(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該加熱水流は、未処理水流を水性処理区域へ送ることによって作られる処理済み水流を含み、該処理済み水流は50ppm未満の2価および多価陽イオンを含み、さらに該処理済み水流を熱交換区域へ送って該加熱水流を作ることを含む、請求項1に記載のプロセス。
該繊維スラリー区域は、水力パルプ製造機、連続式攪拌タンク反応器、回分式攪拌タンクからなる群から選ばれた少なくとも1つの装置を備える、請求項1に記載のプロセス。
該開繊区域は、混合タンク、回分式攪拌タンク、押出流れ反応器、管、および連続式攪拌タンク反応器からなる群から選ばれた少なくとも1つの装置を備える、請求項1に記載のプロセス。
該一次固液分離区域は、穴あき籠式遠心分離機、連続式真空ベルト濾過器、回分式真空ヌッチェ型濾過器、回分式穴あき沈殿タンク、二重針金脱水装置、圧縮区域付き連続式水平ベルト濾過器、くさび型針金濾材付き無振動傾斜網装置、連続真空ドラム濾過器、および脱水搬送機ベルトからなる群から選ばれた少なくとも1つの装置を備える、請求項1に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、湿気がある中で、特にヒトの体液に曝されたときに、引張強度、吸水性、柔軟性、および布としての完全性を示す水分散性繊維および繊維状物品を提供する。本発明の繊維および繊維状物品は、加工中の繊維の塊の発生または融合を防ぐために油、ろう、脂肪酸による仕上げ、または大量(一般に10重量%以上)の染料または充填剤を用いる必要がない。また、本発明の新規な繊維で作られた繊維状物品は結合剤を必要とせず、家庭の下水道または公共下水道内で容易に分散または溶解する。
【0041】
一般的な一態様では、本発明は少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含む水分散性繊維を提供し、上記スルホポリエステルは、
(A)1つ以上のジカルボン酸の残基と、
(B)芳香環または環状脂肪族に結合した2つの官能基と1つ以上のスルホン酸基を有する少なくとも1つのスルホ単量体の残基を全反復単位に対し約4〜約40モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記スルホポリエス
テルはさらに
(C)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約25モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。本発明の繊維は、スルホポリエステルと混合された水分散性重合体を必要に応じて含み、スルホポリエステルと混合された水非分散性重合体を必要に応じて含み、ただしこの混合は非混和性混合である。本発明の繊維は、繊維の全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。本発明はこれらの繊維を含む繊維状物品も含み、雑巾、ガーゼ、ちり紙、おむつ、成人用失禁パンツ、練習用おむつ、衛生ナプキン、包帯、および手術着などの介護用品が含まれてもよい。繊維状物品は1層以上の繊維の吸収層を有してもよい。
【0042】
本発明の繊維は単一成分繊維でも、二成分繊維、または多成分繊維でもよい。例えば本発明の繊維は、スルホポリエステル単品またはスルホポリエステル混合品の溶融紡糸によって作られてもよく、異形断面を有する短繊維(staple)、単繊維(monofilament)、および多繊維(multifilament)を含んでもよい。また本発明は、例えば米国特許番号第5,916,678号に記述されているような多成分繊維を提供し、本多成分繊維は、スルホポリエステルおよびスルホポリエステルとは非混和性である1種以上の水非分散性重合体を別々に紡糸口金から押し出して作られてもよく、紡糸口金の断面形状は、例えば海島型、鞘芯型、並列型、リボン型(薄片型)、またはパイ片型構造に成形または加工されている。後で界面層またはパイ片を溶解させてスルホポリエステルを除去し、水非分散重合体のさらに小さい単繊維すなわち極細繊維を残留させてもよい。水非分散重合体のこれらの繊維は、スルホポリエステルを除去する前の多成分繊維よりも寸法が小さい繊維を有する。例えば、スルホポリエステルおよび水非分散重合体を重合体分配装置に供給し、この重合体を分割された紡糸口金板内に案内してもよい。重合体は別々の通路に沿って繊維紡糸口金に到達し、紡糸口金の穴で結合される。紡糸口金の穴は、2つの同心円穴を備えて鞘芯型の繊維を提供するか、または直径に沿って複数部分に分割された円形の紡糸口金穴を備えて並列型の繊維を提供するかのどちらかである。あるいは、非混和性の水分散性スルホポリエステルと水非分散性重合体を別々に、複数の放射状流路を有する紡糸口金に案内して、パイ片型断面を有する多成分繊維を作ってもよい。一般に、スルホポリエステルは鞘芯構造の「鞘」要素を形成することになる。複数のセグメントを有する繊維断面の場合、水非分散性セグメントは一般にスルホポリエステルによって互いに隔離されている。あるいは、スルホポリエステルおよび水非分散性重合体を別々の押出成型機内で溶融させ、その重合体流を小さな細い管またはセグメントの形態の複数の分配流路を備えた1つの紡糸口金に向けることによって、多成分繊維を形成して海島型断面形状を有する繊維を提供してもよい。そのような紡糸口金の一具体例が米国特許番号第5,366,804号に記述されている。本発明では一般に、スルホポリエステルは「海」要素を形成し、水非分散性重合体は「島」要素 を形成することになる。
【0043】
断りが無い限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる成分の数、分子重量、反応条件のような特性などは、全ての具体例において「約」で修飾されていると理解されるものとする。したがって、逆に断りが無い限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは概算値であって、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変わってもよい。少なくとも、各数値パラメータは報告された有効桁数を踏まえ一般的な通常技術に照らして理解されるべきである。さらに、本開示および特許請求の範囲に述べられた範囲は範囲全体を厳密に含み、単に端点だけを含むものではない。例えば0〜10であると記述された範囲は、0〜10の間の全ての数、例えば1,2,3、4など、0〜10の間の全ての小数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113等
、ならびに両端0および10を開示する。また、例えば「C1〜C5炭化水素」のような化学置換基は、C1およびC5炭化水素ならびにC2、C3、およびC4炭化水素を厳密に含み開示する。
【0044】
本発明の広い範囲を述べている数値範囲およびパラメータは概算値であるが、個々の具体例に述べられた数値は可能な限り正確に報告されている。しかしどの数値も元来必然的にそれらの各試験測定値に存在する標準偏差から生じるある誤差を含んでいる。
【0045】
本発明の単一成分繊維および単一成分繊維で作られた繊維状物品は水分散性であり、一般に室温で完全に分散する。高温の水を使用するほど分散すなわち布織繊維または多成分繊維からの除去速度を加速することができる。本明細書で単一成分繊維およびそれから作られた繊維状物品に関して用いられている「水分散性」は「水分散可能」、「水分解可能」、「水に溶ける」、「水消散性」、「水溶解性」、「水除去性」、「水溶性」、および「水分散性」と同義であることを意図しており、繊維および繊維状物品は本明細書では水の作用によって分散または溶解することを意味する。「分散される」、「分散性」、「分散する」、または「分散可能」は、十分な量の脱イオン水を用いて(例えば、水:繊維の重量比が100:1)繊維または繊維性製品の遊離懸濁液すなわちスラリーを形成し、約60℃の温度で最大5日間の間に繊維または繊維性製品は溶解し、分解し、または分離して媒質のほぼ全体に分配された複数の非干渉性の小片または粒子になり、例えば濾過または蒸発によって水を除去しても媒質から目に見える単繊維は回収されないようになっていることを意味する。すなわち本明細書で用いられている「水分散性」は、絡まった繊維または結合した繊維の単純な分解を含むのではなく、非水溶性または水非分散性繊維であって繊維の組立体が水中でばらばらになって水中で繊維のスラリーを作りそれが水の除去によって回収されるものを含む。本明細書との関連でこれらの用語は全て、本明細書に記述されたスルホポリエステルへの水の作用または水と水混和性溶媒の混合物の作用のことをいう。そのような水混和性溶媒の例には、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、エステルなどがある。この用語にはスルホポリエステルが溶解して真溶液を形成する条件のほか、スルホポリエステルが水性溶媒内で分散する条件を含むことを意味する。多くの場合、スルホポリエステル組成の統計的特徴から、1つのスルホポリエステル試料が水性溶媒中に置かれると、溶解成分および分散成分を得ることができる。
【0046】
同様に、多成分繊維または繊維状物品の一成分としてスルホポリエステルを参照して本明細書で用いられている「水分散性」は、「水分散可能」、「水分解可能」、「水に溶ける」、「水消散性」、「水溶解性」、「水除去性」、「水溶性」、および「水分散性
(hydrodispersible)」と同義であり、スルホポリエステル成分が多成分繊維から十分に除去され、水の作用によって分散または溶解して、その中に含まれている水非分散性繊維の開放および分離を可能にすることを意味している。「分散される」、「分散性」、「消散する」、または「分散可能」は、十分な量の脱イオン水(例えば水:繊維の重量比が100:1)を用いて繊維または繊維性製品の遊離懸濁液すなわちスラリーを形成し、約60℃の温度で最大5日間の間にスルホポリエステル成分は溶解し、分解し、または多成分繊維から分離し、水非分散性セグメントから複数の極細繊維を残留させることを意味する。
【0047】
「セグメント」または「領域」または「区域」は、多成分繊維の異形断面を記述するのに用いられる場合、水非分散性重合体を含む断面内の領域のことをいい、これらの領域またはセグメントは、それらの間に介在する水分散性スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されている。本明細書に用いられている「実質的に隔離されている」は、セグメントまたは領域が互いに区別されていてスルホポリエステルが除去されるとセグメントまたは領域が個々の繊維を形成できるようになっていることを意味する。セグメントまたは領域または区域は寸法および形状を類似にすることも、または変えることもできる。またセグメントまたは領域または区域はどのような構成に配置することもできる。これらの
セグメントまたは領域または区域は多成分押出成形品すなわち繊維の長さに沿って「実質的に連続」である。「実質的に連続」は多成分繊維の少なくとも10cmの長さに沿って連続していることを意味する。多成分繊維のこれらのセグメントまたは領域または区域は水分散性スルホポリエステルが除去されるときに水非分散性重合体極細繊維を作る。
【0048】
本開示の中で述べているように、多成分繊維の異形断面は、例えば鞘芯型、海島型、パイ片型、中空パイ片型、偏心パイ片型、並列型、リボン型(薄片型)などの形態にすることができる。
【0049】
本発明の水分散性繊維はポリエステルまたはより具体的にはスルホポリエステルで作られ、ジカルボン酸単量体残基、スルホ単量体残基、ジオール単量体残基、および反復単位を含む。スルホ単量体はジカルボン酸、ジオール、ヒドロキシカルボン酸でもよい。すなわち、本明細書で用いられている「単量体残基」は、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書で用いられている「反復単位」は、カルボニルオキシ基で結合された2つの単量体残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルは、実質的に等モル比の酸残基(100モル%)とジオール残基(100モル%)を含み、これらは反復単位の総モルが100モル%に等しいような実質的に等しい比率で反応する。したがって本開示で提示されるモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または反復単位の総モルを基にしてもよい。例えば、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸でもよいスルホ単量体を総反復単
位に対し30モル%含むスルホポリエステルとは、スルホポリエステルが反復単位全100モル%以外にスルホ単量体30モル%を含むことを意味する。すなわち、反復単位100モル毎に30モルのスルホ単量体残基が存在する。同様に、ジカルボン酸スルホ単量体を総酸残基に対し30モル%含むスルホポリエステルは、スルホポリエステルが酸残基全100モル%以外にスルホ単量体30モル%を含むことを意味する。すなわち後者の場合、100モルの酸残基毎に30モルのスルホ単量体残基が存在する。
【0050】
本明細書に記載のスルホポリエステルは固有粘度を有し、本明細書では以下「Ih.V」と略記する。Ih.Vは、25℃、溶媒100mL中スルホポリエステル約0.5gの濃度においてフェノール/テトラクロロエタン溶媒の重量比60/40溶液で測定して、少なくとも約0.1dL/gであり、好ましくは約0.2〜0.3dL/g、最も好ましくは約0.3dL/gより大きい。本明細書で用いられている「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」と「コポリエステル」の両方を包含し、二官能性ジカルボン酸の二官能性水酸基化合物による重縮合で作られた合成重合体を意味する。本明細書で用いられている「スルホポリエステル」はスルホ単量体を含む任意のポリエステルを意味する。一般に二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能性水酸基化合物は例えばグリコールおよびジオールのような二価アルコールである。代わりに二官能性カルボン酸は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のような水酸基カルボン酸でもよく、二官能性水酸基化合物は、例えばヒドロキノンのような2つのヒドロキシル置換基を有する芳香族でもよい。本明細書で用いられている「残基」は、対応する単量体が関連する重縮合反応によって重合体に組み込まれた任意の有機構造を意味する。すなわち、ジカルボン酸残基はジカルボン酸単量体またはその関連酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、またはそれらの混合物から派生してもよい。したがって本明細書に用いられているジカルボン酸はジカルボン酸およびジカルボン酸の任意の誘導体を含むことを意図し、関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、またはそれらの混合物を含み、高分子量ポリエステルを作るジオールとの重縮合過程に有用である。
【0051】
本発明のスルホポリエステルは1つ以上のジカルボン酸残基を含む。スルホ単量体の種類と濃度によって、ジカルボン酸残基は約60〜100モル%の酸残基を含んでもよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の具体例は、約60〜約95モル%、および約70〜約
95モル%である。使用してもよいジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、またはこれら酸の2種以上の混合物が含まれる。すなわち、ふさわしいジカルボン酸には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサン−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、およびイソフタル酸が含まれるがこれらに限定されない。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、またはジエステルを用いる場合は、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、および特別に作られたイソフタルおよびテレフタル酸の残基を備えるジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。ジカルボン酸メチルエステルは最も好ましい態様であるが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルのような高級アルキルエステルを含むことも可能である。また、芳香族エステル、具体的にはフェニルを用いてもよい。
【0052】
スルホポリエステルは、少なくとも1つ以上のスルホ単量体の残基を全反復単位に対し約4〜約40モル%含み、スルホ単量体は2つの官能基および芳香環または環状脂肪族に結合された1つ以上のスルホン酸基を有し、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。スルホ単量体残基の濃度範囲の別の具体例は総反復単位に対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜約25モル%である。スルホ単量体はスルホン酸基を含むジカルボン酸またはそのエステル、スルホン酸基を含むジオール、またはスルホン酸基を含む水酸基酸でもよい。「スルホン酸」は「−SO
3M」構造を有するスルホン酸の塩のことであり、Mはスルホン酸塩の陽イオンである。スルホン酸塩の陽イオンは、Li
+、Na
+、K
+、Mg
++、Ca
++、Ni
++、Fe
++のような金属イオンでもよい。または、スルホン酸塩の陽イオンは例えば米国特許番号第4,304,901号に記述された窒素塩基のような非金属でもよい。窒素塩基陽イオンは窒素含有塩基から派生してもよく、脂肪族、脂環式、または芳香族化合物でもよい。そのような窒素含有塩基の具体例にはアンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン、およびピペリジンが含まれる。窒素塩基スルホン酸塩を含む単量体は一般に溶融状態の重合体を作るのに必要な条件下では温度安定性に欠けるので、窒素塩基スルホン酸塩基を含むスルホポリエステルを作るための本発明の方法は、必要量のスルホン酸基をアルカリ金属塩の形態で含む重合体を消散、分散、または溶解させ、その後アルカリ金属陽イオンを窒素塩基陽イオンと置換することである。
【0053】
一価のアルカリ金属イオンをスルホン酸塩の陽イオンとして用いる場合、得られるスルホポリエステルは水に対する完全な分散性を有し、その分散速度は重合体中のスルホ単量体の含有量、水温、スルホポリエステルの表面積/厚さなどによって決まる。二価金属イオンを用いる場合、得られるスルホポリエステルは冷水では容易に分散しないが熱水では容易に分散する。1つの重合体組成に2つ以上の対イオンを用いることができ、そうすることによって、製造で得られる物品の水応答性を誂えるすなわち微調整する手段が提供される。スルホ単量体残基の具体例には単量体残基が含まれ、スルホン酸塩基は、例えばベンゼン、ナフタリン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル、およびメチレンジフェニルのような芳香族酸核、または例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルのような環状脂肪族に結合している。本発明で用いてもよいスルホ単量体残基の他の具体例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、またはそれらの組合せの金属スルホン酸塩である。用いてもよいスルホ単量体の他の具体例は、5−ソジオスルホイソフタル酸およびそのエステルである。スルホ単量体残基が5−ソジオスルホイソフタル酸由来であれば、一般的なスルホ単量体の濃度範囲は酸残基の総モルに対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル
%、および約8〜約25モル%である。
【0054】
スルホポリエステルを作るのに用いられるスルホ単量体は知られている化合物であり、当業分野で知られている方法を用いて作られてもよい。例えば、スルホン酸基が芳香環に結合しているスルホ単量体は、芳香族化合物を発煙硫酸でスルホン化して対応するスルホン酸を得た後に、金属酸化物または塩基、例えば酢酸ナトリウムと反応させてスルホン酸塩を作ってもよい。種々のスルホ単量体を作る手順が、例えば米国特許番号第3,779,993号、第3,018,272号、および第3,528,947号に記述されている。
【0055】
ポリエステルを作るのに、例えばナトリウムスルホン酸塩およびイオン交換法を用いて、重合体が分散形態のときにナトリウムを亜鉛のような別のイオンと置換して作ることもできる。この種類のイオン交換手順は一般に、ナトリウム塩が一般に重合体反応溶液相で溶解性が高い場合に二価塩の重合体を作るのに優れている。
【0056】
スルホポリエステルは1つ以上のジオール残基を含み、このジオール残基は脂肪族、脂環式、およびアラルキルグリコールを含んでもよい。脂環式ジオール、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純シスまたはトランス異性体またはシスとトランス異性体の混合物として存在してもよい。本明細書で用いられている「ジオール」は「グリコール」と同義であり、任意の二価アルコールを意味する。ジオールの具体例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシレンジオール、またはこれらグリコールの1つ以上の組合せが含まれるがこれらに限定されない。
【0057】
ジオール残基は、総ジオール残基に対し約25〜約100モル%のポリエチレングリコールの残基を含んでもよく、以下の構造を有し
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数である。例えばnが2〜6である低分子量ポリエチレングリコールの具体例はジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールであるがこれらに限定されない。これらの低分子量グリコールの中でジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールは最も好ましい。nが7〜約500と分子量がさらに大きなポリエチレングリコール(本明細書では「PEG」と略記する)には、ダウ・ケミカル社(旧ユニオンカーバイド社)の製品であり名称がCARBOWAX(登録商標)で知られた市販品がある。一般にPEGは、例えばジエチレングリコールまたはエチレングリコールのような他のジオールと組み合わせて用いられる。6を越え500までの範囲のnの値に基づき、分子量は300を越え約22,000g/モルまでの範囲でよい。分子量およびモル%は互いに反比例する。具体的には、分子量が増えるとモル%は低下して指定された程度の親水性が達成される。例えば分子量が1000のPEGは総ジオールの最大10モル%を構成するが、分子量が10,000のPEGが総ジオールに組み込まれるのは一般に総ジオールの1モル%未満であることを考えればこの概念の理解は容易である。
【0058】
特定の二量体、三量体、および四量体のジオールを副反応によりその場形成してもよく
、副反応は製造過程の条件を変化させることによって制御してもよい。例えば、様々な量のジエチレン、トリエチレン、およびテトラエチレングリコールをエチレングリコールから酸触媒脱水反応で形成してもよい。酸触媒脱水反応は重縮合反応が酸状態で実行されると容易に生じる。当業者にはよく知られているが、反応混合物に緩衝液を加えてこれらの副反応を遅延させてもよい。しかし、緩衝液を無くし、二量化、三量化、および四量化反応が起こるようにして添加成分に自由度を持たせることができる。
【0059】
本発明のスルホポリエステルは3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約25モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せでもよい。分岐単量体の具体例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、トレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメット酸、ピロメリト酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸、またはそれらの組合せであるがこれらに限定されない。さらに分岐単量体濃度範囲の具体例は0〜約20モル%および0〜約10モル%である。分岐単量体が存在することで本発明のスルホポリエステルに多数の利点が生まれることがあり、それらの利点には流動性、溶解性、および引張強度特性を望みどおりに調整できることなどがあるがこれらに限定されない。例えば分子量が一定なら、分岐スルホポリエステルは直鎖の類似物に比べて高濃度の末端基を有し、それによってその後の重合架橋反応を促進してもよい。しかし分岐剤の濃度が高いとスルホポリエステルはゲル化し易い場合がある。
【0060】
本発明の繊維に用いられるスルホポリエステルは、当業者に知られている示差走査熱量測定(「DSC」)のような標準的な技術を用い乾燥重合体で測定して少なくとも25℃のガラス転移温度を有する。この温度を本明細書では「Tg」と略記する。本発明のスルホポリエステルのTg測定値は「乾燥重合体」すなわち重合体試料を用いて導かれており、重合体試料の偶発的な水または吸収されている水が、重合体を約200℃の温度まで加熱し試料を室温まで戻すことによって除去される。一般に、スルホポリエステルはDSC装置内で第1の温度走査の実行によって乾燥される。このとき試料は水の蒸発温度を超える温度まで加熱され、その温度に保持されて重合体に吸収された水の蒸発が完了し(大きく幅広い吸熱曲線)、試料を室温まで冷却し、第2の温度走査を実行してTg測定値が得られる。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる具体例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、および少なくとも90℃である。他のTgも可能だが、本発明の乾燥スルホポリエステルの一般的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、および約90℃である。
【0061】
本発明の新規な繊維は基本的に上記のスルホポリエステルで構成されても、または上記のスルホポリエステルで構成されてもよい。しかし別の実施形態では、本発明のスルホポリエステルは単一のポリエステルでもよく、または得られる繊維の特性を改良する1種以上の追加的な重合体と混合してもよい。追加的な重合体は用途に応じて水分散性でもまたは水非分散性でもよく、スルホポリエステルと混和性でもまたは非混和性でもよい。追加的な重合体が水非分散性の場合、スルホポリエステルとの混合物は非混和性であることが好ましい。本明細書で用いられている「混和性」は、その混合物が1つの組成に依存したTgで示される単一の均質非晶相を有することを意味する。例えば、第2の重合体と混和性の第1の重合体を用いて、例えば米国特許番号第6,211,309号に説明されているように、第2の重合体を「可塑化」してもよい。一方、本明細書に用いられている「非混和性」は、少なくとも2つの相が不規則に混ざり合い、2つ以上のTgを示すことを意味する。一部の重合体はスルホポリエステルと非混和性だが親和性がある場合がある。混和性および非混和性の重合体混合物およびそれらの特性評価のための種々の分析手法のさらに一般的な記述を、Polymer Blends、第1、2巻、D.R.PaulおよびC.B.Bucknall共著、
2000年、John Wiley & Sons, Inc.社刊で見ることができる。
【0062】
スルホポリエステルと混合してもよい水分散性重合体の具体例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテル澱粉、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロタクラム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジノン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体であるがこれらに限定されない。スルホポリエステルと混合してもよい水非分散性の重合体の具体例には、ポリエチレンおよびポリプロピレンの単独重合体および共重合体のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタル酸、ポリブチレンテレフタル酸、およびナイロン−6、ポリラクチド、カプロラクトン、イーストマン化学社(Eastman Chemical Company)の製品Eastar Bio(登録商標、アジピン酸ポリテトラメチレン−co−テレフタル酸)、ポリカルボナート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルのようなポリアミドがあるがこれらに限定されない。
【0063】
本発明によれば、2種以上のスルホポリエステルの混合物を用いて、得られる繊維または繊維状物品、例えば不織布または
不織ウェブの最終特性を調整してもよい。1種以上のスルホポリエステルの混合物により水分散性単一成分繊維は少なくとも25℃のTgを有し、多成分繊維は少なくとも57℃のTgを有することになる。すなわち、混合を利用してスルホポリエステルの処理特性を変えて不織布の製造を促進してもよい。別の具体例では、ポリプロピレンとスルホポリエステルの非混和性混物合によって水中でばらばらになるが真の溶解性は不要の従来の
不織ウェブを提供してもよい。後者の具体例では、所望の性能はポリプロピレンの物理特性の維持に関係するが、実際の使用中は、スルホポリエステルは製品の単なる傍観者
(最終形態の製造に必要なもの)すなわち逃亡者
(除去されるべきもの)であって、最終形態の製品が使用される前に除去される。
【0064】
スルホポリエステルと更なる重合体は、1回で混合しても、半連続的な方法で混合しても、または連続的な方法で混合してもよい。1回の量が少量なら、繊維を溶融紡糸する前に当業者に知られている任意の強力混合装置、例えばバンバリーミキサーのような装置で簡単に作ってもよい。成分を好適な溶媒に溶液状に混合してもよい。溶融混合法には、スルホポリエステルと更なる重合体を重合体が十分に溶解する温度で混合することが含まれる。混合物を冷却し小粒にしてから使用するか、またはこの溶融混合物を直接溶融紡糸して繊維形態にすることもできる。本明細書に用いられている「溶融」はポリエステルを単に軟化させることを含むが、それに限定されない。重合体技術分野で一般に知られている溶融混合法については、Mixing and Compounding of Polymers(重合体の混合と配合)(I. Manas-Zloczower、Z. Tadmor共著、Carl Hanser Verlag Publisher社、1994年、ニューヨーク州ニューヨーク)を参照のこと。
【0065】
本発明は、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含む水分散性繊維を提供し、上記スルホポリエステルは、
(A)全酸残基に対し約50〜約96モル%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基と、
(B)全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基と、
(C)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、(iv
)3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約20モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。上記のように、この繊維は、スルホポリエステルと混合された第1の水分散性重合体を必要に応じて含み、スルホポリエステルと非混和性に混合された水非分散性重合体を必要に応じて含む。本発明の繊維は染料または充填剤を繊維の全重量に対し10重量%未満、8重量%未満、または6重量%未満含む。第1の水分散性重合体は上記のとおりである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有する必要があるが、例えば約35℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、および約90℃のTgを有してもよい。スルホポリエステルは他の濃度のイソフタル酸残基を有してもよく、例えば約60〜約95モル%、および約75〜約95モル%でもよい。イソフタル酸残基の濃度範囲の更なる具体例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%、および約90〜約95モル%である。またスルホポリエステルは約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでもよい。ジエチレングリコール残基の濃度範囲の更なる具体例は、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%、および約75〜約95モル%を含む。またスルホポリエステルは、エチレングリコールおよび/または本明細書で「CHDM」と略記する1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含んでもよい。CHDM残基の一般的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の一般的な濃度範囲は、約10〜75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。別の態様では、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸の残基および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含む。
【0066】
本発明のスルホポリエステルは、好適なジカルボン酸、エステル、無水物、または塩、スルホ単量体、および好適なジオールまたはジオール混合物から、一般的な重縮合反応条件を用いて容易に作られる。これらは連続式、半連続式、および回分式の操作によって作られてもよく、種々の型の反応炉を用いてもよい。好適な反応炉の型には攪拌容器型、連続式攪拌容器型、懸濁液型、管状型、拭き取り膜型(wiped-film)、流下膜型、または押し出し型反応炉が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に用いられている「連続式」は、反応物が入れられると製品が同時に中断無く延伸される方法を意味する。「連続式」によって、そのプロセスは実質的にまたは完全に稼働が連続していることを意味し、「回分」式と対照を成す。「連続式」とは、そのプロセスの連続性に対する例えば始動、反応路の点検、定期的な停止期間による通常のいかなる中断も決して禁止するということを意味しない。本明細書に用いられている「回分」式は、全ての反応物が反応路に加えられると所定の反応経路に従って処理され、その間は反応炉には材料の供給または取り出しが無いプロセスを意味する。「半連続式」は、一部の反応物がそのプロセスの最初に加えられ、残りの反応物は反応の進行とともに連続的に供給されるプロセスを意味する。または、半連続式は回分式と類似のプロセスを含んでもよく、このプロセスでは全ての反応物が反応過程の開始時に加えられるが、反応の進行とともに1つ以上の製品が連続的に取り出される点が異なる。このプロセスは、経済的な理由と着色に優れた重合体を作るために連続的過程と同様に有利に稼働される。というのは、スルホポリエステルは高温の反応炉に長時間置かれると外観が劣化するからである。
【0067】
本発明のスルホポリエステルは当業者に知られている手順で作られる。スルホ単量体は多くの場合、重合体が作られる反応混合物に直接添加されるが、例えば米国特許番号第3,018,272号、第3,075,952号、および第3,033,822号に記述されているように他の複数の過程が知られており、それらを用いてもよい。スルホ単量体、ジオール成分、およびジカルボン酸成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実行してもよい。例えば、スルホポリエステルをエステル交換反応の手段、すなわちエステル形態のジカルボン酸から作るとき、その反応過程は2つの工程を含んでもよい。第1の工程では、例えばジメチルイソフタラートのようなジオール成分およびジカルボン酸が
一般には約150〜約250℃の高温下で約0.5〜約8時間、約0.0〜約414kPaゲージ(1平方インチ当たり60ポンド、「psig」)の圧力範囲で反応する。好ましくは、エステル交換反応の温度範囲は約180〜約230℃で約1〜約4時間であり、好ましい圧力範囲は約103(15psig)〜約276kPaゲージ(40psig)である。したがって、反応製品は高温かつ低圧力下で加熱されてスルホポリエステルが形成され、スルホポリエステルからジオールが除去されており、ジオールはこの条件下で容易に揮発し装置から除去される。この第2の工程すなわち重縮合工程は高真空下のある温度で続けられ、その温度範囲は一般に約230〜約350℃、好ましくは約250〜約310℃、最も好ましくは約260〜約290℃で、約0.1〜約6時間または好ましくは約0.2〜約2時間、固有粘度で判定して望ましい重合度を有する重合体が得られるまで行われる。重縮合工程は、圧力範囲が約53〜約0.013kPa(400〜0.1トール)の低圧下で行われてもよい。攪拌または好適な条件を両段階で用いて、十分な熱を確実に伝達し反応混合物の表面を更新する。両段階の反応は好適な触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物およびアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物などによって促進される。特に酸とエステルの混合単量体を供給する場合、米国特許番号第5,290,631号に記述された手順に類似した3段階の製造手順を用いてもよい。
【0068】
エステル交換反応機構によるジオール成分とジカルボン酸成分の反応を確実に完了させるには、1モルのジカルボン酸成分に対し約1.05〜約2.5モルのジオール成分を用いるのが好ましい。しかし当業者には、ジオール成分のジカルボン酸成分に対する比率は一般に反応過程が起きる反応炉の設計によって決まることが分かる。
【0069】
