(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切替え回路は、電力供給が可能な電源端子と、グランド線と接続可能なグランド端子と、通信線と接続可能な通信端子と、のいずれか1つと前記幹線の1つの共通端子との間を選択的に接続する1つまたは複数の選択スイッチデバイスと、少なくとも前記通信端子の接続状態を制御するプログラム可能な制御デバイスとを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用回路体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
まず、車両用回路体の基本的な構成について説明する。
本発明の実施形態における車両用回路体の主要な構成要素の各々の外観の概要を
図1(A)、
図1(B)、および
図1(C)に示す。また、これらの構成要素の集合体として構成した車両用回路体の外観を
図1(D)に示す。また、
図1(D)に示した車両用回路体と一般的な構成との違いの理解を容易にするために、一般的な方法を用いて構成したワイヤハーネスの外観の例を
図2に示す。
【0026】
なお、本発明の車両用回路体は、車両に搭載される一般的なワイヤハーネスの一部分または全体に相当する機能を実現するものであるが、形状や構造が一般的なワイヤハーネスとは大きく異なる。具体的には、構造を簡素化するために、形状が単純なバックボーン構造体を配索用に用いている。そして、このバックボーン構造体の幹線に分岐線を接続し、分岐線を介して様々な補機(電装品)を接続できるように構成している。
【0027】
本実施形態においては、例えば
図1(A)に示した第1ベース回路体210と、
図1(B)に示した第2ベース回路体220と、
図1(C)に示した追加部品回路体230とを主要な部品としてそれぞれ独立した状態で個別に製造した後、これらを組み合わせた集合体として
図1(D)に示した車両用回路体250を製造する。
【0028】
図1(A)に示した第1ベース回路体210は、車種の違いやオプション電装品の有無とは無関係に全ての車両に共通に搭載される電装品の基本的な回路接続(特に電源の配線)を実現するための部品であり、構成は全ての車両に共通である。また、
図1(B)に示した第2ベース回路体220は、例えば、寒冷地仕様の全ての車両に共通な基本的な回路接続(特に電源の配線)を実現するための部品であり、この構成も寒冷地仕様の全ての車両に共通である。
【0029】
一方、
図1(C)に示した追加部品回路体230は、これを搭載する車両の車種の違いや、各種オプション電装品の有無や種類に応じて構成が変化する可能性のある回路接続(電源、通信、その他の配線)を実現するための部品である。
【0030】
図1(A)に示した第1ベース回路体(標準回路体)210と、
図1(B)に示した第2ベース回路体220(準標準回路体)と、
図1(C)に示した追加部品回路体(オプション回路体)230とを組み合わせることにより、
図1(D)に示した車両用回路体250が製造される。なお、寒冷地仕様でない車両の場合には、第2ベース回路体220は車両用回路体250の構成から除外される。また、車両用回路体250に含まれる追加部品回路体230の構成は、これを搭載する車両の車種の違いや、各種オプション電装品の有無や種類に応じて変化する。
【0031】
一方、
図2に示した車両用回路体260は、
図1(D)に示した車両用回路体250と同様の回路接続を実現できるように多数の電線の集合体として構成してある。しかし、
図1(D)と
図2との対比により明らかなように、車両用回路体250の構成は、車両用回路体260と比べて非常にシンプルになっている。すなわち、車両用回路体260は多数の分岐箇所を有しているが、車両用回路体250は分岐箇所が少ないため、製造が容易になる。また、車両用回路体260の場合には、これを搭載する車両の車種の違いや、各種オプション電装品の有無や種類に応じて全体の構成が変化するため、製品および部品の種類や品番数が多くなる。これに対し、車両用回路体250は、追加部品回路体230の構成のみが変化する。また、以下に説明するように、追加部品回路体230は構成がシンプルであり、共通の部品を使用することもできるため、製造コストを低減できる。
【0032】
図1(A)に示した第1ベース回路体210は、電線211、212、および213と、端子部214、215、216、および217とを有している。各端子部214、215、216、および217は、それぞれ車両上の所定の電装品と接続される。また、
図1(B)に示した第2ベース回路体220は、電線221と、端子部222および223とを有している。端子部222および223は、それぞれ車両上の所定の電装品と接続される。
【0033】
一方、
図1(C)に示した追加部品回路体230は、バックボーン構造体231と、これの各部に接続した分岐線232、233、234、および235とで構成されている。分岐線232、233、234、および235の各々の端部には電装品と接続するための端子部(コネクタ等)236、237、238、および239が備わっている。バックボーン構造体231は様々な分岐線を接続可能な幹線を備えており、この幹線上の所望の箇所に各分岐線が必要に応じて接続される。
【0034】
車両用回路体250を搭載する車両の車種の変化や、各種オプション電装品の有無や種類の違いに応じて、バックボーン構造体231に接続する各分岐線の数や種類が変更される。バックボーン構造体231は共通の部品として全ての車両に使用される。各分岐線232、233、234、および235はバックボーン構造体231に対してコネクタ等で着脱自在に構成される。
【0035】
したがって、様々な種類の分岐線をバックボーン構造体231と組み合わせるだけで、様々や車種や様々なオプション電装品に対応可能な車両用回路体250を簡単に製造することができる。第1ベース回路体210、第2ベース回路体220、およびバックボーン構造体231は全ての車両に共通に使用されるので、車両用回路体250を構成する部品の多くを共通化でき、部品の種類や品番を削減できる。
【0036】
次に、車両用回路体を構成する追加部品回路体230の構成例を説明する。
図1(C)に示した追加部品回路体230を車体上に配索した状態における各部のレイアウトおよび接続状態の概要を
図3に示す。また、
図3に示した追加部品回路体230を含むシステムの主要部の構成例を
図4に示す。
【0037】
図3および
