成分>
なお、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の(A)〜(C)成分以外のその他の樹脂成分を含有してもよいが、実質的に含まないことが好ましい。
(A)〜(C)成分以外のその他の樹脂成分の含有量は、粘着剤組成物の全量に対して、好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0049】
なお、(A)〜(C)成分以外のその他の樹脂としては、例えば、(B)成分に該当しないスチレン系共重合体が挙げられる。
(B)成分に該当しないスチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−block−(ブタジエン−co−イソプレン)−blockジブロック共重合体、スチレン−block−(ブタジエン−co−イソプレン)−block−スチレントリブロック共重合体、スチレン−block−(エチレン−co−ブチレン)−blockジブロック共重合体(SEB)、カルボキシル変性した上記記載のスチレン共重合体、スチレンとα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物との共重合体等が挙げられる。
【0050】
〔粘着シート〕
本発明の粘着シートは、上述の成分を含有する本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものであれば特に限定されない。
本発明の粘着シートの構成としては、例えば、
図1(a)のように、基材11上に粘着剤層12を有する粘着シート1aが挙げられる。
他にも、
図1(b)のような、基材11の両面に粘着剤層12a、12bを形成した粘着シート1bや、
図1(c)のような、基材11上に形成した粘着剤層12上に更に剥離可能な剥離シート13を形成した粘着シート1cとしてもよい。なお、粘着シート1bは、粘着剤層12a、12b上に、更に剥離シートを有していてもよい。
さらに、
図1(d)のように、基材を用いずに、粘着剤層12が2つの剥離シート13a、13bで挟持された粘着シート1dとしてもよい。なお、粘着シート1dにおいて、剥離シート13a、13bは、同じ種類のものでもよく、異なる種類のものであってもよいが、剥離シート13aと剥離シート13bとの剥離力差が異なるように、使用する剥離シートを適宜選択することが好ましい。
他にも、表面が剥離処理された剥離シートの片面に粘着剤層を設けたものをロール状に巻いた構成の粘着シートとしてもよい。
【0051】
なお、本発明の粘着シートの形状は、特に制限されず、例えば、シート状、ロール状等が挙げられる。例えば、電子デバイス用部材として用いる場合には、シート状であることが好ましい。
【0052】
本発明の粘着シートは、粘着剤層自体の厚みが薄い場合でも優れた粘着力が発現され、また、被着体の種類によらず、高い粘着力を有する。
具体的には、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、被着体に貼付後24時間放置した後の、厚み20μmの粘着剤層を有する粘着シートの粘着力について、被着体がガラスである場合、好ましくは9.0N/25mm以上、より好ましくは10.0N/25mm以上、更に好ましくは12.0N/25mm以上であり、被着体がステンレスである場合、好ましくは9.0N/25mm以上、より好ましくは10.0N/25mm以上、更に好ましくは12.0N/25mm以上である。
粘着力が上記範囲であれば、十分な粘着力を有し、有機EL素子の駆動時の発熱や駆動時に高温下に晒された場合でも、各構成要素の熱膨張率の違いにより発生する有機EL素子中の構造体の界面での応力によって、界面が乖離することを抑制することが出来る。
また、本発明の粘着シートが、
図1(d)の粘着シート1dのような、基材無し粘着シートの形態である場合、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートに裏打ちした際の粘着力が、上記範囲となるように調整することが好ましい。
なお、上記粘着シートの粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0053】
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、優れた透明性を有する。
本発明の粘着シートは、有機EL素子等の封止用途に適用する観点から、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
また、本発明の粘着シートのヘイズは、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.00以下、更に好ましくは0.90以下である。
また、上記粘着シートの全光線透過率の値は、JIS K 7361−1に準じて測定された値であり、ヘイズの値は、JIS K 7136に準じて測定された値であって、具体的にはどちらも実施例に記載の方法により測定した値を示す。
【0054】
以下、本発明の粘着シートの各構成について説明する。
<粘着剤層>
粘着シートの粘着剤層の厚さとしては、用途等に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。
粘着剤層の厚さが0.5μm以上であれば、被着体に対し良好な粘着力が得られる。
一方、粘着剤層の厚さが100μm以下であれば、生産性の面で有利であり、取扱い易い粘着シートとなり得る。
【0055】
40℃、90%RH(相対湿度)の環境下での、本発明の粘着シートが有する厚さ60μmの粘着剤層の水蒸気透過率は、好ましくは10.0g/m
2/day以下、より好ましくは7.0g/m
2/day以下、更に好ましくは5.0g/m
2/day以下、より更に好ましくは4.0g/m
2/day以下である。
当該粘着剤層の水蒸気透過率が10g/m
2/day以下であれば、本発明の粘着シートは水分浸入の抑制効果に優れ、有機EL素子等の封止用途に用いた場合でも、素子内部への水分浸入を抑制することができ、有機EL素子の特性劣化を抑えることができる。
なお、粘着剤層の水蒸気透過率の値は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0056】
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、優れた透明性を有する。
粘着剤層の全光線透過率は、90%以上であることが好ましい。また、粘着剤層の波長550nmの可視光線透過率は、90%以上であることが好ましい。
