特許第6374890号(P6374890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374890車両用ドライブトレインおよびパワー変更の実行方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374890
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両用ドライブトレインおよびパワー変更の実行方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/089 20060101AFI20180806BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20180806BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20180806BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16H3/089
   F16D48/02 640P
   B60K1/00
   F16H61/02
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-561993(P2015-561993)
(86)(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公表番号】特表2016-516161(P2016-516161A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014052684
(87)【国際公開番号】WO2014139744
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】102013204227.2
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス カルテンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ライッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ケール
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル プロイス
(72)【発明者】
【氏名】カイ ボーントレーガー
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−526999(JP,A)
【文献】 特開2009−275760(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02060828(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02098742(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/089
B60K 1/00
F16D 48/02
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドライブトレインであって、少なくとも1つの電気駆動ユニット(EM)を備え、該電気駆動ユニット(EM)は入力軸を介して、少なくとも1つの第1変速比段(i1)および第2変速比段(i2)と連結可能であり、該変速比段(i1、i2)を切り替える、少なくとも1つのシフトユニットを備えるドライブトレインにおいて、前記シフトユニットは、パワーシフトを実行するために、少なくとも1つの形状接合型シフト要素(5)および少なくとも1つの摩擦接合型シフト要素(6、6A)を備え、各前記変速比段(i1、i2)は前記形状接合型シフト要素(5)により切り替え可能であり、前記変速比段のうちの少なくとも1つの変速比段(i2)は、前記形状接合型シフト要素(5)および前記摩擦接合型シフト要素(6)の両方により切り替え可能であり、
前記変速比段(i1、i2)が、遊星歯車機構により実現されており、
前記遊星歯車機構(11)の太陽歯車(12)が前記入力軸(2)と結合され、前記遊星歯車機構(11)の遊星歯車キャリア(13)が出力段(14)と結合されているドライブトレインにおいて、前記遊星歯車キャリア(13)は、前記摩擦接合型シフト要素(6)を介して前記入力軸(2)と結合可能であり、前記遊星歯車機構(11)の内歯車(15)は、前記形状接合型シフト要素(5)を介して前記入力軸(2)またはハウジング(16)と結合可能であることを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