図4に示した車両用回路体を含むシステムは、基本的な構成要素として、スマート電源ボックス10、インパネ部配索用バックボーン構造体20、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、およびフロア部配索用バックボーン構造体40を備えている。
【0038】
次に、インパネ部配索用バックボーン構造体20について説明する。
インパネ部配索用バックボーン構造体20は、車両のインストルメントパネル(略してインパネ)に沿うように左右方向に向けて配索される構造体であり、
図4に示すように複数の配索用導電性部材20a、20b、20c、20d、および20eを備えている。これらの配索用導電性部材20a、20b、20c、20d、および20eは、例えば電線、あるいは導電性の良好な金属材料により構成されるバスバーなどの部品であり、これらは構造体として一体化されている。
【0039】
図4に示した例では、配索用導電性部材20aは+5[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材20bは+12[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材20cはグランド(すなわちアース)と接続するためのグランド線、配索用導電性部材20dおよび20eは通信のためのデジタル信号や、様々なアナログ信号を伝送するために利用される信号線である。なお、各バックボーン構造体のグランド線については省略することもできる。例えば、車体が金属の場合には、近傍の車体と接続することにより車体アースを利用することができる。
【0040】
次に、エンコパ部配索用バックボーン構造体30について説明する。
エンコパ部配索用バックボーン構造体30は、車両のエンジンコンパートメント(略してエンコパ)、すなわちエンジンルーム内に配索される構造体であり、複数の配索用導電性部材30a、30b、30c、30d、および30eを備えている。これらの配索用導電性部材30a、30b、30c、30d、および30eは、例えば電線、あるいは導電性の良好な金属材料により構成されるバスバーなどの部品であり、これらは構造体として一体化されている。
【0041】
実際には、電源線およびグランド線には大きな電流を流す必要があるので、配索用導電性部材30a、30b、および30cは断面積が十分大きいバスバーで構成してある。また、扁平な板状のバスバーを用いることにより、厚み方向の折り曲げが容易になり、所定の配索経路に沿う形状に加工することが容易になる。また、2本の通信線は2本の電線をより合わせたツイストペア線で構成することにより外部ノイズの影響を低減できる。
【0042】
図4に示した例では、配索用導電性部材30aは+12[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材30bはグランドと接続するためのグランド線、配索用導電性部材30cは+48[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材30dおよび30eは通信線である。エンコパ部配索用バックボーン構造体30の配索用導電性部材30aおよび30bは、端部が
図4に示すようにオルタネータ(発電機)61およびスタータ62と接続されている。
【0043】
次に、フロア部配索用バックボーン構造体40について説明する。
フロア部配索用バックボーン構造体40は、車両の車室内のフロア部分に沿って、
図3に示すように前後方向にリア側まで配索される構造体であり、複数の配索用導電性部材40a、40b、40c、40d、および40eを備えている。これらの配索用導電性部材40a、40b、40c、40d、および40eは、例えば電線、あるいは導電性の良好な金属材料により構成されるバスバーなどの部品であり、これらは構造体として一体化されている。
【0044】
実際には、電源線およびグランド線には大きな電流を流す必要があるので、配索用導電性部材40a、40b、および40cは断面積が十分大きいバスバーで構成してある。また、扁平な板状のバスバーを用いることにより、厚み方向の折り曲げが容易になり、所定の配索経路に沿う形状に加工することが容易になる。また、2本の通信線は2本の電線をより合わせたツイストペア線で構成することにより外部ノイズの影響を低減できる。
【0045】
図4に示した例では、配索用導電性部材40aは+12[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材40bはグランドと接続するためのグランド線、配索用導電性部材40cは+48[V]の直流電源電力を通すための電源線、配索用導電性部材40dおよび40eは通信線である。
【0046】
フロア部配索用バックボーン構造体40の配索用導電性部材40aは、端部が第1バッテリー63の正極と接続され、配索用導電性部材40bの端部は第1バッテリー63および第2バッテリー64の負極と接続され、配索用導電性部材40cの端部は第2バッテリー64の正極と接続されている。
【0047】
第1バッテリー63および第2バッテリー64は車両リア部のトランク下方などの箇所に配置されている。第1バッテリー63は+12[V]の直流電力の充電および放電が可能な蓄電池であり、第2バッテリー64は+48[V]の直流電力の充電および放電が可能な蓄電池である。
【0048】
次に、スマート電源ボックス10について説明する。
図3および
図4に示すように、スマート電源ボックス10は、インパネ部配索用バックボーン構造体20、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、およびフロア部配索用バックボーン構造体40と接続されており、システム全体の制御を行うことができる。
【0049】
エンコパ部配索用バックボーン構造体30の配索用導電性部材30a、30b、30c、30d、および30eは、それぞれフロア部配索用バックボーン構造体40の配索用導電性部材40a、40b、40c、40d、および40eと接続されるように、スマート電源ボックス10の内部で接続されている。
【0050】
また、スマート電源ボックス10内部に備わっているDC/DCコンバータ14は、配索用導電性部材40aを介して供給される+12[V]の電力、または配索用導電性部材40cを介して供給される+48[V]の電力に基づいて、+5[V]および+12[V]の直流電力を生成し、インパネ部配索用バックボーン構造体20に供給することができる。
【0051】
スマート電源ボックス10には、それぞれ個別に着脱可能な複数の電子制御ユニット(ECU)11、12、および13が備わっている。例えば、車両の車種毎に、スマート電源ボックス10に装着する電子制御ユニットを差し替えることにより、機能の追加や変更を行うことができる。