当該粘着剤層の全光線透過率もしくは可視光線透過率が90%以上であれば、本発明の粘着シートは、有機EL素子等の封止用途として好適に用いることができる。
また、粘着剤層のヘイズは、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.00以下、更に好ましくは0.90以下である。
なお、上記の全光線透過率の値は、JIS K 7361−1に準じて測定された値であり、ヘイズの値は、JIS K 7136に準じて測定された値であって、具体的にはどちらも実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
また、上記の可視光線透過率の値は、実施例に記載の方法により測定した値を示す。
【0057】
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、該粘着剤層からの発生し得るアウトガス発生量が少ない。本発明において、アウトガス発生量は、n−デカン換算値の比較で評価される。
厚さ20μmの粘着剤層の120℃の温度で30分間加熱した際のアウトガス発生量は、n−デカン換算量で、好ましくは1.0μg/cm
2未満、より好ましくは0.5μg/cm
2以下、更に好ましくは0.1μg/cm
2以下である。
当該アウトガス発生量が1.0μg/cm
2未満であれば、粘着剤層が被着体を腐食させることがない。そのため、例えば、本発明の粘着シートを精密機器への貼付用途に適応した場合でも、精密電子部材の誤動作をもたらす可能性が著しく低減する。
なお、粘着剤層のアウトガス発生量の値は、実施例に記載の方法により測定した値を示す。
【0058】
<基材>
基材としては、シート形状であれば特に限定されず、本発明の粘着シートの使用目的に応じて適宜選定される。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等や、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類、各種合成紙、アルミニウム箔や銅箔や鉄箔等の金属箔、不織布等の多孔質材料、並びにポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチックのフィルム、シート及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるプラスチックフィルム、シート等が挙げられる。プラスチックフィルム・シート等のシート形状の基材は、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
使用する基材は、着色の有無については問わないが、封止用部材として用いる場合は、紫外線を十分に透過するものが好ましく、さらに可視光領域においても無色透明であることがより好ましい。
また、本発明の粘着シートにおいて、上述の材料からなる基材の代わりに、ガスバリア用基材とガスバリア層を有するガスバリアフィルムを基材として用いてもよい。ガスバリアフィルムの詳細は、後述のとおりである。
【0059】
基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
【0060】
なお、基材には、更に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0061】
基材がプラスチック系材料の場合、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材表面に対し酸化法や凹凸化法等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、粘着剤層との密着性の向上効果や操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0062】
基材に種類によっては、基材と粘着剤層との間に、所望により目止め層を設けてもよい。この目止め層は、粘着剤組成物又は粘着剤組成物の溶液の基材への浸透防止の他に、基材と粘着剤層との密着性を更に向上させるために、若しくは、基材が紙類で柔軟すぎる場合には、剛性を付与するために設けられる。
このような目止め層としては、特に限定されないが、例えは、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を主成分(少なくとも20質量%以上含有する)として、必要に応じ、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラーを添加したもの等からなる層が挙げられる。
この目止め層の厚さは、特に制限はないが、通常0.1〜30μmである。
【0063】
<ガスバリアフィルム>
本発明の粘着シートの基材としては、ガスバリア用基材とガスバリア層とを有するガスバリアフィルムを用いることが好ましい。当該ガスバリアフィルムは、ガスバリアフィルム用基材の少なくとも一方の面側にガスバリア層を有するものであればよい。なお、ガスバリア層は、単層であっても複数層であってもよい。
【0064】
(ガスバリアフィルム用基材)
ガスバリアフィルム用基材としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等のポリアミド、ルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー等、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレートの樹脂からなるシート等が挙げられる。
これらの中でも、透明性に優れ、汎用性の観点から、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
【0065】
ガスバリアフィルム用基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱いやすさの観点から、好ましくは2〜200μm、より好ましくは10〜150μm、更に好ましくは20〜100μmである。
【0066】
(ガスバリア層)
ガスバリア層を形成する材料としては、酸素及び水蒸気の透過を阻止するものであれば、特に制約されず、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、テトラオルガノシラン化合物等の珪素化合物、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフロロエチレン等の樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ガスバリア性を向上させる観点から、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、テトラオルガノシラン化合物等の珪素化合物、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物が好ましく、透明性の観点から、(1)ポリシラザン化合物、(2)ポリカルボシラン化合物、(3)ポリシラン化合物、(4)ポリオルガノシロキサン化合物、及び(5)テトラオルガノシラン化合物がより好ましい。