直接エステル化、すなわちジカルボン酸成分形態の酸からスルホポリエステルを作る場合、スルホポリエステルは、ジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物をジオール成分またはジオール成分の混合物と反応させて作られる。反応が行われる圧力は約7〜約1379kPaゲージ(1〜200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満で、約1.4〜約10の平均重合度を有する低分子量の直鎖または分岐スルホポリエステル製品を作る。直接エステル化反応中に用いられる温度範囲は一般に、約180〜約280℃、より好ましくは約220〜約270℃である。この低分子量重合体をこの後重縮合反応によって重合してもよい。
【0070】
水分散性多成分短繊維およびそれから作られる繊維状物品はその最終用途に悪影響を与えない他の従来の添加物および成分を含んでもよい。例えば、充填剤、表面摩擦改良剤、光熱安定剤、押し出し補助剤、耐電防止剤、着色剤、染料、色素、蛍光漂白剤、抗菌剤、偽造防止標識、疎水性および親水性増強剤、粘度調整剤、滑り剤、強化剤、接着促進剤などの添加剤を用いてもよい。
【0071】
本発明の繊維および繊維状物品は、例えば色素、充填剤、油、ろう、または脂肪酸仕上げ剤のような添加剤を存在させて加工中の繊維の塊の発生または融合を防止する必要がない。本明細書に用いられている「塊の発生または融合」は、繊維または繊維状物品が互いに付着してまたは融合して塊になり、繊維を加工できないまたはその使用目的に使用できないようになることを意味すると理解される。塊の発生または融合は繊維または繊維状物品の加工中、または数日または数週間の保管中に起こることがあり、高温多湿の条件下で悪化する。
【0072】
本発明の一態様では、繊維および繊維状物品はそのような塊発生防止剤を繊維または繊維状物品の総重量に対し10重量%未満含む。例えば、繊維および繊維性物は10重量%未満の染料または充填剤を含んでもよい。別の具体例では、繊維および繊維性物は、繊維の総重量に対し9重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、および0重
量%の染料または充填剤を含んでもよい。トナーと呼ばれることがある着色剤を添加してスルホポリエステルに所望の中間色および/または明るさを与えてもよい。着色した繊維が望まれる場合は、色素または着色剤をジオール単量体とジカルボン酸単量体の反応中にスルホポリエステル反応混合物に含有させてもよく、または色素または着色剤を予め成形したスルホポリエステルと溶融混合してもよい。着色剤を含ませる好ましい方法は、温度安定性が良く反応基を有する有機着色成分を有する着色剤を用い、着色剤がスルホポリエステルと共重合してそれに取り込まれるようにしてその色相を改善することである。例えば、青および赤の置換アントラキノンを含むがこれに限定されない反応水酸基および/または反応カルボキシル基を持つ染料のような着色剤を重合鎖に共重合させてもよい。染料を着色剤として用いる場合、染料をエステル置換した後にコポリエステル反応過程に添加してもよく、または直接エステル化反応に添加してもよい。
【0073】
本発明の目的に対し「繊維」は縦横比が大きい重合体の物体で、織り布または不織布のような2次元または3次元の物品に形成可能なものを意味する。本発明との関係において、「繊維」は「複数の繊維」と同義であり1種以上の繊維を意味する。本発明の繊維は単一成分繊維、二成分繊維、または多成分繊維でもよい。本発明に用いられている「単一成分繊維」は単一のスルホポリエステルを溶融紡糸することによって作られた繊維、1種以上のスルホポリエステルの混合物、または1種以上のスルホポリエステルと1種以上の更なる重合体の混合物を意味し、短繊維、単繊維、および多繊維を含む。「単一成分」は「一成分」と同義であり、「二組成」または「多組成」繊維を含み、同じ押出成型機から1つの混合物として押し出された少なくとも2種の重合体から形成されている繊維のことをいう。単一成分繊維または二組成繊維は、繊維の断面領域全体に比較的一定に置かれた複数の特別な領域内に配置された種々の重合体成分を有せず、種々の重合体は一般に繊維の全長に沿って連続ではなく、一般に始まりも終わりも不規則な原繊維または前原繊維を形成している。すなわち、「単一成分」は1種の重合体または1種以上の重合体の混合物から形成された繊維を除外する意図はなく、これらの重合体に着色、耐電防止特性、潤滑、親水性などのために少量の添加物が加えられてもよい。
【0074】
一方、本明細書に用いられている「多成分繊維」は、別々の押出成型機で2種以上の繊維形成重合体を溶融し得られた複数の重合体流を複数の分配路を有するがこれらの重合体流を1つに紡いで1つの繊維を形成する1つの紡糸口金に導くことによって作られる繊維を意味する。多成分繊維は共役繊維または二成分繊維と呼ぶこともある。重合体は、共役繊維の端面全体に実質的に一定に置かれた特別な区域すなわち領域に配置されており、共役繊維の長さに沿って連続的に延びている。そのような多成分繊維の構成は例えば、1種の重合体が別の重合体に囲まれている鞘/芯型配置でもよく、並列型配置でも、リボン型すなわち薄片型配置でも、パイ型配置でも、または海島型配置でもよい。例えば、多成分繊維は、例えば「海島型」または分割パイ型構造のような異形のまたは工学的な断面形状を有する紡糸口金から、スルホポリエステルおよび1種以上の水非分散重合体を別々に押し出して作られてもよい。多成分繊維は一般に短繊維、単繊維または多繊維であって、これらは異形断面または丸い断面を有する。ほとんどの繊維は熱処理される。繊維は本明細書に記述した種々の抗酸化剤、染料、および添加剤を含んでもよい。
【0075】
単繊維の寸法範囲は一般に1単繊維当たり約15〜約8000デニール(denier)である(本明細書では「d/f」と略記する)。本発明の新規な繊維は一般に約40〜約5000の範囲のd/f値を有する。単繊維は単一成分繊維または多成分繊維の形態でもよい。本発明の多繊維の寸法範囲は、好ましくは溶融吹き出し織物では約1.5マイクロメートル、ステープルファイバーでは約0.5〜約50d/f、および単繊維では最大約5000d/fである。多繊維を捲縮または非捲縮糸およびトウとして用いてもよい。溶融吹き出し織物および溶融紡糸布に使用される繊維は極細寸法で作られてもよい。本明細書で用いられる「極細」は1d/f以下のd/f値を意味する。例えば本発明の極細繊維のd
/f値は、一般に1以下、0.5以下、または0.1以下である。静電紡糸によってナノ繊維を作ることもできる。
【0076】
上記のようにスルホポリエステルは異形断面を有する二成分繊維および多成分繊維を作るのに有利でもある。発明者等は、ガラス転移温度(Tg)が少なくとも57℃であるスルホポリエステルまたはその混合物は多成分繊維の場合に紡糸中および巻き取り中の繊維の塊の発生および融合を防ぐのに特に有用であることを発見した。すなわち本発明は異形断面を有する多成分繊維を提供し、上記多成分繊維は
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルを含み、上記スルホポリエステルは
(i)1つ以上のジカルボン酸の残基と、
(ii)芳香環または環状脂肪族に結合した2つの官能基と1つ以上のスルホン酸基を有する少なくとも1つのスルホ単量体の残基を全反復単位に対し約4〜約40モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記スルホポリエステルはさらに
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、
(iv)3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約25モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記多成分繊維はさらに
(B)上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を含む複数のセグメントを含み、上記セグメントは上記セグメント間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、
必要に応じて、上記多成分繊維は海島型またはパイ片型の断面を有し、上記繊維の全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。
【0077】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ短量体、および分岐単量体の残基は、本発明の他の態様で先に記述したとおりである。スルホポリエステルが少なくとも57℃のTgを有することは多成分繊維に有利である。本発明のスルホポリエステルまたはスルホポリエステル混合物が示してもよいガラス転移温度の更なる具体例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。さらに、Tgが少なくとも57℃のスルホポリエステルを得るために、1種以上のスルホポリエステルの混合物をいろいろな比率で用いて所望のTgを有するスルホポリエステル混合物を得てもよい。スルホポリエステル混合物のTgはスルホポリエステル成分のTgを加重平均して計算してもよい。例えば、Tgが48℃のスルホポリエステルをTgが65℃の別のスルホポリエステルと重量比25:75で混ぜて、Tgがほぼ61℃のスルホポリエステル混合物を作ってもよい。
【0078】
本発明の別の態様では、多成分繊維の水分散性スルホポリエステル成分は、以下のうち少なくとも1つが可能になる特性を示す。
(A)所望の低デニールに紡糸される多成分繊維、
(B)これらの多成分繊維中のスルホポリエステルは、その繊維で形成された織物が水流交絡処理されている間は除去に抵抗性があるが、水流交絡処理後は高温で効率よく除去され、
(C)多成分繊維を熱処理して安定した高強度強度の布を得ることができる。ある溶融粘度およびスルホポリエステル残基のレベルを有するスルホポリエステルを用いてこれらの目的を推進する中で驚くべき予測外の結果が得られた。
【0079】
したがって本発明の別の態様では、異形断面を有する多成分繊維が提供され、上記多成分繊維は、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、
(B)上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を含む複数の領域を含み、これらの領域はその間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、
必要に応じて、上記繊維は1単繊維あたり約6デニール未満の紡糸時デニールを有し、
上記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約12,000ポアズ未満の粘度があり、上記スルホポリエステルは二塩基酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1つのスルホ単量体の残基を約25モル%未満含む。
【0080】
これらの多成分繊維に用いられるスルホポリエステルの溶融粘度は一般に約12,000ポアズである。別の態様では、スルホポリエステルの溶融粘度は、240℃、1ラジアン/秒の剪断速度で測定時に約10,000ポアズ未満、約6,000ポアズ未満、または約4,000ポアズ未満である。別の側面では、スルホポリエステルの溶融粘度は、240℃、1ラジアン/秒の剪断速度で測定時に、約1,000〜約12,000ポアズ、約2,000〜約6,000ポアズ、または約2,500〜約4,000ポアズを示す。粘度の測定前に、試料を60℃の真空炉内で2日間乾燥させる。直径25mmの平行板形状を間隔1mmで用い、溶融粘度をレオメーター(rheometer)で測定する。歪み速度1〜400ラジアン/秒および歪み振幅10%で動的周波数掃引を行う。その後、240℃、歪み速度1ラジアン/秒で粘度を測定する。
【0081】
本発明による用途のためのスルホポリエステル重合体の中にあるスルホポリエステル残基のレベルは一般に約25モル%未満または約20モル%未満であり、これらはスルホポリエステル中の二塩基酸またはジオールの総残基の割合として報告されている。別の態様では、このレベルは約4〜約20モル%、約5〜約12モル%、または約7〜約10モル%である。本発明の用途のためのスルホ単量体は、好ましくは芳香環または環状脂肪族に取り付けられた2つの官能基および1つ以上のスルホン酸基を有し、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。一態様ではソジオスルホ−イソフタル酸単量体が用いられる。
【0082】
上記のスルホ単量体に加え、スルホポリエステルは1つ以上のジカルボン酸の残基、1つ以上のジオール残基を含むことができ、総ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約20モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。
【0083】
別の態様では、ポリエステルは約80〜96モル%のジカルボキシル酸残基、約4〜約20モル%のスルホ単量体残基、および100モル%のジオール残基を含む(200%の総モル%が存在、すなわち100モル%の二塩基酸および100モル%のジオール)。より具体的には、スルホポリエステルのジカルボキシル部分は、約60〜80モル%のテレフタル酸、約0〜30モル%のイソフタル酸、および約4〜20モル%の5−ソジオスルホイソフタル酸(5−SSIPA)を含む。ジオール部分は約0〜50モル%のジエチレングリコールおよび約50〜100モル%のエチレングリコールを含む。本発明のこの態様による一例示的処方を以下に示す。
【0085】
多成分繊維の水非分散性成分は本明細書に述べた任意の水非分散性重合体を含んでもよい。繊維の紡糸も本明細書に述べた任意の方法に従って行われてもよい。しかし、本発明のこの側面による多成分繊維の改良された流動学的特性によって延伸速度が改善される。スルホポリエステルと水非分散性重合体を押し出して多成分押出成形品を作るとき、多成分押出成形品を溶融延伸して多成分繊維を作ることができる。このとき本明細書に記述した方法の何れかを用い、その速度は少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、さらに好ましくは少なくとも約4000m/分、および最も好ましくは少なくとも約4500m/分である。理論に固執する意図はないが、多成分押出成形品をこれらの速度で溶融延伸することにより、多成分繊維の水非分散性成分に少なくともある方向の結晶性を生じる。この方向性結晶によって、多成分繊維で作られた布織材料の次処理中の寸法安定性が増す。
【0086】
多成分押出成形品の別の利点は、多成分押出成形品を溶融延伸して紡糸時デニールが1単繊維当たり6デニール未満の多成分繊維にできることである。多成分繊維の他の寸法範囲には1単繊維当たり4デニール未満および1単繊維当たり2.5デニール未満の紡糸時デニールが含まれる。
【0087】
したがって本発明の別の態様では、異形断面を有する多成分押出成形品は、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、
(B)上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を含む複数の領域を含み、これらの領域はその間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、
上記本押出成形品は少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸可能である。
【0088】
多成分繊維はスルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体のセグメントまたは領域を含み、これらのセグメントまたは領域はそれらの間に介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されている。「実質的に隔離されている」は本明細書に用いられているように、セグメントまたは領域が互いに分離されていて、スルホポリエステルが除去されるとセグメントまたは領域が個々の繊維を形成することができるようになっていることを意味する。例えば、セグメントまたは領域は例えばパイ片型構成に互いに接触していてもよいが、衝撃によってまたはスルホポリエステルが除去されたときに互いに分離することができる。
【0089】
本発明の多成分繊維中のスルホポリエステルの水非分散性重合体成分に対する重量比の範囲は、一般に約60:40〜約2:98であり、別の具体例では約50:50〜約5:95である。一般にスルホポリエステルは多成分繊維の総重量の50重量%以下を構成する。
【0090】
多成分繊維のセグメントまたは領域は1種以上の水非分散性重合体を含んでもよい。多
成分繊維のセグメントに使用してもよい水非分散性重合体の具体例には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリラクロカプトン、ポリカルボナート、ポリウレタン、セルロースエステル、およびポリ塩化ビニルが含まれるがこれらに限定されない。例えば、水非分散性重合体は、ポリエチレンテレフタル酸、ポリブチレンテレフタル酸、ポリシクロヘキシレンシクロヘキサンジカルボキシラート、ポリシクロヘキシレンテレフタル酸、ポリトリメチレンテレフタル酸などのようなポリエステルでもよい。別の具体例では、水非分散重合体はDIN標準54900による生物分解性および/またはASTM標準法D6340−98による生物分解性にすることができる。生物分解性ポリエステルおよびポリエステル混合物の具体例は、米国特許番号第5,599,858号、第5,580,911号、第5,446,079号、および第5,559,171号に記述されている。「生物分解性」は、本発明の水非分散性重合体を参照して本明細書で使用されているように、重合体が環境影響下で分解することを意味すると理解される。これらの環境影響には例えば、堆肥化環境内、適切かつ実証可能な期間内などがあり、これらは例えばASTM標準法D6340−98、名称「Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Materials in an Aqueous or Compost Environment(放射線標識プラスチック材料の水性環境または堆肥環境における好気性分解を測定する標準試験方法)」で規定されている。本発明の水非分散性重合体は「生物分解性」でもよく、その重合体が例えばDIN規格54900で規定された堆肥化環境内で容易に分解することを意味している。例えば、生物分解性重合体はその環境内で最初に熱、水、空気、微生物、および他の因子によって分子量が減少する。この分子量の減少により物理的特性(引張強度)が失われ、多くの場合繊維が破断することになる。重合体の分子量が十分に減少すると単量体および単量体の重合体が微生物によって分解される。好気性環境内ではこれらの単量体または単量体の重合体は最終的に酸化されてCO
2、H
2O、および新しい細胞バイオマスになる。嫌気性環境内では単量体または単量体の重合体は最終的にCO
2、H
2、アセタート、メタン、および細胞バイオマスに変換される。
【0091】
例えば、水非分散性重合体は脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書で「AAPE」と略記)でもよい。本明細書で用いられる「脂肪族−芳香族ポリエステル」は脂肪族または脂環式ジカルボン酸またはジオール、および芳香族ジカルボン酸またはジオールの残基の混合物を含むポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸またはジオール単量体と関連して本明細書で用いられる「非芳香族」は単量体のカルボキシル基または水酸基が芳香核を介して連結されていないことを意味する。例えばアジピン酸はその主鎖に芳香核を含まない。すなわちカルボン酸基を連結している炭素原子の鎖は「非芳香族」であるということになる。一方「芳香族」はジカルボン酸またはジオールがその主鎖に例えばテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸のような芳香核を含むことを意味する。したがって「非芳香族」は例えばジオールおよびジカルボン酸のような脂肪族構造および脂環式構造の両方を含むことを意図しており、主鎖として構成炭素原子の直鎖または分岐鎖または環状配列を含み、その環状配列は飽和していてもよく、または事実上不飽和のパラフィン基すなわち非芳香族炭素−炭素二重結合を含んでもよく、またはアセチレン、すなわち炭素−炭素三重結合を含んでもよい。すなわち本発明の明細書および特許請求の範囲では、非芳香族は直鎖構造および分岐鎖構造(本明細書では「脂肪族」と呼ぶ)および環状構造(本明細書では「脂環族」または「環状脂肪族」と呼ぶ)を含むことを意図している。しかし「非芳香族」には脂環式ジオールまたはジカルボン酸の主鎖に結合してもよい任意の芳香族置換基を除外する意図は無い。本発明では、一般に二官能性カルボン酸は例えばアジピン酸のような脂肪族ジカルボン酸、または例えばテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸である。二官能性水酸基化合物は、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオール、例えば1,4−ブタンジオールのような直鎖または分岐鎖芳香族ジオール、または例えばヒドロキノンのような芳香族ジオールでもよい。
【0092】
AAPEは、直鎖または分岐鎖のランダムコポリエステルおよび/または鎖延長コポリ
エステルでもよく、ジオール残基を含み、その残基は1つ以上の置換または未置換の直鎖または分岐鎖ジオールの残基を含み、これらのジオールは2〜約8個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、2〜8個の炭素原子を含むポリアルキレンエーテルグリコール、および約4〜約12個の炭素原子を含む脂環式ジオールから選択される。置換ジオールは一般に、ハロ基、C
6−C
10アリール基、およびC
1−C
4アルコキシル基から無関係に選ばれた1〜約4個の置換基を含むことになる。使用してもよいジオールの具体例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロ−ヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、および1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、または1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択された1つ以上のジオールを含む好ましいジオールを備えるテトラエチレングリコールが含まれるがこれらに限定されない。AAPEは二塩基酸残基も含み、二塩基酸残基の総モルに対し約35〜約99モル%の1つ以上の置換または未置換の直鎖または分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基を含み、これらのジカルボン酸は、2〜約12個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸および約5〜約10個の炭素原子を含む脂環式酸から選択される。置換非芳香族ジカルボン酸は一般に、ハロ基、C
6−C
10アリール基、およびC
1−C
4アルコキシル基から選ばれた1〜約4個の置換基を含むことになる。非芳香族二塩基酸の具体例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、および2,5−ノルボルナン−ジカルボン酸が含まれるがこれらに限定されない。非芳香族ジカルボン酸に加え、AAPEは、6〜約10個の炭素原子を含む1つ以上の置換または未置換芳香族ジカルボン酸の残基を、二塩基酸残基の総モルに対し約1〜約65モル%含む。置換芳香族ジカルボン酸が用いられる場合、置換芳香族ジカルボン酸は一般にハロ基、C
6−C
10アリール基、およびC
1−C
4アルコキシル基から選ばれた1〜約4個の置換基を含むことになる。本発明のAAPEに使用してもよい芳香族ジカルボン酸の具体例は、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩、および2,6−ナフタレンジカルボン酸であるがこれらに限定されない。より好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、ジオールは1,4−ブタンジオールを含むことになる。
【0093】
本発明のAAPEの他の組成候補は、以下のジオールおよびジカルボン酸(またはそれらのポリエステル形成均等物でジエステルのようなもの)から作られ、二塩基酸成分100モル%とジオール成分100モル%に対し以下のモル%のものである。
(A)グルタル酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)、および修飾ジオール(0〜約10%)、
(B)コハク酸(約30〜約95%)、テレフタル酸(約5〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)、および修飾ジオール(0〜約10%)、および
(C)アジピン酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)、および修飾ジオール(0〜約10%)。
【0094】
修飾ジオールは好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびネオペンチルグリコールから選ばれる。最も好ましいAAPEは直鎖、分岐鎖、または鎖延長コポリエステルであって、約50〜約60モル%のアジピン酸残基、約40〜約50モル%のテレフタル酸残基、および少なくとも9
5モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む。さらにより好ましくは、アジピン酸残基は約55〜約60モル%の1,4−ブタンジオール残基を含み、テレフタル酸残基は約40〜約45モル%の1,4−ブタンジオール残基を含み、ジオール残基は95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む。そのような組成はテネシー州キングスポートのイーストマン化学社からEASTAR BIO(登録商標)コポリエステルの商品名で、BASF社(BASF Corporation)からECOFLEX(登録商標)の商品名で市販されている。
【0095】
また、好ましいAAPEの具体例には、(a)50モル%グルタル酸残基、50モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基、(b)60モル%グルタル酸残基、40モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基、または(c)40モル%グルタル酸残基、60モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(テトラメチレングルタル酸−co−テレフタル酸)、(a)85モル%コハク酸残基、15モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基、または(b)70モル%コハク酸残基、30モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(テトラメチレンコハク酸−co−テレフタル酸)、70モル%コハク酸残基、30モル%テレフタル酸残基、および100モル%エチレングリコール残基を含むポリ(コハク酸エチレン−co−テレフタル酸)、ならびに(a)85モル%アジピン酸残基、15モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基、または(b)55モル%アジピン酸残基、45モル%テレフタル酸残基、および100モル%1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(アジピン酸テトラメチレン−co−テレフタル酸)がある。
【0096】
AAPEは好ましくは約10〜約1,000の反復単位を含み、好ましくは約15〜約600の反復単位を含む。AAPEの固有粘度は、重量比60/40のフェノール/テトラクロロエタン溶液100ml中0.5グラムのコポリエステル濃度を用いて25℃の温度で測定時に約0.4〜約2.0dL/g、より好ましくは約0.7〜約1.6dL/gでもよい。
【0097】
AAPEは必要に応じて分岐剤の残基を含んでもよい。分岐剤のモル%範囲は二塩基酸またはジオール残基(分岐剤がカルボキシル基を含むかまたは水酸基を含むかによる)の総モルに対し約0〜約2モル%、好ましくは約0.1〜約1モル%、最も好ましくは約0.1〜約0.5モル%である。好ましくは、分岐剤は約50〜約5000の重量平均分子量、より好ましくは約92〜約3000の重量平均分子量を含み、約3〜約6の官能機を有する。例えば分岐剤は、3〜6の水酸基を有するポリオール、3または4のカルボキシル基(またはエステル形成均等基)を有するポリカルボン酸、または合計3〜6の水酸基およびカルボキシル基を有する水酸基酸のエステル化残基でもよい。また、反応性押し出し中に過酸化物を添加してAAPEを分岐してもよい。
【0098】
水非分散性重合体の各セグメントはその繊度が互いに異なっていてもよく、当業者に知られている任意の異形断面または加工断面に配置されていてもよい。例えばスルホポリエステルおよび水非分散性重合体を用いて、例えば並列型、「海島型」、パイ片型、鞘/芯型、リボン型(薄片型)、または当業者に知られている他の形状のような加工形状を有する二成分繊維を作ってもよい。他の多成分構造も可能である。その後、側部つまり「海」または「パイ」部分を除去することによって極微細な繊維になる。二成分繊維を作るプロセスは当業者には知られている。二成分繊維には、本発明のスルホポリエステル繊維が約10〜約90重量%の量だけ存在してもよく、一般に鞘/芯型繊維の鞘部分に使用される。一般に、水分散性または水非分散性重合体が用いられる場合、得られる二成分繊維または多成分繊維は完全な水分散性ではない。熱捲縮が大きく異なる並列型の組合せを利用して螺旋状の捲縮を発生させることができる。捲縮が望ましい場合、鋸歯捲縮または押し込
み捲縮が多くの用途に一般に適している。第2の重合体成分が鞘/芯型構造の芯の中にある場合、そのような芯は必要に応じて安定化される。
【0099】
多成分繊維から他の水分散性重合体を除去するのに腐食剤含有溶液が必要な場合があることに比べ、スルホポリエステルはその分散に中性または弱酸性(つまり「軟」水)の水だけが必要なので、「海島型」または「パイ片型」断面を有する繊維に特に有用である。本開示に使用されている「軟水」は、その水が1ガロン当たり最大5グレインのCaCO
3を有することを意味する(1ガロン当たり1グレインのCaCO
3は17.1ppmに相当する)。
【0100】
本発明の別の側面は多成分繊維であり、上記繊維は
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルを含み、上記スルホポリエステルは
(i)全酸残基に対し約50〜約96モル%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基と、
(ii)全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基と、
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに
(iv)3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約20モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記多成分繊維はさらに
(B)上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を含む複数のセグメントを含み、上記セグメントは上記セグメント間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されている。
【0101】
一態様では、多成分繊維は海島型またはパイ片型の断面を有し、その繊維の全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。
【0102】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ単量体、分岐単量体残基、および水非分散性重合体は先に述べたとおりである。多成分繊維の場合、スルホポリエステルが少なくとも57℃のTgを有することは有利である。スルホポリエステルは1種のスルホポリエステルでもまたは1種以上のスルホポリエステル重合体の混合物でもよい。スルホポリエステルまたはスルホポリエステル混合物が示してもよいガラス転移温度の更なる具体例は少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。例えばスルホポリエステルは、イソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基を約75〜約96モル%およびジエチレングリコールの残基を約25〜約95モル%含んでもよい。上記のように、水非分散性重合体の具体例はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリラクロカプトン、ポリカルボナート、ポリウレタン、セルロースエステル、およびポリ塩化ビニルである。また、水非分散性重合体は生物分解性でも非生物分解性でもよい。例えば、水非分散性重合体は上記の脂肪族−芳香族ポリエステルでもよい。
【0103】
本発明の新規な多成分繊維は当業者に知られている任意の数の方法によって作られてもよい。すなわち本発明は異形断面を有する多成分繊維の製造プロセスを提供し、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルおよび、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を紡糸して繊維にすることを含み、上記スルホポリエステルは
(A)1つ以上のジカルボン酸の残基と、
(B)芳香環または環状脂肪族に結合した2つの官能基と1つ以上のスルホン酸基を有する少なくとも1つのスルホ単量体の残基を全反復単位に対し約4〜約40モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記スルホポリエステルはさらに
(C)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに
(D)3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約25モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、
上記繊維は上記水非分散性重合体を含む複数のセグメントを有し、上記セグメントはセグメント間に介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されている。一態様では、この繊維は全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。例えば多成分繊維は、スルホポリエステルと1種以上の水非分散性重合体を別々の押出成型機で溶融し、個々の重合体流を複数の分配流路がある1つの紡糸口金または押出成形ダイに向け、そのため水非分散性重合体成分は小さなセグメントまたは細い糸を形成し、それらのセグメントまたは糸は介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されるように作られてもよい。そのような繊維の断面は例えばパイ片型配置または海島型配置でもよい。別の具体例では、スルホポリエステルおよび1種以上の水非分散性重合体は別々に紡糸口金の開口部へ供給され、鞘−芯型に押し出され、水非分散性重合体は「芯」を形成し、「芯」はスルホポリエステルの「鞘」重合体で実質的に囲まれている。そのような同心繊維の場合、「芯」繊維を供給する開口部は紡糸開口出口の中心にあり、芯重合体液の流動条件は厳格に制御されて紡糸時の両成分の同心度が維持される。紡糸口金開口を変更することによって繊維断面に種々の形状の芯および/または鞘を得ることができる。さらに別の具体例では、並列型断面または構造を有する多成分繊維を、(1)水分散性スルホポリエステルと非水分散性重合体を別々に開口部から同時に押し出し、別々の重合体流を実質的に同じ速度で合流させて隣り合わせに混合して紡糸口金表面の下流で結合流にすることによって、または(2)2つの重合体流を別々に開口部から供給し、紡糸口金表面で実質的に同じ速度で合流させ、紡糸口金表面で隣り合わせの結合流にすることによって作ってもよい。どちらの場合も、各重合体流の合流時の速度はその軽量ポンプの速度、開口部の数、および開口部の寸法で決まる。
【0104】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ単量体、分岐単量体残基、および水非分散性重合体は先に述べたとおりである。スルホポリエステルは少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。スルホポリエステルまたはスルホポリエステル混合物が示してもよいガラス転移温度の更なる具体例は少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。一具体例では、スルホポリエステルは、イソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基を総酸残基に対し約50〜約96モル%、およびソジオスルホイソフタル酸の残基を全酸残基に対し約4〜約30モル%、および3つ以上の官能基を有する分岐重合体の残基を総反復単位に対し0〜約20モル%含んでもよく、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。別の具体例では、スルホポリエステルは、イソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基を約75〜約96モル%およびジエチレングリコールの残基を約25〜約95モル%含む。上記のように水非分散性重合体の具体例はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリラクロカプトン、ポリカルボナート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルである。また、水非分散性重合体は生物分解性でも非生物分解性でもよい。例えば、水非分散性重合体は上記の脂肪族−芳香族ポリエステルでもよい。異形断面の具体例には、海島型、並列型、鞘−芯型、パイ片型、またはリボン型(薄片型)があるがこれらに限定されない。
【0105】
本発明の別の態様では、異形断面を有する多成分繊維を作るプロセスが提供され、このプロセスは少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを紡糸することによって多成分繊維を作ることを含み、上記多成分繊維は水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、上記水分散性スルホポリエステルは240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約12,000ポアズ未満の溶融粘度を有し、上記スルホポリエステルは二塩基酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1つのスルホ単量体の残基を約25モル%未満含む。別の態様では、多成分繊維は1単繊維あたり約6デニール未満の紡糸時デニールを有する。
