特許第6374796号(P6374796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374796空調設定温度算出装置、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374796
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】空調設定温度算出装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20180806BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20180806BHJP
   F24F 120/20 20180101ALN20180806BHJP
【FI】
   F24F11/64
   F24F11/70
   F24F120:20
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-8317(P2015-8317)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-133266(P2016-133266A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 将雄
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−011170(JP,A)
【文献】 特開平07−063394(JP,A)
【文献】 特開2009−052805(JP,A)
【文献】 特開2000−003795(JP,A)
【文献】 特開平04−000141(JP,A)
【文献】 特開2014−005993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/64
F24F 11/70
F24F 120/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象区画を利用するユーザごとに、空調設定温度に関する当該ユーザの好み設定温度をユーザ別好み設定温度として記憶する設定温度DBと、
前記対象区画の入退室を管理する入退室管理システムから取得した在室状況に基づいて、当該対象区画に在室しているユーザを在室者として特定する在室者特定部と、
前記在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を前記設定温度DBから取得して、これらユーザ別好み設定温度を統計処理することにより前記対象区画に関する新たな設定温度を算出し、当該対象区画の空調環境を制御する空調システムへ通知する設定温度算出部とを備え
前記設定温度算出部は、前記在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知、または前記新たな設定温度の算出を中止する
ことを特徴とする空調設定温度算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調設定温度算出装置において、
前記設定温度算出部は、前記新たな設定温度が予め設定されている設定温度範囲内に含まれない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知を中止することを特徴とする空調設定温度算出装置。
【請求項3】
対象区画を利用するユーザごとに、空調設定温度に関する当該ユーザの好み設定温度をユーザ別好み設定温度として設定温度DBで記憶する設定温度記憶ステップと、
前記対象区画の入退室を管理する入退室管理システムから取得した在室状況に基づいて、当該対象区画に在室しているユーザを在室者として特定する在室者特定ステップと、
前記在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を前記設定温度DBから取得して、これらユーザ別好み設定温度を統計処理することにより前記対象区画に関する新たな設定温度を算出し、当該対象区画の空調環境を制御する空調システムへ通知する設定温度算出ステップとを備え
前記設定温度算出ステップは、前記在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知、または前記新たな設定温度の算出を中止する
ことを特徴とする空調設定温度算出方法。
【請求項4】
コンピュータが、請求項1または請求項2に記載の空調設定温度算出装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御技術に関し、特に在室者の好みに応じた空調設定温度を自動算出するための空調設定温度算出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、在室者の好みに応じた空調制御技術として、在室者の個人識別を行い、在室者個人の好みにあった最適な環境条件となるよう空調を行う場合、室内に設けたカメラによる在室者の情報と室外に設けられカメラにより入室者を検知した入室者の情報のうち少なくとも1つを有し、在室者または入室者の情報に基づいて個別に識別し、識別した在室者または入室者に関する情報に基づいて空気調和装置の連転を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