以下、上記の(1)〜(5)の化合物の詳細について説明する。
【0067】
((1)ポリシラザン化合物)
ポリシラザン化合物は、分子内に、(−Si−N−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子であり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0069】
式(1)中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
これらの中でも、R
1〜R
3としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、及びフェニル基のいずれかが好ましく、水素原子がより好ましい。
式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン化合物としては、入手容易性及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、R
1〜R
3が全て水素原子である無機ポリシラザン、又はR
1〜R
3の少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、無機ポリシラザンがより好ましく、ペルヒドロポリシラザンが更に好ましい。
ポリシラザン化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0070】
((2)ポリカルボシラン化合物)
ポリカルボシラン化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子化合物であり、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0072】
式(2)中R
4、R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。R
4、R
5は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
また、R
6は、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
【0073】
式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン化合物としては、R
4、R
5が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R
6がアルキレン基又はアリーレン基であるものが好ましく、R
4、R
5がそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、R
6がアルキレン基であるものがより好ましく、R
4、R
5がそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R
6が炭素数1〜6のアルキレン基であるものが更に好ましい。
ポリカルボシラン化合物の質量平均分子量は、通常400〜12000である。
【0074】
((3)ポリシラン化合物)
ポリシラン化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である。かかるポリシラン化合物としては、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0076】
式(3)中、R
7、R
8は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
【0077】
式(3)で表される繰り返し単位を有するポリシラン化合物としては、R
7及びR
8が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基であるものが好ましく、R
7及びR
8が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であるものがより好ましく、R
7及びR
8が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基であるものが更に好ましい。
【0078】
ポリシラン化合物の形態は、特に制限されず、直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等の非環状ポリシランや、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、塩素原子等のハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
【0079】
ポリシラン化合物の質量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは300〜100000、より好ましくは400〜50000、更に好ましくは500〜30000である。
【0080】
((4)ポリオルガノシロキサン化合物)
ポリオルガノシロキサン化合物が有する主鎖構造には制限は無く、直鎖状、ラダー状、籠上のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
例えば、直鎖状の主鎖構造を有する化合物としては、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられ、ラダー状の主鎖構造を有する化合物としては、下記式(5)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられ、籠状の主鎖構造を有する化合物としては、下記式(6)で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0084】
式(4)〜(6)中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等から選択される非加水分解性基を表す。式中のRx、Ry、Rzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよいが、式(4)中のRxが2つとも水素原子であることはない。