前記形状接合型シフト要素(5)および前記摩擦接合型シフト要素(6)を介して、前記遊星歯車機構(11)において1つのブロックとしての回転に切り替え可能であることを特徴とする、請求項に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記電気駆動ユニットと前記入力軸(2)の間に、前置変速比段(1)が配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記電気駆動ユニットは、電気機械(EM)として構成されていることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
摩擦接合型シフト要素(6)として、解放状態に保たれている多板クラッチを備えていることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
形状接合型シフト要素(5)として、噛み合いクラッチを備えていることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載のドライブトレインにおける摩擦結合型シフト要素(6、6A)と形状接合型シフト要素(5)の間の、パワー変更の実行方法であって、締結された前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)から解放された前記形状接合型シフト要素(5)へのパワー変更の際に、噛み合いの動きを経路センサにより監視することを特徴とする方法。
【請求項8】
検出された噛み合いの動きから、完全な噛み合いと認識した場合に、前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)を解放することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
検出された噛み合いの動きから、前記形状接合型シフト要素(5)が歯対歯位置にあると認識した場合、前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)を、回転数差を発生させるべく、徐々に解放することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
回転数差を発生させた後、前記形状接合型シフト要素(5)を新たに締結し、噛み合いの動きが完全に実行されたら、続いて前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)を解放することを特徴する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
歯対歯位置を解消するための緊急措置として、パワーの変換を、完全にかみ合わせるために実行することを特徴とする、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項に記載の方法であって、検出された噛み合いの動きから、前記形状接合型シフト要素(5)が部分的に噛み合っていると認識した場合に、前記形状接合型シフト要素(5)を再び解放し、続いて前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)を、スリップ状態を発生させるべく部分的に解放し、その後再び締結し、これにより、歯対歯位置を解消するために前記形状接合型シフト要素(5)を再配向することを特徴とする方法。
【請求項13】
求項1〜12の何れか一項に記載のドライブトレインにおける摩擦結合型シフト要素(6、6A)と形状接合型シフト要素(5)の間の、パワー変更の実行方法であって、パワー変更を、車両データおよび/または地形状況データの評価に基づいて実行することを特徴とする方法。
【請求項14】
求項1〜13の何れか一項に記載のドライブトレインにおける摩擦結合型シフト要素(6、6A)と形状接合型シフト要素(5)の間の、パワー変更の実行方法であって、前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)をギヤ変更後、パワーが低減されるまで、または引張荷重からせん断荷重へパワーを変更するまで締結状態に保ち、その後、前記摩擦接合型シフト要素(6、6A)と前記形状接合型シフト要素(5)の間で、負荷無くパワーを変更することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳説された種類の、車両用のドライブトレインに関する。さらに本発明は、特に本発明によるドライブトレインにおける摩擦接合型シフト要素と形状接合型シフト要素の間の、パワー変更の実行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化されたシフト型変速機を備えたドライブトレインが既知であり、このシフト型変速機では形状接合型シフト要素が使用されている。しかし、このシフト要素によっては、駆動力を中断した状態でのみシフト切り替えが可能である。さらに、例えばデュアルクラッチ変速機および自動変速機のようなパワーシフトトランスミッションを備えたドライブトレインも既知であり、こうした変速機では、駆動力を保った状態でシフト切り替えを実行するために、摩擦型シフト要素が使用されている。
【0003】