【0106】
これらの多成分繊維および水非分散性重合体に用いられるスルホポリエステルについては本開示で先に記述した。
【0107】
本発明の別の態様では、異形断面を有する多成分繊維を作るプロセスが提供され、このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを押し出して多成分押出成形品を作ることを含み、上記多成分押出成形品は水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、このプロセスはさらに
(B)上記多成分押出成形品を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して多成分繊維を作ることを含む。
【0108】
このプロセスが多成分押出成形品を少なくとも約2000m/分、少なくとも約3000m/分、または少なくとも4500m/分の速度で溶融延伸する工程を含むことも、本発明のこの態様の特徴である。
【0109】
一般に繊維は紡糸口金を出ると横断方向の空気流で急冷されすぐに固化する。この段階で繊維を種々に仕上げたり種々の寸法にしたりしてもよい。冷却された繊維は一般にはその後延伸されて糸巻きに巻き取られる。乳化剤、帯電防止剤、抗菌剤、消泡剤、潤滑剤、熱安定剤、紫外線安定剤などの他の添加剤を仕上げ剤に適量加えてもよい。
【0110】
延伸繊維に必要に応じて質感を与え、巻き取って一塊の連続した単繊維を形成してもよい。この1工程の方法は紡糸−延伸−質感加工として当業分野で知られている。他の態様には均質な(無質感)単繊維糸または切断ステープルファイバーがあり、捲縮または非捲縮のどちらかである。
【0111】
界面層またはパイ片を溶解させてスルホポリエステルを後で除去し、水非分散重合体のさらに小さい単繊維すなわち極細繊維を残留させてもよい。すなわち本発明は極細繊維用の過程を提供し、このプロセスは
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル、およびこのスルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を紡糸して多成分繊維にすることを含み、上記スルホポリエステルは
(i)全酸残基に対し約50〜約96モル%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基と、
(ii)全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基と、
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、
(iv)3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約20モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、
上記繊維は水非分散性重合体を含む複数のセグメントを有し、これらのセグメントはセグメント間に介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、このプロセスはさらに
(B)多成分繊維を水に接触させてスルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維を形成することを含む。
【0112】
別の態様では、多成分繊維は繊維の全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。
【0113】
一般に多成分繊維は、温度範囲が約25〜約100℃または約50〜約80℃の水と約10〜約600秒間接触し、それによってスルホポリエステルが分散または溶解する。スルホポリエステルの除去後、残りの水非分散性重合体極細繊維の繊度は一般に1d/f以下、一般に0.5d/f以下、またはさらに一般に0.1d/f以下である。
【0114】
これらの残留水非分散性重合体極細繊維の一般的な用途には、例えば
人工皮革、なめし革、雑巾、濾材のような不織布が含まれる。これらの極細繊維から作られた濾材は空気または液体の濾過に利用可能である。液体用の濾材には水、体液、溶媒、および炭化水素があるがこれらに限定されない。有利なことに、スルホポリエステルのイオン特性によって、体液のような塩性媒体中では低溶解性となる。そのような特性は、水に流すことができるまたは衛生下水道に廃棄される介護製品および清掃用雑巾には望ましい。また特定のスルホポリエステルは染料槽の分散剤として、および繰り返し行う洗濯中の土の再堆積防止剤として利用されている。
【0115】
本発明の別の態様では、極細繊維を作るプロセスが提供され、このプロセスは少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維を作ることを含み、上記多成分繊維は水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、上記水分散性スルホポリエステルは240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約12,000ポアズ未満の粘度があり、上記スルホポリエステルは二塩基酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基を約25モル%未満含み、このプロセスはさらに、上記多成分繊維を水と接触させて上記水分散性スルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維を作ることを含む。一態様では、上記多成分繊維は1単繊維あたり約6デニール未満の紡糸時デニールを有する。
【0116】
本発明の別の態様では極細繊維を作るプロセスが提供され、このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを押し出して多成分押出成形品を作ることを含み、上記多成分押出成形品は水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在するスルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、このプロセスはさらに
(B)上記多成分押出成形品を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して多成分繊維を作ることと、
(C)上記多成分繊維を水に接触させて上記水分散性スルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維を形成することを含む。
【0117】
多成分押出成形品は少なくとも約2000m/分、少なくとも約3000m/分、または少なくとも約4500m/分の速度で延伸することができる。
【0118】
本発明による使用に適したそのようなスルホ単量体およびスルホポリエステルについては先に記述されている。
【0119】
一態様では、スルホポリエステルを多成分繊維から除去するのに用いられる水は室温より高温である。別の態様では、スルホポリエステルの除去に用いられる水は少なくとも約45℃、少なくとも約60℃、または少なくとも約80℃である。
【0120】
本発明の別の態様では水非分散性重合体切断極細繊維を作る別のプロセスが提供される。このプロセスは、
(A)多成分繊維を切断して多成分切断繊維にすることと、
(B)繊維含有原料を水に接触させて繊維混合スラリーを作ることを含み、上記繊維含有原料は多成分切断繊維を含み、このプロセスはさらに
(C)上記繊維混合スラリーを加熱して加熱繊維混合スラリーを作ることと、
(D)必要に応じて、上記繊維混合スラリーを剪断区域で混合することと、
(E)上記多成分切断繊維から上記スルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散液および上記水非分散性重合体極細繊維を含むスラリー混合物を作ることと、
(F)上記スラリー混合物から上記水非分散性重合体極細繊維を分離すること、を含む。
【0121】
多成分繊維を切断して任意の長さにし、それを利用して不織物品を作ることができる。本発明の一態様では、多成分繊維は約1〜約50mmの範囲に切断される。別の態様では、多成分繊維は、約1〜約25mm、約1〜約20mm、約1〜約15mm、約1〜約10mm、約1〜約6mm、約1〜約5mmの範囲に切断される。別の態様では、多成分切断繊維はその長さが約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、約10mm未満、約5mm未満に切断される。本発明の別の側面では、多成分繊維を異なる長さに切断して混在させることができる。
【0122】
本開示に用いられている「ステープルファイバー」は25mmを越え約50mmまでの長さに切断された繊維を規定するために用いられる。「短繊維」は約25mm以下の長さに切断された繊維を規定するために用いられる。
【0123】
繊維含有原料は不織物品の製造に有用な任意の他の種類の繊維を含むことができる。一態様では、繊維含有原料はセルロース繊維紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、およびセルロースエステル繊維から成る群から選択された少なくとも1つの繊維をさらに含む。
【0124】
繊維含有原料は水と混合されて繊維混合スラリーが作られる。好ましくは、水分散性スルホポリエステルの除去を容易にするために、使用する水は軟水または脱イオン水にすることができる。軟水は本開示で先に定義されている。本発明の一態様では、水分散性スルホポリエステルの多成分繊維からの除去を容易にするために、少なくとも1種の水軟化剤を用いてもよい。当業分野で知られている任意の水軟化剤を用いることができる。一態様では、水軟化剤はキレート剤またはカルシウムイオン封鎖剤である。適用可能なキレート剤またはカルシウムイオン封鎖剤は、1分子当たり複数のカルボン酸基を含み、キレート剤の分子構造内のカルボン酸基が2〜6個の原子で分離されている化合物である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムは最も一般的なキレート剤の一具体例であり、1分子構造当たり4つのカルボン酸部分を含み、隣り合うカルボン酸基の間に3原子分の距離がある。ポリアクリル酸のナトリウム塩はカルシウムイオン封鎖剤の一具体例であり、2原子分の距離があるカルボン酸基を含む。マレイン酸または酢酸のナトリウム塩は最も基本的なキレート剤化合物の具体例である。使用可能なキレート剤の更なる具体例には、一般にその分子構造内に複数のカルボン酸基を有し、カルボン酸基は必要な距離(2〜6原子単位)だけ離れており、カルシウムのような二価または多価イオンをもつ好ましい立体相互作用を有し、それによってキレート剤が二価または多価イオンに選択的に結合する化合物がある。そのような化合物には、ジエチレントリアミン五酢酸、ペンテト酸、N,N−ビス(2−(ビス−(カルボキシメチル)アミノ)エチル)−グリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、(((カルボキシメチル)イミノ)ビス(エチレンニトリロ))−四酢酸、エデト酸、エチレンジニトリロ四酢酸、EDTA遊離塩基、EDTA遊離酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸
、N,N’−1,2−エタンジイルビス−(N−(カルボキシルメチル)グリシン)、N,N−ビスカルボキシメチルグリシン、トリグリコラミン酸、トリロンA(登録商標)、α,α’,α”−トリメチルアミントリカルボン酸、トリカルボキシルメチルアミン、アミノ三酢酸、ニトリロ三酢酸、およびこれらの混合物があるがこれらに限定されない。
【0125】
必要な水軟化剤の量は使用する水のCa
++および他の多価イオンを単位とする硬度で決まる。
【0126】
繊維混合スラリーは加熱されて加熱繊維混合スラリーが作られる。その温度はスルホポリエステルの一部を多成分繊維がら除去するのに十分な温度である。本発明の一態様では、繊維混合スラリーは約50〜約100℃の範囲の温度まで加熱される。他の温度範囲は約70〜約100℃、約80〜約100℃、および約90〜約100℃である。
【0127】
必要に応じて繊維混合スラリーは剪断区域で混合される。混合される量は水分散性スルホポリエステルの一部を多成分繊維から分散・分離し、水非分散性重合体極細繊維を分離するのに十分な量である。本発明の一態様ではスルホポリエステルの90%が除去される。別の態様ではスルホポリエステルの95%が除去され、さら別の態様ではスルホポリエステルの98%以上が除去される。剪断区域は、水分散性スルホポリエステルの一部を多成分繊維から分散・分離し、水非分散性重合体極細繊維を分離することができる任意の種類の機器を備えることができる。そのような機器の具体例にはパルプ製造機および精製機があるがこれらに限定されない。
【0128】
多成分繊維中の水分散性スルホポリエステルは水と接触し加熱された後に分散し水非分散性重合体繊維から分離して、スルホポリエステル分散液と水非分散性重合体極細繊維を含むスラリー混合物を作ることになる。水非分散性重合体極細繊維はその後スルホポリエステル分散液から当業分野で知られている任意の手段で分離される。例えばスラリー混合物を例えば網および濾材のような分離装置に通すことができる。必要に応じて、水非分散性重合体極細繊維を一回または多数回洗浄してより多くの水分散性スルホポリエステルを除去してもよい。
【0129】
水分散性スルホポリエステルの除去はスラリー混合物の物理的観察によって決定することができる。水非分散性重合体極細繊維のすすぎに使用される水は、水分散性スルホポリエステルがほとんど除去されていれば透明である。水分散性スルホポリエステル除去が途中なら、水非分散性重合体極細繊維のすすぎに使用される水は乳白色の場合がある。さらに、水分散性スルホポリエステルが水非分散性重合体極細繊維に残留していると極細繊維にやや粘着感があることがある。
【0130】
スルホポリエステル分散液から水分散性スルホポリエステルを当業分野で知られている任意の方法で回収することができる。
【0131】
本発明の別の態様では水非分散性重合体極細繊維が提供され、この水非分散性重合体極細繊維は少なくとも1種の水非分散性重合体を備え、水非分散性重合体極細繊維は5マイクロメートル未満相当の直径および25ミリメートル未満の長さを有する。この水非分散性重合体極細繊維は先に記述したプロセスで作られて極細繊維が作られる。本発明の別の側面では、水非分散性重合体極細繊維は3ミクロン未満相当の直径および25ミリメートル未満の長さを有する。本発明の別の態様では、水非分散性重合体極細繊維は5ミクロン未満相当または3ミクロン未満相当の直径を有する。本発明の別の態様では、水非分散性重合体極細繊維は12ミリメートル未満、10ミリメートル未満、6.5ミリメートル未満、および3.5ミリメートル未満の長さを有することができる。分離された多成分繊維の領域またはセグメントから水非分散性重合体極細繊維が得られる。
【0132】
本発明には、上記の水分散性繊維、多成分繊維、極細繊維、または水非分散性重合体極細繊維を含む繊維状物品も含まれる。「繊維状物品」は繊維を有する物品または繊維に類似の任意の物品を意味すると理解される。繊維状物品の具体例には、多繊維の繊維、糸、紐、テープ、布、湿式重ね合わせ織物、乾式重ね合わせ織物、溶融吹き出し織物、紡糸結合織物、熱結合織物、水流交絡織織物、
不織ウェブおよび不織布、およびそれらの組合せ、繊維の層を1層以上有する例えば多層不織布、積層体、およびそのような繊維の合成物、例えばガーゼ、包帯、おむつ、練習用おむつ、止血栓、手術着およびマスク、女性用ナプキンなどの品が含まれるがこれらに限定されない。また、水非分散性重合体極細繊維を空気濾過、液体濾過、調理用の濾過、医療用途の濾過、ならびに製紙過程および紙製品の濾過に利用することができる。さらに、繊維状物品にはいろいろな個人用衛生製品および清掃製品用の詰め替え挿入品が含まれてもよい。本発明の繊維状物品を水分散性または水非分散性の他の材料に接着、積層、取り付けてもよく、またはそれらと併用してもよい。繊維状物品、例えば不織布層を軟性プラスチック膜に接着してもよく、またはポリエチレンのような水非分散性材料を裏張りしてもよい。例えばそのような組立体を使い捨ておむつの1部品として用いることができる。また、繊維を別の基質に吹きかけて工業的な溶融吹き出し構造、紡糸結合構造、フィルム構造、または膜構造の非常に多彩な組合せを形成する結果として繊維状物品が生じてもよい。
【0133】
本発明の繊維状物品には不織布および
不織ウェブが含まれる。不織布は繊維性織物から織るまたは編む作業を行わずに直接作られた布と定義されている。繊維協会(Textile Institue)によれば、不織布は糸ではなく繊維から直接作られた織物構造と定義されている。これらの織物は、一般には連続した単繊維または繊維織物またはバットで作られ、種々の技術を用いる結合で強化されており、これらの技術には接着剤結合、針縫いまたは水流噴出交絡による機械的連結、熱結合、および縫い合わせ結合が含まれるがこれらに限定されない。例えば、本発明の多成分繊維を任意の知られている布形成プロセスで布に形成してもよい。得られた布または織物に十分な力を加えて多成分繊維を分離させることによって極細繊維織物に変えてもよく、またはその織物を水と接触させてスルホポリエステルを除去して極細繊維を残留させることによって極細繊維織物に変えてもよい。
【0134】
本発明の別の態様では極細繊維織物を作るプロセスが提供され、このプロセスは、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルおよび、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体を紡糸して多成分繊維にすることを含み、上記スルホポリエステルは
(i)全酸残基に対し約50〜約96モル%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基と、
(ii)全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基と、
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH2−CH2)n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記スルホポリエステルはさらに、
(iv)3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約20モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、
上記多成分繊維は上記水非分散性重合体を含む複数のセグメントを有し、上記セグメントは上記セグメント間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、このプロセスはさらに
(B)工程Aの上記多成分繊維を重ね合わせ集めて
不織ウェブを形成することと、
(C)上記
不織ウェブを水に接触させて上記スルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維を形成することを含む。
【0135】
本発明の別の態様では、使用される多成分繊維は繊維の全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含む。
【0136】
本発明の別の態様では極細繊維のためのプロセスが提供され、このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを紡糸させることを含み、上記多成分繊維は上記水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在する上記スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、上記水分散性スルホポリエステルは240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約12,000ポアズ未満の粘度があり、上記スルホポリエステルは二塩基酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1つのスルホ単量体の約25モル%未満の残基を含み、このプロセスはさらに
(B)工程(A)の上記多成分繊維を集めて
不織ウェブを形成することと、
(C)上記
不織ウェブを水に接触させて上記スルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維織物を形成することを含む。別の態様では、使用される多成分繊維は1単繊維あたり約6デニール未満の紡糸時デニールを有する。
【0137】
本発明の別の態様では、極細繊維のためのプロセスが提供され、このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルと、上記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体とを押し出して多成分押出成形品にすることを含み、上記多成分押出成形品は上記水非分散性重合体を含む複数の領域を有し、これらの領域はその間に介在する上記水分散性スルホポリエステルによって実質的に互いに隔離されており、このプロセスはさらに
(B)上記多成分押出成形品を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して多成分繊維を作ることと、
(C)工程(B)の上記多成分繊維を集めて
不織ウェブを形成することと、
(D)上記
不織ウェブを水に接触させて上記スルホポリエステルを除去し、それによって極細繊維織物を形成することを含む。
【0138】
このプロセスは、工程(C)の前に
不織ウェブの多成分繊維を水流交絡処理する工程をさらに備えてもよい。本発明の一態様では、水流交絡処理工程の結果、多成分繊維に含まれているスルホポリエステルの約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満が失われる。水流交絡処理工程中のスルホポリエステルの損失を減らす目的の促進のため、この過程中に使用される水の温度を約45℃未満、約35℃未満、または約30℃未満にすることができる。本発明の一態様では、多成分繊維からのスルホポリエステルの損失を最少にするには、水流交絡処理工程中に使用される水をできるだけ室温に近づける。逆に、工程(D)中のスルホポリエステル重合体の除去は、温度が少なくとも約45℃、少なくとも約60℃、または少なくとも約80℃の水を用いて実行することができる。
【0139】
水流交絡処理の後、工程(D)の前に、
不織ウェブを熱処理工程に通してもよく、この工程は
不織ウェブを少なくとも約100℃または少なくとも約120℃に加熱することを含む。この熱処理工程は繊維内部の応力を緩和し、寸法が安定した織物製品を作るのを補助する。本発明の他の態様では、熱処理された材料は上記の熱処理工程中に加熱された温度まで再度加熱されると、表面積が元の表面積の約5%未満、元の表面積の約2%未満、または元の表面積の約1%未満収縮する。
【0140】
多成分繊維に使用されるスルホポリエステルは本明細書に記述されたどのスルホポリエステルでもよい。一態様では、スルホポリエステルは、240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約6000ポアズ未満の溶融粘度を有し、全反復単位に対し約12モル%の少なくとも1つのスルホ単量体の残基を含む。これらの種類のスルホポリエステルについては本明細書で先に述べた。
【0141】
さらに本発明の方法は、多成分繊維の繊維速度が少なくとも2000m/分、少なくとも3000m/分、少なくとも4000m/分、少なくとも5000m/分の多成分繊維の延伸工程を含むことができる。
【0142】
本発明の別の態様では、水非分散性重合体極細繊維を含む不織物品を作ることができる。不織物品は水非分散性重合体極細繊維を含み、乾式重ね合わせ過程および湿式重ね合わせ過程から成る群から選択されるプロセスで作られる。多成分繊維および水非分散性重合体極細繊維を作るプロセスについては本明細書で先に述べた。
【0143】
本発明の一態様では少なくとも1%の水非分散性重合体極細繊維が不織物品に含有される。不織物品に含有される水非分散性重合体極細繊維の他の量は少なくとも10%、少なくとも25%、および少なくとも50%である。
【0144】
本発明の別の側面では、不織物品は少なくとも1種の他の繊維を含むことができる。他の繊維は当業分野で知られている任意の繊維にすることができ、作られる不織物品の種類によって決めることができる。本発明の一態様では、他の繊維を、セルロース繊維紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、およびセルロースエステル繊維、およびそれらの混合物から成る群から選択することができる。
【0145】
また、不織物品は少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。添加剤には澱粉、充填剤、および結合剤が含まれるがこれらに限定されない。他の添加剤は本明細書の他の部分に記述されている。
【0146】
一般に、多成分繊維から作られた水非分散性極細繊維でこれらの不織物品を作る製造プロセスは以下の群に分けることができる。すなわち、乾式重ね合わせ織物製造プロセス、湿式重ね合わせ織物製造プロセス、およびこれらの製造プロセスを互いに組合せたもの、または他の不織製造プロセスである。
【0147】
一般に乾式重ね合わせ不織物品は繊維を乾燥状態で操作するように設計されたステープルファイバー加工機で作られる。これには梳綿経路、空力経路、およびその他の空気式重ね合わせ経路のような機械式の過程が含まれる。またこの分類に含まれるものには、トウの形態の単繊維から作られる不織物品、およびステープルファイバーおよび縫製用の単繊維または糸で構成された織物、すなわち縫製結合不織布がある。梳綿とは繊維の交絡をほぐし、清掃し、混ぜ合わせて織物を作ることであり、この織物がさらに不織物品に加工される。この過程は主に繊維を整列させ、機械的交絡と繊維間の摩擦によって網状にまとめる。梳綿機は一般に1つ以上の主シリンダー、ローラーまたは固定頭部、1つ以上の取り出し装置、またはこれらの主要素の種々の組合せで構成されている。梳綿機の一具体例はローラー梳綿機である。梳綿動作とは、多成分切断繊維または水非分散性重合体極細繊維
を梳綿機の互いに作用し合う一連の梳綿ローラーの接点間で梳くこと、すなわち動かすことである。他の種類の梳綿機には毛織物用、綿織物用、および多方向梳綿機がある。ガーネット機を用いてこれらの繊維を整列させることもできる。
【0148】
乾式重ね合わせ製造プロセスでは、多成分切断繊維または水非分散性重合体極細繊維を空気で整列させることもできる。これらの繊維は空気流によって集束機に向けられる。集束機は平坦な搬送機でも円筒型でもよい。
【0149】
また、本発明の多成分繊維から押出成形織物を作ることもできる。具体例には紡糸結合および溶融吹き出しが含まれる。押出成形技術を用いて、紡糸結合物品、溶融吹き出し物品、および多孔質膜の不織物品を作る。これらの不織物品は、溶融紡糸、薄膜注型、および押出成形被覆のような重合体押出成形法と関連した機械で作られる。次にこの不織物品を水と接触させて水分散性スルホポリエステルを除去し、そのようにして水非分散性重合体極細繊維を含む不織物品が作られる。
【0150】
紡糸結合過程では、水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性重合体は、多成分単繊維を押出成形し、複数の束または集まりにして向きを揃え、搬送網に並べ、互いに連結することによって布に直接変換される。この相互の連結は熱融着、機械的交絡、水流交絡、化学的結合、またはこれらの処理の組合せによって行うことができる。
【0151】
溶融吹き出し繊維を水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性重合体から直接作ることもできる。重合体を溶融し押出成形する。溶融物が押出成形開口部を通過するとき、高温度の空気が当てられる。その空気流によって、溶融した重合体は細くなり固化する。その後多成分繊維は織物として空気流から別れ、加熱ローラーの間で圧縮される。
【0152】
紡糸結合と溶融結合を組合せた製造プロセスを用いて不織物品を作ることもできる。
【0153】
湿式重ね合わせ製造プロセスでは製紙技術を利用して不織物品が作られる。これらの不織物品は、ハンマー粉砕器および製紙のようなパルプの繊維化と関連した機械で作られる。例えばスラリーが連続網の上に圧送され、液体内の短繊維を操作するように設計されている。
【0154】
湿式重ね合わせ過程の一態様では、水非分散性重合体極細繊維は水中に懸濁し、形成機に移されて水が形成網を通過して排除され、繊維は網線の上に堆積する。
【0155】
湿式重ね合わせ過程の別の態様では、水非分散性重合体極細繊維はふるいすなわち金網で脱水される。金網は脱水モジュール(吸引箱、ホイル、およびcuratures)の水圧形成機の始動時に、1分当たり最大1500メートルの高速度で回転する。次にシートがこの金網すなわちふるいに取り付けられ脱水が進み、固形物成分は概算20〜30重量%になる。その後このシートを圧縮して乾燥させる。
【0156】
湿式重ね合わせ過程の別の態様では一プロセスが提供され、このプロセスは
(A)必要に応じて、水非分散性重合体極細繊維を水ですすぐことと、
(B)水非分散性重合体極細繊維に水を加えて水非分散性重合体極細繊維スラリーを作ることと、
(C)必要に応じて他の繊維および/または添加剤を水非分散性重合体極細繊維またはスラリーに加えることと、
(D)スラリーを含む水非分散性重合体極細繊維を湿式重ね合わせ不織区域へ搬送して不織物品を作ることを含む。
【0157】
工程(A)では、すすぎの回数は水非分散性重合体極細繊維の具体的な用途によって決まる。工程(B)では、十分な水を極細繊維に加えることによって極細繊維が湿式重ね合わせ不織区域へ送られる。
【0158】
湿式重ね合わせ不織区域は当業分野で知られている湿式重ね合わせ不織物品を作る任意の装置を備える。本発明の一態様では、湿式重ね合わせ不織区域は少なくとも1つの網、網の目、またはふるいを備えて水を水非分散性重合体極細繊維スラリーから除去する。
【0159】
湿式重ね合わせ過程の別の態様では一プロセスが提供され、このプロセスは
(A)多成分切断繊維を水と接触させて水分散性スルホポリエステルの一部を除去して、水非分散性重合体極細繊維と水分散性スルホポリエステルとを含水非分散性重合体極細繊維スラリーを作ることと、
(B)必要に応じて、水非分散性重合体極細繊維を水ですすぐことと、
(C)必要に応じて、他の繊維および/または添加剤を水非分散性重合体スラリーに加えることと、
(D)スラリーを含む水非分散性重合体極細繊維を湿式重ね合わせ不織区域へ搬送して不織物品を作ることを含む。
【0160】
本発明の別の態様では、水非分散性重合体極細繊維スラリーは湿式重ね合わせ不織区域へ搬送される前に混合される。
【0161】
複数の織物結合過程を用いて不織物品を作ることもできる。これらの過程は化学的過程と物理的過程に分けられる。化学結合は水性重合体および溶媒性重合体を用いて繊維および/または繊維性織物を結合することをいう。これらの結合剤は飽和、含浸、噴霧、印刷によって塗布するか、または泡の塗布によって付けることができる。物理結合過程は艶出し、熱風結合のような熱過程、および縫製および水流交絡処理のような機械的過程を含む。縫製または針穴開け過程は、繊維の一部をほぼ水平位置からほぼ垂直位置へ物理的に移動させて繊維を機械的に相互に連結する。針穴開けはニードル織機で行うことができる。一般にニードル織機は織物供給機構、複数の針を保持した針板を備える針梁、はぎ取り板、台板、および布巻き取り機構を備える。
【0162】
縫製結合は機械的な結合法であり、縫製要素を用いて繊維織物を結合するが、糸を用いることも用いないこともある。縫製結合機の具体例には、マリワット(Maliwatt)、アラクネ(Arachne)、マリフリース(Malivlies)、およびアラベヴァ(Arabeva)があるがこれらに限定されない。
【0163】
不織物品は以下の方法によってまとめることができる。すなわち、1)機械的な繊維結合および連結によって織物状または敷布状にする、2)結合繊維、熱可塑性の特定の重合体および重合体混合物の使用を含む種々の繊維融着方法、3)結合樹脂、例えば澱粉、カゼイン、セルロース誘導体、またはアクリルラテックスもしくはウレタンのような合成樹脂などの使用、4)粉末接着結合剤、または5)これらの組合せ。繊維は不規則に堆積していることが多いが、一方向に向けた後に上記の方法の1つを用いて結合することができる。
【0164】
本発明の繊維状物品は水分散性繊維、多成分繊維、または極細繊維の1つ以上の層を含んでもよい。これらの繊維層は1つ以上の不織布層でも、弱い結合で重ねられた繊維の層でも、またはそれらの組合せでもよい。また繊維状物品にはおむつのような育児製品、子供用訓練パンツ、成人用おむつおよび成人用失禁当て物のような成人用介護製品、女性用ナプキン、パンティーライナー、および止血栓のような女性用製品、雑巾、繊維含有清掃製品、医療用雑巾、ちり紙、ガーゼ、検査ベッド用被覆、手術用マスク、着衣、包帯、お
よび傷口用包帯のような医療および外科治療用製品のような介護製品および健康管理製品、布、弾性糸、雑巾、テープ、他の保護壁、および梱包材料が含まれるがこれらに限定されない。繊維状物品を液体吸収に用いてもよく、または種々の液体組成で先に湿らせ、これら成分を何かの表面に供給するために用いてもよい。液体組成の具体例には洗剤、湿潤剤、清掃剤、化粧品、軟膏、薬剤、軟化剤、および芳香剤のような肌手入れ製品があるがこれらに限定されない。また繊維状物品は、吸収性の向上のために、または搬送手段として種々の粉末および粒子を含んでもよい。粉末および粒子の具体例には滑石、澱粉、超吸収性重合体、スルホポリエステル、およびポリビニルアルコールのような種々の水吸収性、水分散性、または水膨潤性重合体、シリカ、染料、および微小カプセルがあるがこれらに限定されない。必須ではないが、特定の用途に必要なら添加剤が存在してもよい。添加剤の具体例には酸化安定剤、UV吸収剤、着色料、染料、乳白剤(艶消し剤)、光学的光沢剤、充填剤、核形成剤、可塑剤、粘度調整剤、表面改質剤、抗菌剤、殺菌剤、低温流動(コールドフロー)抑制剤、分岐剤、および触媒があるがこれらに限定されない。
【0165】
上記の繊維状物品は水分散性であることに加え水に流せてもよい。本明細書に用いられている「水に流せる」は、従来の便所に流せ、地域の下水道または家庭の汚水処理装置に入れることができ、便所および汚水処理装置の邪魔になったり詰まらせたりすることがない。
【0166】
繊維状物品は第2の水分散性重合体を含む水分散性膜をさらに含んでもよい。第2の水分散性重合体は本発明の繊維および繊維状物品に使用される上記の水分散性重合体と同じでもまたは異なってもよい。例えば一態様では、第2の水分散性重合体は更なるスルホポリエステルでもよく、この更なるスルホポリエステルは
(A)全酸残基に対し約50〜約96%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1つ以上の残基と、
(B)全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基と、
(C)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも15モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、この更なるスルホポリエステルはさらに
(D)3つ以上の官能基を有し全反復単位に対し0〜約20モル%の分岐単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せである。この更なるスルホポリエステルを本明細書に先に述べた1つ以上の更なる重合体と混合して、得られる繊維状物品の特性を改良してもよい。更なる重合体は用途によって水分散性でもまたは水非分散性でもよい。更なる重合体は上記更なるスルホポリエステルと混合性でも非混合性でもよい。
【0167】
更なるスルホポリエステルは他の濃度のイソフタル酸残基を含有してもよく、例えば約60〜95モル%および約75〜約95モル%である。イソフタル酸残基の濃度範囲の更なる具体例は、約70〜85モル%、約85〜95モル%、および約90〜95モル%である。また、更なるスルホポリエステルは約25〜95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでもよい。ジエチレングリコール残基の濃度範囲の更なる具体例には約50〜95モル%、約70〜95モル%、および約75〜95モル%が含まれる。また、更なるスルホポリエステルはエチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含んでもよい。CHDM残基の一般的な濃度範囲は約10〜75モル%、約25〜65モル%、および約40〜60モル%である。エチレングリコール残基の一般的な濃度範囲は約10〜75モル%、約25〜65モル%、および約40〜60モル%である。別の態様では、更なるスルホポリエステルは約75〜96モル%のイソフタル酸の残基および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含む。
【0168】
本発明によれば、繊維状物品のスルホポリエステル膜要素は単層膜として作られても多層膜として作られてもよい。単層膜は従来の注型技術で作られてもよい。多層膜は従来の積層法のような方法で作られてもよい。膜は都合の良い任意の厚さでよいが、全体の厚みは一般には約2〜約50ミリメートルである。
【0169】
膜含有繊維状物品は1層以上の上記の水分散性繊維を含んでもよい。繊維層は1層以上の不織布層でも、結合が弱い重なり合った繊維の層でも、またはそれらの組合せでもよい。また、膜含有繊維状物品には本明細書で先に記述した介護製品および健康管理製品が含まれてもよい。
【0170】
先に記述したように繊維状物品は吸収性を向上させるためにまたは搬送手段として種々の粉末および粒子を含んでもよい。したがって一態様では、本発明の繊維状物品は、本明細書で先に記述した水分散性重合体成分と同じでもまたは異なっていてもよい第3の水分散性重合体を含む粉末を含む。粉末および粒子の他の具体例には滑石、澱粉、種々の水吸収剤、ポリアクリロニトリル、スルホポリエステル、およびポリビニルアルコールのような分散性または水膨潤性重合体、シリカ、染料、および微小カプセルがあるがこれらに限定されない。
【0171】