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、それぞれ独立して、無置換若しくは置換基を有する、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、3−グリシドキシプロピル基、又はフェニル基がより好ましい。
【0085】
((5)テトラオルガノシラン化合物)
テトラオルガノシラン化合物は、ケイ素元素に4個の加水分解性基が結合した化合物であり、具体的には、式(7):SiX
4で表される化合物である。
式(7):SiX
4中、Xは加水分解置換基を表し、互いに同一であっても相異なっていてもよい。
Xとしては、式(8):OR(Rは炭素数1〜10の炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)で表される基、式(9):OSi(R
a)(R
b)(R
c)で表される基(R
a、R
b、R
cはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0086】
テトラオルガノシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシラン、テトラブトキシシラン等のテトラ(C1〜C10)アルコキシシラン;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン等のトリ(C1〜C10)アルコキシハロゲノシラン;ジメトキジシクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン等のジ(C1〜C10)ジハロゲノアルコキシシラン;メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン等のモノ(C1〜C10)アルコキシトリハロゲノシラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のテトラハロゲノシラン;が挙げられる。ここで、「(C1〜C10)」は、炭素数が1〜10であることを表す。
これらのテトラオルガノシラン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
これらの中でも、取り扱い性に優れ、ガスバリア性を向上させる観点から、テトラ(C1〜C10)アルコキシシランが好ましい。なお、これらのテトラオルガノシラン化合物は、適当な溶媒中、水及び必要に応じて触媒の存在下で、加水分解・脱水縮合させることが好ましい。
【0088】
テトラオルガノシラン化合物の加水分解物又は脱水縮合物の質量平均分子量は、特に限定されないが、機械的強度にも優れるガスバリア層を形成する観点から、好ましくは200〜50000、より好ましくは200〜30000、更に好ましくは200〜10000である。質量平均分子量が200以上であれば、十分な被膜形成能力を有し、50000以下であれば、十分な機械強度を有する膜が形成される。
【0089】
ガスバリア層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上述の材料を有機溶剤に溶解した溶液を、上記基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
また、他の形成方法としては、上記材料を蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材上に形成する方法が挙げられる。
【0090】
形成されるガスバリア層の厚みは、ガスバリア性能と取り扱い性の観点から、好ましくは20nm〜100μm、より好ましくは30〜500nm、更に好ましくは40〜200nmである。なお、本発明においては、ガスバリア層が、ナノオーダーであっても、十分なガスバリア性能を有する粘着シートとすることができる。
【0091】
さらに、ガスバリア層は、水蒸気透過率の値が小さく、水分浸入の抑制効果に優れた粘着シートを得る観点から、前述のポリシラザン化合物を含む層の表面に対して、転化処理を施したものであることが好ましい。
転化処理としては、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等が挙げられ、これらの中でも、イオンを注入することが好ましい。イオンを注入することで、高い透明性をもったままガスバリア性能を向上させることができる。イオンを注入する工程としては、特に限定されないが、例えば、基材上にガスバリア層を形成した後、該ガスバリア層にイオンを注入する方法が挙げられる。
【0092】
注入されるイオンとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の金属のイオン等が挙げられる。
これらの中でも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性能と透明性を有する粘着シートを得る観点から、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
なお、イオンの注入量は、必要なガスバリア性、透明性等の粘着シートの使用目的等を考慮して適宜選択される。
【0093】
イオン注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)等が挙げられる。これらの中でも、簡便に優れたガスバリア性等を有する粘着シートを得る観点から、プラズマイオン注入法が好ましい。
プラズマイオン注入法は、例えば、プラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ガスバリア層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ガスバリア層の表面部に注入して行うことができる。
【0094】
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ガスバリア層の厚み、粘着シートの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmである。
【0095】
このようにして得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、40℃、90%RH(相対湿度)において、好ましくは0.5g/m
2/day以下、より好ましくは0.05g/m
2/day以下である。