ドイツ特許出願公開第19917724A1号公報は、自動車用のドライブトレインを開示する。ドライブトレインは、電気モータおよび二速変速機を備え、1本のシャフトに回転可能に支承された2つの遊び歯車を備える。これらの遊び歯車は、割り当てられた2つの多板クラッチで切り替え可能であり、車両を駆動するために、トルクを中間軸差動ユニットに伝達する。
【0004】
パワーシフトトランスミッションにおける摩擦接合型シフト要素は、安全上の理由から、解放状態に保たれるか、または解放が通常構成の多板クラッチである。つまり、ばね力により解放された構成であり、アクチュエータの動作不能時に、同時に2つのギヤが入り、変速機がブロックされることを防ぐ。換言すると、この種のシフト要素は、切り替えられた状態において、アクチュエータにより継続的に繋がれていなければならない。クラッチが回転するため、例えばアキシャル軸受を介した回転の伝達、または油圧的に回転を実行することが必要である。しかしこの種の回転の伝達は損失を引き起こし、特に電気駆動において効率性の損失が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19917724A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、パワーシフトを確実、かつ可及的に高い効率のもとで実行可能である、上述の種類のドライブトレインおよび方法を提案することである.
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明に従い、請求項1または13に記載の特徴により解決され、従属請求項、明細書、および図面により、有利な実施形態が明らかとなる。
【0008】
車両用、特に自動車用ドライブトレインであって、少なくとも1つの電気駆動ユニットを備え、この電気駆動ユニットは入力軸を介して、少なくとも1つの第1変速比段および第2変速比段と連結可能である。これらの変速比段に対して、変速比段を切り替える少なくとも1つのシフトユニットが割り当てられる。本発明により、シフトユニットとして、形状接合型シフト要素および少なくとも1つの摩擦接合型シフト要素が備わる。パワーシフトを実行するために、本発明が提案するドライブトレインにおいて、各変速比段は形状接合型シフト要素により切り替え可能であり、変速比段のうちの少なくとも1つの変速比段は、形状接合型シフト要素および摩擦接合型シフト要素の両方により切り替え可能である。
【0009】
従って本発明が提案するドライブトレインにおいては、形状接合型シフト要素および摩擦接合型シフト要素を備えた、準二重構造のシフトユニットを使用する。その際、摩擦接合型シフト要素の助けによるパワーシフトを実行し、切り替えの完了後に、形状接合型シフト要素が、効率性を最適化したトルク伝達を受容可能である。
【0010】
ドライブトレインは、二速変速機用に限定されない。更なる歯車面または更なるシフト要素を備えた遊星歯車を備えることも、もちろん可能である。例えば、駆動ユニットと入力軸の間に、前置変速比段またはそれに類するものを備え、これにより、入力軸における回転数レベルを低減可能である。
【0011】
本発明によるドライブトレインにおける変速比段は、平歯車段、遊星歯車機構またはそれに類するものとして構成可能である。形状接合型シフト要素として、好適には噛み合いクラッチを装備可能である。噛み合いクラッチは、好適には二重噛み合いクラッチとして構成され、ニュートラル位置に加えて、2つの更なるシフト位置を実現する。単純に作用するシフト要素を使用することも考慮可能である。
【0012】
摩擦接合型シフト要素として、好適には多板クラッチを使用可能である。多板クラッチは、作動していない初期位置において、例えば、ばね力により解放状態に保たれる。しかし、他の多板クラッチも使用可能である。
【0013】
本発明は更に、特に本発明によるドライブトレインにおける摩擦接合型シフト要素と形状接合型シフト要素の間の、パワー変更の実行方法に関する。
【0014】
締結された摩擦接合型シフト要素から解放された形状接合型シフト要素へのパワー変更の際に、噛み合いの動きを経路センサで監視する。
【0015】
例えば、検出された噛み合いの動きから、完全な噛み合いと認識した場合に、摩擦接合型シフト要素を解放可能である。例えば、検出された噛み合いの動きから、形状接合型シフト要素が歯対歯位置にあると認識した場合、摩擦接合型シフト要素を、回転数差を発生させるべく、徐々に解放可能である。回転数差を発生させた後、形状接合型シフト要素を新たに締結し、噛み合いの動きが完全に実行されたら、続いて摩擦接合型シフト要素を解放する。歯対歯位置を解消するための緊急措置として、完全な噛み合いのためのパワーの返還を実行可能である。
【0016】
検出された噛み合いの動きから、形状接合型シフト要素が部分的に噛み合っていると認識した場合に、形状接合型シフト要素を再び解放し、続いて摩擦接合型シフト要素を、スリップ状態を発生させるべく部分的に解放し、その後再び締結可能である。これにより、歯対歯位置を解消するために形状接合型シフト要素を再配向する。
【0017】
本発明による代替的方法において、摩擦接合型シフト要素または摩擦クラッチを、アクチュエータの動作不能時も含めて、第2変速段に締結した状態に留めるか、または摩擦接合型シフト要素から形状接合型シフト要素へ変更すべきか、ストラテジーに照らして決定可能である。