【0052】
これらの電子制御ユニットの働きにより、スマート電源ボックス10は様々な制御を実施することができる。例えば、スマート電源ボックス10は、インパネ部配索用バックボーン構造体20、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、およびフロア部配索用バックボーン構造体40の配下の各位置に何が繋がっているのかを自動的に識別し、適切な制御を実施する。この制御には、接続位置の違いに対応した回路の切換、供給電力の切換、過電流制御、異常発生時の電力バックアップ制御、通信ゲートウェイ制御などが含まれる。また、車両上の機器同士の間で無線通信するための近距離無線通信機能もスマート電源ボックス10が備えている。
【0053】
次に、エリアドライバおよび補機について説明する。
図4に示したシステムにおいては、インパネ部配索用バックボーン構造体20の配下に様々な補機(電装品)を容易に接続できるように、エリアドライバ51、52等がインパネ部配索用バックボーン構造体20に接続してある。また、エンコパ部配索用バックボーン構造体30にはエリアドライバ53が接続してあり、フロア部配索用バックボーン構造体40にはエリアドライバ54が接続してある。
【0054】
例えば、エリアドライバ51は下流側接続部51aおよびスレーブ制御部51cを備えている。下流側接続部51aは、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格の複数のコネクタとして構成され、シリアル通信機能および電力供給機能を備えている。
【0055】
図1に示した例では、負荷71a、スイッチ71b、およびセンサ71cを含む補機71が、サブハーネス81を介してエリアドライバ51の下流側接続部51aと接続されている。サブハーネス81については、負荷71a、スイッチ71b、およびセンサ71cのそれぞれについて個別に用意することもできるし、これらを1つに纏めることも考えられる。
【0056】
スレーブ制御部51cは、上位の電子制御ユニット(ECU)からの指示を、スマート電源ボックス10およびインパネ部配索用バックボーン構造体20を経由して受信し、受信した内容に従って負荷71aを制御したり、スイッチ71bの状態を示す情報や、センサ71cの検出状態を示す情報を上位の電子制御ユニットに対して送信する機能を有している。また、スレーブ制御部51cは、補機71が必要とする電源電力の情報をスマート電源ボックス10に対して送信する機能も備えている。
【0057】
図4に示した例では、エリアドライバ52はバックアップ用バッテリー52bを内蔵している。このバックアップ用バッテリー52bは、システム内のいずれかの電力供給経路において何らかの不具合が発生し、電力供給が停止した箇所が生じた場合に、該当する箇所に対してバックアップ用の電源電力を供給するために備わっている。エリアドライバ52内のスレーブ制御部52cは、近距離無線通信機能を備えている。このスレーブ制御部52cは、近距離無線通信によるスマート電源ボックス10内の電子制御ユニットからの情報に基づいて、異常の発生を検知すると、バックアップ用バッテリー52bの電源電力をインパネ部配索用バックボーン構造体20の電源系統に出力する。
【0058】
したがって、例えばインパネ部配索用バックボーン構造体20上で断線が生じてエリアドライバ51に対する電力供給が停止したような場合には、エリアドライバ51配下の補機71に対して、バックアップ用バッテリー52bの電力を供給することができる。この場合は近距離無線通信を利用するので、インパネ部配索用バックボーン構造体20上で通信線が遮断された場合であってもバックアップ電力を供給することができる。
【0059】
エリアドライバ52上にバックアップ用バッテリー52bを内蔵することにより、補機毎に個別にバックアップ電源を装備しなくても、異常発生時の信頼性を確保できる。バックアップ電源をエリアドライバ52側に設置することにより、システム全体として、バックアップ電源の総数を減らすことができ、小型化、軽量化に役立つ。
【0060】
図4に示した例では、エンコパ部配索用バックボーン構造体30に接続したエリアドライバ53の内部にもバックアップ用バッテリー53bが備わっており、フロア部配索用バックボーン構造体40に接続したエリアドライバ54の内部にバックアップ用バッテリー54bが備わっている。したがって、断線等が発生した箇所に応じて、バックアップ用バッテリー52b、53b、および54bのいずれかを選択したり、これらを組み合わせて適切なバックアップ電力をシステム上の必要な箇所に供給することが可能である。
【0061】
図4に示した例では、負荷72a、スイッチ72b、およびセンサ72cを含む補機72が、サブハーネス82を介してエリアドライバ53の下流側接続部53aと接続されている。エリアドライバ53内のスレーブ制御部53cは、上位の電子制御ユニット(ECU)からの指示を、スマート電源ボックス10およびエンコパ部配索用バックボーン構造体30を経由して受信し、受信した内容に従って負荷72aを制御したり、スイッチ72bの状態を示す情報や、センサ72cの検出状態を示す情報を上位の電子制御ユニットに対して送信する機能を有している。また、スレーブ制御部53cは、補機72が必要とする電源電力の情報をスマート電源ボックス10に対して送信する機能も備えている。
【0062】
上記と同様に、負荷73a、スイッチ73b、およびセンサ73cを含む補機73が、サブハーネス83を介してエリアドライバ54の下流側接続部54aと接続されている。エリアドライバ54内のスレーブ制御部は、上位の電子制御ユニット(ECU)からの指示を、スマート電源ボックス10およびフロア部配索用バックボーン構造体40を経由して受信し、受信した内容に従って負荷73aを制御したり、スイッチ73bの状態を示す情報や、センサ73cの検出状態を示す情報を上位の電子制御ユニットに対して送信する機能を有している。また、このスレーブ制御部は、補機73が必要とする電源電力の情報をスマート電源ボックス10に対して送信する機能も備えている。
【0063】
次に、具体的なレイアウトおよび接続状態の例について説明する。
図4に示したシステムの一部分に関する車室内の具体的なレイアウトおよび接続状態を
図5に示す。また、
図5中のIII−III線から視た断面の構成例を
図6(A)に示し、
図6(A)と同じ箇所の変形例を
図6(B)に示す。
【0064】