なお、ガスバリアフィルムの水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0096】
<剥離シート>
剥離シートとしては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離シート用基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離シート用の基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0097】
〔本発明の粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、上述の粘着剤組成物に有機溶媒を加えた粘着剤組成物の溶液を公知の塗布方法により製造する方法が挙げられる。
【0098】
本発明の粘着剤組成物は、更にトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒を配合し、粘着剤組成物の溶液としてもよい。
有機溶媒を配合した場合の粘着剤組成物の溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。10質量%以上であれば、有機溶媒の使用量としては十分であり、60質量%以下であれば、適度な粘度となり、優れた塗布作業性を有する溶液となり得る。
【0099】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0100】
具体的な製造方法としては、粘着シートの構成により以下の方法が挙げられる。
図1(a)のような基材の片面に粘着剤層を有する粘着シート1aは、例えば、基材11の一方の面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して粘着剤層12を形成して作製することができる。また、基材11の一方の面上に、
図1(d)のような両面粘着シート1dの両方の剥離シートを除去して表出した粘着剤層を貼り合わせて作製することもできる。
【0101】
図1(b)のような基材の両面に粘着剤層を有する粘着シート1bは、例えば、基材11の両面に粘着剤組成物の溶液を直接塗布して粘着剤層12a、12bを形成して作製することができる。また、基材11の一方の面上に、
図1(d)のような両面粘着シート1dの一方の剥離シートを除去して表出した粘着剤層を貼り合わせ、基材11の他方の面上に、粘着剤組成物の溶液を直接塗布して作製することもできる。
【0102】
図1(c)のような基材上に、粘着剤層及び剥離シートをこの順で有する粘着シート1cは、例えば、上述のようにして得られた粘着シート1aの粘着剤面に剥離シート13をラミネートして作製することができる。また、剥離シート13の剥離処理面に上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して形成した粘着剤層12と基材11とを貼り合わせて作製することができる。
【0103】
図1(d)のような、基材を用いずに、粘着剤層12を2つの剥離シートで挟持した構成を有する粘着シート1dは、例えば、剥離シート13aの剥離処理面に上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して形成した粘着剤層12と剥離シート13bとを貼り合わせて作製することができる。また、両面に剥離処理された剥離シートの片面に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布し、ロール状に巻いて1層テープ状の基材を有さない両面粘着性テープとして作製することもできる。なお、前述のように、剥離シート13aと剥離シート13bとの剥離力差が異なるように調整することが好ましい。
【0104】
〔本発明の粘着シートの用途〕
本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートは、優れた粘着力を有し、水分浸入の抑制効果に優れており、透明性が良好で、アウトガス発生量を抑制し得る。
そのため、本発明の粘着シートは、有機EL素子等の封止用部材として好適であり、本発明の粘着シートを封止用部材として用いた場合、水分浸入や有機EL素子の駆動時の発熱による粘着シートの剥離を抑制することができ、有機EL素子の特性劣化を抑えることができる。
【0105】
具体的には、本発明の粘着シートは、例えば、有機トランジスタ、有機メモリー、有機EL素子等の有機デバイス;液晶ディスプレイ;電子ペーパー;薄膜トランジスタ;エレクトロクロミックデバイス;電気化学発光デバイス;タッチパネル;太陽電池;熱電変換デバイス;圧電変換デバイス;蓄電デバイス;等の電子デバイスの封止用部材として用いることができる。
これらの中でも、本発明の粘着シートは、有機EL素子の封止用途として用いられることが好ましい。
【0106】
本発明の粘着シートで封止した有機EL素子の例を
図2に示す。なお、以下、有機EL素子の封止について説明するが、本発明の粘着シートは、有機EL素子等の有機デバイスに限らず、上述の種々の電子デバイスの封止用途でも好適に用いることができる。
有機EL素子20は、ガラス基板21上に構造体22が形成されている。構造体22は、透明電極、正孔輸送層、発光層及び背面電極等が積層されたものである。そして、この構造体22及びガラス基板21上に、本発明の粘着シート1が積層され、更にこの粘着シート1上にガスバリアフィルム23が固着されている。本発明の粘着シート1の粘着剤層が、構造体22及びガラス基板21と密着し固着されることで、封止された有機EL素子20となる。本発明の粘着シートを用いれば、高温加熱や紫外線照射等の処理を必要とせず、簡便に有機EL素子を封止することができる。
【0107】
また、本発明の粘着シートで封止した有機EL素子の特性について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の粘着シート若しくはガラスで封止した有機EL素子の電圧と発光輝度との関係を示す図である。ガラスで封止した有機EL素子は、電圧の上昇に伴い、有機EL素子の構造体に熱が発生し、その熱により素子が破壊され、発光輝度の低下が見られる。一方、本発明の粘着シートは、構造体で発生した熱を外部へ逃がすことができるため、電圧を上昇しても、発光輝度の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0108】
以下の実施例及び比較例で用いた成分の質量平均分子量(Mw)及び軟化点は、以下に示す方法により測定した値である。
【0109】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0110】