この他、入退管理システムから取得したユーザの性別および年齢を含む個人情報を取得し、部屋ごとに性別毎年代別毎にユーザを分類、集計し、集計結果および性別毎年代別毎の代謝量を考慮して予め設定されている基準計数に基づいて、空調機からの出力量を補正して空調機の動作を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−172288号公報
【特許文献2】特開2013−088105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、性別・年代別ごとに空調制御に関する一般的な傾向を推定して、これら傾向に応じた補正計数を性別・年代別に予め設定しておき、各在室者の個人情報に基づき特定したそれぞれの在室者の補正計数に基づいて、部屋の設定温度を補正するものとなっているため、在室者の個人的な好みを設定温度に直接反映させることができないという問題点があった。
【0006】
例えば、在室者が20代であるからといって、すべての在室者が強めの空調を好むわけではなく、在室者が女性であるからといって、すべての在室者が弱めの空調を好むわけでもない。それぞれの在室者が空調制御に対して個人的な好みを持っているのである。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、それぞれの在室者が持つ、空調制御に対する個人的な好みを十分反映させた空調設定温度を算出するための空調設定温度算出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調設定温度算出装置は、対象区画を利用するユーザごとに、空調設定温度に関する当該ユーザの好み設定温度をユーザ別好み設定温度として記憶する設定温度DBと、前記対象区画の入退室を管理する入退室管理システムから取得した在室状況に基づいて、当該対象区画に在室しているユーザを在室者として特定する在室者特定部と、前記在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を前記設定温度DBから取得して、これらユーザ別好み設定温度を統計処理することにより前記対象区画に関する新たな設定温度を算出し、当該対象区画の空調環境を制御する空調システムへ通知する設定温度算出部とを備え、前記設定温度算出部は、前記在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知、または前記新たな設定温度の算出を中止するようにしたものである。
【0009】
また、本発明にかかる上記空調設定温度算出装置の一構成例は、前記設定温度算出部が、前記新たな設定温度が予め設定されている設定温度範囲内に含まれない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知を中止するようにしたものである。
【0010】
また、本発明にかかる空調設定温度算出方法は、対象区画を利用するユーザごとに、空調設定温度に関する当該ユーザの好み設定温度をユーザ別好み設定温度として設定温度DBで記憶する設定温度記憶ステップと、前記対象区画の入退室を管理する入退室管理システムから取得した在室状況に基づいて、当該対象区画に在室しているユーザを在室者として特定する在室者特定ステップと、前記在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を前記設定温度DBから取得して、これらユーザ別好み設定温度を統計処理することにより前記対象区画に関する新たな設定温度を算出し、当該対象区画の空調環境を制御する空調システムへ通知する設定温度算出ステップとを備え、前記設定温度算出ステップは、前記在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合、前記空調システムに対する前記新たな設定温度の通知、または前記新たな設定温度の算出を中止するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータが、前述したいずれかの空調設定温度算出装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象区画に在室している各ユーザが、前もって登録しておいた好み設定温度に基づいて、対象区画に関する新たな設定温度が算出される。したがって、在室者の性別・年代別に応じた補正計数で部屋の設定温度を補正する場合と比較して、空調設定温度を算出する際、それぞれの在室者が持つ、空調制御に対する個人的な好みを十分反映させた空調設定温度を算出することができる。このため、在室者の好みに応じた、より快適な空調環境を提供することが可能となる。
【0013】
また、新たな設定温度の算出にあたり、各ユーザが申告した好み設定温度を設定温度DBに登録しておくだけでよく、他のユーザとの関係を踏まえてユーザの特徴ごとに補正計数や重みを予め設定しておく必要がないため、設定温度算出に要する準備作業負担を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】空調設定温度算出装置の構成を示すブロック図である。
図2】ユーザ別好み設定温度の構成例である。
図3】区画別判定基準の構成例である。
図4】在室状況の構成例である。
図5】空調設定温度算出処理を示すフローチャートである。