図5に示した車両においては、運転席前方のインストルメントパネル(図示せず)の下方位置に左右方向に向けて、車体骨格の一部であるリンホース90が配置されている。このリンホース90に沿って、もしくはこれと一体構造になるように、
図4に示したインパネ部配索用バックボーン構造体20が設置されている。
【0065】
例えば、
図6(A)に示した構成例では、断面が円形状のリンホース90の上側の一部分を加工して平面を形成し、この平面に沿うように断面が薄板形状のインパネ部配索用バックボーン構造体20を固定してある。また、
図6(B)に示した構成例では、リンホース90Bを中空構造に形成し、このリンホース90Bの内側の空間に断面が薄板形状のインパネ部配索用バックボーン構造体20を収容し一体化してある。
【0066】
図4に示したシステムに含まれているスマート電源ボックス10は、
図5に示す例では運転席前方の右側に設置してある。そして、インパネ部配索用バックボーン構造体20の右端をスマート電源ボックス10と接続してある。また、スマート電源ボックス10の下端に、フロア部配索用バックボーン構造体40の先端を接続してある。
【0067】
図5に示すように、インパネ部配索用バックボーン構造体20、およびフロア部配索用バックボーン構造体40はいずれも薄板形状であり、単純な形状を有している。また、これらは設置する箇所の形状に合わせて部分的に折り曲げてある。薄板形状であるため厚み方向の折り曲げは比較的容易である。
【0068】
図5に示した構成においては、インパネ部配索用バックボーン構造体20上の中間部にに分岐・接続ボックス21、22、および23を設置してある。そして、1番目のエリアドライバ51を分岐・接続ボックス21を介してインパネ部配索用バックボーン構造体20と接続し、2番目のエリアドライバ52を分岐・接続ボックス22を介してインパネ部配索用バックボーン構造体20と接続し、3番目のエリアドライバ55を分岐・接続ボックス23を介してインパネ部配索用バックボーン構造体20と接続してある。
【0069】
各分岐・接続ボックス21、22、および23は、インパネ部配索用バックボーン構造体20上の配索用導電性部材20a、20b、20c、20d、および20eをそれぞれ分岐して各エリアドライバ51、52、55と接続するための分岐線21A、22A、および23Aを有している。
【0070】
図5に示した構成において、例えば、エリアドライバ52の下流側接続部52aには多数のサブハーネス81を接続してあるので、各サブハーネス81に様々な種類の補機を接続することができる。なお、サブハーネス81を使わずに補機を直接下流側接続部52aの各コネクタと接続しても良い。
【0071】
なお、インパネ部配索用バックボーン構造体20内の配索用導電性部材20a〜20eについては、
図6(A)のようにバックボーン構造体の幅方向に並べて配置しても良いし、厚み方向に積層しても良い。但し、配索用導電性部材20a〜20eが互いに電気的に絶縁されるように、樹脂などの電気絶縁材料を間に挟んで、あるいは外側を被覆する必要がある。エンコパ部配索用バックボーン構造体30およびフロア部配索用バックボーン構造体40についても同様である。
【0072】
エリアドライバ51、52、および55の各々は、有線および無線の通信モジュールと、USB規格の接続ポートと、スイッチやヒューズなどの機能を持たせた半導体(又はその複合体)を備えている。また、エリアドライバ51、52、および55の少なくとも1つは、
図4に示したバックアップ用バッテリー52bを搭載している。
【0073】
また、
図3に示したように、フロア部配索用バックボーン構造体40上にはそれぞれ異なる箇所に分岐・接続ボックス46(1)、46(2)、および46(3)が設置してある。そして、1番目の分岐・接続ボックス46(1)にはエリアドライバ48(1)を接続し、2番目の分岐・接続ボックス46(2)には2つのエリアドライバ48(2)、48(3)を並列に接続してあり、3番目の分岐・接続ボックス46(3)には2つのエリアドライバ48(4)、48(5)を並列に接続してある。したがって、フロアの近傍で様々な補機をエリアドライバ48(1)〜48(5)のいずれかを介してフロア部配索用バックボーン構造体40と接続することができる。
【0074】
また、
図3に示したように、エンコパ部配索用バックボーン構造体30上にはエリアドライバ53、65、66、および67を接続してある。したがって、エンジンルーム内の補機をエリアドライバ53、65、66、および67のいずれかを介してエンコパ部配索用バックボーン構造体30と接続することができる。
【0075】
次に、バックボーン構造体と各補機の接続形態の詳細について説明する。
バックボーン構造体と複数の補機の各々との間を接続するための構成例を
図7に示す。また、
図7に示した構成におけるより具体的な接続例を
図8(A)および
図8(B)にそれぞれ示す。
【0076】
図4に示したような構成のシステムにおいては、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、フロア部配索用バックボーン構造体40等の各部に様々な種類の多数の補機74(1)〜74(8)が
図7のように接続される。なお、
図7においては理解を容易にするためにエリアドライバの記載を省略してある。
【0077】
図7のような構成において、電源供給側は、過大な電流が流れた場合に該当する回路の電流を遮断できるようにヒューズを介して回路を接続することになる。ここで、補機74(1)〜74(8)の各々は、消費する電源電流がそれぞれ異なるので、接続する補機毎に適切な電流値のヒューズを個別に用意しないと、適切な遮断制御ができない。しかし、接続する補機毎に種類の異なるヒューズを使う場合には、接続する位置毎に構成や仕様が変わるため、構成が複雑になるのは避けられず、接続する位置も事前に限定せざるを得ない。
【0078】
次に、複数種類のヒューズを用意する場合の構成について説明する。
図7に示した構成においては、エンコパ部配索用バックボーン構造体30またはフロア部配索用バックボーン構造体40の電源ライン(配索用導電性部材40a)に設けたヒューズ用バスバー41上に多数の端子42が一定の間隔で並べて配置してある。
図7中の各端子42の表示太さの違いは、ヒューズ容量の違いを意味している。つまり、太い線で記載された端子42は遮断する電流値が大きく、細い線で記載された端子42B、42C、42Dは遮断する電流値が小さい。
【0079】