<軟化点>
JIS K 2531に準拠して測定した値を用いた。
【0111】
以下の示す実施例及び比較例で作製した基材付き粘着シートもしくは基材無し粘着シートを用いて測定したこれらの粘着シートの各物性及び特性は、下記の方法に基づいて測定及び評価したものである。
【0112】
<粘着力>
実施例及び比較例で作製した基材付き粘着シートを25mm×300mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、軽剥離シートを剥がし、下記被着体に貼付した。貼付に際しては、被着体に粘着シートを貼着後、当該粘着シート上を重さ2kgのローラーを用いて、1往復させて、被着体と粘着シートを仮圧着し、ラミネーターを用いて、80℃でラミネートした。
その後、23℃、50%RHの環境下で、貼付後24時間静置した後、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、各被着体に対する粘着力(N/25mm)を測定した。
粘着力の測定に用いた被着体は以下のとおりである(〔 〕は、後述の表中の略称を示す)。
・ソーダライムガラス〔ガラス〕:エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm。
・ステンレス板〔SUS〕:SUS304鋼板、360番研磨。
【0113】
<可視光透過率>
実施例及び比較例で作製した基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して、表出した粘着剤層と、ガラス板(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm)とを貼付した。そして、基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して、粘着剤層が表出したガラス板付き粘着シートを得た。
このガラス板付き粘着シートの粘着剤層の波長550nmの可視光透過率を、可視光透過率測定装置(島津製作所社製、製品名「UV−3101PC」)を用いて、測定した。
【0114】
<アウトガス発生量>
実施例及び比較例で作製した基材無し粘着シートを20cm
2の大きさに裁断した。
そして、軽剥離シート及び重剥離シートを除去し、両面剥き出しになった粘着シートの粘着剤層をアンプル瓶に封入し、パージ&トラップGC Mass(日本電子工業(株)製、製品名「JHS−100A」)を用いて、当該アンプル瓶を120℃で、30分間加熱して、発生するガスを採取した。
その後、GC Mass(PERKIN ELMER製、製品名「Turbo Mass」)により、n−デカンを用いて作成した検量線より、発生するガス量をn−デカン換算量(μg/cm
2)として算出した。
【0115】
<水分浸入試験>
図4は、粘着シートの水分浸入試験に用いる試験用積層体の(a)平面図及び(b)正面図(断面図)である。
まず、
図4の(a)に示された大きさのガラス基板51上に、真空蒸着法にて、縦32mm、横40mmで膜厚100nmのカルシウム層52を形成した。
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム23a上にアルミニウム層23bが接着剤で貼合されたガスバリアフィルム23(アジヤアルミ社製、商品名「アルペット7×38」、アルミニウム層:7μm、PETフィルム:38μm)を別途用意した。
実施例及び比較例で作製した基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して表出した粘着剤層12と、上記のガスバリアフィルム23のアルミニウム層23bとを、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で貼付した。
そして、基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して表出した粘着剤層12と、ガラス基板51及びカルシウム層52とを、加熱ラミネータ(加熱温度:80℃)を用いて、窒素雰囲気下にて、貼り合わせた。このようにして、カルシウム層52が粘着シートの粘着剤層12により封止された試験用積層体50を作製した(
図4の(b)参照)。
作製した試験用積層体50を、60℃、90%RH(相対湿度)の環境下で、24時間、72時間、100時間、170時間静置後、水分浸入によってカルシウム層が変色した割合(水分浸入の割合)を目視で確認し、下記の基準により評価した。
なお、上記時間静置している途中で、C評価になった場合は、その後の評価を行わずに終了した。
・A:水分が浸入して変色しているカルシウム層の面積が全体の20%未満である。
・B:水分が浸入して変色しているカルシウム層の面積が全体の20%以上60%未満である。
・C:水分が浸入して変色しているカルシウム層の面積が全体の60%以上である。
【0116】
<水蒸気透過率>
実施例及び比較例で作製した基材無し粘着シートを3枚使用して、以下のようにして、試験サンプルを作製した。
まず、実施例及び比較例で作製した1枚目の基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して表出した粘着剤層の面上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂社製、厚さ:6μm)でラミネートした。
次に、1枚目の基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して表出した粘着剤層と、実施例及び比較例で作製した2枚目の基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して表出した粘着剤層とを貼り合わせた。
さらに、2枚目の基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して表出した粘着剤層と、実施例及び比較例で作製した3枚目の基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して表出した粘着剤層とを貼り合わせ、厚み20μmの粘着剤層を3枚重ね合わせた。
最後に、3枚目の基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して表出した粘着剤層と、PETフィルム(三菱樹脂社製、厚さ6μm)とを貼り合わせ、ラミネートし、厚さ60μmの粘着剤層が2枚のPETフィルムにより挟持された、水蒸気透過率測定用の試験サンプルを作製した。