本発明の新規な繊維および繊維状物品には、上記の用途に加えて他に多くの潜在的用途がある。新規な用途の1つに、膜または不織布を平坦面、湾曲面、または成形面に溶融吹き付けして保護層を作ることがある。そのような層の1つは、配送中の耐久機器の表面保護を提供する。目的地で機器を稼働させる前に、スルホポリエステルの外層を洗い落とすこともできる。この汎用的用途の概念の更なる態様には、再利用可能または限定的利用の衣類または覆いに一時的な障壁層を設ける個人を保護する物品が含まれてもよい。軍用には、活性炭および化学吸収剤を集束機の直前の細くなる単繊維模様に噴霧して、化学吸収剤が溶融吹き出し母剤の露出面に固定されるようにすることができる。これらの化学吸収剤は、別の層への溶融吹き付けによって危険な兆候が生じたら、その前の操作域で変更することもできる。
【0172】
スルホポリエステルに固有の大きな利点の1つは、重合体を水性分散液からイオン部分(すなわち塩)の添加による凝集または沈殿を経て容易に除去または回収する能力である。また、pH調整、非溶媒添加、凍結などの他の方法を用いてもよい。したがって外套保護着のような繊維状物品は、保護障壁の用途を果たした後で例えその重合体が危険廃棄物とされていても、焼却のような認められた手順を用いて少ない廃棄量で安全に取り扱うことができる可能性がある。
【0173】
未溶解または乾燥スルホポリエステルは種々の基質に強い接着結合を形成することが知られている。そのような基質には、綿毛紙、綿、アクリル、レーヨン、リヨセル、PLA(ポリラクチド)、セルロースアセタート、セルロースアセタートプロピオン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリシクロヘキシレンテレフタラート、コポリエステル、ポリアミドナイロン、ステンレス鋼、アルミニウム、処理済ポリオレフィン、PAN(ポリアクリロニトリル)、およびポリカルボナートが含まれるがそれらに限定されない。すなわち本発明の不織布は、知られている方法で結合してよい積層接着剤または結合剤として使用してもよく、その方法には、熱、高周波(RF)、マイクロ波、および超音波のような方法がある。スルホポリエステルを用いてRF活性にすることが近年の多くの特許に開示されている。すなわち、本発明の新規な不織布は接着特性に加えて2つ、場合によっては複数の機能性を有することができる。例えば幼児用おむつが得られるが、ここでは本発明の不織布は水反応性接着剤および最終組立体の液体管理部品の両方の機能を有する。
【0174】
また本発明は水分散性繊維用の製造プロセスを提供し、このプロセスは
(A)水分散性重合体組成をその流動点を超える温度まで加熱することを含み、上記重合体組成は
(i)1つ以上のジカルボン酸の残基と、
(ii)芳香環または環状脂肪族に取り付けられた2つの官能基および1つ以上の金属スルホン酸基を有し全反復単位に対し約4〜約40モル%の少なくとも1つのスルホ単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記重合体組成はさらに
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも20モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)
n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記重合体組成はさらに、3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約25モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記重合体組成はその全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含み、このプロセスはさらに(II)単繊維を溶融紡糸することを含む。本明細書にこれまで述べたように、水分散性重合体を必要に応じてスルホポリエステルと混合してもよい。また、水非分散性重合体を必要に応じてスルホポリエステルと混合して非混合性の混合物を形成してもよい。本明細書で用いられる「流動点」はある温度を意味し、その温度における重合体成分の粘度によって紡糸口金または押出成形ダイを通過する押出成型または他の形態の加工が可能になる温度である。ジカルボン酸残基はスルホ端量体の種類と濃度によって約60〜約100モル%の酸残基を含んでもよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の具体例は約60〜約95モル%、および約70〜約95モル%である。好ましいジカルボン酸残基はイソフタル酸、テレフタル酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、またはジエステルを用いる場合は、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、およびイソフタル酸およびテレフタル酸の残基を有するジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、特に好ましい。
【0175】
スルホ単量体は、ジカルボン酸またはスルホン酸基を含むそのエステル、スルホン酸基を含むジオール、またはスルホン酸基を含む水酸基酸でもよい。スルホ単量体残基の濃度範囲の別の具体例は、総反復単位に対し約4〜約25モル%、約4〜約20モル%、約4〜約15モル%、および約4〜約10モル%である。スルホン酸塩の陽イオンはLi
+、Na
+、K
+、Mg
++、Ca
++、Ni
++、Fe
++のような金属イオンでもよい。または、スルホン酸塩の陽イオンは先に記述した窒素塩基のような非金属でもよい。本発明の製造プロセスに用いてもよいスルホ単量体残基の具体例はスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、またはそれらの組合せの金属スルホン酸塩である。用いてもよいスルホ単量体の別の具体例は5−ソジオスルホイソフタル酸またはそのエステルである。スルホ単量体残基が5−ソジオスルホイソフタル酸由来であれば、一般的なスルホ単量体濃度範囲は総酸残基に対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約10〜約25モル%である。
【0176】
本発明のスルホポリエステルは1つ以上のジオール残基を含み、そのジオール残基は脂肪族、脂環式、およびアラルキルグリコールを含んでもよい。脂環式ジオール、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールは純シスまたはトランス異性体またはシスとトランス異性体の混合物として存在してもよい。低分子量ポリエチレングリコールの具体例は、例えばnが2〜6の場合、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールであるがこれらに限定されない。これらの低分子量グリコールの内、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールは最も好ましい。スルホポリエステルは必要に応じて分岐単量体を含んでもよい。分岐単量体の具体例は先に記述した通りである。分岐単量体濃度範囲の更なる具体例は0〜約20モル%および0〜約10モル%である。本発明の新規なプロセスのスルホポリエステルは少なくとも25℃
のTgを有する。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる具体例は少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、および少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの一般的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、および約90℃である。
【0177】
水分散性繊維は溶融吹き出し法で作ることができる。重合体を押出成型機内で溶融しダイに通す。ダイから出た押出成形品は高温・高速の空気によって急激に細くなり直径が極細になる。繊維の向き、冷却速度、ガラス転移温度(Tg)、結晶化速度は重合体が細くなる途中の粘度および加工特性に影響を与えるので重要である。移動ベルト、円筒ドラム、回転心棒のような再生可能な面に単繊維を集める。小粒の予備乾燥(必要時)、押出成形区域温度、溶融温度、スクリューの設計、処理速度、気温、空気流(速度)、ダイ間隙と後退寸法(set back)、先端穴寸法、ダイ温度、ダイ−集束機間(DCP)距離、急冷環境、集束機速度、および後処理が、単繊維直径、基本重量、織物厚さ、細孔径、柔軟さ、および捲縮のような製品特性に影響する全ての因子である。また、高速の空気を用いて単繊維をやや不規則に動かして広範囲に相互に連結してもよい。移動ベルトがダイの下を通過する場合は、単繊維の重ね置き、機械的結束、および熱結合によって不織布を作ることができる。紡糸結合層または裏打ち層のように別の基質に重ね吹き付けすることもできる。単繊維を回転心棒に巻き取れば円筒状の製品が形成される。また水分散性繊維の重ね合わせ品を紡糸結合法で作ることもできる。
【0178】
したがって本発明は水分散性不織繊維用の製造プロセスをさらに提供し、このプロセスは、
(A)水分散性重合体組成をその流動点を超える温度まで加熱することを含み、上記重合体組成は
(i)1つ以上のジカルボン酸の残基と、
(ii)芳香環または環状脂肪族に取り付けられた2つの官能基および1つ以上の金属スルホン酸基を有し全反復単位に対し約4〜約40モル%の少なくとも1つのスルホ単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記重合体組成はさらに
(iii)1つ以上のジオール残基を含み、全ジオール残基に対し少なくとも20モル%は以下の構造を有するポリエチレングリコールであり、
H−(OCH
2−CH
2)n−OH
式中、nは2〜約500の範囲の整数であり、上記重合体組成はさらに
(iv)3つ以上の官能基を有する分岐単量体の残基を全反復単位に対し0〜約25モル%含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、
スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有し、上記重合体組成はその全重量に対し10重量%未満の染料または充填剤を含み、このプロセスはさらに(B)単繊維を溶融紡糸することと、
(C)工程(B)の単繊維を重ね合わせ集めて
不織ウェブを形成すること、を含む。本明細書にこれまで述べたように、水分散性重合体を必要に応じてスルホポリエステルと混合してもよい。また、水非分散性重合体を必要に応じてスルホポリエステルと混合して非混合性の混合物を形成してもよい。ジカルボン酸、スルホ単量体、および分岐単量体残基については先に記述したとおりである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる具体例は少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、および少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの一般的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、および約90℃である。
【0179】
本発明の一態様では、多成分繊維の切断、洗浄、余分な水の除去後に作られた水湿潤極細繊維性製品(湿式重ね合わせ品)を湿式重ね合わせ不織過程に直接(すなわち追加乾燥せずに)用いることができる。湿式重ね合わせ製品を湿式重ね合わせ不織過程に直接使用することにより、湿式重ね合わせ品の乾燥を完了させる必要がなく、それによってエネルギーおよび装置の費用を大きく節約することができる。湿式重ね合わせ品製造設備が湿式重ね合わせ不織布を作る設備から離れて配置されている場合、湿式重ね合わせ品を梱包し、湿式重ね合わせ品製造場所から不織布製造場所へ運ぶことができる。そのような湿式重ね合わせ組成物について以下にさらに詳細に述べる。
【0180】
本発明の一態様は、水および複数の合成繊維を含む湿式重ね合わせ組成物用である。水は湿式重ね合わせ組成物の少なくとも50重量%、55重量%、または60重量%、および/または90重量%、85重量%、または80重量%以下を占めることができる。合成繊維は湿式重ね合わせ組成物の少なくとも10重量%、15重量%、または20重量%、および/または50重量%、45重量%、または40重量%以下を占めることができる。水および合成繊維は合計で湿式重ね合わせ組成物の少なくとも95重量%、98重量%、または99重量%を占める。合成繊維は少なくとも0.25ミリメートル、0.5ミリメートル、または1ミリメートル、および/または25ミリメートル、10ミリメートル、または2ミリメートル以下の長さを有することができる。合成繊維は少なくとも0.1ミクロン、0.5ミクロン、または0.75ミクロン、および/または10ミクロン、5ミクロン、または2ミクロン以下の最小横断寸法を有することができる。
【0181】
本明細書に用いられている「最小横断寸法」は、外側ノギス法で繊維の長軸に垂直に測定した繊維の最小寸法を示す。本明細書に用いられている「最大横断寸法」は外側ノギス法で繊維の長軸に垂直に測定した繊維の最大寸法を示す。
図1a、1b、および1cに、これらの寸法をどのように測定すればよいかを種々の繊維断面で示す。
図1a、1b、および1cでは、「TD
最小」は最小横断寸法、「TD
最大」は最大横断寸法である。本明細書に用いられている「外側ノギス法」は繊維の外径を測定する方法を示し、測定された寸法は同一平面上の2つの平行線を隔てる距離であり、その間に繊維が置かれ、各平行線は繊維のほぼ両側にある繊維の外面に接触している。本明細書に提示された全ての繊維の寸法(例えば長さ、最小横断寸法、および最大横断寸法)は特定の群に属する繊維の平均寸法である。
【0182】
湿式重ね合わせ組成物は、繊維仕上げ組成を少なくとも10ppmw、50ppmw、または100ppmw、および/または1,000ppmw、500ppmw、または250ppmw以下の量だけさらに含むことができる。一態様では、繊維仕上げ剤組成は油、ろう、および/または脂肪酸を含むことができる。別の態様では、繊維仕上げ剤組成は自然由来脂肪酸および/または自然由来の油を含むことができる。さらに別の態様では、繊維仕上げ剤組成は鉱油、ステアリン酸エステル、ソルビタンエステル、および/または牛脚油を含む。さらに別の態様では、繊維仕上げ剤組成は鉱油を含む。
【0183】
湿式重ね合わせ組成物は、水分散重合体を少なくとも0.001重量%、0.01重量%、または0.1重量%、および/または5重量%、2重量%、または1重量%以下の量だけさらに含むことができる。一態様では、水分散性重合体は少なくとも1つのスルホポリエステルを含む。スルホポリエステルについては本開示で先に記述した。
【0184】
スルホポリエステルは、
(A)全酸残基に対し約50〜約96%の1つ以上のジカルボン酸を含み、上記1つ以上のジカルボン酸はテレフタル酸およびイソフタル酸を含み、上記スルホポリエステルはさらに
(B)芳香環または環状脂肪族に取り付けられた2つの官能基および1つ以上のスルホン
酸基を有し総酸残基に対し約4〜約40モル%の少なくとも1つのスルホ単量体の残基を含み、上記官能基は水酸基、カルボキシル基、またはそれらの組合せであり、上記スルホポリエステルはさらに
(C)1つ以上のジオール残基を含む。
【0185】
スルホポリエステルは、少なくとも40℃または少なくとも50℃のガラス転移温度(Tg)、40℃におけるフェノール/テトラクロロエタン溶媒の重量比60/40の溶液と溶媒100mL中スルホポリエステル0.5gの濃度で測定して少なくとも約0.2dL/gの固有粘度、および240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約12,000ポアズ、8,000ポアズ、または6,000ポアズ未満の溶融粘度を有する。
【0186】
湿式重ね合わせ組成物の水非分散性合成重合体をポリオレフィン、ポリエステル、共重合ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリラクロカプトン、ポリカルボナート、ポリウレタン、セルロースエステル、アクリル、ポリ塩化ビニル、およびこれらの混合物から成る群から選ぶことができる。一態様では、水非分散性合成重合体はポリエチレンテレフタラート単独重合体、ポリエチレンテレフタラート共重合体、ポリブチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ナイロン6、ナイロン66、およびこれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0187】
湿式重ね合わせ組成物は以下の工程を含むプロセスで作ることができ、このプロセスは(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルおよび水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性合成重合体を含み15dpf未満の紡糸時デニールを有する多成分切断繊維を作ることと、
(B)多成分繊維を切断して25ミリメートル未満の長さを有する多成分短繊維にすることと、
(C)多成分切断繊維を洗浄水に接触させて水分散性スルホポリエステルを除去し、それによって、水とスルホポリエステルの一部を含むスルホポリエステル分散液中に合成繊維のスラリーを形成することと、
(D)スルホポリエステル分散液の少なくとも一部をスラリーから除去して、それによって湿式重ね合わせ組成物を作ることを含む。
【0188】
上記のように、湿式重ね合わせ組成物を湿式重ね合わせ過程に直接用いて不織物品を作ることができる。湿式重ね合わせ品を湿式重ね合わせ過程で使用するために、湿式重ね合わせ組成物はその製造場所から湿式重ね合わせ不織区域へ搬送される。湿式重ね合わせ組成物を湿式重ね合わせ不織区域および/またはその直ぐ上流で追加の繊維と混合することができる。追加の繊維をセルロース繊維紙、無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、リヨセル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、セルロースエステル繊維、およびそれらの混合物から成る群から選択することができる。
【0189】
湿式重ね合わせ過程の一部として、湿式重ね合わせ組成物を湿式重ね合わせ不織区域および/またはその直ぐ上流で希釈水と混合することができる。希釈水と湿式重ね合わせ品は、重量比で1の湿式重ね合わせ品に対し少なくとも50、75、90、または95の希釈水を使用するような量で混合することができる。
【0190】
本発明の別の態様では、
図2、3a、3b、および4に示すように、極細繊維製品流を作るプロセスが提供される。多成分繊維については本開示で先に記述した。多成分繊維に関する更なる開示は以下の特許および特許出願に提供されている。米国特許第6,989,193号、第7,635,745号、第7,902,094号、第7,892,993号、第7,687,143号、および米国特許出願第12/199,304号、第12/909,574号、第13/273,692号、第13/273,648号、第13/2
73,710号、第13/273,720号、第13/273,929号、第13/273,937号、第13/273,727号、第13/273,737号、第13/273,745号、第13/273,749号、第12/966,502号、第12/966,507号、第12/975,450号、第12/975,452号、第12/975,456号、第13/053,615号、第13/352,362号、第13/433,812号、第13/433,854号、第61/471,259号、第61/472,964号、および第61/558,744号であり、これらの開示は本明細書の記述と矛盾しない内容の参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
「湿式重ね合わせ品」および「極細繊維製品流」は本開示では区別無しに用いられる。
【0192】
図2に示す本発明の一態様では極細繊維製品流を作るプロセスが提供される。このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルおよび水分散性スルホポリエステルと非混和性の少なくとも1種の水非分散性合成重合体を含み25ミリメートル未満の長さを有する多成分切断繊維101を開繊区域400内で少なくとも40℃の温度の加熱水流801に接触させて水分散性スルホポリエステルを除去して、水、極細繊維、および水分散性スルホポリエステルを含む開繊極細繊維スラリー401を作ることと、
(B)開繊極細繊維スラリー401を一次固液分離区域500へ送って極細繊維製品流503および水と水分散性スルホポリエステルを含む第1の母液流501を作ることを含む。
【0193】
本発明のこの態様では、繊維スラリー区域200、混合区域300、および開繊区域400は
図4に示すように開繊過程区域1100で1つの単位操作に結合されている。開繊過程区域1100は開繊区域400を備える。
【0194】
水流102を水性処理区域1000へ送ることによって、このプロセスで使用される処理済み水流103を作ることができる。水流は水を含む。本発明の別の態様では、処理済み水流103中の一価金属陽イオンの濃度を重量で約1000ppm未満、重量で約500ppm未満、重量で約100ppm未満、または重量で約50ppm未満にすることができる。水流102から二価および多価金属陽イオンを除去することは水性処理区域1000の一機能である。本発明の他の態様では、二価および多価陽イオンの濃度を重量で約50ppm未満、重量で約25ppm未満、重量で約10ppm未満、または重量で約5ppm未満にすることができる。流れ103の温度範囲は地下水の温度から約40℃までにすることができる。
【0195】
水性処理区域1000の水流102を当業分野で知られている任意の方法で処理することができる。一態様では、水性処理区域1000は蒸留装置を備え、水蒸気を発生させ凝縮させて処理済み水流103を作る。別の態様では、一価および二価金属陽イオンを水から分離することができる逆浸透膜分離装置に水を送って処理済み水流103を作る。別の態様では、水をイオン交換樹脂に送って金属陽イオンが許容の低濃度である処理済み水流103を作る。さらに別の態様では、水を市販の水軟化装置に送って二価および多価金属陽イオンが許容の低濃度である処理済み水流103を発生させる。これらの水処理の選択肢の任意の組合せを用いて、処理済みの水の要求特性を達成してもよいことが分かる。
【0196】
処理済み水流103を、それを必要とする過程の任意の位置に送ってもよい。一態様では、流れ103の一部を一次
固液分離区域500へ送って布洗浄および/または一次
固液分離区域500に含まれる固形物の洗浄に役立ててもよい。
【0197】
一態様では、処理済み水流103の少なくとも一部を熱交換区域800へ送って加熱水
流を作る。熱交換区域800の一機能は、特定の制御された温度の加熱水流801を発生させることである。
【0198】
一態様では、熱交換区域800へ供給可能な流れは処理済み水流103および第2の母液流601である。別の態様では、熱交換区域800へ供給可能な流れには処理済み水流103、一次回収水流703の一部、
第1の母液流501の一部、および
第2の母液流601の一部が含まれる。
【0199】
流れ801の温度を制御するために、当業分野で知られている任意の装置を用いることができ、そのような装置には、蒸気を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、熱伝達液を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、電気的加熱要素を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、および蒸気を直接注入して、蒸気が凝縮し凝縮物が熱交換区域800へ供給される水と混ざる任意の容器またはタンクがあるがこれに限定されない。多成分繊維流90を繊維切断区域100へ送って多成分切断繊維流101を作る。多成分繊維は当業分野で知られている任意の多成分構造のものでよい。多成分繊維は本開示で先に述べた水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性重合体を含む。
【0200】
当業分野で知られている任意の機器を用いて多成分繊維流90を切断して多成分切断繊維流101を発生させてもよい。一態様では多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約50mm未満である。別の態様では多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、約10mm未満、約5mm未満、または2.5mm未満である。
【0201】
多成分切断繊維流101および加熱処理済み水流801の一部を開繊区域400へ送って開繊スラリー401を発生させる。開繊区域400の一機能は、水分散性重合体を多成分切断繊維から分離して、水非分散性重合体極細繊維の少なくとも一部が多成分切断繊維から分離し開繊極細繊維スラリー401の中に懸濁するようにすることである。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約50〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではなくなる。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約75〜約100重量%、約90〜約100重量%、約95〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。
【0202】
流れ201の開始時の多成分切断繊維のデニールすなわち直径は、開繊区域400内の水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。代表的な多成分繊維の種類は一般に約12〜約20ミクロンの範囲の直径を有する。有用な多成分繊維の開始時直径は大きめで約40ミクロン以上になることがある。流れ201の多成分切断繊維の直径が大きくなると所望の量の水分散性スルホポリエステルを多成分切断繊維から分離するのに時間が掛かる。
【0203】
本発明のこの態様では、
図4に示す繊維スラリー区域200、混合区域300、および開繊区域400が
図2に示すように1つの単位操作に結合され実現されている。この態様では、多成分切断繊維流101が単一の単位操作に直接送られ、開繊区域400内で加熱水流801と混合される。例えば、回分式混合装置では多成分切断繊維の開繊および洗浄が1つの回分式混合装置で達成され、多成分切断繊維流101および加熱水流801が開繊区域400に直接加えられる。開繊区域は少なくとも1つの混合タンクを備えることができる。この態様では、図
3bおよび
3cに示すように連続式攪拌タンク反応器の中に、区域200、300、および400の複数の機能を合わせて実現してもよい。この態様では、区域200、300、および400の好適な機能に求められる機能的に必須の要件である滞留時間、温度、および混合剪断力を達成することができる任意の回分式または連続式混合装置の中に、区域200、300、および400の複数の機能をまとめて実現してもよい。
【0204】
また、開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力も水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の開繊過程に影響する条件には滞留時間、スラリー温度、および剪断力が含まれる。このなかで水温、開繊区域400内の滞留時間、および加えられる剪断の大きさの範囲は、水分散性スルホポリエステルを開始時の多成分繊維から十分な程度まで分離して水非分散性重合体極細繊維を分離させかつ開繊極細繊維スラリー401の連続水性相内に懸濁させる要求によって決まる。
【0205】
開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力は水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の温度の範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃の範囲にすることができる。開繊区域400内の滞留時間の範囲を約5分〜約10秒、約3分〜約20秒、または約2分〜約30秒にすることができる。開繊区域400では水非分散性重合体切断極細繊維の懸濁の維持に十分な混合が維持されるので、切断極細繊維の沈殿が最少になる。本発明の別の態様では、開繊区域400内の水非分散性切断極細繊維の沈殿の単位時間当たりの質量は、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約5%未満、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約3%未満、またはこの区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約1%未満である。
【0206】
開繊区域400内の開繊を、許容範囲の滞留時間、温度、および混合が可能になる任意の装置で達成してもよい。好適な装置の具体例には、
図6bおよび6cに示すような回分式攪拌タンクまたは連続式攪拌タンク反応器、および
図6aに示すような十分な流量でスラリーの沈殿による固形物を最少にする管が含まれるがこれらに限定されない。開繊区域400内の開繊を達成する単位操作の一具体例は押出流れ(plug flow)反応器であり、加熱された多成分繊維スラリー301が、一般に円形の管または導管である区域400押出流れ装置へ送られる。押出流れ装置内の材料の滞留時間は装置内の充填量を装置内の体積流量で割ることによって計算される。装置内の塊の速度は、装置を通過する液体の体積流量で流路の断面積を割ったもので規定される。
【0207】
本発明の別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えることができ、管内を流れる塊の速度範囲は0.1〜約20フィート/秒、0.2〜約10フィート/秒、または約0.5〜約5フィート/秒にすることができる。管または導管内を液体またはスラリーが流れる場合、レイノルズ数Reが方向および時間の両方で不規則な液体渦流の乱れまたは動きを記述するのに便利な無次元数である。管または導管内の液体またはスラリーの流れの場合、レイノルズ数Reは一般に下記で定義される。
【0209】
式中、
・D
Hは管の水力直径L(m)、
・Qは体積流速(m
3/秒)、
・Aは管の断面積(m
2)、
・vは対象物の液体に対する平均速度(SI単位、m/秒)、
・μは液体の動的粘度(Pa秒またはN秒/m
2またはkg/(m秒))、
・νは動的粘度(ν=μ/ρ)(m
2/秒)、
・ρは液体の密度(kg/m
3)
である。
直径Dの管内の流れの場合の実験観察から、完全に発達した流れでは、層流はRe
D<2000で発生し、乱流はRe
D>4000で発生することがわかる。2300と4000の間では層流および乱流が可能で(「遷移」流)、管の表面粗さおよび流れの均一性のような他の因子によって決まる。
【0210】
開繊区域400は開繊過程を容易にする管または導管を備えることができ、開繊区域400の管または導管を通る流れのレイノルズ数の範囲は約2,100〜約6,000、約3,000〜約6,000、または約3,500〜約6,000にすることができる。別の態様では、開繊区域400は開繊過程を容易にする管または導管を備えることができ、管または導管を通る流れのレイノルズ数は少なくとも2,500、少なくとも3,500、または少なくとも4,000である。
【0211】
開繊区域400を、混合装置が内蔵された管または導管の中に実現することができる。この装置は直列型の混合装置を備えることができる。直列型の混合装置は動く部分がない静的混合機にすることができる。別の態様では直列型の混合装置は動く部分を備える。そのような要素は加熱された多成分繊維スラリー301に管内の流れによって達成されるよりも大きな混合エネルギーを与えることを目的とする機械的な装置であるがそれに限定されない。この装置を挿入することができるのは管部の開繊区域として使用される開始部分、管部の終端、または管流路の任意の位置である。
【0212】
水非分散性重合体極細繊維、水、および水分散性スルホポリエステルを含む開繊スラリー流401を一次
固液分離区域500へ送って、極細繊維および第1の母液流501を含む極細繊維製品流503を発生させることができる。一態様では、第1の母液流501は水および水分散性スルホポリエステルを含む。
【0213】
開繊スラリー流401内の固形物の重量%の範囲は約0.1〜約20重量%、約0.3〜約10重量%、約0.3〜約5重量%、または約0.3〜約2.5重量%にすることができる。
【0214】
極細繊維製品流503内の固形物の重量%の範囲は約10〜約65重量%、約15〜約50重量%、約25〜約45重量%、または約30〜約40重量%にすることができる。
【0215】
極細繊維製品流503は、当業分野で知られている任意の方法で開繊極細繊維スラリー401から分離することができる。一態様では水を含む洗浄流103が一次
固液分離区域500へ送られる。洗浄流103を用いて、一次
固液分離区域500の極細繊維製品流および/または一次
固液分離区域500の濾布媒体を洗浄して洗浄液体流502を発生させることができる。洗浄液体流502の最大100重量%までの部分を、一次
固液分離区域500へ入る前に開繊極細繊維スラリー401と混合することができる。洗浄液体流502の最大100重量%までの部分を二次
固液分離区域600へ送ることができる。洗浄液体流502は極細繊維を含むことができる。一態様では、一次
固液分離区域500内の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する極細繊維塊のグラム数の範囲は濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムである。本発明の別の態様では、一次
固液分離区域500内の濾材の開口は約43〜3000ミクロン、約100〜2000ミクロン、または約500〜2000ミクロンの範囲にすることができる。
【0216】
極細繊維製品流を一次
固液分離区域500内の開繊極細繊維スラリーから1つまたは複数の
固液分離装置で分離してもよい。一次
固液分離区域500内の分離は1つまたは複数の
固液分離装置で回分式または連続式に達成してもよい。一次
固液分離区域500の好適な
固液分離装置には穴あき籠式遠心分離機、連続式真空ベルト濾過器、回分式真空ヌッチェ型(nutsch)濾過器、回分式穴あき沈殿タンク、二重針金脱水装置、圧縮区域付き連続式水平ベルト濾過器、くさび型針金濾材付き無振動傾斜網装置、連続式真空ドラム濾過器、脱水搬送機ベルト等のうちの少なくとも1つが含まれるがこれらに限定されない。
【0217】
一態様では、一次
固液分離区域500は二重針金脱水装置を備え、そこでは開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られる。二重針金脱水装置の第1の区域では、重力および2つの移動濾布の間で狭まる全ての間隙によって水が開繊極細繊維スラリー401から排水される。二重針金脱水装置の下流区域では、2つの濾布および2つの濾布の間の極細繊維塊が1回以上圧縮されて極細繊維塊の水分が機械的に減る。一態様では、2つの濾布および含まれる極細繊維塊を少なくとも一組のローラーに通し、このローラーが2つの濾布およびその間の極細繊維塊に圧縮力を加えることによって機械的な脱水が達成される。別の態様では、2つの濾布およびその間の極細繊維塊を少なくとも一組の圧縮ローラーの間に通過させて機械的な脱水が達成される。
【0218】
本発明の別の態様では、機械的な脱水によって各組の圧力ローラーに加えられる力の範囲は濾材幅の直線1インチ当たり約25〜約300lbs、濾材幅の直線1インチ当たり約50〜約200lbs、または濾材幅の直線1インチ当たり約70〜約125lbsにすることができる。二重針金脱水装置の固形物排出区域で2つの濾布が分離し分かれると、極細繊維製品流503は二重針金脱水装置から排出される。排出された極細繊維塊の厚さの範囲は約0.2〜約1.5インチ、約0.3〜約1.25インチ、または約0.4〜約1インチの範囲にすることができる。一態様では、水を含む洗浄流が濾材に連続的にかけられる。別の態様では、水を含む洗浄流は濾材に周期的にかけられる。
【0219】
別の態様では、一次
固液分離区域500は、
図7に説明されている重力排水区域と圧力排水区域とを備えるベルト濾過装置を備える。開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られ、最初に重力排水区域を通過し、次に
図6bに説明した渦巻き型配置のローラーを備える圧力排水区域すなわち圧縮区域を通過する。ベルトがローラーの間を送られると水が固形物から絞り出される。ベルトが過程内の最終対のローラーを通過するときに濾布は分離し、固形物がベルト濾過装置を出る。
【0220】
本発明の別の態様では、水および水分散性スルホポリエステル重合体を含む第1の母液流501に含まれる水の少なくとも一部は回収され再利用される。第1の母液流501を一次
固液分離区域500に再利用することができる。一次
固液分離区域の水非分散性極細繊維の除去効率に応じて、第1の母液流501を開繊区域400に再利用するか、または区域400へ送る前に熱交
換区域800に再利用することができる。第1の母液流501は、濾過および布洗浄により水非分散性重合体極細繊維を含む固形物を少量しか含まない。一態様では、一次
固液分離区域500内の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する水非分散性重合体極細繊維塊のグラム数は濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。流れ501を一次濃縮区域700および熱交換区域800へ送る前に、一次
固液分離区域501内の水非分散性重合体極細繊維固形物を最少にすることが望ましい。一次濃縮区域700および熱交換区域800で水非分散性重合体極細繊維固形物が集積するとそれらの機能に悪影響を及ぼすからである。
【0221】
二次
固液分離区域600は第1の母液流501中の水非分散性重合体極細繊維固形物の少なくとも一部を除去して、水非分散性極細繊維を含む二次湿潤固形物流602および水および水分散性スルホポリエステルを含む第2の母液流601を発生させる働きをする。
【0222】
一態様では、第2の母液流601を一次濃縮区域700および、または熱交換区域800へ送ることができ、一次濃縮区域700へ送られる第2の母液流601の重量%の範囲は熱交換区域800へ送られる流れとの釣り合いで0〜100%にすることができる。第2の母液流601を開繊区域400に再利用するか、または区域400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0223】
一次濃縮区域に送られた第2の母液流601のどの部分も分離過程を通って、一次回収水流703、および水分散性スルホポリエステルが豊富な一次重合体濃縮流702を発生し、一次重合体濃縮流702中の水分散性スルホポリエステルの重量%の範囲は約5〜約85重量%、約10〜約65重量%、または約15〜約45重量%にすることができる。一次母液流703を開繊区域400に再利用するか、または区域400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0224】