【0018】
方法における上述のストラテジーにおいて、パワー変更を、車両データおよび/または地形状況データの評価に基づいて実行可能である。
【0019】
更なる代替的方法において、ギヤ変更後、パワーが返還されるまで、または引張荷重からせん断荷重へパワーを変更するまで、摩擦接合型シフト要素を締結状態に保ち、その後、摩擦接合型シフト要素と形状接合型シフト要素の間で、負荷無くパワーを変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、図面を参考にして本発明を更に詳述する。
図1】入力軸側に切り替え可能な平歯車段を変速比段として備えた、本発明によるドライブトレインの第1実施形態の概略図である。
図2】中間軸側に切り替え可能な平歯車段を変速比段として備えた、本発明によるドライブトレインの第2実施形態の概略図である。
図3】遊星歯車機構として構成された変速比段を備えた、本発明によるドライブトレインの第3実施形態の概略図である。
図4】変速比段に割り当てられた、2つの摩擦接合型シフト要素を備えた、本発明によるドライブトレインの第4実施形態の概略図である。
図5】本発明による異なる方法の過程を示す、異なる状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図4は、車両、特に自動車用の本発明によるドライブトレインの、異なる実施形態を示す。ドライブトレインは、電気駆動ユニットとして、直接または前置変速比段1を介して入力軸2を駆動する電気機械EMを備える。さらに、少なくとも2つの変速比段i1およびi2を備え、これら変速比段は、中間軸3を介して車両の出力部差動ユニットと結合され、車両の駆動輪を駆動する。シフトユニットは変速比段i1、i2に割り当てられる。シフトユニットはパワーシフトを実行するために、形状接合型シフト要素5および摩擦接合型シフト要素6の両方を備える。
【0022】
図1は本発明によるドライブトレインの第1実施形態を示し、変速比段i1およびi2が平歯車段として構成されている。第1変速比段i1の遊び歯車7および第2変速比段i2の遊び歯車8は入力軸2に割り当てられ、形状接合型シフト要素5を介して入力軸2と結合可能である。
【0023】
形状接合型シフト要素5がシフト位置Aにある場合には遊び歯車7が、およびシフト位置Bにある場合には遊び歯車8が、入力軸2と結合される。第1変速比段i1の固定歯車9および第2変速比段i2の固定歯車10は、中間軸3を介して出力部差動ユニット4と結合され、車両の駆動輪を駆動する。摩擦接合型シフト要素6を介しては、第2変速比段i2の遊び歯車8が同様に入力軸2と結合され、パワーシフトを可能にする。
【0024】
図2はドライブトレインの第2実施形態を示し、図1による第1実施形態と異なり、両変速比段i1およびi2の遊び歯車7、8が中間軸3に割り当てられ、これら遊び歯車7、8は、同様に中間軸3に割り当てられたシフト要素5および6を介して切り替え可能である。この場合、変速比段段i1およびi2の平歯車の直径をより大きくすることが可能、という利点が生じる。
【0025】
両実施形態に関わらず、例えば変速比段i1から第2変速比段i2へのトラクションによるシフトアップは、摩擦接合型シフト要素6によりパワーを受容し、形状接合型シフト要素5を、そのシフト位置Aからニュートラル位置へと移動させ、シフト要素6が締結されるまで、摩擦接合型シフト要素6により回転数を調整、または回転数を同期化可能とすることにより実行可能である。摩擦接合型シフト要素6が締結された状態においては、形状接合型シフト要素5をシフト位置Bに移動可能で、摩擦接合型シフト要素6は徐々に解放可能であり、専ら形状接合型シフト要素5を介してトルク伝達を実現する。
【0026】
例えば、形状接合型シフト要素5における歯対歯位置を解消するためには、摩擦接合型シフト要素6を徐々に解放し、回転数が異なる場合の噛み合いを可能にする。特に、通常解放タイプの多板クラッチを摩擦接合型シフト要素6として使用する場合、こうした摩擦接合型シフト要素6を短時間のみ作動させ、それにより作動損失を僅かに抑える。
【0027】
図3は、ドライブトレインの第3実施形態を示し、変速比段i1、i2が、遊星歯車機構11により実現される。遊星歯車機構11の太陽歯車12は、入力軸2と結合されている。遊星歯車機構11の遊星歯車キャリア13は、出力段14と結合され、出力段14は中間軸3を介して出力部差動ユニット4と結合されている。遊星歯車キャリア13は更に、摩擦接合型シフト要素6を介して入力軸2と結合可能である。遊星歯車機構11の内歯車15は、シフト位置Bにおいて、形状接合型シフト要素5を介して入力軸2と結合可能であり、シフト位置Aにおいて、ハウジング16と結合可能である。
【0028】
従って、両変速比段i1、i2が遊星歯車機構11により実現される。この第3実施形態においても、第2変速段を、形状接合型シフト要素5および摩擦接合型シフト要素6の両方を介して切り替え可能である。この実施形態において、形状接合型シフト要素5および摩擦接合型シフト要素6により異なる軸が互いに結合されており、両軸が同一の変速段を介して作用するため、遊星歯車機構11において1つのブロックとしての回転が実現可能である。