図7に示した構成において、補機74(1)および74(2)は消費する電流が最も大きいので、配線75(1)、75(2)および接続部43を介して、最も電流値の大きい左側の端子42とそれぞれ接続してある。また、補機74(3)および74(4)は消費する電流が2番目に大きいので、配線75(3)、75(4)および接続部43を介して、電流値が2番目に大きい端子42Bとそれぞれ接続してある。また、補機74(5)〜74(8)は消費する電流が最も小さいので、配線75(5)〜75(8)および接続部43を介して、電流値が最も小さい端子42Dとそれぞれ接続してある。
【0080】
次に、共通のヒューズを用いる場合の構成について説明する。
図8(A)に示した構成、および
図8(B)に示した構成においては、ヒューズ用バスバー41と接続された多数の端子42の全てが、標準化された一定の電流値(この例では5[A])のヒューズを介してそれぞれ接続されている。
【0081】
また、
図8(A)に示した構成においては、接続する4つの補機76(1)、76(2)、76(3)、および76(4)の過電流の値が、それぞれ5[A]、10[A]、15[A]、および20[A]である場合を想定している。
【0082】
この場合、1番目の補機76(1)は、5[A]の電源電流で遮断すれば良いので、
図8(A)に示すように補機76(1)の電源ラインを、配線75を介して多数の端子42のいずれか1つのみと接続する。
【0083】
一方、2番目の補機76(2)は、10[A]の電源電流で遮断する必要があるので、1つの端子42を使用するだけだと電流が不足する。そこで、
図8(A)に示すように補機76(2)の電源ラインと接続した配線75の先端の端子45を、多数の端子42のうち、互いに隣接する2つの端子と共通に接続する。この接続により、補機76(2)の電源ラインに10[A]の電流が流れるまではヒューズが遮断されることはない。
【0084】
また、3番目の補機76(3)は、15[A]の電源電流で遮断する必要があるので、
図8(A)に示すように補機76(3)の電源ラインと接続した配線75の先端の端子45を、多数の端子42のうち、互いに隣接する3つの端子と共通に接続する。この接続により、補機76(3)の電源ラインに15[A]の電流が流れるまではヒューズが遮断されることはない。
【0085】
同様に、4番目の補機76(4)は、20[A]の電源電流で遮断する必要があるので、
図8(A)に示すように補機76(4)の電源ラインと接続した配線75の先端の端子45を、多数の端子42のうち、互いに隣接する4つの端子と共通に接続する。この接続により、補機76(4)の電源ラインに20[A]の電流が流れるまではヒューズが遮断されることはない。
【0086】
なお、例えば10[A]の電源電流で遮断する必要のある補機76(2)の端子45を、多数の端子42のうち、互いに隣接する3つまたはそれ以上の数の端子と共通に接続しても良い。その場合には、切替回路44を用いて一部分の端子の通電を遮断しておくことにより、実際に通電する端子の数を2に制限し、10[A]の電源電流で遮断することができる。この場合、通電していない端子は故障時のバックアップなどの際に切り替えて利用することが考えられる。切替回路44についてはこの後で説明する。
【0087】
一方、
図8(B)に示した構成においては、一方の補機77(1)が、4つの独立した電源ライン77a、77b、77c、および77dを有し、他方の補機77(2)が4つの独立した電源ライン77e、77f、77g、および77hを有している。また、電源ライン77a、77b、77c、77d、77g、および77hは、いずれも過電流の値が5[A]であり、電源ライン77e、および77fはいずれも過電流の値が10[A]である。
【0088】
したがって、
図8(B)に示すように、補機77(1)の電源ライン77a、77b、77c、および77dは、それぞれ1つの端子42と接続してある。また、補機77(2)の電源ライン77e、および77fは、それぞれ2つの端子42と共通に接続し、残りの電源ライン77g、および77hは、それぞれ1つの端子42と接続してある。
【0089】
次に、各端子とコネクタとの位置関係の具体例を説明する。
ヒューズ用バスバーの各端子の配置状態およびこれと接続する配線のコネクタとの位置関係の例を
図9に示す。
【0090】
図8(A)、
図8(B)のように接続する場合には、多数の端子42の形状、寸法、遮断する電流値、その他の仕様を全て共通化することが可能である。したがって、例えばヒューズ用バスバー41等の部品の構成を標準化して様々な車種で共通の部品を使うことが可能になる。しかも、接続する端子の位置を自由に変更することが可能になる。
【0091】
例えば、
図9に示した各配線75のコネクタCN1〜CN5に含まれる各端子は、どの位置の端子42と接続しても同じ動作が可能なので、コネクタCN1〜CN5の各々をヒューズ用バスバー41と接続する際に、接続位置を必要に応じて自由に選択できる。そのため、部品の種類や品番を削減することができる。また、例えば新たな部品を後付けする際に、取り付ける位置を自由に選択できるので取り付けが容易になる。
【0092】
次に、切替回路44について説明する。
バックボーン構造体に備わった切替回路44の構成例を
図10に示す。この切替回路44は、インパネ部配索用バックボーン構造体20、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、およびフロア部配索用バックボーン構造体40の各々に搭載されている。そして、この切替回路44は、例えば
図7に示したヒューズ用バスバー41の各端子42、グランド線47(配索用導電性部材20c、30b、40bに相当)、および通信線等の信号線(配索用導電性部材40d、40e等に相当)と、各補機74の配線75との接続状態を切り替える機能を有している。
【0093】
図10に示した切替回路44は、2つの補機78(1)および補機78(2)の接続状態を切り替えるために必要な構成要素として、FPGA(field-programmable gate array)デバイス91、8つの選択スイッチデバイス92(1)、92(2)、92(3)、92(4)、94(1)、94(2)、94(3)、および94(4)を備えている。更に、電力供給制御を可能にするために、スイッチング用の8つのトランジスタ93(1)、93(2)、93(3)、93(4)、95(1)、95(2)、95(3)、および95(4)を備えている。
【0094】
図10に示した例では、理解を容易にするために、補機78(1)が4つの端子78a、〜78dを有し、補機78(2)が4つの端子78e〜78hを有する場合を想定している。すなわち、端子78aは電源電力入力用の正極、端子78bは電源電力入力用の負極(グランド)、端子78cおよび端子78dは通信用の信号を通すために使用する。また、端子78eは電源電力入力用の正極、端子78fは電源電力入力用の負極(グランド)、端子78gおよび端子78hは通信用の信号を通すために使用する。