図6】空調設定温度の算出例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[空調設定温度算出装置]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる空調設定温度算出装置10について説明する。図1は、空調設定温度算出装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
この空調設定温度算出装置10は、全体としてサーバ装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、空調設定温度の算出対象となる対象区画40に関する入退室を管理する入退室管理システム20から取得した在室状況と、予め設定されている各ユーザの好み設定温度とに基づいて、対象区画40に関する新たな設定温度を算出し、対象区画40を空調制御する空調システム30に設定温度を通知する機能を有している。
【0017】
入退室管理システム20は、対象区画40の出入口に設置されたカードリーダにおけるユーザのカード操作に基づき、対象区画40に関するユーザの入退室可否を判定する、一般的な入退室管理システムである。この入退室管理システム20は、入退室可否の判定結果に基づき、対象区画40内に在室しているユーザを示す在室状況を管理する機能と、空調設定温度算出装置10からの取得要求に応じて在室状況を通信回線Lを介して空調設定温度算出装置10へ通知する機能とを有している。
【0018】
空調システム30は、対象区画40に対して供給する空気の温度や湿度を制御することにより、対象区画40の空調環境を制御する一般的な空調システムである。この、空調システム30は通信回線Lを介して空調設定温度算出装置10から通知された設定温度に基づいて、対象区画40の空調環境を制御する機能を有している。
【0019】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる空調設定温度算出装置10の構成について詳細に説明する。
この空調設定温度算出装置10には、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、設定温度DB14、在室者特定部15、設定温度算出部16、および設定温度通知部17が設けられている。
【0020】
通信I/F部11は、通信回線Lを介して入退室管理システム20や空調システム30とデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部12は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、オペレータ操作を検出して各機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、操作メニュー、在室状況、設定温度算出結果などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0021】
設定温度DB14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、空調設定温度算出に用いる各種処理情報をデータベースとして記憶する機能を有している。
この設定温度DB14で記憶する主な処理情報として、ユーザ別好み設定温度と区画別判定基準がある。
【0022】
図2は、ユーザ別好み設定温度の構成例である。ユーザ別好み設定温度は、各ユーザが予め設定した、自己が好む空調の設定温度である。ここでは、ユーザを識別するユーザIDごとに、ユーザ名、および好み設定温度が組として登録されている。好み設定温度については、冷房時と暖房時がそれぞれ個別に登録されている。
【0023】
図3は、区画別判定基準の構成例である。区画別判定基準は、区画ごとに、当該区画について算出した新たな設定温度の信頼性を判定するための基準である。ここでは、区画を識別する区画IDごとに、最低在室人数、上下限温、および下限温度が組として登録されている。上下限温および下限温度については、冷房時と暖房時がそれぞれ個別に登録されている。
【0024】
最低在室人数は、対象区画40に在室しているべきユーザの人数であり、ユーザの在室人数が最低在室人数に満たない場合、これらユーザの好み設定温度から算出した新たな設定温度は信頼性に乏しく通知不可と判定される。上下限温および下限温度は新たな設定温度の有効範囲を示すもので、この上下限温および下限温度の範囲外である場合、新たな設定温度は信頼性に乏しく通知不可と判定される。
【0025】
これらユーザ別好み設定温度や区画別判定基準については、操作入力部12からオペレータが操作入力したものを設定温度DB14に登録してもよく、外部装置で作成したものを通信I/F部11から取り込んで設定温度DB14に登録してもよい。また、ユーザ別好み設定温度については、ユーザから電子メールで申告されたものを自動的に設定温度DB14に登録するようにしてもよい。
【0026】
在室者特定部15は、通信I/F部11および通信回線Lを介して入退室管理システム20から在室状況を取得する機能と、この在室状況に基づき対象区画40に在室しているユーザを在室者として特定する機能とを有している。
図4は、在室状況の構成例である。ここでは、ユーザIDごとに、当該ユーザが在室している区画の区画IDが関連付けられている。
【0027】
在室状況は、対象区画40におけるユーザの出入りが発生した時点で、入退室管理システム20により更新される。このため、在室者特定部15から定期的に在室状況を入退室管理システム20から取得してもよいが、更新に応じて入退室管理システム20から空調設定温度算出装置10へ通知し、これを在室者特定部15が取得するようにしてもよい。