【0029】
図4は、第4実施形態を示し、図1による第1実施形態と異なり、更なる摩擦接合型シフト要素6Aを備える。全ての切り替えを両摩擦接合型シフト要素6、6Aの助けにより実行可能であり、完全なパワーシフトの可能性が実現されるため、回復のためのプッシュ型シフトダウンもパワーシフト可能な状態で実行可能である。
【0030】
実施形態に関わらず、提案されたドライブトレインの構成により、モジュール構想が実現可能である。
【0031】
本発明によるドライブトレインにおける摩擦接合型シフト要素6、6Aと形状接合型シフト要素5の間の、パワー変更の実行方法を同様に提案する。
【0032】
この方法において、摩擦接合型シフト要素6を、アクチュエータの動作不能時も含めて、第2変速段に締結した状態に留めるか、または形状接合型シフト要素5へ変更すべきか、ストラテジーに照らして決定される。本発明による方法の過程は、図5に示す状態1乃至状態3により詳説される。形状接合型シフト要素5は、例示的に噛み合いクラッチとして構成されている。
【0033】
形状接合型シフト要素または噛み合いクラッチ5の初期状態とは、噛み合いクラッチが噛み合いの動き前にある状態を指す。状態1は、噛み合いクラッチが偶発的に間隙内に位置し、完全に噛み合っている場合を示す。状態2は、歯対歯位置が生じているため、噛み合いクラッチが噛み合い不可能である場合を示す。最後に状態3は、噛み合いの幾何学的配置のために、噛み合いクラッチが部分的に噛み合った状態を示す。この場合の爪は、例えば丸みを帯びた部分にかかり、留まった状態である。
【0034】
形状接合型シフト要素5が解放され、摩擦接合型シフト要素6、6Aが締結された初期状態から、例えば第2変速段に入れると、電気駆動ユニットEMがトルクを発生する。形状接合型シフト要素5を締結するために、形状接合型シフト要素5を対応して作動し、回転数差がゼロの状態において噛み合いの動きを開始する。状態1において、噛み合いは問題無く実現する。状態2においては、歯対歯位置が生じているため、噛み合いの動きが中断する。状態3では、噛み合いの幾何学的配置に起因して、噛み合いが部分的にのみ実現する。アクチュエータの経路センサにより、上述の状態1乃至状態3を区別可能である。
【0035】
状態1においては、摩擦接合型シフト要素6、6Aを解放可能である。状態2においては、摩擦接合型シフト要素6、6Aを徐々に解放し、回転数差を発生させる。回転数差または角度差の変更を開始すると、隣接する歯面まで十分な遊びがある限り、噛み合いクラッチにおいて負荷無く噛み合いが可能である。噛み合いクラッチを完全には噛み合わせるべきでない場合、ヘッジ機能として、完全な噛み合いのためのパワーを電気駆動ユニットEMに返還可能である。これは、極めて短時間の駆動力中断を含めたまれなケースにおける緊急措置である。状態3においては、アクチュエータを再び後退させ、噛み合いクラッチの爪がもはや触れない状態にする。続いて、摩擦クラッチまたは摩擦接合型シフト要素6、6Aを、運転手が感じないほど短時間で部分的に解放してスリップ状態とし、そして再び締結し、爪の半分を爪の回転角度に対して再配向する。その後、噛み合いを新たに試みる。
【0036】
例えば、上述のストラテジーにおいて以下を備えることが可能である。つまり、第2変速段から第1変速段へのシフトダウンが予想される場合、摩擦接合型シフト要素6を締結状態に留めることができる。そのために、例えば加速の際のバランスに起因する走行抵抗の計算、または地形状況データを追加的に評価するなど、車両データに関する評価を使用可能である。
【0037】
基本的に、例えば現段階で高い走行抵抗がある場合、または将来的に例えば坂道等の高い走行抵抗がある場合には、摩擦接合型シフト要素6を締結状態に留め、形状接合型シフト要素5に切り替えず、車両スピードの低下時のシフトダウンを可能にする。
【0038】
代替的方法において、摩擦接合型シフト要素6を、第1変速段から第2変速段へ切り替えた後、パワーが返還されるまで、または運転手が引張荷重からせん断荷重へパワーを変更するまで、締結状態に留めることが可能である。その後、摩擦接合型シフト要素6から形状接合型シフト要素5へと、運転手に知覚されずに、負荷無く変更可能である。形状接合型シフト要素5またはシフト爪は、問題を発生させず、負荷無く噛み合い可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 前置変速比段
2 入力軸
3 中間軸
4 出力部差動ユニット
5 形状接合型シフト要素または噛み合いクラッチ
6,6A 摩擦接合型シフト要素または摩擦クラッチ
7 第1変速比段の遊び歯車
8 第2変速比段の遊び歯車
9 第1変速比段の固定歯車
10 第2変速比段の固定歯車
11 遊星歯車機構
12 太陽歯車
13 遊星歯車キャリア
14 出力段
15 内歯車
16 ハウジング
i1 第1変速比段
i2 第2変速比段
EM 電気駆動
A シフト位置
B シフト位置
図1
図2
図3
図4
図5