一次濃縮区域700では、当業分野で知られている任意の方法によって第2の母液流601から水を除去して一次重合体濃縮流702を作ることができる。一態様では、水の除去には水を回分式または連続式の蒸発装置内で沸騰させて無くすことによる蒸発過程が含まれる。例えば、この用途には少なくとも1枚の薄膜蒸発器を用いることができる。別の態様ではナノ濾過材を備える膜技術を用いて一次重合体濃縮流702を発生させることができる。別の態様では、抽出装置を備えるプロセスを用いて水分散性重合体を第2の母液流601から抽出し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。当然のことながら蒸発、膜、および抽出工程の任意の組合せを用いて水分散性スルホポリエステルを第2の母液流601から分離し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。一次重合体濃縮流702はその後その過程を出てもよい。
【0225】
一態様では、一次重合体濃縮流702を二次濃縮区域900へ送って、重合体の重量%の範囲が約95〜約100%である水分散性スルホポリエステルを含む溶融重合体流903と、水を含む蒸気流902とを発生させることができる。一態様では、903は水分散性スルホポリエステルを含む。二次濃縮区域900に好適な装置には、水分散性重合体の水性分散液を送ることができ、かつ95〜100%の水分散性重合体流903を発生させることができる当業分野で知られている任意の装置が含まれる。本態様は水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液を二次濃縮区域902に供給することを含む。供給流の温度は一般に100℃未満である。
【0226】
一態様では、二次濃縮区域900は、回転式の搬送スクリューを内蔵する被覆管状の外殻構造を特徴とする少なくとも1つの装置を備える。搬送スクリューは熱伝達液または蒸気で加熱されており、搬送要素および高剪断混合要素を両方備える。この被覆または外殻構造は湾曲していて蒸気を逃がすことができるようになっている。この外殻構造を区域に分けて、装置の長さに沿った複数の点で異なる温度に設定できるようにしてもよい。連続稼働中は、一次重合体濃縮流702は水および水分散性スルホポリエステルを含み、連続的に二次濃縮区域900に供給される。装置内では、定常状態では、塊は少なくとも3つ
の独特な異なる形態で存在する。塊はまず装置内に水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液として存在する。スルホポリエステル重合体の水性分散液が装置内を移動すると、被覆および内部のスクリューの熱により水が蒸発する。十分な水が蒸発すると、塊はスルホポリエステル重合体の溶融温度より低い温度の粘性がある栓(プラグ:plug)を含む第2の形態になる。水性分散液はこの粘性プラグを通過することができず、装置の第1の水性分散液区域に閉じ込められる。被覆の熱、内部から加熱されたスクリューの熱、およびこの高粘度プラグ塊の混合剪断力による熱によりこの場所に存在する実質的に全ての水が蒸発し、温度が上昇してスルホポリエステルの溶融温度に到達し、装置内の溶融スルホポリエステル重合体を含む塊は第3かつ最終の物理的形態になる。溶融スルホポリエステル重合体はその後装置から押出成形ダイを通って出て一般には冷却され、当業分野で知られている方法で粒状に切断される。当然のことだが上記の二次濃縮区域900用の装置は回分式で操作してもよい。このとき、上記の塊の3つの物理的形態は装置の全長にわたり発生するがその時間は異なり、水性分散液に始まり、粘性プラグ塊、そして最終的にスルホポリエステル溶融物の順に発生する。
【0227】
一態様では、二次濃縮区域900で発生した蒸気を濃縮し、熱交
換区域800へ送っても、廃棄しても、かつ/あるいは洗浄流103へ送ってもよい。別の態様では、水蒸気を含む濃縮蒸気流902を熱交
換区域800へ送って、流れ801に必要な温度の発生に必要なエネルギーの少なくとも一部を提供することができる。溶融相のスルホポリエステルを含む水分散性重合体を含む溶融重合体流903を冷却し、当業分野で知られている任意の方法で粒状に細断することができる。
【0228】
これらの過程に不純物が入り、回収および再利用される水の中で濃縮することがある。1つ以上の除去流(603および701)を利用して第2の母液601および一次回収水流
703中の不純物の濃縮を許容される程度に制御することができる。一態様では、第2の母液流601の一部を分離し、この過程から除去することができる。一態様では、一次回収水流
703の一部を分離し、この過程から除去することができる。
【0229】
図3aに示す本発明の別の態様では極細繊維製品流を作るプロセスが提供される。このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルおよび水分散性スルホポリエステルと非混和性の少なくとも1種の水非分散性合成重合体を含み25ミリメートル未満の長さを有する多成分短繊維101を繊維スラリー区域200内で40℃未満の温度の処理済み水流103に接触させて多成分短繊維スラリー201を作ること、
(B)多成分短繊維スラリー201と加熱水流801を開繊区域400内で接触させて水分散性スルホポリエステルの一部を除去して、水非分散性重合体極細繊維、水分散性スルホポリエステル、および水を含む開繊極細繊維スラリー401を作ることと、
(C)開繊極細繊維スラリー401を一次固液分離区域500へ送って極細繊維製品流503および水と水分散性スルホポリエステルを含む第1の母液流501を作ることを含む。
【0230】
本発明のこの態様では、
図4に示すように混合区域300および開繊区域400が開繊過程区域1100で1つの単位操作に結合されている。
開繊過程区域1100は繊維スラリー区域200および開繊区域400を備える。
【0231】
本プロセスで使用される処理済み水流103を、水流102を水性処理区域1000へ送ることによって作ることができる。水流は水を含む。本発明の複数の態様では、処理済み水流103中の一価金属陽イオンの濃度を重量で約1000ppm未満、重量で約500ppm未満、重量で約100ppm未満、または重量で約50ppm未満にすることができる。水流102から二価および多価金属陽イオンを除去することは水性処理区域10
00の一機能である。本発明の他の態様では、二価および多価陽イオンの濃度は重量で約50ppm未満、重量で約25ppm未満、重量で約10ppm未満、または重量で約5ppm未満である。流れ103の温度範囲は地下水の温度から約40℃までにするこができる。
【0232】
水性処理区域1000の水流102を当業分野で知られている任意の方法で処理することができる。一態様では、水性処理区域1000は蒸留装置を備え、水蒸気を発生・凝縮させて処理済み水流103を作る。別の態様では、水から一価および二価金属陽イオンを分離することができる逆浸透膜分離装置に水を送って処理済み水流103を作る。別の態様では、水をイオン交換樹脂に送って金属陽イオン濃度が許容できる程に低い処理済み水流103を作る。さらに別の態様では、水を市販の水軟化装置に送って二価および多価の金属陽イオン濃度が許容できる程に低い処理済み水流103を作ることができる。当然であるが、これらの水処理の選択肢の任意の組合せを用いて処理済み水の要求特性を達成してもよい。
【0233】
処理済み水流103を、それを必要とする過程の任意の位置に送ってもよい。一態様では、流れ103の一部を一次
固液分離区域500へ送って、布洗浄および/または一次
固液分離区域500に含まれる固形分の洗浄に役立ててもよい。
【0234】
一態様では、処理済み水流103の少なくとも一部は熱交換区域800へ送られる。別の態様では、処理済み水流103の少なくとも1部は繊維スラリー区域200へ送られる。別の態様では、処理済み水流103の少なくとも1部は熱交換区域800へ送られ、処理済み水流103の少なくとも1部は繊維スラリー区域200へ送られる。熱交換区域800の一機能は特定の制御された温度の加熱水流801を発生させることである。
【0235】
一態様では、熱交換区域800へ供給することができる流れは処理済み水流103および第2の母液流601である。別の態様では、熱交換区域800へ供給することができる流れには処理済み水流103、一次回収水流703、第1の母液流501、および第2の母液流601が含まれる。
【0236】
流れ801の温度の制御に当業分野で知られている任意の装置を用いることができる。これらの装置には蒸気を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、熱伝導液を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、電気的加熱要素を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、および蒸気が直接注入され、凝縮し、凝縮物が熱交換区域800への供給水と混ざる任意の容器またはタンクがあるがこれらに限定されない。多成分繊維流90は繊維切断区域100へ送られて多成分切断繊維流101が生成される。多成分繊維は当業分野で知られている任意の多成分構造のものでよい。多成分繊維は本開示で先に述べた水分散性スルホポリエステルおよび水
非分散性重合体を含む。
【0237】
当業分野で知られている任意の機器を用いて多成分繊維流90を切断して多成分切断繊維流101を発生させてもよい。一態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約50mm未満である。別の態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、約10mm未満、約5mm未満、または2.5mm未満である。
【0238】
多成分切断繊維流101および処理済み水流103の一部を繊維スラリー区域200へ送って水および多成分切断繊維を含む多成分切断繊維スラリー201を発生させる。一態様では、多成分切断繊維スラリー201内の多成分切断繊維の重量%の範囲は約35〜約1重量%、約25〜約1重量%、約15〜約1重量%、または約7〜約1重量%にするこ
とができる。
【0239】
多成分切断繊維スラリー201の温度は約5〜約45℃、約10〜約35℃、または約10〜約25℃の範囲にすることができる。一態様では、繊維スラリー区域200は十分な攪拌を備えるタンクを備えて、連続水性相の多成分切断繊維を懸濁させる。
【0240】
固形物と水の混合および得られる多成分切断繊維の連続相の懸濁の維持に適した当業分野で知られている任意の装置を繊維スラリー区域200で用いてもよい。繊維スラリー区域200は、回分法または連続法で運転される回分式または連続式混合装置を備えることができる。繊維スラリー区域200で使用するのに好適な装置には水力パルプ製造機、連続式攪拌タンク反応器、回分法で運転される攪拌を備えるタンクが含まれるがこれらに限定されない。
【0241】
多成分切断繊維スラリー201を次に開繊区域400へ送ることができる。開繊区域400の一機能は水分散性重合体を多成分切断繊維から分離し、水非分散性重合体極細繊維の少なくとも一部が多成分切断繊維から分かれ開繊極細繊維スラリー401中に懸濁するようにすることである。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約50〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約75〜約100重量%、約90〜約100重量%、約95〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。
【0242】
流れ201内の開始時の多成分切断繊維の直径すなわちデニールは、開繊区域400における水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。多成分繊維の体表的な種類は一般に約12〜約20ミクロンの範囲の直径を有する。有用な多成分繊維は大きめの開始時直径を有し、直径は約40ミクロン以上になることがある。多成分切断繊維の直径が大きくなると、所望の量の水分散性スルホポリエステルを多成分切断繊維から分離するのに時間が掛かる。
【0243】
また、開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力も水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の開繊過程に影響する条件には滞留時間、スラリー温度、および剪断力が含まれる。このなかで水温、開繊区域400内の滞留時間、および加えられる剪断の大きさの範囲は、水分散性スルホポリエステルを開始時の多成分繊維から十分な程度まで分離して水非分散性重合体極細繊維を分離させかつ開繊極細繊維スラリー401の連続水性相内に懸濁させる要求によって決まる。
【0244】
開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力は、水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の温度範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃にすることができる。開繊区域400の滞留時間の範囲は約5分〜約10秒、約3分〜約20秒、または約2分〜約30秒にすることができる。開繊区域400では十分な混合が維持されて、切断極細繊維の沈殿が最少になるように水非分散性重合体切断極細繊維の懸濁が維持される。本発明の別の態様では、開繊区域400内に沈殿する水非分散性切断極細繊維の単位時間当たりの質量は、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約5%未満、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約3%未満、またはこの区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約1%未満である。
【0245】
開繊区域400の開繊は、許容範囲の滞留時間、温度、および混合が可能な任意の装置で達成してもよい。好適な装置の具体例には
図6bおよび6cに示すような回分式攪拌タンク、連続式攪拌タンク反応器、および
図6aに示すような十分な流量でスラリーの沈殿による固形物を最少にする管が含まれるがこれらに限定されない。開繊区域400内の開繊を達成する単位操作の一具体例は押出流れ反応器であり、そこでは加熱された多成分繊維スラリー301が一般に円形の管または導管である区域400押出流れ装置へ送られる。材料の押出流れ装置内の滞留時間は装置内の充填量を装置内の容積流量で割ることによって計算される。装置内の塊の速度は、装置を通過する液体の容積流量で流路の断面積を割ったもので規定される。
【0246】
本発明の別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えることができ、管内を流れる塊の速度範囲は0.1〜約20フィート/秒、0.2〜約10フィート/秒、または約0.5〜約5フィート/秒にすることができる。管または導管内の液体またはスラリーの流れの場合、レイノルズ数Reが方向および時間共に不規則な液体渦流の乱れまたは動きの記述に有用な無次元数である。管または導管内の液体またはスラリーの流れの場合、レイノルズ数Reは一般に下記で定義される。
【0248】
式中、
・D
Hは管の水力直径L(m)、
・Qは容積流速(m
3/秒)、
・Aは管の断面積(m
2)、
・vは液に対する対象物の平均速度(SI単位、m/秒)、
・μは液体の動的粘度(Pa秒またはN秒/m
2またはkg/(m秒))、
・νは動的粘度(V=μ/ρ)(m
2/秒)、
・ρは液体の密度(kg/m
3)
である。
【0249】
直径Dの管内の流れの場合の実験観察から、Re
D<2000で完全に発達した流れおよび層流が発生し、Re
D>4000で乱流が発生することがわかる。2300〜4000の間では、層流および乱流の可能性があり(「遷移」流)、管の表面粗さおよび流れの均一性のような他の因子によって決まる。
【0250】
開繊区域400は開繊過程を容易にする管または導管を備えることができ、開繊区域400の管または導管を通過する流れのレイノルズ数の範囲は約2,100〜約6,000、約3,000〜約6,000、または約3,500〜約6,000にすることができる。別の態様では、開繊区域400は開繊過程を容易にする管または導管を備えることができ、管または導管を通過する流れのレイノルズ数は少なくとも2,500、少なくとも3,500、または少なくとも4,000である。
【0251】
開繊区域400を、混合装置が内蔵された管または導管の中に実現することができる。この装置は直列型の混合装置を備えることができる。直列型の混合装置は動く部分がない静止型の混合器にすることができる。別の態様では、直列型の混合装置は動く部分を備える。そのような要素は加熱された多成分繊維スラリー301に管内の流れによって達成されるよりも大きな混合エネルギーを与えることを目的とする機械的な装置であるが、それ
に限定されない。装置は、開繊区域として使用される管部の開始部分、管部の終端、または管流路の任意の位置に挿入することができる。
【0252】
水非分散性重合体極細繊維、水、および水分散性スルホポリエステルを含む開繊スラリー流401を一次
固液分離区域500へ送って、極細繊維および第1の母液流501を含む極細繊維製品流503を発生させることができる。一態様では、第1の母液流501は水および水分散性スルホポリエステルを含む。
【0253】
開繊スラリー流401内の固形物の重量%の範囲は約0.1〜約20重量%、約0.3〜約10重量%、約0.3〜約5重量%、または約0.3〜約2.5重量%にすることができる。
【0254】
極細繊維製品流503内の固形物の重量%の範囲は約10〜約65重量%、約15〜約50重量%、約25〜約45重量%、または約30〜約40重量%にすることができる。
【0255】
極細繊維製品流503は、当業分野で知られている任意の方法で開繊極細繊維スラリー401から分離することができる。一態様では、水を含む洗浄流103が一次
固液分離区域500へ送られる。洗浄流103を用いて一次
固液分離区域500の極細繊維製品流および/または一次
固液分離区域500の濾布媒体を洗浄して、洗浄液体流502を発生させることができる。洗浄液体流502の最大100重量%の部分を一次
固液分離区域500に入る前に開繊極細繊維スラリー401と混合することができる。洗浄液体流502の最大100重量%の部分を第2の
固液分離区域600へ送ることができる。洗浄液体流502は極細繊維を含むことができる。一態様では、一次
固液分離区域500内の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する極細繊維塊のグラム数は濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。本発明の別の態様では、一次
固液分離区域500内の濾材の開口の範囲は約43〜3000ミクロン、約100〜2000ミクロン、または約500〜約2000ミクロンにすることができる。
【0256】
極細繊維製品流を一次
固液分離区域500内の開繊極細繊維スラリーから1つまたは複数の
固液分離装置で分離してもよい。一次
固液分離区域500内の分離は1つまたは複数の
固液分離装置で回分式または連続式に達成してもよい。一次
固液分離区域500に好適な
固液分離装置には穴あき籠式遠心分離機、連続式真空ベルト濾過器、回分式真空ヌッチェ型濾過器、回分式穴あき沈殿タンク、二重針金脱水装置、圧縮区域付き連続式水平ベルト濾過器、くさび型針金濾材付き無振動傾斜網装置、連続式真空ドラム濾過器、脱水搬送機ベルトなどのうちの少なくとも1つが含まれるがこれらに限定されない。
【0257】
一態様では、一次
固液分離区域500は二重針金脱水装置を備え、そこでは開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙に送られる。二重針金脱水装置の第1の区域では、重力および2つの移動濾布の間で狭まる全ての間隙によって水が開繊極細繊維スラリー401から排水される。二重針金脱水装置の下流で2つの濾布および2つの濾布の間の極細繊維塊が1回以上圧縮されて極細繊維塊の水分が機械的に減る。一態様では、2つの濾布および含まれる極細繊維塊を少なくとも一組のローラーに通し、この一組のローラーが圧縮力を2つの濾布およびその間の極細繊維塊に加えることによって機械的な脱水が達成される。別の態様では、2つの濾布およびその間の極細繊維塊を少なくとも一組の圧縮ローラーの間に通過させて機械的な脱水が達成される。
【0258】
本発明の別の態様では、機械的な脱水によって各圧力ローラーに加えられる力の範囲は濾材幅の直線1インチ当たり約25〜約300lbs、濾材幅の直線1インチ当たり約50〜約200lbs、または濾材幅の直線1インチ当たり約70〜約125lbsにする
ことができる。2つの濾布が装置の固形物排出区域で分離し、別れると、極細繊維製品流503は二重針金脱水装置から排出される。排出された極細繊維塊の厚さは約0.2〜約1.5インチ、約0.3〜約1.25インチ、または約0.4〜約1インチの範囲にすることができる。一態様では、水を含む洗浄流が濾材に連続的にかけられる。別の態様では、水を含む洗浄流は濾材に周期的にかけられる。
【0259】
別の態様では、一次
固液分離区域500は
図7に説明されている重力排水区域および圧力排水区域を備えるベルト濾過装置を備える。開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られ、最初に重力排水区域を通過し、次に
図6bに説明した渦巻き型配置のローラーを備える圧力排水区域すなわち圧縮区域を通過する。ベルトがローラーの間を送られると、水が固形物から絞り出される。ベルトが過程内の最終対のローラーを通過するときに濾布は分離し、固形物はベルト濾過装置から出る。
【0260】
本発明の別の態様では、水および水分散性スルホポリエステル重合体を含む第1の母液流501に含まれる水の少なくとも一部は回収され再利用される。第1の母液流501を一次
固液分離区域500に再利用することができる。一次
固液分離区域の水非分散性極細繊維の除去の効率に応じて、第1の母液流501を繊維スラリー区域200に再利用するか、開繊区域400に再利用するか、または区域200および/または400に送る前に熱交
換区域800に再利用することができる。第1の母液流501は、濾過および布洗浄により水非分散性重合体極細繊維を含む固形物を少量しか含まない。一態様では、一次
固液分離区域の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する水非分散性重合体極細繊維塊のグラム数は、濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。流れ501を一次濃縮区域700および熱交換区域800へ送る前に、第1の母液流501内の水非分散性重合体極細繊維固形物を最少にすることが望ましい。一次濃縮区域700および熱交換区域800に水非分散性重合体極細繊維固形物が集積するとこれらの区域の機能に悪影響を及ぼす。
【0261】
二次
固液分離区域600は、第1の母液流501中に存在する水非分散性重合体極細繊維固形物の少なくとも一部を除去して、水非分散性極細繊維を含む二次湿潤固形物流602および水と水分散性スルホポリエステルを含む第2の母液流601を発生させる働きをする。
【0262】
一態様では、第2の母液流601を一次濃縮区域700および、または熱交換区域800へ送ることができ、一次濃縮区域700へ送られる第2の母液流601の重量%の範囲は熱交換区域800へ送られる流れとの釣り合いで0〜100%にすることができる。第2の母液流601を繊維スラリー区域200、開繊区域400に再利用するか、または区域200および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0263】
一次濃縮区域に送られた第2の母液流601のどの部分も分離過程を通って、一次回収水流703、および水分散性スルホポリエステルが豊富な一次重合体濃縮流702を発生し、一次重合体濃縮流702中の水分散性スルホポリエステルの重量%の範囲は約5〜約85重量%、約10〜約65重量%、または約15〜約45重量%にすることができる。一次回収水流703を繊維スラリー区域200、開繊区域400に再利用するか、または区域200および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、
約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0264】
一次濃縮区域700において当業分野で知られている任意の方法によって第2の母液流601から水を除去して、一次重合体濃縮流702を作ることができる。一態様では、水の除去には蒸発過程があり、水を回分式または連続式の蒸発装置内で沸騰させて蒸発させる。例えば、少なくとも1枚の薄膜蒸発器をこの用途に用いることができる。
【0265】
別の態様では、ナノ濾過材を備える膜技術を用いて一次重合体濃縮流702を発生させることができる。別の態様では、抽出装置を備えるプロセスを用いて水分散性重合体を第2の母液流601から抽出し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。当然のことながら、蒸発、膜、および抽出工程の任意の組合せを用いて水分散性スルホポリエステルを第2の母液流601から分離し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。一次重合体濃縮流702はその後本過程から出てもよい。
【0266】
一態様では、一次重合体濃縮流702を二次濃縮区域900へ送って、重合体の重量%範囲が約95〜約100%である水分散性スルホポリエステルを含む溶融重合体流903、および水を含む蒸気流902を発生させることができる。一態様では、903は水分散性スルホポリエステルを含む。二次濃縮区域900に好適な装置には、水分散性重合体の水性分散液を送ることができ、かつ95〜100%の水分散性重合体流903を発生させることができる当業分野で知られている任意の装置が含まれる。本態様は水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液を二次濃縮区域
900に供給することを含む。供給流の温度は一般に100℃未満である。
【0267】
一態様では、二次濃縮区域900は、回転式の搬送スクリューを内蔵する被覆管状の外殻構造を特徴とする少なくとも1つの装置を備える。ここでは搬送スクリューは熱伝達液または蒸気で加熱され搬送要素および高剪断混合要素を両方備える。この被覆または外殻構造は湾曲していて蒸気を逃がすことができるようになっている。この外殻構造を区域に分けて、装置の長さに沿った複数の点で異なる温度に設定できるようにしてもよい。連続稼働中は、一次重合体濃縮流702は水および水分散性スルホポリエステルを含み、連続的に二次濃縮区域900に供給される。装置内では、定常状態では、塊は少なくとも3つの独特な異なる形態で存在する。塊はまず装置内に水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液として存在する。スルホポリエステル重合体の水性分散液が装置内を移動すると、被覆の熱および内部のスクリューにより水が蒸発する。水が十分に蒸発すると、塊は粘度があり温度がスルホポリエステル重合体の溶融温度未満のプラグを含む第2の形態になる。水性分散液はこの粘度プラグを通過することができず、装置の第1の水性分散液区域に閉じ込められる。被覆の熱、内部から加熱されたスクリューの熱、およびこの高粘度プラグ塊の混合剪断力による熱により、この場所に存在する実質的に全ての水が蒸発し、温度が上昇してスルホポリエステルの溶融温度に到達し、装置内の溶融スルホポリエステル重合体を含む塊は第3かつ最終の物理的形態になる。溶融スルホポリエステル重合体はその後押し出しダイから装置を出て一般には冷却され、当業分野で知られている方法で粒状に切断される。当然のことだが、上記の二次濃縮区域900用の装置は回分式で操作してもよい。このとき、上記の塊の3つの物理的形態は装置の全長にわたり発生するがその時間は異なり、水性分散液に始まり、粘性プラグ塊、そして最終的にスルホポリエステル溶融物の順に発生する。
【0268】
一態様では、二次濃縮区域900で発生した蒸気を濃縮し、熱交
換区域800へ送っても、廃棄しても、かつ/あるいは洗浄流103へ送ってもよい。別の態様では、水蒸気を含む濃縮蒸気流902を熱交
換区域800へ送って、流れ801に必要な温度を発生させるのに必要なエネルギーの少なくとも一部を提供することができる。溶融相のスルホポリエステルを含む水分散性重合体を含む溶融重合体流903を冷却し、当業分野で知られている任意の方法で粒状に細断することができる。
【0269】
これらの過程に不純物が入り、回収・再利用される水の中で濃縮することがある。1つ以上の除去流(603および701)を利用して、第2の母液601および一次回収水流
703中の不純物の濃縮を許容される程度に制御することができる。一態様では、第2の母液流601の一部を分離し、この過程から除去することができる。一態様では、一次回収水流
703の一部を分離しこの過程から除去することができる。
【0270】
図3bに示す本発明の別の態様では極細繊維製品流を作るプロセスが提供される。このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルおよび水分散性スルホポリエステルと非混和性の少なくとも1種の水非分散性重合体を含み25ミリメートル未満の長さを有する多成分短繊維101を混合区域内で40℃以上の温度の加熱水流801に接触させて多成分短繊維スラリー301を作ることと、
(B)多成分短繊維スラリー301と、必要であれば加熱水流801を開繊区域400に送って水分散性スルホポリエステルの一部を除去して、水非分散性重合体極細繊維、水分散性スルホポリエステル、および水を含む開繊極細繊維スラリー401を作ることと、
(C)開繊極細繊維スラリー401を一次固液分離区域500へ送って極細繊維製品流503および水と水分散性スルホポリエステルを含む第1の母液流501を作ることを含む。
【0271】
図3bに示す本発明のこの態様では繊維スラリー区域200および繊維混合区域300が開繊過程区域1100で1つの単位操作に結合されている。
開繊過程区域1100は混合区域200および開繊区域400を備える。
【0272】
本プロセスで使用される処理済み水流103を、水流102を水処理区域1000へ送ることによって作ることができる。水流は水を含む。本発明の別の態様では、処理済み水流103中の一価金属陽イオンの濃度を重量で約1000ppm未満、重量で約500ppm未満、重量で約100ppm未満、または重量で約50ppm未満にすることができる。水流102から二価および多価金属陽イオンを除去することは水流区域1000の一機能である。本発明の他の態様では、二価および多価陽イオンの濃度は重量で約50ppm未満、重量で約25ppm未満、重量で約10ppm未満、または重量で約5ppm未満である。流れ103の温度範囲は地下水の温度から約40℃までにするこができる。
【0273】
水性処理区域1000の水流102を当業分野で知られている任意の方法で処理することができる。一態様では、水性処理区域1000は蒸留装置を備え、水蒸気を発生させ凝縮させて処理済み水流103を作る。別の態様では、水から一価および二価金属陽イオンを分離することができる逆浸透膜分離装置に水を送って処理済み水流103を作る。別の態様では、水をイオン交換樹脂に送って金属陽イオン濃度が許容できる程度に低い処理済み水流103を発生させる。さらに別の態様では、水を市販の水軟化装置に送って二価および多価の金属陽イオン濃度が許容できる程に低い処理済み水流103を作ることができる。当然であるが、これらの水処理の選択肢の任意の組合せを用いて処理済み水の要求特性を達成してもよい。
【0274】
処理済み水流103を必要な過程の任意の位置に送ってもよい。一態様では、流れ103の一部を一次
固液分離区域500へ送って、布洗浄および/または一次
固液分離区域500に含まれる固形物の洗浄に役立ててもよい。
【0275】
一態様では、処理済み水流103の少なくとも一部は熱交換区域800へ送られる。別の態様では、処理済み水流103の少なくとも一部は混合区域300へ送られる。別の態
様では、処理済み水流103の少なくとも1部は熱交換区域800へ送られ、処理済み水流103の少なくとも1部は混合区域300へ送られる。熱交換区域800の一機能は特定の制御された温度の加熱水流801を発生させることである。
【0276】
一態様では、熱交換区域800へ供給可能な流れは処理済み水流103および第2の母液流601である。別の態様では、熱交換区域800へ供給可能な流れには処理済み水流103、一次回収水流703、第1の母液流501、および第2の母液流601が含まれる。
【0277】
流れ801の温度を制御するために、当業分野で知られている任意の装置を用いることができ、そのような装置には蒸気を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、熱伝導液を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、電気的加熱要素を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、および蒸気を直接注入して、蒸気が凝縮し凝縮物が熱交換区域800へ供給される水と混ざる任意の容器またはタンクがあるがこれらに限定されない。多成分繊維流90を繊維切断区域100へ送って多成分切断繊維流101を作る。多成分繊維は当業分野で知られている任意の多成分構造のものでよい。多成分繊維は本開示で先に述べた水分散性スルホポリエステルおよび水
非分散性重合体を含む。
【0278】
当業分野で知られている任意の機器を用いて多成分繊維流90を切断して多成分切断繊維流101を発生させてもよい。一態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約50mm未満である。別の態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、約10mm未満、約5mm未満、または2.5mm未満である。
【0279】
多成分切断繊維流101および加熱水流801の一部を混合区域300へ送って、水および多成分切断繊維を含む加熱多成分繊維スラリー301を発生させる。
【0280】
加熱多成分繊維スラリー301の温度は、開繊区域400における多成分切断繊維の水分散性スルホポリエステル部分を多成分切断繊維の水非分散性重合体部分から分離するのに影響する。本発明の他の態様では、加熱多成分繊維スラリー301の温度範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃の範囲にすることができる。
【0281】
加熱多成分繊維スラリー301内の多成分切断繊維の重量%を制御することができる。別の態様では、加熱多成分繊維スラリー301内の多成分切断繊維の重量%の範囲は約10〜約0.1重量%、約5〜約0.2重量%、約3〜約0.3重量%、または約2〜約0.4重量%にすることができる。
【0282】
加熱水流801を多成分切断繊維101と混合することができる当業分野で知られている任意の装置を、混合区域300で用いてもよい。好適な装置には連続式および回分式の両方の混合装置が含まれる。一態様では、混合区域300に好適な混合装置にはタンクおよび攪拌器を備える。別の態様では、好適な混合装置は管または導管を備える。
【0283】
他の態様では、混合区域300に好適な混合装置は管または導管を備え、その直径は導管内の速度が多成分切断繊維スラリー201と加熱水流801の混合に十分な直径になっており、1分間当たり導管に入る多成分切断塊の約2重量%未満、約1重量%未満、または約0.5重量%未満が導管内に沈殿し堆積する。
【0284】
その後、加熱多成分繊維スラリー301を開繊区域400へ送ることができる。開繊区域400の一機能は水分散性重合体を多成分切断繊維から分離し、水非分散性重合体極細
繊維の少なくとも一部が多成分切断繊維から分れ開繊極細繊維スラリー401中に懸濁するようにすることである。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約50〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約75〜約100重量%、約90〜約100重量%、または約95〜約100重量%が開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。
【0285】
流れ201内の開始時の多成分繊維のデニールすなわち直径は、開繊区域400において水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。代表的な多成分繊維の種類は一般に、約12〜約20ミクロンの範囲の直径を有する。有用な多成分繊維は大きめの開始時直径を有し、直径は約40ミクロン以上になることがある。流れ201内の多成分切断繊維の直径が大きくなると、所望の量の水分散性スルホポリエステルを多成分切断繊維から分離するのに時間が掛かる。
【0286】
また、開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力も水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の開繊過程に影響する条件には滞留時間、スラリー温度、および剪断力が含まれる。このなかで水温、開繊区域400内の滞留時間、および加えられる剪断の大きさの範囲は、水分散性スルホポリエステルを開始時の多成分繊維から十分な程度まで分離して水非分散性重合体極細繊維を分離させかつ開繊極細繊維スラリー401の連続水性相内に懸濁させる要求によって決まる。
【0287】
開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力は、水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の温度の範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃の範囲にすることができる。開繊区域400の滞留時間の範囲は約5分〜約10秒、約3分〜約20秒、または約2分〜約30秒にすることができる。開繊区域400では十分な混合が維持されて、切断極細繊維の沈殿が最少になるように水非分散性重合体切断極細繊維の懸濁が維持される。本発明の別の態様では、開繊区域400内に沈殿する水非分散性切断極細繊維の単位時間当たりの質量は、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約5%未満、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約3%未満、またはこの区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約1%未満である。