【0028】
設定温度算出部16は、在室者特定部15で在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を設定温度DB14から取得する機能と、取得したこれらユーザのユーザ別好み設定温度を統計処理することにより対象区画40に関する新たな設定温度を算出する機能と、対象区画40に関する区画別判定基準を設定温度DB14から取得する機能と、この区画別判定基準に基づき算出した新たな設定温度に関する、空調システム30への通知可否を判定する機能とを有している。
【0029】
設定温度通知部17は、設定温度算出部16により通知可と判定された新たな設定温度を、通信I/F部11および通信回線Lを介して空調システム30へ通知する機能とを有している。
【0030】
[本実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる空調設定温度算出装置10の動作について説明する。図5は、空調設定温度算出処理を示すフローチャートである。
空調設定温度算出装置10は、予め設定されている対象区画40ごとに、定期的あるいは在室状況の変化に応じて、図5の空調設定温度算出処理を実行する。なお、空調設定温度算出処理の実行にあたり、設定温度DB14には、ユーザ別好み設定温度と区画別判定基準が予め登録されているものとする。
【0031】
まず、在室者特定部15は、通信I/F部11および通信回線Lを介して入退室管理システム20から在室状況を取得し(ステップ100)、この在室状況に基づき対象区画40に在室するユーザを在室者として特定する(ステップ101)。
【0032】
次に、設定温度算出部16は、在室者特定部15で在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を設定温度DB14から取得し(ステップ102)、取得したこれらユーザのユーザ別好み設定温度を統計処理することにより対象区画40に関する新たな設定温度を算出する(ステップ103)。この際、ユーザ別好み設定温度に対する統計処理については、平均値や最頻値など、これらユーザ別好み設定温度を代表する代表値を算出する処理を用いればよい。
【0033】
続いて、設定温度算出部16は、対象区画40に関する区画別判定基準を設定温度DB14から取得し(ステップ104)、この区画別判定基準に基づいて、算出した新たな設定温度の空調システム30への通知可否を判定する。
【0034】
まず、区画別判定基準に含まれる最低在室人数と在室者特定部15で在室者として特定されたユーザによる在室人数とを比較する(ステップ105)。
ここで、在室人数が最低在室人数を下回る場合(ステップ105:NO)、通知不可と判定し、一連の空調設定温度算出処理を終了する。これにより、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を自動的に中止することができ、対象区画40で発生しうる空調環境の乱れを前もって回避することができる。
【0035】
一方、在室人数が最低在室人数以上である場合(ステップ105:YES)、設定温度算出部16は、区画別判定基準に含まれる上下限温および下限温度と算出した新たな設定温度とを比較する(ステップ106)。この際、ステップ106では、冷房時と暖房時とがそれぞれ個別に比較される。
ここで、新たな設定温度が上下限温および下限温度の範囲外である場合(ステップ106:NO)、通知不可と判定し、一連の空調設定温度算出処理を終了する。これにより、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を自動的に中止することができ、対象区画40で発生しうる空調環境の乱れを前もって回避することができる。
【0036】
一方、新たな設定温度が上下限温および下限温度の範囲内である場合(ステップ106:YES)、設定温度算出部16は、新たな設定温度を設定温度通知部17に出力することにより、通信I/F部11および通信回線Lを介して空調システム30へ通知し(ステップ107)、一連の空調設定温度算出処理を終了する。
【0037】
図6は、空調設定温度の算出例である。ここでは、区画ID「0001」の対象区画40における在室人数が12人であり、冷房時設定温度が22℃、暖房時設定温度が25℃と算出されている。ここで、図3の区画ID「0001」に関する区画別判定基準において、最低在室人数が5人であり、冷房時の上下限温および下限温度がそれぞれ29℃と23℃であり、暖房時の上下限温および下限温度がそれぞれ25℃と20℃である。
【0038】
したがって、この例では、在室人数および暖房時設定温度は基準を満たしているものの、冷房時設定温度は基準を満たしていないと判定される。このため、空調システム30で暖房運転している場合、暖房時設定温度は空調システム30に通知され、冷房時運転している場合、冷房時設定温度は空調システム30に通知されないことになる。
【0039】
なお、図5の空調設定温度算出処理では、必要に応じて処理手順を入れ替えてもよい。例えば、図5の例では、ステップ103で新たな設定温度を算出した後、在室人数と最低在室人数とを比較しているが、この比較には新たな設定温度を用いないため、ステップ101以降でステップ103よりも前に、ステップ104の判定基準の取得を行った後、上記比較を行うようにしもよい。これにより、在室人数が最低在室人数に満たない場合には、ステップ102の好み設定温度の取得処理やステップ103における新たな設定温度の算出処理を省くことができる。