【0095】
しかし、各補機78の実際の端子数は必要に応じて増減する可能性があるので、実際の端子数に合わせて切替回路44内部の構成要素の数を変更する必要がある。つまり、補機78の端子毎にそれぞれ独立した選択スイッチデバイス92およびトランジスタ93を接続することになる。
【0096】
あるいは、
図8(A)、
図8(B)と同様に、補機78の1つの端子にヒューズ用バスバー41の複数の端子42を共通に(並列に)接続するような場合には、端子42毎に個別に回路の切り替えができるように、端子42毎にそれぞれ独立したトランジスタ93、95を用意する場合もある。
【0097】
選択スイッチデバイス92(1)〜92(4)、および94(1)〜94(4)の各々は、それぞれ3つの切換端子と、これらのいずれかと接続される1つの共通端子とを有している。
【0098】
図10に示した構成においては、補機78(1)の4つの端子78a、78b、78c、および78dは、それぞれ1番目の選択スイッチデバイス92(1)の共通端子、2番目の選択スイッチデバイス92(2)の共通端子、3番目の選択スイッチデバイス92(3)の共通端子、および4番目の選択スイッチデバイス92(4)の共通端子と接続されている。
【0099】
また、1番目の選択スイッチデバイス92(1)の上側の切換端子は、1番目のトランジスタ93(1)のエミッタ端子と接続されている。同様に、2番目の選択スイッチデバイス92(2)の上側の切換端子、3番目の選択スイッチデバイス92(3)の上側の切換端子、および4番目の選択スイッチデバイス92(4)の上側の切換端子は、それぞれ2番目のトランジスタ93(2)のエミッタ端子、3番目のトランジスタ93(3)のエミッタ端子、4番目のトランジスタ93(4)のエミッタ端子と接続されている。
【0100】
また、1番目の選択スイッチデバイス92(1)の中央の切換端子は、FPGAデバイス91の入出力ポート91bと接続されている。同様に、2番目の選択スイッチデバイス92(2)の中央の切換端子、3番目の選択スイッチデバイス92(3)の中央の切換端子、および4番目の選択スイッチデバイス92(4)の中央の切換端子は、それぞれFPGAデバイス91の入出力ポート91d、91f、および91hと接続されている。
【0101】
また、選択スイッチデバイス92(1)の下側の切換端子、選択スイッチデバイス92(2)の下側の切換端子、選択スイッチデバイス92(3)の下側の切換端子、および選択スイッチデバイス92(4)の下側の切換端子は、それぞれ全て同じグランド線98と共通に接続され、接地されている。
【0102】
1番目のトランジスタ93(1)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91aと接続されている。2番目のトランジスタ93(2)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91cと接続されている。3番目のトランジスタ93(3)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91eと接続されている。4番目のトランジスタ93(4)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91gと接続されている。
【0103】
また、補機78(2)の4つの端子78e、78f、78g、および78hは、それぞれ1番目の選択スイッチデバイス94(1)の共通端子、2番目の選択スイッチデバイス94(2)の共通端子、3番目の選択スイッチデバイス94(3)の共通端子、および4番目の選択スイッチデバイス94(4)の共通端子と接続されている。
【0104】
また、1番目の選択スイッチデバイス94(1)の上側の切換端子は、1番目のトランジスタ95(1)のエミッタ端子と接続されている。同様に、2番目の選択スイッチデバイス94(2)の上側の切換端子、3番目の選択スイッチデバイス94(3)の上側の切換端子、および4番目の選択スイッチデバイス94(4)の上側の切換端子は、それぞれ2番目のトランジスタ95(2)のエミッタ端子、3番目のトランジスタ95(3)のエミッタ端子、4番目のトランジスタ95(4)のエミッタ端子と接続されている。
【0105】
また、1番目の選択スイッチデバイス94(1)の中央の切換端子は、FPGAデバイス91の入出力ポート91jと接続されている。同様に、2番目の選択スイッチデバイス94(2)の中央の切換端子、3番目の選択スイッチデバイス94(3)の中央の切換端子、および4番目の選択スイッチデバイス94(4)の中央の切換端子は、それぞれFPGAデバイス91の入出力ポート91l、91m、および91pと接続されている。
【0106】
また、選択スイッチデバイス94(1)の下側の切換端子、選択スイッチデバイス94(2)の下側の切換端子、選択スイッチデバイス94(3)の下側の切換端子、および選択スイッチデバイス94(4)の下側の切換端子は、それぞれ全て同じグランド線98と共通に接続され、接地されている。
【0107】
1番目のトランジスタ95(1)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91iと接続されている。2番目のトランジスタ93(2)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91kと接続されている。3番目のトランジスタ93(3)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91mと接続されている。4番目のトランジスタ93(4)は、コレクタ端子が電源線97と接続され、ベース端子がFPGAデバイス91の出力ポート91oと接続されている。
【0108】
次に、切替回路44の動作について説明する。
図10に示すように、1番目の選択スイッチデバイス92(1)が上側の切換端子を選択している場合には、端子78aを選択スイッチデバイス92(1)およびトランジスタ93(1)を介して電源線97と接続することが可能である。つまり、電源線97から端子78aに電源電力を供給できる。また、FPGAデバイス91の出力ポート91aの信号レベル(H/L)に応じてトランジスタ93(1)がオン/オフするので、電源電力の供給の有無をFPGAデバイス91が切り替えることもできる。