【0288】
開繊区域400内の開繊は、許容範囲の滞留時間、温度、および混合が可能などのような装置で達成されてもよい。好適な装置の具体例には
図6bおよび6cに示すような回分式攪拌タンク、連続式攪拌タンク反応器、および
図6aに示すようなスラリーの沈殿による固形物を十分な流量で最少にする管が含まれるがこれらに限定されない。開繊区域400内の開繊を達成する単位操作の一具体例は押出流れ反応器であり、そこでは加熱された多成分繊維スラリー301が一般に円形の管または導管である区域400押出流れ装置へ送られる。押出流れ装置内の材料の滞留時間は、装置内の充填量を装置内の容積流量で割ることによって計算される。装置内の塊の速度は、装置を通過する液体の容積流量で流路の断面積を割ったもので規定される。
【0289】
本発明の別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えることができ、管内を流れる塊の速度範囲は0.1〜約20フィート/秒、0.2〜約10フィート/秒、または約0.5〜約5フィート/秒にすることができる。管または導管内の液体またはスラリーの流れの場合、レイノルズ数Reが方向および時間の両方で不規則な液体渦流の乱れまたは動きを記述するのに便利な無次元数である。管または導管内の液体またはスラリーの流
れの場合、レイノルズ数Reは一般に下記で定義される。
【0291】
式中、
・D
Hは管の水力直径L(m)、
・Qは体積流速(m
3/秒)、
・Aは管の断面積(m
2)、
・vは液体に対する対象物の平均速度(SI単位、m/秒)、
・μは液体の動的粘度(Pa秒またはN秒/m
2またはkg/(m秒))、
・νは動的粘度(ν=μ/ρ)(m
2/秒)、
・ρは液体の密度(kg/m
3)
である。
【0292】
直径Dの管内の流れの場合、実験観察から、Re
D<2000で完全に発達した流れ、層流が発生し、Re
D>4000で乱流が発生することがわかる。2300〜4000の間では、層流および乱流の可能性があり(「遷移」流)、管の表面粗さおよび流れの均一性のような他の因子によって決まる。
【0293】
開繊区域400は管または導管を備えて開繊過程を容易にすることができ、開繊区域400の管または導管を通過する流れのレイノルズ数の範囲は約2,100〜約6,000、約3,000〜約6,000、または約3,500〜約6,000にすることができる。別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えて開繊過程を容易にすることができ、管または導管を通過する流れのレイノルズ数は少なくとも2,500、少なくとも3,500、または少なくとも4,000である。
【0294】
開繊区域400を、混合装置が内蔵された管または導管の中に実現することができる。この装置は直列型の混合装置を備えることができる。この直列型の混合装置は動く部分がない静的混合器にすることができる。別の態様では、直列型の混合装置は動く部分を備える。そのような要素は、加熱された多成分繊維スラリー301に管内の流れによって達成されるよりも大きな混合エネルギーを与えることを目的とする機械的な装置であるがそれに限定されない。この装置を挿入することができるのは管部の開繊区域として使用される開始部分、管部の終端、または管流路の任意の位置である。
【0295】
水非分散性重合体極細繊維、水、および水分散性スルホポリエステルを含む開繊スラリー流401を一次
固液分離区域500へ送って、極細繊維および第1の母液流501を含む極細繊維製品流503を発生させることができる。一態様では、第1の母液流501は水および水分散性スルホポリエステルを含む。
【0296】
開繊スラリー流401内の固形物の重量%の範囲は約0.1〜約20重量%、約0.3〜約10重量%、約0.3〜約5重量%、または約0.3〜約2.5重量%にすることができる。
【0297】
極細繊維製品流503内の固形物の重量%の範囲は約10〜約65重量%、約15〜約50重量%、約25〜約45重量%、または約30〜約40重量%にすることができる。
【0298】
極細繊維製品流503は、当業分野で知られている任意の方法で開繊極細繊維スラリー401から分離することができる。一態様では、水を含む洗浄流103が一次
固液分離区域500へ送られる。洗浄流103を用いて一次
固液分離区域500の極細繊維製品流および/または一次
固液分離区域500の濾布媒体を洗浄して洗浄液体流502を発生させることができる。洗浄液体流502の最大100重量%の部分を一次
固液分離区域500に入る前に開繊極細繊維スラリー401と混合することができる。洗浄液体流502の最大100重量%の部分を第2の
固液分離区域600へ送ることができる。洗浄液体流502は極細繊維を含むことができる。一態様では、一次
固液分離区域500内の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する極細繊維塊のグラム数は、濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。本発明の別の態様では、一次
固液分離区域500内の濾材の開口の範囲は約43〜3000ミクロン、約100〜2000ミクロン、または約500〜約2000ミクロンにすることができる。
【0299】
極細繊維製品流を一次
固液分離区域500内の開繊極細繊維スラリーから1つまたは複数の
固液分離装置で分離してもよい。一次
固液分離区域500内の分離を1つまたは複数の
固液分離装置で回分式または連続式に達成してもよい。一次
固液分離区域500に好適な
固液分離装置には穴あき籠式遠心分離機、連続式真空ベルト濾過器、回分式真空ヌッチェ型濾過器、回分式穴あき沈殿タンク、二重針金脱水装置、圧縮区域付き連続式水平ベルト濾過器、くさび型針金濾材付き無振動傾斜網装置、連続式真空ドラム濾過器、脱水搬送機ベルトなどのうちの少なくとも1つが含まれるがこれらに限定されない。
【0300】
一態様では、一次
固液分離区域500は二重針金脱水装置を備え、そこでは開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙に送られる。二重針金脱水装置の第1の区域では、重力および2つの移動濾布の間で狭まる全ての間隙によって水が開繊極細繊維スラリー401から排水される。二重針金脱水装置の下流では、2つの濾布および2つの濾布の間の極細繊維塊が1回以上圧縮されて極細繊維塊の水分が機械的に減る。一態様では、2つの濾布および含まれる極細繊維塊を少なくとも一組のローラーに通し、この一組のローラーが圧縮力を2つの濾布およびその間の極細繊維塊に加えることによって機械的な脱水が達成される。別の態様では、2つの濾布およびその間の極細繊維塊を少なくとも1つの圧縮ローラーと固定面の間に通過させて機械的な脱水が達成される。
【0301】
本発明の別の態様では、機械的な脱水によって各圧力ローラーに加えられる力の範囲は濾材幅の直線1インチ当たり約25〜約300lbs、濾材幅の直線1インチ当たり約50〜約200lbs、または濾材幅の直線1インチ当たり約70〜約125lbsにすることができる。2つの濾布が装置の固形物排出区域で分離し分かれると、極細繊維製品流503は二重針金脱水装置から排出される。排出された極細繊維塊の厚さは約0.2〜約1.5インチ、約0.3〜約1.25インチ、または約0.4〜約1インチの範囲にすることができる。一態様では、水を含む洗浄流が濾材に連続的にかけられる。別の態様では、水を含む洗浄流は濾材に周期的にかけられる。
【0302】
別の態様では、一次
固液分離区域500は
図7に説明されている重力排水区域および圧力排水区域を備えるベルト濾過装置を備える。開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られ、最初に重力排水区域を通過し、次に
図6bに説明した渦巻き型配置のローラーを備える圧力排水区域すなわち圧縮区域を通過する。ベルトがローラーの間を送られると水が固形物から絞り出される。ベルトが過程内の最終対のローラーを通過するときに濾布は分離し、固形物がベルト濾過装置から出る。
【0303】
本発明の別の態様では、水および水分散性スルホポリエステル重合体を含む第1の母液流501に含まれる水の少なくとも一部は回収され再利用される。第1の母液流501を一次
固液分離区域500に再利用することができる。一次
固液分離区域の水非分散性極細繊維の除去の効率に応じて、第1の母液流501を混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300、および/または400に送る前に熱交
換区域800に再利用することができる。第1の母液流501は、濾過および布洗浄により水非分散性重合体極細繊維を含む固形物を少量しか含まない。一態様では、一次
固液分離区域の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する水非分散性重合体極細繊維塊のグラム数は、濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。流れ501を一次濃縮区域700および熱交換区域800へ送る前に、第1の母液流501内の水非分散性重合体極細繊維固形物を最少にすることが望ましい。一次濃縮区域700および熱交換区域800に水非分散性重合体極細繊維固形物が集積するとこれらの区域の機能に悪影響を及ぼす。
【0304】
二次
固液分離区域600は、第1の母液流501に存在する水非分散性重合体極細繊維固形物の少なくとも一部を除去して、水非分散性極細繊維を含む二次湿潤固形物流602および水および水分散性スルホポリエステルを含む二次母液流601を発生させる働きをする。
【0305】
一態様では、第2の母液流601を一次濃縮区域700および、または熱交換区域800へ送ることができ、そこでは一次濃縮区域700へ送られる第2の母液流601の重量%の範囲は熱交換区域800へ送られる流れとの釣り合いで0〜100%にすることができる。第2の母液流601を繊維スラリー区域200、混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300、および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0306】
一次濃縮区域に送られた第2の母液流601のどの部分も分離過程を通って、一次回収水流703、および水分散性スルホポリエステルが豊富な一次重合体濃縮流702を発生し、一次重合体濃縮流702中の水分散性スルホポリエステルの重量%の範囲は約5〜約85重量%、約10〜約65重量%、または約15〜約45重量%にすることができる。一次回収母液流703を混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0307】
一次濃縮区域700において当業分野で知られている任意の方法によって第2の母液流601から水を除去して、一次重合体濃縮流702を作ることができる。一態様では、水の除去には蒸発過程があり、水を回分式または連続式の蒸発装置内で沸騰させて蒸発させる。例えば少なくとも1枚の薄膜蒸発器をこの用途に用いることができる。別の態様ではナノ濾過材を備える膜技術を用いて一次重合体濃縮流702を発生させることができる。別の態様では、抽出装置を備えるプロセスを用いて水分散性重合体を第2の母液流601から抽出し一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。当然のことながら蒸発、膜、および抽出工程の任意の組合せを用いて水分散性スルホポリエステルを第2の母液流601から分離し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。一次重合体濃縮流702はその後本過程から出てもよい。
【0308】
一態様では、一次重合体濃縮流702を二次濃縮区域900へ送って、重合体の重量%の範囲が約95〜約100%である水分散性スルホポリエステルを含む溶融重合体流903、および水を含む蒸気流902を発生させることができる。一態様では、903は水分
散性スルホポリエステルを含む。二次濃縮区域900に好適な装置には当業分野で知られている任意の装置があり、その装置は水分散性重合体の水性分散液を送ることができ、95〜100%の水分散性重合体流903を発生させることができるものである。本態様は、水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液を二次濃縮区域902に供給することを含む。供給流の温度は一般に100℃未満である。
【0309】
一態様では、二次濃縮区域900は、回転式の搬送スクリューを内蔵する被覆管状の外殻構造を特徴とする少なくとも1つの装置を備える。ここでは搬送スクリューは熱伝達液または蒸気で加熱され、搬送要素および高剪断混合要素を両方備える。この被覆外殻構造を区域に分けて、装置の長さに沿った複数の点で異なる温度に設定できるようにしてもよい。連続稼働中は、一次重合体濃縮流702は水および水分散性スルホポリエステルを含み、連続的に二次濃縮区域900に供給される。装置内では、定常状態では、塊は少なくとも3つの独特な異なる形態で存在する。塊はまず装置内に水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液として存在する。スルホポリエステル重合体の水性分散液が装置内を移動すると、被覆および内部のスクリューの熱により水が蒸発する。十分な水が蒸発すると、塊はスルホポリエステル重合体の溶融温度より低い温度の粘性プラグを含む第2の形態になる。水性分散液はこの粘性プラグを通過することができず、装置の第1の水性分散液区域に閉じ込められる。被覆の熱、内部から加熱されたスクリューの熱、およびこの高粘度プラグ塊の混合剪断力による熱により、この場所に存在する実質的に全ての水が蒸発し、温度が上昇してスルホポリエステルの溶融温度に到達し、装置内の溶融スルホポリエステル重合体を含む塊は第3かつ最終の物理的形態になる。溶融スルホポリエステル重合体はその後装置から押出成形ダイを通って出て一般には冷却され、当業分野で知られている方法で粒状に切断される。当然のことだが、上記の二次濃縮区域900用の装置は回分式で操作してもよい。このとき、上記の塊の3つの物理的形態は装置の全長にわたり発生するがその時間は異なり、水性分散液に始まり、粘性プラグ塊、そして最終的にスルホポリエステル溶融物の順に発生する。
【0310】
一態様では、二次濃縮区域900で発生した蒸気を濃縮し、熱交
換区域800へ送っても、廃棄しても、かつ/あるいは洗浄流103へ送ってもよい。別の態様では、水蒸気を含む濃縮蒸気流902を熱交
換区域800へ送って、流れ801に必要な温度の発生に必要なエネルギーの少なくとも一部を提供することができる。溶融相のスルホポリエステルを含む水分散性重合体を含む溶融重合体流903を冷却し、当業分野で知られている任意の方法で粒状に細断することができる。
【0311】
この過程に不純物が入り、回収および再利用される水の中で濃縮することがある。1つ以上の除去流(603および701)を利用して第2の母液601および一次回収水流
703中の不純物の濃縮を許容される程度に制御することができる。一態様では、第2の母液流601の一部を分離し、この過程から除去することができる。一態様では、一次回収水流
703の一部を分離し、この過程から除去することができる。
【0312】
図4に示す本発明の別の態様では、極細繊維製品流を作るプロセスが提供される。このプロセスは、
(A)少なくとも1種の水分散スルホポリエステルおよび水分散性スルホポリエステルと非混和性の少なくとも1種の水非分散性合成重合体を含み25ミリメートル未満の長さを有する多成分切断繊維101を繊維スラリー区域200内で40℃未満の温度の処理済み水流103に接触させて多成分短繊維スラリー201を作ることと、
(B)多成分短繊維スラリー201と加熱水流801を
混合区域300内で接触させて加熱多成分繊維スラリー301を作ることと、
(C)加熱多成分繊維スラリー301を開繊区域400へ送って水分散性スルホポリエステルの一部を除去して開繊極細繊維スラリー401を作ることと、
(D)開繊極細繊維スラリー401を一次固液分離区域500へ送って極細繊維製品流503および水と水分散性スルホポリエステルを含む第1の母液流501を作ることを含む。
【0313】
図4に示すように本発明のこの態様では、開繊過程1100は繊維スラリー区域200、混合区域300、および開繊区域400を備える。
【0314】
本プロセスで使用される処理済み水流103を、水流102を水性処理区域1000へ送ることによって作ることができる。水流は水を含む。本発明の複数の態様では、処理済み水流103中の一価金属陽イオンの濃度を、重量で約1000ppm未満、重量で約500ppm未満、重量で約100ppm未満、または重量で約50ppm未満にすることができる。水流102から二価および多価金属陽イオンを除去することは水性処理区域1000の一機能である。本発明の他の態様では、二価および多価陽イオンの濃度は重量で約50ppm未満、重量で約25ppm未満、重量で約10ppm未満、または重量で約5ppm未満である。流れ103の温度の範囲は地下水の温度から約40℃であってもよい。
【0315】
水性処理区域1000の水流102を当業分野で知られている任意の方法で処理することができる。一態様では、水性処理区域1000は蒸留装置を備え、水蒸気を発生・凝縮させて処理済み水流103を作る。別の態様では、水から一価および二価金属陽イオンを分離することができる逆浸透膜分離装置に水を送って処理済み水流103を作る。別の態様では、水をイオン交換樹脂に送って金属陽イオン濃度が許容できる程に低い処理済み水流103を作る。さらに別の態様では、水を市販の水軟化装置に送って二価および多価の金属陽イオン濃度が許容できる程に低い処理済み水流103を作ることができる。当然であるが、これらの水処理の選択肢の任意の組合せを用いて処理済み水の要求特性を達成してもよい。
【0316】
処理済み水流103を、それを必要とする過程の任意の位置に送ってもよい。一態様では、流れ103の一部を一次
固液分離区域500へ送って布洗浄および/または一次
固液分離区域500に含まれる固形分の洗浄に役立ててもよい。
【0317】
一態様では、処理済み水流103の少なくとも一部は熱交換区域800へ送られる。別の態様では、処理済み水流103の少なくとも1部は繊維スラリー区域200へ送られる。別の態様では、処理済み水流103の少なくとも1部は熱交換区域800へ送られ、処理済み水流103の少なくとも1部は繊維スラリー区域200へ送られる。熱交換区域800の一機能は、特定の制御された温度の加熱水流801を発生させることである。
【0318】
一態様では、熱交換区域800へ供給することができる流れは処理済み水流103および第2の母液流601である。別の態様では、熱交換区域800へ供給することができる流れには処理済み水流103、一次回収水流703、第1の母液流501、および第2の母液流601が含まれる。
【0319】
流れ801の温度の制御に当業分野で知られているどのような装置を用いてもよい。これらの装置には、蒸気を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、熱伝導液を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、電気的加熱要素を用いて必要なエネルギーの一部を提供する任意の熱交換器、および蒸気が直接注入され、凝縮し、凝縮物が熱交換区域800への供給水と混ざる任意の容器またはタンクがあるがこれに限定されない。
【0320】
多成分繊維流90は繊維切断区域100へ送られて多成分切断繊維流101が生成される。多成分繊維は当業分野で知られている任意の多成分構造のものでよい。多成分繊維は本開示で先に述べた水分散性スルホポリエステルおよび水
非分散性重合体を含む。
【0321】
当業分野で知られている任意の機器を用いて多成分切断繊維流90を切断して、多成分切断繊維流101を発生させてもよい。一態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約50mm未満である。別の態様では、多成分切断繊維流101中の切断繊維の長さは約25mm未満、約20mm未満、約15mm未満、約10mm未満、約5mm未満、または2.5mm未満である。
【0322】
多成分切断繊維流101および処理済み水流103の一部を繊維スラリー区域200へ送って、水および多成分切断繊維を含む多成分切断繊維スラリー201を発生させる。一態様では、多成分切断繊維スラリー201内の多成分切断繊維の重量%の範囲は約35〜約1重量%、約25〜約1重量%、約15〜約1重量%、または約7〜約1重量%にすることができる。
【0323】
多成分切断繊維スラリー201の温度は約5〜約45℃、約10〜約35℃、または約10〜約25℃の範囲にすることができる。一態様では、繊維スラリー区域200は十分な攪拌を備えるタンクを備えて、連続水性相の多成分切断繊維を懸濁させる。
【0324】
固形物と水の混合および得られる多成分切断繊維の連続相の懸濁の維持に適した当業分野で知られている任意の装置を繊維スラリー区域200で用いてもよい。繊維スラリー区域200は、回分法または連続法で運転される回分式または連続式混合装置を備えることができる。繊維スラリー区域200で使用するのに好適な装置には水力パルプ製造機、連続式攪拌タンク反応器、回分法で運転される攪拌を備えるタンクが含まれるがこれらに限定されない。
【0325】
多成分切断繊維スラリー201および加熱水流801を混合区域300へ送り、加熱多成分繊維スラリー301を発生させる。加熱多成分繊維スラリー301の温度は、開繊区域400における多成分切断繊維の水非分散性重合体からの水分散性スルホポリエステル部分の分離に影響する。本発明の他の態様では、加熱多成分繊維スラリー301の温度の範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃の範囲にすることができる。
【0326】
加熱多成分繊維スラリー301内の多成分切断繊維の重量%を制御することができる。別の態様では、加熱多成分繊維スラリー301内の多成分短繊維の重量%の範囲は約10〜約0.1重量%、約5〜約0.2重量%、約3〜約0.3重量%、または約2〜約0.4重量%にすることができる。
【0327】
加熱水流801を多成分切断繊維スラリー201と混合することができる当業分野で知られている任意の装置を混合区域300で用いてもよい。一態様では、混合区域300に好適な混合装置はタンクおよび攪拌機を備える。別の態様では、好適な混合装置は管または導管を備える。
【0328】
他の態様では、混合区域300に好適な混合装置は管または導管を備え、その直径は導管内の速度が多成分切断繊維スラリー201と加熱水流801を混合するのに十分であるようになっており、1分間当たり導管に入る多成分切断塊の約2重量%未満、約1重量%未満、または約0.5重量%未満が導管内に沈殿し堆積する。
【0329】
加熱多成分繊維スラリー301を次に開繊区域400へ送ることができる。開繊区域400の一機能は水分散性重合体を多成分切断繊維から分離し、水非分散性重合体極細繊維の少なくとも一部が多成分切断繊維から
開放され開繊極細繊維スラリー401中に懸濁するようにすることである。本発明の別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約50〜約100重量%が、開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。別の態様では、多成分切断繊維スラリー201に含まれる水非分散性重合体極細繊維の約75〜約100重量%、約90〜約100重量%、約95〜約100重量%が、開繊極細繊維スラリー401中に水非分散性重合体極細繊維として懸濁し、もはや多成分切断繊維の一部ではない。
【0330】
流れ201内の開始時の多成分切断繊維のデニールすなわち直径は、開繊区域400において水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。代表的な多成分繊維の種類は一般に約12〜約20ミクロンの範囲の直径を有する。有用な多成分繊維は大きめの開始時直径を有し、直径は約40ミクロン以上になることがある。多成分切断繊維の直径が大きくなると、所望の量の水分散性スルホポリエステルを多成分切断繊維から分離するのに時間が掛かる。
【0331】
また、開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力も水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の開繊過程に影響する条件には滞留時間、スラリー温度、および剪断力が含まれる。このなかで水温、開繊区域400内の滞留時間、および加えられる剪断の大きさの範囲は、水分散性スルホポリエステルを開始時の多成分繊維から十分な程度まで分離して水非分散性重合体極細繊維を分離させかつ開繊極細繊維スラリー401の連続水性相内に懸濁させる要求によって決まる。
【0332】
開繊区域400内の滞留時間、温度、および剪断力は、水分散性スルホポリエステルの多成分切断繊維からの分離度に影響する。開繊区域400の温度の範囲は約55〜約100℃、約60〜約90℃、または約65〜約80℃の範囲にすることができる。開繊区域400の滞留時間の範囲は約5分〜約10秒、約3分〜約20秒、または約2分〜約30秒にすることができる。開繊区域400では十分な攪拌が維持されて、切断極細繊維の沈殿が最少になるように水非分散性重合体切断極細繊維の懸濁が維持される。本発明の別の態様では、開繊区域400内の水非分散性切断極細繊維の沈殿の単位時間当たりの質量は、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約5%未満、この区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約3%未満、またはこの区域400に入る水非分散性重合体切断極細繊維の単位時間当たりの質量の約1%未満である。
【0333】
開繊区域400内の開繊は、許容範囲の滞留時間、温度、および混合が可能などのような装置で達成されてもよい。好適な装置の具体例には、
図6bおよび6cに示すような回分式攪拌タンクまたは連続式攪拌タンク反応器、および
図6aに示すような十分な流量でスラリーの沈殿による固形物を最少にする管が含まれるがこれらに限定されない。開繊区域400内の開繊を達成する単位操作の一具体例は押出流れ反応器であり、そこでは加熱された多成分繊維スラリー301が一般に円形の管または導管である区域400押出流れ装置へ送られる。押出流れ装置内の材料の滞留時間は装置内の充填量を装置内の容積流量で割ることによって計算される。装置内の塊の速度は、装置を通過する液体の容積流量で流路の断面積を割ったもので規定される。
【0334】
本発明の別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えることができ、管内を流れる塊の速度範囲は0.1〜約20フィート/秒、0.2〜約10フィート/秒、または約0.5〜約5フィート/秒にすることができる。管または導管内の液体またはスラリーの流れの場合、レイノルズ数Reが方向および時間の両方で不規則な液体渦流の乱れまたは動きを記述するのに有用な無次元数である。管または導管内の液体またはスラリーの流
れの場合、レイノルズ数Reは一般に下記で定義される。
【0336】
式中、
・D
Hは管の水力直径L(m)、
・Qは体積流速(m
3/秒)、
・Aは管の断面積(m
2)、
・vは液体に対する対象物の平均速度(SI単位、m/秒)、
・μは液体の動的粘度(Pa秒またはN秒/m
2またはkg/(m秒))、
・νは動的粘度(ν=μ/ρ)(m
2/秒)、
・ρは液体の密度(kg/m
3)
である。
【0337】
直径Dの管内の流れの場合、実験観察から、Re
D<2000で完全に発達した流れ、層流が発生し、Re
D>4000で乱流が発生することがわかる。2300〜4000の間では、層流および乱流の可能性があり(「遷移」流)、管の表面粗さおよび流れの均一性のような他の因子によって決まる。
【0338】
開繊区域400は管または導管を備えて開繊過程を容易にすることができ、開繊区域400の管または導管を通過する流れのレイノルズ数の範囲は約2,100〜約6,000、約3,000〜約6,000、または約3,500〜約6,000にすることができる。別の態様では、開繊区域400は管または導管を備えて開繊過程を容易にすることができ、管または導管を通過する流れのレイノルズ数は少なくとも2,500、少なくとも3,500、または少なくとも4,000である。
【0339】
開繊区域400を、混合装置が内蔵された管または導管の中に実現することができる。この装置は直列型の混合装置を備えることができる。直列型の混合装置は動く部分がない静的混合器であってもよい。別の態様では、直列型の混合装置は動く部分を備える。そのような要素は、加熱された多成分繊維スラリー301に管内の流れによって達成されるよりも大きな混合エネルギーを与えることを目的とする機械的な装置であるがそれに限定されない。この装置を挿入することができるのは管部の開繊区域として使用される開始部分、管部分の終端、または管流路の任意の位置である。
【0340】
水非分散性重合体極細繊維、水、および水分散性スルホポリエステルを含む開繊スラリー流401を一次
固液分離区域500へ送って、極細繊維および第1の母液流501を含む極細繊維製品流503を発生させることができる。一態様では、第1の母液流501は水および水分散性スルホポリエステルを含む。
【0341】
開繊スラリー流401内の固形物の重量%の範囲は約0.1〜約20重量%、約0.3〜約10重量%、約0.3〜約5重量%、または約0.3〜約2.5重量%にすることができる。
【0342】
極細繊維製品流503内の固形物の重量%の範囲は約10〜約65重量%、約15〜約50重量%、約25〜約45重量%、または約30〜約40重量%にすることができる。
【0343】
極細繊維製品流503を、当業分野で知られている任意の方法で開繊極細繊維スラリー401から分離することができる。一態様では、水を含む洗浄流103が一次
固液分離区域500へ送られる。洗浄流103を用いて一次
固液分離区域500の極細繊維製品流および/または一次
固液分離区域500の濾布媒体を洗浄して、洗浄液体流502を発生させることができる。洗浄液体流502の最大100重量%までの部分を一次
固液分離区域500へ入る前に開繊極細繊維スラリー401と混合することができる。洗浄液体流502は極細繊維を含むことができる。一態様では、一次
固液分離区域500内で開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する極細繊維塊のグラム数の範囲は、濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムである。本発明の別の態様では、一次
固液分離区域500内の濾材の開口は約43〜3000ミクロン、約100〜2000ミクロン、または約500〜2000ミクロンの範囲にすることができる。
【0344】
極細繊維製品流を、一次
固液分離区域500内の開繊極細繊維スラリーから1つまたは複数の
固液分離装置で分離してもよい。一次
固液分離区域500内の分離は1つまたは複数の
固液分離装置で回分式または連続式に達成してもよい。一次
固液分離区域500の好適な
固液分離装置には、穴あき籠式遠心分離機、連続式真空ベルト濾過器、回分式真空ヌッチェ型濾過器、回分式穴あき沈殿タンク、二重針金脱水装置、圧縮区域付き連続式水平ベルト濾過器、くさび型針金濾材付き無振動傾斜網装置、連続真空ドラム濾過器、脱水搬送機ベルト等のうちの少なくとも1つが含まれるがこれらに限定されない。
【0345】
一態様では、一次
固液分離区域500は二重針金脱水装置を備え、開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られる。二重針金脱水装置の第1の区域では、重力および2つの移動濾布の間で狭まる全ての間隙によって、水が開繊極細繊維スラリー401から排水される。二重針金脱水装置の下流区域では、2つの濾布および2つの濾布の間の極細繊維塊が1回以上圧縮されて極細繊維塊の水分が機械的に減る。一態様では、2つの濾布および含まれる極細繊維塊を少なくとも一組のローラーに通し、このローラーが圧縮力を2つの濾布およびそれらの間の極細繊維塊に加えることによって機械的な脱水が達成される。別の態様では、2つの濾布および極細繊維塊を少なくとも1つの圧縮ローラーと固定面の間に通過させて機械的な脱水が達成される。
【0346】
本発明の別の態様では、機械的な脱水によって加えられる力の範囲は濾材幅の直線1インチ当たり約25〜約300lbs、濾材幅の直線1インチ当たり約50〜約200lbs、または濾材幅の直線1インチ当たり約70〜約125lbsにすることができる。2つの濾布が装置の固形物排出区域で分離し分かれると、極細繊維製品流503は二重針金脱水装置から排出される。排出された極細繊維塊の厚さは約0.2〜約1.5インチ、約0.3〜約1.25インチ、または約0.4〜約1インチの範囲にすることができる。一態様では、水を含む洗浄流が濾材に連続的にかけられる。別の態様では、水を含む洗浄流は濾材に周期的にかけられる。
【0347】
別の態様では、一次
固液分離区域500は、
図7に説明されている重力排水区域および圧力排水区域を備えるベルト濾過装置を備える。開繊極細繊維スラリー401は同じ方向へ移動する一対の移動濾布の間の先細りした間隙へ送られ、最初に重力排水区域を通過し、次に
図6bに説明した渦巻き型配置のローラーを備える圧力排水区域すなわち圧縮区域を通過する。ベルトがローラーの間を送られると水が固形物から絞り出される。ベルトが過程内のローラーの最終対を通過するときに濾布は分離し、固形物がベルト濾過装置を出る。
【0348】
本発明の別の態様では、水および水分散性スルホポリエステル重合体を含む第1の母液流501に含まれる水の少なくとも一部は回収され再利用される。第1の母液流501を一次
固液分離区域500に再利用することができる。一次
固液分離区域の水非分散性極細繊維除去時の効率に応じて、第1の母液流501を繊維スラリー区域200、混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300、および/または400へ送る前に熱交
換区域800に再利用することができる。第1の母液流501は、濾過および布洗浄により水非分散性重合体極細繊維を含む固形物を少量しか含まない。一態様では、一次
固液分離区域の開口が最大2000ミクロンの濾材を通過する水非分散性重合体極細繊維塊のグラム数は、濾過領域のcm2当たり約1〜2グラムの範囲である。流れ501を一次濃縮区域700および熱交換区域800へ送る前に、第1の母液流501内の水非分散性重合体極細繊維固形物を最少にすることが望ましい。一次濃縮区域700および熱交換区域800に水非分散性重合体極細繊維固形物が集積するとこれらの区域の機能に悪影響を及ぼす。
【0349】
二次
固液分離区域600は、第1の母液流501に存在する水非分散性重合体極細繊維固形物の少なくとも一部を除去して、水非分散性極細繊維を含む二次湿潤固形物流602および水および水分散性スルホポリエステルを含む
第2の母液流601を発生させる働きをする。
【0350】
一態様では、第2の母液流601を一次濃縮区域700および、または熱交換区域800へ送ることができ、そこでは一次濃縮区域700へ送られる第2の母液流601の重量%の範囲は熱交換区域800へ送られる流れとの釣り合いで0〜100%にすることができる。第2の母液流601を繊維スラリー区域200、混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300、および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0351】
一次濃縮区域に送られた第2の母液流601のどの部分も分離過程を通って、一次回収水流703、および水分散性スルホポリエステルが豊富な一次重合体濃縮流702を発生し、一次重合体濃縮流702中の水分散性スルホポリエステルの重量%の範囲は約5〜約85重量%、約10〜約65重量%、または約15〜約45重量%にすることができる。一次回
収水流703を繊維スラリー区域200、混合区域300、開繊区域400に再利用するか、または区域200、300および/または400に送る前に熱交換区域800に再利用することができる。開繊区域400に送られる第2の母液流内の水分散性スルホポリエステルの量の範囲は、第2の母液流の重量%に対し約0.01〜約7重量%、または約0.1〜約7重量%、約0.2〜約5重量%、または約0.3〜約3重量%にすることができる。
【0352】
一次濃縮区域700において当業分野で知られている任意の方法によって第2の母液流601から水を除去して一次重合体濃縮流702を作ることができる。一態様では、水の除去には蒸発過程があり、水を回分式または連続式の蒸発装置内で沸騰させて蒸発させる。例えば、少なくとも1枚の薄膜蒸発器をこの用途に用いることができる。別の態様ではナノ濾過材を備える膜技術を用いて一次重合体濃縮流702を発生させることができる。別の態様では、抽出装置を備えるプロセスを用いて水分散性重合体を第2の母液流601から抽出し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。当然のことながら蒸発、膜、および抽出工程の任意の組合せを用いて水分散性スルホポリエステルを第2の母液流601から分離し、一次重合体濃縮流702を発生させてもよい。一次重合体濃縮流702はその後本過程から出てもよい。
【0353】
一態様では、一次重合体濃縮流702を二次濃縮区域900へ送って、重合体の重量%の範囲が約95〜約100%である水分散性スルホポリエステルを含む溶融重合体流90
3、および水を含む蒸気流902を発生させることができる。一態様では、903は水分散性スルホポリエステルを含む。二次濃縮区域900に好適な装置には当業分野で知られている任意の装置があり、その装置は水分散性重合体の水性分散液を送ることができ、95〜100%の水分散性重合体流903を発生させることができるものである。本態様は、水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液を二次濃縮区域902に供給することを含む。供給流の温度は一般に100℃未満である。
【0354】