【0040】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、設定温度DB14が、対象区画40を利用するユーザごとに、空調設定温度に関する当該ユーザの好み設定温度をユーザ別好み設定温度として記憶し、在室者特定部15が、入退室管理システム20から取得した在室状況に基づいて、対象区画40に在室しているユーザを在室者として特定し、設定温度算出部16が、在室者として特定されたユーザに関するユーザ別好み設定温度を設定温度DB14から取得して、これらユーザ別好み設定温度を統計処理することにより対象区画40に関する新たな設定温度を算出し、空調システム30へ通知するようにしたものである。
【0041】
これにより、対象区画40に在室している各ユーザが、前もって登録しておいた好み設定温度に基づいて、対象区画40に関する新たな設定温度が算出される。したがって、在室者の性別・年代別に応じた補正計数で部屋の設定温度を補正する場合と比較して、空調設定温度を算出する際、それぞれの在室者が持つ、空調制御に対する個人的な好みを十分反映させた空調設定温度を算出することができる。このため、在室者の好みに応じた、より快適な空調環境を提供することが可能となる。
【0042】
また、新たな設定温度の算出にあたり、各ユーザが申告した好み設定温度を設定温度DB14に登録しておくだけでよく、他のユーザとの関係を踏まえてユーザの特徴ごとに補正計数や重みを予め設定しておく必要がないため、設定温度算出に要する準備作業負担を大幅に削減することができる。
【0043】
また、本実施の形態において、設定温度算出部16が、在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合、空調システム30に対する新たな設定温度の通知、または新たな設定温度の算出を中止するようにしてもよい。これにより、在室人数が少なくて算出される新たな設定温度に関する信頼性が低い場合には、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を自動的に中止することができ、対象区画40で発生しうる空調環境の乱れを前もって回避することができる。
【0044】
また、本実施の形態において、設定温度算出部16が、算出した新たな設定温度が予め設定されている設定温度範囲内に含まれない場合、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を中止するようにしてもよい。これにより、算出した新たな設定温度が設定温度範囲外となり新たな設定温度に関する信頼性が低い場合には、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を自動的に中止することができ、対象区画40で発生しうる空調環境の乱れを前もって回避することができる。
【0045】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【0046】
例えば、在室者の在室人数が予め設定されている最低在室人数に満たない場合や、算出した新たな設定温度が予め設定されている設定温度範囲内に含まれない場合、空調システム30に対する新たな設定温度の通知を中止するのではなく、予め設定温度DB14に設定しておいた、対象区画40の基準設定温度を空調システム30に通知するようにしてもよい。
【0047】
また、以上では、対象区画40が全域にわたり共通して空調制御させる場合を例として説明したが、対象区画40内の個別の領域を、別個の空調機により空調制御可能な場合には、ユーザごとに対象区画40内で通常在席している領域、例えばユーザのデスクが存在する領域を、ホームポジションとして設定温度DB14に予め登録しておき、設定温度算出部16が、これら領域ごとに、当該領域をホームポジションとする各ユーザのユーザ別好み設定温度に基づき、当該領域に関する新たな設定温度をそれぞれ算出して、空調システム30に通知するようにしてもよい。
【0048】
また、以上では、対象区画40の設定温度を算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、ユーザの好みの設定風量や好みの設定換気量についても、前述した好みの設定温度と同様にして、新たな設定風量や新たな設定換気量を算出することもできる。
【0049】
なお、以上では、空調設定温度算出装置10が、入退室管理システム20や空調システム30から独立した装置により実現される場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、入退室管理システム20や空調システム30に、空調設定温度算出装置10の各機能部を実装してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…空調設定温度算出装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…設定温度DB、15…在室者特定部、16…設定温度算出部、17…設定温度通知部、20…入退室管理システム、30…空調システム、40…対象区画、L…通信回線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6