そして、透過率測定器(LYSSY社製、製品名「L89−500」)を用いて、40℃、90%RH(相対速度)の環境下での、作製した水蒸気透過率測定用の試験サンプルの水蒸気透過率を測定した。
なお、ラミネートに用いたPETフィルム2枚の水蒸気透過率は43g/m
2/dayであった。つまり、粘着剤層の水蒸気バリア性が全く無ければ、測定される試験サンプルの水蒸気透過率は43g/m
2/day前後の値となる。当該値が低いほど、粘着剤層の水蒸気バリア性が優れている。
【0117】
<全光線透過率、ヘイズ>
実施例及び比較例で作製した基材無し粘着シートの軽剥離シートを剥離して、表出した粘着剤層と、ガラス板(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm)とを貼付した。そして、基材無し粘着シートの重剥離シートを剥離して、粘着剤層が表出したガラス板付き粘着シートを得た。
そして、ガラス板付き粘着シートの全光線透過率を、JIS K 7361−1に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、製品名「NDH−2000」)を用いて、測定した。
また、ガラス板付き粘着シートのヘイズは、JIS K 7136に準じて、上記のヘイズメーターを用いて測定した。
【0118】
[実施例1A〜5A]
(1)粘着剤組成物の溶液の調製
表1に示す種類及び配合量(固形分比)で、(A)〜(C)成分を添加し、トルエンで溶解して、固形分濃度20質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。
なお、実施例1A〜5Aで使用した、表1に示す(A)〜(C)成分の詳細は以下のとおりである。
<(A)成分>
・「Oppanol B50」(商品名、BASF社製):質量平均分子量34万。
・「Oppanol B30」(商品名、BASF社製):質量平均分子量20万。
<(B)成分>
・「P−907Y」(商品名、東洋アドレ社製):SEBS及びSEBを含有する混合樹脂、SEBS及びSEBの含有量=30質量%、軟化点=112℃。
・「P−907NA」(商品名、東洋アドレ社製):SEBS及びSEBを含有する混合樹脂、SEBS及びSEBの含有量=20質量%、軟化点=128℃。
なお、表1中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対する、P−907Y又はP−907NA中に含まれるSEBS及びSEBの合計含有量(固形分比)を表す。
(C)成分
・「アルコンP−125」(商品名、荒川化学工業社製):水素化石油樹脂(脂環族系飽和炭化水素樹脂)、軟化点125℃。
【0119】
(2)基材付き粘着シートの作製
上記の調製した粘着剤組成物の溶液を、基材である、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製、製品名「コスモシャインA4100」、厚み50μm)上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を120℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
次いで、形成した粘着剤層の面上に、軽剥離シートである、表面がシリコーン剥離処理されたPETフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET381130」、厚み38μm)の剥離処理面を貼付して、
図1(c)の粘着シート1cと同じ構成を有する、基材付き粘着シートを作製した。
【0120】
(3)基材無し粘着シートの作製
上記の調製した粘着剤組成物の溶液を、重剥離シートである、表面がシリコーン剥離処理されたPETフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」、厚み38μm)の剥離処理された面上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を120℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
次いで、形成した粘着剤層の面上に、軽剥離シートである、表面がシリコーン剥離処理されたPETフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET381130」、厚み38μm)の剥離処理面を貼付し、2枚の剥離シートに挟持された、
図1(d)の粘着シート1dと同じ構成を有する、基材無しの粘着シートを作製した。
【0121】
[比較例1A]
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)(日本ゼオン社製、商品名「Quintac3421」、スチレン含有量:14質量%、Mw:12万)100質量部(固形分)をトルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。
この調製した粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例1A〜5Aと同様にして、基材付き粘着シート及び基材無し粘着シートを作製した。
【0122】
[比較例2A]
単量体成分として、アクリル酸ブチル90質量部及びアクリル酸10質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。そして、4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行ない、アクリル系共重合体(Mw:65万)を含む酢酸エチル溶液(固形分濃度33質量%)を得た。
得られたアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液100質量部(固形分)に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、製品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートの酢酸エチル溶液、固形分75質量%)を1.5質量部(固形分比)を添加してトルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。
そして、この調製した粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例1A〜5Aと同様にして、基材付き粘着シート及び基材無し粘着シートを作製した。
【0123】