一態様では、二次濃縮区域900は、回転式の搬送スクリューを内蔵する被覆管状の外殻構造を特徴とする少なくとも1つの装置を備える。ここでは搬送スクリューは熱伝達液または蒸気で加熱され搬送要素および高剪断混合要素を両方備える。被覆または外殻構造を曲げて蒸気を逃がすようにしている。この被覆外殻構造を装置の長さ方向に複数の区域に分けて、それぞれの区域で異なる温度に設定できるようにしてもよい。連続稼働中は、一次重合体濃縮流702は水および水分散性スルホポリエステルを含み、連続的に二次濃縮区域900に供給される。装置内では、定常状態では、塊は少なくとも3つの独特な異なる形態で存在する。塊はまず装置内に水分散性スルホポリエステル重合体の水性分散液として存在する。スルホポリエステル重合体の水性分散液が装置内を移動すると、被覆および内部のスクリューの熱により水が蒸発する。十分な水が蒸発すると塊は、スルホポリエステル重合体の溶融温度より低い温度の粘性プラグを含む第2の形態になる。水性分散液はこの粘性プラグを通過することができず、装置の第1の水性分散液区域に閉じ込められる。被覆の熱、内部から加熱されたスクリューの熱、およびこの高粘度プラグ塊の混合剪断力による熱により、この場所に存在する実質的に全ての水が蒸発し、温度が上昇してスルホポリエステルの溶融温度に到達し、装置内の溶融スルホポリエステル重合体を含む塊は第3かつ最終の物理的形態になる。溶融スルホポリエステル重合体はその後装置から押出成形ダイを通って出て一般には冷却され、当業分野で知られている方法で粒状に切断される。当然のことだが、上記の二次濃縮区域900用の装置は回分式で操作してもよい。このとき、上記の塊の3つの物理的形態は装置の全長にわたり発生するがその時間は異なり、水性分散液に始まり、粘性プラグ塊、そして最終的にスルホポリエステル溶融物の順に発生する。
【0355】
一態様では、二次濃縮区域900で発生した蒸気を濃縮し、熱交
換区域800へ送っても、廃棄しても、かつ/あるいは洗浄流103へ送ってもよい。別の態様では、水蒸気を含む濃縮蒸気流902を熱交
換区域800へ送って、流れ801に必要な温度の発生に必要なエネルギーの少なくとも一部を提供することができる。溶融相のスルホポリエステルを含む水分散性重合体を含む溶融重合体流903を冷却し、当業分野で知られている任意の方法で粒状に細断することができる。
【0356】
この過程に不純物が入り、回収および再利用される水の中で濃縮することがある。1つ以上の除去流(603および701)を利用して第2の母液601および一次回収水流
703中の不純物の濃縮を許容される程度に制御することができる。一態様では、第2の母液流601の一部を分離し、この過程から除去することができる。一態様では、一次回収水流
703の一部を分離し、この過程から除去することができる。
【0357】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
【実施例】
【0358】
全ての粒状試料は室温の真空中で少なくとも12時間予備乾燥した。表3に示す分散時間は不織布試料の完全な分散または溶解のどちらかの時間である。表2および3に用いられている略号「CE」は「比較例」を意味する。
【0359】
実施例1
76モル%のイソフタル酸、24モル%のソジオ−スルホイソフタル酸、76モル%のジエチレングリコール、および24モル%の1,4−シクロヘキサン−ジメタノールを含み、Ih.Vが0.29かつTgが48℃であるスルホポリエステルを、呼び6インチのダイ(頭部部品の1インチ当たり30穴)から円筒型集束機に溶融吹き出しした。使用した条件を表1に示す。中敷き紙は不要であって。糸巻き作業中に塊にならず手で扱える柔軟で可撓性の織物が得られた。物理特性を表2に示す。表3に示すように、不織布の小片(1”×3”)は室温(RT)の水および50℃の水の両方の中で軽く攪拌することによって容易に分散した。
【0360】
【表2】
【0361】
【表3】
【0362】
【表4】
【0363】
実施例2
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール、および28モル%のジエチレングリコールを含み、Ih.Vが0.4かつTgが35℃であるスルホポリエステルを、6インチのダイを用いて溶融吹き出しした。用いた条件は表1の条件と同様であった。糸巻き作業中に塊にならず手で扱える柔軟で可撓性の織物が得られた。物理特性を表2に示す。表3のデータが示すように、不織布の小片(1”×2”)は50℃および80℃で容易かつ完全に分散し、RT(23℃)では完全分散に時間がかかった。
【0364】
実施例1および2の組成は他の不織基質への吹き付けが可能であることが分かった。また、濃縮し包装形態または成形形態にすることも可能で、これらは従来の織物集束機の代わりに用いられる。すなわち、円形の「粗紡(roving)」すなわちプラグ形態の織物を得ることができる。
【0365】
比較例1〜3
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール、およびを28モル%のジエチレングリコール含み、Ih.Vが0.4かつTgが35℃の粒状スルホポリエステルをポリプロピレン(ベイゼル(Basell)PF008)粒と混合した。二成分比(重量%)は以下のとおりであった。
75pp:25スルホポリエステル(実施例3)
50pp:50スルホポリエステル(実施例4)
25pp:75スルホポリエステル(実施例5)
PPはMFR(溶融流速)が800であった。溶融吹き出し作業を24インチ幅のダイを備える製造ラインで実施して、塊にならず手で扱える柔軟で可撓性の織物を得た。その物理特性を表2に示す。表3に示すように、不織布の小片(1”×4”)は容易に分解した。しかしどの繊維も不溶性ポリプロピレン成分のために完全な水分散性ではなかった。
【0366】
実施例3
実施例2で作った不織品の円形片(直径4”)を2枚のシート状の綿布の間の接着層として用いた。ハンニフィン(Hannifin)溶融圧縮機を用い、200℃で35psigの圧力を30秒間加えて2枚のシート状の綿布を融合した。得られた組立体は並外れて強力な結合強度を示した。接着すなわち結合が破損する前に綿の基質部が裂けた。他のセルロースとPET重合体基質でも類似の結果が得られている。また、強力な結合は超音波結合技術でも得られた。
【0367】
比較例4
MFRが1200であるPP(エクソン(Exxon)3356G)を、24”のダイを用いて溶融吹き出しして柔軟な不織布を得た。この不織布は塊にならずかつロールから容易にほどけた。小片(1”×4”)をRTまたは50℃の水に15分間浸漬したが、水に対し何らの反応(すなわち分解または基本重量の減少)もなかった。
【0368】
実施例4
82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール、および46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含み、Tgが55℃であるスルホポリエステルの単一成分繊維を実験用短繊維紡糸ラインにて245℃(473°F)の溶融温度で溶融紡糸した。紡糸時のデニールは約8d/fであった。巻き取り管の一部に塊が見られたが、単繊維10本の束は82℃、pH5〜6、無攪拌の脱塩水中で10〜19秒以内に容易に溶解した。
【0369】
実施例5
82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール、および46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むスルホポリエステル(Tgは55℃)と、91モル%のイソフタル酸、9モル%のソジオスルホイソフタル酸、25モル%のジエチレングリコール、および75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むスルホポリエステル(Tgが65℃)の混合物(75:25)から得た単一成分繊維を、実験用短繊維紡糸ラインにて溶融紡糸した。この混合物は57℃のTgを有し、このTgは成分のスルホポリエステルのTgの加重平均を取って計算したとおりであった。単繊維10本の束は、巻き取り管で何ら塊の発生が無く、82℃、pH5〜6、無攪拌の脱塩水中で20〜43秒以内に容易に溶解した。
【0370】
実施例6
実施例5に述べた混合物をPETと共に紡糸して海島型二成分繊維を得た。繊維の20重量%がスルホポリエステルの「海」、80重量%はPETの「島」という構成を得た。紡糸した糸の延伸は紡糸直後が190%であった。塊は発生せず、糸は糸巻きから問題なくほどけ、紡糸の1週間後に加工された。その後の操作で、この糸を88℃の軟水槽に通すことによって「海」が溶解し、細いPET単繊維のみが残留した。
【0371】
実施例7
この先見的な実施例は本発明の多成分繊維および極細繊維で特殊紙を作る潜在的用途を説明している。実施例5で述べた混合物をPETと共に紡糸して海島型二成分繊維を得る
。この繊維は約35重量%のスルホポリエステル「海」要素および約65重量%のPET「島」を含む。無捲縮繊維を1/8インチの長さに切断する。抄紙の実験中にこれらの二成分短繊維を精錬操作に加える。スルホポリエステル「海」は攪拌水性スラリー内で除去され、それによって極細PET繊維の束縛が混合液中に解かれる。極細PET繊維(「島」)は、粗いPET繊維を添加するよりも、同等の重量で効率的に紙の引張強度を上げる。
【0372】
比較例8
海構造内に108個の島を有する二成分繊維を紡糸結合ラインで作った。このラインにはフロリダ州メルボーンのヒル社(Hills Inc.)製の24”幅二成分紡糸口金ダイを用いた。このダイはダイ板に総数2222個のダイ穴を有する。2台の押出成型機を溶融ポンプに接続し、溶融ポンプを繊維紡糸ダイの両成分の入り口に接続した。一次押出成型機(A)を、イーストマンF61HC−PETポリエステルの流量を測り海島型断面構造中の複数の島領域を形成する入り口に接続した。ダイに入るPETが285℃の温度で熔解するように押し出し領域を設定した。二次押出成型機(B)でイーストマンAQ55Sスルホポリエステル集合体を加工した。この重合体はテネシー州キングスポートのイーストマン化学社製で、固有粘度は約0.35、溶融粘度は240℃、1ラジアン/秒の剪断速度で測定時に約15,000ポアズ、240℃、100ラジアン/秒で測定時に9,700ポアズであった。測定器は動的流量解析装置RDAII(ニュージャージ州ピスカタウェイ、レオメトリック社(Rheometrics Inc.))流量計。溶融粘度測定の実施前に、試料を60℃の真空炉内で2日間乾燥させた。粘度試験は直径25mmの平行板を間隙1mmの設定で実施した。歪み速度範囲が1〜400ラジアン/秒および歪み振幅10%で動的周波数掃引を行った。その後、粘度を240℃、歪み速度1ラジアン/秒で測定した。この手順を以降の実施例に用いたスルホポリエステル材料の粘度の測定にも用いた。二次押出成型機を、AQ55S重合体を溶融温度255℃で溶融し紡糸口金ダイに供給するように設定した。2種の重合体を処理速度0.6g/穴/分で二成分押出品に成形した。二成分押出品中のPETのAQ55Sに対する堆積比を60/40および70/30に調整した。
【0373】
吸引装置を用い、二成分押出品を溶融延伸して二成分繊維を作った。吸引器室内を通る空気の流れによって最終的な繊維を下方へ引き出した。吸引器本体を通る下向きの空気流量を吸引器に入る空気の圧力で制御した。この実施例では、二成分押出品を溶融延伸する吸引器に用いた空気の最大圧は25psiだった。この値を超えると吸引器を通る空気流によって押出成形品が溶融延伸紡糸過程中に破損した。二成分押出品に掛かる溶融延伸速度が二成分押出品の固有延性より大きいためであった。二成分繊維を平らに重ね、布重量が1平方メートルあたり95グラム(gsm)の不織織物にした。この不織織物の二成分繊維の光学顕微鏡による評価から分かったことは、PETは繊維構造の中央に島として存在しているが、二成分繊維の外周付近のPETの複数の島はほぼ融合し合って繊維の周囲付近にほぼ連続した環状の望ましくないPET重合体を形成しているということである。顕微鏡観察から、不織織物中の二成分繊維の直径は一般に15〜19ミクロンであり、1単繊維あたりのデニール(dpf)は紡糸時の平均デニール約2.5に相当することが分かった。これは、溶融延伸繊維の速度が1分あたり約2160メートルであることを示している。紡糸時デニールは、溶融押出工程および溶融延伸工程で得られた繊維のデニール(長さが9000メートルの繊維のグラム重量)として規定されている。二成分繊維の直径のばらつきは繊維の紡糸−延伸の不均一性を示していた。
【0374】
不織織物試料を120℃の強制空気炉内で5分間調質した。熱処理した織物はその面積に著しい捲縮を示し、処理前の織物の初期面積のたった約12%にまで減少した。理論に縛られるつもりはないが、繊維に用いられたAQ55Sスルホポリエステルの大きな分子量と溶融粘度のため、繊維内のPETセグメントの歪み誘起性の結晶化を引き起こすのに
必要な程度まで二成分押出品を溶融延伸することができなかった。総合的に、この特定の固有粘度および溶融粘度を有するAQ55Sスルホポリエステルは二成分押出品として使用できず、所望の微細なデニールまで均一に溶融延伸できなかった。
【0375】
実施例8
市販のイーストマンAQ55S重合体と同じ化学組成のスルホポリエステル重合体が作られた。ただし、この重合体の分子量は低値に制御され固有粘度が約0.25という特徴がある。この重合体の溶融粘度は、240℃、1ラジアン/秒の剪断速度で測定時に3300ポアズであった。
【0376】
実施例9
16セグメントのパイ型構造を有する二成分押出品を作った。使用したダイはフロリダ州メルボーンのヒル社製の二成分紡糸口金ダイで、このダイは紡糸結合装置の24インチ幅のダイ板に総数2222個のダイ穴を有する。2台の押出成型機を用いて2種の重合体を溶融し、この紡糸口金ダイに供給した。一次押出成型機(A)を、イーストマンF61HC−PETポリエステル溶融物を供給して分離されたパイ型断面構造の複数の領域すなわちセグメント薄片を形成する入り口に接続した。紡糸口金ダイに入るPETを285℃で溶融するように押し出し区域を設定した。二次押出成型機(B)で実施例8のスルホポリエステル重合体を溶融し供給した。溶融温度が255度のスルホポリエステル重合体を押し出して紡糸口金ダイに入れるように二次押出成型機を設定した。使用した紡糸口金ダイおよびスルホポリエステル重合体の溶融粘度を除き、この実施例に用いた手順は比較例8と同じであった。穴1個あたりの溶融処理速度は0.6gm/分であった。二成分押出品中のPETのスルホポリエステルに対する体積比を70/30に設定した。この比は約70/30の重量比を示している。
【0377】
比較例8で用いたものと同じ吸引器を用い、二成分押出品を溶融延伸して二成分繊維を作った。まず吸引器に入れる空気を25psiに設定すると繊維は約2.0の紡糸時デニールを有し、二成分繊維は約14〜15ミクロンの均一な直径形状を示した。吸引器への空気を溶融押出成形品が延伸中に破断しない最大供給圧45psiまで増やした。45psiの空気を用い、二成分押出品を溶融延伸して紡糸時デニールが約1.2の繊維にした。このとき二成分繊維は、顕微鏡観察で約11〜12ミクロンの直径を示した。溶融延伸過程中の速度は計算では約4500m/分であった。理論に縛られるつもりはないが、溶融延伸速度がこの速度に近づくと溶融延伸過程中のPETの歪み誘起性結晶化が起こり始めると考えられている。上記のように繊維溶融延伸過程中にPET繊維セグメントに何らかの方向性がある結晶性が形成され、その後の加工中に
不織ウェブが寸法的に安定するようになることが望ましい。
【0378】
45psiの吸引器空気圧を用いた二成分繊維を平らに重ねて重量が1平方メートルあたり140グラム(gsm)の
不織ウェブにした。
不織ウェブを120℃の強制空気炉内で5分間調質して捲縮を測定した。この実施例では比較例8の繊維および布と比べて捲縮の著しい減少を示している。
【0379】
布重量が140gsmのこの
不織ウェブを種々の温度の静置した脱イオン水槽に5分間浸漬した。浸漬した
不織ウェブを乾燥させ、種々の温度の脱イオン水に浸漬することによる重量損失割合を測定した。これを表4に示す。
【0380】
【表5】
【0381】
スルホポリエステルは約25℃の温度の脱イオン水中で非常に容易に消散した。
不織ウェブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの除去量は重量%損失で示されている。スルホポリエステルの二成分繊維からの広域のまたは完全な除去が33℃以上の温度で観察された。実施例8の本スルホポリエステル重合体を含むこれらの二成分繊維の
不織ウェブを水流交絡処理により作る場合、水温が環境より高温であれば、スルホポリエステル重合体は水流交絡処理の水噴流によってほとんどまたは完全に除去されるであろう。水流交絡処理工程中に二成分繊維から除去されるスルホポリエステル重合体を非常に少なくしたければ、約25℃未満の低水温を用いるべきである。
【0382】
実施例10
スルホポリエステル重合体を以下の二塩基酸とジオール組成で作った。二塩基酸組成(71モル%テレフタル酸、20モル%イソフタル酸、および9モル%5−ソジオスルホイソフタル酸)、およびジオール組成(60モル%エチレングリコールおよび40モル%ジエチレングリコール)。スルホポリエステルを真空中の高温ポリエステル重縮合で作った。エステル化の条件を制御して固有粘度が約0.31のスルホポリエステルを作った。このスルホポリエステルの溶融粘度を240℃、歪み速度1ラジアン/秒で測定すると約3000〜4000ポアズの範囲であった。
【0383】
実施例11
実施例10のスルホポリエステル重合体を実施例9に記述した手順と同じ手順に従って紡糸して、二成分パイ片型繊維および
不織ウェブにした。一次押出成型機(A)でイーストマンF61HC−PETポリエステル溶融物を供給してパイ片型構造の大きなセグメント薄片を形成した。紡糸口金ダイに入るPETが温度285℃で溶融するように押し出し区域を設定した。二次押出成型機(B)で実施例10のスルホポリエステル重合体を処理し、これを溶融温度255℃で紡糸口金ダイに供給した。穴1個あたりの溶融処理速度は0.6gm/分であった。二成分押出品中のPETのスルホポリエステルに対する体積比を70/30に設定した。これは約70/30の重量比を示している。二成分押出品の断面は複数の楔形状のPET領域を有し、これらの領域はスルホポリエステル重合体によって分離されていた。
【0384】
二成分押出成形品を比較例8で用いたものと同じ吸引器組立体を用いて溶融延伸して二成分繊維を作った。延伸中に二成分繊維が破断しない吸引器への最大供給可能空気圧は45psiであった。45psiの空気を用い、二成分押出品を溶融押し出しして紡糸時デニールが約1.2、顕微鏡観察時の直径が約11〜12ミクロンの二成分繊維にした。溶融延伸過程中の速度を計算すると約4500m/分であった。
【0385】
二成分繊維を平らに重ねて、重量が140gsmおよび110gsmの
不織ウェブにした。材料を120℃の強制空気炉内で5分間調質して織物の捲縮を測定した。捲縮後の
不織ウェブの面積は開始時の面積の約29%であった。
【0386】
溶融延伸繊維および
不織ウェブから採取した繊維の断面を顕微鏡で調べると、非常に優れたパイ片型構造であることが分かり、そこでは個々のセグメントが明確に規定されており、寸法および形状は類似していた。PETセグメントは互いに完全に分離されており、8個の個別のPET単成分繊維が形成され、スルホポリエステルを二成分繊維から除去後にパイ型薄片形状を有するようになっていた。
【0387】
繊維重量が110gsmの
不織ウェブを静置した種々の温度の脱イオン水槽中に8分間浸漬した。浸漬した
不織ウェブを乾燥させ、種々の温度の脱イオン水に浸漬することによる重量損失割合を測定した。測定値を表5に示す
【0388】
【表6】
【0389】
このスルホポリエステル重合体は、約46℃を越える温度の脱イオン水中で非常に容易に消散し、51℃を越える温度では重量損失で示したように繊維からほとんどまたは完全に除去された。約30%の重量損失はスルホポリエステルが
不織ウェブ内の二成分繊維から完全に除去されたことを示している。水流交絡処理によってこのスルホポリエステルを含む二成分繊維のこの
不織ウェブを処理するとすれば、重合体は40℃未満の水温の水流交絡処理水噴流ではほとんど除去されないだろうということが推測される。
【0390】
実施例12
実施例11の基本重量が140gsmおよび10gsmの不織布を、ドイツ、エーゲルスバッハのフライシュナー(Fleissner)GmbH社製水流交絡処理装置を用いて水流交絡処理した。この機械には水流交絡処理部が全部で5箇所あり、3組の噴流が不織布の上側に、2組の噴流がその反対側に接触した。水噴出部は、直径が約100ミクロンの微細開口を複数個備え、これらが2フィート幅の噴流帯に加工されていた。噴出部への水圧を60バール(bar)(噴流帯#1)、190バール(噴流帯#2および3)、および230バール(噴流帯#4および5)に設定した。水流交絡処理中の噴出部への水の温度は約40〜45℃の範囲であることがわかった。水流交絡処理装置を出る不織布は強く結合されていた。連続した繊維は互いに絡み合って水流交絡不織布が作られており、両方向の引つ張りに対し高い裂断抵抗性を示した。
【0391】
次に、この水流交絡不織布を幅出し機(tenter)の枠に固定した。幅出し機は強固な四角い枠を備え、その周囲に一連のピンが設けられている。布をピンに固定して加熱時に収縮しないようにした。布試料を取り付けた枠を130℃の強制空気炉内に3分間置いて、布を拘束したまま熱処理した。熱処理の後、この調質した布を切断して測定寸法の試験片にし、この試験片を幅出し機の枠で拘束せずに130℃で調質した。この調質後の水流交絡不織布の寸法を測定し、ほとんど収縮していない(<0.5%の寸法減少)ことを観察した。水流交絡不織布の熱処理は寸法安定性がある不織布を作るのに十分であることがわかった。
【0392】
水流交絡不織布を上記の熱処理後に90℃の脱イオン水内で洗浄してスルホポリエステル重合体を除去し、水流交絡布に残っているPET単一成分繊維セグメントを残留させた。繰り返し洗浄した後、乾燥した布には概算26%の重量損失があった。水流交絡処理前に
不織ウェブを洗浄すると重量損失は31.3%であった。したがって、水流交絡処理過程によって
不織ウェブからスルホポリエステルの一部が除去されたが、この量は比較的少ない。水流交絡処理中に除去されるスルホポリエステルの量を減らすには、水流交絡処理噴流の水温を40℃未満まで下げる必要がある。
【0393】
実施例10のスルホポリエステルによって良好なセグメント分布を有するパイ片型繊維が得られることがわかった。このセグメント分布では、水非分散性重合体セグメントはスルホポリエステル重合体の除去後に寸法と形状が類似の個々の繊維を形成していた。スルホポリエステルの流動性は適度で、二成分押出品を高速で溶融延伸して紡糸時デニールが約1.0程度に小さい微細デニールの二成分繊維を実現した。これらの二成分繊維は平らに重ねて
不織ウェブにすることができ、これを水流交絡してスルホポリエステル重合体の大きな損失なしに不織布を作ることができた。
不織ウェブを水流交絡処理して作られた不織布は高強度を示し、約120℃以上の温度で熱処理して寸法安定性に優れた不織布を作ることができた。水流交絡された不織布から洗浄工程でスルホポリエステル重合体を除去した。その結果、強くて軽く可撓性に優れた柔らかい手触りの不織布製品が得られた。この不織布製品中の単一成分PET繊維は楔形の形状をしており平均デニールは約0.1であった。
【0394】
実施例13
スルホポリエステル重合体を以下の二塩基酸およびジオール組成で作った。二塩基酸組成(69モル%テレフタル酸、22.5モル%イソフタル酸、および8.5モル%5−ソジオスルホイソフタル酸)、ならびにジオール組成(65モル%エチレングリコールおよび35モル%ジエチレングリコール)。スルホポリエステルを真空化の高温ポリエステル重縮合で作った。エステル化の条件を制御して、固有粘が約0.33のスルホポリエステルを作った。このスルホポリエステルの溶融粘度の範囲は、240℃、歪み速度1ラジアン/秒で測定して約3000〜4000ポアズであった。
【0395】
実施例14
実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸して、紡糸結合糸1本に16個の島がある海島型二成分断面形状にした。一次押出成型機(A)でイーストマンF61HC−PET重合体溶融物を供給して海島型構造内の複数の島を形成した。押し出し区域を設定して紡糸口金ダイに入るPETを約290℃の温度で溶解した。二次押出成型機(B)で実施例13のスルホポリエステル重合体を圧縮した。このスルホポリエステル重合体を約260℃の溶解温度で紡糸口金ダイに供給した。二成分押出品中のPETのスルホポリエステルに対する容積比を70/30に設定した。この比は約70/30の重量比を示す。紡糸口金を通過する溶融物処理速度は0.6g/穴/分であった。二成分押出品の断面には丸形のPETの複数の島領域があり、スルホポリエステル重合体によってこれらの領域は分離されていた。
【0396】
吸引機組立体を用いて二成分押出成形品を溶融延伸した。溶融延伸中に二成分繊維が破断しない吸引機への空気の最大供給圧力は50psiであった。50psiを用い二成分押出品を溶融延伸して二成分繊維にした。その紡糸時デニールは約1.4であり、この二成分繊維を顕微鏡で観察すると直径は約12ミクロンであった。延伸過程中の速度は計算で約3900m/分であった。
【0397】
実施例15
二成分押し出し製造ラインを用いて実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸して、島繊維が64本ある海島型断面二成分繊維にした。一次押出成型機でイーストマンF61HCポリエステル溶融物を供給して海島型繊維断面構造内の複数の島を形成した。二次押出成型機で、スルホポリエステル重合体溶融物を供給して海島型二成分繊維内の海を形成した。先に記述した溶融粘度測定手順によって、240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時のこのポリエステルの固有粘度は0.61dL/g、乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維を、穴が198個のある紡糸口金を用い、処理速度0.85グラム/分/穴で作った。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステル間の重合体比は65〜35%であった。これらの二成分繊維を、ポリエステル成分の押し出し温度280℃、およびスルホポリエステル成分の押し出し温度260℃で紡糸した。この二成分繊維は多数の単繊維(198本)を含み、これを約5
30メートル/分の速度で溶融紡糸し、1単繊維あたりの公称デニールが約14の単繊維を形成した。ゴールストンテクノロジー社(Goulston Technologies)製の24重量%PT769仕上げ剤の仕上げ溶液を二成分繊維に接触ローラー塗布機を用いて塗布した。次にこの二成分繊維の複数の単繊維を一組の2つのゴデットローラーを用いて一直線に延伸し、それぞれ90℃および130℃に加熱し、最終延伸ローラーが約1750メートル/分の速度で稼働して延伸比が約3.3倍の単繊維を得た。この単繊維は延伸された海島型二成分単繊維を形成しており、1単繊維当たり公称デニールは約4.5または平均直径は約25ミクロンであった。これらの単繊維は平均直径が約2.5ミクロンのポリエステル極細繊維の「島」を含んでいた。
【0398】
実施例16
実施例15の延伸海島型二成分繊維を切断して、長さが3.2ミリメートルおよび6.4ミリメートルの短い繊維にし、それによって島が64個の海島型断面形状の二成分短繊維を作った。これらの二成分短繊維は、ポリエステルの「島」と水分散性スルホポリエステル重合体の「海」を含んでいた。断面の島と海の分布はこれらの二成分短繊維の長さに沿って本質的に変わらなかった。
【0399】
実施例17
実施例15の延伸海島型二成分繊維を軟水に約24時間浸漬し、次に切断して、長さが3.2ミリメートルおよび6.4ミリメートルの短い繊維にした。短繊維に切断される前に、水分散性スルホポリエステルは少なくとも部分的に乳化した。したがって海成分からの島の分離は部分的に影響を受け、それによって部分的に乳化した海島型二成分短繊維が形成された。
【0400】
実施例18
実施例16の海島型二成分短繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、二成分繊維の「島」成分であるポリエステル極細繊維の束縛を解いた。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいで本質的にほとんどの「海」成分を除去した。洗浄したポリエステル極細繊維の光学顕微鏡観察により、平均直径は約2.5ミクロン、長さは3.2および6.4ミリメートルであることが分かった。
【0401】
実施例19
実施例17の部分的に乳化した海島型二成分短繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、繊維の「島」成分であるポリエステル極細繊維の束縛を解いた。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいで本質的にほとんどの「海」成分を除去した。洗浄したポリエステル極細繊維の光学顕微鏡観察によって、ポリエステル極細繊維の平均直径は約2.5ミクロン、長さは3.2および6.4ミリメートルであることが分かった。
【0402】
比較例20
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。米国テネシー州メンフィスのインターナショナルペーパー社(International Paper)のアルバセル・サウザン・ブリーチド・ソフトウッド・クラフト(SBSK)7.5グラムおよび室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化してパルプ化混合物を作った。このパルプ化混合物を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して濃度が約0.1%(水7500グラムと繊維質材料7.5グラム)のパルプスラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこのパルプスラリーを60秒間攪拌した。このパルプスラリーから小型シートを作る手順は以下のとおりだった。パルプスラリーを攪拌しながら25×30センチメートルの小型シートの型に注ぎ入れた。落下弁を
引き、パルプ繊維が網に排出されるようにして小型シートを形成した。形成した小型シートの上に1平方メートル当たり750グラム(gsm)の吸い取り紙を置き、小型シートの上に平らにした。網枠を上昇させ反転させて清浄な剥離紙の上に置き、10分間放置した。網を垂直に上げて形成された小型シートから離した。形成された小型シートの上に750gsmの吸い取り紙2枚を置いた。この小型シートを3枚の吸い取り紙と一緒にノルドウッド(Norwood)乾燥機を用いて約88℃で15分間乾燥させた。小型シートの両側に各1枚の吸い取り紙を残して吸い取り紙を1枚取り除いた。ウィリアム乾燥機を用い、この小型シートを65℃で15分間乾燥させた。その後、小型シートを12〜24時間、40kg乾燥圧縮機を用いてさらに乾燥させた。吸い取り紙を除去して乾燥小型シート試料を得た。この小型シートの周囲を切り取って試験用の寸法21.6×27.9センチメートルにした。
【0403】
比較例21
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。米国テネシー州メンフィスのインターナショナルペーパー社のアルバセル・サウザン・ブリーチド・ソフトウッド・クラフト(SBSK)7.5グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ(Avebe)社のソリビトーゼN(Solivitose N)事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、および室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化してパルプ化混合物を作った。パルプ化混合物を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して、濃度約0.1%(水7500グラムと繊維質材料7.5グラム)にしてパルプスラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこのパルプスラリーを60秒間攪拌した。このパルプスラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20と同じであった。
【0404】
実施例22
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。米国テネシー州メンフィスのインターナショナルペーパー社のアルバセル・サウザン・ブリーチド・ソフトウッド・クラフト(SBSK)6.0グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、実施例16の3.2ミリメートル海島型短繊維1.5グラム、および室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して繊維混合スラリーを作った。この繊維混合スラリーを10秒間82℃に加熱して海島型繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化・除去し、ポリエステル極細繊維の束縛を解いた。次に繊維混合スラリーを濾過して、スルホポリエステルおよびパルプ繊維とポリエステル極細繊維とを含む極細繊維含有混合物を含むスルホポリエステル分散液を作った。極細繊維含有混合物を室温の水500グラムを用いてさらにすすいで極細繊維含有混合物から水分散性スルホポリエステルをさらに除去した。この極細繊維含有混合物を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して濃度約0.1%(水7500グラムと繊維質材料7.5グラム)にして極細繊維含有スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこの極細繊維含有スラリーを60秒間攪拌した。この極細繊維含有スラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20と同じであった。
【0405】
比較例23
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。米国コロラド州デンバー、ジョン・マンヴィル(Johns Manville)社から販売されているマイクロストランド(MicroStrand)475−106極細ガラス繊維7.5グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、および室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化してガラス繊維混合物を作った。このガラス繊維混合物を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して、濃度約0.1%(水7500グラム
と繊維質材料7.5グラム)にしてガラス繊維スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこのガラス繊維スラリーを60秒間攪拌した。このガラス繊維ラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20と同じであった。
【0406】
実施例24
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。米国コロラド州デンバー、ジョン・マンヴィル社から販売されているマイクロストランド475−106極細ガラス繊維3.8グラム、実施例16の3.2ミリメートル海島型短繊維3.8グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、および室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して繊維混合スラリーを作った。この繊維混合スラリーを10秒間82℃に加熱して海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化・除去し、ポリエステル極細繊維の束縛を解いた。次に繊維混合スラリーを濾過して、スルホポリエステルおよびガラス極細繊維とポリエステル極細繊維とを含む極細繊維含有混合物を含むスルホポリエステル分散液を作った。極細繊維含有混合物を室温の水500グラムを用いてさらにすすいで極細繊維含有混合物からスルホポリエステルをさらに除去した。この極細繊維含有混合物を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して、濃度約0.1%(水7500グラムと繊維質材料7.5グラム)にして極細繊維含有スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこの極細繊維含有スラリーを60秒間攪拌した。この極細繊維含有ラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20と同じであった。
【0407】
実施例25
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。実施例16の切断長3.2ミリメートルの海島型繊維7.5グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して繊維混合スラリーを作った。この繊維混合スラリーを10秒間82℃に加熱して海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化・除去し、ポリエステル極細繊維の束縛を解いた。次に繊維混合スラリーを濾過してスルホポリエステル分散液およびポリエステル極細繊維を作った。スルホポリエステル分散液は水分散性スルホポリエステルで構成されていた。ポリエステル極細繊維を室温の水500グラムですすいでポリエステル極細繊維からスルホポリエステルをさらに除去した。これらのポリエステル極細繊維を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して濃度約0.1%(水7500グラムと繊維質材料7.5グラム)にして極細繊維スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用いてこの極細繊維スラリーを60秒間攪拌した。この極細繊維スラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20と同じだった。
【0408】
実施例20〜25の小型シート試料を試験した。特性を以下の表に示す。
【0409】
【表7】
【0410】
小型シートの重量を測定し、1平方メートル当たりのグラム単位の重量(gsm)を計算することによって小型シートの基本重量を測定した。小野測器社製EG−233厚みゲージを用いて小型シートの厚みを測定し、ミリメートル単位の厚みを報告した。密度を1立法センチメートル当たりのグラム単位の重量として計算した。1.9×1.9cmの正方形の開放ヘッドおよび容積100ccを備えるグライナー製空隙率圧力計を用いて空隙率を測定した。空隙率は水100ccが試料を通過する場合の秒単位の平均時間(4回測定)で報告している。インストロン社製TM型を用い30×105mmの試験片6個について引張り特性を測定した。各試験片について6回の測定値の平均を報告している。これらの試験データから、本発明のポリエステル極細繊維を添加することにより湿式重ね合わせ繊維質構造の引張特性が顕著に改善されることが分かる。
【0411】
実施例26