【0109】
また、補機78(1)の端子78aがもしも信号の入出力を行う場合には、1番目の選択スイッチデバイス92(1)が中央の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78aを選択スイッチデバイス92(1)を経由してFPGAデバイス91の入出力ポート91bと接続することができる。
【0110】
また、補機78(1)の端子78aがもしもグランド端子である場合には、1番目の選択スイッチデバイス92(1)が下側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78aを選択スイッチデバイス92(1)を経由してグランド線98と接続し、接地することができる。
【0111】
また、
図10に示すように、2番目の選択スイッチデバイス92(2)が下側の切換端子を選択している場合には、補機78(1)の端子78bが選択スイッチデバイス92(2)を経由してグランド線98と接続されるので、端子78bを接地することができる。
【0112】
また、補機78(1)の端子78bがもしも電源電力の入力端子である場合には、2番目の選択スイッチデバイス92(2)が上側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78bを選択スイッチデバイス92(2)およびトランジスタ93(2)を介して電源線97と接続することが可能である。つまり、電源線97から端子78bに電源電力を供給できる。また、FPGAデバイス91の出力ポート91cの信号レベル(H/L)に応じてトランジスタ93(2)がオン/オフするので、電源電力の供給の有無をFPGAデバイス91が切り替えることもできる。
【0113】
また、補機78(1)の端子78bがもしも信号の入出力を行う場合には、2番目の選択スイッチデバイス92(2)が中央の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78bを選択スイッチデバイス92(2)を経由してFPGAデバイス91の入出力ポート91dと接続することができる。
【0114】
また、
図10に示すように、3番目の選択スイッチデバイス92(3)が中央の切換端子を選択している場合には、補機78(1)の端子78cが選択スイッチデバイス92(3)を経由してFPGAデバイス91の入出力ポート91fと接続されるので、端子78cと入出力ポート91fとの間で信号伝送のための経路を確保できる。
【0115】
また、補機78(1)の端子78bがもしも電源電力の入力端子である場合には、3番目の選択スイッチデバイス92(3)が上側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78cを選択スイッチデバイス92(3)およびトランジスタ93(3)を介して電源線97と接続することが可能である。つまり、電源線97から端子78cに電源電力を供給できる。また、FPGAデバイス91の出力ポート91eの信号レベル(H/L)に応じてトランジスタ93(3)がオン/オフするので、電源電力の供給の有無をFPGAデバイス91が切り替えることもできる。
【0116】
また、補機78(1)の端子78bがもしもグランド端子である場合には、3番目の選択スイッチデバイス92(3)が下側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78cを選択スイッチデバイス92(3)を経由してグランド線98と接続し、接地することができる。
【0117】
また、
図10に示すように、4番目の選択スイッチデバイス92(3)が中央の切換端子を選択している場合には、補機78(1)の端子78dが選択スイッチデバイス92(4)を経由してFPGAデバイス91の入出力ポート91hと接続されるので、端子78cと入出力ポート91fとの間で信号伝送のための経路を確保できる。
【0118】
また、補機78(1)の端子78dがもしも電源電力の入力端子である場合には、4番目の選択スイッチデバイス92(4)が上側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78dを選択スイッチデバイス92(4)およびトランジスタ93(4)を介して電源線97と接続することが可能である。つまり、電源線97から端子78dに電源電力を供給できる。また、FPGAデバイス91の出力ポート91gの信号レベル(H/L)に応じてトランジスタ93(4)がオン/オフするので、電源電力の供給の有無をFPGAデバイス91が切り替えることもできる。
【0119】
また、補機78(1)の端子78dがもしもグランド端子である場合には、4番目の選択スイッチデバイス92(3)が下側の切換端子を選択するように切り替えることにより、端子78dを選択スイッチデバイス92(4)を経由してグランド線98と接続し、接地することができる。
【0120】
つまり、補機78(1)の端子78aが、電源端子、グランド端子、通信端子のいずれの場合であっても、選択スイッチデバイス92(1)の選択状態を切り替えることにより、端子の機能と整合する状態に回路の構成を切り替えることができる。同様に、補機78(1)の端子78b、78c、および78dのそれぞれについても、選択スイッチデバイス92(2)、92(3)、および92(4)の選択状態を切り替えることにより、端子の機能と整合する状態に回路の構成を切り替えることができる。
【0121】
もう一方の補機78(2)の各端子78e、78f、78g、および78hの接続状態を切り替える選択スイッチデバイス94(1)、94(2)、94(3)、および94(4)の動作は、上述の選択スイッチデバイス92(1)〜92(4)と同様である。つまり、補機78(2)の各端子78e、78f、78g、および78hの接続状態についても、選択スイッチデバイス94(1)、94(2)、94(3)、および94(4)の選択状態を切り替えることにより、各端子の機能と整合する状態に回路の構成を切り替えることができる。
【0122】
FPGAデバイス91の内部構成はプログラマブルであり、必要に応じて自由に変更できるので、通信のために必要な経路を確保することもできる。例えば、
図10に示すように、補機78(1)の端子78cおよび78dが通信端子であり、補機78(2)の端子78gおよび78hが通信端子である場合に、入出力ポート91fと入出力ポート91mとの間をFPGAデバイス91の内部で接続し、入出力ポート91hと入出力ポート91pとの間をFPGAデバイス91の内部で接続すれば、補機78(1)の端子78cと、補機78(2)の端子78gとの間が接続され、更に、補機78(1)の端子78dと、補機78(2)の端子78hとの間が接続されるので、2つの補機78(1)、78(2)の間の通信経路を確保できる。