実施例1A〜5A及び比較例1A〜2Aで作製した基材付き粘着シートもしくは基材無し粘着シートを用いて、上記の方法に基づき、粘着シートの粘着力、可視光透過率、アウトガス発生量、及び水分進入試験について測定及び評価した。それらの結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例1A〜5Aの粘着シートは、優れた粘着力を有し、可視光透過率が高く、アウトガス発生量が非常に低い結果となった。また、水分浸入試験の結果から、水分浸入の抑制効果が高く、粘着シートの剥離を抑制することができ、有機EL素子等の特性劣化を抑えることができると考えられる。
一方、比較例1A及び2Aの粘着シートは、水分浸入試験の結果から、実施例の粘着シートに比べて、水分浸入の抑制効果が不十分である結果となった。
【0126】
[実施例1B〜9B、比較例1B〜5B]
表2に示す種類及び配合量(固形分比)で、(A)〜(C)成分を添加し、トルエンで溶解して、固形分濃度20質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。
そして、これらの調製した粘着剤組成物の溶液を用いて、上述の実施例1A〜5Aと同様にして、基材付き粘着シート並びに基材無し粘着シートを作製した。
【0127】
なお、表2中の(A)〜(C)成分の詳細は以下のとおりである。
<(A)成分>
・「PIB樹脂混合物」:「Oppanol B50(商品名、BASF社製、Mw:34万のポリイソブチレン系樹脂)」/「Oppanol B30(商品名、BASF社製、Mw:20万のポリイソブチレン系樹脂)」=10/1(質量比)の割合で含有するポリイソブチレン系樹脂混合物。
<(B)成分>
・「KratonG1726」(商品名、クレイトンポリマー社製):SEBS(Mw:7万)/SEB(Mw:3.5万)=30/70(質量比)の割合で含有するスチレン系共重合体混合物。スチレン含有量:30質量%。
<(C)成分>
・「Quinton R−100」(商品名、日本ゼオン社製):脂肪族系炭化水素樹脂(C5留分から抽出された高純度の1,3−ペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂)、軟化点:96℃。
【0128】
上記の実施例1B〜9B及び比較例1B〜5B、並びに上述の比較例1A〜2Aで作製した基材付き粘着シートもしくは基材無し粘着シートを用いて、上記の方法に基づき、粘着シートの粘着力、水蒸気透過率、全光線透過率、及びヘイズについて測定した。それらの結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
実施例1B〜9Bの粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、全光線透過率が高く、ヘイズが低いため、透明性が良好であった。また、実施例1B〜9Bの粘着シートは、粘着剤層の水蒸気透過率が低く抑えられているため、水分浸入の抑制効果に優れており、有機EL素子等の特性劣化を抑えることができると考えられる。
一方、比較例1Bの粘着シートは、水蒸気透過率は低く抑えられているものの、本実施例1B〜9Bの粘着シートに比べて、粘着力が劣る結果となった。
また、比較例2B〜5B及び比較例1A〜2Aの粘着シートが有する粘着剤層は、実施例1B〜9Bの粘着シートが有する粘着剤層に比べて、水蒸気透過率が高い結果となったため、これらの粘着シートは、有機EL素子等の封止用途に使用しても、水分浸入の抑制効果が不十分であるため、有機EL素子等の特性劣化を抑制することが難しいと考えられる。
【0131】
[実施例1C〜26C、比較例1C〜11C]
表3−1又は表3−2に示す種類及び配合量(固形分比)で、(A)〜(C)成分、粘着付与剤を添加し、トルエンで溶解して、固形分濃度20質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。
そして、これらの調製した粘着剤組成物の溶液を用いて、上述の実施例1A〜5Aと同様にして、基材付き粘着シート並びに基材無し粘着シートを作製した。
【0132】
なお、表3−1及び表3−2中の(A)〜(C)成分、粘着付与剤の詳細は以下のとおりである。
<(A)成分>
・「イソブチレン−イソプレン共重合体」:日本ブチル社製、商品名「Exxon Butyl 268」、Mw:26万、イソブチレン由来の構成単位の含有量:98.3モル%、イソプレン由来の構成単位の含有量:1.7モル%。
<(B)成分>
・「KratonG1726」(商品名、クレイトンポリマー社製):SEBS(Mw:7万)/SEB(Mw:3.5万)=30/70(質量比)の割合で含有するスチレン系共重合体混合物、スチレン含有量:30質量%。
・「SIBSTAR 103T」(商品名、カネカ社製):SIBS、Mw:10万、スチレン含有量:30質量%。
・「SIBSTAR 062M」(商品名、カネカ社製):SIBS、Mw:6万、スチレン含有量:20質量%、軟化点:96℃。
<(C)成分>
・「Quinton A−100」(商品名、日本ゼオン社製):脂肪族系炭化水素樹脂、軟化点:100℃。
<粘着付与剤>
・「アイマープ P−140」(商品名、出光興産社製):ジシクロペンタジエンと芳香族ビニルモノマーとの共重合樹脂、軟化点:140℃。
【0133】
上記の実施例1C〜26C及び比較例1C〜11Cで作製した基材付き粘着シートもしくは基材無し粘着シートを用いて、上記の方法に基づき、粘着シートの粘着力、水蒸気透過率、全光線透過率、及びヘイズについて測定した。それらの結果を表3−1及び表3−2に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
実施例1C〜26Cの粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、全光線透過率が高く、ヘイズが低いため、透明性が良好であった。また、実施例1C〜26Cの粘着シートは、粘着剤層の水蒸気透過率が低く抑えられているため、水分浸入の抑制効果に優れており、有機EL素子等の特性劣化を抑えることができると考えられる。
一方、比較例1C〜3C、11Cの粘着シートは、水蒸気透過率は低く抑えられているものの、本実施例1C〜26Cの粘着シートに比べて、粘着力が劣る結果となった。
また、比較例4C〜10Cの粘着シートが有する粘着剤層は、実施例7C〜26Cの粘着シートが有する粘着剤層に比べて、水蒸気透過率が高い結果となったため、これらの粘着シートは、有機EL素子等を封止用途に使用しても、水分浸入の抑制効果が不十分であるため、有機EL素子等の特性劣化を抑制することが難しいと考えられる。加えて、比較例4C、7C、10Cの粘着シートは、水蒸気透過率が高いだけでなく、粘着力も不十分である結果となった。