二成分押し出しラインを用い、実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸して島繊維が37個のある海島型断面の二成分繊維にした。1次押出成型機でイーストマンF61HCポリエステルを供給して海島型断面構造内の「島」を形成した。二次押出成型機で水分散性スルホポリエステル重合体を供給して海島型二成分繊維の「海」を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.61dL/g、乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は、上記の溶融粘度測定手順を用い240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約7000ポア
ズであった。これらの海島型二成分繊維を72穴、処理速度1.15グラム/分/穴の紡糸口金を用いて作った。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステルの重合体比は2対1であった。これらの二成分繊維をポリエステル成分の押し出し温度280℃および水分散性スルホポリエステル成分の押し出し温度255℃で紡糸した。この二成分繊維には複数の単繊維(単繊維198本)が含まれ、これを約530メートル/分の速度で溶融紡糸し、1単繊維当たりの公称デニールが19.5の単繊維を形成した。この二成分繊維に、接触ローラー塗布機を用いてゴールストンテクノロジー社製のPT769仕上げ剤の24重量%仕上げ溶液を塗布した。その後、この二成分繊維の単繊維を真っ直ぐに延伸した。この延伸には、それぞれ95℃および130℃まで加熱された2個一組のゴデットローラーおよび速度約1750メートル/分で稼働する最終延伸ローラーを用いた。この延伸により延伸比が約3.3倍の単繊維を得た。形成された延伸海島型二成分単繊維は、1単繊維当たりの公称デニールが約5.9すなわち平均直径が約29ミクロンであった。これらの単繊維は平均直径が約3.9ミクロンのポリエステル極細繊維の島を含んでいた。
【0412】
実施例27
実施例26の延伸海島型二成分繊維を切断して長さが3.2ミリメートルおよび6.4ミリメートルの二成分短繊維にし、それによって島が37個ある海島型断面構成の短繊維を作った。これらの繊維はポリエステルの「島」および水分散性スルホポリエステル重合体の「海」を含んでいた。この断面の「島」および「海」の分布はこれらの二成分繊維の長さに沿って本質的に変化しなかった。
【0413】
実施例28
実施例27の海島型短繊維を80℃の軟水で洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」要素を除去し、それによって、二成分繊維の「島」要素を構成しているポリエステル極細繊維の束縛を解いた。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいで本質的にほとんどの「海」要素を除去した。顕微鏡観察では、洗浄したポリエステル極細繊維の平均直径は約3.9ミクロンならびに長さは3.2および6.4ミリメートルであった。
【0414】
実施例29
二成分押し出しラインを用い、実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸して島が37個ある海島型断面二成分繊維にした。1次押出成型機でポリエステルを供給して海島型繊維の断面構造内の「島」を形成した。二次押出成型機で水分散性スルホポリエステル重合体を供給して海島型二成分繊維内の「海」を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.52dL/g、乾燥水分散性スルホポリエステルの溶融粘度は、上記の溶融粘度測定手順を用いて240℃、1ラジアン/秒の歪み速度で測定時に約3500ポアズであった。これらの海島型二成分繊維はそれぞれ175個の穴がある2つの紡糸口金を用い、1.0グラム/分/穴の処理速度で作った。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステルの重合体比は70%対30%であった。これらの二成分繊維を、ポリエステル要素の押し出し温度280℃およびスルホポリエステル要素の押し出し温度255℃で紡糸した。二成分繊維は複数の単繊維(350本の単繊維)を含み、これを100℃に加熱された巻き取りロールを用いて約1000メートル/分の速度で溶融紡糸し、公称デニールが1単繊維当たり約9、平均繊維直径が約36ミクロンの単繊維を形成した。接触ローラー塗布機を用い、24重量%PT769仕上げ剤の仕上げ剤溶液を二成分繊維に塗布した。二成分繊維の複数の単繊維を結合し、次にそれらを延伸ロールの速度が100m/分、温度38℃の延伸ラインで3.0倍に延伸し、1単繊維当たりの平均デニールが約3、平均直径が約20ミクロンの延伸海島型二成分単繊維を形成した。これらの延伸海島型二成分繊維を切断して、長さが約6.4ミリメートルの短繊維にした。これらの海島型二成分短繊維は平均直径が約2.8ミクロンのポリエステル極細繊維の「島」で構成されていた。
【0415】
実施例30
実施例29の海島型二成分短繊維を80℃の軟水で洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」要素を除去し、それによって繊維の「島」要素であるポリエステル極細繊維の束縛を解いた。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいでほとんどの「海」要素を本質的に除去した。洗浄した繊維の顕微鏡観察により、ポリエステル極細繊維の平均直径は約2.8ミクロン、長さは約6.4ミリメートルであることが分かった。
【0416】
実施例31
以下の手順によって湿式重ね合わせ極細繊維材料小型シートを作った。実施例16の3.2ミリメートル海島型二成分短繊維56.3グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉2.3グラム、および室温の水1410グラムを2リッターのビーカーに入れて繊維スラリーを作った。この繊維スラリーを攪拌した。この繊維スラリーの1/4の量、約352mlを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。この繊維スラリーを10秒間82℃に加熱して海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化・除去し、ポリエステル極細繊維の束縛を解いた。次に繊維スラリーを攪拌してスルホポリエステル分散液およびポリエステル極細繊維を作った。これらのポリエステル極細繊維を500グラムの室温の水ですすいでスルホポリエステルをポリエステル極細繊維からさらに除去した。室温の水を十分に加えて352mlの極細繊維スラリーを作った。この極細繊維スラリーを7000rpmで30秒間再度パルプ化した。これらの極細繊維を8リッターの金属製ビーカーに移した。繊維スラリーの残りの3/4を同様にパルプ化し、洗浄し、すすぎ、再度パルプ化し、8リッターの金属製ビーカーに移した。次に6090グラムの室温の水を加えて約0.49%濃度(水7500グラムとポリエステル極細繊維36.6グラム)にして極細繊維スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用い、この極細繊維スラリーを60秒間攪拌した。この極細繊維スラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20の手順と同じであった。基本重量が約490gsmの極細繊維材料小型シートは、平均直径が約2.5ミクロン、平均長さが約3.2ミリメートルのポリエステル極細繊維で構成されていた。
【0417】
実施例32
以下の手順によって湿式重ね合わせ小型シートを作った。実施例31のポリエステル極細繊維材料小型シート7.5グラム、オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉0.3グラム、および室温の水188グラムを1000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。極細繊維を室温の水7312グラムと一緒に8リッターの金属製ビーカーに移して約0.1%濃度(水7500グラムと繊維性材料7.5グラム)にして極細繊維スラリーを作った。高速羽根攪拌器を用い、この極細繊維スラリーを60秒間攪拌した。このスラリーから小型シートを作る手順の残りは実施例20の手順と同じであった。ポリエステル極細繊維の100gsmの湿式重ね合わせ小型シートが得られ、その平均直径は約2.5ミクロンであった。
【0418】
実施例33
実施例29の6.4ミリメートル海島型二成分短繊維を80℃の軟水で洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」要素を除去し、それによって二成分繊維の「島」要素であるポリエステル極細繊維の束縛を解いた。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいでほとんどの「海」要素を本質的に除去した。洗浄したポリエステル極細繊維の顕微鏡観察により、平均直径は約2.5ミクロン、長さは6.4ミリメートルであることが分かった。
【0419】
実施例34
実施例16、実施例27、および実施例29の海島型二成分短繊維を別々に、ジョージ
ア州アトランタ、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich Company)製のエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(Na
4EDTA)が二成分繊維の重量に対し約1重量%含まれる80℃の軟水で洗浄して水分散性スルホポリエステル「海」要素を除去し、それによって二成分繊維の「島」要素であるポリエステル極細繊維の束縛を解いた。Na
4EDTAのような少なくとも1種の水軟化剤を添加することによって水分散性スルホポリエステル重合体の海島型二成分繊維からの除去が容易になる。洗浄したポリエステル極細繊維を25℃の軟水ですすいでほとんどの「海」要素を本質的に除去した。洗浄したポリエステル極細繊維の顕微鏡観察により、ポリエステル極細繊維が良好に開放・分離されていることが分かった。Na
4EDTAのような水軟化剤を水に使用することによって、スルホポリエステルの水分散性に悪影響を与えるスルホポリエステルのCa
++イオンのどのような置換も抑制される。一般的な軟水のCa
++イオン濃度は最大15ppmの場合がある。本明細書に記載のプロセスに使用する軟水は本質的にCa
++イオンおよび他の多価イオンを本質的に含まないこと、またはNa
4EDTAのような水軟化剤を十分な量使用してこれらのCa
++イオンおよび他の多価イオンを結合することが望ましい。これまで開示した実施例の手順を用い、これらのポリエステル極細繊維を湿式重ね合わせシートの作製に用いることができる。
【0420】
実施例35
実施例16および実施例27の海島型二成分短繊維を以下の手順によって別々に加工した。オランダ、フォクホルのアヴェベ社製のソリビトーゼN事前ゼラチン化第四級陽イオンじゃがいも澱粉17グラムを蒸留水に加えた。澱粉が完全に溶解すなわち加水分解し後、この蒸留水に海島型二成分短繊維429グラムをゆっくり加えて繊維スラリーを作った。ウィリアムス回転式連続供給精製機(直径5インチ)を起動して繊維スラリーを精製または混合して、十分な剪断作用を水分散性スルホポリエステルに与えてポリエステル極細繊維から分離した。材料容器の内容物を24リッターのステンレス鋼製容器に注ぎ入れしっかり蓋をした。ステンレス鋼製容器をプロパンガス料理器に載せ、繊維スラリーが約97℃で沸騰し始めるまで加熱して、海島型繊維中のスルホポリエステル要素を除去し、ポリエステル極細繊維の束縛を解放した。繊維スラリーが沸騰したら、手持ちの攪拌棒で攪拌した。ステンレス鋼製容器の内容物を27インチ×15インチ×深さ6インチの二重底クニュッヘ(Knuche)に網目30番のふるいで注ぎ入れてスルホポリエステル分散液およびポリエステル極細繊維を作った。スルホポリエステル分散液は、水および水分散性スルホポリエステルを含んでいた。ポリエステル極細繊維をクニュッヘ内で17℃の軟水10リッターで15秒間すすぎ、絞って余分な水を除去した。
【0421】
ポリエステル極細繊維(乾燥繊維)20グラムを70℃の水2000mlに加え、ヘルマン製造会社(Hermann Manufacturing Company)製の2リッター、3000rpm、3/4馬力水力製紙機を用いて3分間(9000回転)攪拌して、1%濃度の極細繊維スラリーを作った。実施例20の上記の手順によって複数の小型シートを作った。
【0422】
これらの小型シートの光学顕微鏡および走査式電子顕微鏡による観察から、ポリエステル極細繊維が良好に分離・形成されていることがわかった。
【0423】
実施例36
この実施例は海島型(INS)二成分繊維の開繊に関する。この繊維は1単繊維当たり4.5デニールを形成する方法で押出成型され、各単繊維はイーストマンF−61HCポリエステルで構成され、37個のPET島およびイーストマンスルホポリエステル重合体で構成された海部分を有する。ポリエステル要素のスルホポリエステル海要素に対する比は70PET/30スルホポリエステルであった。この繊維はヒル社(Hills Inc.)(フロリダ州メルボーン)製の海島型二成分繊維紡糸パックを用いて作られた。押出成形および延伸の条件を調整して、個々の島の平均直径2.0ミクロンを目標とした開始時の繊維
全体の公称22ミクロンを実現した。切断して長さ1.5mmのステープルファイバーにされる延伸糸を作った。この二成分繊維を切断して全長1.5mmにして二成分切断繊維を作り、開繊極細繊維を作る評価に用いた。この開繊極細繊維は開繊過程後にそれぞれ3.0ミクロンの複数のPET島で構成されていた。
【0424】
37INS単繊維で構成された切断長1.5mmの二成分繊維を、回分式開繊過程を用いて開繊して、二成分切断繊維内の37個のPET島を1つにまとめている結合剤であるスルホポリエステル海要素を除去した。実施例36の開繊過程では、20kgの脱イオン水を10ガロンの実験用水力パルプ製造機(アディロンダック機械社(Adirondack Machinery Co.))に加え、低圧の蒸気を加えて79℃にし加熱しながら30%の速度設定で攪拌した。脱イオン水が79℃に達したら、その攪拌水に400グラムの37INS二成分切断繊維を素早く加え、二成分切断繊維を全て加えた後にタイマーを起動した。10秒の攪拌の後、開繊極細繊維スラリーの公称400ccの試料を取り出し、直後にこし器を使って濾過して、79℃の水との10秒の接触の間に除去されたスルホポリエステル重合体を含む第1の母液から極細繊維製品を素早く分離した。極細繊維製品試料を網に押し付けて極細繊維製品を脱水して水分含有量を約20〜25%にした。試料を20秒、60秒、および120秒攪拌した後に水力パルプ製造機から取り出し、各試料を同様にふるいに掛けて極細繊維製品から分離された第1の母液を回収した。
【0425】
4つの試験試料のそれぞれから回収した第1の母液の固形物含有量を測定することによって、スルホポリエステル海要素の除去度を評価した。このプロセスでは、120秒の長い接触時間の後に採取した最後の試料中の固形物の%値は、最大量のスルホポリエステルが開始時の二成分切断繊維からほぼ定量的に除去される条件を示している。各試料の固形物含有量を測定した。測定は、3インチ×5インチのアルミニウム製鍋の重量を測定し(+/−0.001g)、次に、除去されたスルホポリエステルを含む第1の母液試料100.0グラムを加えることによって行った。平板加熱器を用い液体が鍋から飛び出ない適度な速度で水を沸騰させて蒸発させた。平板加熱器上で水をほとんど除去したら、重合体残留物が入っている試料鍋を180℃の強制空気炉内に5分放置して更に乾燥させて水分量を均一にして残留物の水分含有量を均一に調整した。鍋の重量を再度計り(+/−0.001g)、開始時の鍋重量を差し引いて残留物の重量を計算した。残留物重量を開始時の試料重量で割って固形物含有量を計算した。
【0426】
実施例36の開繊過程で回収された第1の母液中の固形物の変化を
図8に示す。
【0427】
【化1】
【0428】
スルホポリエステル重合体を多成分切断繊維から定量的に除去した後は第1の母液中の固形物残留物は増加しない。試験結果から、最初の10秒の試料を取り出した後に回収した第1の母液中の固形物含有量の増加は最小であることがわかった。20秒、60秒、および120秒時に取り出された試料の固形物量の差は、試験のばらつきの範囲内である。79℃の水に10秒だけ接触した後の除去効率は95%、すなわち定量的と考えられる除去量の5%以内に入っていた。実施例36では、スルホポリエステル海要素は、79℃の水中で攪拌しながら15秒以下接触させることによって、4.5dpfの37INS二成分切断繊維から効率的に除去された。
【0429】
実施例37
実施例36の過程を変更して再度実施した。変更は、アディロンダック水力パルプ製造機の速度設定を30%設定から80%設定に上げて、79℃に加熱された脱イオン水中の37INS二成分切断繊維の混合を改善した。
図8と類似のスルホポリエステル除去特性が観察され、最初の10秒試料の固形物の%値はその後の固形物値の試験精度内に入っており、79℃の接触時間10秒の後のスルホポリエステルの定量的除去を示している。
【0430】
実施例38
37INS二成分繊維の開繊過程を実施例36と同じ方法で実施し、二成分切断繊維に接触する脱イオン水の温度を実施例36で用いた温度より5℃低い74℃に変更して実施した。結果を下図に示す。
【0431】
【化2】
【0432】
20秒、60秒、および120秒後に取り出した試料は、二成分切断繊維からのスルホポリエステルの定量的な除去量と一致する固形物含有量を示した。74℃で10秒接触した場合でも、スルホポリエステル除去量は定量的な除去量の5%以内に入り、海要素が74℃で二成分切断繊維から素早く除去されることを示している。
【0433】
実施例39
37INS構造および4.5dpfの繊度を有する実施例36の二成分切断繊維を、実施例36に述べたものと同様の方法で開繊した。このとき水力パルプ製造機の攪拌を50%に設定し、開繊工程に用いる脱イオン水の温度を68℃に下げた。68℃の攪拌水中で二成分切断繊維を15秒、30秒、60秒、および120秒間調質した後に試料を取り出した。各試料から回収した第1の母液を分析してスルホポリエステル含有量を求めた。分析は実施例36に述べた方法で固形物含有量を測定することによって実施した。第1の母液中の調整時間の関数であるスルホポリエステル含有量を
図10に示した。固形物の量が漸近線に到達するのに要する時間すなわちスルホポリエステル除去量が定量レベルに近づく時間は開繊工程の速度の一指標である。
【0434】
【化3】
【0435】
68℃の場合、スルホポリエステル海要素の定量的な除去は68℃の水に60秒以上接触させた後に達成されたが、短時間(15秒)接触させた後の除去量は定量的除去量には遠く(最大値の80%)、30秒以降にやっと定量的な除去量に近づいた。比較すると、実施例36から実施例38では10秒の触時間の後に採取した試料中のスルホポリエステル海要素はほぼ定量的に除去されていることがわかる。これらの実施例の水温は実施例39の水温よりも高かった。実施例39は、繊維/温水の接触時間が68℃で60秒以上と長ければ二成分繊維の開繊過程の効率は良いが、調質時間が短いと海要素の除去が不完全になることを実証している。
【0436】
比較例40
二成分繊維の開繊過程を実施例36と同じ方法で実施した。ここでは開繊過程中に用いる脱イオン水の温度をさらに63℃まで下げた。試料を15秒、30秒、60秒、および120秒後に取り出し、各試料から回収した第1の母液を分析して固形物含有量を求めて、除去されたスルホポリエステルの量および開繊効率を測定した。スルホポリエステル除去速度を
図11に示す。この応答は、スルホポリエステル海要素の除去挙動が遅いことを実証している。
【0437】
【化4】
【0438】
スルホポリエステル海要素の約2/3が15秒の接触時間の後に二成分切断繊維から除去され、30秒接触すると約85%が除去された。60秒の接触時間のとき除去量は多かったが定量的ではなかった。63℃で二成分切断繊維からの海要素の定量的と考えられる除去量を確保するには、2分を越える開繊時間が必要になるであろう。開繊過程の一番重要な効果は海要素を定量的と考えられる量だけ除去することであり、この観点から見れば、比較例40で測定された除去速度の遅さは、除去可能な要素としてスルホポリエステルで構成された二成分切断繊維を開繊するには商業的尺度では遅い開繊条件であることを実証した。比較例40の場合、攪拌の設定は30%である。開繊過程中の攪拌または乱流の程度が大きいほど定量的開繊に影響を与えるのに必要な時間を短縮することができ、混合のエネルギーが減ると開繊過程の速度が低下し、スルホポリエステル要素の完全な除去に影響を与えるのにさらに長い時間を必要になる。
【0439】
この実施例および先の複数の実施例で述べた除去速度は、スルホポリエステルで構成された二成分切断繊維が除去可能な要素である場合である。除去可能な要素を水性相に(溶解または乳化して)さらに容易に除去することができる重合体類に置換または除去がより困難な重合体類に置換すると、除去可能な重合体の特性によって開繊過程の温度が変わることになる。これらの実施例は、特定の種類の除去可能なスルホポリエステル重合体を含む二成分繊維の除去特性を説明するものであるが、異なる種類の除去可能な重合体で構成された二成分繊維に好適な開繊条件についてはこれらの実施例に限定することを意図しない。
【0440】
比較例41
実施例36に述べたものと同じ手順を比較例41用いた。ここでは、十分なCaCl
2を脱イオン水に加えてCa
+2陽イオンを水相に重量で20ppmの濃度まで加えた。開繊過程の温度は77℃であった。これらの条件で開繊した場合のスルホポリエステルの除去特性を
図12に示す。
【0441】
【化5】
【0442】
開繊温度は類似だが脱イオン水を用いて実施した実施例36および37と比較して、比較例41のスルホポリエステルの除去速度はさらに遅い。先の2つの実施例では、スルホポリエステルのほぼ定量的な除去は79℃の脱イオン水に約10秒間接触させて記録された。比較例41では、同程度に攪拌して30秒後にようやく約90%が除去された。
【0443】
実施例36、37、および38の除去特性と比較すると、比較例41のスルホポリエステルの除去特性は遅く、30秒後にやっと90%除去が測定された。その一方、先の実施例では10〜15秒後にほぼ定量的な除去が測定された。比較例41の除去特性は比較例40で測定された特性(
図11)に類似しており、比較例40は硬質陽イオンを含まない14℃低い開繊温度の脱イオン水を用いて実施された。比較例41は、開繊過程に用いる水の硬度が水分散性スルホポリエステル要素で構成された二成分繊維の開繊に必要な接触時間と温度に大きく影響すること、20ppmのCa
+2硬度は境界値であって、硬度が大きくなると完全な開繊が遅くなるかまたは不可能になる可能性があることを説明するのに役立つ。
【0444】
実施例42
連続式の二成分繊維開繊過程
これまでの実施例36〜39は回分式の開繊過程を用いて水分散性重合体片を二成分繊維から除去することを説明している。商業生産では一般には連続式過程が利用されている。理由は連続稼働による効率の良さである。効率の大きな改善は回分式過程全体の回分式投与と排出の段階が省かれていることによる。この省略によって回分式過程のかなりの処理時間が削減され、小型装置を用いて同じ量を製造することができるようになる。
【0445】
二成分繊維の開繊過程に応用可能な連続式操作には基本的な2つの種類があり、これらは水分散性重合体を水非分散性重合体繊維材料から水性相に除去すなわち抽出することを含む。第1の種類の過程は連続式攪拌タンク反応器(CSTR)であり、この反応器の場合、水と多成分切断繊維を攪拌タンクに一定の比率と一定の供給速度で加えることができ、開繊された極細繊維スラリーをその攪拌タンクから同じ質量流速で排除して攪拌タンク内の多成分切断繊維スラリーを一定量に維持することができる。
【0446】
CSTRの短所は、この過程中に多成分切断繊維が攪拌タンク内に滞留する時間に幅があることである。回分式過程では全製品が回分式過程中に投与段階の終了から排出段階の開始まで名目上同じ時間だけ加工される。CSTRでは、攪拌タンクに加えられた多成分切断繊維はタンク内の材料と混合され様々な時間加工され、タンクから排出された材料にはタンク内で様々な時間処理された極細繊維が含まれる。CSTR開繊過程中に極細繊維がタンク内に留まる時間の長さは統計的平均で規定され、この統計的平均の中心点は極細繊維材料がタンク内に滞留する平均時間である。極細繊維が攪拌タンク内に滞留するこの統計的平均滞留時間(RT)はRT=V
t/Qという値で定義される。ここにV
tは攪拌タンク内に入れられる液体の総体積、Qは連続式操作中にタンクから出る液体の体積流量である。
【0447】
連続式操作用のCSTRの問題点はこの統計的な幅に基づいており、タンクに加えられた多成分切断繊維の一部は開繊には不十分な可能性がある短い時間しかタンク内に滞留せず、統計的な幅の他端では、多成分切断繊維の一部はタンク内に目標の平均RTよりも長く残り、その間に直径が細い極細繊維はタンク内で長い時間過剰に混合されることによって機械的な損傷を受ける可能性があるということである。
【0448】
この理由から、連続式開繊過程の別の方法は化学処理にしばしば使用される押出流れ過程である。この種類の処理法では液体を処理容器に一定速度で加え、容器に加えられた液体の各成分は容器内を名目上同じ速度で移動するため、液体の全成分が容器内に名目上同じ時間だけ入れられているようになる。CSTRと比較して押出流れ開繊過程は、処理容器内に不十分な時間滞留して完全に開繊しない一部の多成分切断繊維に関連する問題、およびタンク内に過剰に長く滞留して極細繊維の機械的損傷につながる一部の繊維に関連する問題を解消することができる。
【0449】
二成分繊維のための押出流れ開繊過程の一態様では、押出流れ容器は長い管部でもよい。この管部の端部に高温の水性多成分繊維スラリーを一定の体積流量で加える。この多成分繊維スラリーは管内を名目上一定の流速で通過し、ある時間だけ管内に滞留した後に処理管の他端から出る。滞留時間は処理管内の総体積を処理管に入る多成分繊維スラリーの体積流速で割ったもので規定される。
【0450】
一般的な押出流れ二成分繊維開繊過程
多成分切断繊維を開繊する連続式押出流れ過程の種々の実施例を提供する。この多成分切断繊維は水分散性スルホポリエステル相で構成され、この水分散性スルホポリエステル相が開繊過程中に多成分短繊維から除去される。全押出流れ操作の複数の過程のそれぞれは以下の分類に分けることができる。
1)多成分切断繊維で作られた低温多成分切断繊維スラリーの濃縮、
2)低温多成分切断繊維スラリーと混合する高温処理済み水流の生成、
3)流れ(1)と(2)を合わせて高温多成分繊維スラリーの製造、
4)処理管内の押出流れの中を流れる高温多成分繊維スラリー(3)の開繊による開繊極細繊維スラリーの製造、および
5)除去されたスルホポリエステル重合体を含む開繊極細繊維スラリーから網濾過装置を用いた極細繊維製品流の分離。
【0451】
本実施例で用いたこの過程のこれらの個々の工程を以下にさらに詳細に記述する。
【0452】
1)多成分切断繊維から低温多成分切断繊維スラリーを作る
公称25ppmの硬水陽イオンを含有する水道水を水軟化剤に通して硬水陽イオンの濃度を1ppm未満にした。約18℃の軟化水を連続的に計量して液量10ガロンの攪拌タ
ンクへ目標の流速で入れて攪拌タンク内の液量を一定にした。十分に攪拌した混合タンクに実施例36の多成分切断繊維を一定の速度および水流量に対し一定の比率で連続的に加えて目標濃度の多成分切断繊維を含む低温多成分切断繊維スラリーを発生させた。多成分切断繊維の低温多成分切断繊維スラリーを低温スラリー混合タンクからポンプで排出した。排出には可変速遠心ポンプを用いて同じ速度で低温多成分切断繊維スラリーを排出するようにした。これによって混合タンクに材料を供給して低温スラリー混合タンク内の量を一定に維持した。
【0453】
低温スラリー過程の工程の操作原則は、多成分短繊維を硬水陽イオン濃度が低い低温の水中に分散させることである。その分散は、十分に攪拌して多成分切断繊維を懸濁状体に維持し、多成分切断繊維が混合タンクに沈殿しないように行われる。低温スラリータンク内でスルホポリエステルを著しく除去しないように、かつタンク内の繊維の損傷が最小になるように、水温、および多成分切断繊維が低温スラリータンクに滞留する時間の両方を調節する。
【0454】
2)開繊過程用の高温処理済み水流を作る
蒸気過熱式円筒型熱交換器の入り口へ入る脱イオン水を微動流制御器で計量して熱水流を一定の目標速度に維持した。熱交換器に蒸気を加えて脱イオン水流を加熱して、目標流速のときの出口温度を96〜98℃にした。熱交換器を出る高温の脱イオン水を混合部に通し、上述の低温多成分切断繊維スラリー流と混合した。
【0455】
3)高温水流と低温繊維スラリー流を混合する
高温水流(2)および低温多成分切断繊維スラリー(1)の2つの流れを1.5インチの管混合部内で連続的に混合した。混合中はずっと液体流を乱流にして2つの流れを均一に混合し、混合流が混合部から連続的に出て、スケジュール番号40の1.5インチCPVC管で作られた開繊部に入るようにした。高温水(98℃)の流速の低温多成分繊維スラリー(18℃)に対する比率を選択して、混合流の温度が十分に高くて開繊すなわちスルホポリエステル重合体の多成分切断繊維からの除去が短時間に行われるようにした。1.5インチ管開繊装置内を流れる間にスルホポリエステルのの開繊を短時間に起こさせる混合流の目標温度の範囲は公称で70〜80℃である。
【0456】
4)1.5インチ管開繊装置内の押出流れ内の開繊
開繊装置は1.5インチCPVC管の10フィート片5個からなり、入り口から出口までの流路長は全長55フィートであった。管内容量の計算値は0.78ft
3であった。混合繊維スラリー流の一般的な流量は約1.1ft
3/分であり、言い換えると、混合繊維スラリーが押出流れ開繊装置内を流れたときの公称滞留時間は40秒であった。
【0457】
押出流れ管部の全長を110フィートに延長して開繊工程の居留時間を80秒にした複数の実施例が提示されている。
【0458】
5)開繊極細繊維の回収
3/16”の孔が複数開けられた金属製多孔板で直径18”、高さ12”の容器を作った。これらの孔は十分に小さいため開繊工程を出る極細繊維製品は通過しないが処理水は排出される。1.5インチ管開繊装置からの流出物を直接この容器に導いてスルホポリエステルを含む第1の母液は通過して排出されるようにし、開繊PET極細繊維で構成された湿潤固形物を回収した。
【0459】
上記の一般的な押出流れ二成分繊維開繊過程を実施例36の二成分切断繊維に適用して37海島型二成分繊維の連続開繊を実施した。この実施例では、18℃の未処理の水道水を水軟化装置に通して硬水陽イオンを1ppm未満まで除去し、この軟化水を約2.3ガ
ロン/分(gpm)すなわち公称9kg/分に計量して攪拌タンクに入れて低温二成分切断繊維スラリーを作った。攪拌タンクには前もって処理した水が公称12ガロンの液量入れてあった。タンクに低温水を加えながら4インチの羽根を備える可変速遠心ポンプを用いてタンクの底から開繊過程の混合部および押出流れ管部へ送り出した。このときポンプの速度を調節してタンク内の液体を同じ公称2.3gpmの速度で送り出すようにし、その速度で液体を加えてタンク内の量を一定に維持した。
【0460】
水をタンクに加えながら、実施例36の37INS二成分切断繊維をタンクの上部の口から混合タンク内の液体に325グラム/分の速度で連続的に加え、同時にタンク内の二成分繊維スラリーを十分に攪拌して開始時二成分切断繊維をタンク内で懸濁状態に維持し、沈殿しないようにした。連続式操作中の低温多成分繊維スラリー内の多成分切断繊維の濃度は、水中の繊維が重量で約3.5%である安定状態のスラリー濃度に近づいた。
【0461】
ピック(Pic)加熱装置を用いて実施例42の過程用の高温水流を発生させた。このとき微動流制御装置から蒸気過熱熱交換器の入り口への脱イオン水を公称6gpmすなわち22kg/分の速度で計量した。熱交換器から出る脱イオン水の出口の温度を温度制御器で97℃に制御した。温度制御器によって熱交換器の被覆への蒸気圧を調節して出口温度を調節した。
【0462】
ピック加熱装置を出る高温水流は混合部の入り口へ流れ、そこで、高温水流は押出流れ接触装置を通過する前に低温二成分繊維スラリータンクからの流れと合流した。高温水流と低温二成分繊維スラリー流の総混合流は8.3gpmすなわち31kg/分であった。高温水流は重量で混合流の約71%を占めた。混合部を出る混合流の温度を測ると75℃であり、この出口温度は各流れの個々の温度および混合部で混合された複数の流れの相対比率で制御されていた。同様に、混合流内の二成分切断繊維の濃度も混合前の各流れの比率に基づき低温スラリー内の3.5%から混合流内の1.0%に低下していた。
【0463】
温度が75℃の二成分切断繊維を1.0重量%含む混合繊維スラリー流を押出流れ開繊装置の入り口へ導いた。押出流れ開繊装置はスケジュール番号40の1.5インチCPVC管の5つの部分からなり、全長55フィートの長さがある。計算ではこの管部を通る二成分切断繊維スラリーの押出流れの平均値は1.2ft/秒、二成分切断繊維スラリーの押出流れ部内の滞留時間の平均値は45秒で、実施例42で適用した流れ条件を下回った。これらの条件下の管内流れのレイノルズ数の計算から、この流れは乱流領域にあり、乱流による混合エネルギーがスルホポリエステル重合体を二成分切断繊維から除去して開繊極細繊維スラリーを作るのを助けていることが分かった。二成分繊維を管部内で45秒間接触させてスルホポリエステルを前駆体繊維から本質的に定量的に除去することがこの実施例の過程における必須の要件であった。
【0464】
3/16”の孔を複数有する(表面積の40%)籠形濾材を用い、押出流れ接触部を出る開繊極細繊維スラリーを濾過して極細繊維を取り出した。実施例36〜38の極細繊維と比べ、実施例42の極細繊維の濾過は透過速度が遅く極細繊維が濾材を通過し、効率が悪かった。この影響は実施例42の押出流れ部内を流れる間の極細繊維の交絡不足に起因していた。実施例42の乱流混合による極細繊維の変形・交絡の度合いは先の実施例の強い攪拌より劣ることがあり、実施例42の極細繊維には開口がさらに小さい脱水網が必要である可能性がある。
【0465】
実施例42の極細繊維の質感は開始時の1.5mm二成分切断繊維の質感から著しく変化した。開始時の湿潤二成分切断繊維の質感は非常に粗くざらざらしたものであった。実施例42の濾過した極細繊維の質感はぬるぬると感じる程に滑らかで、繊維特性の顕著な変化を示した。
【0466】
実施例42の極細繊維に水を加えて低倍に希釈して再度分散させ、顕微鏡スライドに塗布して特性を調べた。顕微鏡観察から、実施例42の極細繊維は非常に極細の繊維で、公称繊維直径は約3ミクロンであり、37海島型二成分切断繊維の開始時PET島領域の開始時直径に相当することがわかった。顕微鏡観察から、製品繊維には3ミクロンの複数の島繊維を結合している海材料は僅かしか残留していないことがわかった。開繊が完全な繊維は僅かしか認められず、複数の島小繊維で構成されており、それらが実施例42の過程中に除去が不完全な海材料の残留物によって結合されていた。
【0467】
実施例42の極細繊維を評価した。評価は、濾過した極細繊維製品を水に再度分散させて水中の個体繊維濃度を0.02%にし、標準型直径6.25インチTAPPIシート成形機を用いてこの希釈繊維溶液を適切な紙小型シート試料にして行った。実施例36〜38で述べた回分式開繊過程で開繊した極細繊維を用いて比較試験を実施した。実施例42の極細繊維は回分式過程で開繊された繊維と質的に同等であることが分かった。比較したのは、水中に再分散させて低濃度固形物スラリーにした場合の処理特性、および再分散させた希釈繊維スラリーを従来の直径6.25インチTAPPIシート形成機を用いた高希釈形成技術で紙様製品にした場合のシートの特性の2つであった。
【0468】
実施例43
実施例43では実施例42の過程を実行した。ここでは、二成分切断繊維を低温スラリータンクに加える速度を325グラム/分から475グラム/分に増速した。これは低温スラリー流内の固形物量を3.5重量%から5.0重量%に増やしたことになる。押出流れ管部に入る高温スラリー中の二成分切断繊維の公称濃度は1.5重量%であった。低温スラリー部および混合高温スラリー部の両方の二成分切断繊維量の増加により、実施例42の過程に関連する顕著な処理の問題点は何ら発生しなかった。
【0469】
実施例43の極細繊維の特性を実施例42に述べたものと同じ方法で調べた。再分散させて希釈繊維スラリーにし、従来の高希釈製紙技術でシート試料にしたとき、開繊度およびそれ以降の挙動は機能的に同等であることが分かった。
【0470】
実施例44
実施例44では実施例42の過程を実行した。ここでは、低温スラリータンクへの低温水の流速を2.3gpmから約2.0gpmに減速し、ピック加熱装置から混合部への97℃の水の流速を6.0gpmから7.2gpmに増速した。高温水流の低温水流に対する比の変化は混合流の温度を実施例42の75℃から実施例44では80℃に上げる働きをした。二成分切断繊維を低温スラリータンクに約320グラム/分で連続的に加え、低温二成分繊維スラリー流内の二成分切断繊維の濃度を4.0重量%にした。混合した後、混合部から出る混合流中の二成分切断繊維の濃度は0.90重量%になった。
【0471】
実施例42および43の極細繊維と比べ、実施例44の極細繊維は良好に濾過された。実施例44の1.5インチ管を高温度で流れる間の交絡の程度が実施例42および43と比べて大きいためである。実施例44の極細繊維の顕微鏡観察から、これらの極細繊維は、直径が海島型二成分切断繊維の島領域の開始時直径に相当する公称3ミクロンの極細小繊維で構成されていることがわかった。
【0472】
実施例44の極細繊維を高希釈率で水中に再度分散させ、実施例42に述べた方法でシート試料にした。実施例44の極細繊維の特性は、実施例42の同じ押出流れ開繊過程にて低温度で開繊された極細繊維の特性と質的に等価であることがわかった。
【0473】
実施例45
実施例44の過程を再度実施した。ここでは、二成分切断繊維を高温水に接触させるのに用いた1.5インチ押出流れ管部の長さを110フィートに延長した。80℃の混合二成分繊維スラリーの有効滞留時間は、実施例45の過程では倍増して約90秒であった。極細繊維の濾過は非常に効率が良く、実施例44に述べた挙動と類似であった。実施例45の極細繊維の顕微鏡観察から、極細繊維は本質的に完全に開繊されており、公称3ミクロンの直径を有する個々の極細小繊維で構成されていることがわかった。実施例45の製品の実施例44と同じ方法の高希釈形成試験からは挙動特性にどのような差も認められなかった。
【0474】
実施例45では、実施例42〜45で用いた装置の押出流れ管部内の滞留時間が長くなっても、実施例42〜44の短い滞留時間に対し何ら有意な改善は認められなかった。これらの実施例では、スルホポリエステル海重合体を除去して二成分切断繊維を十分に開繊させるには、滞留時間は45秒で十分であった。理由は、実施例42〜44の開繊過程の温度が高温であるからである。水分散性スルホポリエステル重合体を二成分切断繊維から効率的に除去するのに必要な最低可能温度で開繊過程を実行することに何らかの利点が実現された場合には、実施例45で実施したように押出流れ接触時間を長くすることによってこれらの実施例で分かった利点よりさらに大きな利点を得ることができる。