【0123】
このような制御については、例えば、選択スイッチデバイス92(1)〜92(4)、および94(1)〜94(4)がリレーのように外部から制御可能なスイッチで構成されている場合には、スマート電源ボックス10内の各電子制御ユニット11〜13の指示により、インパネ部配索用バックボーン構造体20、エンコパ部配索用バックボーン構造体30、またはフロア部配索用バックボーン構造体40上の各切替回路44のFPGAデバイス91のプログラムを書き換えることで実行することが可能である。これにより、補機側の電源入力端子、グランド端子、通信端子等と、バックボーン構造体20、30、40の各端子との接続位置がずれている場合でも、適切な接続状態に自動的に切り替えることができる。
【0124】
なお、
図10に示した選択スイッチデバイス92(1)〜92(4)を用いる場合には、トランジスタ93(1)〜93(4)は必ずしも必要ではないが、電源電力制御等のためにトランジスタ93(1)〜93(4)を有効に活用できる。
【0125】
例えば、
図10に示した補機78(1)の端子78aおよび78bが共通の電源入力端子である場合には、選択スイッチデバイス92(1)および92(2)のそれぞれが上側の切換端子を選択するように切り替えると共に、トランジスタ93(1)の電源線97と、トランジスタ93(2)の電源線97とを互いに異なる隣接する端子42と接続することにより、同時に複数の経路を経由して補機78(1)の端子78a、78bに電源電力を供給することが可能である。
【0126】
つまり、
図8(A)または
図8(B)に示すように、補機側の1つの端子をヒューズ用バスバー41側の複数の端子42と並列に、同時に接続できる。例えば、端子42の1つあたりの電流が5[A]に固定されている場合であっても、2つの端子42と同時に接続することにより、合計で10[A]の電流を流すことが可能になる。
【0127】
また、接続に使用する各回路のトランジスタ93(1)〜93(4)のオンオフを制御することにより、接続した複数の端子42のうち実際の通電に使用する端子数を制限することもできる。これにより、バックボーン構造体から各補機に供給する電力を制御することが可能になる。例えば、1つの補機の1つの電源入力端子に、3つのトランジスタ93を経由して3つの端子42に物理的に接続している場合には、15[A]の電流を流すことが可能であるが、接続した3つのトランジスタ93のうちの1つをオフにすることで、実際に供給する電流を10[A]に制限することができる。
【0128】
上述の車両用回路体は、例えば
図1(D)に示すようにそれぞれの構成がシンプルな第1ベース回路体210、第2ベース回路体220、追加部品回路体230等を組み合わせて構成できるので、全体の構成も簡略化することができ、製造が容易になる。
【0129】
また、追加部品回路体230については車種の違いやオプション電装品に応じて構成や仕様が変化するが、
図1(C)に示すように構成が共通のバックボーン構造体231の幹線に、所望の分岐線232〜235を接続することにより、必要な構成や仕様を満たすように製造することができる。
【0130】
また、バックボーン構造体231の構成を単純化して
図8(A)、
図8(B)のように端子42等の各部の接続仕様を統一した場合であっても、これらに接続する各補機に供給する電源電力を適切に制御できるので、使用する部品の種類や品番を削減することが可能であり、部品コストや製造コストの低減が実現する。
【0131】
ここで、上述した本発明に係る車両用回路体の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[6]に簡潔に纏めて列記する。
【0132】
[1] 車両に配索される車両用回路体(250)であって、
幹線(バックボーン構造体231)および前記幹線に着脱可能な分岐線(232〜235)を有する第1回路体(追加部品回路体230)と、
複数の電線を有する第2回路体(第1ベース回路体210)と、
を備え、
前記幹線および前記分岐線は、電源ライン(配索用導電性部材20a、20b、30a、30c、40a、40c)及び通信ライン(配索用導電性部材20d、20e、30d、30e、40d、40e)を含む、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0133】
[2] 前記第1回路体は、
下位制御部(スレーブ制御部51c、52c、53c)を有し、前記分岐線を前記幹線に接続するための分岐部(分岐・接続ボックス21、22、23、46)と、
前記幹線に接続され、前記下位制御部との通信に基づき、前記分岐線に供給すべき電力の分配を制御するとともに、前記下位制御部を制御する上位制御部(電子制御ユニット11、12、13)と、
を備えることを特徴とする上記[1]に記載の車両用回路体。
【0134】
[3] 前記分岐部は、複数の前記分岐線を並列接続可能であり、
前記下位制御部は、接続された前記分岐線に接続されている補機に供給すべき電力に応じて、前記幹線と前記分岐線の電源ラインおよび通信ラインの接続を切替える切替え回路(44)を有する、
ことを特徴とする上記[2]に記載の車両用回路体。
【0135】
[4] 前記切替え回路は、電力供給が可能な電源端子と、グランド線と接続可能なグランド端子と、通信線と接続可能な通信端子と、のいずれか1つと前記幹線の1つの共通端子との間を選択的に接続する1つまたは複数の選択スイッチデバイス(92、94)と、少なくとも前記通信端子の接続状態を制御するプログラム可能な制御デバイス(FPGAデバイス91)とを有する、
ことを特徴とする上記[3]に記載の車両用回路体。
【0136】
[5] 前記切替え回路は、前記電源端子に対する電力供給を制御するスイッチ素子(トランジスタ93、95)を含み、
前記制御デバイスは、前記分岐線に接続されている補機に供給すべき電力に応じて、前記スイッチ素子を制御する、
ことを特徴とする上記[4]に記載の車両用回路体。
【0137】
[6] 前記第1回路体は、複数の車種、グレード又はオプションに応じて選択されるオプション回路体(追加部品回路体230)であり、
前記第2回路体は、複数の車種、グレード又はオプションに共通して用いられる標準回路体(第1ベース回路体210)である
ことを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の車両用回路体。